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【発明の名称】 廃溶剤の改質方法
【発明者】 【氏名】塩山 博一

【氏名】谷垣 治幸

【要約】 【課題】溶剤蒸気回収装置から回収した廃溶剤を無色で悪臭の無い再生溶剤とする為に必要な改質方法を提供することを課題とする。

【構成】活性炭を用いた溶剤蒸気回収装置から回収した廃溶剤Cは、ジアセチルによって黄色く着色されると共にツワリ臭を有している。この廃溶剤Cに過炭酸ナトリウムを溶け残るくらい投入し、混合攪拌の後、二晩程度放置する。前述した操作により、廃溶剤Cは改質され(脱色及び脱臭され)、脱水、仕上げを行うと再生溶剤として利用可能な廃溶剤Dとなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤蒸気回収装置から回収された廃溶剤の改質方法において、廃溶剤を過炭酸ナトリウムと反応させることを特徴とする廃溶剤の改質方法。
【請求項2】
前記溶剤蒸気回収装置は活性炭を用いたものである事を特徴とする請求項1記載の廃溶剤の改質方法。
【請求項3】
前記廃溶剤が黄色に着色されたものであって、その着色を脱色させることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃溶剤の改質方法。
【請求項4】
前記黄色の着色はジアセチルによるものであって、その着色を脱色させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の廃溶剤の改質方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、溶剤蒸気回収装置から回収された廃溶剤の改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、希望する色彩や光沢で装飾するため物体の表面に塗装しこれを被覆して化学的に安定し物理的に強い塗膜を形成させる為、有機溶剤を用いた塗装が広く使用されている。また、前記塗装に用いる被塗物や塗装用具の洗浄にも有機溶剤が使用されている。
【0003】
これらの廃溶剤は、廃棄処分されていたが、環境保全・リサイクルの促進という社会的趨勢から、使用済みの廃溶剤を蒸留し、再利用する技術が開示されている。(例えば、特許文献1)
【0004】
しかしながら、有機溶剤を使用する現場において、空気中に蒸発した溶剤蒸気(VOC:揮発性有機化合物)を、活性炭やゼオライト等の吸着剤を有する溶剤蒸気回収装置を用いて回収した廃溶剤は、蒸留による再生を行ったとしても、吸着表面の化学変化から、有色で悪臭を有する再生溶剤となる。このことから、有機溶剤を使用する現場において、空気中に蒸発した溶剤蒸気は触媒を用いて燃焼する方法を採用する傾向があり、その結果、大量の二酸化炭素が排出される。
【0005】
上述した有色で悪臭を有する再生溶剤から色・臭い取り除く方法は、活性炭等の吸着効果を用いる方法、水酸化ナトリウム等を用いた強アルカリによる化学変化を用いる方法、紫外線照射等を行い高いエネルギーの光によって光化学反応用いる方法、塩素系脱色剤や過酸化水素水の化学反応を用いる方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、上述したいずれの方法を用いたとしても、再生溶剤の色・臭いを再販可能な水準にまで取り除くことは出来なかった。
【特許文献1】特開平8−104842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明では、溶剤蒸気回収装置から回収した廃溶剤を無色で悪臭の無い再生溶剤とする為の改質方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明は、溶剤蒸気回収装置から回収された廃溶剤の改質方法において、廃溶剤を過炭酸ナトリウムと反応させることを特徴とする。
【0009】
(請求項2記載の発明)
この発明は、上記請求項1記載の発明に関し、前記溶剤蒸気回収装置は活性炭を用いたものである事を特徴とする。
【0010】
(請求項3記載の発明)
この発明は、上記請求項1又は2に記載の発明に関し、前記廃溶剤が黄色に着色されたものであって、その着色を脱色させることを特徴とする。
【0011】
(請求項4記載の発明)
この発明は、上記請求項1乃至3いずれかに記載の発明に関し、前記黄色の着色はジアセチルによるものであって、その着色を脱色させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
溶剤蒸気回収装置から回収した廃溶剤に、この発明の改質方法を用いた後、蒸留・再生を行うと、無色で悪臭の無い再生溶剤を得ることが可能となる。このことから、再生溶剤は再販可能な水準となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態として図面を参照して説明する。
【0014】
図1は可視・近紫外光吸収曲線を示すグラフである。
【0015】
(廃溶剤の着色・不快臭の原因について)
この実施形態の廃溶剤の改質方法は、溶剤蒸気回収装置で回収した塗料系廃液(例えば、グラビア印刷廃液)を収集し、収集した廃液を着色無く再生することができる。
【0016】
先ず、回収溶剤(以下、試料A)の典型例を表1に示す。
【0017】
【表1】


表1のみの成分であれば、試料Aは無色透明な液体である。
【0018】
しかし、空気中に蒸発した溶剤の蒸気を、活性炭やゼオライト等の吸着剤を有する溶剤蒸気回収装置を用いて回収し、数回蒸留を行うことによって再生溶剤Bとしても、表1の試料Aと成分は近似するものの、有色(黄色)で悪臭(ツワリ臭)を有するものとなる。
【0019】
この再生溶剤Bを、可視・近紫外曲線を用いて、有色で悪臭を有する溶剤となる原因を調査した。
【0020】
調査の結果、再生溶剤Bは、図1に示すように、試料Aに有色(黄色)で悪臭(ツワリ臭)を有するジアセチル(化学式:CHCOCOCH)を溶解させたもの(試料C)と、酷似する曲線を描いた。また、再生溶剤Bと試料Cは、両方とも418nmをピークとし、400〜430nmの波長を吸収することが図1の可視・近紫外曲線から理解できる。
【0021】
再生溶剤Bと試料Cは外見・臭いが酷似していることからも、再生溶剤Bが有色で悪臭を有するのはジアセチルを含有している事が原因であると断定できる。
【0022】
この発明では、試料C(回収溶剤)の有色・悪臭の原因となる上記ジアセチルを、過炭酸ナトリウム(2NaCO・3H)を用いて分解する。
【0023】
(改質)
試料C100mlに顆粒状の過炭酸ナトリウムを0.5g加えて攪拌し、その後、16時間程度放置する。
【0024】
上記攪拌により試料Cは無色透明となる(試料D)。
【0025】
過炭酸ナトリウムの投入量は試料C内で攪拌しても溶け残るくらい(飽和するくらい)が好ましい。
【0026】
(脱水)
試料D100mlに塩化カルシウム(CaCl)0.8g〜1gを加え攪拌を行い、脱水する。
【0027】
脱水後、溶け残った過炭酸ナトリウム、塩化カルシウムが底部に沈殿したことを確認した後、沈殿物より上の試料Eを取り出し、蒸留を行い、試料Fを得る(一次蒸留)。
【0028】
沈殿物の取り除きは、濾過であっても良く、当業者が適宜なし得る事項である。
【0029】
この時、試料Fの水分は4%以下が好ましい。
【0030】
脱水終了後、試料Fは水分1.20%、酸は酢酸換算で0.09%である。
【0031】
(仕上げ)
試料Fの酸含有量をさらに低下させる為に、試料F100mlに炭酸カリウム(K(CO)0.25gを加え攪拌し、蒸留(二次蒸留)し、試料Gを得た。試料Fからは蒸発残渣物はなかった。
【0032】
試料Gは試料Aと同等の酸濃度であり、試料Gの色はハーゼン色数0〜20であることが好ましく、酸はJIS酢酸エチルの規格限度値である0.002%以下が好ましい。
【0033】
得られた試料Gの品質を表2に示す。
【0034】
【表2】


【実施例1】
【0035】
図2はこの発明の実施例の説明図である。
【0036】
(回収)
活性炭を用いた溶剤蒸気回収装置から、廃溶剤C(実施形態の試料Cに該当)を回収する。
【0037】
(改質)
この発明は、図2に示すように200lのケミカルドラム1に過炭酸ナトリウム1kgを入れ攪拌する。過炭酸ナトリウムの投入量は溶け残る程度とするのが好ましい。
【0038】
廃溶剤Cは攪拌後、二晩程度放置し、廃溶剤D(実施形態の試料Dに該当)となる。
【0039】
(脱水)
次に、図2に示すように廃溶剤Dに塩化カルシウム1〜2kgを投入し、攪拌する。
【0040】
攪拌後、溶け残った、残渣2を有する水層を残し、上澄みの廃溶剤E(実施形態の試料Eに該当)を別のケミカルドラム1に移す。
【0041】
廃溶剤Eを蒸留(1次蒸留)し、再生溶剤F(実施形態の試料Fに該当)を精製する。
【0042】
(仕上げ)
再生溶剤Fに炭酸カリウム0.5〜0.7kgを投入し、軽く攪拌する。
【0043】
攪拌終了後、再び蒸留を行い(2次蒸留)再生製品Gを得ることが可能である。
【0044】
この再生製品Gはハーゼン色数10未満であって、実施形態のフラスコテストよりも良い結果となった。
【0045】
ケミカルドラムの容量は200l〜10000lであれば良く、ケミカルドラムの容量を増やすと、それに対応する過炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カリウムを投入すれば良い。
【0046】
(この発明の有用性について)
この発明の廃溶剤の改質方法は、通常当業者が考え得る脱色方法と比較しても、優れた脱色効果を発揮するものである。
【0047】
通常当業者が考え得る脱色方法には、水酸化ナトリウム等を用いた強アルカリによる化学変化を用いる方法、紫外線照射等を行い高いエネルギーの光によって光化学反応用いる方法、過酸化水素水の化学反応を用いる方法などが挙げられる。
【0048】
しかしながら、上述した通常当業者が考え得る脱色方法では、脱色後2〜4時間が経過すると、表3のようなハーゼン色数、酸濃度となった。
【0049】
【表3】


【0050】
表3に示した通り、実施形態の廃溶剤の改質方法はハーゼン色数を10〜20にすることを可能とし、実施例1の廃溶剤の改質方法はハーゼン色数を10未満にすることが可能である。
【0051】
また、水酸化ナトリウムでは、多回数の蒸留に伴うエネルギー消費があると共に大量の強アルカリ性の廃水を生じるという問題があり、過酸化水素水では、再生溶剤と共に回収されてしまうという問題がある。
【0052】
しかし、この発明の廃溶剤の改質方法は、少量の弱アルカリ廃水を生じるのみであって、上記表1、表2からも明らかであるように、有用成分に対して悪影響を与えているものではない。つまり、この発明の廃溶剤の改質方法は、簡易な処理で済む廃水を生じるものであって、色・臭いの原因となるジアセチルを確実に分解又は変質することが可能なものであり、且つ溶剤としての有用成分を損なうものではない。
【0053】
そして、この発明の廃溶剤の改質方法は、低価値であった廃溶剤を廃棄処分することなく、再利用可能とし、高価値な有用資源とするものであるため、環境保全・リサイクルの促進に繋がるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の可視・近紫外光吸収曲線を示すグラフである。
【図2】この発明の実施例の実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ケミカルドラム
2 残渣
C 廃溶剤(回収後)
D 廃溶剤(脱色後)
E 廃溶剤(脱水後)
F 再生溶剤(1次蒸留後)
G 再生製品(2次蒸留後)
【出願人】 【識別番号】303048477
【氏名又は名称】協和化工株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義

【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士

【識別番号】100121577
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 雅也


【公開番号】 特開2008−1653(P2008−1653A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173840(P2006−173840)