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【発明の名称】 結晶化制御方法
【発明者】 【氏名】五十嵐 幸一

【氏名】大嶋 寛

【要約】 【課題】比較的簡単な装置構成で、粒径分布が狭い、結晶化制御方法を提供する。

【構成】本発明の結晶化制御方法では、晶析させるべき化合物の溶液または懸濁液に、マイクロ波を照射して結晶核を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
晶析させるべき化合物の溶液または懸濁液に、マイクロ波を照射して結晶核を形成する結晶化制御方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された結晶核を生成することによる結晶化制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進展に伴い、製品には、高品質が要求されるようになってきている。晶析の分野においても、純度、結晶粒子の形態、粒子群の平均径・粒度分布などを制御した晶析装置や製造方法が要求される。晶析操作において、結晶の核形成は、結晶の構造・形状・溶解速度・結晶粒経に大きく影響する。したがって、核形成を制御することは、均質な結晶を得るために重要である。このために、種々の結晶化を制御する方法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、晶析させるべき化合物の溶液または懸濁液に超音波を導入して、結晶を制御する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−135903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波を用いる方法は、結晶核発生を促進することを目的としている。これによって、均一な大きさの結晶を生産するという狙いがあるが、超音波では、超音波強度の分布が生じ、均一な結晶ができないという問題がある。このため、特許文献1に記載の方法では、特定の比攪拌動力を用いて、均一な超音波強度を得ている。また、超音波は、溶質および溶媒の特定の官能基に作用するものではないため、溶質特異的な結晶化制御はできない。本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、比較的簡単な装置構成で、粒径分布が狭い、結晶化制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、マイクロ波が極性分子を選択的に振動させる性質を有することに着目し、マイクロ波を照射することで結晶化を制御できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0006】
本発明の結晶化制御方法では、晶析させるべき化合物の溶液または懸濁液に、マイクロ波を照射して結晶核を形成する。
【0007】
マイクロ波照射によって、溶質分子を強制的に振動させることができる。この強制振動は、溶質分子が結晶構造と同じ構造の会合体を形成することを阻害する。すなわち、核形成を阻害する。マイクロ波を照射することによって結晶化しないが、冷却し続けることによって、潜在的な結晶化の推進力(=過飽和度)は大きくなっていく。十分過飽和度が高くなったところで、マイクロ波照射を止めれば、高過飽和度になった溶液から結晶核が発生するので、一気に多量の核が発生して、一つ一つの核は大きくなることなく小さな結晶が多量にできる。一気に多量の核が発生することによって、粒子径の揃った結晶を得ることができる。すなわち、本発明の方法によれば、マイクロ波の照射により、冷却によって過飽和度が徐々に上がるけれども、目的の高過飽和度になるまで結晶が析出しないので、小さな結晶を多量に発生させること、あるいは、結晶は少々小さくても良いから粒径が揃った結晶を生産することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結晶化制御方法では、晶析させるべき化合物の溶液または懸濁液に、マイクロ波を照射して結晶核の発生を抑制するあるいは発生を形成する。マイクロ波は、極性分子を選択的に振動させるので、結晶化を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、説明する。なお、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態)
本発明の方法を実施するためには、位相がそろった均一なマイクロ波を発生する装置を用いて、反応槽にマイクロ波を照射すればよい。利用できるマイクロ波としては、例えば波長が2.45GHz程度である。適切な波長は、溶質分子の有する官能基の種類により、適宜選択すればよい。
【0011】
生じる粒子の大きさ、および粒度分布の幅は、本発明の方法を用いて、マイクロ波の強度、継続時間、処理のタイミングなどによって調整することができる。
【0012】
本発明の方法は、原則としてあらゆる物質の晶析に適しているが、好ましくは有機化合物の晶析に適している。また、本発明の方法を利用する晶析方法としては、冷却晶析、貧溶媒晶析などのように過飽和度を大きくして晶析を行う方法が挙げられる。
【0013】
本発明の方法を用いる晶析は、晶析させるべき物質の溶液または懸濁液中で行われる。晶析させるべき物質の濃度は、0.1〜30重量%であるが、この範囲を超えても不可能であるということではない。
【0014】
使用する溶媒は、個々の物質およびマイクロ波の使用に適した溶媒である。また、溶媒は、単独であってもよいが、個々の物質によっては、2種以上の溶媒の混合液であってもよい。溶媒の種類により、マイクロ波を照射した場合に結晶化を促進するものと、抑制するものとがある。したがって、2種以上の溶媒を適宜選択することにより、結晶化の促進・抑制をコントロールすることができる。
【0015】
晶析は、任意の適当な晶析装置で行うことができ、例えば攪拌槽、ドラフトチューブ型晶析装置などを使用することができる。晶析装置内の温度は、−10〜120℃の間であり、好ましくは0〜80℃である。晶析は、一定の冷却速度を用いた冷却晶析として、または種々の冷却速度を用いた冷却プログラムとして行うことができる。
【実施例1】
【0016】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0017】
本実施例の装置として、図1に示すものを用いた。図1に示すように、温度コントロールできるウォータージャケット付サンプル管である。また、サンプル管内は、スタラーを用いて、500rpmで攪拌した。マイクロ波発生装置として、グリーンモチーフ((株)IDX社製)を用いた。マイクロ波は、マイクロ波強度(W)が、100、300のものを照射した。
【0018】
(実験例1)
難溶性で極性基を有するイブプロフェンを晶析させる化合物として用いた。溶媒として、マイクロ波を吸収しないヘキサンを用いた。40℃で、イブプロフェンを、ヘキサンに溶解し(溶解濃度200mg/ml)、所定の温度まで冷却した。マイクロ波を照射する場合は、飽和度が1.0になった時点で照射を開始した。結果を表1に示す。表1から、ヘキサンを溶媒として用いたものは、マイクロ波の照射の有無にかかわらず、結晶が長時間生じなかったことがわかる。
【0019】
(実験例2)
溶媒として、ヘキサンに0.3%のアセトンを添加した物を用いた以外は、実験例1と同様に行った。図2は、マイクロ波を照射した場合と、しなかった場合の溶液温度の経時変化を示すグラフである。図2から、マイクロ波を照射しない場合、約30分後に結晶が析出しはじめた。一方、マイクロ波を照射した場合は、少なくとも260分間結晶化しなかった。マイクロ波照射によってイブプロフェンの極性基が振動し、結晶化を抑制したためと考えられる。また、マイクロ波の照射を停止した後も結晶が析出しなかったため、この効果は照射停止後も影響が続くと思われる。結晶形状は、マイクロ波を照射した場合は板状結晶で、照射しない場合は針状結晶だった。結晶構造には影響が見られなかった。
【0020】
(実験例3)
溶媒として、ヘキサンに10質量%のエタノールを添加した物を用いた以外は、実験例1と同様に行った。表1から明らかなようにアセトン添加と逆の傾向が見られた。この結果は、溶媒と溶質の組み合わせによっては、マイクロ波照射が核形成を促進する場合もあることを示している。

【表1】


【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施例で用いた晶析装置の模式図である。
【図2】図2は、マイクロ波を照射した場合と、しなかった場合の溶液温度の経時変化を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】506292310
【氏名又は名称】大嶋 寛
【出願日】 平成18年9月6日(2006.9.6)
【代理人】 【識別番号】100110984
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 敬子

【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹


【公開番号】 特開2008−63257(P2008−63257A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−240951(P2006−240951)