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【発明の名称】 圧電磁器および圧電素子
【発明者】 【氏名】岩下 修三
【課題】正圧電効果を利用した場合の、圧力1N当りに発生する電荷量が大きくすることができるとともに、−40〜200℃の温度範囲での25℃に対する発生電荷の温度安定性に優れる非鉛系の圧電磁器および圧電素子を提供することを目的とする。

【解決手段】圧電磁器として、組成式がBiTi12・x{(Sr1−aCa(1−b)BaTiO}と表され、1.30≦x≦1.75、0.40≦a≦0.60、0≦b≦0.20を満足するビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnをMnO換算で0.05〜1.5質量部含有するものを用いる
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式がBiTi12・x{(Sr1−aCa1−bBaTiO}と表され、1.30≦x≦1.75、0.40≦a≦0.60、0≦b≦0.20を満足するビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnをMnO換算で0.05〜1.5質量部含有することを特徴とする圧電磁器。
【請求項2】
自発分極量が13μC/cm以上であるとともに、25℃における自発分極量に対する−40℃〜200℃における自発分極量の変化量が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の圧電磁器。
【請求項3】
対向する一対の主面を有する請求項1または2記載の圧電磁器の前記対向する一対の主面にそれぞれ電極を形成してなることを特徴とする圧電素子。
【請求項4】
前記電極が対向する一対の電極であり、厚み縦振動で作動することを特徴とする請求項3記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電磁器および圧電素子に関し、例えば、共振子、超音波振動子、超音波モータ、あるいは加速度センサ、ノッキングセンサ、およびAEセンサ等の圧電センサなどに適し、特に、厚み縦振動で動作する、エネルギー閉じ込め型発振器の高周波共振子や正圧電効果(物体に応力を加えた場合に電気分極が発生し、物体表面に電荷が生じる効果)を利用した圧力センサ素子として好適に用いられる圧電磁器および圧電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、フィルタ、圧電共振子、(以下、発振子を含む概念である)超音波振動子、超音波モータ、圧電センサ等がある。
【0003】
近年、自動車のエンジンやサスペンションといった部分に圧電素子が組み込まれ、正圧電効果を利用して、圧電素子に加えられた圧力をセンシングしてエンジンの燃焼制御や車体の姿勢制御に用いられている。特に、エンジン制御に用いられる圧電素子としては、排気ガスのクリーン化と燃費向上の目的で普及しているリーンバーン方式のエンジンの中で、アンチノックセンサがある。また、圧電素子は、次世代エンジンとして検討されている燃焼プラグを用いないHCCL(Homogenous Charge Compression Ignition)方式のエンジンの中で、希薄ガスの安定した燃焼を目的として燃焼圧の測定に使用が検討されている。
【0004】
これら、圧電素子はエンジンルーム内に搭載されるため、耐熱性の高い素子材料が必要となる。さらに、燃費を向上させるためには、エンジンシリンダ内の圧力を精密に測定して、きめ細かなリーンバーン制御をする必要があるため、センサの圧力・温度変化に対する出力信号特性(発生電荷の圧力特性および温度特性)の変化の少ない素子材料が必要とされる。
【0005】
従来、共振子や圧力センサ素子には、圧電性が高く、例えば大きなP/Vや圧力に対する大きな発生電荷が得られるPT(チタン酸鉛)系材料やPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系材料が使用されていた。しかしながら、PZTやPT系材料は、鉛が約60質量%含まれているため、酸性雨により鉛の溶出が起こり、環境汚染を招く危険性が指摘されている。そこで、鉛を含有しない圧電材料への高い期待が寄せられている。
【0006】
また、PZTやPT系材料は、キュリー温度Tcが約200〜300℃であることから、200℃程度の高温下で使用すると圧電定数が劣化してする点、室温の圧電定数に対して200℃の圧電定数が大きく変化する点などから、用途に大きな制限があった。例えば、圧力センサとして用いた場合、経時変化で圧電定数が劣化すると、同じ圧力でも出力電圧が変わってしまうし、室温の圧電定数に対する200℃の圧電定数の変化が大きいと、圧力と出力電圧との関係が線形でないので、出力電圧から正確な圧力を算出するのが困難になる。
【0007】
そこで、鉛を含有しない圧電磁器組成物として、ビスマス層状化合物を主体とする材料が提案されている(例えば特許文献1。)。
【0008】
ビスマス層状化合物を主体とする材料では、キュリー温度が400℃以上のものが多く、そのようなものは、高い耐熱性を有しておりエンジンルーム内といった高い温度にさらされる環境下で使用するセンサ素子として応用できる可能性がある。
【0009】
また、ビスマス層状化合物を主体とする材料では、PZTやPT系材料と比較して機械的品質係数(Qm)が比較的高いという特徴があり、共振子用の圧電材料としての応用が可能である。圧電素子は共振子として、コンピュータの基準信号発振器に使われ、例えば、コルピッツ発振回路等の発振回路に組み込まれて利用される。図1はコルピッツ発振回路を基本とした回路構成においてインダクタの部分を圧電共振子に置き換えたピアス発振回路を示すものである。このピアス発振回路は、コンデンサ111、112と、抵抗113と、インバータ114および共振子115により構成されている。そして、ピアス発振回路において、発振信号を発生するには、以下の発振条件を満足する必要がある。
【0010】
すなわち、インバータ114と抵抗113からなる増幅回路における増幅率をα、位相量をθとして、また、共振子115とコンデンサ111、112からなる帰還回路における帰還率をβ、位相量をθとしたとき、ループゲインがα×β≧1であり、かつ、位相量がθ+θ=360°×n(但しn=1,2,…)であることが必要となる。
【0011】
一般的に抵抗113およびインバータ114からなる増幅回路は、コンピュータに内蔵されており、誤発振や不発振を起こさず、安定した発振を得るためには、ループゲインを大きくしなければならない。ループゲインを大きくするには、帰還率βのゲインを決定する、共振子115のP/V(ピークバレー値)、すなわち共振インピーダンスRおよび反共振インピーダンスRの差を大きくすることが必要となる。なお、P/Vは20×log(R/R)の値として定義される。
【特許文献1】特開2002−167276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の鉛を含有しないビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器では、圧力センサに使用する場合、発生電荷が小さく単位圧力1N当り15pC以下となり、また、発生電荷の温度変化も20%以上(25℃を基準で200℃時)と大きいため、高い精度を必要とする圧力センサ素子としては使用できないという問題があった。
【0013】
したがって、本発明は、正圧電効果により圧力1N当りに発生する電荷量が大きくすることができるとともに、−40〜200℃の温度範囲での25℃に対する発生電荷の温度安定性に優れる非鉛系の圧電磁器および圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の圧電磁器は、モル比による組成式がBiTi12・x{(Sr1−aCa1−bBaTiO}と表され、1.30≦x≦1.75、0.40≦a≦0.60、0≦b≦0.20を満足するビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnをMnO換算で0.05〜1.5質量部含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の圧電磁器は、自発分極量が13μC/cm以上であるとともに、25℃における自発分極量に対する−40℃〜200℃における自発分極量の変化量が5%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の圧電素子は、対向する一対の主面を有する前記圧電磁器の前記対向する一対の主面にそれぞれ電極を形成してなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の圧電素子は、前記電極が対向する一対の電極であり、厚み縦振動で作動することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧電磁器によれば、モル比による組成式がBiTi12・x{(Sr−aCa1−bBaTiO}と表され、1.30≦x≦1.75、0.40≦a≦0.60、0≦b≦0.20を満足するビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnをMnO換算で0.05〜1.5質量部含有することにより、自発分極量が大幅に増加する。
【0019】
ビスマス層状化合物は、主にxが整数の値のものについて研究が進んでいる。そして、xが整数の場合は、xの値が大きいとビスマス層状化合物の結晶構造内の擬ペロブスカイト層の層数が多くなるため、圧電特性は大きくなると考えられる。しかし、層数の増加にともないキュリー温度の低下、および、正圧電効果による発生電荷の温度変化は大きくなり、高精度なセンサ用途に使用できなかった。
【0020】
正圧電効果による電荷の発生は結晶内に存在する双極子に起因しており、双極子により発生する自発分極に関係している。自発分極量が大きいと発生電荷量も増加する。また、発生電荷の温度依存性は前述と同様に自発分極の温度変化に起因している。特に、ビスマス層状化合物の擬ペロブスカイト層の層数が奇数の場合c軸方向に自発分極が発生する。このc軸方向の自発分極は温度変化にともない減少する傾向にある。1.30≦x≦1.75とすることにより、特に、自発分極量が、xが整数の場合より大きくなるため発生電荷量を大きくすることができる。また、xが1.30≦x≦1.75の場合、c軸方向の自発分極が加わり、かつxが整数の場合より自発分極が大きくなるため、結晶全体の自発分極の温度変化を制御することが容易となる。よって発生電荷量を大きくさせながら温度変化率を抑制することが可能となった。また、aを0.40≦a≦0.60とすることにより、キュリー温度を向上させつつ発生電荷量を向上させることができるので、自発分極量が大きくなる。よって、本発明の圧電磁器において、印加圧力1N当りの発生電荷量を大きくするとともに発生電荷量の温度変化率を小さくすることができる。これにより、高温環境下での用いられる圧力センサ用圧電磁器として有用な特性を示し、車のエンジンのシリンダー内の圧力を直接検出するための圧力センサや、SMD対応のショックセンサや、200℃の高温下でも圧電性の劣化が認められないことから、高温下で使用可能な不揮発の強誘電体メモリー素子などに使用することができる。
【0021】
本発明の圧電磁器によれば、自発分極量が13μC/cm以上であるとともに、25℃における自発分極量に対する−40℃〜200℃における自発分極量の変化量が5%以下である場合、高温下においても安定した圧電特性を得ることができる。
【0022】
本発明の圧電素子によれば、前記圧電磁器の両主面に電極を形成してなることにより、高温下においても安定した圧電特性を得ることができる。
【0023】
これにより、圧電素子を正圧電効果を利用する圧力センサに使用する場合、印加圧力1N当りの発生電荷量を大きくすることができ、かつ−40℃〜200℃の温度範囲における発生電荷量の温度安定性に優れた特性が得られる。
【0024】
さらに、本発明の圧電素子を共振子として利用する場合には、厚み縦滑りおよび厚み縦振動における基本波振動のP/Vを大きくしながら、共振周波数と反共振周波数の間で10゜を超える位相歪みの発生を著しく少なくすることができ、さらに共振周波数の温度変化率が小さく、さらに焼成温度範囲が広くなることから焼成ばらつきによる異相の生成が抑制され、圧電センサの感度のバラツキやP/Vの特性変動を抑制でき、高い歩留まりが実現できる。
【0025】
このような圧電素子の共振子によれば、例えば、厚み滑りおよび厚み縦振動モードで作動する発振器ではP/Vが大きくなることから発振余裕度が高まり、かつ共振周波数と反共振周波数の間の周波数で位相歪みが発生しないことから安定した発振が得られるとともに、発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、さらに、焼成温度の範囲が広くなることから焼成ばらつきによる特性変動を著しく抑制した2〜20MHzの広い周波数に適応できる共振子を得ることができる。
【0026】
圧電共振子として使用した場合には、厚み滑り基本波振動ならびに厚み縦の基本波および3次オーバートーン振動でのP/Vを大きくすることができる。
【0027】
またさらに、本発明の圧電素子は、前記電極が対向する一対の電極であり、厚み縦振動で作動することにより−20℃〜+80℃の温度範囲で発振周波数の温度安定性に優れた特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の圧電磁器は、モル比による組成式がBiTi12・x{(Sr1−aCa1−bBaTiO}と表され、1.30≦x≦1.75、0.40≦a≦0.60、0≦b≦0.20を満足するビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnをMnO換算で0.05〜1.5質量部含有するものである。
【0029】
ここで、係数であるxを上記の範囲に設定した理由ついて説明する。1.30≦x≦1.75とすることにより、特に、自発分極量が、xが整数の場合より大きくなるため発生電荷量を大きくすることができる。また、1.30≦x≦1.75の場合、c軸方向の自発分極が加わり、かつxが整数の場合より自発分極が大きくなるため、結晶全体の自発分極の温度変化を制御することが容易となる。
【0030】
続いて、係数であるaを上記の範囲に設定した理由ついて説明する。aを0.40≦a≦0.60とすることにより、キュリー温度を向上させつつ発生電荷量を向上させることができるので、自発分極量が大きくなる。よって、本発明の圧電磁器において、印加圧力1N当りの発生電荷量を大きくするとともに発生電荷量の温度変化率を小さくすることができる。
【0031】
また、Srの一部をBaに置換することで焼結性が良くなり、より低い温度でち密な焼結体を得ることができる。また、bが増加すると発生電荷量は増加する。しかし、bが増加すると自発分極量の温度変動が大きくなるため、bは0.20以下が好ましい。また、bが増加するとキュリー温度も低くなる。自発分極量の温度変動を少なくし、キュリー温度を高くするには、0≦b≦0.10がより好ましい範囲であり、b=0とするのが特に好ましい。
【0032】
さらに、上述の主成分に対して、Mnの添加含有量が0.05質量部以上にすることにより、板状結晶である本材料系はでも焼結しやすくなり、ち密な磁器が得られ弾性損失が増えることが抑制され、圧力印加時の発生電荷量が18pC/Nより低くなることがない。また、1質量部以下にすることにより、異相が生成されることが抑制でき、圧力印加時の発生電荷量が18pC/Nより低くなることがない。
【0033】
本発明の圧電磁器においては、組成式としてBiTi12・x{(Sr1−aCa1−bBaTiO}で表されるが、主結晶相としてはビスマス層状化合物からなるものである。すなわち、本発明の圧電磁器は、{(Sr1−aCa1−bBaBiTi3+x12+3xと表すことができ、(Bi2+(αm−1β3m+12−で書き表されるビスマス層状化合物の一般式において、αサイトとβサイトおよび酸素サイトに欠陥をともないながらm=4とm=5の構造が混在し、Mnが一部固溶したビスマス層状化合物になっていると考えられる。Mnは主結晶相中に固溶し、一部Mn化合物の結晶として粒界に析出する場合がある。また、その他の結晶相として、パイロクロア相、ペロブスカイト相、構造の異なるビスマス層状化合物が存在することもあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0034】
またさらに、結晶内に存在する双極子により発生する自発分極は、双極子に起因して発生する正圧電効果による電荷と関係するため、自発分極量が大きいと発生電荷量も増加する。本発明の磁器は、自発分極量が13〜22μC/cmであるとともに、25℃における自発分極量に対する−40℃〜200℃における自発分極量の変化量が5%以下であるため、温度依存性が低く、高い値の正圧電効果に発生電荷を得ることができる。
【0035】
本発明の圧電磁器は、粉砕時のZrOボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0036】
本発明の組成を有する圧電磁器は、例えば、原料として、SrCO、CaCO、BaCO、Bi、MnO、TiOからなる各種酸化物あるいはその塩を用いることができる。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。
【0037】
これらの原料を上記した組成となるように秤量し、混合後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕し、この混合物を850〜1000℃で仮焼し、仮焼後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕し、再度所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。
【0038】
このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1000〜1250℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の組成を有する圧電磁器が得られる。
【0039】
本発明の組成を有する圧電磁器は、図1に示すようなピアス発振回路の共振子の圧電磁器、特に厚み滑り振動の基本波振動を利用する高周波共振子用として最適であるが、それ以外の圧電共振子、超音波振動子、超音波モータおよび加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなどにも用いることができる。
【0040】
図2に本発明の圧電素子の実施形態の一例である8MHz用圧電共振子(圧電発振子)の概略斜視図を示す。この圧電共振子は、上記した組成の圧電磁器1の両面に電極2、3を形成して構成されている。このような圧電共振子では、厚み滑り振動および厚み縦振動における基本波のP/Vを高くでき、発振余裕度が高まり、共振周波数と反共振周波数の間の周波数で移相歪みが発生しないことから安定した発振が得られる。さらに、発振周波数の温度安定性に優れた高精度な発振が得られ、特に2〜20MHzの周波数に適応できる圧電共振子を得ることができる。
【0041】
また、多結晶体からなる圧電磁器とすることで、単結晶に比べ加工によるチッピングを大きく抑えられ、さらには、成型金型により所望の形状になるように成型体を作製・焼成することで圧電素子を得ることができ、チッピング(共振子用磁器エッジの欠け)により共振周波数と反共振周波数の間にスプリアス振動にともなう移相歪みが発生することがなく、移相の条件を満足しないことから不発振とはならず、安定した振幅の発振を得ることができる。
【0042】
したがって、上記圧電共振子は、共振周波数と反共振周波数の間およびその近傍の周波数で移相歪みが発生せず、厚み滑り振動および厚み縦振動のP/Vを大きくできるとともに、厚み縦振動での−20℃〜+80℃の温度範囲で発振周波数の温度安定性に優れる非鉛系の圧電磁器とすることができる。
【0043】
図3に、本発明の圧電素子の実施形態の一例である圧力センサ素子の概略斜視図を示す。この圧力センサは、上述の組成の圧電磁器からなる圧電基体11の対向する一対の主面に、それぞれに電極12、13を形成され、互いに対向させた一対の電極12、13を備えている。また、分極は主面と垂直な方向に施してある。このような圧力センサでは、主面間に加わる圧力により、各主面に電荷が生じるため、この電荷を測定することにより、主面間に加わっている圧力を測定することができる。
【実施例】
【0044】
まず、出発原料として純度99.9%のSrCO粉末、CaCO粉末、BaCO粉末、Bi粉末、TiO粉末を、モル比による組成式をBiTi12・x{(Sr1−aCa1−bBaTiO}と表したとき、x、a、bが表1に示した値の主成分と、この主成分100質量部に対してMnO粉末を表1に示した質量部となるように秤量混合した。
【0045】
秤量した原料粉末を、純度99.9%のジルコニアボール、イオン交換水と共に500mlポリポットに投入し、16時間回転ミルで混合した。
【0046】
混合後のスラリ−を大気中にて乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrOボールとイオン交換水と共に500mlポリポットに投入し、20時間粉砕して評価粉末を得た。
【0047】
この粉末に適量の有機バインダを添加して造粒し、金型プレスで150MPaの圧力で成形し、大気中において1050℃〜1250℃で3時間本焼成し、直径7mm、厚み2.5mmの円柱状の正圧電効果評価用圧電磁器と、長さ25mm、幅38mm、厚みlmmの板状に共振周波数評価用圧電磁器を得た。
【0048】
正圧電効果評価用圧電磁器は、厚み2mmに研磨した後、両主面(円柱の上下面)にAg電極を形成して、分極処理を行い、正圧電効果評価用圧電素子を得た。
【0049】
正圧電効果の評価は以下のように行なった。前述の評価用圧電素子の両主面間に圧力300Nをプリロードとして印加して、プリロードに加えて50Nの圧力を10Hzの三角波の圧力印加波形で加えた。そして、圧電磁器からの出力波形をチャージアンプ(キスラー製5011B)にて検出し、圧力印加に対する正圧電効果による発生電荷を計測した。圧力印加時の発生電荷量d(pC/N)は、
d=D/T
D:発生電荷(pC)
T:印加応力(ダイナミックレンジ、N)
として算出した。つまり、前述の印加条件ではd=D/50で算出した。
【0050】
続いて、自発分極(Ps)を評価した。前述の正圧電効果評価用圧電磁器を厚み200μmまでラップ研磨を行い、両主面(円柱の上下面)にAu蒸着により電極を形成した後、ダイシングソーにより8mm×8mmに切り出し、評価試料とした。この試料をaixACT社製TF2000HSを用いて周波数10Hzの三角波を印加してP−Eヒステリシスを測定して自発分極を求めた。
【0051】
また、体積固有抵抗をJIS−C2141に準拠して評価した。これらの結果を表1に示す。
【表1】


【0052】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の試料No.2〜6、11、12および15〜22、23および24は、圧力印加時の発生電荷量は18pC/Nと高い値が得られるとともに、25℃の自発分極に対する−40℃および200℃の自発分極の変化率が±10%以内と温度依存性が低いものとなった。
【0053】
これに対して、xが本発明の範囲外の試料No.1、7および8で、xの値の小さい試料No.1は25℃の自発分極に対する200℃の自発分極の変化率が10%より大きくなり、xの値の大きい試料No.7および8は25℃の自発分極に対する200℃の自発分極の変化率が−10%より大きくなり、それぞれ温度依存性が高いものとなった。
【0054】
また、aが本発明の範囲外の試料No.9、10、13、27では、圧力印加時の発生電荷量は17pC/N以下と低いものとなった。
【0055】
また、bが本発明の範囲外の試料No.26では、自発分極の変化率が10%より大きくなり、温度依存性が高いものとなった。
【0056】
さらに、MnO添加量が0の試料No.14は磁器の充分にち密化しておらず、圧力印加時の発生電荷量は10pC/Nと低いものとなった。MnO添加量が1.6の試料No.23は磁器は分極処理を行なったが、分極できなかった。
【0057】
共振周波数評価用圧電磁器は長さ6mm、幅30mmに加工後、長さ方向に分極するための端面電極を形成し分極処理を施した。その後、分極用電極を除去し、厚み約0.17mmとなるようにラップ機により加工した。その後、主面(長さ6mmと幅30mmからなる面)の両面にCr−Agを蒸着し、電極と磁器との密着強度を高めるために250℃で12時間のアニール処理を施した。
【0058】
その後、図2に示す電極構造となるように、無電極に相当する部位の電極をエッチングで除去し、長さ2.2mm(L)、幅0.9mm(W)、厚み0.17mm(H)形状にダイシングソーを用いて加工し、8MHzの発振に相当する小型な厚み縦振動の基本波振動用共振子を得た。図2において、Pは分極方向を示す。
【0059】
共振子の特性は、インピーダンスアナライザによりインピーダンス波形を測定し、厚み滑り振動の基本波振動でのP/VをP/V=20×log(R/R)の式により算出した(ただし、R:反共振インピーダンス、R:共振インピーダンス)。
【0060】
さらに、発振周波数の温度変化率は、25℃の発振周波数を基準にして、−20℃もしくは+80℃での発振周波数の変化を以下の式により算出した。
【0061】
Fosc変化率={(Fosc(drift)-Fosc(25))/Fosc(25)}、ただし、Fosc(drift)は、−20℃もしくは+80℃での発振周波数であり、Fosc(25)は25℃での発振周波数である。これらの結果を表2に示す。
【表2】


【0062】
表2から、本発明の範囲内の試料は、厚み滑り振動における基本波振動のP/Vを45dB以上と大きくでき、発振周波数の温度変化率が±2100ppm以内と小さくなった。
【0063】
本発明の試料No.4をX線回折で分析したところ、m=5のビスマス層状化合物が主結晶相として認められた。ビスマス層状化合物はペロブスカイト構造が積み重なった中にBiが挿入された結晶構造をもつ。Bi層にはさまれたペロブスカイト構造のユニットの数がm数である。このことから、ペロブスカイト化合物はm=3からなるビスマス層状化合物に取りこまれて、m=5の結晶を有するようになったものと考えることができ、本発明の圧電磁器はm=5の構造とm=4の構造が混在していると考えられる。そして、その構造にMnが一部固溶したビスマス層状化合物になっているものと考えられる。
【0064】
また、実施例で作製した試料を、蛍光X線分析装置で組成分析した。その結果、各試料の磁器の組成は、調合した原料組成と同じであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】コルピッツ型発振回路を原型としたピアス発振回路を示した概略図である。
【図2】本発明の圧電素子の実施形態の一例である8MHz用共振子の概略斜視図である。
【図3】本発明の圧電素子の実施形態の一例である圧力センサの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
l、11・・・圧電磁器
2、3、12、13・・・電極
P・・・分極方向

特許の図
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成19年12月25日(2007.12.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−179532(P2008−179532A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−331643(P2007−331643)