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【発明の名称】 導電性ガラス及びその製造方法
【発明者】 【氏名】稲津 哲彦

【氏名】江副 雅子

【要約】 【課題】導電性に優れる導電性ガラスを提供する。

【構成】ガラス中にカーボンナノチューブを含有させることにより、良好な成形性、耐久性、リサイクル性を有し、導電性に優れる導電性ガラスを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを含むことを特徴とする導電性ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ガラスであって、
前記カーボンナノチューブの含有量は、前記導電性ガラス中、0.01質量%以上5.0質量%未満の範囲であることを特徴とする導電性ガラス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の導電性ガラスであって、
前記カーボンナノチューブの平均直径は、100nm以下であることを特徴とする導電性ガラス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ガラスであって、
前記導電性ガラスの表面抵抗値は、1010Ω/sq以下であることを特徴とする導電性ガラス。
【請求項5】
カーボンナノチューブとガラス原料との混合物を加熱して、ガラス原料を溶融させる溶融工程と、
前記溶融させた溶融物を冷却して固化させる固化工程と、
を含むことを特徴とする導電性ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、高い硬度と優れた成形性を有しているため、磁気ディスク基板の保持部材、薄膜太陽電池の電極など様々な分野での利用が検討されている。しかし、ガラスは一般的に絶縁性材料であるため、ガラス表面等における帯電などの問題により、その使用が困難となっている。そのため、導電性を有するガラスが望まれている。
【0003】
そこで、ガラス表面に導電性の薄膜をコーティングしたり、導電性のフィルムを貼り付けたりすることにより、ガラス表面での帯電を防止することが検討されている。例えば、特許文献1には、金属銀微粒子、ガラスフリット微粒子及び遷移金属酸化物の微粒子を有機媒体中に分散させた組成物をガラス表面にスクリーン印刷して、自動車窓ガラスの曇り防止用導電性パターンを形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、石炭灰または石炭灰とガラスカレットとの混合物に酸化鉄を添加したものを加熱、溶融した後、急冷することにより導電性ガラスを得ることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2582514号公報
【特許文献2】特開2003−277101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ガラス表面に導電性の薄膜をコーティングしたり、導電性のフィルムを貼り付けたりする方法では、ガラス表面が被覆されているため、成形性に劣る。また、特許文献1のような方法では、ガラスの表面部分のみを被覆しているため、被膜が剥がれ易く、耐久性に問題がある。さらに、ガラスを再度溶解して再利用する場合、異種物質が被覆されているため、リサイクルに手間がかかる。
【0007】
また、特許文献2の方法では、高い導電性を得るために、多量の石炭灰を添加しなければならず、透明性の低下、靭性の低下、リサイクル性の低下という問題があった。
【0008】
本発明は、良好な成形性、耐久性、リサイクル性を有し、導電性に優れる導電性ガラス及びその製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カーボンナノチューブを含む導電性ガラスである。
【0010】
また、前記導電性ガラスにおいて、前記カーボンナノチューブの含有量は、前記導電性ガラス中、0.01質量%以上5.0質量%未満の範囲であることが好ましい。
【0011】
また、前記導電性ガラスにおいて、前記カーボンナノチューブの平均直径は、100nm以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記導電性ガラスにおいて、前記導電性ガラスの表面抵抗値は、1010Ω/sq以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、カーボンナノチューブとガラス原料との混合物を加熱して、ガラス原料を溶融させる溶融工程と、前記溶融させた溶融物を冷却して固化させる固化工程と、を含む導電性ガラスの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ガラス中にカーボンナノチューブを含有させることにより、良好な成形性、耐久性、リサイクル性を有し、導電性に優れる導電性ガラス及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0016】
<導電性ガラス>
本発明の実施形態に係る導電性ガラスは、カーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブは、主に炭素6員環が連なったグラファイトの層を円筒状にした非常に細長い繊維状物質で、高い電気伝導性を有する。本実施形態では、このカーボンナノチューブをガラス中に含有させることにより、高い導電性を得ることができる。
【0017】
また、本実施形態では、カーボンナノチューブがガラス中に分散されていることが好ましい。カーボンナノチューブをガラス中に分散させることにより、カーボンナノチューブ同士がネットワークを形成し、高い導電性を得ることができる。この場合、分散されているカーボンナノチューブの直径の平均は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。ガラス中のカーボンナノチューブの平均直径が100nmを越えると、十分な導電性を得るためには添加量が増えるため硬度等のガラス本来の機能が低下する場合がある。カーボンナノチューブの平均直径の下限は1nm以上であることが好ましい。
【0018】
本実施形態において、カーボンナノチューブの含有量は、導電性ガラス中、0.01質量%以上5.0質量%未満の範囲であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%の範囲であることがより好ましい。カーボンナノチューブは少ない添加量でも高い導電性が得られるため、上記範囲の含有量にて添加することにより、硬度等のガラス本来の機能を低下させることがほとんどない。導電性ガラス中のカーボンナノチューブの含有量が0.01質量%未満であると、導電性が十分に得られない場合があり、5.0質量%以上であると、硬度等のガラス本来の機能が低下する場合がある。
【0019】
本実施形態に係る導電性ガラスの表面抵抗値は、1010Ω/sq以下であることが好ましい。導電性ガラス中のカーボンナノチューブの含有量を変えることにより、目的に応じた導電性を得ることができる。また、カーボンナノチューブを導電性ガラス中に均一に分散させることにより、ガラス全面において均一な導電性を得ることができる。
【0020】
本実施形態によれば、ガラス表面に導電性の薄膜をコーティングしたり、導電性のフィルムを貼り付けたりする方法に比べて、ガラス中にカーボンナノチューブを添加しているため、成形性に優れ、耐久性にも優れる。また、ガラスを再利用する場合、カーボンナノチューブは炭素原子から構成される物質であるため、ガラスを大気中で再度溶解(例えば、500℃以上で)してカーボンナノチューブを燃焼させることにより再利用することができる。よって、ガラスからカーボンナノチューブを取り除く工程は別途必要なく、リサイクル性にも優れる。さらに、カーボンナノチューブが補強剤としての役割を果たすことにより、カーボンナノチューブの分散の程度、長さ、量、導電性ガラスの製造方法等によっても大きく変わるが、ガラスの強度が数十%程度向上することが期待できる。このように、透明なガラス中にカーボンナノチューブを低添加量で均一に分散させることにより、硬度等のガラス本来の機能を保持したまま、良好な成形性、耐久性、リサイクル性を有し、導電性を持たせた導電性ガラスを得ることができる。
【0021】
本実施形態において、導電性ガラスを構成するガラスとしては、特に制限はなく、例えば、ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)、鉛ガラス、硼珪酸ガラス等が挙げられる。
【0022】
また、本実施形態に係る導電性ガラスは、通電して加熱することにより、ガラスの曇りを防止、解消する防曇ガラスとして使用することができる。すなわち、導電性ガラスに通電して加熱し、ガラス表面に付着した水滴、氷等を蒸発除去することにより、ガラス表面を曇りにくくして、ガラスを通しての視界を確保することができる。
【0023】
これによれば、従来のようにガラス表面に電熱線をプリントして、その電熱線を通電加熱してガラス表面に付着した水滴、氷等を蒸発除去する方法に比べて、視界不良が発生する、外観が損なわれる等の問題なしに、良好な視界を確保することができ、透明性の高い防曇ガラスを得ることができる。
【0024】
<導電性ガラスの製造方法>
本実施形態に係る導電性ガラスの製造方法は、カーボンナノチューブとガラス原料との混合物を加熱して、ガラス原料を溶融させる溶融工程と、溶融させた溶融物を冷却して固化させる固化工程と、を含む。本実施形態に係る導電性ガラスの製造方法の一例を以下に示すが、これに限定するものではない。
【0025】
(1)カーボンナノチューブ及びガラス原料を含む混合液の作製
まず、溶媒中にカーボンナノチューブとガラス原料とを添加、混合して、混合液を作製する。
【0026】
ガラス原料としては、珪酸、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、石灰、炭酸カリウム、酸化鉛、硼酸、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、炭酸リチウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0027】
用いるカーボンナノチューブの平均直径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
混合液におけるカーボンナノチューブの含有量は、ガラス原料に対して0.01質量%以上5.0質量%未満の範囲であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%の範囲であることがより好ましい。ガラス原料に対するカーボンナノチューブの含有量を変えることにより、目的に応じた導電性を有する導電性ガラスを得ることができる。
【0029】
溶媒としては、ガラス原料及びカーボンナノチューブを分散させることができ、ガラス原料及びカーボンナノチューブに対して不活性であればよく特に制限はないが、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられ、ガラス原料及びカーボンナノチューブの分散性が良好である、溶媒の除去が容易である等の点からメタノール、エタノール等のアルコール類等の揮発性有機溶媒が好ましい。
【0030】
混合液を調整するときの混合温度は特に制限はなく、通常、15℃〜30℃の室温付近で行えばよい。
【0031】
(2)混合液の分散処理
次に、分散装置等を使用して、上記カーボンナノチューブ及びガラス原料を含む混合液について分散処理を行い、カーボンナノチューブ及びガラス原料の分散液を得る。
【0032】
分散装置としては、カーボンナノチューブ及びガラス原料を分散できるものであればよく特に制限はないが、ミキサ、超音波分散機等が挙げられる。分散温度は特に制限はなく、通常、15℃〜60℃の範囲で行えばよい。また、分散時間は、使用する分散装置等に応じて決めればよく特に制限はない。
【0033】
(3)分散液からの溶媒除去
次に、分散液から溶媒を除去し、必要に応じて乾燥して、カーボンナノチューブ及びガラス原料の混合粉末を得る。
【0034】
溶媒の除去方法としては、溶媒を自然に揮発させる方法、減圧下溶媒を留去する方法、減圧ろ過、加圧ろ過等のろ過法、遠心分離法等が挙げられる。乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等、またはそれらの組み合わせによって行うことができる。
【0035】
(4)混合粉末の溶融
次に、カーボンナノチューブ及びガラス原料の混合物(混合粉末)を加熱して、ガラス原料を溶融させる(溶融工程)。
【0036】
加熱温度は、ガラス原料が溶融する温度であればよく時に制限はないが、通常、400〜1400℃の範囲で行われる。また、加熱、溶融は通常、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気にて行われる。
【0037】
(5)溶融物の冷却
最後に、溶融させた溶融物を冷却して固化させる(固化工程)。この固化工程により、カーボンナノチューブがガラス中に均一に分散され、カーボンナノチューブがネットワークを形成した状態で固化する。
【0038】
溶融物の冷却は、自然冷却でも強制冷却でもよい。また、固化時に、所望の形状に成形することができる。
【0039】
以上のように、ガラス中にカーボンナノチューブを含有させることにより、良好な成形性、耐久性、リサイクル性を有し、導電性に優れる導電性ガラスを得ることができる。また、この導電性ガラスは、防曇ガラスとしても使用することができる。本実施形態に係る導電性ガラスは、高い導電性、硬度、優れた成形性を有しているため、磁気ディスク基板の保持部材、薄膜太陽電池の電極、サーミスタ等のセンサ、二次電池用カソードの材料など様々な分野で使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
(導電性ガラスの作製)
ガラスフリット(組成PbO・B)100質量部と、カーボンナノチューブ(平均直径20nm)0.5質量部(ガラスフリットに対して0.5質量%)とを、500質量部の溶媒エタノールに20℃で添加、混合して、混合液を作製した。次に、ミキサ(WARING製)を使用して、処理回転数18000rpm、処理時間5分間、処理温度20℃の条件で混合液の分散処理を行い、カーボンナノチューブ及びガラス原料の分散液を得た。分散液から吸引ろ過の方法により溶媒を除去し、80℃で乾燥して、カーボンナノチューブ及びガラス原料の混合粉末を得た。次に、ベーキング炉装置を使用して混合粉末を、窒素雰囲気下、最高到達温度500℃、昇温・降温速度10℃/min、500℃保持時間10分間の条件で加熱して、ガラス原料を溶融させた(溶融工程)。その後、溶融させた溶融物を常温まで冷却して、固化させた(固化工程)。これにより、カーボンナノチューブ(平均直径20nm)がガラス中に均一に分散された、大きさ20mm×20mm、厚さ1.0mmのガラスサンプル1を得た。
【0042】
なお、使用したカーボンナノチューブの平均直径は、走査型電子顕微鏡(日立製、S−4300型)を使用して測定した。100個測定の平均値を、使用したカーボンナノチューブの平均直径とした。また、ガラスサンプルにおけるカーボンナノチューブの平均直径は、走査型電子顕微鏡(日立製、S−4300型)を使用して測定した。100個測定の平均値を導電性ガラス中のカーボンナノチューブの平均直径とした。
【0043】
ガラスサンプルにおけるカーボンナノチューブの含有量は、電子分析天秤(Sefi製、IBA−200型)を使用して測定したところ、0.5質量%であった。
【0044】
(評価)
ガラスサンプル1の表面抵抗値を、表面抵抗計(三菱油化製、MCP−T600型)を使用して測定した。また、ガラスサンプル1に電圧(直流)15V、電圧印加時間1,2,3分間として、電圧印加前と電圧印加後のガラスサンプルの表面温度をサーミスタ温度計(CUSTOM社製、CT−280WR型)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例2>
カーボンナノチューブの添加量を1.0質量部(ガラスフリットに対して1.0質量%)とした以外は、実施例1と同様にしてガラスサンプル2を作製した。実施例1と同様にして、表面抵抗値及び電圧印加前と電圧印加後の表面温度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例3>
カーボンナノチューブの添加量を5.0質量部(ガラスフリットに対して5.0質量%)とした以外は、実施例1と同様にしてガラスサンプル3を作製した。実施例1と同様にして、表面抵抗値及び電圧印加前と電圧印加後の表面温度を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
<比較例1>
カーボンナノチューブ(直径20nm)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてガラスサンプル4を作製した。実施例1と同様にして、表面抵抗値及び電圧印加前と電圧印加後の表面温度を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【0049】
表1からわかるように、実施例1〜3のガラスサンプルは、良好な導電性を示した。これに対して、比較例1のガラスサンプルは導電性を示さなかった。また、実施例1,2のガラスサンプルは、電圧印加後にサンプル表面の温度上昇を確認することができた。これに対して、比較例1のガラスサンプルはサンプル表面の温度上昇を確認することができなかった。なお、実施例3のガラスサンプルは、サンプル状態が悪く、表面温度の測定をすることができなかった。実施例1〜3のガラスサンプル、特に実施例1,2のガラスサンプルは、良好な成形性を有し、耐久性、リサイクル性にも優れるものである。
【出願人】 【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純


【公開番号】 特開2008−24540(P2008−24540A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−197379(P2006−197379)