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【発明の名称】 有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体の製造方法。
【発明者】 【氏名】田口 哲志

【氏名】田中 順三

【氏名】斉藤 浩史

【要約】 【課題】安価に、高収率で有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体を製造すること。

【構成】有機酸又はこれらの誘導体を有機溶媒中において電子吸引基(スクシンイミ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸又はこれらの誘導体をテトラヒドロフラン又はテトラヒドロフランとその他の有機
溶媒の1種又は2種以上の組み合わせによる混合溶媒溶液中において、電子吸引基と、N
,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド存在下、有機酸又はこれらの誘導体の有機溶媒
に対する濃度範囲が、0.5〜2w/v%、反応時間が5〜15分、反応温度が0〜10
℃で反応させることにより有機酸のカルボキシル基を電子吸引基で修飾することを特徴と
する有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、有機酸がクエン酸、リンゴ酸、オキサル酢酸、コハク酸、
2−ケトグルタル酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸又はこれらの誘
導体であることを特徴とする活性エステル体の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、電子吸引基がスクシンイミジル、スルホスクシンイミジル
、マレイミジル、フタルイミジル、イミダゾールイル、ニトロフェニル、トレジル又はこ
れらの誘導体の1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする活性エステル体の
製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、生体用接着剤、止血剤、血管塞栓剤、動脈瘤の封止剤などの医療デバイスへ
の用途が期待されている有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体の製造方法に関する
。詳しくは、有機酸又はこれらの誘導体のカルボキシル基を有機溶媒中、縮合剤の存在下
、電子吸引基と反応させることを特徴とする有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、生分解性高分子の有機溶媒溶液若しくは緩衝溶液又は緩衝溶液−有機溶
媒混合溶液とクエン酸回路内に存在するジ若しくはトリカルボン酸のカルボキシル基を電
子吸引基によって少なくとも1つ以上修飾した生体低分子誘導体からなる生体内分解吸収
性粘着性医用材料を開発した(特許文献1〜5、非特許文献1〜5)。また、分子構造中
に2以上のリンゴ酸構造単位を有するポリリンゴ酸において、リンゴ酸構造単位のカルボ
キシル基の1つ以上が電子吸引基により反応修飾されている活性化ポリリンゴ酸誘導体を
開発した(特許文献6)。さらに、酒石酸のカルボキシル基を電子吸引基によって少なく
とも1つ以上修飾した酒石酸誘導体を開発した(特許文献7)。その他に電子吸引基を導
入する方法として、ハロゲン化剤を用いた方法が報告されている(特許文献8,9、非特
許文献6〜10)
【0003】
【特許文献1】特開2004−99562号公報
【特許文献2】特開2004−261222号公報
【特許文献3】特開2005−168949号公報
【特許文献4】特開2006−51121号公報
【特許文献5】特開2006−52158
【特許文献6】特開2005−187670号公報
【特許文献7】WO2006/016600 A1
【特許文献8】WO2002/048103 A11
【特許文献9】特開平10−36345号公報
【非特許文献1】Polymer Preprints, Japan 2002, Vol. 51, No.14, p.3728
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan 2003, Vol. 52, No.14, p.4147
【非特許文献3】Polymer Preprints, Japan 2003, Vol. 52, No.14, p.4140
【非特許文献4】Materials Science and Engineering C 24 (2004) 775-780
【非特許文献5】Materials Science and Engineering C 24 (2004) 781-785
【非特許文献6】Izv. Akad. Nauk SSSR, Ser. Khim, 5, (1984) 1163-1165
【非特許文献7】Izk. Akad. Nauk SSSR, Ser. Khim, 11 (1988) 2579-2580
【非特許文献8】Tetrahedron Letters 21 (1980) 1467-1468
【非特許文献9】Chemical Abstructs 95 203746
【非特許文献10】Journal of Organic Chemistry 47 (1982) 2985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性エステル体を製造する従来の方法は、有機溶媒としてジメチルホルムアミド、ジメ
チルスルホキシド、縮合剤として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カル
ボジイミド・塩酸塩(EDCI)を使用しており、特に活性エステルを精製する際に有機溶媒
の除去が困難であった。また、副生成物であるEDCIウレアと活性エステル体との分離が困
難であるという問題もあり、精製工程が長くなることから、収率も約40%程度が限界で
あり、コストがかかることから、安価で高収率の製造方法が求められていた。さらに、ハ
ロゲン化剤を用いた方法は、比較的安価な方法ではあるが、非常に毒性の高いチオニルク
ロライド、ハロゲンリン酸エステルを用いなくてはならず、爆発性の危険がある反応系で
あるという問題が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく検討を重ねた結果、活性エステルからの溶媒除
去を容易にするため有機溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、縮合剤として1−エチ
ル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDCI)と比較して安
価なN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用い、テトラヒドロフランに
対し溶解性が低いDCCウレアを副生成物とし、結晶として析出させることにより、活性エ
ステルからの分離を容易にした。さらに、溶媒中の出発物質の濃度を小さくするとともに
反応温度を低くすることにより、DCCウレアの生成量を抑制し、DCCウレアによる収率低下
を抑え、しかも,短時間の反応時間で高い収率の有機酸又はこれらの誘導体の活性エステ
ル体を得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、有機酸又はこれらの誘導体をテトラヒドロフラン又はテトラヒド
ロフランとその他の有機溶媒の1種又は2種以上の組み合わせによる混合溶媒溶液中にお
いて、電子吸引基と、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド存在下、有機酸又はこ
れらの誘導体の有機溶媒に対する濃度範囲が、0.5〜2w/v%、反応時間が5〜15
分、反応温度が0〜10℃で反応させることにより有機酸のカルボキシル基を電子吸引基
で修飾することを特徴とする有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体の製造方法であ
る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により,安価に、理論収量を100とした百分率で75%程度以上の高収
率で有機酸又はこれらの誘導体の活性エステル体を合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法における活性エステル体の出発物質としては、有機酸又はこれらの誘導体
を用いる。有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、オキサル酢酸、コハク酸、2−ケトグ
ルタル酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、酒石酸が挙げられる。また、これ
らの誘導体としては、上記有機酸の官能基に親水性基、疎水性基、保護基を導入した誘導
体であり、具体的には、ポリエチレングリコール(分子量によらない)、脂質(分子量に
よらない)、リン脂質(分子量によらない)、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェ
ニル基等が挙げられる。
【0009】
本発明におけるエステル体は、電子吸引基であるスクシンイミジル、スルホスクシンイ
ミジル、マレイミジル、フタルイミジル、イミダゾールイル、ニトロフェニル、トレジル
又はこれらの誘導体の1種又は2種以上の組み合わせを前記の出発物質と反応させ、出発
物質のカルボキシル基を電子吸引基により修飾することによって合成したものである。電
子吸引基の誘導体としては、上記電子吸引基にスルホン酸基、リン酸基、水酸基等の官能
基を修飾したものが挙げられる。また、2種以上の電子吸引基の組み合わせを選択するこ
とによって、出発物質の1分子内に反応性の異なる電子吸引基を導入することにより、縮
合反応時間又は架橋反応時間の制御が可能である。
【0010】
すなわち、本発明における活性エステル体は、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロフ
ランとその他の有機溶媒の1種又は2種以上の組み合わせによる混合溶媒に対して、有機
酸及びこれらの誘導体を0.5〜2w/v%、及び電子吸引基となる分子、例えば、N−
ヒドロキシスクシンイミドを該溶媒に対して2〜8w/v%程度、縮合剤であるN,N‘
−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を該溶媒に対して3〜15w/v%程度加え
、反応温度0〜10℃、反応時間5〜15分の適宜の条件を選択し、反応させることによ
って活性エステル体と反応副生成物であるDCCウレアが沈殿生成する。
【0011】
テトラヒドロフランと組み合わせるその他の有機溶媒としては、塩化メチレン、ジメチ
ルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジエチルエーテルが挙げられ、
混合割合は、テトラヒドロフランに対し0.01〜10v/v%程度が好ましい。また、
反応温度0〜10℃の範囲で、より低い温度の方が生成物の収率が大きくなるので、0〜
5℃がより好ましい。上記の合成条件を外れると、電子吸引基の導入が不十分となり、ま
た、析出してくる反応副生成物であるDCCウレアによる活性エステル体の取り込みによ
る合成収率低下の原因となる。
【0012】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明する。なお、ここで用いた試
薬類のメーカーグレードは、いずれも1級レベルに相当するものである。また、反応容器
は、反応溶媒量により、100〜5000L容量のナスフラスコを適宜使用し、冷却は、
氷冷にて行い、攪拌は、マグネチックスターラーを使用し、攪拌速度1200rpmにて
行った。
【実施例1】
【0013】
<クエン酸の活性エステル体の合成>
クエン酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、1w/v%、N−ヒドロキシスクシンイ
ミドを5w/v%、縮合剤としてN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を
5w/v%加え、0℃にてそれぞれ5、15、30、60分間攪拌し、クエン酸の活性エ
ステル体を合成した。
【実施例2】
【0014】
<リンゴ酸の活性エステル体の合成>
リンゴ酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、1w/v%、N−ヒドロキシスクシンイ
ミドを3w/v%、縮合剤としてN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を
4w/v%加え、0℃にてそれぞれ5、15、30、60分間攪拌し、リンゴ酸の活性エ
ステル体を合成した。
【実施例3】
【0015】
<酒石酸の活性エステル体の合成>
酒石酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、1w/v%、N−ヒドロキシスクシンイミ
ドを2w/v%、縮合剤としてN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を3
w/v%加え、0℃にてそれぞれ5、15、30、60分間攪拌し、酒石酸の活性エステ
ル体を合成した。
【0016】
実施例1、2、3に従い、反応時間をそれぞれ5、15、30、60分として反応させ
得られるクエン酸の活性エステル体、リンゴ酸の活性エステル体、酒石酸の活性エステル
体の合成収率の比較を行った。合成収率は、理論収量を100として百分率にて計算した
。図1は、各活性エステル体の合成収率の結果である。反応時間が15分程度で収率は約
75%程度まで上昇するが、それを超えると活性エステル体の合成収率が低下することが
分かる。クエン酸、リンゴ酸、酒石酸の各活性エステル体を高収率で合成するには、反応
時間を5〜15分とすることが好ましいことが分かる。
【0017】
[比較例1]
<酒石酸の初期濃度による影響について>
酒石酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、5w/v%、N−ヒドロキシスクシンイミ
ドを2w/v%、縮合剤としてN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を3
w/v%加え、0℃にて攪拌し、酒石酸の活性エステル体を合成した。
【0018】
[比較例2]
<反応温度による影響について>
酒石酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、1w/v%、N−ヒドロキシスクシンイミ
ドを2w/v%、縮合剤としてN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を3
w/v%加え、20℃にて攪拌し、酒石酸の活性エステル体を合成した。
【0019】
[比較例3]
<縮合剤による影響について>
酒石酸をテトラヒドロフラン溶媒に対して、1w/v%、N−ヒドロキシスクシンイミ
ドを2w/v%、縮合剤として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボ
ジイミド・塩酸塩を3w/v%加え、0℃にて攪拌し、酒石酸の活性エステル体を合成し
た。
【0020】
比較例1、2、3および実施例3にしたがい得られる酒石酸の活性エステル体の合成収
率を表1に示す。なお、反応時間はすべて15分にて行った合成収率を示す。
【0021】
【表1】



【0022】
表1より、有機酸の初期濃度の範囲、反応温度、縮合剤の種類が本発明の合成条件を外
れると合成収率が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の製造方法によれば、生体用接着剤、止血剤、血管塞栓剤、動脈瘤の封止剤など
の医療デバイスとして有用な有機酸誘導体を高収率で得ることができ、安定供給に寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1〜3におけるクエン酸の活性エステル体、リンゴ酸の活性エステル体、酒石酸の活性エステル体の反応時間による収率変化を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】593183366
【氏名又は名称】フルウチ化学株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之


【公開番号】 特開2008−7425(P2008−7425A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177110(P2006−177110)