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【発明の名称】 包接化合物のゲスト分子の濃縮方法、濃縮分離方法及び濃縮回収方法並びに再生方法
【発明者】 【氏名】松本 繁則

【氏名】林 謙年

【氏名】高雄 信吾

【要約】 【課題】原料溶液から効率的にゲスト分子を濃縮する技術を提供することを課題とする。

【解決手段】包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液Lの中に配置された熱交換器2の外表面に前記包接化合物L1を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させることにより、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物L1と前記溶液Lとの密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液Lの中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、
前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させることにより、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程とを有することを特徴とする包接化合物のゲスト分子の濃縮方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記包接化合物の潜熱により熱エネルギーを蓄積する工程であり、前記第2工程は、前記熱交換器により前記塊状体の一部から熱エネルギーを取り出す工程であることとする請求項1に記載の包接化合物のゲスト分子の濃縮方法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記特定領域にて、前記未融解部から熱エネルギーを取り出す工程であることとする請求項2に記載の包接化合物のゲスト分子の濃縮方法。
【請求項4】
包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、
前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、
前記特定領域とは別の領域から前記溶液を前記容器外に取り出す第4工程とを有することを特徴とする包接化合物のゲスト分子の濃縮分離方法。
【請求項5】
包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、
前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、
前記特定領域から前記溶液を前記容器外に取り出す第4工程とを有することを特徴とする包接化合物のゲスト分子の濃縮回収方法。
【請求項6】
前記第4工程は、前記特定領域とは別の領域から前記溶液を前記容器外に取り出した後、前記特定領域から前記溶液を前記容器外に取り出す工程であることとする請求項5に記載の包接化合物のゲスト分子の濃縮回収方法。
【請求項7】
使用済の包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、
前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、
前記特定領域から前記容器外に前記溶液を取り出す第4工程と、
前記容器から取り出された前記溶液中に含まれるゲスト分子を再使用する第5工程とを有することを特徴とする包接化合物のゲスト分子の再生方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液における、当該ゲスト分子を濃縮させる濃縮方法、濃縮分離方法及び濃縮回収方法並びに再生方法に関する。
【0002】
なお、次に掲げる用語又は表現の意味又は解釈は、以下のとおりとする。
【0003】
(1)「原料溶液」とは、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含む溶液をいう。包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含むとともに包接化合物が分散又は懸濁している溶液も「原料溶液」に該当する。
【0004】
(2)「包接化合物」とは、複数の分子が適当な条件下で組み合わさって結晶ができるとき、一方の分子(ホスト分子)が籠状、トンネル形、層状または網状構造をつくり、その隙間に他の分子(ゲスト分子)が入りこんだ構造の化合物の意味であり、包接水和物を除くこととする狭義の包接化合物(特許文献1参照)のみならず、この包接水和物(特許文献2,3参照)を含む、広義の包接化合物も「包接化合物」に該当する。言うまでもなく、水が凝固してできる氷はこれに該当しない。
【0005】
「包接化合物」には包接水和物が、包接水和物には準包接水和物がそれぞれ含まれる。
【0006】
(3)「熱交換器」とは、熱源又は熱媒体との熱交換を可能にする外表面を備える伝熱物体を意味し、中実であるか否か、断面形状、寸法、材質等は問わない。プレート式や多管式といった型式も問わない。ヒートパイプも「熱交換器」の一種である。本発明の具体的な説明を行う際に、熱輸送媒体が流通する空洞を有する伝熱管を「熱交換器」として本発明の具体的な説明を行う場合があるとしても、それは「熱交換器」をかかる伝熱管に限定する意図ではない。
【0007】
(4)熱交換器の「外表面」とは、熱交換器の熱交換面(伝熱面)及びその熱交換の効果が及ぶ当該熱交換面の近傍領域をいう。
【0008】
(5)「下方」及び「上方」とは、それぞれ、重力が働く方向及びその反対の方向をいう。
【0009】
(6)「塊状体」とは、一つの集合体としての外形を有する物体をいい、周囲のものと視覚的に区別できる外形であれば、その形状に限定はなく、特に明記する場合を除き、内部の構造、強度、硬度、粘性、密度、組成等は問わない。なお、「包接化合物の塊状体」とは、包接化合物が生成を重ねて塊状をなし、塊状体と肉眼で認定できる状態になるに至ったものをいう。
【0010】
(7)「スラリー」とは、液体中に固体粒子が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいう。沈降しがちな固体粒子を浮遊状態とするために界面活性剤を添加したり、機械的に攪拌することもあるが、その場合にも「スラリー」という。特に包接化合物又はその塊状体について「スラリー」という場合には、界面物性剤の添加や機械的攪拌の有無に拘らず、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含む溶液の中に当該包接化合物が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいうが、分散や懸濁が均質であることまで必要とされない。例えば、包接化合物の塊状体の一部(特に溶液に接している部分)が前記溶液中に分散又は懸濁しているが残部は前記溶液中で塊状体のままである場合には、その分散又は懸濁しているものは「スラリー」であり、包接化合物の塊状体と前記溶液中で並存している状態にあるといえる。
【0011】
(8)「水和物生成温度」とは、原料水溶液を冷却したとき、包接水和物が生成するべき平衡温度をいう。原料水溶液のゲスト化合物の濃度により包接化合物が生成する温度が変動する場合であっても、これを「水和物生成温度」という。なお、簡便のため、「水和物生成温度」を「融点」という場合がある。
【0012】
(9)「調和融点」とは、原料水溶液の液相から包接水和物が生成する際、原料水溶液中のゲスト分子の濃度と包接水和物中のゲスト分子の濃度とが等しく、包接水和物の生成の前後において当該液相の組成が変わらない場合の温度をいう。なお、縦軸を水和物生成温度、横軸を原料水溶液の液相のゲスト化合物の濃度とした状態図では極大点が「調和融点」となる。また、調和融点を与える原料水溶液中のゲスト分子の濃度を「調和融点濃度」という。調和融点濃度未満の濃度の原料水溶液から包接水和物を生成する場合には、包接水和物の生成につれて原料水溶液のゲスト分子の濃度が低下し、その濃度に対する水和物生成温度が低下する。
【0013】
(10)包接化合物の存在比率又はゲスト分子の濃度が相対的に高い領域を「高濃度領域」という場合があり、前記包接化合物の存在比率又はゲスト分子の濃度が相対的に低い領域を「低濃度領域」という場合がある。尤も、「高濃度領域」以外のすべての領域が「低濃度領域」に該当するという意味ではなく、「低濃度領域」以外のすべての領域が「高濃度領域」に該当するという意味でもない。
【背景技術】
【0014】
包接化合物は、その生成時に潜熱として熱エネルギーを蓄積し、融解時にその熱エネルギーを放出する性質を有することから、これを蓄熱材の主成分又は組成物として利用するための研究開発が行われている(特許文献1乃至3)。
【0015】
ここで、原料溶液の特定の領域においてゲスト分子の濃度が相対的に高いという状態にあるときには、特段の技術的価値が認められる。例えば、包接化合物のゲスト分子を原料溶液の中の特定領域に偏在させ、当該特定領域に高濃度領域を形成し、ゲスト分子の濃度を相対的に高めることができれば、当該特定領域とは別の領域の原料溶液を除去することでゲスト分子を高濃度で分離することができ、その高濃度領域の原料溶液を取り出せばゲスト分子を高濃度で回収することができ、分離又は回収されたゲスト分子を蓄熱材の主成分又は組成物として再利用することも可能になる。更に、ゲスト分子の濃度が相対的に高い原料溶液の特定領域に熱交換器を設置した場合、当該特定領域では包接化合物の潜熱蓄熱を行い、当該特定領域とは別の領域では別の手法の蓄熱(例えば、ホスト分子の濃度が相対的に低いことを利用した顕熱蓄熱)を行うという複合的な蓄熱を実現することも可能になる。
【0016】
目的の如何を問わず、原料溶液の特定領域におけるゲスト分子の濃度が相対的に高いという状態を実現しようとする場合や、結果の如何を問わず、そのような状態が実現される場合には、包接化合物のゲスト分子の濃縮技術又は濃縮現象がその基礎又は前提となる。その一例が、包接水和物を生成する薬剤(当該包接水和物のゲスト分子)の水溶液から不純物を除去するための水溶液再生技術である(特許文献4)。この水溶液再生技術では、不純物を含む原料溶液とその原料溶液中に配置される熱交換器を備える処理槽を用意し、熱交換器に冷却用熱媒体を流すことで熱交換器の周りに包接水和物の結晶を生成させ、その結晶が生成した後に残った水溶液を処理槽外に排出することで不純物を除去し、次いで熱交換器に加熱用熱媒体を流すことで包接水和物の結晶を融解し、不純物が除去された原料溶液、更にはその原料溶液を加熱・濃縮等してゲスト分子の析出物を得ている。
【特許文献1】特開2005−41908号公報
【特許文献2】特公昭57−35224号公報
【特許文献3】特許3641362号公報
【特許文献4】特開2002−333168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、冷却用熱媒体が流れる熱交換器の周りに包接化合物が生成して厚みを増すにつれて伝熱抵抗が大きくなるため、その冷却用熱媒体による冷却の効果が水溶液に及ばなくなってくる。このことは、特許文献4記載の技術において、熱交換器の周りに包接水和物の結晶を生成させても、結晶にならないまま水溶液中にゲスト分子が残り、不純物とともに処理槽外に排出されてしまうことを意味している。それ故、特許文献4記載の技術は、これにより包接化合物のゲスト分子の濃縮が可能になるとはいえ、未だ効率的なものとはいえない。また、前記の従来技術では、包接化合物とそのゲスト分子を溶質として含む原料溶液との密度差と、包接化合物の濃縮との関係について、全く考慮されておらず、技術的な示唆も見当たらない。
【0018】
本発明は、以上の事情に鑑みて、原料溶液からより効率的にゲスト分子を濃縮することができる技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための、本発明の第1の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮方法は、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差に従って前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程とを有することを特徴としている。
【0020】
本発明の第2の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮方法は、第1の形態に係る濃縮方法であって、前記第1工程が、前記包接化合物の潜熱により熱エネルギーを蓄積する工程であり、前記第2工程が、前記熱交換器により前記塊状体の一部から熱エネルギーを取り出す工程であることを特徴としている。
【0021】
本発明の第3の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮方法は、第2の形態に係る濃縮方法であって、この第3工程が、前記特定領域にて、前記未融解部から熱エネルギーを取り出す工程であることを特徴としている。
【0022】
本発明の第4の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮分離方法は、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、前記特定領域とは別の領域から前記溶液を前記容器外に取り出す第4工程とを有することを特徴としている。
【0023】
本発明の第5の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮回収方法は、包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、前記特定領域から前記溶液を前記容器外に取り出す第4工程とを有することを特徴としている。
【0024】
本発明の第6の形態に係る包接化合物のゲスト分子の濃縮回収方法は、第5の形態に係る濃縮回収方法であって、前記第4工程が、前記特定領域とは別の領域から前記溶液を前記容器外に取り出した後、前記特定領域から前記溶液を前記容器外に取り出す工程であることを特徴としている。
【0025】
本発明の第7の形態に係る包接化合物のゲスト分子の再生方法は、使用済の包接化合物のホスト分子を溶媒としゲスト分子を溶質として含み且つ前記包接化合物と密度が異なる溶液の中に配置された熱交換器が収容されている容器内で前記熱交換器の外表面に前記包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる第1工程と、前記塊状体の一部を前記外表面の側から融解させ、前記塊状体の未融解部を前記外表面から離脱させる第2工程と、前記第1工程及び前記第2工程を少なくとも1回繰り返すことにより、前記包接化合物と前記溶液との密度差にもとづいて前記未融解部を前記溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域における前記ゲスト分子の濃度を相対的に高める第3工程と、前記特定領域から前記容器外に前記溶液を取り出す第4工程と、前記容器から取り出された前記溶液中に含まれるゲスト分子を再使用する第5工程とを有することを特徴としている。
【0026】
なお、本発明において、ゲスト分子の濃縮の目的には特に制限はない。特に第1乃至第3の形態では、ゲスト分子の濃縮目的は問わず、結果的にゲスト分子が濃縮していれば足りる。しかし強いていえば、第4の形態では、ゲスト分子を不純物から分離することを目的としており、第5乃至第6の各形態では、ゲスト分子を回収することを目的としており、本発明の第7の形態では、或る目的のために再使用することを目的としているといえる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、原料溶液の中に配置された熱交換器の外表面に包接化合物を生成させ、塊状体に成長させる工程と、その塊状体の一部を熱交換器の外表面の側から融解させ、その外表面から未融解部を離脱させる工程とを少なくとも1回繰り返すことにより、包接化合物と原料溶液との密度差にもとづいて未融解部を原料溶液の中の特定領域に偏在させ、その特定領域におけるゲスト分子の濃度を相対的に高めることを基本構成とする。熱交換器の外表面に生成した包接化合物をその外表面の側から融解させると、融解した部分は原料溶液に戻るので、次の包接化合物の生成に供することができ、無駄が少ない。また、未融解部は包接化合物と原料溶液との密度差にもとづいて原料溶液の中で浮揚又は沈降するので、次に包接化合物を生成させる際には、熱交換器の外表面に原料溶液への伝熱を妨げる包接化合物が存在しない又は殆ど存在しない状態を実現することができ、故に熱交換器による熱交換の効果を高いまま維持することができる。しかも、未融解部は包接化合物と原料溶液との密度差にもとづいて原料溶液の中で浮揚又は沈降し、原料溶液の中の特定領域(原料溶液中で未溶解部が浮揚する場合には、原料溶液の上方の領域;原料溶液中で未溶解部が沈降する場合には、原料溶液の下方の領域)に集まり、そこに偏在することになるので、当該特定領域におけるゲスト分子の濃度を相対的に高めることができ、故にゲスト分子を濃縮することができる。
【0028】
また、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返すと、前記の作用効果が繰り返される。即ち、生成した包接化合物を融解する際には、融解した部分は原料溶液に戻るので、次の包接化合物の生成に供されることになり、無駄に除去されるゲスト分子が少なくなる。また、未融解部は包接化合物と原料溶液との密度差にもとづいて原料溶液の中の特定領域に集まり、ゲスト分子の濃度を相対的に更に高めることができ、その特定領域においてゲスト分子を更に濃縮することができる。なお、原料溶液におけるゲスト分子の濃度は低下し、熱交換器の外表面に生成させることができる包接化合物の量が漸減して行くが、包接化合物を生成させる際には、熱交換器の外表面に包接化合物は存在せず又は殆ど存在せず、当該外表面から原料溶液への伝熱性は高いまま維持されるので、ゲスト分子の濃度が低い原料溶液からであっても包接化合物を生成させることができる。
【0029】
かくして、本発明によれば、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返すことにより、原料溶液からゲスト分子を累積的に濃縮することができ、ゲスト分子の効率的な濃縮技術を実現することができる。本発明では、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返すことが、より奏効的であり好ましい。
【0030】
なお、未融解部が包接化合物と原料溶液との密度差にもとづいて原料溶液の中で浮揚又は沈降する際には、当該未融解部の一部が原料溶液の中に分散又は懸濁して包接化合物のスラリーとなる場合があるが、このスラリーも浮沈又は沈降して原料溶液の中の特定領域に偏在して、当該特定領域におけるゲスト分子の濃度の相対的増加、延いてはゲスト分子の濃縮に寄与する。
【0031】
本発明の各形態が奏する個別的な作用効果は以下のとおりである。
【0032】
本発明の第1の形態によれば、原料溶液からゲスト分子を無駄なく濃縮することが可能な効率的な濃縮方法を実現することができる。
【0033】
本発明の第2の形態によれば、包接化合物の潜熱により熱エネルギーを蓄積し、熱交換器により熱エネルギーを取り出すという蓄熱・放熱の過程でゲスト分子の濃縮を実現することができる。このことは、包接化合物を蓄熱材として用いる蓄熱装置(例えば内融式の蓄熱装置)をゲスト分子の濃縮装置に転用することができるということを意味している。
【0034】
本発明の第3の形態によれば、原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させて濃縮させると同時に未融解部から熱エネルギーを取り出すことができる。このような作用効果は、原料溶液の中の特定領域に未融解部を塊状体として偏在させることが事後の処理(例えば、ゲスト分子の分離や回収)に支障を来たすおそれがあり、予め融解させておくことが好ましい場合や、包接化合物を蓄熱材として用いる蓄熱装置をゲスト分子の濃縮装置として代替又は兼用する場合に役に立つ。
【0035】
本発明の第4の形態によれば、容器に収容されている原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させ、濃縮させた後に、当該特定領域とは別の領域の原料溶液、即ちゲスト分子の濃度が相対的に低い原料溶液を容器外に取り出すので、当該容器内に濃縮されたゲスト分子を分離して残すことが可能なゲスト分子の濃縮分離方法を実現することができる。なお、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返した方がゲスト分子が効率的に濃縮されることは第1の形態の場合と同様である。それ故、第4の形態によりゲスト分子を効率的に容器内に残すためには、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返す方が好ましい。
【0036】
本発明の第5の形態によれば、容器に収容されている原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させ、濃縮させた後に、当該特定領域にある原料溶液、即ちゲスト分子の濃度が相対的に高い原料溶液を容器外に取り出すので、当該容器内に濃縮されたゲスト分子を容器外に取り出して回収することが可能なゲスト分子の濃縮回収方法を実現することができる。なお、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返した方がゲスト分子が効率的に濃縮されることは第1の形態の場合と同様である。それ故、第5の形態によりゲスト分子を効率的に容器外に取り出すためには、包接化合物の生成と融解を複数回繰り返す方が好ましい。また、第6の形態により、容器内に濃縮されたゲスト分子を容器外に取り出す前に、ゲスト分子が濃縮された結果ゲスト分子が相対的に低濃度になった領域(当該特定領域とは別の領域にある低濃度領域)の原料溶液を容器外に取り出すことにしてもよい。
【0037】
本発明の第7の形態によれば、第5又は第6の形態に係るゲスト分子の濃縮回収方法を用いて、ある目的のために使用された包接化合物のホスト分子及びゲスト分子をそれぞれ溶媒及び溶質として含む溶液から、当該ゲスト分子を回収して、その目的のために再使用することができ、資源の再利用という点で非常に経済的である。なお、当該目的が蓄熱材の組成物としての利用にある場合には、包接化合物を蓄熱材として用いる蓄熱装置をゲスト分子の濃縮装置として代替又は兼用することができるという長所もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面にもとづき本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、包接化合物の具体例を包接水和物として説明するが、当該具体例が包接水和物であるからといって、本発明から包接水和物以外の包接化合物が除外されることではなく、包接水和物以外の包接化合物でも本発明を実施できる。また、包接水和物は原料溶液に比べて密度が大きく、未融解の包接化合物の塊状体(未融解部)が原料溶液中を沈降する場合について説明するが、密度が小さい場合は未融解部が原料溶液中を浮上する挙動を示す点で異なるだけであり、基本的な構成は同様になる。
【0039】
図1は、包接水和物を生成して蓄熱し、これを融解して放熱する装置の概要説明図である。この図1において、原料溶液Lが貯留されている貯留槽1内に熱交換器(伝熱管)2が配設されている。
【0040】
本実施形態に係る装置では、包接水和物の潜熱により熱エネルギーを蓄積し、熱交換器により熱エネルギーを取り出すという蓄熱・放熱の過程でゲスト分子の濃縮を実現することができる。すなわち、包接水和物を蓄熱材として用いる蓄熱装置をゲスト分子の濃縮装置に転用する。
【0041】
熱交換器2は蓄熱槽1内で水平方向に蛇行し高さ方向に複数段をなしていて、該熱交換器2内を熱媒体が流通している。この熱交換器2は、水平方向の蛇行によらずとも、上下方向に蛇行していてもよい。前記原料溶液Lは、そのゲスト分子の濃度が調和融点を与える濃度(調和融点濃度)であっても、それ未満あるいはそれより高い濃度であってもよい。
【0042】
図1に示した装置は、蓄熱装置にたとえれば所謂内融式蓄熱装置と実質的に同じである。そしてこの装置において、熱エネルギーを蓄積するための蓄熱工程と蓄積された熱エネルギーを放出する又は取り出すための放熱工程とを実行することにより、換言すれば、蓄熱工程を実現するための蓄熱運転と放熱工程を実現するための放熱運転を行うことにより、包接水和物の存在比率又はそのゲスト分子の濃度が相対的に高い領域と低い領域とに分離させる。
【0043】
かかる本実施形態に係る装置では、蓄熱工程と放熱工程とが行われる。
【0044】
<蓄熱工程(蓄熱運転)>
熱交換器(伝熱管)2に、包接水和物生成温度より低温の熱媒体が流通され、熱交換器2の外表面で原料溶液Lが熱交換して冷却され包接水和物L1が生成される。包接水和物L1は、図1に見られるように、熱交換器2の外表面に付着し堆積して、該熱交換器2の周囲に包接水和物L1の塊状体が形成される。
【0045】
<放熱工程(放熱運転)>
熱交換器2に、包接水和物の融解温度より高温の熱媒体が流通され熱交換器2の外表面で包接水和物L1と熱交換して、熱媒体が冷却されて冷熱エネルギーが取出される。包接水和物L1は熱交換器2の外表面に接している部分から融解し、その融解によりできる原料溶液Lは、その包接水和物L1の融点よりも高温なので貯留槽1の上方に移動し、貯留槽1の上方に偏在する。他方、未融解のまま残る包接水和物L1の塊状体(未融解部)は熱交換器2の表面から離脱し、包接水和物L1と原料溶液Lとの密度差に応じて、従って重力により下方に沈降する。
【0046】
この未融解部は、包接水和物の塊状体の一部であるので、包接水和物のスラリーと異なり、溶媒への分散性は比較的小さく、溶媒の中での凝集性も比較的小さい。それ故、スラリーよりも迅速に、包接水和物と原料溶液との密度差に従って下方に沈降してゆく。その過程で、未融解部の一部は原料溶液に分散又は懸濁してスラリーとなり、比較的遅い速度で沈降してゆく。こうして未融解部は、塊状体、スラリーといった形態で貯留槽1の下方の領域に偏在することになる。また、貯留槽1の下方の領域に偏在するに至った未融解部が融解すると、上方の原料溶液Lと拡散混合するに足るだけの長時間が経過しない限り又は上方の領域と下方の領域との間で強制的な攪拌を行わない限り、当初の原料溶液Lのゲスト分子の濃度より高い濃度の原料溶液となり滞留する。かくして、図2のように貯留槽1の下方には高濃度領域Aが、上方には低濃度領域Bが形成される。
【0047】
<蓄熱工程と放熱工程の繰返し>
原料溶液Lの中に配置された熱交換器2の外表面に包接水和物L1を生成させ塊状体に成長させる工程(蓄熱工程)と、その塊状体の一部を熱交換器2の外表面の側から融解させ、その外表面から未融解部を離脱させる工程(放熱工程)とを少なくとも1回繰り返すと、包接水和物L1と原料溶液Lとの密度差に起因して未融解部を原料溶液の中の特定領域に偏在させることとなり、その特定領域における包接水和物の存在比率が相対的に高まり、また未融解部が融解して現れるゲスト分子の濃度が相対的に高まる。その結果、その特定領域におけるゲスト分子の濃度を相対的に高めることになる。
【0048】
ここで、未融解部は、包接水和物の塊状体の一部であるので、包接水和物のスラリーと異なり、溶媒への分散性は比較的小さく、溶媒の中での凝集性も比較的小さい。それ故、スラリーよりも迅速に、包接水和物と原料溶液との密度差に従って下方に沈降する。その過程で未融解部の一部は原料溶液に分散又は懸濁してスラリーとなり、比較的遅い速度で沈降してゆく。こうして未融解部は、塊状体やスラリーといった形態で貯留槽1の下方の領域に偏在することになる。また、貯留槽1の下方の領域に偏在するに至った未融解部が融解すると、例えば上方の原料溶液Lと拡散混合するに足るだけの長時間が経過しない限り又は上方の領域と下方の領域との間で強制的な攪拌を行わない限り、当初の原料溶液Lのゲスト分子の濃度より高い濃度の原料溶液となり滞留する。更に、下方の領域に滞留するに至った未融解部分、スラリー及び原料溶液は、蓄熱工程と放熱工程の繰返しの過程で、例えば上方の領域と下方の領域との間で強制的な攪拌を行わない限り、あたかも当該下方の領域に閉じ込められた状態になる。かくして、貯留槽1の上方には低濃度領域が、下方には高濃度領域がそれぞれ形成される。
【0049】
それ故、本発明によれば、原料溶液の中で、包接水和物の生成と融解を少なくとも1回繰り返すことにより、原料溶液の中の特定領域におけるゲスト分子の濃度を相対的に高めることを促進させることができる。
【0050】
また、包接水和物の生成と融解を繰り返すと、その繰返しのたびに熱交換器の外表面に付着していた包接水和物が融解するとともに、未融解部が熱交換器の外表面から離脱して行く。すると、未融解部が包接水和物と原料溶液との密度差に起因して原料溶液中の特定領域(包接水和物の方が原料溶液よりも密度が高い場合には、下方の領域)に集まり、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度が漸増し、当該特定領域に高濃度領域が形成され、それと同時に、当該特定領域とは別の領域の原料溶液における包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度は漸減する。この結果、熱交換器の外表面の周囲は低濃度領域となり、包接水和物が生成しにくい環境となる。
【0051】
ところが、熱交換器の外表面に付着していた包接水和物が融解するとともに、未融解部が熱交換器の外表面から離脱して行くと、その熱交換器の外表面は原料溶液への熱伝熱を妨げる包接水和物が存在しない又は殆ど存在しない状態になるので、熱交換器による熱交換の効果は高いまま維持され、故に低濃度領域の環境下であっても引き続き包接水和物の生成が起こる。勿論、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度が漸減すると、熱交換器の外表面に生成する包接水和物の量も漸減するが、熱交換器の外表面の熱伝達性が低下しない分だけより多くの包接水和物が生成し、塊状体となる。
【0052】
かくして、包接水和物の生成と融解を繰り返すことにより、熱交換器の外表面の周囲は低濃度領域となり、包接水和物が生成しにくい環境になっても、原料溶液中の特定領域に高濃度領域が形成され、同時に当該特定領域とは別の領域に低濃度領域が形成され、これが繰り返される。
【0053】
それ故、本発明によれば、原料溶液の中で、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返しても、原料溶液から包接水和物又はそのゲスト分子を下方の領域に累積的に偏在させることができ、包接水和物の存在比率又はそのゲスト分子の濃度が相対的に高い領域と相対的に低い領域とに速やかに、しかも効率的に、またゲスト分子の濃度の高低差がより明確になるように分離させることができ、原料溶液の中の特定領域におけるゲスト分子の濃度を相対的に高め、濃縮することを促進させることができる。
【0054】
なお、上述のとおり、熱交換器の外表面に付着していた包接水和物が融解するとともに、未融解部が熱交換器の外表面から離脱して行くと、熱交換器による熱交換の効果は高いまま維持され、故に低濃度領域の環境下であっても引き続き包接水和物の生成が起こる。このことは、本発明によれば、ゲスト分子の濃度が低い原料溶液からも当該ゲスト分子を速やかに、効率的に分離することができることを意味している。このような本発明の効果は、使用済みの原料溶液から包接化合物のゲスト分子を回収又は濃縮してこれを蓄熱材組成物としての再利用を企図する場合に特に有益である。
【0055】
また、熱交換器2の外表面において融解する包接水和物の量に比べて、その融解の結果、当該外表面から離脱して下方に沈降する未融解部における包接水和物の量の方が多いのが普通である。特に、熱交換器が伝熱管の場合には、包接水和物の塊状体は重力の影響を受けて、伝熱管の上方にある包接水和物の塊状体の限られた部分(伝熱管の直上又はその近傍の部分)のみが融解し易くなり、従ってより多くの未融解部が下方に沈降し易くなる。このような場合、特に熱交換器が伝熱管である場合には、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度の高低差がより明確になり易くなり、低濃度領域と高濃度領域の形成も効率的且つ迅速に起こり易くなるので、蓄熱工程と放熱工程とを繰り返すと否とに拘らず、本発明の実施形態として好ましい。
【0056】
図3は、包接水和物のゲスト分子として臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)の調和融点濃度未満である30wt%の水溶液を原料溶液として、図1の包接水和物を生成して蓄熱し、これを融解して放熱する装置により、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返した後における貯留槽1内の原料溶液中のTBAB濃度の高さ方向の分布を示したものである。ここで横軸は、原料溶液中のTBAB濃度、縦軸は、貯留槽1内の原料溶液の液面高さを1とした高さ比を示している。図3によると、TBABの包接水和物の密度は原料溶液より大きいが、下部にTBAB濃度の相対的に高い領域、上部にTBAB濃度の相対的に低い領域として分離していることが分かる。
【0057】
本実施形態では、種々の観点から、例えば、以下のごとく、さらに改善を加えることができる。
【0058】
(i)放熱工程の効率向上
図2において貯留槽1の下部に包接水和物の存在比率が高い領域が形成されている。この図2では水平方向に蛇行し高さ方向に連続して複数段を構成している一つの熱交換器の例を示しているが、貯留槽1の上方すなわち包接水和物の存在比率が低い領域(低濃度領域)と、下方すなわち包接水和物の存在比率が高い領域とに別々に熱交換器を設けて、放熱工程では、主に包接水和物の存在比率が高い領域(高濃度領域)に設けられた熱交換器により熱エネルギーを取り出すようにすれば効率的に、そして包接水和物の存在比率が高い領域に熱エネルギーを取り出すための熱交換器を密に設けるようにすればより効率的に、熱エネルギーを取り出すことができる。
【0059】
(ii)ゲスト分子の濃度の低い領域からの原料溶液の取出し
図4に見られるように、貯留槽1に収容されている原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させて濃縮させ、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度が相対的に高い領域(高濃度領域)Aを形成した後に、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度が相対的に低い領域(低濃度領域)Bからこの低濃度領域Bの原料溶液をポンプ3によって貯留槽1外に取り出す。これにより、貯留槽1内に濃縮されたゲスト分子を分離して残すことが可能なゲスト分子の濃縮分離方法を実現することができる。なお、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返した方がゲスト分子が効率的に濃縮されることは、図2の場合と同様である。それ故、図4に示す形態によりゲスト分子を効率的に濃縮して容器内に残すためには、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返す方が好ましい。
【0060】
なお、低濃度領域Bから原料溶液をポンプなどで貯留槽1外に取り出す際には、高濃度領域Aに存在する包接水和物やスラリーや原料溶液と低濃度領域Bに存在する原料溶液が対流によって混合するのを防ぎ効率的な濃縮分離をするために、原料溶液吸い込み口を複数箇所設けて低流速で吸い込むようにすることや、原料溶液吸い込み口を低濃度領域Bの液面に浮遊するような機構にすること等が考えられる。
【0061】
(iii)ゲスト分子の濃度の高い領域からの原料溶液の取出し
図5に見られるように、貯留槽1に収容されている原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させ、濃縮させ、包接水和物の存在比率又はゲスト分子の濃度が相対的に高い領域(高濃度領域)Aを形成した後に、高濃度領域Aからこの高濃度領域Aの原料溶液をポンプ4によって貯留槽1外に取り出す。これにより、貯留槽1内に濃縮されたゲスト分子を貯留槽1外に取り出して回収することが可能なゲスト分子の濃縮回収方法を実現することができる。なお、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返した方がゲスト分子が効率的に濃縮されることは、図2の場合と同様である。それ故、図5に示す形態によりゲスト分子を効率的に容器外に取り出すためには、包接水和物の生成と融解を複数回繰り返す方が好ましい。
【0062】
なお、高濃度領域Aから原料溶液をポンプなどで貯留槽1外に取り出す際には、高濃度領域Aに存在する包接水和物やスラリーや原料溶液と低濃度領域Bに存在する原料溶液が対流によって混合するのを防ぎ効率的な濃縮分離をするために、原料溶液吸い込み口を複数箇所設けて低流速で吸い込むようにすること等が考えられる。また、原料溶液吸い込み口の開口方向を包接水和物やスラリーがより多く存在する方向(蓄熱槽の底部方向)にすること、原料溶液吸い込み口の口径を包接水和物の塊状体の未融解部を吸込み易いように大きくすることにより、ゲスト分子の濃度の高い原料溶液を取り出すことができ、効率的な濃縮分離が可能になる。
【0063】
(iv)ゲスト分子の濃度の低い領域からの原料溶液の取出し後の、ゲスト分子の濃度の高い領域からの原料溶液の取出し
図6に見られるように、貯留槽1に収容されている原料溶液の中の特定領域にゲスト分子を偏在させ、濃縮させ、包接水和物の存在比率(ゲスト分子の濃度)が相対的に高い領域(高濃度領域)Aを形成した後に、開閉弁6を開け(開閉弁7は閉)、包接水和物の存在比率(ゲスト分子の濃度)が相対的に低い領域(低濃度領域)Bからこの低濃度領域Bの原料溶液をポンプ5によって貯留槽1外に取り出した後、開閉弁7を開け(開閉弁6は閉)、高濃度領域Aからこの高濃度領域Aの原料溶液をポンプ5によって貯留槽1外に取り出す。これにより、貯留槽1内に濃縮されたゲスト分子を分離して残した後、貯留槽1内に濃縮され残されたゲスト分子を貯留槽1外に取り出して回収することが可能となり、濃縮度の高いゲスト分子の濃縮回収方法を実現することができる。
【0064】
ポンプを低濃度領域Bの原料溶液の取り出し用と、高濃度領域Aの原料溶液の取り出し用に別に設けてもよい。
【0065】
(v)再生方法
図7は、図4乃至図6に示す包接水和物のゲスト分子の濃縮回収方法を用いて、原料溶液からゲスト分子を濃縮回収して、さらに、ゲスト分子を再使用することができるように再生する装置を示している。
【0066】
図7において、貯留槽(濃縮装置)1からゲスト分子の濃度が高い原料溶液(濃縮溶液)を抜出し、濃縮溶液貯槽9に貯留し、濃縮溶液を蒸発缶10にて加熱器11を用いて加熱することにより減水して高濃縮溶液を得て、これを高濃縮溶液貯槽12で貯留する。次に、晶析装置(分離器)13にて高濃縮溶液からゲスト分子を析出し、液と分離し、固体状のゲスト分子を得る。
【0067】
こうすることにより、濃縮溶液から不純物のない純度の高いゲスト分子を再生することができ、固体状で得ることができるので、貯蔵や輸送が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要図であり、蓄熱状態を示す。
【図2】図1に示す装置の放熱状態を示す。
【図3】原料溶液の相分離の様子を高さ方向に関して示す図である。
【図4】図1に示す装置の変形例を示す図である。
【図5】図1に示す装置の他の変形例を示す図である。
【図6】図1に示す装置のさらに他の変形例を示す図である。
【図7】図4〜6に示す各装置を用いて包接水和物のゲスト分子の濃縮回収を行う装置を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 貯留槽
2 熱交換器
L 原料溶液
L1 包接化合物(包接水和物)
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
【出願日】 平成19年3月19日(2007.3.19)
【代理人】 【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹


【公開番号】 特開2008−230989(P2008−230989A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−69823(P2007−69823)