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【発明の名称】 高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の保存方法。
【発明者】 【氏名】太田 孝則

【氏名】奥村 幹治

【要約】 【課題】高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の品質に優れ、且つ安定な保存方法を提供する。

【構成】アスコルビン酸濃度が13質量%以上のグリセリン溶液を0℃〜−30℃で保管する低温保存方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸濃度が13質量%以上のグリセリン溶液を0℃〜−30℃で保管することを特徴とする低温保存方法。
【請求項2】
保存温度が、−5℃〜−25℃である請求項1に記載の低温保存方法。
【請求項3】
アスコルビン酸濃度が16〜45質量%である請求項1又は2に記載の低温保存方法。
【請求項4】
アスコルビン酸濃度が13質量%以上のグリセリン溶液が、アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールを混合してアスコルビン酸を溶解させ、次いでエチルアルコールを除去することにより得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の低温保存方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の保存方法に関し、更に詳しくは、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の低温領域での保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸は抗酸化作用があり、コラーゲンの生成と維持に関与していることから、肌の老化防止に効果があるため、安全な美白原料として、シミ、ソバカスを防ぐ等の美白成分として、美白化粧品などに配合されている。
また、アスコルビン酸は、医薬品として、ビタミンCの補給の他、色素沈着、薬物中毒、副腎皮質機能障害に対して使用されている。
さらに、清涼飲料、保存食品、菓子類、健康食品等にも配合されている。
しかしながら、アスコルビン酸は水に溶解すると非常に不安定となり、光、熱、pH状態、金属イオンなどによって容易に酸化され、アスコルビン酸の高濃度水溶液を作製すること、況してや安定に保存することはできない。
【0003】
本発明者らは、高濃度のアスコルビン酸を含有し且つ安定な有機溶媒の溶液を調製することができれば、上記用途の拡大、更には新規な用途が開けるものと考え、アスコルビン酸濃度が16〜45質量%であるグリセリン溶液の製造方法を開発し、特許出願するにおよんだ。
【0004】
従来、アスコルビン酸を最大15質量%までグリセリンに溶解できること、及びアスコルビン酸を6.1質量%含有するグリセリン溶液が室温及び40℃で83日間程度安定であることが知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、アスコルビン酸濃度が6.1質量%を超えるグリセリン溶液の安定性及びその保存方法は全く知られていない。
また、本発明者らが開発した上記製造方法で得られる、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液、例えば、アスコルビン酸を16質量%程度含有するグリセリン溶液は、室温で少なくとも2ヶ月間は安定であるが、2ヶ月半を経過する頃から一部固化が始まること分かった。
更に、この傾向は、アスコルビン酸の濃度が高くなるほど顕著になることも判明した。
従って、アスコルビン酸濃度が6.1質量%を超えるグリセリン溶液の固化を抑制し、一定の品質を安定に保存する方法の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−155733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の品質に優れ、且つ安定な保存方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の固化を抑制する方法として、乳化剤等を添加することなく、低温で保管する低温保存方法により、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液が品質に優れ、かつ長期に亘り安定であること、又室温以上の高温では低温よりも不安定であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は、
1.アスコルビン酸濃度が13質量%以上のグリセリン溶液を0℃〜−30℃で保管することを特徴とする低温保存方法、
2.保存温度が、−5℃〜−25℃である上記1に記載の低温保存方法、
3.アスコルビン酸濃度が16〜45質量%である上記1又は2に記載の低温保存方法、
4.アスコルビン酸濃度が13質量%以上のグリセリン溶液が、アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールを混合してアスコルビン酸を溶解させ、次いでエチルアルコールを除去することにより得られたものである上記1〜3のいずれかに記載の低温保存方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温で保管する低温保存方法により、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液が長期に亘り安定であり、固化を効果的に抑えることができ、アスコルビン酸の効力を安定に維持することができる。
また、アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液は、低温で保存中凍結することがなく、直ちに、所望の用途に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、高濃度アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液を0℃〜−30℃で保管する低温保存方法に関するものである。
【0010】
まず、高濃度アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の製造方法について述べる。
高濃度アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の製造方法としては、特に限定はないが、例えば、エチルアルコールをアスコルビン酸の溶解助剤として用い、アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールを混合して溶解させ、次いでエチルアルコールを除去することにより製造することができる。
アスコルビン酸は、化学式C686で表される分子量176.13の白色で無臭の結晶又は粉末であり、この状態では比較的安定である。
しかしながら、水に溶解すると非常に不安定となり、容易に酸化される。
グリセリンは、無色透明で、粘稠性の液体(1499mPa・s:20℃)である。
また、グリセリンは、毒性が低く、人間の皮膚の細胞を膨潤させて、柔軟にし、表皮の角質層が大小の角質片となって剥げ落ちる現象を防止し、皮膚の吸収力を高める作用がある。
エチルアルコールは、無色透明で特有の香と味をもつ液体で、麻酔性があり、グリセリンとは任意の割合で混ざり、均一溶液を形成する。
エチルアルコールの使用量は、特に制限はなく、目的とするアスコルビン酸の濃度、加熱溶解温度等によって異なるが、アスコルビン酸1質量部に対し、通常、40〜60質量部、好ましくは45〜50質量部である。
アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールの混合は、一度に必要量を混合してもよく、また、少量ずつ混合してもよい。
アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールの混合順序には、特に制限はないが、アスコルビン酸とグリセリンの混合物に、エチルアルコールを混合するとアスコルビン酸の溶解速度が早くなり、好ましい。
アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールの混合・溶解には、溶解速度の観点から、攪拌を行うことが好ましい。
また、アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールの混合・溶解は、必要に応じて、加熱することができる。
アスコルビン酸を溶解させる際、アスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールの混合物を撹拌機を具備した容器中で加熱し、撹拌しながら溶解させることが好ましい。
加熱温度は、通常、15〜60℃、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜40℃である。
この混合・溶解操作は、必要に応じて、窒素ガス等の不活性気流中で行うこともできる。
上記のようにして得られたアスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールからなる溶液は、無色かつ透明な溶液である。
次に、得られたアスコルビン酸、グリセリン及びエチルアルコールからなる溶液より、エチルアルコールを除去する。
エチルアルコールの除去方法としては、通常、蒸留法が採用される。
このようにして、アスコルビン酸濃度13質量%以上の高濃度のグリセリン溶液が容易に得られる。
【0011】
上記のようにして得られた高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液、例えば、アスコルビン酸を16質量%程度含有するグリセリン溶液は、可視光線及び紫外線不透過性の容器や容器頂部空間の窒素充填を必要とせず、5℃〜室温(25℃)で少なくとも2ヶ月間は透明で安定であるが、2ヶ月半を経過する頃から一部固化が始まり、この傾向は、アスコルビン酸の濃度が高くなるほど顕著になる。
【0012】
本発明は、高濃度アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液を0℃〜−30℃で保管し、アスコルビン酸のグリセリン溶液の上記した固化を抑制するものである。
アスコルビン酸のグリセリン溶液の保存温度としては、通常0℃〜−30℃である。
保存温度は、好ましくは−5℃〜−25℃、より好ましくは−13℃〜−23℃である。
保存温度を0℃〜−30℃とすることにより、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液の品質の劣化がなく、かつ長期に亘り安定であり、固化を効果的に抑えることができる。
更に、上記温度範囲で保存しても、アスコルビン酸を含有するグリセリン溶液は凍結することがなく、直ちに、所望の用途に用いることができる。
アスコルビン酸のグリセリン溶液の安定な期間としては、アスコルビン酸濃度が45%程度のグリセリン溶液においても、少なくとも6ヶ月は安定であり、アスコルビン酸濃度が13%程度であると、少なくとも1年は安定である。
グリセリン溶液のアスコルビン酸の濃度は、通常13〜45質量%である。
アスコルビン酸の濃度としては、好ましくは16〜45質量%、より好ましくは16〜40質量%、更に好ましくは20〜35質量%である。
アスコルビン酸のグリセリン溶液の保存容器としては、アスコルビン酸及びグリセリンに侵されない材質であり、且つ保存温度において耐性のあるものであれば特に限定はない。
また、保存容器は、可視光線及び紫外線不透過性の容器である必要がなく、容器頂部空間の窒素充填を必要としない。
保存容器としては、例えば、ガラス容器、ポリエチレン及びテフロン(登録商標)等のプラスチック製容器などが挙げられる。
アスコルビン酸のグリセリン溶液の低温保存装置としては、0℃〜−30℃の温度に長期間維持・保管できるものであれば特に限定はなく、例えば、冷凍冷蔵庫が挙げられる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0014】
実施例1
アスコルビン酸8g、グリセリン42g及びエチルアルコール380gをフラスコに秤量し、25℃で15分間攪拌を行ったところ、アスコルビン酸は完全に溶解した。
この溶液から、温度25℃、圧力0.67kPa(5mmHg)で1.5時間かけてエチルアルコールを除去したところ、透明なアスコルビン酸のグリセリン溶液が得られた。
得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液について、アスコルビン酸を高速液体クロマトグラフ法を用いて分析したところ、アスコルビン酸の含有量は16.1質量%であった。
また、得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液の濁度をJIS K0101に準拠し、標準物質としてホルマジンを用い、散乱光測定方式により測定したところ、5以下であった。
上記のようにして得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液を、ポリエチレン製容器に採取し、容器頂部空間に窒素等の不活性ガスを充填せずに、5℃の冷蔵室及び−15℃の冷凍室に保管し、目視により観察した。
その結果を表1に示す。
なお、保管後のアスコルビン酸のグリセリン溶液の濁度の測定方法は、上記のとおりである。
【0015】
実施例2
アスコルビン酸8g、グリセリン32g及びエチルアルコール380をフラスコに秤量し、25℃で15分間攪拌を行ったところ、アスコルビン酸は完全に溶解した。
この溶液から、温度25℃、圧力0.67kPa(5mmHg)で2時間かけてエチルアルコールを除去したところ、透明なアスコルビン酸のグリセリン溶液が得られた。
得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液について、アスコルビン酸を高速液体クロマトグラフ法を用いて分析したところ、アスコルビン酸の含有量は20.5質量%であった。
また、得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液の濁度を実施例1と同様にして測定したところ、5以下であった。
上記のようにして得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液を、実施例1と同様にして、目視観察及び濁度の測定を行った。
その結果を表1に示す。
【0016】
実施例3
アスコルビン酸9g、グリセリン21g及びエチルアルコール400gをフラスコに秤量し、25℃で15分間攪拌を行ったところ、アスコルビン酸は完全に溶解した。
この溶液から、温度25℃、圧力0.67kPa(5mmHg)で2.5時間かけてエチルアルコールを除去したところ、透明なアスコルビン酸のグリセリン溶液が得られた。
得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液について、アスコルビン酸を高速液体クロマトグラフ法を用いて分析したところ、アスコルビン酸の含有量は31.0質量%であった。
また、得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液の濁度を実施例1と同様にして測定したところ、5以下であった。
上記のようにして得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液を、実施例1と同様にして、目視観察及び濁度の測定を行った。
その結果を表1に示す。
【0017】
実施例4
アスコルビン酸10g、グリセリン15g及びエチルアルコール400gをフラスコに秤量し、25℃で15分間攪拌を行ったところ、アスコルビン酸は完全に溶解した。
この溶液から、温度25℃、圧力0.67kPa(5mmHg)で2.5時間かけてエチルアルコールを除去したところ、透明なアスコルビン酸のグリセリン溶液が得られた。
得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液について、アスコルビン酸を高速液体クロマトグラフ法を用いて分析したところ、アスコルビン酸の含有量は39.8質量%であった。
また、得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液の濁度を実施例1と同様にして測定したところ、5以下であった。
上記のようにして得られたアスコルビン酸のグリセリン溶液を、実施例1と同様にして、目視観察及び濁度の測定を行った。
その結果を表1に示す。
なお、上記実施例1〜4のアスコルビン酸のグリセリン溶液の保存温度を10℃及び室温(25℃)に変更しても、5℃の場合とその挙動はほぼ同様であり、不安定であった。
【0018】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、高濃度のアスコルビン酸を含有するグリセリン溶液が長期に亘り安定であり、アスコルビン酸の効力を安定に維持することができので、アスコルビン酸を安定的に、かつ多量に配合した化粧品、医薬品、食品を製造することができる。
【出願人】 【識別番号】506208953
【氏名又は名称】奥村 幹治
【識別番号】506208894
【氏名又は名称】太田 孝則
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保


【公開番号】 特開2008−13493(P2008−13493A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186768(P2006−186768)