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【発明の名称】 蛍光ランプ用ガラス管
【発明者】 【氏名】齊藤 健太

【氏名】中島 哲也

【氏名】前田 敬

【要約】 【課題】254nmおよび313nmの紫外線を充分遮蔽でき、可視域に着色の少ない蛍光ランプ用ガラス管の提供。

【構成】GeOおよびCeOを含有するホウケイ酸ガラスからなる蛍光ランプ用ガラス管。前記ホウケイ酸ガラスが下記酸化物基準の質量百分率表示で、SiO 60〜80%、B 10〜25%、Al 1〜7%、LiO+NaO+KO 3〜15%、ZnO 0〜5%、GeO 0.1〜5%、CeO 0.1〜5%、ZrO 0〜3%、Fe 0.01〜0.1%、から本質的になる前記蛍光ランプ用ガラス管。前記ホウケイ酸ガラスにおける全Ceイオンに対するCe3+イオンの割合が90%以上である前記蛍光ランプ用ガラス管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GeOおよびCeOを含有するホウケイ酸ガラスからなる蛍光ランプ用ガラス管。
【請求項2】
前記ホウケイ酸ガラスが下記酸化物基準の質量百分率表示で、SiO 60〜80%、B 10〜25%、Al 1〜7%、LiO+NaO+KO 3〜15%、ZnO 0〜5%、GeO 0.1〜5%、CeO 0.1〜5%、ZrO 0〜3%、Fe 0.01〜0.1%、から本質的になる請求項1に記載の蛍光ランプ用ガラス管。
【請求項3】
前記ホウケイ酸ガラスにおける全Ceイオンに対するCe3+イオンの割合が90%以上である請求項1または2に記載の蛍光ランプ用ガラス管。
【請求項4】
前記ホウケイ酸ガラスの波長254nm、313nmの光に対する厚み0.3mmでの透過率がそれぞれ1%以下、10%以下、波長400nmの光に対する厚み1mmでの透過率が85%以上である請求項1、2または3に記載の蛍光ランプ用ガラス管。
【請求項5】
外径が0.7〜6mm、肉厚が0.07〜0.7mmである請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光ランプ用ガラス管。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線放射を伴う光源の外囲器、特に液晶ディスプレイ(以下、LCDという。)等の表示デバイスのバックライトまたはフロントライトに用いられる蛍光ランプに適したガラス管に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDはマルチメディア関連機器のキーデバイスなどとして広く用いられており、近年、軽量化、薄型化、低消費電力化、高輝度化、低コスト化などが求められるようになっている。特にパソコン用ディスプレイ、車載用表示装置、TVモニターなどでは高品位な表示画面が要求されている。
LCDに用いられる液晶表示素子自体は非発光であるため、高品位な表示画面が要求される場合には蛍光ランプをバックライトとして用いた透過型液晶表示素子が使用されており、また、反射型液晶表示素子が用いられる機器においては前面からの照射光源としてフロントライトが使用されるものもある。
【0003】
LCDの軽量化、薄型化、高輝度化、低消費電力化の動きに伴い、バックライト用蛍光ランプについても細管化・薄肉化が進展している。
しかし、蛍光ランプの細管化・薄肉化は機械的強度の低下を招き、また、発光効率の向上によりランプの発熱量は増加傾向にあるため、より高い機械的強度・耐熱性を持つガラスが必要とされてきている。
【0004】
また、バックライト用蛍光ランプの発光原理は一般照明用と同様であり、電極間の放電により励起した水銀蒸気が紫外線を放出し、管内壁面に塗られた蛍光物質が紫外線を受けて可視光線を発生するというものである。ランプ内では紫外線が発生し、ほとんどは可視光線に変換されるが、一部は蛍光体で可視光変換せずガラスに到達する場合がある。
このような場合、紫外線がガラスで遮蔽されずに透過するとバックライトを構成する樹脂製の導光板、反射板等を変色または劣化させる。したがって、紫外線遮蔽性を持つガラスが必要とされている。
これら要求に応える蛍光ランプ用ガラス管として、TiOおよびCeOを含有するホウケイ酸系硬質ガラスからなるものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−293571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光ランプ内では先に述べたように紫外線が発生する。そのうちの主なものは253.7nmの紫外線であるが、その他に297nm、313nm、334nm、366nmの紫外線が存在する。
【0007】
液晶TV用バックライトは、蛍光ランプの本数も1ユニットあたり数本から10本以上使用するため、トータルの紫外線放出量も必然的に増加する。
液晶TV用を中心として、バックライトユニットに求められる輝度の向上のための改良として、ランプ自体の特性も当然であるが、導光板や反射鏡といった樹脂材料の改良もかなりの比重を占めている。このような導光板や反射鏡に用いられるポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイトフィルムやシクロオレフィンポリマーなどの樹脂は、耐紫外線特性を十分持ち得ず、特に300〜330nm付近に劣化波長があるため、この波長の紫外線に曝されるとバックライトユニットとしての表示品質の低下や、製品寿命、信頼性を低下させる原因となる。このため、前記波長域の紫外線についてもガラスで吸収しランプ外部への放出を防止する対策が必要とされてきている。
【0008】
このような対策として、紫外線を反射または吸収する成分であるAl、TiO、ZnOなどをガラス管内面にコーティングし、その上に蛍光体を塗布して多層膜を形成し、ガラスに達する紫外線の強度を弱めるといった方法もとられている。しかし、このような方法には、ガラス管の細径化や長尺化にともなう塗布の困難化や塗布工程の増加が避けられないという問題があった。
【0009】
TiOおよびCeOを含有するホウケイ酸系硬質ガラスは253.7nmの紫外線だけではなく、バックライトユニットに用いられる樹脂の劣化原因となる313nmの紫外線もある程度遮蔽できる可能性がある。
しかし、TiOおよびCeOをともに含有すると可視域に著しい着色が生じ十分な明るさと色再現性が求められる液晶TV用には適さないおそれがある。
本発明は、このような問題を解決できる蛍光ランプ用ガラス管の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、GeOおよびCeOを含有するホウケイ酸ガラスからなる蛍光ランプ用ガラス管を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛍光ランプ用ガラス管は紫外線カット特性に優れているので、LCD等の表示デバイスのバックライト用蛍光ランプに用いても表示装置内部の樹脂部品等の材質が劣化しにくくなり、表示装置の信頼性が向上する。
また、液晶TV用バックライトに用いた場合十分な明るさと色再現性の実現が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の蛍光ランプ用ガラス管は典型的には、外径が0.7〜6mm、肉厚が0.07〜0.7mmである。
【0013】
本発明の蛍光ランプ用ガラス管を構成するホウケイ酸ガラス(以下、このガラスを本発明のガラスという。)は、波長254nm、313nmの光に対する厚み0.3mmでの透過率T254、T313がそれぞれ1%以下、10%以下、波長400nmの光に対する厚み1mmでの透過率T400が85%以上であることが好ましい。T254が1%超またはT313が10%超では前記樹脂部品等の材質劣化を充分抑制できなくなるおそれがある。T400が85%未満では可視光の透過率が低下しLCDバックライトにおいて十分な明るさまたは色再現性が得られなくなり、液晶TVに用いることが困難になるおそれがある。
【0014】
本発明のガラスにおいてCeOはCe3+をガラス中に存在させT313を小さくする成分であり、必須である。CeOの典型的な質量百分率含有量は0.1〜5%である。5%超では失透しやすくなる。なお、以下ではガラス中の各成分の含有量は質量百分率で表示する。
CeOは酸化力が強いため、それ自身は還元され、3価の状態となりやすいが、通常はガラス中ではCe3+とCe4+の状態で共存し、Ce3+が316nmにCe4+が243nmにそれぞれ吸収帯を持つ。なお、たとえば本発明のガラスがCeOを含有するという場合、これはCeを含有することを言っているに過ぎず、含有するCeのすべてをCe4+の形で含有することを言っているのではない。
【0015】
Ce3+はシャープな吸収を示すのに対し、Ce4+は可視域にかかるブロードな吸収を示すので、全Ceイオンに対するCe3+イオンの割合(R)は90%以上であることが好ましい。90%未満ではガラスが着色しやすくなる。より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
前記Rを高くする方法としては、原料にカーボンやショ糖などのC系還元剤を加える、原料にクエン酸アンモニウムなどのアンモニウム系還元剤を加える、ガラスの金属酸化物成分の原料としてその金属の亜酸化物またはその金属そのものを還元剤として加える、溶融雰囲気を制御する、などの方法が考えられる。
【0016】
また、前記Rを高くしたい場合、Rが98%以上となるようにガラスを溶融してもT00を低下させることなくT254をより小さくしたい場合などには本発明のガラスはSnOを含有することが好ましい。その場合、SnOの典型的な含有量は0.1〜5%である。5%超では失透しやすくなる。
【0017】
本発明のガラスにおいてGeOは、Rが98%以上となるようにガラスを溶融してもT400を低下させずにT254を小さくする成分であり、必須である。
GeOの質量百分率表示の典型的な含有量は0.1〜5%である。5%超では失透しやすくなる。
【0018】
本発明のガラスはPbOを含有しないものであることが好ましく、典型的には、SiO 60〜80%、B 10〜25%、Al 1〜7%、LiO+NaO+KO 3〜15%、ZnO 0〜5%、GeO 0.1〜5%、CeO 0.1〜5%、ZrO 0〜3%、Fe 0.01〜0.1%、から本質的になる。以下、この典型的な態様のガラスについて説明する。
【0019】
SiOはガラスの網目形成成分であり、必須である。60%未満ではガラスの化学的耐久性が低下し、ウェザリング、ヤケ等が起こりやすくなり蛍光ランプの輝度が低下し、または色むらが発生しやすくなる。好ましくは62%以上である。80%超ではガラスの溶融性、成形性が悪化し、化学的耐久性の低下はウェザリング、ヤケ等の原因となり蛍光ランプの輝度低下、色むら発生の原因となる。好ましくは78%以下である。
【0020】
は溶融性を向上させるまたは粘度を調整する成分であり、必須である。10%未満では溶融性が悪化する。好ましくは12%以上である。25%超では揮散が顕著になりガラスの均質性が低下する。好ましくは20%以下である。
【0021】
Alはガラスの失透性または化学的耐久性を改善する成分であり、必須である。1%未満では分相や失透が発生しやすくなる、またはガラスの化学的耐久性が低下する。好ましくは2%以上である。7%超では溶融性が悪化して脈理が発生するなどする。好ましくは5%以下である。
【0022】
LiO、NaOおよびKOは融剤であり、ガラスの溶融性を改善するとともに粘度、熱膨張係数を調整する成分であってこれら3成分のうちのいずれか1種以上を含有しなければならない。これら3成分の含有量の合計が15%超では熱膨張係数が大きくなりすぎる、または化学的耐久性が悪化する。
これら3成分すべてまたはそのうちの2成分を含有することは、それにより混合アルカリによる絶縁性の向上等の効果が期待できるので好ましい。
好ましくは、LiOが0〜3%、NaOが0〜8%、KOが2〜12%である。LiOが3%超、NaOが8%超またはKOが12%超では熱膨張係数が大きくなりすぎたり、化学的耐久性が悪化したりするおそれがある。
【0023】
蛍光ランプの点灯中にNaOは水銀と反応しアマルガムを形成することが知られており、ガラス中の過剰なNaOは蛍光ランプ中で有効に作用する水銀量を結果として減らすことになるため、水銀使用量削減の観点からもNaOの上記上限値を超える含有は好ましくなく、NaOはより好ましくは0〜4%である。
なお、コバール金属と封着する場合にはNaOは8〜15%、タングステンと封着する場合にはNaOは3〜10%とすることが好ましい。各下限値未満では熱膨張係数が大幅に低下し、粘度の大幅な上昇によりコバール合金またはタングステンとの良好な封着ができなくなるおそれがある。
【0024】
ZnOは必須ではないが、耐紫外線ソラリゼーション性を高くする成分であり、5%まで含有してもよい。5%超では失透しやすくなるおそれがある。
【0025】
GeOは先に述べたように必須である。0.1%未満ではT254が大きくなる。好ましくは0.3%以上である。5%超では失透しやすくなる。好ましくは1.5%以下である。
【0026】
CeOは先に述べたように必須である。5%超では失透しやすくなる。好ましくは1〜2%である。
【0027】
ZrOは必須ではないが耐紫外線ソラリゼーション性を高くするまたは煉瓦侵食性を小さくするために3%まで含有してもよい。3%超では失透しやすくなるおそれがある。
【0028】
Feは必須ではないが、T254およびT313を小さくするために含有することが好ましい。通常、原料の不純物成分起源のものを0.01%以上含有する。0.1%超ではT400が小さくなる、または耐紫外線ソラリゼーション性が低下するおそれがある。典型的には0.05%以下である。
【0029】
本発明の典型的な態様のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合、そのような成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
そのような成分として、ガラスの高温における粘度を下げ、溶融性を向上させる効果を有するCaO、MgO、BaO、SrOが例示される。これら成分を含有する場合、その含有量の合計が5%以下であることが好ましい。5%超ではガラス状態が不安定となり、失透が生じやすくなる。
【0030】
本発明のガラスを溶融する際に使用する清澄剤は還元性清澄剤であることが好ましい。CeOをCe3+イオンの状態にコントロールすることで良好な紫外線吸収特性を得ようとしているので、酸化性清澄剤の使用は好ましくない。同様の理由により、酸化剤として作用する原料も使用しないことが好ましい。
清澄剤としては、NaSOとCの併用またはNaClの使用が好ましく、SbまたはAsの使用は好ましくない。また、アルカリ金属の硝酸塩などの使用も好ましくない。
【実施例】
【0031】
表のSiOからFeまでの欄に質量百分率表示で示す組成となるように原料を調合、混合してアルミナ坩堝に入れ、これを1500℃に1時間保持して溶解し、その後充分に攪拌、清澄して均質な溶融ガラスとした。次にこの溶融ガラスを矩形枠内に流し出し、徐冷して例1〜4のガラスを得た。例1、2は実施例、例3、4は比較例である。
なお、原料としては珪砂、各金属の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物等の粉末を用いたが、得られるガラスを100gとして、清澄剤として各例についてNaClを0.25g、還元剤として例1、2、4ではクエン酸アンモニウムを5gを原料として用いた。
【0032】
得られたガラスについて、次のようにしてR(単位:%)、T254(単位:%)、T313(単位:%)、T400(単位:%)を測定した。結果を表に示す。
R:ガラスを粉砕し、理学電機社製波長分散型全自動蛍光X線分析装置RIX3000を用いて蛍光X線法により全Ceイオンの含有量を求めた。一方、Ce4+イオンの含有量を酸化還元滴定法により求めた。すなわち、粉砕したガラス300mgを蓋付きポリプロピレン容器に精秤し、これに15mLの0.73[N]HSOと2mLのHFを添加し、蓋をして10分間室温で攪拌、分解した。次に、25mLの4%HBOを添加し軽く攪拌した後、0.73[N]HSOでビーカー内に洗い出し約100mLにした。この約100mLの溶液について自動滴定装置を用い0.001mol/LのFe標準溶液で溶液中のCe4+を滴定した。なお、標準溶液の標定には0.02mol/LのKMnO標準溶液を使用した。
全Ceイオンの含有量からCe4+イオンの含有量を減じたものをCe3+イオンの含有量とし、これを全Ceイオンの含有量で除してRとした。
【0033】
254、T313:厚みが0.3mmとなるよう両面光学研磨加工した試料について日立製作所社製U3500自記分光光度計を用いて透過率を測定した。
400:厚みが1.0mmとなるよう両面光学研磨加工した試料について前記自記分光光度計を用いて透過率を測定した。
【0034】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明はバックライトなど蛍光管の製造に利用できる。
【出願人】 【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【出願日】 平成18年7月4日(2006.7.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−13386(P2008−13386A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−184259(P2006−184259)