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【発明の名称】 トリフルオロメチル化用反応試剤
【発明者】 【氏名】山川 哲

【氏名】山本 今日子

【氏名】浦口 大輔

【氏名】徳久 賢治

【要約】 【課題】汎用性が高く効率の良いトリフルオロメチル化用反応試剤を提供する。

【解決手段】鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、スルホキシド類、および過酸化物から成るトリフルオロメチル化用反応試剤であって、更に酸を含んでもよい。例えば鉄化合物としては、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉が例示でき、スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシドが例示でき、過酸化物としては、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が例示でき、酸としては、硫酸、テトラフルオロホウ酸またはトリフルオロメタンスルホン酸が例示できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、過酸化物およびスルホキシド類からなることを特徴とする、トリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項2】
請求項1に記載の反応試剤において、さらに酸を含むことを特徴とする、トリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項3】
鉄化合物とヨウ化トリフルオロメチルのモル比が1:1から1:100であることを特徴とする、請求項1または2に記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項4】
鉄化合物と過酸化物のモル比が1:1から1:50であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項5】
鉄化合物とスルホキシド類のモル比が1:50から1:30000であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項6】
鉄化合物と酸のモル比が1:0.001から1:50であることを特徴とする、請求項2から5のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項7】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項8】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項9】
過酸化物が、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項10】
過酸化物が、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項11】
スルホキシド類が、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシドまたはジフェニルスルホキシドであることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項12】
スルホキシド類が、ジメチルスルホキシドであることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項13】
酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸であることを特徴とする、請求項2から12のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【請求項14】
酸が、硫酸、テトラフルオロホウ酸またはトリフルオロメタンスルホン酸であることを特徴とする、請求項2から13のいずれかに記載のトリフルオロメチル化用反応試剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロメチル化に用いられる反応試剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の有機化合物にトリフルオロメチル基を導入することにより、医農薬の生理活性向上、機能性材料の性能向上など極めて多くの効能をもたらすことは良く知られている。そのため、これまでに有機化合物を直接トリフルオロメチル化する反応試剤が検討されてきた。
【0003】
非特許文献1から5に記載のトリフルオロメタンスルホン酸−S−(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウムは、多くの有機化合物の炭素−水素結合を、炭素−トリフルオロメチル結合に変換できるが、トリフルオロメタンスルホン酸−S−(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウムの製造が極めて煩雑で、高価であることが欠点である。
【0004】
非特許文献6および7には、ジクロロジフルオロメタン、ジブロモジフルオロメタンまたはブロモクロロジフルオロメタンと、カドミウム、亜鉛または銅を用いるトリフルオロメチル化反応が開示されているが、適用できる反応は、有機ハロゲン化物中のハロゲンとトリフルオロメチル基の置換反応に限定される。
【0005】
非特許文献8には、ヨウ化トリフルオロメチルを無水トリフルオロ酢酸中で過酸化水素により酸化し、さらにトリフルオロメタンスルホン酸とベンゼンを反応させて得られるトリフルオロメタンスルホン酸(トリフルオロメチル)フェニルヨードニウムを用い、ベンゼン類から対応するトリフルオロメチルベンゼン類が製造されることが記載されている。しかしながら、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフルオロメチル)フェニルヨードニウムの製造が煩雑であり、工業的には使用し難い。
【0006】
非特許文献9には、トリフルオロ酢酸と二フッ化キセノンを用いた核酸塩基類やベンゼン類のトリフルオロメチル化が開示されている。しかしながら、二フッ化キセノンは、原料となるキセノンが高価であり、また水に不安定なため、工業的規模で用いるには不適当である。
【0007】
ハロゲン化トリフルオロメチルを用いて有機化合物を直接トリフルオロメチル化する方法としては、銅粉とヨウ化トリフルオロメチルを用いる方法が、非特許文献10に開示されている。しかし、工業的に使用し難いヘキサメチルリン酸トリアミドを溶媒として用いることや、環境負荷の大きい銅化合物を用いる問題点がある。また、ヨウ化トリフルオロメチルとトリエチルボランを用いる方法も知られているが(非特許文献11)、適用される基質はリチウムジイソプロピルアミドによりエノール化されるカルボニル化合物に限定される。さらに、非特許文献12には、臭化トリフルオロメチル、亜鉛および二酸化イオウを用いることにより、ベンゼン類、ピリジン類、ピロール類のトリフルオロメチル化が可能であることが開示されている。また、同文献に、臭化トリフルオロメチルと亜ジチオン酸ナトリウムを用いても、同様の反応が進行することが記載されている。いずれも含イオウの有毒物質を含むため、工業的規模では使用し難い。
【0008】
特許文献1には、ヨウ化パーフルオロアルキルとジ−tert−ブチルパーオキシドを用いた、ベンゼン類のパーフルオロアルキル化が開示されている。この方法で用いるジ−tert−ブチルパーオキシは、爆発性が高く、工業的規模では使用し難い。
【0009】
非特許文献13には、四フッ化イオウにより、フラン環上のカルボキシ基を、トリフルオロメチル基に変換する方法が開示されている。しかしながら、カルボキシ基をもつ基質に限定されること、および有毒の四フッ化イオウを用いる点が問題である。
【0010】
一方、ヨウ化パーフルオロブチルを用い、硫酸鉄(II)と過酸化水素存在下にジメチルスルホキシド中でベンゼン類をパーフルオロブチル化する反応(非特許文献14)や、ヨウ化パーフルオロプロピルやヨウ化パーフルオロブチルを用い、硫酸鉄(II)と過酸化水素存在下にジメチルスルホキシド中でピロール類およびインドール類のパーフルオロプロピル化およびパーフルオロブチル化(非特許文献15)が知られているが、ヨウ化トリフルオロメチルを用いた反応例はなく、本発明のトリフルオロメチル化用反応試剤に関する記載は一切ない。
【0011】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters,31巻,3579−3582ページ,1990年
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society,115巻,2156−2164ページ,1993年
【非特許文献3】Journal of Organic Chemistry,59巻,5692−5699ページ,1994年
【非特許文献4】Jornal of Fluorine Chemistry,74巻,77−82ページ,1995年
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry,68巻,8726−8729ページ,2003年
【非特許文献6】Journal of the American Chemical Society,107巻,5014−5015ページ,1985年
【非特許文献7】Journal of the American Chemical Society,108巻,832−834ページ,1986年
【非特許文献8】有機合成化学協会誌,41巻,251−265ページ,1983年
【非特許文献9】Journal of Organic Chemistry,53巻,4582−4585ページ,1988年
【非特許文献10】Journal of Chemical Society,Perkin Transaction I、2755−2761ページ、1980年
【非特許文献11】Organic Letters,7巻,4883−4885ページ,2005年
【非特許文献12】Journal of Chemical Society,Perkin Transaction I、2293−2299ページ、1990年
【非特許文献13】Journal of Fluorine Chemistry、75巻、115−116ページ、1995年
【特許文献1】米国特許第3,271,441号明細書
【非特許文献14】Journal of Organic Chemistry、62巻、7128−7136ページ、1997年
【非特許文献15】Tetrahedron Letters、34巻、3799−3800ページ、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、汎用性が高く効率の良いトリフルオロメチル化用反応試剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、先の課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、過酸化物およびスルホキシド類からなる反応試剤を用いることにより、適当なsp炭素をトリフルオロメチル化できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、過酸化物およびスルホキシド類からなることを特徴とするトリフルオロメチル化用反応試剤に関するものである。以下に詳細を述べる。
【0014】
本発明で用いることのできる鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)塩または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、本発明の試剤を構成する過酸化物をそのまま酸化試薬として用いることもできる。
【0015】
収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉を用いることが望ましい。
【0016】
本発明で用いることのできる過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
【0017】
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3から70重量%であれば良いが、市販の35重量%をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、水で希釈して10から30重量%とすることがさらに望ましい。
【0018】
本発明で用いることのできるスルホキシド類は例えば、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジ−sec−ブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、(R)−(+)−メチル−p−トリルスルホキシド、(S)−(−)−メチル−p−トリルスルホキシドまたはジフェニルスルホキシド等が例示できる。収率が良く、また安価である点で、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシドまたはジフェニルスルホキシドが望ましく、ジメチルスルホキシドがさらに望ましい。
【0019】
鉄化合物とヨウ化トリフルオロメチルのモル比は、1:1から1:100が望ましく、1:1から1:30がさらに望ましい。
【0020】
鉄化合物と過酸化物のモル比は、1:1から1:50が望ましく、1:1から1:10がさらに望ましい。
【0021】
鉄化合物とスルホキシド類のモル比は、1:50から1:30000が望ましく、1:100から1:10000がさらに望ましい。
【0022】
本反応試剤は、酸をさらに加えても良い。用いることのできる酸は例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルオロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸のいずれでも良く、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で硫酸、テトラフルオロホウ酸またはトリフルオロメタンスルホン酸が望ましく、硫酸がさらに望ましい。
【0023】
また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム等を例示できる。
【0024】
酸を加える際の鉄化合物と酸のモル比は、1:0.001から1:50が望ましく、1:1から1:5がさらに望ましい。
【0025】
本反応試剤は、20℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で使用することができる。収率が良い点で20℃から70℃が望ましい。
【0026】
本反応試剤は、鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、過酸化物、スルホキシド類および場合によっては酸の溶解度に応じて、溶媒中で使用することもできる。用いることのできる溶媒は例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等が挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。また、反応温度で液体であるスルホキシド類、すなわち、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド等を溶媒としても良い。収率が良い点で、水、スルホキシド類、または水とスルホキシド類の混合溶媒を用いることが望ましい。使用する溶媒量は、鉄化合物の溶解度にもよるが、鉄化合物の濃度が、0.1から10mol/Lとなる量が望ましく、0.5から5mol/Lとなる量がさらに望ましい。
【0027】
ヨウ化トリフルオロメチルは、溶液とせずに、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ヨウ化トリフルオロメチルのモル分率が1から100%の混合気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ヨウ化トリフルオロメチルまたは混合気体を反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、開放系でヨウ化トリフルオロメチルまたは混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のヨウ化トリフルオロメチルまたは混合気体の導入速度は、反応のスケール、触媒量、反応温度、混合気体のヨウ化トリフルオロメチルのモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度で良い。
【0028】
本反応試剤を用いることにより、種々の有機化合物を基質とし、それらをトリフルオロメチル化することができるが、とりわけ分子中にエナミン部位を持つ化合物、フラン類、チオフェン類およびベンゼン類を効率よくトリフルオロメチル化することができる。エナミン部位を持つ化合物としては、エナミン類、N−ビニルラクタム類、ウラシル類、プソイドウラシル類、チミン類、シトシン類、アデニン類、グアニン類、ヒポキサンチン類、キサンチン類、ピラゾール類、インドール類、ピロール類、トリアゾール類、アニリン類、ピリジン類、ピリミジン類、ピラジン類等を例示することができる。
【0029】
鉄化合物とこれらの基質のモル比は、1:0.1から1:1000が望ましく、1:1から1:50がさらに望ましい。
【0030】
本発明の反応試剤を構成する鉄化合物、ヨウ化トリフルオロメチル、過酸化物およびスルホキシド類の反応基質への接触順序には特に限定はなく、順次接触させてもよく、またすべて同時に接触させてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の反応試剤は、医農薬品や機能性材料、ならびにそれらの製造中間体などの有用な化合物であるトリフルオロメチル基を有する有機化合物を、高収率で効率良く製造できる汎用試剤として工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0032】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
【0034】
【化1】


二口フラスコに2,6−ジアミノプリン0.12g(0.8mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド3.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.8mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.25mLおよび30%過酸化水素水0.15mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリンの生成を確認した(生成率40%)。反応溶液に水を加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、目的物を酢酸エチルに抽出した。抽出液をカラムクロマトグラフィーに通じ減圧濃縮することにより、2,6−ジアミノ−8−トリフルオロメチルプリンを白色固体として得た(0.043g、収率20%)。
【0035】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.17(s,2H),7.26(s,2H),12.2(brs,1H).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ114.8,116.0(q,JCF=269.1Hz),144.3,152.7,157.0,161.7.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−62.6.
MS(m/z):218[M]
【0036】
(実施例2)
【0037】
【化2】


二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.1mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.5mL、30%過酸化水素水0.1mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.15mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質として19F−NMRにより5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率90%)。実施例1と同様の操作により、5−トリフルオロメチルウラシルを白色固体として得た(0.16g、収率87%)。
【0038】
H−NMR(重アセトン):δ8.09(s,1H),10.5(brs,2H).
13C−NMR(重アセトン):δ104.0(q,JCF=32.4Hz),123.6(q,JCF=268.2Hz),144.2(q,JCF=5.9Hz),150.9,160.2.
19F−NMR(重アセトン):δ−64.1.
MS(m/z):180[M]
【0039】
(実施例3)
1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液に代えて1.0mol/L硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率75%)。
【0040】
(実施例4)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)と鉄粉0.014g(0.25mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド1.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.5mLおよび30%過酸化水素水0.1mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。実施例2と同じ操作を行うことにより、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率30%)。
【0041】
(実施例5)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。42%テトラフルオロホウ酸水溶液0.1mL、ジメチルスルホキシド1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.5mL、1.0mol/Lテトラフルオロホウ酸鉄(II)水溶液0.15mLおよび30%過酸化水素水0.1mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。実施例2と同じ操作を行うことにより、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率88%)。
【0042】
(実施例6)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液を1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.5mL、過酸化水素−尿素複合体0.06gおよび1mol/L硫酸鉄(II)水溶液を0.15mL加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。実施例2と同じ操作を行うことにより、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率66%)。
【0043】
(実施例7)
硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液に代えてジメチルスルホキシドを用いた以外は、全て実施例2と同じ操作を行い5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率36%)。
【0044】
(実施例8)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をヨウ化トリフルオロメチルで置換した。ジブチルスルホキシド2.5mL、濃硫酸0.027mL、30%過酸化水素水0.1mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.15mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率0.19%)。
【0045】
(実施例9)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をヨウ化トリフルオロメチルで置換した。ジフェニルスルホキシド2.5g、濃硫酸0.027mL、30%過酸化水素水0.1mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.15mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、5−トリフルオロメチルウラシルの生成を確認した(生成率0.47%)。
【0046】
(実施例10)
【0047】
【化3】


二口フラスコにグアニン0.10g(0.67mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド130mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.3mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.7mL、30%過酸化水素水0.15mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.2mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、8−トリフルオロメチルグアニンの生成を確認した(生成率43%)。実施例1と同様の操作により、8−トリフルオロメチルグアニンを白色固体として得た(0.018g、収率8%)。
【0048】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.60(brs,2H),10.81(brs,1H),13.73(brs,1H).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ116.3,119.2(q,JCF=269.3Hz),134.9(q,JCF=40.7Hz),152.8,154.7,156.6.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.0.
MS(m/z):218[M−H]
【0049】
(実施例11)
【0050】
【化4】


二口フラスコに2−ヒドロキシピリジン0.19g(2.0mmol)とフェロセン0.11g(0.6mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド8.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液2.0mLおよび30%過酸化水素水0.4mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルピリジンの生成を確認した(生成率64%)。実施例1と同様の操作により、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルピリジンを白色固体として得た(0.081g、収率50%)。
【0051】
H−NMR(重クロロホルム):δ6.34(dd,J=6.9,5.6Hz,1H),7.65(d,J=5.6Hz,1H),7.88(d,J=6.9Hz,1H),13.25(brs,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ105.6,120.4(q,JCF=31.4Hz),122.7(q,JCF=271.3Hz),139.2,140.7(q,JCF=4.9Hz),161.4.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−66.0.
MS(m/z):163[M]
【0052】
(実施例12)
【0053】
【化5】


アルゴンで置換した二口フラスコに、ベンゼン100μL、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率20%)。実施例1と同様の操作により、トリフルオロメチルベンゼンを無色オイルとして得た(0.02g、収率13%)。
【0054】
H−NMR(重クロロホルム):δ7.74(m,5H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ124.3(q,JCF=266.4Hz),125.3(q,JCF=3.0Hz),128.8,130.8(q,JCF=31.5Hz),131.8.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−63.1.
MS(m/z):146[M]
【0055】
(実施例13)
【0056】
【化6】


アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン180μL、ジメチルスルホキシド5.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.7mL、30%過酸化水素水0.4mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.6mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRおよびGC−MSにより得られた分子量と保持時間を、市販の標準試料と比較することにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率8.5%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成7.2%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率4.2%)の生成を確認した。
【0057】
2−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.0.
MS(m/z):161[M]
4−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−61.3.
MS(m/z):161[M]
2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン
19F−NMR(重クロロホルム):δ−62.0,−63.7.
MS(m/z):229[M]
【0058】
(実施例14)
【0059】
【化7】


二口フラスコにフェロセン0.047g(0.25mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。4−メチルピラゾール0.07mL(0.88mmol)、ジメチルスルホキシド1.7mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.7mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.7mLおよび30%過酸化水素水0.15mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、4−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾールの生成を確認した(生成率45%)。実施例1と同様の操作により、4−メチル−3−トリフルオロメチルピラゾールを無色オイルとして得た(0.054g、収率36%)。
【0060】
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ2.12(s,3H),7.73(s,1H),13.29(brs,1H).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ7.62,113.5,122.5(q,JCF=268.7Hz),129.8,138.7(q,JCF=34.2Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−59.8.
MS(m/z):150[M]
【0061】
(比較例1)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.1mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.5mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.15mLを加え、20分間撹拌した。実施例2と同様の操作により、5−トリフルオロメチルウラシルが全く生成していないことを確認した。
【0062】
(比較例2)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.1mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.5mLおよび30%過酸化水素水0.1mLを加え、20分間撹拌した。実施例2と同様の操作により、5−トリフルオロメチルウラシルが全く生成していないことを確認した。
【0063】
(比較例3)
二口フラスコにウラシル0.055g(0.5mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。硫酸の1Nアセトン溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの2.1mol/Lアセトン溶液0.5mL、30%過酸化水素水0.1mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.15mLを加え、20分間撹拌した。実施例2と同様の操作により、5−トリフルオロメチルウラシルが全く生成していないことを確認した。
【出願人】 【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】財団法人相模中央化学研究所
【出願日】 平成19年11月6日(2007.11.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−137993(P2008−137993A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2007−288135(P2007−288135)