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【発明の名称】 液肥の製造方法
【発明者】 【氏名】平 知明

【氏名】佐藤 壮

【要約】 【課題】梅調味液を肥料原料として利用する可能性を検討し、農作物や園芸植物に利用可能な液肥を製造する技術を提供する。

【解決手段】梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生した梅調味液を原料とし、前記梅調味液を脱塩することにより培養原液を調製する工程と、前記培養原液に酵母を添加し、前記酵母を培養する工程と、培養した酵母の内容物を培養液中に溶出させる工程と、を有する液肥の製造方法により解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生した梅調味液を原料とし、該梅調味液を脱塩することにより培養原液を調製する工程と、
前記培養原液に酵母を添加し、該酵母を培養する工程と、
培養した酵母の内容物を培養液中に溶出させる工程と、
を有する液肥の製造方法。
【請求項2】
前記脱塩は、前記梅調味液の塩分の含有量を1重量%以下に調整するものである、請求項1に記載の液肥の製造方法。
【請求項3】
前記培養が好気培養である、請求項1又は2に記載の液肥の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液肥の製造方法に関し、詳しくは、梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液を原料とし、かつ、酵母の栄養成分を含んだ液肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梅果実の全国における収穫量は約12万トンであり、和歌山県の紀南地域では、そのうちの7万トンが生産され、その5万トンが梅干しに加工されている。梅干しは、大きく分けて、収穫した生梅を、生梅に対して15〜20重量%の塩を添加して塩漬けし、1ヶ月〜数ヵ月後に取り出し、天日干しすることによって製造される古来からの梅干し(白干し)と、白干しを糖及びアミノ酸等を含む調味液に浸漬し、低塩で旨みが付加された味梅干しの2種類が製造されている。後者の場合、梅干しを漬けた後に、梅調味液と呼ばれる副産物が多量に生成される。例えば、紀南地域においては、約250の梅干し製造業者から年間3〜4万トンもの梅調味液が副生されている。
【0003】
この梅調味液は、そのまま浅漬け用の調味液に利用されたり、イオン交換膜電気透析法で塩分を除去した上で再度梅調味液として利用されるなど、一部が再利用されているが、再利用されている割合はわずかであり、その大部分は廃棄物処理業者に引き取られて処理されている。そして、廃棄物処理業者が収集した梅調味液は、陸上ではなく、主に海洋投棄により処理されている。
【0004】
しかしながら、「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」及び「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年議定書」に基づき、わが国では陸上処分を原則とし、海洋投棄による処理分の減量化を進めることを基本とした体制が図られつつある。そして、2007年度には海洋投棄が全面禁止となる見通しである。
【0005】
そのような状況の中、一部の梅加工業者では活性汚泥処理施設を導入し、活性汚泥方式で梅調味液の処理が行われるようになった。しかしながら、このような処理施設を所有している梅加工業者はほんのわずかであり、梅加工業界全体では未だ梅調味液の処理の問題を抱えているのが実情である。また、梅調味液はBODが数十万ppmの液体であるために、しばしばバルキング(汚泥沈降性不良)が起きる等、処理が困難であるという問題があった。従って、味梅干しの製造過程で生成される梅調味液をいかに有効利用するかが大きな課題となっていた。
【0006】
梅調味液の有効利用の手段の一つとして、本発明者らは、梅酢や梅調味液等の、梅に起因する抽出液を真空濃縮し、濃縮液又は梅塩と、梅酸性水とに分離することにより、濃縮液又は梅塩を梅調味料やたれの具材等に利用し、梅酸性水を化粧水やウェットティッシュ等に利用することを提案した(特許文献1)
【特許文献1】特開2002−360207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の農業は、化学肥料や農薬など、人工的に合成された化学物質を様々な目的で使用することを進めることで、その生産性を大きく拡大させた。しかし、その一方で農薬は薬害や公害を生むことが明らかになり、また、それが本来の生態系を攪乱させることで、新たな害虫の発生や天敵による害虫抑止力の喪失などの弊害を招くことも明らかとなった。また、化学肥料についても、直接的な効果は大きいが、土質の悪化や土壌の生態系の破壊をもたらし、長期的にはその土地の生産力の低下や土壌の流出の原因になると言われている。
【0008】
そこで近年、人工的に合成された化学物質を用いることなく、自然の堆肥や糞便を利用して農業に利用する方法が見直されている。
【0009】
しかしながら、堆肥や糞便を利用した肥料はそれらの製造には長い期間を要し、その取り扱いも困難である。また、天然物を利用した肥料は成分にバラつきを生じやすく、品質が一定しないため、一定の品質が求められる農作物への利用は難しいという側面も有する。
【0010】
一方、梅調味液中には、有機酸、糖質、アミノ酸、ミネラル等の有効成分が含まれ、品質も一定しており、成分の調整も比較的容易である。また、梅調味液は味梅干しを製造する際に副生するものであるため、原料コストが極めて低いというメリットがある。従って、梅調味液を肥料原料として利用できる可能性がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、梅調味液を肥料原料として利用する可能性を検討し、農作物や園芸植物に利用可能な液肥を製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、梅調味液が肥料原料として有用である点に着目し、種々の処理方法を用いて梅調味液を処理し、肥料として利用するための適切な処理条件を検討した。そして、酵母を用いて梅調味液を処理することで、液肥として利用することができるとの知見を得た。
【0013】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、(1)梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生した梅調味液を原料とし、該梅調味液を脱塩することにより培養原液を調製する工程と、前記培養原液に酵母を添加し、該酵母を培養する工程と、培養した酵母の内容物を培養液中に溶出させる工程と、を有する液肥の製造方法を提供するものである。
【0014】
上記発明の好ましい態様は以下の通りである。(2)前記脱塩は、前記梅調味液の塩分の含有量を1重量%以下に調整するものである、前記(1)に記載の液肥の製造方法;
(3)前記培養が好気培養である、前記(1)又は(2)に記載の液肥の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液肥の製造方法及び液肥の製造システムによれば、味梅干の製造過程で生じる梅調味液を原料としているため、原料コストを極めて低く抑えることができる。また、酵母を用いて梅調味液を処理するため、反応条件も緩やかで大規模な設備も不要である。その結果、設備コストも軽減することができる。
【0016】
得られた液肥は、主原料が梅調味液と酵母であるため、安全性が高く、環境に与える負荷もほとんどない。また、栄養成分を豊富に含んでいるため、代替肥料として、種々の作物に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る液肥の製造方法の実施形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の液肥の製造方法の概要を説明するための図である。
【0018】
本実施形態の液肥の製造方法は、梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生した梅調味液1を原料とし、梅調味液1を脱塩することにより培養原液3を調製する工程(S1)と、培養原液3に酵母4を添加し、酵母4を培養する工程(S2)と、培養した酵母の内容物を培養液中に溶出させる工程(S3)と、を有する。
【0019】
梅調味液1は、調味液の成分や、それに漬け込む梅干し(白干し)の塩分量によって組成が異なるが、一般には、塩分を10〜20重量%、グルコース、フラクトース、ショ糖等の糖分を1〜20重量%、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、セリン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸、ミネラル等を含んでいる。このように、微生物の培養に必要な栄養素を備えているため、脱塩を行えば、新たに栄養素を追加することなく、そのまま微生物育成用の培地として使用することができる。
【0020】
脱塩工程(S1)では、酵母4の耐塩性を考慮して、前記梅調味液1の塩分の含有量を1重量%以下に調整することが好ましい。なお、脱塩処理は、電気透析、逆浸透膜等により行うことができる。梅調味液1を脱塩処理することにより、若干梅調味液が濃縮される。脱塩処理により副生された塩2は、梅風味を有する食塩として利用することができる。
【0021】
脱塩工程(S1)により得られた培養原液3は、次に、酵母4が添加されて、酵母4を培養する工程に付される(S2)。
【0022】
本実施形態に使用される酵母4は毒性が認められるものを除き、種々の酵母を用いることができる。酵母4の具体例としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属等を挙げることができる。酵母4は1種類でも、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
培養工程(S2)は、コスト面を考慮すれば静置培養で培養することが好ましい。但し、酵母4の培養効率を考慮すれば、好気的条件で培養することがより好ましい。好気的条件で培養する方法としては、例えば、培地中に酸素を含む空気をエアレーションする方法、培地を撹拌する方法、培地を振盪する方法など、いずれの方法も使用することができる。
【0024】
培養温度は、室温(10〜30℃)で培養することができる。また、酵母4の至適温度を考慮して、培養液を36℃前後に加温してもよい。
【0025】
酵母4は、培養中、梅調味液1由来の糖類、アミノ酸類、ミネラル等を資化して増殖する。培養終了の目安は特に限定されないが、酵母4が培養液中で10個/cells程度になったときに培養終了とすることができる。
【0026】
培養工程(S2)の後は、引き続き、培養した酵母4の内容物を培養液中に溶出させる工程に付される(S3)。
【0027】
酵母4の内容物は、いわゆる酵母エキスと称され、タンパク質、アミノ酸、有機酸、ミネラル、ビタミン等を豊富に含んでいる。そのため、梅調味液1をそのまま液肥として使用する場合と比べて、アミノ酸、ミネラル、ビタミンが増加し、作物の肥料としてより好適な組成にすることができる。また、酵母エキスが液肥中に含まれることにより、液肥が土壌に吸収された後、土壌微生物の培地ともなりうる。そのため、土壌微生物の増殖が促されることにより、農作物等の根の活性が高まるという効果も期待できる。
【0028】
酵母の内容物を培養液中に溶出させる方法としては、例えば、自己消化法、酵素分解法等を挙げることができる。
【0029】
「自己消化法」とは、酵母自身が持っている酵素を利用して酵母の中身を分解する方法である。この自己消化法は、細胞内の酵素を利用するため、エキス成分を効率良く分解することができる。また、培養工程(S2)の終了後、培養液をそのまま放置しておくだけで酵母の自己消化が進行するため、作業負担やコストもかからないという利点がある。
【0030】
「酵素分解法」とは、酵母の持つ酵素群を一旦熱処理や乾燥処理などにより不活化させておき、あらためてタンパク質分解酵素、リボ核酸分解酵素など目的に応じた酵素を添加して酵母の成分を分解し抽出する方法である。酵素分解法では、エキスの成分をある程度コントロールすることができるという利点がある。例えばタンパク質分解酵素を培養液中に添加することにより、酵母4からアミノ酸を多く溶出させ、アミノ酸量を高めた液肥を製造することができる。
【0031】
酵母エキスの溶出(S3)が終了すれば、所望の液肥5が得られる。得られた液肥5には、梅調味液1及び酵母4の抽出物(酵母エキス)由来の糖類、アミノ酸類、有機酸、ミネラル等が含まれている。また、酵母4の培養工程(S2)で生産されたエタノールも若干含まれている。
【0032】
そのため、本実施形態に係る液肥を農作物に散布した場合、梅調味液由来の糖類、アミノ酸類、有機酸、ミネラル等は、土壌に吸収された後に、農作物の肥料として利用され、エタノールが補助的に病害虫の防除の役割を果たす。
【0033】
液肥5はその後、そのまま肥料として散布することができるが、雑菌の繁殖を抑制し、長期保存に適した形態にする観点からは、濃縮を行い水分活性を下げることが好ましい。液肥5を使用する際は、水等により濃縮された液肥5適宜希釈し、作物に適した濃度に調整した上で散布すればよい。
【0034】
なお、本実施形態で得られた液肥5には、更に、特定の植物や作物に必要な成分を添加したり、土壌改良剤等の任意の有効成分を添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る液肥の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1…梅調味液、2…塩、3…培養原液、4…酵母、5…液肥
【出願人】 【識別番号】591112142
【氏名又は名称】株式会社東農園
【出願日】 平成19年5月22日(2007.5.22)
【代理人】 【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大


【公開番号】 特開2008−290892(P2008−290892A)
【公開日】 平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願番号】 特願2007−135771(P2007−135771)