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フッ素化カルボン酸類の分解方法 - 特開2008−285449 | j-tokkyo
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【発明の名称】 フッ素化カルボン酸類の分解方法
【発明者】 【氏名】堀 久男

【氏名】忽那 周三

【要約】 【課題】難分解性のフッ素化カルボン酸、その塩類又はその前駆体を安全かつ穏和な条件で分解・無害化できる工業的に極めて有用な分解方法を提供する。

【解決手段】フッ素化カルボン酸、その塩又はその前駆体を、ペルオキソ二硫酸イオンが存在する密閉容器で熱水処理する。熱水温度を好ましくは100℃〜200℃とする。フッ素化カルボン酸は、一般式RCOOH(Rは少なくともフッ素原子を一つ含むアルキル基)であり、これらのアルキル基はフッ素原子の他に水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、アルケニル残基を含んでいてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化カルボン酸、その塩及びその前駆体から選ばれた少なくとも一種のフッ素化カルボン酸類を、ペルオキソ二硫酸イオンが存在する密閉容器中で熱水処理することを特徴とするフッ素化カルボン酸類の分解方法。
【請求項2】
フッ素化カルボン酸が、一般式RCOOH(Rは少なくともフッ素原子を一つ含むアルキル基であり、そのアルキル基はフッ素原子の他に水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、アルケニル基を含んでいてもよい)
で表されることを特徴とする請求項1に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。
【請求項3】
フッ素化カルボン酸の塩が、フッ素化カルボン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。
【請求項4】
フッ素化カルボン酸の前駆体が、フッ素化アルコール、フッ素化アルデヒド、フッ素化カルボン酸ハライドまたはフッ素化カルボン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、環境および人体に悪影響を及ぼすフッ素化カルボン酸類を穏和な反応条件で分解処理し、無害化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素化カルボン酸類は界面活性、光透過性、耐熱性、耐薬品性等で他の材料には見られない優れた性質を持つため様々な用途で利用されてきた。
燃料電池の電解質膜や半導体レジストとしての開発も進んでいる。このように機能性材料として利用されてきた有機フッ素化合物であるが、近年一部の化合物について環境残留性や環境負荷が問題となりつつある。
すなわち、炭素数が7〜11程度のフッ素化カルボン酸の一部には、生体蓄積性が報告されているため、生態系への影響が懸念されている。そのため2002年12月には、それらの中でペルフルオロオクタン酸(C7F15COOH)が化学物質審査規制法における指定化学物質(現在の第二種監視化学物質)となった。
【0003】
これらの廃棄物は水中(廃水)に存在することが多いが、これらをフッ化物イオンまで分解できれば既存の水処理技術(カルシウムイオン添加)により環境無害なフッ化カルシウムにできる。
しかし、フッ素化カルボン酸類は、炭素原子が形成する共有結合のなかで最も強力な炭素―フッ素結合から成り立っているために極めて安定な化学物質であって容易に分解し難い。
1000℃程度の高温で焼却すれば原子レベルまで分解できるものの、高エネルギーを必要とし、発生するフッ化水素ガスが焼却炉材(耐火煉瓦)を損傷させる問題がある。
この焼却法に代わる分解法としては、本発明者らは、先に、金属を還元剤として用いる熱水処理する方法(特許文献1)を提案した。
【0004】
この熱水処理法は、フッ素化カルボン酸類をフッ素化物イオンにまで分解でき、また分解により生じたフッ化物イオンはたとえば環境に無害なフッ化カルシウムとして回収できるといった数多くのメリットを有するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2006−306736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この特許文献1に記載の発明を更に発展飛翔させ、より安全かつより穏和な条件下で難分解性のフッ素化カルボン酸類を分解・無害化できる工業的に極めて有用な分解方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、種々のフッ素化カルボン酸類を特有な試薬と共に水に入れ、密閉してある条件下で加熱すると、該フッ素化カルボン酸類が比較的温和な条件下でフッ化物イオンまで効率的に分解することを見出し、これを基にして本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉フッ素化カルボン酸、その塩及びその前駆体から選ばれた少なくとも一種のフッ素化カルボン酸類を、ペルオキソ二硫酸イオンが存在する密閉容器中で熱水処理することを特徴とするフッ素化カルボン酸類の分解方法。
〈2〉フッ素化カルボン酸が、一般式RCOOH(Rは少なくともフッ素原子を一つ含むアルキル基であり、そのアルキル基はフッ素原子の他に水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、アルケニル基を含んでいてもよい)
で表されることを特徴とする上記〈1〉に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。
〈3〉フッ素化カルボン酸の塩が、フッ素化カルボン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩であることを特徴とする上記〈1〉に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。
〈4〉フッ素化カルボン酸の前駆体が、フッ素化アルコール、フッ素化アルデヒド、フッ素化カルボン酸ハライドまたはフッ素化カルボン酸エステルであることを特徴とする上記〈1〉に記載のフッ素化カルボン酸類の分解方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フッ素化カルボン酸、その塩又はその前駆体などのフッ素化カルボン酸類を150℃程度の比較的低い熱水温度下においても、フッ化物イオンにまで高効率で分解させることができる。また、ここで用いるペルオキソ二硫酸イオンは金属微粒子と異なり水と接触しても激しく反応する恐れがないから、本発明の分解方法は安全性に優れたものである。また、分解により生じたフッ化物イオンは、例えば、カルシウムイオンを添加すると環境無害なフッ化カルシウムとなり、得られるフッ化カルシウムはフッ化水素酸の原料として再資源化することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のフッ素化カルボン酸、その塩及びその前駆体から選ばれた少なくとも一種のフッ素化カルボン酸類の分解方法は、ペルオキソ二硫酸イオンが存在する密閉容器中で比較的低温で熱水処理することを特徴とする。
【0011】
本発明でいうフッ素化カルボン酸とは、フッ素原子を含むカルボン酸を意味し、通常RCOOHで表される。
ここで、Rは少なくともフッ素原子を一つ含むアルキル基で、これらのアルキル基はフッ素原子の他に水素原子や酸素原子を含んでいてもよく、まあ、塩素原子等のハロゲン原子、さらには炭素・炭素二重結合を有するアルケニル基を含んでいてもよい。Rの炭素原子数に特に制限はない。
【0012】
本発明で好ましく使用されるフッ素化カルボン酸としては、例えばRの部分がペルフルオロアルキル基(アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換わったものでRfと記述される)であるペルフルオロカルボン酸(RfCOOH)があり、例としてノナフルオロペンタン酸(C4F9COOH)やペルフルオロオクタン酸(C7F15COOH)があげられる。
【0013】
また、ペルフルオロカルボン酸の他にも、本発明で好ましく使用されるフッ素化カルボン酸として一般式RfCF=CHCOOH(Rf =ペルフルオロアルキル基)で表される有機フッ素化合物(フルオロテロマー不飽和カルボン酸と称される)や、一般式RfC2H4COOHで表される有機フッ素化合物(フルオロテロマーカルボン酸と称される)があげられる。
【0014】
また、本発明はこれらのフッ素化カルボン酸の塩類(アルカリ金属塩、アンモニウム塩)もその対象とすることができる。
【0015】
更に、本発明においては、上記フッ素化カルボン酸やその塩だけでなく、酸化反応や加水分解で容易にカルボキシル基に変換する官能基を有するフッ素化カルボン酸の前駆体も分解対象とすることができる。
【0016】
このような前駆体としては、-OH基を有するフッ素化アルコール(ROH)、-CHO基を有するフッ素化アルデヒド(RCHO)、-COX(Xはハロゲン)を有する酸ハライド(RCOX)、およびフッ素化カルボン酸エステル(RCOOR1、R1は任意のアルキル基)があげられる。Rは前述のように少なくともフッ素原子を一つ含むアルキル基である。
【0017】
本発明で使用されるペルオキソ二硫酸イオンは過硫酸イオンとも呼ばれるイオンであり、化学式S2O82-で表される。その供給源としては、ペルオキソ二硫酸(H2S2O8)やその塩類を用いる。ペルオキソ二硫酸塩としてはペルオキソ二硫酸カリウム(K2S2O8)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(Na2S2O8)等をあげることができる。
【0018】
本発明においては、水中に存在するフッ素化カルボン酸、その塩類又はその前駆体を分解反応に付すものであるが、これらの物質の水中の濃度は、通常、1質量ppm〜10質量%程度である。
【0019】
本発明方法を実施するには、たとえば、上記フッ素化カルボン酸等を含有する水を耐圧反応容器に入れ、そのフッ素化カルボン酸類のカルボキシル基(−COOHもしくは−COO-)の量に対して1〜10000モル倍、好ましくは5〜1000モル倍のペルオキソ二硫酸イオンを、ペルオキソ二硫酸もしくはその塩を添加することで供給する。フッ素化カルボン酸の前駆体の場合はカルボキシル基に変化する官能基の量に対して1〜10000モル倍、好ましくは5〜1000モル倍のペルオキソ二硫酸イオンを入れる。耐圧反応容器の材質はステンレスやインコネル、ハステロイなどが常用される。その後、反応容器を密閉するが、空気や酸素ガスで系内を0.5MPa程度に加圧してもよい。
【0020】
本発明においては、つぎに、耐圧反応容器中で熱水処理を行う。この際の熱水温度は200〜370℃といった高温である必要はなく、これよりも著しく低い温度、たとえば100〜150℃の低熱水温度下でも、効率良くフッ素化カルボン酸類を分解することができる。
このように、本発明方法において、極めて低い熱水温度処理によりフッ素化カルボン酸類が効果的に分解される理由は、現時点では定かではないが、還元分解反応に代えて酸化分解反応を採用し、かつ該酸化分解反応をペルオキソ二硫酸イオンの存在下で実施する態様を組み合わせたことによるものと考えている。
【0021】
反応時間は特に制約されず、分解の難易度によって適宜定められるが1時間〜24時間程度で十分である。一定時間高温に保持した後、冷却し反応容器内の内容物を回収する。
【0022】
本発明の分解機構は現時点では定かでないが、反応後に回収した水から硫酸イオンが検出されることから、熱水中でペルオキソ二硫酸イオンが硫酸イオンラジカルとなり、それがフッ素化カルボン酸と反応することで開始されると考えられる。後述の実施例で示すようにペルオキソ二硫酸イオンを入れない場合には回収した水中にフッ化物イオンはほとんど得られなかったためペルオキソ二硫酸イオンが熱水中で反応を起していることは明らかである。
また、フッ素化カルボン酸前駆体の場合には熱水中でフッ素化カルボン酸となり、それが硫酸イオンラジカルと反応して分解すると考えられる。
【0023】
本分解反応により、硫黄成分は最終的に硫酸イオンとなる。水中の硫酸イオンは中和、カルシウム添加、逆浸透膜等、確立した既存の方法で処理できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について実施例などによりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1
ノナフルオロペンタン酸(C4F9COOH)5.92μmolとペルオキソ二硫酸カリウム400μmolを含む水8mlをステンレス製耐圧反応容器(内容量31mL)に入れた。容器内に圧縮空気を0.64MPaまで充填後、密閉した。これを150℃で6時間加熱した。その後、室温まで冷却し、ガス相および水相中の成分を分析した。水中成分としてノナルフオロペンタン酸1.06μmol、フッ化物イオン29.2μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が12.34μmolが得られた。ノナルフオロペンタン酸の残存率(反応後のノナフルオロペンタン酸のモル数を反応前のそれで割った値)は17.9%、フッ化物イオンの収率(生成したフッ化物イオンのモル数を反応前のノナフルオロペンタン酸が含有するフッ素原子のモル数で割った値)は54.8%であった。
【0026】
比較例1
実施例1において、ペルオキソ二硫酸カリウムを導入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応後にはノナルフオロペンタン酸4.12μmol、フッ化物イオン0.08μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が4.29μmolが得られた。ノナルフオロペンタン酸の残存率は69.6%、フッ化物イオンの収率は0.2%であった。このようにノナルフオロペンタン酸は、ペルオキソ二硫酸イオンを入れなくても多少は反応するものの、残存率は高く、かつフッ化物イオンがほとんど得られないことがわかる。
【0027】
実施例2
ペルフルオロオクタン酸(C7F15COOH)5.34μmolとペルオキソ二硫酸カリウム400μmolを含む水8mLをステンレス製耐圧反応容器(内容量31mL)に入れた。容器内圧力を圧縮空気で0.64MPaまで高めた後、密閉した。これを150℃において6時間加熱した。その後、室温まで冷却し、ガス相および水相中の成分を分析した。水中成分としてペルフルオロオクタン酸0.83μmol、フッ化物イオン29.9μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が14.7μmolが得られた。ペルフルオロオクタン酸の残存率(反応後のペルフルオロオクタン酸のモル数を反応前のそれで割った値)は15.5%、フッ化物イオンの収率(生成したフッ化物イオンのモル数を反応前のペルフルオロオクタン酸が含有するフッ素原子のモル数で割った値)は37.3%であった。
【0028】
比較例2
実施例2の場合とほぼ同じモル数のペルフルオロオクタン酸を用いて、ペルオキソ二硫酸カリウムを添加しない実験を以下のように行った。ペルフルオロオクタン酸5.99μmolを含む水8mLをステンレス製耐圧反応容器(内容量31mL)に入れた。容器内に圧縮空気を0.64MPaまで充填後、密閉した。これを150℃において6時間加熱した。その後、室温まで冷却し、ガス相および水相中の成分を分析した。水中成分としてペルフルオロオクタン酸4.16μmol、フッ化物イオン0.04μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が5.24μmolが得られた。ペルフルオロオクタン酸の残存率は69.4%、フッ化物イオンの収率は0.04%であり、フッ化物イオンの収率はペルオキソ二硫酸カリウムを添加した実施例2に比べて大幅に低下した。
【0029】
実施例3
3-ペルフルオロプロピル-3-フルオロ-(Z)-プロペン酸(C3F7CF=CHCOOH)5.92μmolとペルオキソ二硫酸カリウム400μmolを含む水8mLをステンレス製耐圧反応容器(内容量31mL)に入れた。容器内に圧縮空気を0.64MPaまで充填後、密閉した。これを150℃において6時間加熱した。その後、室温まで冷却し、ガス相および水相中の成分を分析した。水中成分としてヘプタフルオロブタン酸(C3F7COOH)酸0.98μmol、フッ化物イオン18.9μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が11.8μmolが得られた。3-ペルフルオロプロピル-3-フルオロ-(Z)-プロペン酸は消失していた。フッ化物イオンの収率(生成したフッ化物イオンのモル数を反応前の3-ペルフルオロプロピル-3-フルオロ-(Z)-プロペン酸が含有するフッ素原子のモル数で割った値)は39.9%であった。
【0030】
実施例4
1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカノール(C8F17C2H4OH)4.83μmolとペルオキソ二硫酸カリウム400μmolを含む水8mLをステンレス製耐圧反応容器(内容量31mL)に入れた。容器内圧力を圧縮空気で0.64MPaまで高めた後、密閉した。これを150℃において6時間加熱した。その後、室温まで冷却し、ガス相および水相中の成分を分析した。水中成分としてペルフルオロオクタン酸0.73μmol、フッ化物イオン30.4μmolが検出され、ガス相成分として二酸化炭素が19.3μmolが得られた。1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカノールは消失していた。フッ化物イオンの収率(生成したフッ化物イオンのモル数を反応前の1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカノールが含有するフッ素原子のモル数で割った値)は37.0%であった。

【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成19年5月21日(2007.5.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−285449(P2008−285449A)
【公開日】 平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願番号】 特願2007−133746(P2007−133746)