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【発明の名称】 ラジカル捕捉剤、重合禁止剤および重合禁止方法
【発明者】 【氏名】檜森 俊一

【氏名】沼田 繁明

【要約】 【課題】遷移金属を含まず、水溶性で且つ疎水性有機溶媒に難溶であり、さらに、酸素不存在下でもラジカル捕捉効果を有し、特にモノマーに対して優れた重合禁止効果を有するラジカル捕捉剤の提供。

【解決手段】下記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とするモノマー用のラジカル捕捉剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とするラジカル捕捉剤。
【化1】


{一般式(1)中、Xはスルホナート基またはカルボキシラート基を示し、Yは、水素原子、アルカリ金属または下記一般式(2)で表されるアンモニウム基を表す。}
【化2】


{一般式(2)中、R、R、Rは、それぞれ、独立に、水素原子、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を表す。}
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とする重合禁止剤。
【請求項3】
請求項2に記載の重合禁止剤を使用することを特徴とするモノマーの重合禁止方法。
【請求項4】
重合禁止剤の使用量がモノマーに対して1〜5000重量ppmである請求項3に記載のモノマーの重合禁止方法。
【請求項5】
モノマー中の溶存酸素濃度が1重量ppm以下である請求項3に記載のエチレン性不飽和モノマーの重合禁止方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル捕捉剤、重合禁止剤および重合禁止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性を有するモノマーの製造時、精製時、変性時、保存時、懸濁重合などの分散重合時の分散媒でのスケール防止など油水二層共存で処理する際、水層に溶解する、すなわち水溶性の重合禁止剤が使用される。
【0003】
従来、上記のような水溶性の重合禁止剤としては、ヒドロキノン類(特許文献1、2)、遷移金属塩類(特許文献3)、ピペリジン−1−オキシル類(特許文献4)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−14904号公報
【特許文献2】特開平5−320095号公報
【特許文献3】特開平10−218832号公報
【特許文献4】特開平1−165534号公報
【0005】
ところで、ヒドロキノン類は、酸素共存下では効果があるが、酸素不存在下では効果がないという欠点を有する。ほとんどの分散重合は酸素不存在下で行われるため、水系の分散媒のスケール防止には効果がないと考えられる。さらに、疎水性有機溶媒への溶解度も大きいため有機溶媒からの除去は困難であるという欠点も有する。
【0006】
遷移金属塩類は酸素不在下でも効果があるものの、金属塩類を添加すると以降の工程にも微量混入が避けられず、遷移金属はたとえ微量でも、重合、腐食、絶縁などの電気特性への影響があり、遷移金属塩の添加自体が忌避される傾向にある。
【0007】
ピペリジン−1−オキシル類は、重合禁止効果が大きいものの、ヒドロキノン類と同様疎水性有機溶媒への溶解度も大きいため有機溶媒からの除去は困難であるという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、遷移金属を含まず、水溶性で且つ疎水性有機溶媒に難溶であり、さらに、酸素不存在下でもラジカル捕捉効果を有し、重合禁止剤に適用可能なラジカル捕捉剤、重合禁止剤および重合禁止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため、ラジカル捕捉剤につき鋭意検討した結果、ナフトヒドロキノンスルホナートオニウム塩を初めとするナフトヒドロキノン化合物が、酸素不存在下においても、ラジカル捕捉効果を有し、特にモノマーに対して優れた重合禁止効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とするラジカル捕捉剤に存する。
【0011】
【化1】


{一般式(1)中、Xはスルホナート基またはカルボキシラート基を示し、Yは、水素原子、アルカリ金属または下記一般式(2)で表されるアンモニウム基を表す。}
【0012】
【化2】


{一般式(2)中、R、R、Rは、それぞれ、独立に、水素原子、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を表す。}
【0013】
本発明の第2の要旨は、前記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とする重合禁止剤に存する。そして、本発明の第3の要旨は、上記の重合禁止剤を使用することを特徴とするモノマーの重合禁止方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラジカル捕捉剤によれば、モノマーの製造時、精製時、変性時、保存時、輸送時、懸濁重合などの分散重合時の分散媒でのスケール防止の他、突発的重合時、安全に廃棄処理時に使用するモノマーの重合を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のラジカル捕捉剤は、前記一般式(1)で表されるナフタレン誘導体を有効成分とする。
【0016】
一般式(1)において、OH基の置換位置は、1〜8位が挙げられる。OH基の置換位置は、1位および4位の組み合わせが好ましい。一般式(1)において、XY基の置換位置は、1〜8位のうち、OH基の置換位置を除いた残余の位置から選ばれる。XY基の置換位置としては、2位が好ましい。
【0017】
一般式(2)のR、R、Rは、水素原子またはメチル基が好ましい。アンモニウム基における水素原子の合計は、2以上が好ましく、3が更に好ましい。また、アルカリ金属としては、カリウム又はナトリウムが好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるナフタレン誘導体のうち、特に好ましくは、下記一般式(3)で表されるナフトヒドロキノンスルホン酸およびその塩である。
【0019】
【化3】


{一般式(3)において、Yは、式(1)と同じ意味である。}
【0020】
本願発明のラジカル捕捉剤を重合禁止剤として使用する場合に適用されるモノマーは、ラジカル重合性を有し、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーであり、分子内にラジカル重合性を有するエチレン性二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルや酢酸ビニル等の不飽和カルボン酸エステル類;アクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデンのような置換エチレン化合物などが挙げられる。
【0021】
本発明のラジカル捕捉剤以外の他のラジカル捕捉剤あるいは重合禁止剤を併用してもよく、それらとしては、例えば、窒素含有化合物として、チオエーテル系化合物、アミン系化合物、ニトロソ化合物の群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの窒素含有化合物は重合禁止剤として作用する。
【0022】
チオエーテル系化合物としては、例えば、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0023】
アミン系化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−i−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、4,4’−ジクミル−ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0024】
ニトロソ化合物としては、例えば、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルナフチルアミン、N−ニトロソジナフチルアミン、p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p−ニトロソジフェニルアミン、α−ニトロソ−β−ナフトール等が挙げられる。
【0025】
さらに、前述した以外の前記窒素含有化合物としては、例えば、ピペリジン−1−オキシル、ピロリジン−1−オキシル,2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のニトロキシドが挙げられる。なお、これらの窒素含有化合物はラジカル捕捉剤として作用する。
【0026】
また、他の重合禁止剤としては、ヒドロキシ芳香族類、例えば、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、キノン化合物の群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。このような化合物としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0027】
また、他の重合禁止剤としては、遷移金属塩、例えば、銅塩化合物、マンガン塩化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸銅(アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の何れかであり、同一であっても、異なっていてもよい)、酢酸銅、サリチル酸銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、塩化銅、炭酸銅、水酸化銅、アクリル酸銅などの銅塩;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン(アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の何れかであり、同一であっても、異なっていてもよい)、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、過マンガン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸のマンガン塩などが挙げられる。
【0028】
本発明のラジカル捕捉剤を重合禁止剤として使用する場合の使用量は、モノマーに対し、通常1〜5000重量ppm、好ましくは5〜1000重量ppm、更に好ましくは10〜500重量ppmである。
【0029】
特に、本発明のラジカル捕捉剤は実質的に酸素不存在下でも効果を発揮する。ここで、実質的に酸素不存在下とは、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等の不活性ガスで反応系内や容器内を置換することにより、反応系内や容器の空間部の酸素濃度が充分に低下した条件をいい、例えば、反応系内や容器の空間部の酸素濃度が通常1vol%以下、好ましくは0.1vol%以下のような条件をいう。より具体的には、エチレン性不飽和モノマー中の溶存酸素濃度が通常1重量ppm以下、好ましくは0.5重量ppm以下、更に好ましくは0.1重量ppm以下の条件をいう。
【0030】
本発明のラジカル捕捉剤を重合禁止剤として使用した際の作用機構は、重合開始反応あるいは成長反応の際、生成するラジカルを消去、安定化することにより重合反応を防止、抑制するものと考えられる。ラジカルはフリーラジカル又は遊離基とも呼ばれ、本発明で捕捉対象とするラジカルは、電気的に中性、陰性、陽性の何れであってもよい。
【0031】
ところで、代表的な重合禁止剤である、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール等のハイドロキノン化合物は分子状酸素の存在下でのみの重合禁止効果を発現することはよく知れており、重合禁止機構も詳しく検討されており、以下の3点が判明している(J.J.Kurland,Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry,18,1139-1145(1980)あるいは、L.B.Levy,Plant/Operations Progress,6,4,188-189(1987))。
【0032】
(1)分子状酸素が活性ラジカルに直接反応する重合禁止剤である。
(2)ハイドロキノン化合物は活性ラジカルに直接反応しない。
(3)ハイドロキノン化合物は酸素の重合禁止作用を補助している。
【0033】
一方、本発明のラジカル捕捉剤は、ハイドロキノン化合物とは作用機構が全く異なり、酸素不在下で且つ少量で十分な効果を発現することから以下2点が考えられる。
【0034】
(1)本発明のラジカル捕捉剤は活性ラジカルに直接反応している。
(2)本発明のラジカル捕捉剤はリサイクル的、触媒的に作用する。
【0035】
このような作用を有する本発明のラジカル捕捉剤は、上記の通り重合禁止剤として使用される他、使用する場面ごとに、重合防止剤、重合抑制剤、重合遅延剤、連鎖移動剤、スケール防止剤、汚れ防止剤などとも呼ばれ、これら用途ごとの名称に拘わらず、ラジカルを補足したり、特にモノマーの重合を禁止したり、抑止したり、遅延したりする等、ラジカル反応、特に重合を抑制的に制御する薬剤と定義することが出来る。
【0036】
本発明のラジカル捕捉剤が使用される用途に関しては、具体的には、例えば、モノマーの合成、変成、精製、蒸留、貯蔵、保管、移送、噴霧、塗布、重合、廃棄などのモノマーの製造、取り扱いに関わるすべてのプロセスに使用することが出来る。また何らかの原因で暴走的に発生した異常重合など、緊急時の暴走反応防止のための薬剤いわゆるショートストッパーとして使用することも出来る。
【0037】
更に、モノマーの製造、取り扱いに関わる全てのプロセスにて生じる、装置への付着物、析出物、所謂スケールを防止するために本発明の重合禁止剤を単独または、他の薬剤と混合、あるいは変性したものを装置へ塗布することにより供することも可能である。斯かる用途に関する詳細は、例えば、「水溶性高分子の新展開」((株)シーエムシー出版、2004年5月)を参照することが出来る。
【0038】
また、本発明のラジカル捕捉剤をポリマーにグラフトさせ、ポリマー自体を重合禁止剤に変性させ、塗布したり、成型加工し、利用することも可能である。斯かる用途に関する詳細は、例えば、「P.Yang,Journal of Polymer Science PartA,42.4047(2004)」を参照することが出来る。
【0039】
また、上記のラジカルを消去したり、安定化する作用機構を利用することにより、重合に際し、重合開始剤、光開始剤、増感剤、連鎖移動剤と共に利用でき、これらの薬剤と組み合わせることにより、合成するポリマーの分子量を制御したり、共重合の際のシークエンスを制御したり、ブロックポリマー、グラフトポリマー、デンドリマーを合成することも可能である。
【0040】
その際の重合様態としては、塊状、溶液、乳化(コロイド、エマルション、ラテックスとも呼ばれる)、分散、懸濁、気相、固相の状態の何れであってもよい。また、特に、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材などの用途では、様態として、一液型だけでなく多液型で硬化や重合して使用される態様もあり、それらの液に添加して使用することも出来る。重合に際し、熱分解型、光分解型などの開始剤を添加するか又は添加せずに、熱、紫外線、電子線、マイクロ波などの電離線照射、機械的エネルギーを与えて重合させることが一般的である。これらの重合様態において重合用の重合性モノマー組成物の保存安定性を改良する目的で本発明のラジカル捕捉剤を使用することも出来る。
【0041】
上記のすべて使用様態において本発明の添加対象物として以下を挙げることが出来る。
【0042】
モノマー組成物として、接着剤、粘着剤、レジスト、封止材、塗料、コーティング、歯科材料、医用材料などに使用されるモノマー組成物が挙げられる。ポリマー組成物として、ポリマー同士やポリマーとオリゴマーとのポリマーアロイ、ポリマーブレンド、ポリマーとモノマーのシラップ、ポリマーを水、有機溶媒などに溶解、分散させたポリマー溶液、ポリマー分散液、ポリマー乳化液などが挙げられる。複合体(コンポジット)として、ポリマーと無機物質(セラミックス、ガラス等)、金属、あるいは有機物質との複合体が挙げられる。更に、他の物質と反応させて、それら化合物にラジカル捕捉剤能を付与することが出来る。対象物質として、金属、ポリマー、オリゴマー、モノマー等有機物質、セラミックス、紙、布、毛皮などの天然物などが挙げられる。
【0043】
更に、本発明のラジカル捕捉剤は、上記のラジカルを消去したり、安定化する作用機構を利用することにより、制御できる重合以外の各種反応、すなわち、酸化、老化、腐敗、燃焼、生体反応など、ラジカルの関与する全ての反応にも使用することも出来る。例えば、ポリマーや他の化学薬剤などの酸化防止剤、保存安定剤、老化防止剤、増粘防止剤として使用することも出来る他、燃焼反応の抑制、防止、生体内で発生する有害ラジカルの捕捉、消去(例えば特開平5−213764公報)、ラジカルに起因する癌、梗塞などの疾病や老化(
例えば“Oxidative Stress in Dermatology”、323ページ以降における論文“Skin Diseases Associated with Oxidative Irjury”(Marcel Decker Inc.、ニューヨーク、バーゼル、香港、発行者:Juergen Fuchs、フランクフルトおよびLester Packer、バークレー/カリフォルニア州))の予防効果も期待できる。
【0044】
本発明のラジカル捕捉剤は、水溶性で且つトルエン等の疎水性有機溶剤に事実上不溶であるという特徴も有する。ここで、水溶性とは常温の蒸留水に100gに対して10g以上溶解することを意味する。また、ここで、疎水性有有機溶剤とは蒸留水への溶解度が1.0重量%以下の有機溶剤を示す。該当する疎水性有機溶剤は文献(「溶剤ハンドブック」講談社サイエンティフィック(1976)等)で容易に知ることが出来る。
【0045】
本発明のラジカル捕捉剤は、その水溶性である特徴を利用し、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩などの水溶性のモノマーや薬剤への利用に好都合である。一方、油溶性のモノマー薬剤の場合でも、乳化、分散、懸濁状態で水系連続層に使用することが出来る。また、本発明のラジカル捕捉剤は疎水性有機溶剤に事実上不溶であるため、組成物や複合体に添加した場合、疎水性有機溶剤によるブリードアウトし難いという特徴も有する。水溶性で且つトルエン等の疎水性有機溶剤に事実上不溶であるという特徴から、微量に疎水性有機溶剤に溶解した本発明のラジカル捕捉剤は、水により効率よく抽出できるという特徴も有する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した測定方法および評価方法は次の通りである。
【0047】
<誘導期間>
200重量ppmメトキノン含有の市販のアクリル酸(和光純薬特級)を再結晶操作3回実施し、メトキノンを除去した。このアクリル酸4gをガラス製の20mL試験管に入
れ、さらに、アクリル酸に対して所定量の重合禁止剤を添加し、熱伝対を液中に挿入し、ガラス製のキャピラリー管にて所定の溶存酸素濃度になるまで窒素10mL/分の流量でバブリング通気し、密封した。107℃に加熱したオイルバスに試験管を浸漬させ、内温を100℃に制御して、重合発熱による発泡するまでの時間を測定した。
【0048】
<水溶性評価>
常温常圧下にて、200mLのガラス製ビーカーに常温の蒸留水100gを秤り採り、
重合禁止剤10gを加え、マグネチックスターラーにて10分かくはんして観察し、次の基準で水溶性を評価する。溶解:目視で不溶分が確認できないことを意味する。不溶:目視で不溶分が確認できることを意味する。
【0049】
<トルエン溶解性評価>
常温常圧下にて、200mLのガラス製ビーカーに常温のトルエン(和光純薬特級)1
00gを秤り採り、重合禁止剤1gを加え、マグネチックスターラーにて10分かくはんして観察し、次の基準でトルエン溶解性を評価する。溶解:目視で不溶分が確認できないことを意味する。不溶:目視で不溶分が確認できることを意味する。なお、不溶と判定された場合は高速液体クロマトグラフィにてトルエン中の溶解度を測定した。
【0050】
<ラジカル捕捉能評価>
ラジカル捕捉剤のラジカル捕捉能を以下の方法で測定する。すなわち、ラジカル濃度検出試薬として、1000ppmの4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(HTEMPO)を含有した水溶液10gに対して、評価対象のラジカル捕捉剤1000ppmを加える。更に、その水溶液にラジカル発生レドックス試薬として0.001gのL−アスコルビン酸および0.050gの過酸化水素水溶液(30重量%)を加えてヒドロキシラジカルを発生させ、10分後の反応液中のHTEMPOの未反応率を測定する。ここで、HTEMPOはラジカルと定量的に反応し、紫外線の特性吸収(450nm)を失うので、紫外線吸光度を測定することによりHTEMPOの未反応率を求めることが出来る。この未反応率は、ラジカル捕捉剤のラジカル捕捉能とみなすことが出来る。
【0051】
実施例1:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0052】
実施例2:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸ナトリウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評、およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0053】
実施例3:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸モノメチルアンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0054】
実施例4:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸モノエチルアンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0055】
実施例5:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸ジメチルアンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0056】
実施例6:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸トリメチルアンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0057】
実施例7:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸テトラメチルアンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0058】
実施例8:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム10重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0059】
実施例9:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム5重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0060】
実施例10:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム1重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0061】
実施例11:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0062】
実施例12:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0063】
比較例1:
アクリル酸に対し、重合禁止剤としてヒドロキノン50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0064】
比較例2:
アクリル酸に対し、重合禁止剤としてメトキノン50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0065】
比較例3:
アクリル酸に対し、重合禁止剤を添加せず、溶存酸素濃度と誘導期間との評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0066】
比較例4:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム0.1重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0067】
比較例5:
アクリル酸に対し、重合禁止剤として1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム50重量ppmを添加し、溶存酸素濃度、誘導期間、水溶性評価およびトルエン溶解性評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0068】
【表1】


【0069】
実施例13:
ラジカル捕捉剤として、1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウムを窒素置換した常温のグローブボックス内でラジカル捕捉能評価を行った。反応液の酸素濃度は0.1重量ppmであり、ラジカル捕捉能は85%であった。
【0070】
実施例14:
ラジカル捕捉剤として、1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸ナトリウムを窒素置換した常温のグローブボックス内でラジカル捕捉能評価を行った。反応液の酸素濃度は0.1重量ppmであり、ラジカル捕捉能は83%であった。
【0071】
実施例15:
ラジカル捕捉剤として、1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸アンモニウムを常温常圧下でラジカル捕捉能評価を行った。ラジカル捕捉能は85%であった。
【0072】
実施例16:
ラジカル捕捉剤として、1,4−ナフトハイドロキノン−2−スルホン酸ナトリウムを常温常圧下でラジカル捕捉能評価を行った。ラジカル捕捉能は85%であった。
【0073】
比較例6:
ラジカル捕捉剤を加えず、窒素置換した常温のグローブボックス内でラジカル捕捉能評価を行った。反応液の酸素濃度は0.1重量ppmであり、ラジカル捕捉能は0%であった。
【0074】
比較例7:
ラジカル捕捉剤を加えず、常温常圧下でラジカル捕捉能評価を行った。ラジカル捕捉能は0%であった。
【0075】
比較例8:
ラジカル捕捉剤として、ヒドロキノンを窒素置換した常温のグローブボックス内でラジカル捕捉能評価を行った。反応液の酸素濃度は0.1重量ppmであり、ラジカル捕捉能は0%であった。
【0076】
比較例9:
ラジカル捕捉剤として、メトキノンを窒素置換した常温のグローブボックス内でラジカル捕捉能評価を行った。反応液の酸素濃度は0.1重量ppmであり、ラジカル捕捉能は0%であった。
【0077】
比較例10:
ラジカル捕捉剤として、ヒドロキノンを常温常圧下でラジカル捕捉能評価を行った。ラジカル捕捉能は0%であった。
【0078】
比較例11:
ラジカル捕捉剤として、メトキノンを常温常圧下でラジカル捕捉能評価を行った。ラジカル捕捉能は0%であった。
【出願人】 【識別番号】000199795
【氏名又は名称】川崎化成工業株式会社
【出願日】 平成19年10月30日(2007.10.30)
【代理人】 【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦


【公開番号】 特開2008−239599(P2008−239599A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−281713(P2007−281713)