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【発明の名称】 粒状爆薬組成物
【発明者】 【氏名】井上 順児

【氏名】御手洗 善昭

【要約】 【課題】高い威力と低い衝撃感度を兼ね備えた、粒状爆薬組成物を提供する。

【解決手段】見掛け密度0.55〜0.70g/cm3 の多孔質プリル硝安、油剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを含有する粒状爆薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
見掛け密度0.58〜0.70g/cm3 の多孔質プリル硝安、油剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを含有することを特徴とする粒状爆薬組成物。
【請求項2】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルがHLB6.6〜10のものであることを特徴とする請求項1に記載の粒状爆薬組成物。
【請求項3】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが油剤に対して1.4〜17重量%含有されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒状爆薬組成物。
【請求項4】
油剤が6〜7重量%含有されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粒状爆薬組成物。
【請求項5】
多孔質プリル硝安が吸油率15〜28重量%のものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粒状爆薬組成物。
【請求項6】
多孔質プリル硝安が平均粒径1.0〜1.8mmのものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粒状爆薬組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石、採鉱等の産業発破に用いられる粒状の爆薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質プリル硝安と油剤からなる爆薬組成物としては、軽油を油剤とした硝安油剤爆薬(以下「ANFO」と略記)があり、単純な設備で効率的に製造できること、優れた流動性により、流し込みやANFOローダーによる効率的な発破孔への装填ができること、衝撃感度が低く安全に取り扱えること及び安価であること等から、産業用爆薬の中では最も大量に消費されている。
このような爆薬組成物には、通常、見掛け密度0.72〜0.78の多孔質プリル硝安が用いられるが、より威力を高めるため、内部細孔を増大させて爆轟反応における反応性を向上させた見掛け密度0.58〜0.70g/cm3 及び/又は吸油率15〜28重量%の多孔質プリル硝安が用いられることがある。しかしながら、この内部細孔を増大させた多孔質プリル硝安を用いた爆薬組成物は、高威力であると同時に衝撃に対する感度も上昇しており、取り扱い時の安全性が低いという問題を有していることが、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3773270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高威力で且つ衝撃に対する感度が低く、取り扱い時の安全性が高い、新規な粒状の爆薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の見掛け密度を有する多孔質プリル硝安、油剤及び特定の界面活性剤を含有する粒状爆薬組成物が、その目的に適合することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)見掛け密度0.58〜0.70g/cm3 の多孔質プリル硝安、油剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを含有することを特徴とする粒状爆薬組成物、
(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルがHLB6.6〜10のものであることを特徴とする上記(1)に記載の粒状爆薬組成物、
(3)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが油剤に対して1.4〜17重量%含有されてなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の粒状爆薬組成物、
(4)油剤が6〜7重量%含有されてなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粒状爆薬組成物、
(5)多孔質プリル硝安が吸油率15〜28重量%のものであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粒状爆薬組成物、
(6)多孔質プリル硝安が平均粒径1.0〜1.8mmのものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粒状爆薬組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粒状爆薬組成物は、産業発破において、高い威力による良好な破砕効果を示し、しかもJIS−K−4801;産業爆薬に規定される起爆感度試験方法Aにおいて、6号雷管1本で起爆しないほどの低い衝撃感度を有しているため、取り扱い時の安全性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において用いられる多孔質プリル硝安は、見掛け密度が0.58〜0.70g/cm3 のものであり、好ましくは見掛け密度が0.60〜0.68g/cm3 のものである。
見掛け密度は、主に多孔質プリル硝安内部の細孔容積に左右され、細孔容積が大きなものほど見掛け密度は小さい値となって爆薬組成物の威力は高まるが、同時に強度が低下して粉化し易くなる傾向があるため、小さ過ぎるものは実用に適さない。上記範囲内のものであれば、実用上の強度を有すると共に、高い威力の爆薬組成物を得ることができる。
【0008】
この見掛け密度は、以下の測定方法によって得られる。
先ず、下端にダンパーが備わった上端内径93mm、下端内径15.5mm、高さ120mmのホッパーを、内径40mm、深さ80mmの容器の上に、容器上端とホッパー下端の間隔が36.5mmとなるよう配置する。次いで、多孔質プリル硝安の試料約120cm3 をホッパーに入れ、ダンパーを引き抜いて容器内へ自然流下させる。その後、容器の上に盛り上がっている試料を、容器上端に沿って水平のヘラですり切り、受容器内に残った試料の重量を上皿天秤で秤量する。秤量後、下記式(a)により見掛け密度を算出する。
見掛け密度(g/cm3 )=W/V ・・・(a)
(式中、Wは容器内の試料の重量(g)、Vは容器の容積(cm3 )を表す。)
また、多孔質プリル硝安は、吸油率15〜28重量%のものが好ましく、より好ましくは吸油率18〜23重量%のものである。
【0009】
吸油率は、主に多孔質プリル硝安内部の細孔容積に左右され、細孔容積が大きなものほど大きい値となって爆薬組成物の威力は高まるが、同時に強度が低下して粉化し易くなる傾向があるため、大き過ぎるものは実用に適さない。上記範囲内のものであれば、実用上の強度を有すると共に、高い威力の爆薬組成物を得ることができる。
この吸油率は、以下の測定方法によって得られる。
先ず、予め重量を秤量しておいた直径40mm、内容量60ccのブフナーロート型ガラスフィルターに、フィルター板上面から40mmの高さまで多孔質プリル硝安の試料を入れて、全体重量を秤量する。次いで、ガラスフィルターの先にピンチコックで穴を塞いだゴム管を装着し、試料が完全に没するまで2号軽油を加えて5分間放置する。放置後、ゴム管を外して2号軽油を2分間自然落下させ、さらにその後、真空ポンプをつないで5分間吸引する。吸引終了後、真空ポンプから取り外して全体重量を秤量し、下記式(b)により吸油率を算出する。
吸油率(重量%)=(W2−W1−0.1)/(W1−W0)×100 ・・・(b)
(式中、W0はブフナーロート型ガラスフィルターの重量(g)、W1は2号軽油を加える前の全体重量(g)、W2は真空ポンプ吸引後の全体重量(g)を表す。また、0.1はブフナーロート型ガラスフィルターの内壁に付着する軽油の補正値である。)
【0010】
さらに、多孔質プリル硝安は、平均粒径1.0〜1.8mmのものが好ましく、より好ましくは平均粒径1.1〜1.7mmのものである。この範囲のものであれば、良好な油剤との混合性によって高威力の爆薬組成物が得られると共に、良好な流動性も維持できるためである。
この平均粒径は、篩い分けした多孔質プリル硝安の累積粒度が50重量%となる粒径であって、多孔質プリル硝安の試料を、目開き2.38mm、1.70mm、1.19mm、0.84mm、0.42mmの篩を組み合わせて篩い分けた結果から求められる。なお、篩い分けにおける多孔質プリル硝安の試料は100gとし、篩は目開きの小さいものから順に重ねて振とう機に装着し、5分間振とうさせる。
【0011】
本発明において用いられる特定の界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルであり、アニオン性を有することで多孔質プリル硝安への吸着性が良く、爆薬組成物の固化抑制効果に優れていることから選択されている。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルは、下記式(1)により表されるものであって、R(アルキル基)の種類及びn(エチレンオキサイドの付加モル数)の数は特に限定されないが、例えば、アルキル基としては炭素数8〜12のもの等が挙げられ、nは3〜23のもの等が挙げられる。
(RO(CH2 CH2 O)n 3-X PO(OH)X ・・・(1)
(式中、Rはアルキル基、nはエチレンオキサイドの付加モル数を表す。また、Xは水酸基の付加モル数を表し、その数は1又は2である。)
【0012】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのHLBは、下記式(c)により算出され、アルキル基の種類及びエチレンオキサドの付加モル数によって変化する。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo) ・・・(c)
(式中、Mwは親水基(エチレンオキサイド)の総分子量を表し、Moは親油基(アルキル基)の総分子量を表す。)
このHLBは、一般的に親油性または親水性の強さを表す尺度として用いられる値であって、10を境界として、それより大きなものになると親水性が強く油剤への溶解性が悪くなり、小さくなると親油性が強く油剤への溶解性が良好になることが知られている。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを他の成分と混合し爆薬組成物にする場合、一旦油剤に溶解して添加すれば容易に爆薬組成物全体へ均一分散することができるが、油剤への溶解性が悪いものではこの方法は使えないため、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルは、油溶性を有するHLB10以下のものが好ましい。他方、本発明者らは、HLBが爆薬組成物の衝撃感度を低下させる効果とも相関があり、数値が大きなものほど高い効果を示すことを見出した。下記実施例1〜4に示すごとく、爆薬組成物の衝撃感度はHLB6.6のもので低下し、さらにHLB8.7のもので大きく低下している。これらのことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルは、HLB6.6〜10のものが好ましく、より好ましくはHLB6.7〜8.7のものである。
【0013】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの添加量は、油剤の量が多孔質プリル硝安と油剤からなる爆薬組成物において一般的に採用される6重量%の場合、実施例1〜4に示すごとく、油剤に対して8重量%にて爆薬組成物の衝撃感度が低下し、17重量%まで著しい威力低下はない。ところが、本発明者らは、油剤量を7重量%に増量すると、さらに少ない添加量でも衝撃感度の低下に効果を発揮することを見出した。実施例5と6に示すごとく、油剤量7重量%の場合、油剤に対して1.4重量%にて爆薬組成物の衝撃感度が低下し、さらに4重量%で大きく低下しているが、著しい威力低下もない。これらのことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの添加量は1.4〜17重量%が好ましく、安全性向上と経済性を加味すると、より好ましいのは4〜8重量%である。
【0014】
油剤の添加量は、爆轟時に多孔質プリル硝安が放出する酸素量と油剤を完全酸化するのに必要な酸素量のバランスを考慮し、先述のごとく、一般的にそのバランスが適切で良好な反応性を得られる6重量%が採用される。このバランスが不適切であると、油剤と多孔質プリル硝安の反応性が悪化し威力が低下する傾向となるが、本発明においては、実施例1〜6に示すごとく、油剤量7重量%までは著しい威力低下はない。さらに油剤量7重量%であれば、衝撃感度の低下に必要なポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの添加量が少なく経済的にも有利であることから、油剤の添加量は6〜7重量%が好ましい。
また、本発明において用いられる油剤は、液状であるものが好ましい。液状であれば、多孔質プリル硝安との混合が容易となるためであり、液状の油剤の例としては、軽油、灯油、重油、シリコン油、スピンドル油等が挙げられるが、なかでも軽油は低粘度で多孔質プリル硝安への浸透性が良く、しかも安価であることから優れた油剤である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
2号軽油6重量%にHLB6.6のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208B)0.48重量%(2号軽油に対して8重量%)を溶解し、これを見掛け密度0.67g/cm3 、吸油率18重量%、平均粒径1.6mmの多孔質プリル硝安93.52重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
【0016】
[実施例2]
2号軽油6重量%にHLB6.6のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208B)1.02重量%(2号軽油に対して17重量%)を溶解し、これを実施例1と同じ多孔質プリル硝安92.98重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
[実施例3]
2号軽油6重量%にHLB8.7のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208F)0.48重量%(2号軽油に対して8重量%)を溶解し、これを実施例1と同じ多孔質プリル硝安93.52重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
【0017】
[実施例4]
2号軽油6重量%にHLB8.7のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208F)1.02重量%(2号軽油に対して17重量%)を溶解し、これを実施例1と同じ多孔質プリル硝安92.98重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
[実施例5]
2号軽油7重量%にHLB8.7のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208F)0.098重量%(2号軽油に対して1.4重量%)を溶解し、これを実施例1と同じ多孔質プリル硝安92.902重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
【0018】
[実施例6]
2号軽油7重量%にHLB8.7のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208F)0.28重量%(2号軽油に対して4重量%)を溶解し、これを実施例1と同じ多孔質プリル硝安92.72重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
[実施例7]
2号軽油6重量%にHLB8.7のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製;プライサーフA208F)0.48重量%(2号軽油に対して8重量%)を溶解し、これを見掛け密度0.64g/cm3 、吸油率21重量%、平均粒径1.2mmの多孔質プリル硝安93.52重量%に添加して均一に混合することにより、本発明の粒状爆薬組成物を得た。
【0019】
[比較例1]
2号軽油6重量%を見掛け密度0.67g/cm3 、吸油率18重量%、平均粒径1.6mmの多孔質プリル硝安94重量%に添加して均一に混合することにより、公知の爆薬組成物を得た。
[比較例2]
2号軽油7重量%を見掛け密度0.67g/cm3 、吸油率18重量%、平均粒径1.6mmの多孔質プリル硝安93重量%に添加して均一に混合することにより、公知の爆薬組成物を得た。
【0020】
[比較例3]
2号軽油6重量%を見掛け密度0.64g/cm3 、吸油率21重量%、平均粒径1.2mmの多孔質プリル硝安94重量%に添加して均一に混合することにより、公知の爆薬組成物を得た。
[比較例4]
2号軽油6重量%を見掛け密度0.76g/cm3 、吸油率10重量%、平均粒径2.0mmの多孔質プリル硝安94重量%に添加して均一に混合することにより、公知の爆薬組成物を得た。
【0021】
これら実施例1〜7及び比較例1〜4の爆薬組成物を試料とし、爆速試験及び6号雷管の爆発衝撃に対する感度試験を実施した。爆速試験は、爆薬組成物の起爆薬として2号榎ダイナマイト50gを用い、JIS−K−4810;火薬類性能試験に規定される光ファイバー法による爆速試験に従って行った。また、6号雷管の爆発衝撃に対する感度試験については、JIS−K−4801;産業爆薬に規定される起爆感度試験方法Aに従って行い、6号雷管起爆後の合否判定用導爆線の爆、不爆及び試料の残量を基に衝撃感度のレベルを0、1、2の3段階に分類して表した。
表1から明らかなように、公知の爆薬組成物は高威力化すると衝撃感度も上昇しているのに対し、本発明の爆薬組成物は高威力であるにも関わらず低い衝撃感度を有している。
【0022】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の粒状爆薬組成物は高威力且つ低衝撃感度であり、産業発破に好適である。
【出願人】 【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
【出願日】 平成19年2月21日(2007.2.21)
【代理人】 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫

【識別番号】100068238
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 猛

【識別番号】100095902
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 穣

【識別番号】100108693
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴井 義夫


【公開番号】 特開2008−201627(P2008−201627A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2007−40188(P2007−40188)