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【発明の名称】 生物処理脱臭装置循環水を肥料に利用する方法と装置
【発明者】 【氏名】山田 正幸

【氏名】高橋 朋子

【氏名】鈴木 睦美

【要約】 【課題】生物処理方式脱臭装置の能力を維持するために必要な循環水の窒素濃度を適正に制御する方法と、引き抜いた循環水を肥料として有効に活用するための具体的手段を提供する。

【解決手段】堆肥発酵施設などから発生する臭気を処理する生物処理脱臭装置の循環水について、蓄積してくる窒素を循環水の電気伝導率を日常的に監視して電気伝導率30から40mS/cmで循環水の引き抜きと新たに水を供給を行うことにより制御し、脱臭装置の能力を維持する。引き抜いた循環水は、送風により植物に対して毒性を持つ揮発性アンモニアを除去し、速効性肥料として利用する。その際、天然物を充填した生物処理脱臭装置では、化学的手段を加えずに処理し、有機栽培に利用できる形態とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜ふん等の有機物を発酵分解する過程(堆肥化)において、発酵物からの排汁等の多の物質を混入させることなく、発生する臭気のみを対象に、微生物による物質変換により脱臭する脱臭装置において、微生物活性を維持するために散水し循環させる循環水中の窒素濃度を循環水の電気伝導率を目安に管理し、循環水の一部又は全部を引き抜くことにより脱臭槽の脱臭能力を維持する方法。
【請求項2】
請求項1による生物処理脱臭装置において、循環水貯留槽または循環系に電気伝導率計を設置し、請求項1の方法を実施する脱臭装置。
【請求項3】
請求項1による脱臭槽より引き抜いた循環水を貯留槽に入れて送風することにより、水中に溶解している植物に対する毒性を保持する揮発性のアンモニアを除去する方法。
【請求項4】
請求項1による脱臭槽より引き抜いた循環水を貯留し、送風することにより水中に溶解している植物に対する毒性を保持する揮発性のアンモニアを除去する装置。
【請求項5】
請求項3、4により植物に対する毒性を解除した循環水をそのまま、または濃縮した液体および固形化した形状において肥料として利用する方法。
【請求項6】
請求項1、2、3により肥料を製造する際に、脱臭槽充填資材に軽石等の天然資材を利用することより化学的な要素を排除して肥料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜ふん発酵装置や畜舎等から発生する臭気に対する生物処理方式脱臭装置の循環水についての運転管理方法とその循環水の肥料利用に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜ふんの堆肥化等においてはアンモニアガスに代表される多量の臭気が発生し、その脱臭が求められる。低コストで脱臭に対応する方法として微生物を活用した図1に示したような生物処理方式脱臭装置が最も普及している。
【0003】
その概要は、発酵施設1で製造中の堆肥2から発生した臭気3を脱臭槽4に送風し、循環水5により湿潤状態にした微生物担体(排気ガスとの接触を多くし排気ガスの脱臭を効率化する機能も同時に有する)6で処理することにより行われる。
【0004】
発酵装置からの臭気吸引方法としては発酵中の堆肥から上昇した臭気のみを対象とする方法がある(例えば特許文献1参照。)。
また、発酵装置の堆積物を通過して下方に吸引し、発酵物からの排出水を含めて処理する例もある(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
このようにして送風された生物処理脱臭装置では、臭気中のアンモニアは主に微生物担体に付着している硝酸化成菌により硝酸に変換されて脱臭される(例えば特許文献3参照。)。
【0006】
このとき脱臭装置の循環水5には臭気ガスに含まれていたアンモニアとそのアンモニアが変化した硝酸が蓄積してくる。
【0007】
脱臭装置に蓄積しくるアンモニアや硝酸を肥料として利用する方式を組み込んだ装置もある(例えば特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平11−128666号 広報
【特許文献2】特開2005−35811号 広報
【特許文献3】特開2006−81953号 広報
【特許文献4】特許第3831800号 広報
【特許文献5】特開2005−385811号 広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術においては、脱臭装置の機能維持に必要な循環水中に蓄積する窒素の制御が不明確であった。また、循環水の肥料利用に当たり、植物毒性の解除がされていなかった。
【0009】
本発明は、生物処理方式脱臭装置の能力を維持するために必要な循環水の窒素濃度を適正に制御する方法と引き抜いた循環水を肥料として有効に活用するための具体的手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生物処理脱臭装置から排出される処理済みのガスは湿潤状態の微生物担体に接触してから排出されるため、温度は20から30℃で水蒸気飽和度が高い。
水蒸気飽和程度の低い堆肥舎の臭気ガスを処理する脱臭装置においては循環水の水量の減少がおこるため、給水装置を設置し、循環水量を一定に保っているが、臭気に含まれるアンモニアとそれが変化した硝酸は循環水中に蓄積する。
水蒸気飽和度が高くアンモニア濃度も高い密閉型発酵装置の臭気ガスを処理する脱臭装置においては、循環水の水量の増加と臭気に含まれるアンモニアとそれが変化した硝酸の循環水中の蓄積が同時におこる。
【0011】
循環水に溶解しているアンモニアと硝酸の濃度が高まることは、微生物担体上で生育する脱臭微生物にとっては浸透圧上昇などによる生育環境の劣悪化を招くことにつながり、脱臭装置の能力低下を引き起こしかねない。
【0012】
循環水の循環系に電気伝導率計を設置し、窒素濃度に比例して変化する電気伝導率を目安に循環水の一部または全部を抜き取り、新たに水を補給することにより循環水の窒素濃度を正常に保ち、脱臭装置の機能を維持することである。本発明の第1がそのための方法であり、第2がそのための装置である。
【0013】
また、引き抜いた循環水は多量の窒素を含有するので、適正処理や適正利用の具体的説明が必要であるが、堆肥に散水や液肥利用等の表現をしているのみで、それらの利用法の具体的な説明はなされていない。
【0014】
堆肥発酵過程で発生する臭気ガスは炭酸ガスを多く含むため、循環水中にも炭酸ガスが多く溶解している。循環水に溶解しているアンモニアのうち、硝酸とつり合っている部分は揮発しないが、脱臭装置から抜き取った循環水に溶解している炭酸ガスは大気との平衡になるために大気中に揮散し、それに伴って炭酸ガスとつり合っていた部分の循環水中のアンモニアも揮散する。
【0015】
この抜き取った循環水中の揮発性のアンモニアは臭気として対策するほど高濃度ではないが、肥料として植物に散布したときに植物に接触すると強い毒性を示し、植物を枯死させる。
【0016】
揮発性のアンモニアによる毒性を解除する方法としては、引き抜いた循環水を貯留タンクに入れ、貯留タンクの底面から空気を送風し、大気との平衡を促進させる手段が簡易かつ低コストであり最も推奨される。この方法が本発明の第3であり、その装置が本発明の第4である。
【0017】
このようにして解毒した循環水に含まれる窒素は化学肥料の窒素と全く同等の効果を持ち、かつ脱臭槽からの循環水の引き抜きを電気伝導利率30から40mS/cm程度にすることで、アンモニア性窒素と硝酸性窒素をほぼ等量含ませることが可能となり、この場合には低温期でも作物に対する肥効の高い硝酸アンモニウムと同様に利用できる。この解毒した循環水はそのままでも肥料として利用できるが、天日乾燥、減圧濃縮、電気透析等の各種方法により濃縮した濃縮窒素液肥、更に処理した固形化窒素肥料としても利用できる。この方法が本発明の第5である。
【0018】
上記の発明を実施するに当たり、家畜ふんの発酵臭気等の有機物から発生する臭気を対象にしかつ軽石等の天然資材を充填した脱臭装置で、化学的手段をとらずに微生物脱臭とその後の肥料化処理を行うと、有機農業規格にみあう肥料製造となり、付加価値の高い肥料を作ることができる。この方法が本発明の第6である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の方法と第2の装置により、生物処理脱臭装置の循環水中の窒素濃度を簡便に制御でき、脱臭装置の性能維持に貢献できる。
【0020】
本発明の第3の方法と第4の装置により、引き抜いた循環水の植物に対する毒性を解除することができ、安心して肥料利用ができるようになる。
【0021】
本発明の第5と第6の方法により、付加価値の高い窒素肥料を提供できる。
【0022】
脱臭装置に生成する窒素等を含む液体を肥料利用する方法として発酵装置と脱臭装置と水耕栽培装置を一体化させた方法がある。作物栽培で吸収可能な窒素量は最も吸収量が多いトウモロコシにおいて120日程度の栽培期間の合計で30kg/10a程度であり、これから1日当たりを計算すると0.25kg/10a/日となる。これに対し家畜ふんの堆肥化施設等で発酵中の堆肥から臭気として出るアンモニアは、小規模な装置でも数kg/日となる。このことから、堆肥化装置と脱臭装置と肥料利用を一体化させた場合には、極小規模な堆肥化装置にしか対応できない(例えば特許文献4参照。)。
【0023】
これに対し本発明の方法は、耕畜分業にある農業の現状をふまえ、それに適合するように脱臭と肥料の製造を肥料の利用と分業化できる仕組みである。
【0024】
籾殻等の資材にリン酸を添加し、臭気中のアンモニアの大部分を化学脱臭し、残存するアンモニアガスを堆肥を利用して生物脱臭する方法がある。この方法で生成したリン酸アンモニウムを含む資材を肥料として利用する場合には、堆肥中のリン酸と競合し、施用量を制限せざるを得ない。これに対し、本発明で製造するのは堆肥に不足する窒素のみを成分とするものなので、堆肥施用とは競合しない(例えば特許文献5参照。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の一形態を添付の図面を参照して具体的に説明する。
図2は、本発明組み込んだ生物処理脱臭装置の基本仕様を示した図である。発酵中の堆肥等から発生した臭気ガス7は送風ブロア8により脱臭槽14に送風される。臭気ガス7は微生物担体(充填資材)と接触することにより脱臭され、処理済みガス11として脱臭槽から排出される。このとき微生物担体を湿潤状態に保つために、循環水13を循環用タンク15を経由し、循環ポンプ16により散水配管12を経由して、水滴10として微生物担体9に供給する。循環ポンプ16と電気伝導率計17を脱臭装置14の中に組み込み循環用タンク15を省くこともできる。
【0026】
循環水中には窒素が蓄積してくるので、電気伝導率計17によりその状況を観察する。循環水の窒素濃度と電気伝導率は図3に示すように高い相関があり、電気伝導率により窒素の蓄積状況が推定できる。
【0027】
このときの循環水に蓄積してくる窒素の組成を示したのが図4である。循環水にはまず硝酸性窒素が出現し、ついでアンモニア性窒素、次に亜硝酸性窒素の順で蓄積する。このとき、陰イオンである硝酸イオンと亜硝酸イオンの合計が陽イオンであるアンモニウムイオンより当量以上であれば、アンモニアの脱臭は順調である。
【0028】
しかしながら、例えば水道水質に関する基準では亜硝酸性窒素の監視基準は0.05mg/lというように亜硝酸は硝酸より毒性評価が高く、循環水中に高濃度に含有することは好ましくない。
循環水については、図4に見られるように、電気伝導率を30〜40mS/cmで循環水の引き抜きの管理することにより、亜硝酸性窒素をほとんど含まず、かつ上述したようなアンモニアの脱臭に対する余裕を残しながら、更に後述する付加価値の高い引き抜いた循環水の再利用を可能にできる。
【0029】
この条件で引き抜いた図2に示す循環水21は、図4に示すようにアンモニア性窒素0.5%、硝酸性窒素0.5%、合計1%程度を含むので、窒素肥料として利用することが有益である。しかしながら、引き抜いた循環水21には堆肥製造時の有機物分解に由来する炭酸ガスとこれにつり合う等の大気との平衡関係により揮発するアンモニアも少量溶解している。この溶解している揮発性のアンモニアは植物に対する毒性を示し、肥料として散布した循環水が植物にふれると、植物の枯死を引き起こす。
【0030】
この毒性解除は、図2に示すように引き抜いた循環水21を解毒用タンク23に汲み置き、送風ブロア22により散気管24から液中に空気を吹き込み、大気との平衡を促進させることでなされる。このときの送風量は液1m3当たり毎分30リットル程度である。送風により炭酸ガスとアンモニアが揮散する状況は図5に示した。図5から2日以上の送風により揮発性のアンモニアの液中での残存は極少なくなる。また、この過程で揮散するアンモニアは、臭気としては問題にならない量である。このように処理して毒性解除した循環水は、植物に葉面散布しても無害となる。以上の説明のようにして引き抜いた循環水21の解毒をする方法が本発明の第3であり、その装置が第4である。
【0031】
この液中に含まれる窒素の肥料効果をトウモロコシのポット栽培試験で検証した結果が図6である。この栽培試験は、窒素施肥なしを対照に、硫安(硫酸アンモニウム)、硝安(硝酸アンモニウム)の化学肥料と液肥(解毒した循環水)でポット当たり窒素成分0.3gを施肥してトウモロコシの初期生育を比較したものである。トウモロコシが吸収した窒素のうち肥料から供給された部分については、液肥(解毒した循環水)のものは硫安や硝安等の化学肥料と全く同等であった。
【0032】
特に図4に示すようにアンモニア性窒素と硝酸性窒素を同程度含有することにより、化学肥料の硝酸アンモニウムのように低温条件下の作物栽培土壌等で硝酸化成能が停滞している条件下では、作物が即吸収可能な硝酸を供給できる速効性窒素肥料として優れた特性を発揮できる。
【0033】
更に、軽石等の天然の多孔質資材を担体とした生物処理脱臭装置においては、有機物を原料として発生したアンモニアを化学的手段抜きに窒素肥料とすることが可能であり、有機農業の基準に合致した肥料製造法となる。
【0034】
このようにして処理した引き抜いた循環水は、そのままの状態で近隣で消費すること以外に、濃縮して肥料規格に合う液肥、更に処理して固形肥料として広域で利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一般的な発酵装置と生物処理脱臭装置の概略図面である。
【図2】本発明を加えた脱臭装置の基本仕様を示す模式図である。
【図3】軽石充填生物処理脱臭装置の循環水中窒素濃度の変化を示した図である。
【図4】図3の窒素を組成別に示した図である。
【図5】植物毒性解除装置における効果を示す図である。
【図6】毒性解除した液の肥料効果を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 発酵装置
2 発酵中の堆肥
3 堆肥から発生する臭気ガス
4 生物処理脱臭装置
5 循環水
6 微生物担体(充填資材)
7 臭気ガス
8 送風ブロア
9 微生物担体(充填資材)
10 散水による水滴
11 処理済みガス
12 散水配管
13 循環水
14 生物処理脱臭装置
15 循環用タンク
16 循環用(引き抜き用)ポンプ
17 電気伝導率計
18 流路切り替えバルブ
19 循環水抜き取り用配管
20 散気管から発生した気泡
21 引き抜いた循環水
22 送風ブロア
23 解毒用タンク
24 散気管
【出願人】 【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−239466(P2008−239466A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−86829(P2007−86829)