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【発明の名称】 接触還元方法及びカップリング方法
【発明者】 【氏名】佐治木 弘尚

【氏名】門口 泰也

【氏名】前川 智弘

【氏名】藤田 有希

【要約】 【課題】有機化合物を合成する際に有利に用いられ得る接触還元方法及びカップリング方法であって、環境への負荷が小さいものを提供すること。

【解決手段】基質及び不均一系白金族触媒を、溶媒としての液体が存在しない水素ガス雰囲気中にて混合し、攪拌する。又は、有機ホウ素化合物と、有機ハロゲン化物又はその等価体と、塩基と、不均一系白金族触媒とを、溶媒としての液体が存在しない状態下において、混合し、攪拌する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質及び不均一系白金族触媒を、溶媒としての液体が存在しない水素ガス雰囲気中にて混合し、攪拌することを特徴とする接触還元方法。
【請求項2】
有機ホウ素化合物と、有機ハロゲン化物又はその等価体と、塩基と、不均一系白金族触媒とを、溶媒としての液体が存在しない状態下において混合し、攪拌することを特徴とする有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物又はその等価体とのカップリング方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、接触還元方法及びカップリング方法に係り、特に、種々の化合物の合成方法等として有利に用いられ得る接触還元方法及びカップリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の化合物を合成するに際して、原料化合物たる基質を、適当な触媒の存在下に、水素を用いて還元する接触還元方法が広く採用されている。かかる接触還元方法は、適当に加熱された触媒上に基質の蒸気と水素ガスとを通じる気相法と、基質及び触媒を有機溶媒中に分散してなる溶液に、水素ガスを、振盪又は攪拌等により接触せしめる液相法とに大別され、沸点が低い基質を還元する場合には気相法が用いられる一方、気相法に適しない基質に対しては、一般に、溶媒を用いる液相法が用いられている(非特許文献1〜3を参照)。
【0003】
一方、同一の有機化合物間、或いは二種類の異なる有機化合物間において、各々の化合物分子中の炭素原子同士を結合させることにより、新規な有機化合物を創製するに際しては、従来より、種々のカップリング方法が用いられているが、そのようなカップリング方法の一つとして、有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物(又はその等価体)との反応(鈴木−宮浦カップリング反応)に基づくカップリング方法が知られている。このカップリング方法においても、有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物とをパラジウム触媒等の触媒上にて効率良く接触せしめる観点から、基質たる有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物(又はその等価体)と、塩基と、触媒とを、所定の有機溶媒中に分散させ、その溶液を攪拌、混合することによって実施されている(非特許文献4を参照)。
【0004】
このように、従来の接触還元方法(液相法)、及び鈴木−宮浦カップリング反応に基づくカップリング方法にあっては、何れも、環境への負荷が大きい有機溶媒を用いるものであるところから、その実施に際しては、溶媒の除去等を行なう処理工程やその処理装置・設備が必要であった。このような状況の下、グリーンケミストリー(環境に優しい化学技術)の観点から、環境への負荷が小さな有機化合物の合成方法が求められているのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】西村重夫、高木弦著、「接触水素化反応 −有機合成への応用−」、株式会社東京化学同人、1987年4月、p.82-89
【非特許文献2】西村重夫(SHIGEO NISHIMURA)著、「HANDBOOK OF HETEROGENEOUS CATALYTIC HYDROGENATION FOR ORGANIC SYNTHESIS 」(米国)、JOHN WILEY & SONS, INC. 、2001年、p.52-53
【非特許文献3】化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典 縮刷版」、共立出版株式会社、1963年11月15日、第5巻、p.349-350
【非特許文献4】富岡清監訳、「人名反応に学ぶ有機合成戦略」、株式会社化学同人、2006年8月15日、p.448-449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、有機化合物を合成する際に有利に用いられ得る接触還元方法及びカップリング方法であって、環境への負荷が小さいものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明者等が鋭意検討を重ねたところ、従来は溶媒が必要と考えられていた接触還元反応、及び鈴木−宮浦カップリング反応が、溶媒としての液体が存在しない状態下においても効果的に進行することを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、基質及び不均一系白金族触媒を、溶媒としての液体が存在しない水素ガス雰囲気中にて混合し、攪拌することを特徴とする接触還元方法を、その要旨とするものである。
【0009】
また、本発明は、有機ホウ素化合物と、有機ハロゲン化物又はその等価体と、塩基と、不均一系白金族触媒とを、溶媒としての液体が存在しない状態下において混合し、攪拌することを特徴とする有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化物又はその等価体とのカップリング方法をも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従う接触還元方法及びカップリング方法は、何れも、溶媒としての液体が存在しない状態下において実施する方法、即ち、実施後の処理に際し環境へ負荷がかかる溶媒を用いない方法であるところから、それら接触還元方法及びカップリング方法を、種々の有機化合物を合成する際に用いると、環境に悪影響を与えることなく、目的とする有機化合物を得ることが出来るのである。また、溶媒を用いないものであることにより、従来の接触還元方法やカップリング方法を用いて有機化合物を合成する際には必要とされていた溶媒の処理工程や処理装置が不要となり、製造の簡略化や製造設備の小型化等が有利に図られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ところで、本発明に係る接触還元方法が適用され得る基質、換言すれば、本発明の接触還元方法によって還元することが可能な基質は、従来の接触還元方法が適用される基質と同様のものである。即ち、接触水素化が可能な部位(基、原子等)を有する化合物であれば、本発明の接触還元方法を適用することが可能である。ここで、接触水素化が可能な部位(基、原子等)とは、例えば、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、アジド基、ニトロ基、アルデヒド基、ケトン基(−CO−)、ハロゲン原子等を挙げることが出来、そのような部位(基、原子等)を分子内に有する化合物としては、芳香族アルケン、脂肪族アルケン、芳香族アルキン、脂肪族アルキン、アジド化合物、芳香族ニトロ化合物、脂肪族ニトロ化合物、芳香族アルデヒド、脂肪族アルデヒド、芳香族ケトン、脂肪族ケトン、芳香族ハライド、脂肪族ハライド等を、例示することが出来る。なお、基質として芳香族ハライドや脂肪族ハライド等を用いる場合には、脱離するハロゲン原子を効果的に捕捉するために、従来の接触還元方法と同様、K2CO3やCs2CO3等の塩基が併用される。
【0012】
また、本発明の接触還元方法は、上記した基質の他に、Cbz(ベンジルオキシカルボニル基)やFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基)等の保護基を有する保護アミノ酸に対しても、適用することが出来る。このような保護アミノ酸に対して本発明の接触還元方法を適用すると、保護基が効果的に脱離(脱保護)する。
【0013】
なお、上述の如き化合物であれば、常温・常圧下で固体、液体を問わず、本発明の接触還元方法を適用可能である。特に、市販されている化合物であれば、市販されている形態(粉状体、粒状体、液体)のまま、前処理をすることなく使用することが出来る。
【0014】
そのような化合物を基質として、本発明に従って接触還元するに際しては、不均一系白金族触媒が用いられるが、本発明においては、従来より公知の不均一系白金族触媒の何れをも用いることが可能である。具体的には、白金族金属を、活性炭等の炭素材料、アルミナ、シリカ、珪藻土、モレキュラーシーブ、絹又は各種高分子等からなる坦体にて坦持されたものを挙げることが出来,中でも、炭素材料にて坦持された不均一系白金族触媒が有利に用いられ得る。かかる炭素材料にて坦持された不均一系白金族触媒のうち、特に、Pd/C触媒、Pt/C触媒、Rh/C触媒、Ru/C触媒及びIr/C触媒からなる群より選ばれた少なくとも一種以上が有利に用いられ、特に、Pd/C触媒が有利に用いられる。
【0015】
なお、かかるPd/C触媒(Pt/C触媒、Rh/C触媒、Ru/C触媒、Ir/C触媒)としては、一般に、Pd(Pt、Rh、Ru、Ir)の坦持量(含有量)が、触媒の全重量中の1〜30重量%を占めるもの、好ましくは3〜20重量%を占めるものが、有利に用いられる。Pd等の金属含有量が多い触媒ほど、その使用効果(触媒効果)は認められるものの、上述したようなカーボンにて坦持された不均一系白金族触媒は、一般に高価であることから、費用対効果の観点より、白金族金属の含有量が30重量%以下のものが、一般には用いられることとなる。
【0016】
また、本発明に従う接触還元方法において、上述の如き不均一系白金族触媒の使用量は、基質の種類や使用量等に応じて適宜に決定されることとなるが、一般に、その使用量が少な過ぎると、充分な使用効果(触媒効果)が発揮されず、その一方、使用量が多過ぎても、使用量に応じた効果の向上は認められず、また、基質との混合、攪拌が充分に進行しない場合もある。従って、本発明の接触還元方法における不均一系白金族触媒の使用量は、一般に、基質の100重量部に対して、1〜100重量部程度の割合となるような量において、使用される。
【0017】
そして、本発明の接触還元方法にあっては、上述の基質及び不均一系白金族触媒を用いて、例えば、以下のような手法に従って実施されることとなる。
【0018】
すなわち、先ず、基質及び不均一系白金族触媒を、攪拌装置付の反応槽内に投入する。次いで、反応槽を密封して、その内部を水素ガスにて充填せしめ、その状態にて基質及び不均一系白金族触媒を攪拌、混合する。所定時間経過後、反応槽内より反応物を取り出し、所定の手順に従って触媒を除去することにより、目的とする反応物(基質の水素化物)が得られるのである。
【0019】
なお、かかる手法において本発明の接触還元方法を実施するに際しては、基質及び不均一系白金族触媒の種類や使用量等に応じて、反応槽内が加熱されたり、反応槽内の水素ガス圧が設定されることとなる。また、用いられる反応槽や攪拌装置も、従来より公知の各種のものの中から、基質等の種類や使用量等、更には実施規模等に応じたものが適宜に選択されて、使用される。
【0020】
一方、本発明に従うカップリング方法において、基質として用いられる有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物は、従来より公知の各種有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物の中から、目的とする生成物に応じたものが適宜に選択されることとなる。
【0021】
具体的に、有機ホウ素化合物としては、一般式:R1 −B(R)2 [R1 :アルキル基、アリール基又はアラルキル基、R:アルキル基、水酸基又はアルコキシ基]で表わされる化合物を、適用することが出来る。
【0022】
また、有機ハロゲン化物又はその等価体としては、一般式:R2 −X[R2 :アラルキル基又はアルキル基、X:Cl、Br、トリフルオロメタンスルホン酸基又はリン酸エステル基]で表わされる化合物を、適用することが出来る。
【0023】
本発明のカップリング方法においては、従来の鈴木−宮浦カップリング反応に基づくカップリング方法と同様に、有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物(又はその等価体)と共に所定の塩基が用いられることとなる。そのような塩基としては、従来の鈴木−宮浦カップリング反応に基づくカップリング方法に用いられ得るもの、具体的には、Na2CO3、Ba(OH)2 、K3PO4、Cs2CO3、K2CO3、KF、CsF、Bu4NF 、NaOH、各種金属アルコラート等を例示することが可能であり、それらの中から、有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物(又はその等価体)の種類や使用量等に応じたものが適宜に選択されて、使用される。
【0024】
また、本発明に係るカップリング方法においても、上述した接触還元方法と同様に、不均一系白金属触媒が用いられるところ、従来より公知のものであれば、如何なるものであっても使用することが可能である。具体的には、白金族金属を、活性炭等の炭素材料、アルミナ、シリカ、珪藻土、モレキュラーシーブ、絹又は各種高分子等からなる坦体にて坦持されたものを挙げることが出来,中でも、炭素材料にて坦持された不均一系白金族触媒が有利に用いられ得る。かかる炭素材料にて坦持された不均一系白金族触媒のうち、特に、Pd/C触媒、Pt/C触媒、Rh/C触媒、Ru/C触媒及びIr/C触媒からなる群より選ばれた少なくとも一種以上が有利に用いられ、特に、Pd/C触媒が有利に用いられる。
【0025】
なお、かかるPd/C触媒(Pt/C触媒、Rh/C触媒、Ru/C触媒、Ir/C触媒)としては、一般に、Pd(Pt、Rh、Ru、Ir)の坦持量(含有量)が、触媒の全重量中の1〜30重量%を占めるもの、好ましくは3〜20重量%を占めるものが、有利に用いられる。Pd等の金属含有量が多い触媒ほど、その使用効果(触媒効果)は認められるものの、上述したようなカーボンにて坦持された不均一系白金族触媒は、一般に高価であることから、費用対効果の観点より、白金族金属の含有量が30重量%以下のものが、一般には用いられることとなる。
【0026】
また、本発明に従うカップリング方法において、上述の如き不均一系白金族触媒の使用量は、基質たる有機ホウ素化合物及び有機ハロゲン化物(又はその等価体)の種類や、使用量等に応じて、適宜に決定されることとなるが、一般に、その使用量が少な過ぎると、充分な使用効果(触媒効果)が発揮されず、その一方、使用量が多過ぎても、使用量に応じた効果の向上は認められず、また、基質との混合、攪拌が充分に進行しない場合もある。従って、本発明のカップリング方法における不均一系白金族触媒の使用量は、一般に、基質の100重量部に対して、1〜100重量部程度の割合となるような量において、使用される。
【0027】
そして、本発明のカップリング方法にあっては、上述の如き有機ホウ素化合物、有機ハロゲン化物(又はその等価体)、塩基、及び不均一系白金族触媒を用いて、例えば、以下のような手法に従って実施されることとなる。
【0028】
すなわち、有機ホウ素化合物と、有機ハロゲン化物又はその等価体と、塩基と、不均一系白金族触媒とを、攪拌装置付の反応槽内に投入する。次いで、反応槽内の有機ホウ素化合物等を攪拌、混合する。所定時間経過後、反応槽内より反応物を取り出し、所定の手順に従って塩基及び触媒を除去することにより、目的とする反応物(カップリング化合物)が得られるのである。
【0029】
ここで、かかる手法において本発明のカップリング方法を実施するに際しては、有機ホウ素化合物、有機ハロゲン化物(又はその等価体9)及び不均一系白金族触媒の種類や使用量等に応じて、反応槽内が加熱されることとなる。また、用いられる反応槽や攪拌装置は、従来より公知の各種のものの中から、有機ホウ素化合物等の種類や使用量等、更には実施規模等に応じたものが適宜に選択されて、使用される。
【0030】
なお、従来より、パラジウム系触媒を用いた鈴木−宮浦カップリング反応の反応機構は、[1]Pd(0)に対する有機ハロゲン化物の酸化付加によるPd(II)の形成、[2]塩基によるパラジウムに結合したアニオン配位子の交換、[3]Pd(II)中間体とアルキルボラート錯体とのトランスメタル化、[4]還元脱離によるC−Cσ結合の形成とPd(0)の再生、の四段階から構成されると考えられている(非特許文献4を参照)。本発明のカップリング方法における反応機構については、未だ充分に明らかにされているものではないが、本発明者等は、従来と同様の反応機構にて進行するものと考えている。
【0031】
上述したように、本発明に従う接触還元方法及びカップリング方法にあっては、何れも、環境に悪影響を与え得る有機溶媒を用いないものであるところから、グリーンケミストリーの観点から非常に有用な手法であり、種々の有機化合物を合成する際に有利に用いられるのである。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも設けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0033】
なお、以下の各実験例においては、不均一系白金族触媒を、例えば「10%Pd/C触媒」等と表現しているが、これは、触媒の全重量中におけるPd(白金族金属)の坦持量(重量)の占める割合が10%(重量%)であって、坦体がC(カーボン)であるものを意味する。また、以下の実施例中の実験例1〜8において、不均一系白金族触媒は、基質の100重量部に対して白金族触媒が10重量部となるような量的割合において、使用した。更に、以下の実施例において、触媒を濾別(濾去)する際には、特段の記載がない限りMillipore 社製のメンブランフィルター(Millex-LH、Millex は登録商標、フィルター孔径:0.45μm)を用い、加えて、反応終了後の生成物については 1H−NMR測定を行ない、その測定結果より化合物を特定した。
【0034】
−実験例1−
試験管内に、アリルフェニルエーテルの1.0mmol(134mg)と、10%Pd/C触媒(Aldrich 社製)とを投入し、軽く混合した後、試験管口に、内部が水素ガスで満たされたバルーンを取り付けた。かかる状態の下、室温にて24時間、試験管内を撹拌した。24時間経過した後、バルーンを取り外し、試験管内に20mLのエーテルを加え、その溶液中に懸濁しているPd/C触媒を濾去した後、溶媒を減圧留去したところ、アリルフェニルエーテル中のアリル基が水素化されたフェニルプロピルエーテルが85.2mg、無色のオイルとして得られた。なお、収率は63%であった。
【0035】
−実験例2−
基質として、2−フェニル−3−ブチン−2−オールの1.0mmol(146mg)を用いた以外は実験例1と同様にして、2−フェニル−3−ブチン−2−オールの接触還元を実施したところ、そのアルキレン基が水素化された2−フェニル−2−ブタノールが132.9mg、無色のオイルとして得られた。なお、収率は89%であった。
【0036】
−実験例3−
基質として、(4−アジドフェニル)(フェニル)メタノンの0.125mmol(28mg)を用いた以外は実験例1と同様にして、(4−アジドフェニル)(フェニル)メタノンの接触還元を実施したところ、そのアジド基が水素化された4−アミノベンゾフェノンが21.8mg、白色結晶として得られた。なお、収率は78%であった。
【0037】
−実験例4−
基質として、ニトロベンゼンの1.0mmol(123mg)を用いた以外は実験例1と同様にして、ニトロベンゼンの接触還元を実施したところ、そのニトロ基が水素化されたアニリンが84.4mg、褐色のオイルとして得られた。なお、収率は91%であった。
【0038】
−実験例5−
基質としてジフェニルアセチレンの1.0mmol(178mg)を用い、攪拌時間を0.5時間、1時間、2時間又は2.5時間とした以外は実験例1と同様にして、ジフェニルアセチレンの接触還元を実施した(実験例5a〜5d)。生成物については 1H−NMR測定を実施し、その積分比より、ジフェニルエチレンとジフェニルエタンの生成比を算出した。その結果を、下記表1に示す。なお、攪拌時間を2.5時間とした場合(実験例5d)にあっては、生成物がすべてジフェニルエタン(180mg、白色結晶)であった(収率:99%)。
【0039】
【表1】


【0040】
−実験例6−
試験管内に、ジフェニルアセチレの1.0mmol(178mg)と、10%Pd/C触媒(Aldrich 社製)とを投入し、軽く混合した後、試験管口に、内部が水素ガスで満たされたバルーンを取り付けた。かかる状態の下、室温にて5時間、試験管内を撹拌した。5時間経過した後、バルーンを取り外し、試験管内に20mLのエーテルを加え、その溶液中に懸濁しているPd/C触媒を桐山式ロートを用いて濾去した後、溶媒を減圧留去したところ、白色結晶のジフェニルエタンが得られた。回収したPd/C触媒を充分に乾燥し、かかる乾燥後のPd/C触媒を用いて同様の接触還元を実施した。これを4回繰り返した(同一のPd/C触媒を用いて、ジフェニルアセチレンの接触還元を5回実施した)ところ、何れにおいても、生成物中のジフェニルエタンの生成比は100(ジフェニルアセチレン及びジフェニルエチレンは共に0)であった。
【0041】
−実験例7−
試験管内に、ジフェニルアセチレンの1.0mmol(134mg)と、不均一系白金族触媒として、10%Pd/C触媒(Aldrich 社製)、5%Pd/BaSO4 触媒(Aldrich 社製)、5%Pd/Alpowder触媒(坦体:粉末Al、Aldrich 社製)、10%Pd/C触媒(N. E. Chemcat社製、商品名:K type(wet))、2.5%Pd/Fib触媒(坦体:絹の構成タンパクであるフィブロイン、和光純薬工業株式会社製)、又は、17.8mgのPd black(キシダ化学株式会社製)の何れかを投入し、軽く混合した。次いで、試験管口に、内部が水素ガスで満たされたバルーンを取り付け、かかる状態の下、室温にて3時間、試験管内を攪拌した。その後、バルーンを取り外し、試験管内に20mLのエーテルを加え、その溶液中に懸濁している触媒を濾去した後、溶媒を減圧留去することにより、生成物を得た。得られた各生成物について 1H−NMR測定を実施し、生成物を特定すると共に、混合物にあっては、ジフェニルエチレンとジフェニルエタンの生成比を算出した。その結果を、下記表2に示す。なお、10%Pd/C触媒(Aldrich 社製)、5%Pd/BaSO4 触媒、5%Pd/Alpowder触媒、及び10%Pd/C触媒(N. E. Chemcat社製、商品名:K type(wet))を用いた場合(実験例7a〜7d)にあっては、生成物がすべてジフェニルエタン(白色結晶)であった。
【0042】
【表2】


【0043】
−実験例8−
試験管内に、N−(ベンジルオキシカルボニル)グリシン[Cbz−Gly−OH]の1.0mmol(209mg)と、10%Pd/C触媒(Aldrich 社製)とを投入し、軽く混合した後、試験管口に、内部が水素ガスで満たされたバルーンを取り付けた。かかる状態の下、室温にて24時間、試験管内を攪拌した。24時間経過した後、バルーンを取り外し、試験管内にエーテル:10mLと水:10mLとを加え、その溶液中に懸濁しているPd/C触媒を除去した後、水層を減圧留去したところ、白色結晶のグリシン(67.3mg)が得られた。なお、収率は90%であった。
【0044】
−実験例9−
試験管内に、4−ニトロブロモベンゼンの0.5mmol(101mg)と、4−メトキシボロン酸の0.55mmol(83.6mg)と、K2CO3の0.75mmol(103.7mg)と、10%Pd/C触媒(N. E. Chemcat社製、商品名:K type(wet))の8mgとを投入し、下記表3に示す温度にて、各々、24時間、攪拌した。なお、室温を超える温度の場合は加熱した。24時間経過後、反応液にエーテル:10mLと水:10mLとを加え、触媒をメンブランフィルター(Millipore 社製、Millex-LH、Millex は登録商標、フィルター孔径:0.45μm)を用いて濾去した後、エーテル層を飽和食塩水にて洗浄し、更に、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)にて精製したところ、4−メトキシ−4’−ニトロビフェニルが下記表3に示す収率にて得られた。
【0045】
【表3】


【0046】
−実験例10−
塩基として、下記表4に示すものの何れかを0.75mmol用い、また、攪拌の際の温度を80℃とした以外は実験例9と同様にして、4−ニトロブロモベンゼンと4−メトキシボロン酸とのカップリングを実施した(実験例10a〜10f)。実験例9と同様の手法に従って、生成物を単離、精製したところ、4−メトキシ−4’−ニトロビフェニルが下記表4に示す収率にて得られた。
【0047】
【表4】


【0048】
−実験例11−
有機ハロゲン化物又はその等価体として、4−ニトロブロモベンゼン又は4−ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホナートの何れかを、また、塩基として0.75mmolのCs2CO3(244.4mg)を用い、更に、攪拌の際の温度を80℃とした以外は実験例9と同様にして、下記表5に掲げる何れかの有機ハロゲン化物又はその等価体と4−メトキシボロン酸とのカップリングを実施した(実験例11a、11b)。実験例9と同様の手法に従って、生成物を単離、精製したところ、4−メトキシ−4’−ニトロビフェニルが、各々、そこに示す収率にて得られた。
【0049】
【表5】



【出願人】 【識別番号】805000018
【氏名又は名称】財団法人名古屋産業科学研究所
【出願日】 平成19年2月28日(2007.2.28)
【代理人】 【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄

【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博


【公開番号】 特開2008−214194(P2008−214194A)
【公開日】 平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願番号】 特願2007−49262(P2007−49262)