トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学

【発明の名称】 グリセロールからジクロロプロパノールを製造するための方法であって、該グリセロールが最終的にバイオディーゼルの製造における動物性脂肪の転化から生じる方法
【発明者】 【氏名】クラフ・フィリップ

【氏名】ジルボー・パトリック

【氏名】ゴセラン・ベノワ

【氏名】クレサン・サラ

【要約】 【課題】ジクロロプロパノールを用いるエポキシ樹脂の製造方法を提供する。

【構成】全ジクロロプロパノールに対して少なくとも50質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを含むジクロロプロパノールを出発物質として用いる、エポキシ樹脂の製造方法。ジクロロプロパノールは、グリセロールを出発物質として、塩化水素等の塩素化剤で塩素化したものが使用される。この反応には触媒として酢酸、カプリル酸、アジピン酸等が用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ジクロロプロパノールに対して少なくとも50質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを含むジクロロプロパノールを出発物質として用いる、エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記ジクロロプロパノール出発物質が、実質的に1,3-ジクロロプロパン-2-オール及び2,3-ジクロロプロパン-1-オールからなる異性体混合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ジクロロプロパノール出発物質中の1,3-ジクロロプロパン-2-オール含有率が、全ジクロロプロパノールに対して75質量%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ジクロロプロパノール出発物質が、本質的に1,3-ジクロロプロパン-2-オールからなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ジクロロプロパノールが、グリセロールと塩素化剤との反応によって製造される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応が連続的に行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記塩素化剤が、実質的に無水の塩素化水素を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記塩素化剤が、4質量%以上の塩素化水素含有率を有する塩素化水素の水溶液である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記反応が液相中で行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
200℃以上の大気中沸点を有する、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩素化物、カルボン酸塩、又はカルボン酸エステルが、触媒として用いられる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒が、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸塩素化物、ジカルボン酸塩、又はジカルボン酸エステルである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記触媒が、アジピン酸、アジピン酸無水物、アジピン酸塩素化物、アジピン酸塩、又はアジピン酸エステルである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
液体反応媒体1kg当たりの酸及び酸エステル誘導体の、モルで表される反応媒体における酸濃度が、0.1以上かつ10以下である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記反応が、少なくとも1種の有機溶媒の存在下で行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒が、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、及び部分的に塩素化、エステル化、又は塩素化及びエステル化されていることができるグリセロールオリゴマーである重質副生成物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記反応混合物中の水の濃度が15質量%以下である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項17】
反応条件が、液体反応混合物上の気相における塩素化水素濃度が、二成分共沸の塩素化水素-水混合物中の塩素化水素濃度よりも低いように調整される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項18】
水及びジクロロプロパノールを含むフラクションの全質量に対して10質量%以下の塩素化水素含有率を有する少なくとも水を含むフラクションの連続的又は周期的な引き抜きを行い、且つ反応媒体に水が供給される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項19】
前記反応が、反応条件下で前記塩素化剤に対して耐久性があり、且つエナメルスチール、ポリマー、樹脂を用いる被覆剤、金属又は合金、セラミックス及び金属セラミックス及び耐熱性物質から選択される物質製の反応器内で行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項20】
反応器(20)に、連続的又はバッチ様式で、ライン(21)を介してグリセロールを及びライン(22)を介して触媒を供給し、無水又は水溶液での塩素化水素の供給を、連続的又はバッチ様式でライン(23)を介して行い、蒸留カラム(30)にライン(24)を介して反応器(20)から製造された蒸気を供給し、流れをカラム(30)からライン(26)を介して引き抜き、且つ水相及び有機相が分離されるデカンター(31)に供給する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項21】
反応器(33)に、連続的又はバッチでライン(41)を介してグリセロールを及びライン(42)を介して触媒を供給し、無水又は水溶液での塩素化水素の供給を連続的又はバッチ様式でライン(43)を介して行い、蒸留カラム(42)にライン(34)を介して反応器(33)から製造された蒸気を供給し、カラム(42)からの残渣をライン(35)を介して反応器(33)にリサイクルし、反応器の底からのパージをライン(37)を介してストリッパー(44)内に供給し、部分的なストリッピング操作を、加熱、又は窒素もしくは蒸気によるガス掃引によって行い、流れ(37)からの塩素化水素の大部分を含む気相をライン(38)を介してカラム(42)か、又はライン(45)を介して反応器(33)にリサイクルし、蒸留又はストリッピングカラム(43)にストリッパー(44)から生じる液相をライン(39)を介して供給し、ジクロロプロパノールの主要なフラクションをカラムの頂部からライン(40)を介して集め、及びカラム残渣をライン(41)を介して反応器(33)にリサイクルする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の製造方法であって、
(a)液相を反応器(20)又は(33)から引き抜き、
(b)共沸性の塩素化水素/水混合物を前記液相に加え、続いて、得られた混合物を加熱し、
(c)前記酸を、結晶化によって前記得られた混合物から回収し、且つ反応器(20)又は(33)にリサイクルする、製造方法。
【請求項23】
水を、工程(b)からの前記得られた混合物に加え、前記酸触媒を結晶化によって回収し、且つ反応器(20)又は(33)にリサイクルする、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
1,3-ジクロロプロパン-2-オールが、少なくとも50%の選択率で得られる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項25】
用いられるグリセロールが、少なくとも部分的に、植物又は動物由来の脂肪又はオイルである再生可能な原材料から製造される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項26】
請求項5に記載の製造方法であって、
(a)グリセロールが、植物又は動物由来の脂肪又はオイルである再生可能な原材料から製造される第一工程、及び
(b)ジクロロプロパノールが、前記第一工程で得られたグリセロールから製造される第二工程、
を含む製造方法。
【請求項27】
前記第二工程で用いられるグリセロールが、さらに、水と、NaCl、KCl、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムから選択される金属塩とを含む粗製生成物である、請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記粗製生成物が、40〜99質量%のグリセロール、5〜50質量%の水、及び1〜10質量%の金属塩を含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
前記第二工程中で用いられるグリセロールが、精製された生成物である、請求項26に記載の製造方法。
【請求項30】
前記精製された生成物が、80〜99.9質量%のグリセロール及び0.1〜20質量%の水を含む、請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記グリセロールが、動物性脂肪の転化中又はバイオディーゼルの製造中に、けん化、トランスエステル化、又は加水分解反応により得られる、請求項22に記載の製造方法。
【請求項32】
請求項27に記載の一体化した製造方法であって、
(a)植物油を、グリセロール以外のアルコールとのトランス-エステル化反応に付し、少なくとも、バイオディーゼルと、グリセロールを含む粗製生成物とを回収し;
(b)前記粗製生成物を、蒸留を含む精製操作に付し;
(c)工程(a)で形成されたグリセロールを、ジクロロプロパノールを製造するための前記方法に付す、製造方法。
【請求項33】
グリセロールの製造工程及びジクロロプロパノールの製造工程が、同一の製造場所で続けて行われる、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
グリセロールの製造工程及びジクロロプロパノールの製造工程が、異なる製造場所で別々に行われる、請求項32に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/560676号明細書の利益を要求する。
【0002】
本発明は、有機化合物を製造するための方法、特にジクロロプロパノールを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
地球上の入手可能な天然石油化学資源、例えばオイル又は天然ガスは、限界があることが知られている。現在、これらの資源は、燃料を製造するために用いられ、及びプラスティックを製造するためのモノマー又は反応物などの多種の有用な有機化合物、例えばエピクロロヒドリン又はジクロロプロパノール(例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Vol. A9, p. 539-540参照)を製造するための出発生成物として用いられている。Documents Chemistry and Industry, November 20, 1931, Part III, pages 949-954、及びNovember 27, 1931, Part III , pages 970-975は、酸触媒としての酢酸の存在下におけるグリセロール及び塩化水素の水溶液からのジクロロプロパノールの合成のための方法を記載している。
【0004】
ジクロロプロパノールを製造するための周知の方法では、生成物は、一般的に5〜15質量%の滴定濃度を有する高度に希釈された溶液で得られる。続いてそれを精製するのは特に高価である。さらに、該方法で得られた主要な異性体は、2,3-ジクロロプロパン-1-オールである。
【非特許文献1】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Vol. A9, p. 539-540
【非特許文献2】Documents Chemistry and Industry, November 20, 1931, Part III, pages 949-954
【非特許文献3】Documents Chemistry and Industry, November 27, 1931, Part III , pages 970-975
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に上記の使用のための、天然石油化学資源の消費を減らすことのできる使用及び方法を見出すのが望まれていた。
他の製造方法の副生成物を再使用するための方法を見出し、除去又は破壊される必要のある副生成物の全量を最小化することもまた望まれていた。
従って、本発明は、有機化合物を製造するための出発生成物としての、再生可能な原材料から得られたグリセロールの使用に関する。
【0006】
本発明の使用は、大量の有機化合物を得ることができ、同時に天然オイル資源の消費を最小化することができる。再生可能な原材料由来のグリセロールは、有機化合物、特に3の倍数の数の炭素原子を含む有機化合物を製造するための反応に、容易且つ効率的に用いることができる。必要に応じて、粗製のグリセロールは、有機化合物の製造に用いるために容易に精製することができる。
“再生可能な原材料から得られるグリセロール”という表現は、特にバイオディーゼルの製造過程中に得られるグリセロール、又は概して植物又は動物由来の脂肪又はオイルの転化中、例えばけん化、トランスエステル化又は加水分解反応中に得られるグリセロールを意味することが意図される。特に好適なグリセロールは、動物脂肪の転化中に得ることができる。別の特に好適なグリセロールは、バイオディーゼルの製造中に得ることができる。
対照的に、合成グリセロールは、一般的に石油化学資源から得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の使用では、グリセロールは粗製生成物又は精製生成物であり得る。グリセロールが粗製生成物のとき、それは、例えば、水及び金属塩、特に好ましくはNaCl及びKClから選択される金属塩素化物を含み得る。金属塩は、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムなどの金属硫酸塩から選択することもできる。粗製生成物はまた、カルボニル化合物などの有機不純物、特にアルデヒド、脂肪酸、又は脂肪酸のエステル、例えば特にモノグリセリド又はジグリセリドも含み得、任意に水及び/又は金属塩素化物と組み合わせて含み得る。
本発明の使用では、粗製生成物は、一般的に少なくとも40質量%のグリセロールを含む。しばしば、粗製生成物は、少なくとも50質量%のグリセロールを含む。好ましくは、少なくとも70質量%のグリセロールを含む。しばしば、粗製生成物は、せいぜい99質量%のグリセロールを含む。典型的には、せいぜい95質量%のグリセロールを含む。
本発明の使用では、粗製生成物は、一般的に少なくとも5質量%の水、又は他の化合物の不存在下で、少なくとも1質量%の水を含む。本発明の使用では、粗製生成物は、一般的にせいぜい50質量%の水、又は他の化合物の不存在下で、せいぜい60質量%の水を含む。しばしば、粗製生成物は、せいぜい30質量%の水、好ましくはせいぜい21質量%の水を含む。
【0008】
別の実施態様では、粗製生成物は、せいぜい89質量%のグリセロールを含む。該実施態様では、粗製生成物は、せいぜい85質量%のグリセロールを含む。該実施態様では、粗製生成物は、一般的に少なくとも10質量%の水を含み、しばしば少なくとも14質量%の水を含む。
適切な場合では、粗製生成物は、一般的に金属塩、特に少なくとも1質量%、好ましくは約3質量%以上の含有率の金属塩素化物を有する。適切な場合では、粗製生成物は、一般的に金属塩、特にせいぜい10質量%、好ましくは約5質量%以下の含有率の金属塩素化物を有する。
【0009】
精製グリセロールを本発明の使用で用いるとき、前記グリセロールは、粗製生成物から出発し、蒸留、エバポレーション、抽出、又は他の濃縮操作に続く、沈殿、濾過又は遠心分離などの分離操作などの1種以上の精製操作を用いて得られる。蒸留操作は、良好な結果を与える。粗製生成物又は精製操作由来の生成物を乾燥する操作を行うこともできる。粗製生成物又は別の精製操作由来の生成物を樹脂と共に処理することを含む精製操作を行うこともできる。該処理の例は、イオン交換樹脂、特にアニオン交換樹脂上のクロマトグラフィー操作である。
【0010】
本発明の使用では、精製生成物は、一般的に少なくとも80質量%のグリセロールを含む。好ましくは少なくとも90質量%のグリセロールを含む。しばしば、精製生成物はせいぜい99.9質量%のグリセロールを含む。せいぜい97質量%のグリセロールを含むことができる。それはまた、せいぜい95質量%のグリセロールを含むこともできる。
本発明の使用では、精製生成物は、一般的に少なくとも0.1質量%の水を含む。本発明の使用では、精製生成物は、一般的にせいぜい20質量%の水を含む。しばしば、精製生成物は、せいぜい10質量%の水を含む。好ましくはせいぜい5質量%の水を含む。特別な態様では、精製生成物は、せいぜい3質量%の水を含む。
本発明の使用の好ましい態様では、精製グリセロール生成物が、一般的にせいぜい0.5質量%のアルデヒドを含む。好ましくはせいぜい0.1質量%のアルデヒドを含む。しばしば、精製グリセロール生成物は、一般的に質量1kg当たり少なくとも1mgのアルデヒドを含む。
例えばエバポレーション工程中に、粗製生成物に存在し得るアルデヒドの含有量を減らすか、又は全て除去するのが特に有利であることが見出された。これは、本発明の使用から着色が抑えられた生成物を得るのを可能にする。
【0011】
本発明の使用の態様では、グリセロールは、好ましくはメタノール及びエタノールから選択される少なくとも1種の他のアルコールを含む。精製生成物におけるアルコール含有率は、例えば、少なくとも10mg/kgでよい。一般的に、この含有率は10質量%以下である。1000mg/kg以下の別のアルコール含有率が好ましい。
本発明の使用は、特に3の倍数の数の炭素原子を含む有機化合物の製造に適用する。第一の好ましい実施態様では、有機化合物は3個の炭素原子を含む。第二の実施態様では、有機化合物は6、9、12、15又は18個の炭素原子、好ましくは6、9又は12個の炭素原子を含む。
本発明の使用はまた、特に好ましくは上記の数の炭素原子を含む酸化有機化合物の製造にも適用する。
本発明の使用は、特に好ましくはジクロロプロパノール及びエピクロロヒドリンなどの塩素化化合物の製造に適用する。驚くべきことに、本発明の使用は、これらの化合物を再生可能な資源から出発して経済的に得ることを可能にする。
【0012】
従って、本発明はまた、本発明の使用を含む、有機化合物の製造方法にも関する。
従って、本発明はまた、特に塩素化有機化合物を製造する方法にも関し、該方法は本発明の使用に基づき再生可能原材料から得られるグリセロールを用い、及び前記グリセロールを少なくとも1種の塩素化剤と接触させる。上記の製造方法はまた、一般的なグリセロールで行うこともでき、再生可能な原材料から得られたグリセロールの好ましい使用に限定されないと理解される。
【0013】
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、塩素化剤は酸化的塩素化又は置換的塩素化用の薬剤でもよい。置換的塩素化用の薬剤が好ましい。
酸化的塩素化用の薬剤の中で挙げられ得るのは、特に塩素である。
置換的塩素化用の薬剤の中で挙げられ得るのは、特に塩素化水素を含む塩素化剤である。
この塩素化剤は、しばしば有機塩素化、脱離又は置換反応、又は他に燃焼反応における副生成物として得られるため、特に有利である。本発明は、この副生成物の市場を維持することができる。
【0014】
第一の態様では、塩素化剤は実質的に無水塩素化水素である。
この態様は、製造が塩素化水素の製造、例えば塩素化ビニル又は4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)(これは副生成物として塩素化水素を提供する)の製造と同じ場所で行われるときに特に有利である。
第二の態様では、塩素化剤が塩化水素の水溶液である。この場合、溶液の塩素化水素含有率は、一般的に少なくとも4質量%である。好ましくは、この含有率は20質量%以上である。この場合、該溶液の塩素化水素含有率は、一般的にせいぜい37質量%である。
この具体的な態様は、塩素化有機化合物の熱分解から誘導された質の低い塩化水素の水溶液、又は金属をストリッピングするために用いられた質の低い塩化水素の水溶液の市場を安定化することができる。
特に、該生成物を合成するための通常の方法では、例えば塩素化アリルの次亜塩素化によるジクロロプロパノールを製造するための方法から生じるジクロロプロパノールが負荷されている塩化水素の水溶液を用いることができる。
【0015】
具体的な態様では、一般的に28〜37質量%の塩素化水素を含む濃塩化水素の水溶液は、塩素化剤の主要な供給源として用いられ、前記濃塩酸は、例えばエバポレーションによって少なくとも2種のフラクションに分離され、その第一のフラクションは本質的に無水塩素化水素からなり、その第二のフラクションは塩素化水素及び水をそれらが共沸混合物を形成する割合で含み、前記共沸混合物は、101.3kPaの圧力において、19〜25%の塩素化水素及び75〜81質量%の水、特に約20質量%の塩素化水素及び約80%の水からなる。
この具体的な態様は、容易に可搬な塩素化剤を用いることができ、同時に、特にグリセロール及び塩素化剤間の反応を複数の工程で行うときに、反応媒体における水含有量の効果的な制御を可能にする。
第三の態様では、塩素化剤は、反応媒体内の現場で、例えば硫酸、リン酸などの有機酸、及びNaCl、KCl又はCaCl2などの好適な金属塩素化物から出発して生成される塩素化水素である。
【0016】
これらの種々の態様は、組み合わされてもよい;従って、例えば、HCl水溶液の供給は、ガス状及び/又は無水のHClの供給によって完了することができる。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、一般的に、反応条件下で塩素化剤、特に塩素化水素に対して耐性のある物質からなるか又は被覆されている反応器で行われる。
好適な物質として挙げられ得るのは、例えばエナメルスチールである。ポリマーを用いてもよい。ポリマーの中では、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、及び特にポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)などのフッ素化ポリマー、及びポリスルホン又はポリスルフィドなどの硫黄を含むポリマーであり、特に芳香族であるものが非常に好適である。
樹脂を用いる被覆剤を、有効に用いることができ、これらの中ではエポキシ樹脂又はフェノール樹脂が特に好適である。
ある種の金属又はその合金も好適となり得る。特に挙げられ得るのは、タンタル、チタン、銅、金及び銀、ニッケル及びモリブデン、特にニッケル及びモリブデンを含む合金である。これらは、塊で用いるか、又は被覆加工の形態で用いてもよく、又は他の任意の被覆方法を用いてもよい。
セラミックス又は金属セラミックス及びさらに耐熱性物質も用いることができる。
ある種の特定の成分、例えば熱交換体としては、含浸されていてもされていなくてもよいグラファイトが特に好適である。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、グリセロール及び塩素化剤間の反応を、触媒の存在下又は不存在下で行ってよい。好ましくは好適な触媒の存在下で反応を行う。
【0017】
この場合、カルボン酸又はカルボン酸誘導体に基づく触媒、例えばカルボン酸無水物、カルボン酸塩素化物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステルが有利に用いられる。触媒におけるカルボン酸は、一般的に1〜20個の炭素原子を含む。好ましくは、1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含む。カルボン酸は、好ましくは4個よりも多い炭素原子を含む。200℃以上、好ましくは220℃以上の大気中沸点を有する酸又は酸誘導体が非常に好適である。一般的に、酸又は酸誘導体は、反応温度で反応媒体に可溶性である。好ましくは、この酸又は酸誘導体は、水と共沸混合物を形成しない。
【0018】
25℃における触媒、特に酸又は酸誘導体のヘンリー定数は、一般的に10-6atm.m3.mol-1以下、好ましくは10-8atm.m3.mol-1以下である。この態様は、特に水及び製造された塩素化有機化合物を取り除くことができ、同時に反応媒体における全ての触媒を実質的に維持し、所望の生成物へのグリセロールの特に優れた転化を得ることができる。製造された塩素化有機化合物は、高純度で容易に回収することができる。
触媒の具体例は、任意に置換されている酢酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、脂肪酸及び安息香酸などの芳香族カルボン酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸に基づく。
カルボン酸の別の具体例は、ジ-、トリ-又はテトラカルボン酸などのポリ(カルボン酸)である。ジカルボン酸が好ましい。
【0019】
第一の実施態様では、触媒は酢酸に基づく。
第二の好ましい実施態様では、触媒は置換されている安息香酸に基づく。この実施態様では、芳香族環は、しばしば2-位又は4-位に少なくとも1種の置換基を有する。この置換基は、有利にはニトロ基などの誘起的又は共鳴的捕獲基、又はヒドロキシル基、アルコキシ基、例えばメトキシ基、又は塩素及びフッ素などのハロゲン、又は任意にアルキル化されているアミノ基などの共鳴的供与及び誘起的捕獲基であり、これらの中では特にジ-又はトリアルキルアミノ基である。
触媒の具体例は、サリチル酸、4クロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸及び2,4ジニトロ安息香酸から選択される。
第三の好ましい実施態様では、触媒は脂肪酸に基づく。好ましい例は、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン(カプリル)酸、ラウリン酸、デカン酸又はそれらの混合物から選択される。オクタン(カプリル)酸は、該酸の特に好ましい例である。
第四の好ましい実施態様では、触媒はポリ(カルボン酸)に基づく。好ましい例は、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸から選択される。アジピン酸が好ましい。
【0020】
純粋な触媒又は精製された触媒を、そのような反応器か、又は例えばグリセロール又は塩化水素の水溶液などの反応物の1種の溶液、又は例えば水、グリセロールモノクロロヒドリン及びジクロロプロパノールから選択される適切な溶媒に導入することができる。触媒の添加は、連続的又は不連続的な方法で行うことができる。
反応媒体における触媒濃度は、適当に最適化され、反応媒体の体積を最小化することができる。“触媒濃度”という表現は、酸及びその誘導体(例えばエステル)の濃度を表すことを意図する。触媒濃度は、液体反応媒体1kg当たりの酸及び酸誘導体、特にエステル基のモル数で表される。この濃度は、一般的に0.1mol/kg以上、好ましくは1mol/kg以上、及び最も好ましくは2mol/kg以上である。上記に定義された触媒濃度は、通常10mol/kg以下、特に8mol/kg以下、及びさらに特に4mol/kg以下である。
【0021】
特に、第二、第三、及び第四の好ましい実施態様は、特に反応が連続的に行われるときに良好な収量で所望の生成物を得ることができ、且つこの生成物を反応媒体及び触媒から容易に分離することができる。特に第四の実施態様では、反応終了時に、任意に水との混合物として非常に高純度の塩素化有機化合物を得ることができる。しばしば、前記塩素化有機化合物、特にジクロロプロパノールを、それに続く反応工程、例えばエピクロロヒドリンの製造工程に、事前に精製すること無く導入することができる。
【0022】
本発明の方法では、反応は一般的に少なくとも20℃の温度で行われる。この温度はしばしば少なくとも60℃である。好ましくは少なくとも80℃である。約90℃以上の温度が、さらに特に好ましい。本発明の方法では、反応は一般的にせいぜい160℃で行われる。この温度はしばしばせいぜい140℃である。好ましくはせいぜい120℃である。
別の実施態様では、反応は110℃以上の温度で行われる。この温度は、しばしば115℃以上である。好ましくは約120℃以上である。この実施態様では、反応は一般的にせいぜい160℃の温度で行われる。この温度はしばしばせいぜい140℃である。好ましくは約130℃以下である。
この実施態様は、反応が連続的に行われるときに特に好ましい。
【0023】
さらに別の実施態様では、反応が160℃以上の温度で行われる。この温度はしばしば170℃以上である。好ましくは約180℃以上である。この実施態様では、反応は一般的にせいぜい300℃の温度で行われる。
本発明の方法では、反応は一般的に少なくとも0.3barの圧力で行われる。反応は、しばしば少なくとも0.5barの圧力で行われる。この圧力は好ましくは約1bar(大気圧)以上である。本発明の方法では、反応は一般的にせいぜい100barの圧力で行われる。この圧力はしばしばせいぜい20barである。好ましくはせいぜい15bar、及び最も好ましくはせいぜい10barである。
【0024】
特に塩素化水素を塩素化剤として用いるとき、塩素化有機化合物を製造するための方法における反応生成物は十分に安定であり、高い反応圧力及び高い反応温度の組み合わせを可能にし、それによって装置の容積を減少させることができる。
本発明の方法の好ましい第一の態様では、反応が、上記のようにわずかな減圧下で行われる。これにより、水が形成するか、又は反応進行に応じて反応媒体から水を除去するこ とができる。
本発明の方法の第二の好ましい態様では、反応は上記のように増加した圧力下で行われる。これは、特に反応器におけるHClの高い濃度を、適切なときには保持し、それによって反応速度を増加させることができる。
本発明の方法は、好ましくは液相で行われる。
【0025】
連続的な方法では、反応物の体積の流量に対する反応器における液体媒体の体積の比である滞留時間は、一般的に1時間以上である。有利には、滞留時間は5時間以上である。連続的な方法では、反応物の体積による流量に対する反応器における液体媒体の体積の比である滞留時間は、一般的に50時間以下である。良好な結果は、上記のような2〜4時間の滞留時間でも得られる。
滞留時間は、それとは別にグリセロールの体積の流量に対する反応器における液体媒体の体積の比として定義することもできる。この場合、滞留時間は一般的に1時間以上、好ましくは5時間以上である。有利には、滞留時間は10時間以上である。この場合、グリセロールの体積による流量に対する反応器における液体媒体の体積の比として定義される滞留時間は、一般的に100時間以下、好ましくは50時間以下、及び最も好ましくは30時間以下である。約20時間以下の滞留時間が特によく適する。
バッチ方法では、滞留時間は一般的に1〜20時間である。
【0026】
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、少なくともジクロロプロパノールが塩素化有機化合物として好ましくは得られる。
“ジクロロプロパノール”という用語は、一般的に本質的に1,3-ジクロロプロパン-2-オール及び2,3-ジクロロプロパン-1-オールからなる異性体の混合物を意味することを意図する。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、驚くべきことに1,3-ジクロロプロパン-2-オールの高い選択性が得られ、この異性体はエピクロロヒドリンを製造する目的の脱塩素化水素反応のための出発生成物として特に好適である。本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法のこの態様では、反応媒体が一般的に10〜95質量%のジクロロプロパノールを含む。好ましくは50〜90質量%のジクロロプロパノールを含む。
【0027】
連続的な方法において特に好ましい一つの態様では、液体反応媒体が、液体反応媒体の全質量に対して1〜10質量%のジクロロプロパノールを含む。
連続的な方法において特に好ましい別の態様では、液体反応媒体が、液体反応媒体の全質量に対して10〜50質量%のジクロロプロパノールを含む。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法では、反応媒体が一般的に1〜50質量%の水を含む。しばしば、1〜15質量%の水を含む。好ましくはせいぜい10質量%の水を含む。約5質量%以下の水含有率がさらに特に好ましい。
具体的態様では、本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、液体反応媒体の全質量に対して1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水分濃度が保持される液体反応媒体で連続的に行われる。この具体的態様では、本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法は、液体反応媒体の全質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下の水分濃度が保持される液体反応媒体で連続的に行われる。8質量%以下の水分濃度を保持することも可能である。
【0028】
第一の態様では、塩素化有機化合物を製造するための方法が、塩素化有機溶媒、適当なアルコール、ケトン、エステル又はエーテルなどの少なくとも1種の有機溶媒の存在下で行われる。
グリセロール及び塩素化水素から出発してクロロジヒドロキシプロパン及びジクロロプロパノールを合成する際に製造される重質化合物の量は、グリセロール及び種々の反応生成物と混和性である非水性溶媒を用いて著しく減少させることができる。該非反応性溶媒の特別な例は、ジクロロプロパノール、ジオキサン、フェノール及びクレゾールである。クロロジヒドロキシプロパンはまた、ジクロロプロパノールを製造するためのグリセロールの希釈剤としても好適である。該溶媒の混合物も好適であり、クロロジヒドロキシプロパン及びジクロロプロパノールの混合物がグリセロールから出発するジクロロプロパノールの製造に特に好ましい。溶媒の効果は、反応媒体におけるグリセロール含有率が反応媒体の全質量に対して50質量%以下である場合に特に有利であり、この濃度が30%よりも少ない場合に特に良好である。有利には10質量%よりも少ない。
この態様では、反応媒体における溶媒含有率が、一般的に10〜95質量%、好ましくは30〜80質量%である。
【0029】
第二の態様では、塩素化有機化合物を製造するための方法が、反応の重質副生成物を含むか又はそれからなる有機溶媒の存在下で行われる。“反応の重質副生成物”により、例えば少なくとも部分的に塩素化及び/又はエステル化され得るグリセロールオリゴマーを意味することが意図される。重質副生成物と少なくとも上記のようなさらなる有機溶媒との混合物が特に好適である。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法の別の態様では、反応媒体の蒸気ストリッピング、特に蒸気ストリッピングが行われる。この場合、1〜5、あるときは2〜3、及び好ましくは1.5〜2.5mol/lの塩素化有機化合物、特にジクロロプロパノールを含むフラクションを得ることができる。この態様では、ストリッピングされた混合物が、主に水及びジクロロプロパノールからなる。
【0030】
好ましい態様では、少なくとも水及び塩素化有機化合物、特にジクロロプロパノールを含むフラクションの連続的又は周期的引き抜きが行われる。前記フラクションは、塩素化水素も含み得る。好ましくは、フラクションはその構成物形態として連続的に引き抜かれる。その後、得られたフラクションを沈殿による分離操作に付すことができる。
反応が連続的に行われ、反応からの少なくとも水及び塩素化有機化合物を含むフラクションの連続的又は周期的な引き抜きが行われるときに好ましい具体的態様では、反応媒体に水、特に蒸気が供給される。この供給は、適当な供給パイプから生じる外来の水、又は任意に別の反応又は操作ユニットから回収される残りの水で行うことができる。
この供給は、一般的に上記の範囲内の反応媒体における水の濃度を保持するような方法で行われる。
【0031】
連続的又は周期的引き抜きを含む態様は、反応媒体から出発して引き抜かれる気相を蒸留工程に導入すること、特に液体反応媒体と平衡な気相を引き抜いて及び蒸留工程に導入することによって行うことができる。適切な場合では、この態様は、好適な蒸留カラムが搭載されている反応器で行うことができる。この態様は、塩化水素の水溶液を塩素化剤として用いるときに特に好適である。蒸留カラムを反応器から分離して配置することもでき、残った液体を反応媒体に送り戻すことができる。この態様は、塩素化水素、例えばガス状又は本質的に無水な塩素化水素を塩素化剤として用いるときに特に好適である。
この態様では、反応物、特に塩素化水素及びグリセロールの供給速度、触媒供給速度、温度、反応容積及び圧力などの反応器の操作条件は、好ましくは蒸留に供給される混合物における塩素化水素の濃度が、反応圧力において二成分共沸塩素化水素-水混合物における塩素化水素の濃度よりも低いままであるような方法で調整される。この濃度を調整する効果的な方法は、液体反応媒体への塩素化水素の供給を制御することである。
該方法のこの態様は、好ましくは連続的に行われる。
【0032】
一つの態様では、反応器から分離されている蒸留カラムに導入されるフラクションが、連続的又は周期的、好ましくは連続的に液体反応媒体から引き抜かれ、少なくとも水及び塩素有機化合物が分離される。蒸留工程では、塩素化有機化合物を含むフラクションも分離され得る。さらに、重質副生成物及び特に触媒及び/又は塩素化水素などの有機生成物を含む1種以上のフラクションをこの蒸留工程から分離し、一般的に反応媒体にリサイクルすることもできる。適切な還流比を選択することにより、この特徴における実質的に塩素化水素を含まない少なくとも水を含むフラクションを分離することができる。
“実質的に塩素化水素を含まない”とは、特に水を含むフラクションの全質量に対して、水を含むフラクションにおける10質量%以下の塩素化水素含有率を意味すると理解される。しばしば、この含有率は5質量%以下、及び好ましくは1質量%以下、及びさらに好ましくは0.3質量%以下である。一般的に、“実質的に塩素化水素を含まない”とは、特に水を含むフラクションの全質量に対して1mg/kg以上、しばしば10mg/kg以上の、水を含むフラクションにおける塩素化水素含有率を意味すると理解される。この態様では、反応中に形成された及び/又は反応媒体から反応物と共に導入される水を引き抜くことができ、反応媒体における実質的に全ての塩素化水素及び触媒を保持する。
ジクロロプロパノール、特に1,3-ジクロロプロパン-2-オールは、水及び塩素化水素と擬似共沸混合物を形成する。本発明はまた、この擬似共沸組成物にも関する。
【0033】
基本的に、流体の熱力学的な状態は、4種の相互依存的な変数:圧力(P)、温度(T)、液相の組成(X)及び気相の組成(Y)によって定義される。真の共沸混合物は、2種以上の成分を有する特別なシステムであり、所定の温度及び所定の圧力において、液相Xの組成は気相Yの組成と正確に等しい。擬似共沸混合物は、2種以上の成分を有するシステムであり、所定の温度及び所定の圧力において、XはYと実質的に等しい。実際には、これは、該擬似共沸混合物システムの構成物が蒸留によって容易に分離できないことを意味する。
本発明の目的のために、特に“擬似共沸組成物”によって理解されるのは、エバポレーション操作に付されるとき、50質量%の組成物をエバポレートした後に残りの組成物の蒸気圧が最初の組成物の蒸気圧と10%以下で異なるという特性を有する組成物である。好ましくは、この差は5%以下である。
【0034】
一般的には、本発明の擬似共沸組成物は、43〜63質量%の水、23〜43質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オール及び4〜24質量%の塩素化水素を含む。蒸留によって分離するのが特に困難である特別な擬似共沸組成物はその沸点によって特徴付けられ得、1011mbar下で106℃である。この温度及び圧力では、それは53質量%の水、33質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オール及び14%の塩素化水素からなる。この共沸組成物は、約40℃よりも低い温度、又はさらに25℃以下の温度において、高密度な有機相及びより軽い水相に分離するのが観察された。有機相は、大量の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを、例えば有機相の全質量の少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%で含み、及び有機相はさらに水及び塩素化水素を含む。水相は、水、塩素化水素及び少量の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを、例えば水相の全質量のせいぜい50質量%、好ましくはせいぜい30質量%を含む。デカンテーションの操作は、ジクロロプロパノールを含む有機相を水相から分離するのを可能にし、後者は蒸留の還流にリサイクルされる。
【0035】
水-塩素化水素-ジクロロプロパノール3要素組成物の液体-蒸気平衡特性の利用(exploitation)が、製造反応から、特にジクロロプロパノール及び水を含む反応生成物を引き抜くことができ、同時に大部分の触媒及び反応物(塩素化水素を含む)が反応器にリサイクルされるのを可能にすることが見出された。
好ましい実施態様では、反応媒体のフラクションの分離が、蒸留工程によって行われ、この蒸留工程に供給される物質の集合は、蒸留の圧力において二成分共沸組成物塩素化水素/水における塩素化水素濃度よりも低い塩素化水素濃度を有する。
従って、本発明はまた、少なくとも水、ジクロロプロパン及び塩素化水素を含む混合物の分離のための方法にも関し、該混合物は蒸留工程で分離され、前記蒸留工程に供給される物質の集合は、蒸留の圧力において塩素化水素/水の二成分共沸組成物における塩素化水素濃度よりも低い塩素化水素濃度を有する。
【0036】
例えば、水を加えることによって蒸留工程に供給される物質の集合における塩素化水素含有率を制御することができる。該添加は、例えば蒸留工程に用いられる蒸留カラムのボイラーへの蒸気の注入、又は例えば蒸留カラムの頂部から引き抜かれるフラクションのデカンテーションによって得ることができる水相の蒸留工程にリサイクルすることによって行うことができる。
最大限に好適な塩素化水素濃度は、操作圧力がより高いときは、Bonner及びTitus(J. Amer. Chem. Soc. 52, 633 (1930))によって出版され、以下の表に部分的に転載されている共沸塩素化水素のための液体-蒸気平衡データに従ってわずかに減少する。
【0037】
【表1】


【0038】
このような条件では、水を含有し、上記のように塩素化水素を実質的に含まないフラクションを、蒸留によって、反応混合物又は液体反応混合物上にある気相から、例えば、前記気相から引き抜かれる物質を蒸留し、及び水を含むフラクションを好ましくは蒸留カラムの頂部で得ることによって、回収することができる。
例えば、大気圧(101.3kPa)では、反応媒体と接触している気相における塩素化水素濃度が約20.22質量%よりも低い場合に、反応器の気相の蒸留によって、23質量%のジクロロプロパノールを含む水及びジクロロプロパノールの二成分共沸混合物を得ることができる。
水を含むフラクションの引き抜きによってジクロロプロパノールが反応媒体から完全には引き抜かれないときは、少なくともジクロロプロパノールを含む反応媒体のフラクションを回収することができる。
本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法のこの態様では、50〜95質量%のジクロロプロパノール及びせいぜい50質量%の水を含む少なくとも1種のフラクションが、一般的には回収される。好ましくは、このフラクションは、75〜99.9質量%、しばしば75〜99質量%のジクロロプロパノール、及び0.01〜25質量%、しばしば1〜25質量%の水を含む。
【0039】
回収は、好ましくは蒸留又はエバポレーションによって行われる。この工程中に得られ、例えばモノクロロプロパンジオール及び、任意に、グリセロール及び触媒を含む他のフラクションは、塩素化剤との反応にリサイクルすることができる。反応の重質副生成物、例えば上記のようなもの、特に塩素化ポリグリセロールを含む少なくとも1種のフラクションを分離することもでき、これらは破壊され得るか、又は任意に例えば脱塩素化によるポリグリセロールを製造するための方法に用いられ得る。
蒸留又はエバポレーションは、一般的に少なくとも20℃の温度で行われる。この温度は、しばしば少なくとも60℃である。好ましくは少なくとも70℃である。蒸留又はエバポレーションは、一般的にせいぜい180℃の温度で行われる。この温度は好ましくはせいぜい140℃である。
蒸留又はエバポレーションは、一般的に0.001barよりも高い圧力で行われる。この圧力は好ましくは約0.003bar以上である。蒸留又はエバポレーションは一般的にせいぜい1barの圧力で行われる。この圧力はしばしばせいぜい0.5barである。好ましくはせいぜい0.2barである。
【0040】
蒸留又はエバポレーション操作は、蒸留カラムを用いるか、又はエバポレーター、フィルムエバポレーター又はそれとは別にワイパーによる薄膜エバポレーター(wiped thin film evaporator)を用いるかのいずれかによって行うことができる。残渣の回収可能なフラクションは、内部又は外部コンデンサーを有するワイパーによる薄膜エバポレーターによって有利にそこから分離することができる。
【0041】
特別な態様では、ジクロロプロパノールは:
(a)グリセロールを塩素化剤と接触させ、少なくともクロロプロパンジオールを含む生成物のフラクションを得る第一反応工程;
(b)任意に該生成物のフラクションの少なくとも一部を乾燥操作に付し;
(c)任意に乾燥された生成物のフラクションの少なくとも一部を、少なくとも一部のクロロプロパンジオールが塩素化剤と反応する第二反応工程に導入すること、
を含む方法によって製造される。
この態様における工程(a)及び(c)は、好ましくは本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法として上記されている条件下で行われる。しかし、水の存在下、反応媒体の全質量に対して好ましくは20〜80質量%の範囲の濃度で、工程(a)の反応を行うのが好ましい。
工程(b)は、例えば、工程(a)又は(c)の反応器の少なくとも1種におけるストリッピング操作によるか、又は反応器外部にあるリサイクルパイプに設置されているエバポレーターを用いることによって行うことができる。別の好ましい態様では、水が膜技術によって除去される。
本発明の有機化合物、特にジクロロプロパノールを製造するための方法は、例えばカスケード反応器、少なくとも1種のプレートカラム又は少なくとも1種のバブルカラム、又はそのような反応器の集合で行うことができる。
【0042】
反応器は、内部攪拌を用いるか、又は反応器の外部にあるリサイクルパイプを用いるかのいずれかによって攪拌されるタイプのものが有効となり得る。
本発明の方法では、反応媒体が加熱されるとき、加熱は、例えばジャケットを用いるか又は内部熱交換機を用いて得ることができる。加熱はまた、反応器の外部にあるリサイクルパイプにおける熱交換機を用いても得ることができる。任意に、加熱は、反応器の外部にあるリサイクルパイプ上のジャケット及び熱交換機の組み合わせ使用によって得られる。
特に、本発明の方法が連続的又は供給バッチ様式で操作されるとき、二次的反応は、反応器における低揮発性の副生成物、中でも多かれ少なかれ塩素化グリセロールオリゴマーの増加を導き得る。この増加は、反応媒体の容積の進行性の増加を導き得、反応器の連続的又は不連続的なパージを必要とし、適切な水準の容積を保持する。
【0043】
適切な場合、該パージ操作中に除去される触媒量は、純粋な触媒又は精製された触媒の当量の導入によって補うことができる。
反応混合物からのパージに含まれている触媒は、経済的に精製処理後に反応器にリサイクルすることができる。例えば、水における低い溶解度を有する触媒を、酸加水分解処理に付すことができ、好ましくは30℃よりも高い温度、好ましくは少なくとも50℃の温度で行われ、それに続いて例えばデカンテーション、濾過又は抽出による分離工程が行われる。アジピン酸の場合、パージの酸加水分解は、冷却及び濾過の後に、良好な収率で高い純度の結晶化アジピン酸の回収を導くことが見出された。
無水HClを用いるときは、グリセロールを含む液流を、HClの流れに対向させるのが好ましい。該方法がいくつかの反応器で行われるとき、HClは有利には、例えば好適な固体、例えばモレキュラーシーブ上での吸着か、又は好適な膜による逆浸透によって、2の反応器間で乾燥される。
【0044】
本発明の方法のこの具体的な実施態様は、特に経済的に、しばしばジクロロプロパノールの全質量に対して90質量%以上のジクロロプロパノール含有率を有する濃縮ジクロロプロパノールを得ることができる。このアプローチによって、主要な異性体として1,3-ジクロロプロパン-2-オールを80%よりも高い異性体純度で得ることができる。
本発明の具体的な実施態様では、ジクロロプロパノールが本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法で得られたときに、このジクロロプロパノールの一部を、少なくとも1種の他のアルコールの存在下、さらに特にポリオール、例えばビスフェノールAの存在下で脱塩素化水素操作に付し、“エポキシ”樹脂又はそれらの有用なモノマーを得ることができる。本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法の主要な異性体、1,3 ジクロロプロパノールは、このようにして得られたポリマー又はモノマーの直鎖構造を保つことができるため、この操作に特に好適である。これは、現在の工業的方法によって主要な生成物として得られる2,3-異性体の場合ではない。
【0045】
本発明はまた、有機化合物、例えば特にエピクロロヒドリン又はエポキシ樹脂を製造するための出発生成物としての、全ジクロロプロパノールに対して少なくとも50質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを含むジクロロプロパノールの使用にも関する。この場合、1,3-ジクロロプロパン-2-オール含有率は、しばしば全ジクロロプロパノールに対して75質量%以上である。好ましくは、この含有率は80質量%以上である。良好な結果が、全ジクロロプロパノールに対して、せいぜい約99質量%又はさらにせいぜい約95質量%の1,3-ジクロロプロパン-2-オールを含むジクロロプロパノールで得られた。本質的に1,3-ジクロロプロパン-2-オールからなるジクロロプロパノールを使用することもできる。
具体的な実施態様では、ジクロロプロパノールが本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法で得られるとき、このジクロロプロパノールの少なくとも一部は、好ましくはその後に脱塩素化水素反応に付されてエピクロロヒドリンを得る。
【0046】
一般的に例えば塩素化アリルから出発して用いられるエピクロロヒドリンを製造するための方法は、塩素化有機不純物、例えばトリクロロプロパン、トリクロロプロペン、ジクロロプロペン又は2-クロロプロプ-2-エン-1-オールなどを含むエピクロロヒドリンを製造し、該不純物は、エピクロロヒドリンがある量でエポキシ樹脂に使用されるときに欠点を有する。このタイプの不純物は、適切な場合に、本発明で得られたエピクロロヒドリンにおいて大きく減少した濃度で存在する。従って、本発明の方法は、より少ない厄介な不純物を含む高度に純粋なエピクロロヒドリンを製造することができる。
特に、エピクロロヒドリンは、99.5質量%以上の純度を示し得る。
【0047】
本発明の主要な生成物として得られ得る1,3-ジクロロプロパン-2-オールは、脱塩素化水素反応、特に塩基性脱塩素化水素における反応性を有することが注目されており、これは現在の工業的方法によって主要な生成物として得られるその2,3-ジクロロプロパン-1-オール異性体よりも大きいからである。この特徴は、合成媒体における反応物の滞留時間を減少させることにより、脱塩素化水素操作の選択性を改善することができる。
さらに、本発明の方法は、エピクロロヒドリン製造の水性流出液の容積を減少させ、さらに有機塩素化副生成物、例えば塩素化エーテルなどのこれらの流出液における含有率を最小化することができる。
【0048】
1,3-ジクロロプロパン-2-オールは、驚くべきことにエピクロロヒドリンと比較的に非反応性であり、エピクロロヒドリンの合成中に大量の有機塩素化副生成物の形成を生じない。
エピクロロヒドリン合成において、特に上記の1,3-ジクロロプロパン-2-オール含有率を有する精製された1,3-ジクロロプロパン-2-オールの使用は、塩素化不純物の形成を劇的に減少させることにより、製造流出液の質をさらに改善することができる。
具体的な実施態様では、エピクロロヒドリンが、水性反応媒体において、全供給量に対して1〜30質量%のジクロロプロパノールの供給で製造される。
好ましい別の実施態様では、本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法の反応媒体は、全供給量に対して、30〜90質量%のジクロロプロパノールが供給される。後者の態様では、反応媒体はしばしば、60〜90質量%、好ましくは65〜80質量%のジクロロプロパノールが供給される。有利には、全供給量に対して30〜65質量%のジクロロプロパノールの供給を行うこともできる。
この実施態様は、特に該方法の水廃棄物をかなり減らすことができる。
【0049】
本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法の別の具体的な態様では、ジクロロプロパノールが、塩基に対して化学量論的又は準化学量論的な量で用いられる。この場合、当量のジクロロプロパノール当たり少なくとも1当量の塩基が、一般的に用いられる。当量のジクロロプロパノール当たり少なくとも1.5当量の塩基が、しばしば用いられる。この場合、当量のジクロロプロパノール当たりせいぜい5当量の塩基が、一般的に用いられる。
本発明のエピクロロヒドリンを製造するためのさらに別の具体的な態様では、ジクロロプロパノールが塩基に対して過剰に用いることで、収率を改善することができる。この場合、当量の塩基当たり少なくとも1.1当量のジクロロプロパノールが、一般的に用いられる。当量の塩基当たり少なくとも1.5当量のジクロロプロパノールが、しばしば用いられる。当量の塩基当たり少なくとも2当量のジクロロプロパノールが、好ましく用いられる。この場合、当量の塩基当たりせいぜい5当量のジクロロプロパノールが一般的に用いられる。
【0050】
本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法に供給される他の反応物は、好ましくは水溶液、特に好ましくはNaOH、Ca(OH)2及び精製された苛性塩水から選択される少なくとも1種の塩基の濃縮溶液から選択される。“精製された苛性塩水”という表現は、電気分解方法に基づく隔膜によって製造されるなどのNaClを含み得る苛性ソーダを意味することが意図される。溶液又はスラリーにおける塩基含有率は、この場合、一般的に少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%及び最も好ましくは約20質量%以上である。この含有率は、一般的に60質量%以下である。約50質量%の含有率が、非常に好適である。
該供給はまた、ケトン又はエーテル、例えばメチルエチルケトンなどの有機溶媒を含み得る。
一回の供給、又は、好ましくは、例えば2又は3回の供給点を有する段階的な供給を、行うことができる。
この反応実施態様における媒体は、単一相媒体か、又は、特に有機溶媒を用いるときは、2相媒体でもよい。
【0051】
具体的な態様では、上記のジクロロプロパノールを製造するための方法から任意に回収される水の少なくとも部分的な供給が行われる。この水は、例えば、塩基性溶液又はスラリーを生成するのに用いることができる。
本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法では、反応は一般的に少なくとも0℃の温度で行われる。この温度はしばしば少なくとも20℃である。好ましくは少なくとも30℃である。本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法では、反応は一般的にせいぜい140℃の温度で行われる。好ましくはせいぜい120℃である。第一の具体的な態様では、温度は25〜50℃である。第二の具体的な態様では、温度は60〜100℃である。
【0052】
本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法では、脱塩素化水素反応の終わりに場合によって存在する水を、例えばエバポレーション又は逆浸透によって少なくとも部分的に回収するのが特に有利である。以下に記載されるこの回収は、他の脱塩素化水素方法、特に塩基性溶液又はスラリーを用いる方法に用いることもできる。
この回収操作によって、塩、特にNaClが豊富な水性フラクション、及び水が豊富なフラクションを得ることができる。塩が豊富なフラクションは、任意に好適な精製工程の後に、例えば塩素を製造するための電気分解プラントで回収し及び用いることができ、又は場合によって存在する有機化合物のその含有率を減らすことを意図する任意な酸化処理に導入され、プラントから除去することができる。エバポレーションを行い、乾燥及び、好ましくは、固体形態で回収された塩を除去することもできる。水が豊富なフラクションは、適切な場合には、有利に本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法に使用するための塩基性水溶液又はスラリーを製造するために用いることができる。
具体的な特徴では、塩、特にNaClは、脱塩素化水素操作中に、5を超えない量、しばしば2を超えない量、好ましくは1.2を超えない量であるが、一般的に製造されるエピクロロヒドリン1モル当たり少なくとも1モルのNaClが除去又は回収される。NaClはしばしば脱塩素化水素工程中に実質的にもっぱら除去される。
【0053】
本発明はまた、ポリグリセロールを製造するための方法であって、再生可能な原材料から得られるグリセロールを、本発明の使用に基づき、出発生成物として用い、及び前記グリセロールを好ましくは塩基の存在下で少なくとも1種の縮合剤又はエピクロロヒドリンと接触させる方法にも関する。後者の反応に好適な条件は、本出願人名義の米国特許第4,960,953号明細書及び第5,041,688号明細書に記載されている。
縮合剤は、酸性又は塩基性薬剤でもよい。固体縮合触媒を任意に用いてもよい。
本発明のポリグリセロールを製造するための方法では、上記の本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法から誘導されるエピクロロヒドリンが好ましくは用いられる。
本発明はまた、エポキシ樹脂を製造するための方法であって、上記の本発明のエピクロロヒドリンを製造するための方法から誘導されるエピクロロヒドリンをアルコール及び/又はポリオールと反応させる方法にも関する。エポキシ樹脂の製造は、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5. ed., Vol. A9, p. 547-562に記載されている。
【0054】
本発明はまた、バイオディーゼル及び有機化合物を製造するための方法であって、
(a)植物油をグリセロール以外のアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールとのトランス-エステル化反応に付し、少なくともバイオディーゼル及びグリセロールを含む粗製生成物を回収し;
(b)該粗製生成物を任意に蒸留などの精製操作に付し;
(c)工程(a)で形成されるグリセロールを、本発明の有機化合物を製造するための方法に付す、
方法にも関する。
別の方法では、工程(a)を、植物油を例えば超過大気圧下で水との加水分解反応に付し、少なくとも脂肪酸及びグリセロールを含む粗製生成物の混合物を製造し、及び該脂肪酸混合物のエステル化によってバイオディーゼルを得ることから構成することができる。
【0055】
本発明のバイオディーゼル及び有機化合物を製造するための方法の第一の態様では、少なくとも工程(a)及び(c)が、同一の製造場所で行われる。
本発明のバイオディーゼル及び有機化合物を製造するための方法の第二の態様では、工程(a)及び(c)が、異なる製造場所で行われる。工程(c)は、有利には塩素又は塩素化水素の供給源の近くに位置する。
【0056】
図1は、本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントの具体的な概略図を示している。このプラントは、3つの反応器を含む。第一の反応器(11)にライン(1)を介してグリセロール及び触媒が供給される。この第一の反応器の底の液体をライン(8)を介して第二の反応器に供給し、第二のものをライン(9)を介して第三(13)に供給する。ガス状HClをライン(5)を介して第三の反応器に供給し、後者の脱気を液相でライン(14)を介して第二の反応器に行い、その脱気をライン(15)を介して第一の反応器に供給する。各反応器では、反応によって形成された水を、それが製造され次第反応器の脱気によって除去する。従って、全ての水は、第一の反応器の脱気によって除去される。
特に好ましい温度及び滞留時間は、図1で示すと、反応器(11)では100℃及び3時間、及び反応器(12)では130℃及び8時間、及び反応器(13)では130℃及び8時間である。
【0057】
第一の反応器の脱気はカラム(16)を伴い、その残渣はこの反応器に戻される。酸が除去された水は、カラム(17)の頂部で出る。共沸によって水を伴うジクロロプロパノールは、そこから沈殿によって分離され、ライン(2)を介して第二の反応器にリサイクルされる。
続いて、第三の反応器を出るジクロロプロパノール、触媒及び重質生成物をカラム(18)での蒸留によって分離し、ジクロロプロパノールはライン(7)を介して頂部で引き抜くことができ、触媒及び重質生成物はライン(8)を介して底から引き抜くことができる。カラムは好ましくは0.1barの真空下で機能する。
カラム供給は、フィルター(19)を介して濾過し、粗製グリセロールに場合によって存在する固体粒子を除去することができる。
カラム(18)の重質生成物を、反応器(11)にリサイクルしてもしなくてもよい。
【0058】
図2は、本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントの好ましい具体的な概略図を示している。反応器(20)に連続的又はバッチ様式で、ライン(21)を介してグリセロール及びライン(22)を介して触媒を供給し、無水又は水溶液での塩化水素の供給を連続的又はバッチ様式でライン(23)を介して行う。蒸留カラム(30)にライン(24)を介して反応器(20)から製造された蒸気を供給し、流れをカラム(30)からライン(26)を介して引き抜き、水相及び有機相を分離するデカンター(31)に供給する。分離した水相のフラクションは、任意にライン(27)を介してカラムの頂部にリサイクルし、還流を保持する。ジクロロプロパノールの製造を、ライン(29)を介して引き抜かれる有機相と、ライン(28)を介して引き抜かれる水相との間に配置する。カラム(30)からの残渣は、ライン(25)を介して反応器にリサイクルすることができる。重質副生成物は、反応器の底の液体に位置するパージ(32)によって反応器から任意に除去することができる。
この概略図で得られた結果を、例12に記載する。
該方法のこの態様は、頂部における共沸により、反応から生じるほぼ全ての水を出発物質から除去し及び/又は場合によって反応器又はカラムの底に供給し、且つ2種の異性体の合計が99.5質量%以上の非常に高い純度であるジクロロプロパノールの混合物を、炭化水素鎖および塩素化水素に関する選択率を99質量%よりも高く得ることができる。
【0059】
図3は、本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントのさらに好ましい概略図を示しており、反応器(33)に、連続的又はバッチでライン(41)を介してグリセロール及びライン(42)を介して触媒を供給し、無水又は水溶液での塩化水素の供給を連続的又はバッチ様式でライン(43)を介して行い、蒸留カラム(42)にライン(34)を介して反応器(33)から製造された蒸気を供給し、カラム(42)からの残渣をライン(35)を介して反応器(33)にリサイクルし、反応器の底からのパージをライン(37)を介してストリッパー(44)内に供給し、部分的なストリッピング操作を、例えば加熱により、又は窒素もしくは蒸気によるガスでの吹き飛ばし(gas sweeping)によって行い、流れ(37)からの塩素化水素の大部分を含む気相をライン(38)を介してカラム(42)か、又はライン(45)を介して反応器(33)にリサイクルし、蒸留又はストリッピングカラム(43)にストリッパー(44)から生じる液相をライン(39)を介して供給し、ジクロロプロパノールの主要なフラクションをカラムの頂部からライン(40)を介して集め、及びカラム残渣をライン(41)を介して反応器(33)にリサイクルする。ストリッピングは、窒素又は蒸気又は加熱によって行うことができる。重質副生成物は、任意に反応器の底にある液体に位置するパージ(46)によって反応器から除去することができる。
【0060】
該方法のこの態様は、頂部における共沸により、反応から生じるほぼ全ての水を出発物質から除去し及び/又は場合によって反応器又はカラムの底に供給することができる。前述の概略図によって示された利点に加え、前述の図に関連するこのさらに好ましい概略図は、有限の蒸気消費を可能にする。
【0061】
以下の例は、限定することなく本発明を説明することを意図する。
【実施例】
【0062】
例1
453gのグリセロール(4.92mol)及び29.5gの氷酢酸(0.49mol)の混合物を110℃に加熱して20分間攪拌した。続いて、無水塩素化水素を、5.2mol/時間で2時間、3.8mol/時間で100分及び、最後に、1.3mol/時間で317分にプログラムされた流量でこの混合物に吹き込んだ。全体で、23.6molの塩素化水素を導入した。試験の終わりにおける反応混合物の分析を表1に表す。グリセロールの転化率は99.1%であり、グリセロールに対するグリセロールに関連する重質生成物(ジグリセロール及び塩素化ジグリセロール)に関する選択率は、0.4%である。
【0063】
例2
110gのグリセロール(1.20mol)、257gの1-クロロ-2,3-ジヒドロキシプロパン(2.32mol)及び21gの氷酢酸(0.35mol)を、110℃に加熱して20分間攪拌した。続いて、無水塩素化水素を、4.76mol/時間で26分、2.04mol/時間で71分、0.62mol/時間で4時間及び、最後に、0.3mol/時間で10時間で連続したセットの流量により、この混合物に吹き込んだ。全体では、10.0molの塩素化水素を導入した。試験の終わりにおける反応混合物の分析を、表1に表す。グリセロールの転化率は99.5%であり、重質生成物(ジグリセロール及び塩素化ジグリセロール)に関する選択率は0.03%であった。
【0064】
【表2】


【0065】
例3-7
塩化水素の水溶液、グリセロール、有機酸及びジクロロプロパノールを、一定の流量で、サーモスタットで試験温度に調節された350mLのガラス反応器に導入した。大気圧で機能する反応器をオーバーフローシステムに備え、液体の一定の容積を保持した。気化した反応混合物フラクションを反応器から除去し、大気温度で濃縮した。濃縮物は、2相:主にジクロロプロパノールを含む高密度な有機相、及び未反応の大部分の塩化水素の水溶液を含むより軽い水相に分離した。オーバーフロー出口に集められた液体混合物は、ジクロロプロパノール製造の残部を含んでいた。
例3は、触媒として酢酸を用いる濃塩化水素の水溶液の使用を記載している。用いられる大部分の触媒(55%)は、反応液体からエバポレートされ、濃縮物中で発見される。
例4は、酢酸をカプリル酸で置き換えることによって提供される改善を説明している。前記酸のさらに限られたフラクション(10%)しか、この場合には、反応器から気化されないことがわかった。
例5〜7は、反応温度の効果を示している。最も良い結果は120℃以上で得られた。
【0066】
例8-11
例3〜7に記載されている反応器を改良して蒸留カラムを搭載し、気化される反応媒体フラクションを精留した。塩化水素の水溶液、グリセロール及び触媒のみを一定の流量で反応器に導入した。カラムの還流比を50%に固定した。形成されたジクロロプロパノールの共沸エントレインメントを作り出すのに十分な量の水で希釈した共沸塩酸を用いて得られた結果を、例8〜10について表に詳細に示す。最適な塩化水素の転化及びジクロロプロパノール選択率は、約130℃付近で観察された。蒸留したフラクションの分析は、ジクロロプロパノールの不純物はわずかなカルボン酸しか伴わないことを示す。
例11は、アジピン酸で得られた優れた結果を説明している。
種々の制御パラメーター及びさらに試験3〜11で得られた結果を、表2に詳細に与える。
【0067】
【表3】


【0068】
例12(図2)
反応器(20)にグリセロール及び33質量%の塩化水素の水溶液を、相対的流量質量比1/2.36で連続的に供給した。滞留時間は20時間であり、反応媒体におけるアジピン酸濃度は1kg当たり酸官能性3molとした。反応器を大気圧及び130℃で操作した。55.3%の水、9.1%の塩素化水素、9.4%のジクロロプロパノール及び25.1%のグリセロールモノクロロヒドリンを含む蒸気相が生成された。反応混合物の液相は7.7%の水及び1.24%の塩素化水素を含んだ。カラム(30)から除去される気相を25℃で濃縮し、デカンター(31)でデカントした。還流比をデカンターからの水相の適切な量をリサイクルすることによって調節し、カラム頂部においてジクロロプロパノール全生産物を抜き出した。
デカンターの出口で、15.0%のジクロロプロパノールを含む水相及び88%のジクロロプロパノールを含む有機相を回収した。ジクロロプロパノールの収率は93%であった。両相の分析は、その含有量が0.1%よりも高いいかなる有機混入物も示さなかった。水相の塩化水素の水溶液含有率は0.037%であり、アジピン酸含有率は18mg/kgであった。
【0069】
例13(反応混合物パージからのアジピン酸の精製)
連続的方法からサンプルされた反応混合物(その組成は以下の表に転載される)を加水分解処理に付した。
【0070】
【表4】


【0071】
250gのこのサンプルを、Dean-Starkセパレーターが装着されている丸底フラスコに入れた。共沸塩素化水素(100.2g)及び水(36.26g)をフラスコに加えた。混合物を10時間還流した。該処理後、88%のジクロロプロパノール及び12%の水を含む有機相79.2gが、15%のジクロロプロパノールで飽和した18.1gの水相と共にDean-Starkで得られた。フラスコは284gの混合物を含んでおり、これを100℃で分画した。
加水分解した混合物の第一のフラクション(134.3g)を、攪拌しながら室温まで冷却した。1.5時間後、41.9gの結晶性白色固体を濾過によって単離した。20時間以上たった後、新しい収穫量として6.7gの結晶が第一の濾液から単離された。両固体及び第二の濾液の組成を、新しい表に詳細する。80〜84%の純度のアジピン酸結晶が、回収率87%で得られた。
【0072】
【表5】


【0073】
加水分解された混合物の第二のフラクション(114.7g)を、28.2gの水を加えた後に攪拌しながら室温まで冷却した。1.5時間後、27.7gの結晶性白色固体を濾過によって単離した。20時間以上たった後、新しい収穫量として7gの結晶が第一の濾液から単離された。水による希釈は、より純粋なアジピン酸結晶(純度91-93%)を導くが、全回収率は75%と低くなる。回収された固体は重質副生成物を含まない。
【0074】
【表6】


【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の塩素化有機化合物を製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントの具体的な概略図。
【図2】本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントの具体的な概略図。
【図3】本発明のジクロロプロパノールを製造するための方法を行うのに用いることのできるプラントのさらに好ましい概略図。
【出願人】 【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
【出願日】 平成19年7月9日(2007.7.9)
【代理人】 【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄

【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉


【公開番号】 特開2008−7509(P2008−7509A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2007−180224(P2007−180224)