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【発明の名称】 ピリミジン化合物
【発明者】 【氏名】佐野 善寿

【氏名】江奈 英里

【氏名】浅井 由美

【要約】 【課題】本発明は、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンの代謝物を提供することを目的とする。

【構成】下式で表される5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンもしくはその塩またはそれらの水和物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式で表される5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンもしくはその塩またはそれらの水和物。
【化1】


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン化合物、より詳しくは、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンもしくはその塩またはそれらの水和物に関する。
【背景技術】
【0002】
5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンは、アデノシン受容体拮抗作用を有し、便秘症などの様々な疾患の予防・治療に有効な化合物である(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/035639号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある化合物を生体に投与した場合、代謝物が投与した化合物と同様の薬理作用を示す可能性があるが、特許文献1には、代謝物についての開示はなかった。そこで、本発明は、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンの代謝物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、精力的に研究を重ねた結果、特許文献1に開示されている5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンの代謝物の1種として5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンを同定し、さらにアデノシン受容体拮抗作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下式で表される5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(以下、「本発明の化合物」という場合がある。)もしくはその塩またはそれらの水和物を提供する。
【0007】
【化1】


【0008】
なお、本発明の化合物は、国際公開第03/035639号パンフレットの請求の範囲に形式的に含まれるものの、具体的な化合物として開示されていない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、アデノシン受容体拮抗作用を有し、便秘症などの様々な疾患の予防・治療に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物は、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンの代謝物の1種であるが、その製造方法に関しては特許文献1に開示されており、それと同様の方法により製造することができる。特許文献1の開示のすべてを参照として本明細書の開示に含める。
【0011】
また、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンを動物、好ましくは哺乳動物に投与し、尿などの排泄物を回収し、下記実施例に記載された方法等により精製することによっても、本発明の化合物を製造することができる。また、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンを動物に投与する代わりに、肝ミクロソームで処理し、精製することによっても、本発明の化合物を製造することができる。
【0012】
本明細書における「塩」とは、本発明の化合物と塩を形成し、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性または塩基性アミノ酸塩などがあげられる。
【0013】
無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などがあげられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などがあげられる。
【0014】
無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などがあげられる。
【0015】
酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられ、塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などがあげられる。
【0016】
本発明の化合物がフリー体として得られる場合、塩または水和物の状態に常法に従って変換することができる。また、本発明の化合物が塩または水和物として得られる場合、フリー体に常法に従って変換することができる。
【0017】
本発明の化合物を含有する医薬組成物
5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンは、特許文献1に開示されている方法と同様にして、便秘症の治療剤の有効成分として使用することができる。
【0018】
本発明の化合物は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等として製剤化することができる。製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化される。
【0019】
これらの成分としては例えば、大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール;グルコース、ショ糖等の糖;無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体、精製水等が挙げられる。
【0020】
賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が用いられる。
【0021】
経口製剤を製造するには、本発明の化合物と賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。
【0022】
これらの錠剤・顆粒剤には糖衣、その他必要により適宜コーティングすることはもちろん差支えない。
【0023】
また、シロップ剤や注射用製剤等の液剤を製造する際には、本発明の化合物にpH調整剤、溶解剤、等張化剤等と、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤等を加えて、常法により製剤化する。
【0024】
外用剤を製造する際の方法は限定されず、常法により製造することができる。すなわち製剤化にあたり使用する基剤原料としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等に通常使用される各種原料を用いることが可能である。使用する基剤原料として具体的には、例えば動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、シリコン油、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の原料が挙げられ、さらに必要に応じ、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、防腐防黴剤、着色料、香料等を添加することができるが、外用剤の基剤原料はこれらに限定されない。また必要に応じて血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分を配合することもできる。なお上記基剤原料の添加量は、通常外用剤の製造にあたり設定される濃度になる量である。
【0025】
本発明の化合物を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常用いられる方法により、経口投与でも非経口投与でもよい。例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の剤として製剤化し、投与することができる。医薬の投与量は、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、疾患の具体的な種類、投与形態・塩の種類等に応じて適宜選ぶことができる。
【0026】
例えば、通常、成人の場合は1日あたり経口投与で約30μgないし10g、好ましくは100μgないし5g、さらに好ましくは100μgないし100mgを、注射投与で約30μgないし1g、好ましくは100μgないし500mg、さらに好ましくは100μgないし30mgをそれぞれ1回又は数回に分けて投与する。
【実施例】
【0027】
(代謝物の調製と構造決定)
5%メチルセルロース水溶液で懸濁させた5−[2−アミノ−4−(2−フリル)ピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンをオスのCrj:CD(SD)IGSラット(チャールズリバージャパン)に3mg/kgで投与した。ラット尿を投与48時間後まで回収し、そのうちの投与0−8時間後の尿約1mLに精製水約1mLを加えてラット尿サンプルとした。これをLC−MSで分析したところ、m/e(ESI)=285(MH+)にピークを有する代謝物が検出された。
【0028】
さらにHPLCを用いて下記の条件でラット尿サンプルを分析したところ、LC−MS分析により見出された代謝物が23.1分のピークに現れ、これを分取した。そのHPLCクロマトグラムを図1に示す。得られた代謝物をNMRにより分析したところ、5−[2−アミノ−4−(2−フリル)−6−ヒドロキシピリミジン−5−イル]−1−メチルピリジン−2(1H)−オンであることが判明した。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ ppm; 7.66 (1H, broad s), 7.51 (1H, d, J=3Hz), 7.11 (1H, dd, J=9Hz, 3Hz), 6.64 (2H, broad s), 6.59 (1H, d, J=3Hz), 6.51 (1H, m), 6.33 (1H, d, J=9Hz), 3.41 (3H, s)
【0029】
[HPLC条件]
装置:Co-sense system (HPLCシステム) (島津製作所)
カラム:YMC-Pack pro C18 250×4.6mm I.D. S-5μm
カラム温度:30℃
検出器:PDA(観測波長254nm)
流速:1mL/min
注入量:20μL
移動相:
A液:H2O/CH3CN/HCOOH=990/10/1(v/v/v)
B液:CH3CN/H2O/HCOOH=990/10/1(v/v/v)
グラジエント:
【0030】
【表1】


【0031】
(試験例1:アデノシンA受容体結合能の測定)
ヒトのアデノシンA受容体cDNAをCHOK1細胞で過剰発現させ、その膜標本を66.7μg/mLのタンパク濃度になるように20mM HEPES緩衝液(10mM MgCl、100mM NaClを含む;pH7.4)を加え懸濁した。この膜標本懸濁液0.45mLにトリチウム標識した60nMのクロロシクロペンチルアデノシン(H−CCPA、NEN社製)0.025mLと本発明の化合物の溶液0.025mLを加えた。この混合液を30℃で120分間静置後、ガラス繊維ろ紙(GF/B;Whatman社製)上で急速吸引ろ過し、直ちに水冷した5mLの50mM Tris−HCl緩衝液で2回洗浄した。その後、ガラス繊維ろ紙をバイアル瓶に移し、シンチレーターを加え、ろ紙上の放射能量を液体シンチレーションカウンターで測定した。H−CCPAのAの受容体結合に対する本発明の化合物の阻害率の算出は、以下の式により求め、これをもとに、50%阻害濃度(IC50)を算出した。
【0032】
阻害率(%)=[1−{(本発明の化合物存在下での結合量−非特異的結合量)/(全結合量−非特異的結合量)}]×100
【0033】
そして、阻害定数(K値)を、Cheng−Prusoffの式より求めたところ、その値は157.2nMであった。なお、全結合量とは、本発明の化合物非存在下でのH−CCPA結合放射能量を示し、非特異的結合とは、100μM RPIA([R]−[1−メチル−2−フェニルエチル]アデノシン)存在下でのH−CCPA結合放射能量を示し、本発明の化合物存在下での結合量とは、各種濃度の本発明の化合物存在下でのH−CCPA結合放射能量を示す。
【0034】
(試験例2:アデノシンA2B受容体発現細胞におけるNECA刺激cAMP産生に対する阻害実験)
ヒトのアデノシンA2B受容体を過剰発現させたCHOK1細胞、1.5x10cells/wellを24Wellのプレートに均一にまき、一晩培養後、実験に使用した。30nMの5’−N−エチルカルボキシアミドアデノシン(NECA;シグマ社製)刺激によって産生されるcAMP量に対する本発明の化合物の阻害率をA2B受容体に対する親和性として評価した。すなわち、接着した細胞を、クレブス−リンガー緩衝溶液(0.1%BSAを含む;pH7.4)2mL/wellで2回洗浄後、0.5mL/wellで30分間プレインキュベーションを行った。続いて、ホスホジエステラーゼ阻害剤であるRo−20−1724(RBI社製)存在下で、NECAと本発明の化合物を含む混合溶液を0.1mL/wellで加えた。プレインキュベーション15分後に、300μL/wellの0.1N HClで反応を止めた。cAMPの測定は、Amersham社製のcAMPエンザイムイムノアッセイキットを用いて行った。NECA刺激cAMP産生に対する本発明の化合物の阻害率は、以下の式により求め、これをもとに、50%阻害濃度(IC50)を算出したところ、その値は72.7nMであった。
【0035】
阻害率(%)=[1−{(NECAと本発明の化合物共存下でのcAMP量−クレブス−リンガー緩衝溶液のみのcAMP量)/(NECA単独刺激のcAMP量−クレブス−リンガー緩衝溶液のみのcAMP量)}]×100
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、ラット尿サンプルのHPLCクロマトグラムを表す図である。
【出願人】 【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗

【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔


【公開番号】 特開2008−13500(P2008−13500A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186980(P2006−186980)