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【発明の名称】 屎尿汚泥の堆肥化処理方法
【発明者】 【氏名】中下 隆史

【要約】 【課題】本発明は、屎尿汚泥の発酵が消臭機能を有する微生物によって行うことにより消臭設備を不要とした屎尿汚泥の堆肥化処理方法を提供することを目的とするものである。

【解決手段】本発明は、水処理設備5および堆肥化設備を備えた屎尿処理施設1における屎尿汚泥の堆肥化処理方法であって、屎尿汚泥に水分調整剤を混合して水分調整する工程と、前記水分調整された屎尿汚泥に、消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物を接種して堆肥化する堆肥化工程を備えた構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理設備および堆肥化設備を備えた屎尿処理施設における屎尿汚泥の堆肥化処理方法であって、
屎尿汚泥に水分調整剤を混合して水分調整する工程と、
前記水分調整された屎尿汚泥に、消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物を接種して堆肥化する堆肥化工程を備えた
ことを特徴とする屎尿汚泥の堆肥化処理方法。
【請求項2】
前記屎尿汚泥に、発酵を促進させるコンポスト原料を混合する
ことを特徴とする請求項1記載の屎尿汚泥の堆肥化処理方法。
【請求項3】
前記コンポスト原料が、生活ゴミおよび動植物残滓から選ばれる少なくとも1種よりなる
ことを特徴とする請求項1または2記載の屎尿汚泥の堆肥化処理方法。
【請求項4】
前記水分調整剤が、おが屑、パーク、木屑および籾殻から少なくとも1種よりなる
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の屎尿汚泥の堆肥化処理方法。
【請求項5】
前記消臭機能を有する微生物が枯草菌で、前記堆肥化促進機能を有する微生物が放線菌である
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の屎尿汚泥の堆肥化処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、屎尿汚泥の堆肥化処理方法に関する。詳しくは屎尿処理の最終段階で産出される屎尿汚泥の堆肥処理過程において臭いの発生を抑えた処理方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
屎尿処理施設における汚泥の堆肥化方法としては、無機凝集剤を使用した汚泥が多い場合や消化が進んだ汚泥が多い場合には、さらに多くの有機物の分解が期待できないため、乾燥機を設けて汚泥を適性となる含水率まで乾燥した後で発酵させる方法や焼却処理する方法がある。
【0003】
これらの方法では、通常汚泥の含水率が60%〜95%ほどあるために、含水率の調整を行うために脱水機などの付帯設備が必要となる。また、汚泥中の水分を蒸発させるには相当量の熱エネルギーが必要となり、水分蒸発に必要なエネルギーを、燃料の燃焼により又は外部からの電力供給により得る必要があると共に、汚泥に熱を加えることによって悪臭を発生させることになり、この悪臭を取り除くための消臭装置が必要となり多額の設備投資およびランニングコストが必要となる問題があった。
【0004】
また、この種の汚泥処理方法として図9に示すような発明がある。この発明は、貯留槽101に貯留された屎尿の一部が、生物処理設備102を経由せずに汚泥貯留槽103へ直接投入され、生物処理設備102および凝集分離処理設備104から排出された汚泥と混合され、この混合汚泥が脱水処理後に堆肥化設備105へ投入される。これにより堆肥化設備105へ投入される汚泥に含まれるエネルギー源が大きく、堆肥化すると発酵熱を多量に発生するので、十分な発酵が可能となる(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−89588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示される発明では、屎尿の一部が汚泥と混合され、堆肥化設備において発酵処理されるものであるが、もともと汚泥の含水率が60%〜95%ほどであり、この汚泥に屎尿を混合することにより含水率がさらに高くなり、脱水機による水分調整が必要となり、焼却処理に比べて乾燥機が不要となる反面、新たに脱水機の付帯設備が必要となる問題がある。
【0007】
また、汚泥に屎尿が混合されることにより屎尿には大量のアンモニア成分が含まれていることから発酵処理時には悪臭の起因となるアンモニアガスが多量に発生することになり、この悪臭を抑えるために大型の消臭設備とこれらの設備を稼動させるためのランニングコストが必要となる問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、屎尿汚泥の発酵が消臭機能を有する微生物によって行うことにより消臭設備を不要とした屎尿汚泥の堆肥化処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る屎尿汚泥の堆肥化処理方法は、水処理設備および堆肥化設備を備えた屎尿処理施設における屎尿汚泥の堆肥化処理方法であって、屎尿汚泥に水分調整剤を混合して水分調整する工程と、前記水分調整された屎尿汚泥に、消臭機能を有する微生物と堆肥化促進機能を有する微生物を接種して堆肥化する堆肥化工程を備えた構成とする。
【0010】
ここで、含水率が60%〜95%である屎尿汚泥に対して、水分調整剤としておが屑、パーク、木屑および籾殻から少なくとも1種を加えることにより含水率を45%〜70%程度に調整し、枯草菌や放線菌を含む微生物を接種して30〜60℃の中温域内にて発酵を行うことにより、中温域内での好気的条件下における枯草菌の増殖により、例えばアンモニア、カプタン、アミン、油脂成分が分解されて発酵時において発生する臭気を抑えることが可能となる。
【0011】
また、前記屎尿汚泥中には分解されやすい有機物の含有量が少ないと考えられることから発酵の促進を促すために、発酵を促進させる生活ゴミおよび動植物残滓から選ばれる少なくとも1種よりなるコンポスト原料を混合することにより、堆肥化促進機能を有する放線菌によって屎尿汚泥に混合した生活ゴミおよび動植物残滓の発酵が促進されるとともに分解されやすい有機物の含有量が少ない屎尿汚泥の発酵が促進されることにより完熟した堆肥の生産が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の屎尿汚泥の堆肥化処理方法では、水分調整された屎尿汚泥に枯草菌や放線菌を含む微生物を接種して30〜60℃の中温域内にて発酵を行うことにより、臭気の起因となるアンモニア等が枯草菌によって分解されることで殆んどの人が臭気を感じない環境下での堆肥化処理を行うことが可能となる。
【0013】
これにより、従来の屎尿汚泥の焼却処理に比べて焼却装置、空気洗浄機やベンチレーターなどの設備が不要となることで設備投資額の大幅な軽減を行うことが可能となる。また、前述した従来の屎尿汚泥の堆肥化処理に比べては、空気洗浄機やベンチレーターなどの設備が不要となり、これらの機器を稼動させるためのランニングコストを軽減させることができ、かつメンテナンスも不要となるなど経済的な堆肥化処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した屎尿汚泥の堆肥化処理方法の概要を示すフロー説明図である。
【0015】
ここで示す屎尿処理施設1は、屎尿を受け入れるための受入槽2と、屎尿に含まれる夾雑物を除去する除渣装置3と、夾雑物を除去した後の屎尿を貯留するための貯留槽4と、屎尿に対して微生物を用いて浄化するいわゆる生物処理を行う生物処理設備5と、生物処理後の液体成分に対し凝集分離処理を行う凝集分離処理設備6と、砂濾過や活性炭吸着等の処理を行う高度処理設備7と、消毒を行う消毒設備8と、生物処理設備5、凝集分離処理装置6および貯留槽4から排出される汚泥を貯留するための汚泥貯留槽9とから構成される。
【0016】
そこで屎尿は、受入槽2に投入された後、除渣装置3によって当該屎尿に含まれる夾雑物が除去されて貯留槽4に貯留される。そして貯留槽4に貯留された屎尿は生物処理設備5に投入される。
【0017】
生物処理設備5では、屎尿内に多量のアンモニアとして入っている窒素を生物学的に除去する処理(曝気処理)が繰り返し行われた後の生物処理水が凝集分離処理設備6に投入される。この凝集分離処理設備6では凝集剤としてポリマーが混合攪拌されることにより、生物処理水に含まれたリン、細かい浮遊物、汚濁成分の凝集が行われ、汚泥と液体成分とに分離される。
【0018】
そして分離された液体成分は高度処理設備7へ排出され、この液体成分は、高度処理設備7にて、残った浮遊物、汚濁成分を除去するため、砂濾過や活性炭吸着等の処理が行われ、消毒設備8にて消毒が行われ、消毒完了後に放流される。
【0019】
いっぽう、貯留槽4、生物処理設備5および凝集分離処理設備5から排出された汚泥は、汚泥貯留槽9に集められる。この汚泥貯留槽9に投入される屎尿汚泥は含水率が60%〜95%ほど有するために、含水率が45%〜70%程度まで落とす必要がある。
また、屎尿汚泥自体が凝集剤を使用したものが多いためにダマを破砕する必要がある。
【0020】
そこで図2に示すように、分解されやすい有機物の含有量が少ない屎尿汚泥に牛糞や生ゴミなどのコンポスト原料を加えた原料汚泥に、おが屑やワラなどを水分調整剤として混合し、含水率を45%〜70%程度に調整する。次に、水分調整された屎尿汚泥に枯草菌や放射菌を含む微生物を接種して破砕機により破砕処理を行い、発酵槽内に設置された散気管などにより空気を供給しながら攪拌されることで好気的発酵条件下(30〜60℃の中温域内)での安定した一次発酵を行うことにより枯草菌が増殖し、例えばアンモニア、カプタン、アミン、油脂成分が枯草菌により分解されて発酵時において発生する臭気を抑えながら好気的発酵を継続する。そして二次発酵においては、70〜85℃の高温域内での放射菌によって発酵を促進させ、約6週間で完熟した堆肥に生産が可能となる。
【実施例】
【0021】
6月28日の開始時において屎尿汚泥に牛糞や生ゴミなどを混合したコンポスト混合原料、7月12日に採取した中間品、および7月24日における製品を用い。それぞれに水分調整剤としておが屑と、微生物製剤として枯草菌であるパナエコクリーン(商標登録)/(国際衛生株式会社製)および放線菌であるビオグリーン(商標登録)/(豊栄物産株式会社製)を混合した種菌をそれぞれ乾燥重量割合で10:9:1の割合で混合し、ミニリアクタのシステムを用いて再コンポスト化を行った。
【0022】
なお、ミニリアクタの1基当たりの充填量は湿重量で10gとし、pH調整剤として水酸化カルシウムを添加して、pH7.5付近になるように調整した。前記コンポスト混合原料をRun1とし、7月12日に採取した中間品を用いたものをRun2、7月24日における製品を用いたものをRun3とし、それぞれのRun1、2、3についてミニリアクタを2基ずつ用意した。排気ガス中の炭酸ガス濃度とアンモニア濃度を24時間ごとに測定し、コンポスト化5日後の終了時にはpHおよび含水率を測定した。
【0023】
ここで、図3にRun1〜3における炭酸ガス発生速度の経時変化を示す。また、比較のためにラピッドフードの結果を付け加えた。この図3における測定結果からいずれのRun1、2、3もラビットフードに比べて炭酸ガス発生速度は極めて小さく、コンポスト混合原料には分解されやすい有機物の含有量が少なかったことがわかる。
【0024】
次に、図4にRun1、2、3のみで整理した結果を示す。炭酸ガス発生速度はRun2と3でほぼ等しい値となっており、Run1に比べると低い値となっている。
【0025】
図5に、Run1〜3における炭素揮散率を示す。なお、比較のためラビットフードの結果を付け加えた。この結果、Run1〜3はラビットフードに比べて極めて低い炭素揮散率となった。Run1の炭素揮散率がコンポスト化120時間で5.4%と、ラビットフードの46%に比べて低いことから、この混合原料は分解されやすい有機物の含有量が少ないことが推察される。
【0026】
また、図6に、Run1、2、3のみで整理した結果を示す。Run2、3は、Run1に比べ低い値となっているが、これは図4において示した炭酸ガス発生速度の結果とよく対応している。
【0027】
次に、図7にラビットフードとRun1〜3におけるアンモニアガス発生量の経時変化を示す。Run1〜3は、いずれもラビットフードに比べてアンモニア発生量が極めて少ない。
【0028】
また、図8に、Run1、2、3のみで整理した結果を示す。Run2と3で比較するとほぼ等しく、アンモニアガスが殆んど発生していないのがわかる。そしてRun1は、Run2および3よりも値が大きいが、測定値の結果から見ると大きな差異はなく、殆んどの人が臭気を感じない値である。
【0029】
前記Run1〜3における再コンポスト化開始前と終了時のpH、含水率、灰分および現地における有機物分解率の測定値を下記表1に示す。
【0030】
【表1】


【0031】
前記表1に示す結果から、pHと灰分には原料と製品との間で大きな変化がみられなかった。また含水率はいずれのRunで約10%の低下が見られたもののコンポスト化で働く微生物の活性に適した含水率に保たれた。
【0032】
Run2、3がRun1を基準としてどれだけ分解が進んだかを求めるために、再コンポスト化したときの炭酸ガス発生量から分解率を計算した。微生物分解されない灰分を用いて分解率の計算を行った。計算方法はRun1の原料を基準とした有機物分解量を求めるために、まずRun2,3の灰分とRun1の灰分の比を求めて、この値とRun2、3の炭酸ガス累積発生量をかけてやることでRun2、3に含まれる易分解性有機物量を補正し、この炭酸ガス発生量がRun2、3の未分解有機物量から発生した炭酸ガス量としてRun1を再コンポスト化して発生した炭酸ガス量との差から分解率の計算を行った。
【0033】
計算結果は、Run2は26.8%、Run3は26.5%という結果になった。このことから、コンポスト化開始から2週間までに原料中有機物のうち分解され易いものの約4分の1が分解され、4週間後の製品に至るまで、コンポスト化時間が経過しても、有機物の大きな分解はなかったと考えられる。
【0034】
以上のように発酵時において、枯草菌および放線菌を含んだ微生物を接種することにより、30〜60℃の中温域内を至適とする枯草菌は、悪臭の原因となるアンモニア、カプタン、アミン、油脂成分を分解することにより臭気の発生を抑えながら発酵を促進させる。
【0035】
また、前記屎尿汚泥に対して分解され易い有機物が多量の含まれる牛糞や生ゴミなどのコンポスト原料を加えて、枯草菌および放線菌を含んだ微生物を接種することにより、一次発酵処理工程を30〜60℃の中温域内で行うことで、枯草菌による臭気分解によって臭気を抑えながら発酵を促進させることができると共に、二次処理工程においては、70〜85℃の範囲での高温行での放線菌による発酵・分解により、水分過多を抑制しながら高温状態を維持することにより分解され易い有機物が少ない屎尿汚泥とともに短期間での堆肥化が可能となる。
【0036】
このように本発明の屎尿汚泥の堆肥化処理方法では、屎尿汚泥を堆肥化処理することによって焼却処理に比べて脱水装置、焼却装置および消臭装置が不要となり大幅な設備投資の軽減となる。また、従来の発酵処理方法に比べて消臭装置が不要となると共に、各装置のエネルギーおよびメンテナンスコストを大幅に軽減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用した屎尿汚泥の堆肥化処理方法の概要を示すフロー説明図である。
【図2】屎尿汚泥の処理工程を示すフロー説明図である。
【図3】実施例における試料Run1〜3と比較資料のラビットフードにおける炭酸ガス発生速度の経時変化を示すグラフ図である。
【図4】実施例における試料Run1〜3のみの炭酸ガス発生速度の経時変化を示すグラフ図である。
【図5】実施例における試料Run1〜3と比較資料のラビットフードにおける炭素揮散率を示すグラフ図である。
【図6】実施例における試料Run1〜3のみの炭素揮散率を示すグラフ図である。
【図7】実施例における試料Run1〜3と比較資料のラビットフードにおけるアンモニアガス発生量の経時変化を示すグラフ図である。
【図8】実施例における試料Run1〜3のみのアンモニアガス発生量の経時変化を示すグラフ図である。
【図9】従来の屎尿汚泥の発酵処理方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 屎尿処理施設
2 受入槽
3 除渣装置
4 貯留槽
5 生物処理設備
6 凝集分離処理設備
7 高度処理設備
8 消毒設備
9 汚泥貯留槽
【出願人】 【識別番号】595134858
【氏名又は名称】豊栄物産株式会社
【識別番号】506386022
【氏名又は名称】有限会社マエダ美化
【出願日】 平成18年11月17日(2006.11.17)
【代理人】 【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗


【公開番号】 特開2008−127225(P2008−127225A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−311451(P2006−311451)