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【発明の名称】 圧電磁器および圧電素子
【発明者】 【氏名】福岡 修一
【課題】圧動的d33定数が大きく、200℃の高温下においても使用可能であり、室温の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化の小さい圧電磁器および圧電素子を提供する。

【解決手段】圧電磁器を組成式でBiTi12・β[(1−γM1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)のうち少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbのうち少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式をBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.0.5)のうち少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbのうち少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有することを特徴とする圧電磁器。
【請求項2】
0.405≦β≦0.495、0.1≦γ≦0.3であることを特徴とする請求項1記載の圧電磁器。
【請求項3】
前記M2M3Oが、BiFeO、NaNbO、KNbOおよびLiNbOのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の圧電磁器。
【請求項4】
対向する一対の主面を有する請求項1〜3のいずれかに記載の圧電磁器の前記対向する一対の主面にそれぞれ電極を形成してなることを特徴とする圧電素子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電磁器および圧電素子に関し、例えば、共振子、超音波振動子、超音波モータ、あるいは加速度センサ、ノッキングセンサ、およびAEセンサ等の圧電センサなどに適し、特に、厚み縦振動の正圧電効果を利用した圧電センサとして好適に用いられる圧電磁器および圧電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、圧電センサ、フィルタ、圧電共振子、超音波振動子、超音波モータ等がある。
【0003】
圧電センサは、ショックセンサや加速度センサ、あるいは、車載用のノッキングセンサとして用いられ、特に近年では、自動車のエンジンの燃費向上および排気ガス(HC、NOx)の低減のために、シリンダ内の圧力を直接検出して、インジェクタからの燃料噴射タイミングの最適化を図るための、圧力センサとしての研究が進められている。
【0004】
従来、圧電磁器としては、圧電性が高く、例えば圧電d定数の大きなPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系材料やPT(チタン酸鉛)系材料が使用されていた。しかし、PZTやPT系材料は、鉛が約60質量%含まれているため、酸性雨により鉛の溶出が起こり、環境汚染を招く危険性があることが指摘されている。そこで、鉛を含有しない圧電材料に対して高い期待が寄せられている。
【0005】
また、PZTやPT系材料は、キュリー温度Tcが約200〜300℃であることから、200℃程度の高温下で使用すると圧電d定数が劣化する点、室温の圧電d定数に対して200℃の圧電d定数が大きく変化する点などから、用途に大きな制約があった。例えば、圧力センサとして用いた場合、経時変化で圧電d定数が劣化すると、同じ圧力でも出力電圧が変わり、室温の圧電d定数に対する200℃の圧電d定数の変化が大きいと、圧力と出力電圧との関係が線形でないので、出力電圧から正確な圧力を算出することが困難になる。また、200℃の高温下においても安定した圧力センサ特性を得るために、ランガサイトや水晶などの単結晶を用いる検討もなされている。しかし、単結晶の場合、圧電d定数が小さく、また、加工時にチッピングが生じやすく、割れやすいという問題があり、さらに、単結晶の製造コストが極めて高いという問題があった。
【0006】
そこで、鉛を含有しない圧電磁器として、ビスマス層状化合物を主体とする材料が提案されている(例えば特許文献1。)。このビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器では、キュリー温度が約400℃以上のものが多く、そのようなものは、高い耐熱性を有しておりエンジンルーム内といった高い温度にさらされる環境下で使用するセンサ素子として応用できる可能性がある。
【特許文献1】特開2002−167276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器を、約200℃の高温下にさらされる用途、例えば、シリンダ内の圧力を直接検出するための圧力センサ用圧電素子として用いた場合、高い耐熱性を有するものの、圧力の検出感度を決定する動的d33定数の温度変化率が大きく、室温〜200℃の温度範囲において、圧力検出の分解能が低下し、感度が悪くなる問題があった。
【0008】
なお、ここで動的d33定数とは、圧電素子に直接荷重を印加したときの出力電圧の実測値を用いて、後述の式により測定されたd33定数である。従来、d33定数は共振インピーダンス法を用いて測定されてきたが、この方法では圧電素子に加わっている負荷が小さいため、実荷重を印加したときの動特性の評価はできない。そこで、実荷重を印加したときの圧力と出力電荷の関係からd33定数(=出力電荷/圧力変化)を測定し、これを動的d33定数とした。
【0009】
具体的な、測定方法としては、まず、圧電素子に200Nのオフセット圧力を印加しておき、そのオフセット圧力に加えて三角波形で150Nの圧力を印加した。圧電素子に印加された三角波のピーク圧力150Nに対する出力電荷Qをチャージアンプで評価した。圧力150N印加に対する、出力電荷Qの関係から、動的d33定数は、d33=Q/150N(荷重変化)となる。つまり、動的d33定数は、単位c(クーロン)/Nであり、圧電素子に荷重を印加したときの動的な状態での圧電d33定数を意味する。
【0010】
なお、200Nのオフセット圧力を印加したのは、圧力方向に対して圧電素子への引っ張り力が働かないようにして、安定な出力特性を得るためである。また、荷重の変化を150Nとしたのは、本発明の応用例となるエンジンのシリンダ内の圧力変化を検出するのに必要な範囲をカバーするためである。
【0011】
したがって、本発明は、耐熱性に優れるとともに、室温の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化の小さい圧電磁器および圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電磁器は、組成式をBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li.5)および(Bi0.50.5)のうち少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbのうち少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有することを特徴とするものである。
【0013】
また、0.405≦β≦0.495、0.1≦γ≦0.3であることが好ましい。
【0014】
M2M3Oが、BiFeO、NaNbO、KNbOおよびLiNbOのうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の圧電素子は、対向する一対の主面を有する前記圧電磁器の前記対向する一対の主面にそれぞれ電極を形成してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧電磁器によれば、組成式をBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)のうち少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbのうち少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有することにより、ビスマス層状化合物の中のペロブスカイト結晶構造が、正方晶と斜方晶とが混在する組成相境界MPBであるため、室温の動的d33定数に対して、200℃の動的d33定数の変化が±5%以内と温度安定性に優れる。
【0017】
さらに、大きな動的d33定数が得られ、高いキュリー点を有することから、200℃の高温下に放置しても動的d33定数の劣化が少なく、耐熱性に優れた特性を有することができる。
【0018】
また、0.405≦β≦0.495、0.1≦γ≦0.3である場合、動的d33定数をより高めることができるとともに、最適焼成温度範囲が広がることから、特性ばらつきが少なくなり、高い歩留まりを達成することができる。
【0019】
M2M3Oが、BiFeO、NaNbO、KNbO、LiNbOのうち少なくとも1種であることにより、さらに動的d33定数を高めることができるとともに、最適焼成温度範囲が広がることから、特性ばらつきが少なくなり、高い歩留まりを達成することができる。
【0020】
これにより、高温環境下で用いられる圧力センサ用の圧電磁器として有用な特性を示し、車のエンジンのシリンダ内の圧力を直接検出するための圧力センサや、SMD(Surface Mount Device、表面実装部品)対応のショックセンサや、200℃の高温下でも圧電性の劣化が認められないことから、高温下で使用可能な不揮発の強誘電体メモリー素子などに使用することができる。
【0021】
さらに、本発明の圧電素子は、対向する一対の主面を有する前記圧電磁器の前記対向する一対の主面にそれぞれ電極を形成したものであることから、高温までの温度安定性に優れ、高温下に放置しても動的d33定数の劣化が少ない。また、多結晶体からなる圧電磁器とすることで、単結晶に比べ加工や搬送時のチッピングを大きく抑えられる。さらに、金型などにより所望の形状に成形し、焼成することで圧電磁器が得られるため、焼成後に形状加工のない工程にすることもできる。焼成後の形状加工をなくすことは、チッピングをより少なくできるとともに、工程の簡略化により、低コスト化を図れる。
【0022】
さらには、圧電磁器の両主面に電極を形成してなるものであり、厚み方向に分極され、厚み縦の振動モードで作動することにより、異方性が大きいことから、圧電縦効果のみの安定した出力特性が得やすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の圧電磁器は、モル比による組成式をBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)のうち少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbのうち少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有するものである。
【0024】
ここで、係数であるβを上記の範囲に設定した理由について説明する。上記組成式において、0.405≦β≦0.498の範囲に設定した理由は、βが0.498より多いと、200℃における動的d33定数の温度変化率が+5%より大きくなるからである。また、βが0.405より小さいと、200℃における動的d33定数の温度変化率が−5%より大きくなるからである。
【0025】
このように、βが0.405≦β≦0.498の範囲においては、動的d33定数が15pc/Nより十分に大きな値をとるとともに、動的d33定数の温度変化率が+から−へ転じる挙動を示す。図1はβを変化させたときの結晶構造の変化をX線回折により解析した結果である。図2は図1の2θ=32〜34°の部分を拡大したものである。β=0の時、結晶は斜方結晶(a軸の長さ≠b軸の長さ)であり、β=1の時は正方晶(a軸の長さ=b軸の長さ)である。β=0.405〜0.495の範囲においては、正方晶と斜方晶とが混在しており、これは組成相境界MPBである。このMPBは、PZT圧電材料でよく知られており、PZの菱面体晶とPTの正方晶とがほぼ1:1の比率で構成される組成領域でMPBが形成される。このPZTのMPB近傍ではd定数が最大値を示し、圧電定数の温度係数が大きく変化する。この現象と同様に、0.405≦β≦0.498の組成範囲は、2種類の結晶相の境界であるので、圧電体の特異的な現象を示す組成相境界MPBであり、動的d33定数の温度変化率が約0近傍まで小さくなるとともに、大きな動的d33定数が得られる。
【0026】
M2M3Oによる置換量γを、0.1≦γ≦0.3としたのは、γが0.1より少ないと焼成温度の最適範囲が約10℃以内と狭くなるためである。また、γを増やすと、焼結性が高まり動的d33定数を低下させることなく、最適焼成温度範囲が約25〜30℃へと広がるが、0.3より多いと動的d33定数が逆に小さくなるためである。
【0027】
続いて、主成分に対して含有させるMnの量について説明する。Mnの含有量がMnO換算で0.05質量部以下の場合は、本材料系は板状結晶であることから焼結がしにくくなり、緻密な磁器が得にくく弾性損失が増えることから、動的d33定数が15pc/Nより小さくなるからである。また、1質量部より多いと、焼結性はしやすくなるものの、異相ができやすくなることから、動的d33定数が15pc/N以下になるためである。
【0028】
また、主成分に対して含有させるFeの量も同様に、Feの含有量がFe換算で0.05質量部以下の場合は、本材料系は板状結晶であることから焼結がしにくくなり、緻密な磁器が得にくく弾性損失が増えることから、動的d33定数が15pc/Nより小さくなるからである。また、1質量部より多いと、焼結性はしやすくなるものの、異相ができやすくなることから、動的d33定数が15pc/N以下になるためである。
【0029】
さらに、MnとFeとが含まれる場合も同様であり、酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部で含有するのが良い。
【0030】
M2M3OのM2はBi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種、M3はFeおよび/またはNbであることが重要である。さらに、M2M3Oは、BiFeO、NaNbO、KNbO、LiNbOのうち少なくとも1種であることが望ましい。
【0031】
このような化合物を選択することにより、大きな動的d33定数を有するとともに、高耐熱性を有し、200℃における動的d33定数の温度変化率が小さなビスマス層状構造からなる非鉛圧電素子を得ることができる。
【0032】
本発明の圧電磁器は、組成式がBiTi12・βM1TiO(γ=0の場合)、もしくはBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]で表され、主結晶相としてはビスマス層状化合物からなるものである。すなわち、本発明の圧電磁器は、(Bi2+(αm−1β3m+12−で書き表されるビスマス層状構造物の一般式において、αサイトとβサイトおよび酸素サイトに配位する構成元素の種類と量を調整することで、m=4の場合に生じる正方晶とm=3の場合に生じる斜方晶とが混在する組成相境界MPBを持ったビスマス層状構造物を得ることができる。その結果、PZTでも知られているようなMPB組成近傍における特徴的な圧電特性をビスマス層状化合物においても実現することができる。
【0033】
また、Mnは、主結晶相中に固溶し、一部Mn化合物の結晶として粒界に析出する場合があり、また、その他の結晶相として、パイロクロア相、ペロブスカイト相、構造の異なるビスマス層状化合物が存在することもあるが、微量であれば特性上問題ない。
【0034】
本発明の圧電磁器は、粉砕時のZrOボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題はない。
【0035】
本発明の圧電磁器は、例えば、原料として、SrCO、BaCO、CaCO、Nb、Bi、MnO、TiO、NaCO、KCO、LiCO、Feからなる各種酸化物あるいはその塩を用いることができる。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。
【0036】
これらの原料をBiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、0.405≦β≦0.498、0≦γ≦0.3を満足する主成分100質量部に対して、MnおよびFeのうち少なくとも1種を酸化物(MnO、Fe)換算の合量で0.05〜1質量部含有するように秤量した。ただし、M1は、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.5.5)のうち少なくとも1種であり、M2は、Bi、Na、KおよびLiのうち少なくとも1種であり、M3は、FeおよびNbのうち少なくとも1種である。秤量した混合した粉末を、平均粒度分布(D50)が0.5〜1μmの範囲になるように粉砕し、この混合物を800〜1050℃で仮焼し、所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1050〜1250℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の圧電磁器が得られる。
【0037】
本発明の圧電磁器は、図3に示すような圧力センサ用の圧電磁器として最適であるが、それ以外の圧電共振子、超音波振動子、超音波モータおよび加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなどに使用できる。
【0038】
図3に本発明の圧電素子を示す。この圧電素子は、上記した圧電磁器1の両面に電極2、3を形成して、構成されている。また、分極は厚み方向に施してある。すなわち、シミュレーションによる応力解析を行った結果、実動作下となる400Nの高加重印加においても、圧電素子に発生する最大主応力は、磁器の機械的強度の約1/10以下であることから、このような圧電素子では、加圧力の変化に対して圧電磁器としても安定であり、200℃の高温下での使用も可能な非鉛の圧電素子を得ることができる。
【実施例】
【0039】
まず、出発原料として純度99.9%のSrCO粉末、BaCO粉末、CaCO粉末、Bi粉末、TiO粉末、NaCO粉末、KCO粉末、LiCO粉末、Fe粉末、Nb粉末を、モル比による組成式をBiTi12・βM1TiO(γ=0の場合)、もしくは、BiTi12・β[(1−γ)M1TiO・γM2M3O]と表したとき、M1、M2、M3、β、γが表1に示す元素、割合となるように、秤量した。
【0040】
この主成分100重量部に対してMnO粉末およびFe粉末を表1に示す重量部となるように秤量し混合し、純度99.9%のジルコニアボール、イソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、16時間回転ミルで混合した。
【0041】
混合後のスラリ−を大気中で乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrOボールとイソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlポリポットに投入し、20時間粉砕して粉末を得た。
【0042】
この粉末に適量の有機バインダを添加して造粒し、金型プレスで150MPaの荷重で円柱形状の成型体作製した後、脱バイ工程を経て、大気中で、1050〜1250℃の間で各試料の動的d33定数がもっとも高くなるピーク温度で、3時間の条件で焼成を行ない、圧電素子の寸法が、直径4mm、厚み2mmの円板状の圧電磁器を得た。また、前述の動的d33定数がもっとも高くなる焼成ピーク温度に対して−20〜+20℃の範囲で5℃の間隔で焼成ピーク温度を変えて焼成を行ない、圧電磁器を作製した。
【0043】
その後、円柱状の圧電磁器の両主面に、Agの電極を焼付けし、200℃の条件下で、厚み方向に5kV/mm以上のDC電圧を印加して分極処理を施した。その後、300℃で24時間の熱エージング処理を行なった。
【0044】
その後、図4に示す装置を用いて、動的d33定数を評価した。具体的には、まず、圧電素子に200Nのオフセット圧力を印加した。その後、圧電素子に加わる圧力を200Nから350Nまで増加させた後、200Nまで戻すことを繰り返し、圧電素子から出力される電荷量の変化をチャージアンプで測定した。この際の圧力変化は10Hzの三角波で与えた。そして、動的d33定数=出力電荷/圧力変化(単位pc/N)の式により動的d33定数を求めた。同様にして、−40℃および200℃における動的d33定数の温度変化率を求めた。動的d33定数の温度変化率は、例えば200℃までの温度変化率は、室温(25℃)における動的d33定数と200℃における動的d33(200℃)定数から、動的d33定数の温度変化率=(動的d33(200℃)定数−動的d33定数)/動的d33定数の式より求めた。
【0045】
また、200℃の高温での検出感度を保つためには、圧電素子の絶縁抵抗が1×10Ω以上であることが望まれる。これより高いことにより、出力された電荷が圧電素子で消費されることが抑制され、信号処理回路に供給されることから、感度ばらつきが少なく、感度低下やノイズ源となってセンサ特性の性能劣化をもたらすことがなくなる。
【0046】
図5に試料No.3、5、6および10の絶縁抵抗と温度の関係を示す。試料No.35および6は、200℃における絶縁抵抗が、1×10Ω以上となった。これに対して、本発明の範囲外の試料No.10は比較的低温では、1×10Ω以上であるが、150℃以上では1×10Ωより低くなった。
【0047】
各組成について、もっとも動的d33定数が高くなった試料の結果を表1に示した。
【表1】


【0048】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の試料No.27〜30は、動的d33定数が18.1pc/N以上と高い値が得られるとともに、25℃の動的d33定数に対する−40℃および200℃の動的d33定数の変化率が0.4%以内と温度依存性が低いものとなった。
【0049】
これに対して、本発明の範囲外の試料No.26ではβが0.5と大きいため、動的d33定数が18pc/Nより低くなるとともに、25℃の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化率が±5%より大きくなり温度依存性が高くなった。また、本発明の範囲外の試料No.31ではβが0.4と小さいため、25℃の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化率が±5%より大きくなり、温度依存性が高くなった。
【0050】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の試料No.4〜7、13〜19および21〜24は、動的d33定数15pc/Nと高い値が得られるとともに、25℃の動的d定数に対する−40℃および200℃の動的d33定数の変化率が4.8%以内と温度依存性が低いものとなった。
【0051】
これに対して、本発明の範囲外の試料No.1〜3ではβが0.5より大きいため、25℃の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化率が±5%より大きく温度依存性が高いものとなり、動的d33定数もβの値が大きくなるのにしたがって低下した。また、本発明の範囲外の試料No.8ではβが0.4と小さいため、25℃の動的d33定数に対する200℃の動的d33定数の変化率が±5%より大きく温度依存性が高いものとなった。さらに、本発明の範囲外の試料No.9〜12ではβが0.25より小さいため、動的d33定数15pc/Nより低い値となった。
【0052】
また、本発明の範囲内の試料No.33〜38、40、42、43、45〜47および49〜55は、動的d33定数15.1pc/N以上の高い値が得られるとともに、25℃の動的d33定数に対する−40℃および200℃の動的d33定数の変化率が5.0%以内と温度依存性が低いものとなった。
【0053】
これに対して、本発明の範囲外の試料No.32、39、44および48では、MnOまたはFeの量が多いため、動的d33定数が低くなり、絶縁抵抗も低くなった。また、本発明の範囲外の試料No.41では、焼結助剤となるMnO、FeおよびM2M3Oがないため、焼結不足となり、動的d33定数測定時の加圧で破壊されない試料は作製できなかった。
【0054】
さらに、焼成温度を変更した試料の動的d33定数を、もっとも動的d33定数の高かった試料と比較して、動的d33定数の低下が20%以内であった焼成温度の範囲を調べ、その範囲を各組成の安定焼成温度範囲とした。この温度範囲が広いと、製造時に焼成温度がばらついた際にも、動的d33定数の変動が少なく、安定した圧電特性の圧電磁器を作製できる。
【0055】
γ≦0.05である試料No.27〜30、40、42、43、45〜47および49〜55では、安定焼成温度範囲は−5〜+5℃の±5℃の範囲であった。これに対し、0.1≦γ≦0.3である試料No.4〜7、13〜19、21〜24および33〜38では±10℃以上、特に、M2M3OがBiFeOである試料No.4〜7、13〜19、24および33〜38では±15℃以上となった。
【0056】
なお、図1および2の試料No.5(β=0.47)と6(β=0.44)のX線回折図を示す。X線回折図からビスマス層状化合物を主結晶相としていることが分かる。試料No.5は組成式としてはBiTi12・0.47[0.9(Sr0.5Ba0.)TiO・0.1BiFeO]のビスマス層状化合物とペロブスカイト化合物との組み合わせとして書き表している。一方ビスマス層状化合物は一般式として(Bi2+(αm−1β3m+12−で書き表されるが、BiTi12は一般式のαの元素はBi3+で、βの元素はTi4+からなるm=3のビスマス層状化合物であり電気的な中性条件は保たれている。
【0057】
X線回折図からビスマス層状化合物が主結晶相として認められることから、M2M3Oのペロブスカイト化合物はビスマス層状化合物の疑ペロブスカイト層に取りこまれて、ビスマス層状化合物の一部になったものと考えられる。
【0058】
すなわち、試料No.4のαサイトはBi、Sr、Baのいずれかの元素で構成され、βサイトはTi、Feのいずれかの元素で構成され、αサイトとβサイトおよび酸素サイトに欠陥をともなうm=4の結晶構造を有し、具体的には(Sr0.5Ba0.55.4455BiTi3.4455Fe0.049513.485にMnが一部固溶したビスマス層状化合物になっているものと考えられる。
【0059】
このように、m=4からなるビスマス層状化合物をm=3のビスマス層状化合物とペロブスカイト化合物との複合体であると考え、m=4の中のペロブスカイト化合物を他のペロブスカイト化合物と一部置換することで、電気的な特性に加え磁器強度的な面においても特徴的な特性を示す非鉛圧電材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の圧電磁器(β=0.44および0.47)と他の圧電磁器のX線回折図である。
【図2】本発明の圧電磁器(β=0.44および0.47)と他の圧電磁器のX線回折図であり、図1のX線回折図の拡大図である。
【図3】本発明の圧電素子である圧力センサである。
【図4】本発明で用いた動的d33定数評価装置を説明する説明図である。
【図5】本発明の圧電磁器の絶縁抵抗率と温度の関係図である
【符号の説明】
【0061】
l・・・圧電磁器
2、3・・・電極
4・・・分極方向

特許の図
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成19年10月29日(2007.10.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−179525(P2008−179525A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−279861(P2007−279861)