トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学

【発明の名称】 光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法およびジアステレオマー塩
【発明者】 【氏名】布村 茂樹

【氏名】秋本 太一

【氏名】渡谷 哲朗

【氏名】高橋 幸男

【氏名】藤井 功

【要約】 【課題】本発明の課題は、(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸から光学分割法により、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸を製造する方法およびジアステレオマー塩に関する。

【解決手段】少なくとも(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸と光学活性erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールを含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒に溶解する工程、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸・erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を含むジアステレオマー塩を析出させる工程、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩をアンモニアにより複分解する工程を有することを特徴とする光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸と光学活性erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールを含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒に溶解する工程、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸・erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を含むジアステレオマー塩を析出させる工程、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩をアンモニアにより複分解する工程を有することを特徴とする光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
【請求項2】
前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部が、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンであることを特徴とする請求項1に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
【請求項3】
前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部がメチオニンであることを特徴とする請求項2に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
【請求項4】
前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部がロイシンであることを特徴とする請求項2に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
【請求項5】
アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンのN−ベンジルオキシカルボニル誘導体およびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有するジアステレオマー塩。
【請求項6】
光学活性N−ベンジルオキシカルボニルメチオニンおよびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有することを特徴とする請求項5に記載のジアステレオマー塩。
【請求項7】
光学活性N−ベンジルオキシカルボニルロイシンおよびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有することを特徴とする請求項5に記載のジアステレオマー塩。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸から光学分割法により、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸を製造する方法およびジアステレオマー塩に関する。特に、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンなどのラセミ体アミノ酸を光学分割し、効率的に高純度の光学活性体を取り出す製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸(以後の説明に於いて、「N−Cbz−アミノ酸」と略記する場合がある。)の製造法としては、光学活性アミノ酸をCbz化する方法と(±)−N−Cbz−アミノ酸の光学分割法に大別される。
光学分割法によるN−Cbz−アミノ酸の製造法としては、従来種々の方法が開示されている。例えば、光学分割剤としてエフェドリンなどの天然物アルカロイドを用いる方法が開示されているが(例えば、非特許文献1、2参照。)、これらの天然物アルカロイドは高価であり、且つ毒性が強いため一般的製造方法ではない。1−フェニルエチルアミンによるイソロイシンの光学分割が開示されているが(例えば、非特許文献3参照。)、実用的に満足できる光学純度を持つジアステレオマー塩を得るために、再結晶を複数回必要とし、また収率も低下することから工業的製法として効率的とは言い難い。
一方、天然には存在しないアミノ酸であるtert−ブチル−ロイシンより誘導した(±)−N−Cbz−ロイシンを光学分割剤としてエリスロ−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールを用いて光学分割する製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ラセミ体基質に対して、光学分割剤を等モル必要としており、光学分割剤が回収再利用されるとしてもロス分が発生するので、高価な光学分割剤のロスによるコスト上昇が避けられない。また、側鎖に疎水性で嵩高いtert−ブチル基を有するアミノ酸であるのでジアスレオマー塩の生成、析出分離が可能であって、この製造方法をこのような置換基を有しない天然物構造のアミノ酸の光学分割に適用してもジアステレオマー塩の分離、および光学活性N−Cbz−アミノ酸を実用的に満足できる光学純度、および高い収率を期待できるとは言い難い。
また、(±)−N−Cbz−ピペコリン酸については、光学分割剤として活性アラルキルアミンを用いて光学分割する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この分割方法はN−Cbz−ピペコリン酸についてのみ適用されるものであって、カルボン酸の位置異性体であるニペコチン酸あるいは他のラセミアミノ酸への適用は記載がない。
ジアステレオマー塩法による光学分割法は、操作が簡便な上、特別な設備が不要で実験室レベルから工業的生産までの移行が容易に行なえる特徴を有するが、アラニンおよびロイシンなどのラセミアミノ酸より光学活性体を高い光学純度で且つ高い収率で製造する製造方法が求められた。そのためにはジアステレオマー塩を安定にかつ高い光学純度で分離析出させることが必要であり、また、光学分割剤をロス無く高い回収率で回収し再使用率を高めることが工業的生産性のために必要であり、さらなる改良が求められた。
【特許文献1】特開平11−43475号公報
【特許文献2】特開平9−67344号公報
【非特許文献1】Tetrahedron Letter,p.3813−3816(1978)
【非特許文献2】Bulletin of Chemical Society Japan,Vol.43,p.2554−2558(1970)
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry,Vol.40,p.2635−2637(1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸から光学分割法により、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸を製造する方法およびジアステレオマー塩に関する。特に、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンなどのラセミアミノ酸を光学分割し、効率的に高純度の光学活性体を取り出す製造方法、およびこれらのジアステレオマー塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは光学活性(±)−N−Cbz−アミノ酸の実用的製造方法について研究を重ねた結果、西郷らにより開発され、比較的安価に入手可能で、またベンゾインから容易に合成可能な塩基性光学分割剤であるエリスロ−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール[Tetrahedron Lett.,Vol.24,p.511,(1983)]と、基質である(±)−N−Cbz−アミノ酸とのジアステレオマー塩を反応溶媒組成の改良により高い純度で効率良く生成させることにより、広範囲な(±)−N−Cbz−アミノ酸の光学分割に適応できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
本発明はこの結果に鑑みてなされたものであって、具体的には下記の手段により達成された。
【0005】
<1> 少なくとも(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸と光学活性erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノールを含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒に溶解する工程、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸・erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を含むジアステレオマー塩を析出させる工程、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩をアンモニアにより複分解する工程を有することを特徴とする光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
<2> 前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部が、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンであることを特徴とする<1>に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
<3> 前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部がメチオニンであることを特徴とする<2>に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
<4> 前記(±)−N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸におけるアミノ酸部がロイシンであることを特徴とする<2>に記載の光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸の製造方法。
<5> アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンのN−ベンジルオキシカルボニル誘導体およびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有するジアステレオマー塩。
<6> 光学活性N−ベンジルオキシカルボニルメチオニンおよびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有する<5>に記載のジアステレオマー塩。
<7> 光学活性N−ベンジルオキシカルボニルロイシンおよびerythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を構成成分として有する<5>に記載のジアステレオマー塩。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、(±)−N−Cbz−アミノ酸から光学分割法により、光学活性N−N−Cbz−アミノ酸を製造する方法およびジアステレオマー塩が提供される。特に、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンなどのラセミアミノ酸を光学分割し、効率的に高純度の光学活性体を取り出す製造方法、およびこれらのジアステレオマー塩を提供することができる。さらに、本発明によれば、溶媒組成の選択により、同一の光学分割剤を用いても(+)−N−Cbz−アミノ酸および(−)−N−Cbz−アミノ酸を選択的に得ることができる製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明による光学活性−N−Cbz−アミノ酸の製造方法は、少なくとも(±)−N−Cbz−アミノ酸と光学分割剤として光学活性erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール(以後の説明に於いて「ADPE」と略記することがある。)を含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒に溶解する工程、光学活性N−Cbz−アミノ酸・erythro−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール塩を含むジアステレオマー塩を析出させる工程、該ジアステレオマー塩を分離する工程、及び該分離したジアステレオマー塩をアンモニアにより複分解する工程を有する。
本発明に於ける(±)−N−Cbz−アミノ酸におけるアミノ酸部は、好ましくは、アラニン、ロイシン、ノルロイシン、ニペコチン酸、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンまたはアスパラギンである。特に好ましくは、メチオニンまたはロイシンである。
好ましくは、(±)−N−Cbz−アミノ酸に対し光学分割剤ADPEを10:1〜1:10、より好ましくは2:1のモル比で加え加熱溶解し、その後、冷却することにより、難溶性のジアステレオマー塩を通常の固液分離操作により、もう一方の高い溶解度を有するジアステレオマー塩と分離される。
生成した難溶性のジアステレオマー塩は、さらに適切な溶媒で再結晶により光学精製を行い、固液分離後、乾燥される。
得られたジアステレオマー塩にアンモニア水を作用させ、複分解することにより光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸と光学分割剤ADPEを分離し、光学活性N−ベンジルオキシカルボニルアミノ酸を溶媒相に溶解し、光学分割剤ADPEを析出させる。
不溶分として遊離した光学分割剤ADPEはほぼ定量的に回収される。得られたADPEは、再利用に供される。
得られた塩基性水溶液を有機酸で酸性に調節して、有機溶剤で抽出後、溶媒を減圧留去することにより、光学活性−N−Cbz−アミノ酸が得られる。
【0008】
本発明によれば、側鎖にtert−ブチル基などの疎水性で嵩高い基を有さないラセミアミノ酸のジアスレオマー塩の生成、析出分離が可能であって、ジアステレオマー塩および光学活性N−Cbz−アミノ酸を実用的に満足できる光学純度、および高い収率で得ることが出来る。難溶性ジアステレオマー塩から、目的の光学活性N−Cbz−アミノ酸への複分解も高収率であり、光学分割剤ADPEを、殆ど定量的に、かつラセミ化することなく回収で再使用可能である。このように経済的かつ省資源の見地からも、本方法は有効であり工業的規模での応用が可能である。
【0009】
本発明において、(±)−N−Cbz−アミノ酸および光学分割剤ADPEは、含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒に溶解され、加熱溶解後、冷却することにより光学活性N−Cbz−アミノ酸・ADPE塩を含む光学活性ジアステレオマー塩が析出される。光学純度および収率をの高める上で含水アルコールもしくは含水ケトン溶媒におけるアルコールまたはケトンの種類および含水率の選択が重要である。溶媒は光学分割剤、(±)−N−Cbz−アミノ酸に対して安定で、双方を溶解させると同時に、光学活性N−Cbz−アミノ酸、光学分割剤から成るジアステレオマー塩の一方が難溶性分として析出し、ジアステレオマー塩を形成していないもう一方の光学異性体を溶解しうる溶媒が操作上好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が好ましく用いられ、メタノールが特に好ましい。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましく用いられ、特にアセトンが好ましい。
また、アルコール類又はケトン類をそれぞれ2種混合して用いてもアルコール類とケトン類を2種混合して用いても良い。含水率は好ましくは、1質量%以上、飽和含水量以下の範囲で、より好ましくは3質量%〜15質量%である。含水率がこの範囲より少ないと、光学分割が不十分になり、光学活性N−Cbz−アミノ酸の純度が低下するので好ましくない。また、含水率がこの範囲より越えると結晶の生成が阻害されて光学純度が低下するなどの点で好ましくない。
【0010】
溶媒の使用量は、光学分割剤ADPEおよび(±)−N−Cbz−アミノ酸が溶解し、必要とするジアステレオマー塩が析出し、塩を形成していないもう一方の光学異性体は溶解している範囲が望ましく、通常(±)−N−Cbz−アミノ酸に対して1〜50重量倍の範囲である。塩基性分割剤と(±)−N−Cbz−アミノ酸の溶解温度は溶媒の融点から沸点の範囲である。
【0011】
例えば、含水メタノールを使用した場合には、混合物を60℃〜70℃で加熱溶解後、0℃〜30℃まで冷却して、析出した結晶を分離することによりジアステレオマー塩が得られる。目的とする光学活性N−Cbz−アミノ酸の光学純度が低い場合は、ジアステレオマー塩を再結晶することにより精製可能である。(±)−N−Cbz−アミノ酸と光学分割剤ADPEとの混合比は10:1〜1:5で、好ましくは5:1〜1:2、最も好ましくは約2:1であり、これは(±)−N−Cbz−アミノ酸中における不溶性ジアステレオマー塩を形成する一方の光学異性体に対し等モルである。本発明の製造方法では、先に説明した特許技術文献1におけるよりも光学分割剤ADPEを少ない比率で十分に光学分割できる。例えば±)−N−Cbz−アミノ酸が1:1の光学異性体の混合物である場合、光学分割剤ADPEを0.5モル用いることにより選択的に一方の光学活性体の分割することが出来る。
【0012】
本発明に於いて、ジアステレオマー塩から光学活性N−Cbz−アミノ酸の単離は、アンモニアの添加による。該ジアステレオマー塩溶液にアンモニアガスもしくはアンモニア水溶液を添加し、複分解により光学活性N−Cbz−アミノ酸を遊離させる。用いられるアンモニア水はアンモニア含量が1質量%〜30質量%が好ましい。本発明に於けるアンモニア添加量は、ジアステレオマー塩に対して1倍モル〜5倍モルが好ましい。アンモニア添加量がこの範囲より少ないと、複分解が不十分になり、光学活性N−Cbz−アミノ酸の収率が低下するので好ましくない。また、アンモニア添加量がこの範囲より越えると、抽出効率が低下するなどの点で好ましくない。
【0013】
不溶分として遊離した光学分割剤ADPEを回収される。回収した光学分割剤ADPEは、分解、ラセミ化することなく、再度光学分割に用いることが可能である。
【0014】
複分解した溶液より光学活性−N−Cbzアミノ酸を遊離させる酸はCbz基に対し安定であるならば、どのような酸を用いてもよい。すなわち塩酸、硫酸に代表される鉱酸類、酢酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、又は酒石酸に代表される有機カルボン酸が利用できるが、クエン酸、シュウ酸の使用が好ましい。
【0015】
光学活性−N−Cbz−アミノ酸を抽出する溶媒は、Cbz−アミノ酸に対して不活性な溶媒であれば特に制限無く使用できる。すなわちメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、トルエン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、t−ブチルメチルエーテル、又はシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が利用できる。
【0016】
(本発明の用途)
本発明の製造方法によって得られる光学活性なN−Cbz−アミノ酸は、医薬品分野において、キラルビルディングブロックおよびペプチドの合成原料として幅広い利用が期待される。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0018】
始めに、本発明における光学純度分析法およびジアステレオマー塩におけるアミノ酸と光学分割剤の結合比の算出方法について説明する。
【0019】
(光学純度分析法)
得られた光学活性−N−Cbz−アミノ酸をトリメチルシリルジアゾメタンヘキサン溶液で対応するメチルエステルとした後、光学活性HPLCカラムにより、その面積比からで光学純度を算出した。
【0020】
<HPLCカラム条件>
カラム:ダイセル化学製キラルパックAD−H 4.6φ×250mm
溶離液:ヘキサン:2−プロパノール=92.5:7.5
溶離液流速:0.5mL/min
検出波長:254nm
カラム温度:室温
【0021】
(結合比算出法)
得られたジアステレオマー塩を過塩素酸酢酸溶液で非水滴定し、N−Cbz−アミノ酸と光学分割剤との結合比を算出した。
【0022】
実施例1
(±)−N−Cbz−メチオニン(50.0g,176mmol)と1S,2R−ADPE(18.8g,88mmol)を5%含水メタノール(560mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−メチオニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:20.5g,収率:46.8%,光学純度98%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−メチオニンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0023】
得られたジアステレオマー塩(20.5g,41.3mmol)を2.5%アンモニア水溶液(250mL)で12h攪拌し、複分解を行い、不溶物を固液分離後乾燥して、1S,2R−ADPEを定量的に回収した。
【0024】
ろ液を0℃〜10℃に冷却して温度を保ちながらシュウ酸(48.0g)を添加し、pH=2〜3へ調整後、ジクロロメタン(500mL)で3回抽出した。有機層を脱イオン水(200mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去してR−N−Cbz−メチオニン(収量11.0g,光学純度98%ee,ジアステレオマー塩からの収率94.0%)を得た。
【0025】
比較例1
(±)−N−Cbz−メチオニン(25.0g,88mmol)と1S,2R−ADPE(9.4g,44mmol)をメタノール(280mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−メチオニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:12.69g,収率:57.9%,光学純度82%ee)。
得られたジアステレオマー塩(3.0g,6.0mmol)をNaOHで複分解処理し、R−N−Cbz−メチオニンを得た(収量1.40g,光学純度82%ee,ジアステレオマー塩からの収率82.4%)。
【0026】
以上の実施例1と比較例1を比較すると、5%含水メタノールを用いてジアステレオマー塩を製造すると、98%という極めて高い光学純度が得られた。それに対して、水を含まないメタノール溶媒を用いた場合、82%という低い光学純度であった。
また、ジアステレオマー塩の複分解によるR−N−Cbz−メチオニンの収率も94.0%という極めて高い収率が得られた。
【0027】
実施例2
(±)−N−Cbz−メチオニン(50.0g,176mmol)と1R,2S−ADPE(18.8g,88mmol)を5%含水メタノール(560mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(S−N−Cbz−メチオニン/1R,2S−ADPE)を得た(収量:19.8g,収率:45.2%,光学純度99%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、S−N−Cbz−メチオニンと1R,2S−ADPEの結合比は1:1であった。
【0028】
得られたジアステレオマー塩(19.8g,39.9mmol)を実施例1と同様な操作で複分解処理し、S−N−Cbz−メチオニンを得た(収量10.7g,光学純度99%ee,ジアステレオマー塩からの収率95.0%)。
【0029】
実施例1と同様に、99%という極めて高い光学純度が得られた。また、ジアステレオマー塩の複分解によるS−N−Cbz−メチオニンの収率も95.0%という極めて高い収率が得られた。
【0030】
実施例3
(±)−N−Cbz−ロイシン(50.0g,188mmol)と1S,2R−ADPE(20.6g,94mmol)を5%含水アセトン(350mL)に50℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ロイシン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:26.3g,収率58.0%,光学純度94%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−ロイシンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0031】
得られたジアステレオマー塩(26.3g,54.3mmol)を実施例1と同様な操作で複分解処理し、R−N−Cbz−ロイシンを得た(収量:13.0g,ジアステレオマー塩からの収率90.0%,光学純度94%ee)。
【0032】
比較例2
(±)−N−Cbz−ロイシン(25.0g,94mmol)と1S,2R−ADPE(10.0g,47mmol)をアセトン(175mL)に50℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ロイシン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:20.4g,収率90.7%,光学純度50%ee)。
【0033】
得られたジアステレオマー塩(3.0g,6.3mmol)を比較例1と同様な操作で処理し、R−N−Cbz−ロイシンを得た(収量:0.92g,ジアステレオマー塩からの収率54.1%,光学純度50%ee)。
【0034】
以上の実施例3と比較例2を比較すると、5%含水アセトンを用いてジアステレオマー塩を製造すると、94%という極めて高い光学純度が得られた。それに対して、水を含まないアセトン溶媒を用いた場合、50%と極めて低い光学純度であった。また、ジアステレオマー塩の複分解によるR−N−Cbz−ロイシンの収率も実施例3では、90.7%という極めて高い収率が得られた。
【0035】
実施例4
(±)−N−Cbz−ロイシン(50.0g,188mmol)と1R,2S−ADPE(20.6g,94mmol)を5%含水アセトン(350mL)に50℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(S−N−Cbz−ロイシン/1R,2S−ADPE)を得た(収量:30.5g,収率66.9%,光学純度99%ee)。非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、S−N−Cbz−ロイシンと1R,2S−ADPEの結合比は1:1であった。
【0036】
得られたジアステレオマー塩(26.3g,54.3mmol)を実施例1と同様な操作で処理し、S−N−Cbz−ロイシンを得た(収量:13.1g,ジアステレオマー塩からの収率91.0%,光学純度99%ee)。光学純度、収率とも極めて高い結果を示した。
【0037】
実施例5
(±)−N−Cbz−アラニン(10.3g,46mmol)、1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を5%含水メタノール(77mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−アラニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:4.9g,収率48%,光学純度70%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−アラニンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0038】
比較例3
(±)−N−Cbz−アラニン(10.3g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)をメタノール(77mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−アラニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:5.0g,収率49%,光学純度62%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−アラニンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0039】
比較例4
(±)−N−Cbz−アラニン(10.3g,46mmol),1R,2S−ADPE(5.0g,23mmol)をメタノール(77mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離乾燥してジアステレオマー塩(S−N−Cbz−アラニン/1R,2S−ADPE)を得た(収量:4.0g,収率40%,光学純度63%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、S−N−Cbz−アラニンと1R,2S−ADPEの結合比は1:1であった。
【0040】
以上の比較例3,4で得られた光学活性N−Cbz−アラニンの純度は、62%、63%と低く、また収率も49%、40%と低かった。
【0041】
以上の実施例5と比較例3,4を比較すると、5%含水メタノールを用いてジアステレオマー塩を製造すると、70%という高い光学純度が得られた。それに対して、水を含まないメタノール溶媒を用いた場合、62%、63%という低い光学純度であった。
【0042】
実施例6
(±)−N−Cbz−ノルロイシン(12.2g, 46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を10%含水アセトン(83mL)に50℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ノルロイシン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:10.4g,収率93%,光学純度54%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−ノルロイシンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
実施例1と同様に複分解により、高収率でR−N−Cbz−ノルロイシンを得た。
【0043】
実施例7
(±)−N−Cbz−アスパラギン(2.5g,9.4mmol),1S,2R−ADPE(1.0g,4.7mmol)を5%含水メタノール(17.5mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー(R−N−Cbz−アスパラギン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:0.65g,収率29%,光学純度74.1%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−アスパラギンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0044】
得られたジアステレオマー塩を実施例1と同様な複分解処理し、R−N−Cbz−アスパラギンを得た。得られたR−N−Cbz−アスパラギンの比旋光度は−4.3°(温度:27℃、溶媒:酢酸、光源:NaLamp、濃度:1.0%w/v)であった。この比旋光度の結果より、光学純度は74.1%eeであった。
【0045】
実施例8
(±)−N−Cbz−プロリン(11.5g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を5%含水メタノール(83mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−プロリン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:10.3g,収率96%,光学純度34%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−プロリンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
実施例1と同様に複分解により、定量的にR−N−Cbz−プロリンを得た。
【0046】
実施例9
(±)−N−Cbz−フェニルアラニン(13.8g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を10%含水アセトン(95mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−フェニルアラニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:10.5g,収率89%,光学純度70%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−フェニルアラニンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0047】
比較例5
(±)−N−Cbz−フェニルアラニン(13.8g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を10%含水酢酸エチル(95mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−フェニルアラニン/1S,2R−ADPE)を得た(収量:11.4g,収率96%,光学純度59%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−フェニルアラニンと1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0048】
以上の実施例9と比較例5を比較すると、10%含水アセトンを用いてジアステレオマー塩を製造すると、70%という比較的高い光学純度が得られた。それに対して、10%含水酢酸エチルを用いた場合、59%という低い光学純度であった。
【0049】
実施例10
(±)−N−Cbz−ニペコチン酸(12.1g, 46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g, 23mmol)を5%含水メタノール(83mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPE)を得た(収量:9.1g,収率82%,光学純度68%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−ニペコチン酸と1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0050】
実施例11
(±)−N−Cbz−ニペコチン酸(12.1g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を5%含水1−プロパノール(83mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPE)を得た(収量:10.9g,収率98%,光学純度58%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−ニペコチン酸と1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0051】
比較例6
(±)−N−Cbz−ニペコチン酸(12.1g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)をメタノール(83mL)に60℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(R−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPE)を得た(収量:4.0g,収率36%,光学純度68%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、R−N−Cbz−ニペコチン酸と1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0052】
比較例7
(±)−N−Cbz−ニペコチン酸(12.1g,46mmol),1S,2R−ADPE(5.0g,23mmol)を1−プロパノール(83mL)に70℃で加熱溶解させた。その溶液を25℃まで一夜冷却し、生じた結晶を分離、乾燥してジアステレオマー塩(S−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPE)を得た(収量:7.6g,収率68%,光学純度45%ee)。
非水滴定でジアステレオアマー塩を分析した結果、S−N−Cbz−ニペコチン酸と1S,2R−ADPEの結合比は1:1であった。
【0053】
また、比較例6で、メタノールを使用した際には、R−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPEが析出するのに対して、1−プロパノールの場合は、S−N−Cbz−ニペコチン酸/1S,2R−ADPEが析出することから、アルコール系溶媒を変えることにより、ジアステレオマー選択性が変化することが判明した。
【0054】
以上の実施例10と比較例6を比較すると、5%含水メタノールを用いてジアステレオマー塩を製造すると、82%収率、68%という比較的高い光学純度が得られた。それに対して、メタノールを用いた場合、36%と低い収率であった。
以上の実施例11と比較例7を比較すると、5%含水1−プロパノールを用いてジアステレオマー塩を製造すると、98%収率、58%の光学純度が得られた。それに対して、1−プロパノールを用いた場合、68%と低い収率で45%という低い光学純度であった。
また、比較例6と比較例7を比較すると、興味深いことにメタノールではR体が主生成物であるのに対して、1−プロパノールでは、S体が主生成物となった。
【0055】
以上の結果を以下の表にまとめる。
【0056】
【表1】


【出願人】 【識別番号】591169386
【氏名又は名称】大東化学株式会社
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
【出願日】 平成19年6月1日(2007.6.1)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−297281(P2008−297281A)
【公開日】 平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願番号】 特願2007−147385(P2007−147385)