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【発明の名称】 安定な結晶構造を有するベンゾオキサジン化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】ワンヨイケ ジョージ ナガ

【氏名】張 恵蘭

【氏名】石津 澄人

【氏名】田中 健次

【要約】 【課題】残留溶媒の少ない安定な結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩を収率良く製造する方法を提供する。

【構成】(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドを炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールに溶解した溶液と、塩化水素の炭素数1〜5のアルコール溶液とを混合し、得られた混合液から(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩の結晶を析出させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドと塩化水素とを反応させて、Cu−Kα線を用いたX線回折により2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークを示す結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩を製造する方法において、
(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドを炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールに溶解した溶液と、塩化水素の炭素数1〜5のアルコール溶液とを混合し、得られた混合液から前記結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩を析出させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合において最終的に得られる混合液のアルコール溶媒中における炭素数4〜5のアルコールの割合を60質量%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合において最終的に得られる前記混合液のアルコール溶媒中に不純物として含まれる水の量を該溶媒の総質量を基準として5質量%以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたセロトニン−3受容体拮抗作用を有し、シスプラチン等の抗悪性腫瘍剤投与による嘔吐などを抑制する制吐剤または慢性胃炎や過敏性腸炎症候群などの消化器系疾患の治療剤として有用な、安定な結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩(以下、単に化合物Aともいう)は、優れたセロトニン−3受容体拮抗作用を有し、シスプラチン等の抗悪性腫瘍剤投与による嘔吐などを抑制する制吐剤または慢性胃炎や過敏性腸炎症候群などの消化器系疾患の治療剤として有用な化合物である(特許文献1参照)。
【0003】
該化合物Aは、多形を示す化合物であり、複数の結晶構造が存在する。化合物Aについてこれまで知られている結晶構造の中でも、Cu−Kα線を用いたX線回折により2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークを示す結晶構造(以下、単にI型結晶構造ともいう。)は、他の結晶構造が雰囲気の温度や湿度の影響を受けて変化するのに対し、これらの影響を受け難い安定な結晶構造であることがあることが知られている。化合物Aを医薬品として取り扱う場合、とりわけ製剤過程では、その結晶構造が安定していることが望ましく、I型結晶構造を有する化合物Aは医薬品用途において好適に使用されている。
【0004】
I型結晶構造を有する化合物Aを製造する方法としては、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド(以下、単に化合物A前駆体ともいう)の含水エタノール懸濁液に塩酸を加えるか、或いは化合物Aを含水エタノールに溶解させることにより調製した化合物Aの含水エタノール溶解液のpHを希塩酸または希アルカリにより3.8〜4.2としてから多量のエタノールを加え、40〜50℃(種晶を用いる場合には30〜40℃)で化合物Aの結晶を析出させる方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平02−28182号公報
【特許文献2】特許第3726291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、前記特許文献2に開示されている方法で、I型結晶構造を有する化合物Aを製造したところ、その収率は80〜90%であり、必ずしも高いとは言えないことが判明した。該方法では、含水エタノールを使用しているため、化合物Aの一部が水に溶解することにより、収率が低下しているものと考えられる。含水エタノールを使用せずに、化合物Aのエタノールから化合物Aを析出させた場合には、I型結晶構造の化合物Aは得られるものの、前記特許文献2の参考例1及び2に示されるように、このとき得られる結晶には5質量%程度のエタノール(このエタノールは通常の乾燥操作では除去することができないものである)が含まれてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、残留溶媒の少ない、安定なI型結晶構造を有する化合物Aを高収率で製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドと塩化水素とを反応させて、Cu−Kα線を用いたX線回折により2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークを示す結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩を製造する方法において、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドを炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールに溶解した溶液と、塩化水素の炭素数1〜5のアルコール溶液とを混合し、得られた混合液から前記結晶構造を有する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩を析出させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、残留溶媒の少ない、安定なI型結晶構造を有する化合物Aを、たとえば95%以上といった高い収率で製造することができる。また、本発明の方法では、I型結晶構造を有する化合物Aを得るに際し、pH調製をする必要がなく、更には、結晶を析出させるときの温度を厳密に管理する必要もない。このように、本発明の方法は、目的物の収率の高さ、工程の少なさ及び工程管理の容易さの点で、I型結晶構造を有する化合物Aを製造する方法として、工業的に優れた方法であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法では、化合物A前駆体を炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールに溶解した溶液(化合物前駆体A溶液ともいう)と、塩化水素の炭素数1〜5のアルコール溶液(塩化水素溶液ともいう)とを混合し、得られた混合液からI型結晶構造を有する化合物Aを析出させることにより該結晶構造を有する化合物Aを製造する。結晶が析出する母液となる上記混合液には化合物Aを溶解する水が殆ど含まれないので、反応により生成した化合物Aを効率よく析出させることができる。しかも上記混合液の溶媒の主成分は、化合物Aに取り込まれにくい炭素数4〜5のアルコールであるため、析出した結晶に残留する溶媒量も極めて少ないものとなる。
【0011】
本発明で、化合物A前駆体として使用する(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミドとしては、たとえば前記特許文献1(特開平2−28182号公報)に記載された方法で製造されたものが好適に使用できる。すなわち、6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボン酸クロリドを、3−アミノキヌクリジンおよびN−メチルモリホリンを含むクロロホルム溶液に冷却撹拌下に添加することにより反応を行った後、反応液を水、重曹水、及び水で順次洗浄してから乾燥し、次いで溶媒を減圧留去し、得られた残さをエタノール・イソプロピルエーテルから再結晶することにより得られたものが好適に使用できる。
【0012】
化合物前駆体A溶液の溶媒としては炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールを使用する必要がある。炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%未満である炭素数1〜5のアルコールを用いた場合には、結晶中に残留する溶媒量が無視できないレベルとなる。また、炭素数6以上のアルコールを用いた場合には、粘度が高いために取り扱い難いだけでなく、毒性の観点から医薬用途の化合物の製造に用いることは好ましくない。残留溶媒の量が少ないという観点から、化合物前駆体A溶液の溶媒としては炭素数4〜5のアルコール濃度が70質量%以上である炭素数1〜5のアルコール、特に炭素数4〜5のアルコール100質量%からなるアルコールを使用するのが好ましい。
【0013】
化合物前駆体A溶液の溶媒として使用する炭素数4〜5のアルコールとしては、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノ−ル、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、及び2,2−ジメチル−1−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に使用される。これらの中でも、毒性が低いという理由から、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール及び3−メチル−1−ブタノールからなる群より少なくとも1種を使用するのが特に好適である。また、効果、価格及び工業的に入手しやすいという理由から1−ブタノールを使用するのが最も好ましい。また、炭素数1〜3のアルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、1−ブロピルアルコール、又は2−プロピルアルコールが使用できる。これらアルコールに関しては、効果の点から、水を含有していないことが好ましく、不純物として含まれる水の量は5質量%以下、特に3質量%以下であることが好ましい。
【0014】
化合物前駆体A溶液における炭素数4〜5のアルコール濃度が50質量%以上である炭素数1〜5のアルコールの使用量は、化合物前駆体Aを充分に溶解する量であれば特に限定されないが、通常は化合物前駆体A1gに対して0.5〜100ml使用される。釜収量を増加させるという理由から、化合物前駆体A1gに対して1〜50ml使用するのが好ましい。
【0015】
塩化水素溶液の溶媒としては炭素数1〜5のアルコールを使用する必要がある。炭素数6以上のアルコールを用いた場合には、粘度が高いために取り扱い難いだけでなく、毒性の観点から医薬用途の化合物の製造に用いることは好ましくない。炭素数1〜5のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−ブロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノ−ル、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノールなどが使用できる。これらの中でも、毒性が低く、沸点が低く塩中に残留しにくいといった点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール及び3−メチル−1−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用するのが好ましい。また、塩に残留する溶媒量がより少なく、使用する原料の種類を少なくするという観点からは、化合物前駆体A溶液の溶媒として使用したアルコールと同種のアルコールを使用することが好ましい。
【0016】
塩化水素溶液としては、所定濃度のものが市販されており、それを使用することもできるが、次のような方法により調製したものを使用してもよい。すなわち、塩化水素ガス導入管を備えた容器に溶媒となるアルコールを所定量仕込み、冷却した後に、所定量の塩化水素ガスをゆっくりバブリングさせることにより調製したものを使用することもできる。塩化水素溶液中の塩化水素の濃度は、塩化水素ガスの溶媒への溶解度にもよるが、通常は0.01〜10mol/l(該単位における分母の「l」はリットルの意である。以下同じ。)の範囲である。塩化水素の濃度は、使用する塩化水素溶液に関係し、これと混合する化合物前駆体A溶液の濃度や溶媒種類にもよるが、得られる効果の高さの観点から、塩化水素溶液中の塩化水素の濃度は、0.02〜8mol/lの範囲とするのが好適である。
【0017】
本発明の製造方法において、化合物前駆体A溶液と塩化水素溶液とを混合する方法は特に限定されず、化合物前駆体A溶液に塩化水素溶液を添加しても、塩化水素溶液に化合物前駆体A溶液を添加してもよい。化合物前駆体Aと塩化水素はほぼ定量的に反応するので、両溶液を混合するに際しては、使用する化合物前駆体A溶液に含まれる化合物前駆体A1molに対して、使用する塩化水素溶液に含まれる塩化水素が0.8〜2.0mol、特に0.9〜1.5molとなるように両溶液量を調整して混合するのが好ましい。両液を混合するときの温度は特に限定されるものではなく、−10〜50℃、好ましくは−5〜45℃の範囲の範囲から適宜選定すればよい。温度調整の手間を省くという観点からは、室温と同じ温度に保たれた両液を混合するのが好ましい。両液を混合すると反応熱により液温が上昇するが、温度は液の添加速度を制御することにより制御可能である。また、特に必要は認められないが、加熱又は冷却することにより反応温度制御することも勿論可能である。
【0018】
なお、前記混合においては、化合物A中に残存する溶媒量をより少なくするという観点から、最終的に得られる混合液のアルコール溶媒中における炭素数4〜5のアルコールの割合を60質量%以上、特に70質量%以上とすることが好ましい。炭素数4〜5のアルコールの割合をこのような範囲に調製するためには、化合物前駆体A溶液の濃度を薄くして相対的に混合溶液の溶媒に占める化合物前駆体A溶液の溶媒の割合を高くするか、或いは塩化水素溶液の溶媒として炭素数4〜5のアルコールを使用すればよい。
【0019】
また、化合物Aの収率をより高くする観点から、前記混合において最終的に得られる混合液のアルコール溶媒中に不純物として含まれる水の量を該溶媒の総質量を基準として5質量%以下、特に3質量%以下とすることが好ましい。通常、試薬や工業薬品として入手可能なアルコールに含まれる水の量は上記上限値に比べてはるかに低いので、特に脱水処理を施す必要はなく、作業環境から水が混入しないようにしさえすればよい。
【0020】
両液を混合すると反応が進行し、化合物Aが生成し、生成した化合物AはI型結晶構造を有する結晶として析出してくる。両液の混合が終了してから、1〜5時間撹拌を続けると、生成した化合物Aのほぼ全量が析出するので、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥など、通常の乾燥方法により乾燥することにより化合物Aを高収率で単離することができる。このようにして単離された化合物Aは、安定なI型結晶構造を有するばかりでなく、残存する溶媒量0.7質量%以下と少ないものである。なお、I型結晶構造を有することは、Cu−Kα線を用いたX線回折測定を行った場合に、2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークを示すことで確認することができる。上記2θは測定装置や測定条件により±0.3°の範囲で変動することがあるが、変動する場合には3ピークともほぼ同じ変動幅で同一方向(+側もしくは−側)に変動するので、各ピーク間の差をみることにより、ピークの同定は容易に行うことができる。
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0022】
実施例1
ガラス製容器中に(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド2gを仕込み、1−ブタノールを25ml加え、溶解させることにより化合物A前駆体溶液を調製した。室温(25℃)と同温に保たれた化合物A前駆体溶液に、濃度1.25mol/lの塩化水素メタノール溶液6.4ml(化合物A前駆体1molに対して1.4molの塩化水素を含む)を、室温、撹拌下でゆっくり滴下し、反応を行った。その時、混合液の温度は35℃まで上昇した。塩化水素溶液の滴下が終了してから2時間撹拌を続けた後、析出した(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩(化合物A)の結晶をろ別して回収し、回収された結晶を60℃、0.67kPaの条件下で12時間乾燥させた。乾燥後の塩(乾燥塩)の質量を測定したところ、2.10g(収率95.1%)であった。この塩についてガスクロマトグラフィー(以下、GCと称す)で残留溶媒量を分析したところ、メタノールの含有量は1620質量ppm(0.1620質量%)であり、1−ブタノールの含有量は3710質量ppm(0.3710質量%)であった。さらに、該乾燥塩についてCu−Kα線を用いた粉末X線回折(以下、XRDと称す)を測定おこなった。そのときの結果を図1に示す。図1に示されるように2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークがみられたことから該塩はI型結晶構造を有することが確認された。
【0023】
実施例2
塩化水素溶液として濃度2mol/lの塩化水素エタノール溶液6.4ml(化合物A前駆体1molに対して1.4molの塩化水素を含む)を使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.15g(収率97.3%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、エタノールの含有量は1430質量ppm(0.1430質量%)であり、1−ブタノールの含有量は3305質量ppm(0.3305質量%)であった。また該乾燥塩についてXRDを測定おこなったところ、2θ=15.8°、16.5°、及び20.6°に特徴的なピークがみられ、該乾燥塩はI型結晶構造を有することが確認された。
【0024】
実施例3
塩化水素溶液として濃度1mol/lの塩化水素2−ブタノール溶液12.8ml(化合物A前駆体1molに対して1.4molの塩化水素を含む)を使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.15g(収率97.3%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、2−ブタノールの含有量は2940質量ppm(0.2940質量%)であり、1−ブタノールの含有量は3220質量ppm(0.3220質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【0025】
実施例4
塩化水素溶液として濃度1mol/lの塩化水素1−ペンタノール溶液12.8ml(化合物A前駆体1molに対して1.4molの塩化水素を含む)を使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.11g(収率95.5%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、1−ペンタノール3110ppm(0.3110質量%)であり、1−ブタノールの含有量は2005質量ppm(0.2005質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【0026】
実施例5
化合物A前駆体溶液の溶媒として1−ペンタノール溶液25mlを使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.12g(収率96.0%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、1−ペンタノール3720ppm(0.3720質量%)であり、メタノールの含有量は1405質量ppm(0.1405質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【0027】
実施例6
化合物A前駆体溶液の溶媒にエタノールを5ml(3.95g)含む1−ブタノール25ml(1−ブタノール16.2g)使用する他は実施例2と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.13g(収率96.5%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、エタノールの含有量は1640質量ppm(0.164質量%)であり、1−ブタノールの含有量は2190質量ppm(0.219質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【0028】
実施例7
化合物A前駆体溶液の溶媒に水0.5mlを含む1−ブタノール25ml使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.08g(収率94.3%)を得、収率が低いことが分かった。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、メタノールの含有量は1550質量ppm(0.155質量%)であり、1−ブタノールの含有量は2280質量ppm(0.228質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することが確認した。
【0029】
比較例1
ガラス製容器中に(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド10.5gを仕込み、50質量%の含水エタノール21mlに懸濁し、濃塩酸3g加え、溶解させた。得られた溶液に0.1mol/lの塩酸を加えて、pHを約4に調整後、エタノール105mlを加えて40〜50℃で結晶を析出させ、冷却し、ろ別回収し、60℃、0.67kPaの条件下で12時間乾燥させ、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩9.62gを得た。このときの収率は、83.1%であり、実施例と比べて低かった。得られた乾燥塩について、GCで残留溶媒量を分析すると、エタノール1320質量ppm(0.132質量%)であった。XRDを測定すると、図1と同様な結果となり、I型結晶であると分かった。
【0030】
比較例2
ガラス製容器中に(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド5gを仕込み、エタノール21mlに懸濁し、50℃で溶解させ、化合物A前駆体溶液を調製した。この溶液に2mol/lの塩化水素エタノール溶液9.6mlを加えて結晶を析出させ、2時間攪拌後、氷冷し、ろ別回収し、60℃、0.67kPaの条件下で12時間乾燥させ、(±)−6−クロロ−3,4−ジヒドロ−4−メチル−3−オキソ−N−(3−キヌクリジニル)−2H−1,4−ベンゾオキサジン−8−カルボキサミド塩酸塩5.31g(収率96.2%)を得た。得られた乾燥塩について、GCで残留溶媒量を分析すると、エタノール49010質量ppm(4.901質量%)であり、エタノールの残留量が高いことが分かった。XRDを測定すると、図1と同様な結果となり、I型結晶であると分かった。
【0031】
比較例3
化合物A前駆体溶液の溶媒に1−ブタノールを2ml含むエタノール25ml使用する他は実施例2と同様にして、化合物Aの乾燥結晶2.12g(収率96.0%)を得た。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、エタノールの含有量は17900質量ppm(1.79質量%)であり、1−ブタノールの含有量は3600質量ppm(0.36質量%)であり、エタノール残留量が高いことが分かった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【0032】
比較例4
化合物A前駆体溶液の溶媒に水3mlを含む1−ブタノール25ml使用する他は実施例1と同様にして、化合物Aの乾燥結晶1.97gを得た。このときの収率は89.2%であり、実施例よりも低収率であった。得られた乾燥塩についてGCで残留溶媒量を分析したところ、メタノールの含有量は1650質量ppm(0.165質量%)であり、1−ブタノールの含有量は2780質量ppm(0.278質量%)であった。また、該乾燥塩についてXRDを測定おこない、該乾燥塩がI型結晶構造を有することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本図は、実施例1で得られた化合物AのXRD測定結果を示すチャートである。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−7418(P2008−7418A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176360(P2006−176360)