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【発明の名称】 フラン誘導体の製造方法
【発明者】 【氏名】谷森 紳治

【氏名】切畑 光統

【要約】 【課題】温和な条件で簡便にフラン誘導体を製造する方法を提供する。

【構成】本発明は、対称性メソ化合物と、β−ケトエステル、β−ケトアミド、および1,3−ジケトンから選ばれた1種とを、パラジウム触媒下で反応させ、フラン誘導体を製造する、フラン誘導体の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対称性メソ化合物と、β−ケトエステル、β−ケトアミド、および1,3−ジケトンから選ばれた1種とを、パラジウム触媒下で反応させ、フラン誘導体を製造する、フラン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記対称性メソ化合物が、一般式(I)で表される化合物または一般式(II)で表される化合物である、請求項1に記載のフラン誘導体の製造方法。
【化1】




式中、Rは、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などを示す。
【化2】



式中、Rは、アセチル基、ベンゾイル基などを示す。
【請求項3】
前記β−ケトエステル、β−ケトアミド、または1,3−ジケトンが、一般式(III)、一般式(IV)で表される化合物、または一般式(V)で表される化合物である、請求項1に記載のフラン誘導体の製造方法。
【化3】



式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基、ブタ−3−イン−1−イル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルキニル基、フェニル基などを示し、Rは、メチル基を示す。
【化4】



【化5】



式中、R、Rは、同一または異なっていてもよい水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、エチレン基、プロペン基、3−メチルプロペン基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基を示す。また、RとRは、結合して環を形成していてもよい。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフラン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラン誘導体は、天然物、医薬品、香料などの生理活性物質に多くみられる有用な化合物群である。したがって、このようなフラン誘導体を簡便に合成することが重要である。
【0003】
しかし、従来のフラン誘導体の合成は、100℃で反応させるなどの強い条件を用いる(例えば特許文献1参照)、あるいは工程数が多い条件で行う必要がある。
【特許文献1】米国特許第4681703号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、温和な条件で簡便にフラン誘導体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、パラジウム触媒を用いて、フラン誘導体を製造すると、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0006】
本発明のフラン誘導体の製造方法は、対称性メソ化合物と、β−ケトエステルまたはβ−ケトアミドとを、パラジウム触媒下で、反応させ、フラン誘導体を製造するものである。
【0007】
前記対称性メソ化合物は、一般式(I)で表される化合物または一般式(II)で表される化合物であればよい。
【化6】



式中、Rは、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などを示す。
【化7】



式中、Rは、アセチル基、ベンゾイル基などを示す。
【0008】
前記β−ケトエステル、β−ケトアミド、または1,3−ジケトンは、一般式(III)、一般式(IV)で表される化合物、または一般式(V)で表される化合物であればよい。
【化8】



式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基、ブタ−3−イン−1−イル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルキニル基、フェニル基などを示し、Rは、メチル基を示す。
【化9】



【化10】



式中、R、Rは、同一または異なっていてもよい水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、エチレン基、プロペン基、3−メチルプロペン基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基を示す。また、RとRは、結合して環を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、パラジウム触媒を用いることで、温和な条件で簡便にフラン誘導体を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
[対称性メソ化合物]
本発明で用いる対称性メソ化合物としては、例えば、下記化学式(I)で表されるシス−2−ブテン−1,4−ジオールのジカルボナート体、下記化学式(II)で表されるシクロペンタエン、シクロヘキサエンのジカルボナート体、ジエステル体が挙げられる。
【化11】



式中、Rは、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などを示す。
【化12】



式中、Rは、アセチル基、ベンゾイル基などを示す。
【0012】
[β−ケトエステル]
本発明に用いるβ−ケトエステルとしては、一般式(III)で表されるケトプロパン酸を基本構造に有する化合物である。
【化13】



式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基、ブタ−3−イン−1−イル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルキニル基、フェニル基などを示し、Rは、メチル基を示す。
【0013】
[ケトアミド]
本発明に用いるケトアミドとしては、一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【化14】


【0014】
[1,3−ジケトン]
本発明に用いる1,3−ジケトンとしては、一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【化15】



式中、R、Rは、同一または異なっていてもよい水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基などの炭素数1〜12の置換基を有していてもよいアルキル基、エチレン基、プロペン基、3−メチルプロペン基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,9−ジメチル−3,7−ペンタジエニル基などの炭素数2〜12の置換基を有していてもよいアルケニル基を示す。また、RとRは、結合して環を形成していてもよい。
【0015】
1,3−ジケトンの具体例としては、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオンなどがあげられる。
【0016】
[パラジウム触媒]
本発明のフラン誘導体の製造方法に用いるパラジウム触媒としては、例えば、[Pd(η−C)Cl]、Pd(OAc)、Pddba・CHCl、Pd(PPhなどを用いることができる。
【0017】
[その他の成分]
本発明の製造方法において、例えばジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF)の存在下、さらに炭酸カリウム、トリフェニルホスフィン、第三級アミン(トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU))などの有機または無機塩の存在下で反応を行ってもよい。DPPFの存在下で反応を行う場合には、反応系に2.5モル%添加する。
【0018】
[溶媒]
本発明の方法を実施するにあたり、用いる溶媒は特に制限はされないが、好ましくは不活性溶媒下に実施される。具体的に本発明の製造方法で用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、ジクロロエタンなどの公知の有機溶媒が挙げられる。
【0019】
[反応]
本反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下に実施されるが、加圧条件下に実施することもできる。反応温度は20℃〜60℃の範囲で実施される反応時間は、反応条件、対称性メソ化合物と、β−ケトエステル、β−ケトアミド、および1,3−ジケトン、及びパラジウム触媒等により異なるが、1〜35時間の範囲から選択すればよい。反応終了後、シリカゲルを用いて濾過した後、得られた濾液を濃縮する。濃縮残渣を、ヘキサン・酢酸エチル混液などを展開溶媒として用いて、シリカゲル分取薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィーにより目的物を分取する。展開溶媒の種類、混合比などは、得られるフラン誘導体により異なる。また、薄層クロマトグラフの回数は、1回に限らず、複数回行ってもよい。
【0020】
本発明における反応は、以下のように進行する。
【化16】


【0021】
本発明の方法を用いてフラン誘導体を製造すると、温和な条件で簡便にフラン誘導体を製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
ジアセタート(39.8mg、0.20mmol)、ケトエステル(38.6mg、0.21mmol)、[Pd(η−C)Cl](1.0mg、0.0027mmol)、DPPF(3.8mg、0.0068mmol)、DBU(61mg、0.40mmol)をTHF1mlに溶解した液を、窒素置換し、50℃で一晩攪拌しながら反応させた。得られた反応生成物を含む混合液をシリカゲル(BW−200、富士シリアル化学(株)製)を用いて濾過した。濾液は、減圧下で、濃縮した。残渣を、ヘキサン・酢酸エチル混液(10:1(体積比))を用いてシリカゲル分取TLCで分離し、所望のフラン誘導体を28mg(収量:53%)を得た。得られたフラン誘導体は、油状物であった(Rf=0.59)
FAB−MS m/z(%):307(M,27);H−NMR δ(CDCl):1.16−1.26(1H,m),1.61(3H,s),1.67(3H,s),1.82−1.94(1H,m),2.01−2.14(2H,m),2.24(2H,dd,J=7.6,15.1Hz),2.57−2.73(2H,m),2.96−3.03(1H,m),3.72(3H,s),4.66−4.72(1H,m),5.09−6.16(1H,m),5.92−5.98(1H,m),6.16−6.22(1H,m).
【化17】


【0024】
[実施例2]
下式に示すジアセタートを用いて、表1に示すようにβ−ケトエステルの種類を変えて、実施例1と同様にして、フラン誘導体を作成した。得られたフラン誘導体とその収量を表1に示す。
【表1】


【0025】
[実施例3]
下式に示すジアセタートを用いて、ケトエステルの種類を変えて、実施例1と同様にして、フラン誘導体を作成した。得られたフラン誘導体とその収量を表1に示す。ケトエステルの種類を変えることで、光学活性を有するフラン誘導体が得られた。
【表2】


【0026】
[実施例4]
下式に示すジアセタートとケトエステルとを用いて、トリエチルアミンを塩として用い、溶媒をジクロロメタンに変えて、室温で6時間反応させて、実施例1と同様に、フラン誘導体を作成した。得られたフラン誘導体の収量は、52%であった。
【化18】


【0027】
[実施例5]
下式に示すジアセタートとケトエステルとを用いて、溶媒の種類、反応時間、反応温度、延期の種類を変えて、実施例1と同様にして、フラン誘導体を作成した。得られたフラン誘導体とその収量を表2に示す。
【化19】



【表3】


【0028】
[実施例6]
下式に示すジカルボナート(16.5mg、0.081mmol)、ケトアミド(19.4mg、0.095mmol)、[Pd(η−C)Cl](1mg、0.0027mmol)、DPPF(3.8mg、0.0068mmol)、炭酸カリウム(22mg、0.16mmol)をアセトニトリル1mlに溶解した液を、窒素置換し、50℃で一晩攪拌しながら反応させた。得られた反応生成物を含む混合液をシリカゲル(BW−200、富士シリアル化学(株)製)を用いて濾過した。濾液は、減圧下で、濃縮した。残渣を、ヘキサン・酢酸エチル混液(3:1(体積比))を用いてシリカゲル分取TLCで2回分離し、所望のフラン誘導体として低極性体2.2mg(収量:11%)、高極性体2.9mg(収量:14%)を得た。低極性体:Rf=0.57、高極性体:Rf=0.49
【化20】


【0029】
[実施例7]
下式に示すジアセタートと1,3−ジケトンを用いて、塩としてトリフェニルホスフィンと炭酸カリウムとを用いて、室温で2.5時間反応させた以外は、実施例1と同様にして、フラン誘導体を作成した。得られたフラン誘導体とその収量を下式に示す。
【化21】






【出願人】 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100110984
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 敬子

【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹


【公開番号】 特開2008−13506(P2008−13506A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187521(P2006−187521)