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【発明の名称】 アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法
【発明者】 【氏名】高田 宏

【氏名】千葉 隆人

【要約】 【課題】アルカリ土類金属炭酸塩粒子の形態や凝集性の制御が可能で、針状の形態を有する粒径分布の改良されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法を提供すること。

【解決手段】凝集防止剤を含む溶液中でダブルジェット法を用いてアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とを反応させ、平均アスペクト比が2以上の針状の形態を有する粒子を形成するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法であって、核形成工程後に粒子成長工程を有し、核形成工程終了以降に分散操作を行うことを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集防止剤を含む溶液中でダブルジェット法を用いてアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とを反応させ、平均アスペクト比が2以上の針状の形態を有する粒子を形成するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法であって、核形成工程後に粒子成長工程を有し、核形成工程終了以降に分散操作を行うことを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散操作が核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間に行われることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分散操作が粒子成長工程終了後に行われることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項4】
前記分散操作が核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間と粒子成長工程終了後に行われることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項5】
前記分散操作をメディア分散機、超音波分散機、高速攪拌型分散機の中から少なくとも1種類を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項6】
前記凝集防止剤を含む溶液、アルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液の溶媒が実質的に水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項7】
前記凝集防止剤がアミド基を有する水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径の変動係数が40%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子の短軸径の変動係数が35%未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項10】
前記粒子成長工程終了後に限外濾過膜を用いて前記凝集防止剤を除去することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度分布が改良された針状または柱状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩は、紙、ゴム、樹脂、プラスチック、塗料、化粧品、医薬品等の添加剤として、また誘電セラミック材料や高温超伝導体材料の原材料、光学フィルムの無機ドープ材料等として広範囲の工業分野で利用されている。
【0003】
アルカリ土類金属炭酸塩は、その物理的な性状によって発現する機能や特性が異なることが知られており、例えば、低光沢でウェットインキ着肉性等に優れた塗料の製造には紡錘状炭酸カルシウムが適し、高光沢で不透明性、インキ着肉性及びインキセット性に優れた塗料の製造には針状炭酸カルシウムが適するとされている。また、チタン酸ストロンチウムの製造原料に炭酸ストロンチウムを用いる場合に、平均粒径0.8μm以下の粒子を用いると電気特性が改善されることが報告されている。更に透明な樹脂やプラスチック材料に適用する場合には、透明性を損なわないためにμmオーダー以下の小さな粒子が求められる。
【0004】
このように目的に応じて粒子形状や粒径を選択する必要があるため、形態が制御されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の工業的な利用価値は高い。それ故、特に工業的用途が広い針状や柱状等の異方性形状を有する粒子の形態を精密に制御し、且つ目的とする機能を十分に発現させるため、より均一な粒子、即ち粒径分布に優れた粒子を製造できる技術が求められている。
【0005】
一般にアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法は、炭酸ガス法と称されるアルカリ土類金属イオンを含む溶液に炭酸ガスを反応させて調製する「液−気」法と、アルカリ土類金属イオンを含む溶液と炭酸イオンを含む溶液を反応させて調製する「液−液」法に大別される。現在、工業的に行われているのは主に「液−気」法であり、アルカリ土類金属イオンを含む溶液としてはアルカリ土類金属水酸化物、具体的にはCa(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2が使用されることが多いが、これらの水酸化物は溶解度が低いため、通常スラリーとして用いられる。
【0006】
「液−気」法においては、水酸化カルシウムスラリーの温度と炭酸ガスの導入速度を3段階に変化させて1〜2μmの柱状炭酸カルシウムを製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、炭酸化反応が30%に達する前に水溶性の単糖類や少糖類を水酸化カルシウムスラリーに添加し、1〜2μmの紡錘状炭酸カルシウムを製造する方法(例えば、特許文献2参照。)、水酸化ストロンチウムスラリーの温度と炭酸ガスの導入速度を規定し、0.72μmの針状炭酸ストロンチウムを製造する方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0007】
しかし、「液−気」法では、i)反応過程におけるスラリー中のアルカリ土類金属水酸化物の溶解速度や炭酸ガスのスラリーへの溶解速度を厳密に制御することが難しい、ii)反応過程において核形成と粒子成長が並行して進行する、iii)核形成を水酸化ストロンチウムスラリー中で行うために、反応液を均一に攪拌することが困難で反応液内でのイオン濃度や過飽和度の不均化が生ずる、更に高い塩濃度の影響により生成した核が直ちに凝集する等の課題によって、調製できるアルカリ土類金属炭酸塩粒子は粒径分布の広いものであった。
【0008】
上記i)の課題に対しては、例えば、炭酸イオンを含む水溶液とカルシウム化合物の水溶液とを超音波照射下に直接反応させて炭酸カルシウム結晶を製造する方法(例えば、特許文献4参照。)や、バリウム塩の水溶液と炭酸アルカリの水溶液を別々の供給口から同時に反応容器に添加することにより針状の炭酸バリウムを製造する方法(例えば、特許文献5参照。)、同様にストロンチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉛の各イオンから選択される少なくとも1種を含む金属イオン源と炭酸源をダブルジェット法により、液中で反応させて針状及び棒状の炭酸塩を製造する方法(例えば、特許文献6参照。)等の「液−液」法を用いた方法が提案されている。
【0009】
しかし、これらの方法もii)項に示した課題を解決し得る技術手段を有していないため、製造できる粒子の粒径分布は依然として満足できるものではなかった。
【0010】
前記ii)項に記載の課題に対しては、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉛の各イオンから選択される少なくとも1種を含む金属イオン源の液中で炭酸源を反応させる製造方法で、粒子数増加工程と粒子体積増加工程を含み、且つ炭酸源の添加速度及び時間を制御して反応させ、アスペクト比が1より大きい形状を有する炭酸塩の製造方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0011】
しかし、この方法はイオン源の添加方法がシングルジェット法であるため、i)項に記載の課題を内包する製造方法であり、また反応容器内に溜められた金属イオン源の中へ炭酸源を添加するため、iii)項に記載の課題が不可避となり、粒径分布の劣化を改良する技術としては不十分であった。
【0012】
また、「液−気」法で製造されるアルカリ土類金属炭酸塩は、元来一次粒子(核粒子)間の凝集力が非常に強いものであり、一次粒子が多数凝集して大きな二次粒子(一次粒子の粗大凝集体)を形成しており、この二次粒子のスラリーは、長時間強力に攪拌を続けても、ほぼ一次粒子にまで分散させることは不可能であるとされている。
【0013】
例えば、このような一次粒子の凝集体を多数含有する炭酸カルシウムを、ゴム、プラスチック、紙、塗料等の填料あるいは顔料として使用した場合、二次粒子があたかも一次粒子のような挙動を示すため、分散不良、強度の低下、光沢の低下、流動性の悪化等を招き、一次粒子を配合した場合に発現する本来の効果が得られなくなる。また、同様にこのように多数の凝集体を含有する炭酸カルシウムに無機系または有機系の表面処理を施しても、二次粒子表面のみが処理されるにすぎず、十分な効果を引き出すことは難しい。
【0014】
このようなアルカリ土類金属炭酸塩粒子における一次粒子凝集体を分散させる方法は多数報告されており、工業的には凝集体として形成されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子を、ボールミル、サンドグラインダーミル等により強力に粉砕する方法が採用されている。
【0015】
しかしながら、このような方法は強大なエネルギーを使用した摩砕粉砕であるため、凝集体の分散が行われると同時に一次粒子の破壊も行われ、その結果、粒子の表面状態は不安定化し、加えて希望する一次粒子径より更に小さな粒子と分散が不完全な二次凝集粒子とが混在し、粒度の分布が幅広くなってしまうため、好ましい方法であるとは言い難い。
【0016】
また、このようなサンドグラインダー等の湿式粉砕機には、粉砕用メディアとして微小なガラスビーズが用いられる場合があるが、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の粉砕プロセスにおいて、これらガラスビーズ表面も破壊されるため、分散処理後のアルカリ土類金属炭酸塩粒子中に数μm以上の粗大ガラス片が多数混入することもあり、好ましい方法であるとは言い難いのが現状である。
【0017】
従って、アルカリ土類金属炭酸塩粒子製造後の粉砕プロセスの必要がなく、凝集粒子の少ないアルカリ土類金属炭酸塩粒子を安定に製造できる方法が求められている。
【特許文献1】特公昭55−51852号公報
【特許文献2】特開2001−139328号公報
【特許文献3】特開2006−124199号公報
【特許文献4】特開昭59−203728号公報
【特許文献5】特開平5−155615号公報
【特許文献6】特開2006−21988号公報
【特許文献7】特開2006−169038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の形態や凝集性の制御が可能で、針状の形態を有する粒径分布の改良されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルカリ土類金属の炭酸塩粒子の核形成工程と粒子成長工程を分離して各工程毎に最適な条件を付与し、且つ少なくともいずれかの工程終了後に分散処理を施すことによって、粒子凝集に原因する粒径分布の劣化や形状の不均化を防止し、針状の形態を有する粒子の平均アスペクト比や平均粒径、及び粒径分布を制御できることを見出すに至った。本発明はこのような検討から得られた知見に基づき導かれたものである。なお、本発明において、針状の形態とは柱状、棒状の形態をも含むものである。
【0020】
即ち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0021】
1.凝集防止剤を含む溶液中でダブルジェット法を用いてアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とを反応させ、平均アスペクト比が2以上の針状の形態を有する粒子を形成するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法であって、核形成工程後に粒子成長工程を有し、核形成工程終了以降に分散操作を行うことを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0022】
2.前記分散操作が核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間に行われることを特徴とする前記1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0023】
3.前記分散操作が粒子成長工程終了後に行われることを特徴とする前記1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0024】
4.前記分散操作が核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間と粒子成長工程終了後に行われることを特徴とする前記1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0025】
5.前記分散操作をメディア分散機、超音波分散機、高速攪拌型分散機の中から少なくとも1種類を用いて行うことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0026】
6.前記凝集防止剤を含む溶液、アルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液の溶媒が実質的に水であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0027】
7.前記凝集防止剤がアミド基を有する水溶性ポリマーであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0028】
8.前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径の変動係数が40%未満であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0029】
9.前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子の短軸径の変動係数が35%未満であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0030】
10.前記粒子成長工程終了後に限外濾過膜を用いて前記凝集防止剤を除去することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、アルカリ土類金属炭酸塩粒子形成時の凝集に起因する悪影響を排除することが可能となり、針状の形態を有する粒径分布の改良されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態及びその詳細について説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものである。
【0033】
本発明において、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造工程における核形成工程とは、核粒子を発生させるためのプロセスであり、粒子成長工程とは新たな核粒子の発生を殆ど伴わずに粒子を成長させるプロセスを意味する。
【0034】
換言すれば、核形成工程では粒子数は増加し、粒子成長工程では粒子数は実質的に増加しない(オストワルド熟成を施すと粒子数は減少する場合もある)。従って、両工程は新たな核粒子の発生の有無によって区別することができる。ここで、粒子数が実質的に増加しないとは、粒子成長工程終了時の粒子数が粒子成長工程開始時(熟成工程を含む場合には熟成工程終了時)の125%以内であることを意味する。
【0035】
本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩は、アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとを反応させて形成することができる。アルカリ土類金属イオン源としては、例えば、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+であり、Ca2+の場合の具体的な化合物としては、CaCl2、Ca(NO32、CaSO4、Ca(OH)2、Ca(CH3COO)2、及びそれらの水和物等を挙げることができる。また、Sr2+、Ba2+、Ra2+の場合の具体的な化合物も同様である。炭酸イオン源として用いることができる化合物としては、例えば、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、(NH42NO3、NH4HCO3、(NH22CO等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、アルカリ土類金属イオン源と炭酸イオン源のいずれも溶媒に対する溶解度が高く、濃度の高い溶液を調製できる化合物がより好適である。
【0037】
前述のように、アルカリ土類金属の炭酸塩を製造する方法としては、アルカリ土類金属塩の溶液に炭酸ガスを導入して反応させる方法(「液−気」法)や、アルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液を反応させる方法(「液−液」法)が知られている。いずれの方法においても、アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとが反応するとアルカリ土類金属炭酸塩の析出が直ちに生じる。
【0038】
反応により生じたアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、核粒子の生成直後から粒子成長を始めるため、早く発生した核粒子ほど成長しやすく、後から発生した核粒子ほど成長しにくい。この結果、核形成工程中の粒子成長は核粒子の粒径分布を増大させ、粒子成長終了後の粒径分布の劣化を招くため好ましくない。
【0039】
核形成工程中に起こる核粒子の粒径分布の広がりには、核形成時間と核形成温度に大きく依存する。即ち、核形成工程の時間が長いと早く発生した核粒子の成長によって粒径分布が劣化し、また核形成工程の温度が高いと核粒子の成長速度が増大し、早く発生した核粒子と後から発生した核粒子との粒径差が増幅される。
【0040】
本発明では核形成工程の時間を任意に設定できるが、粒径分布の劣化を防止するために1800秒以内で終了することが好ましく、300秒以内がより好ましく、120秒以内が更に好ましい。
【0041】
また、同様に核形成工程の温度も任意に設定できるが、核形成工程中の核粒子の成長を抑制するため、なるべく低い温度で行うことが好ましく、具体的には−10〜40℃の間で行うことが好ましい。更に低い温度では反応容器内の液が凍結したり、温度制御のために特殊な設備が必要となり生産コストが増大する。
【0042】
アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法として、アルカリ土類金属塩の溶液中に炭酸ガスのみを導入する、所謂炭酸ガス法とアルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液を同時に添加するダブルジェット法とがあるが、本発明においては、核形成及び粒子成長のいずれの工程においてもダブルジェット法を使用することが好ましい。
【0043】
本発明で言うダブルジェット法とは、2種類の溶液を必要に応じて適当な送液装置等を用いて各々反応容器内の液の液面上または液中に滴下または噴射、あるいは注入することにより該容器内の液中で反応させる方法であり、本発明においては、反応容器内の凝集防止剤を含む溶液にアルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液を添加して実施される。
【0044】
また、本発明においては、凝集防止剤を含む溶液やアルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液の溶媒は実質的に水であることが好ましい。ここで、本発明において溶媒が実質的に水であるとは、水以外の溶媒の含有率が10体積%以下であることを意味する。水以外の溶媒、特に有機溶媒を10体積%以上含有する場合には、粒子凝集性が劣化する懸念がある。
【0045】
ダブルジェット法では、送液装置等で添加液の添加速度を変更することによって、モル添加速度を任意に設定したり変更したりすることができるが、モル添加速度が小さい場合には、単位時間当たりに形成される核粒子数が減少するため生産効率が低下し、添加時間を長くして形成される核粒子数を増やすと、生成した核粒子の成長が並行して生じるため粒径分布が劣化する。
【0046】
従って、本発明では前記核形成工程におけるモル添加速度を、該工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たり0.1モル/min以上に設定することが好ましい。更に0.2〜4モル/minが好ましく、0.5〜2モル/minがより好ましい。モル添加速度が4モル/minより大きい場合には、反応容器内の攪拌効率が相対的に低下し、不均一な核粒子が生成したり、局所的な核粒子密度の増加による凝集発生の懸念が増大する。
【0047】
本発明における粒子成長工程では、新たな核粒子が発生しないようにアルカリ土類金属イオンと炭酸イオンを反応させることが重要である。そのためには、粒子成長工程をダブルジェット法で実施する場合には、アルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液の添加速度の調整が必要であり、炭酸ガス法で実施する場合には炭酸ガス導入速度の調整が必要である。
【0048】
なお、本発明では核形成工程終了後に、必要に応じて反応容器内の液温を核形成工程より高く保持する(熟成工程)こともできる。通常、熟成工程では粒径の小さな粒子が溶解し粒径の大きな粒子が成長する現象(オストワルド熟成)が起こる。従って、本発明においては熟成工程を粒子成長工程の一部と見なすことができる。粒子成長工程は、粒子の成長速度を高めるために核形成工程と同等以上の温度で行うことが好ましく、具体的には0〜60℃の間で行うことが好ましい。0℃より低い温度では十分な粒子成長速度が得られないため粒子成長工程に長時間を要し、60℃以上では針状粒子の直径が大きくなりアスペクト比を高めることが難しくなる。
【0049】
本発明は、核形成工程終了後及び/または粒子成長工程終了後に分散操作を行うことを特徴とする。分散操作は、核形成工程終了後及び/または粒子成長工程で発生した凝集粒子を一次粒子に解膠することを目的として実施され、少なくとも核形成工程終了後から該粒子成長工程開始までの間に行われることが好ましく、核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間と粒子成長工程終了後の両方で実施されることがより好ましい。更に、必要に応じて核形成工程や粒子成長工程の途中で実施することも可能である。
【0050】
また、分散操作は反応容器内で実施することもできるし、反応液を分散操作の間一時的に別の容器に移して実施することもできる。本発明のように核形成工程終了以降において、凝集防止剤共存下の溶液状態で分散操作を行うことにより、一次粒子が破壊されるような過度な分散や解膠後の粒子の再凝集を防止することができる。
【0051】
分散操作に要する時間は、粒子の凝集状態や使用する分散機のパワーによって異なるため、解膠状態を確認して決定することが好ましい。凝集粒子の解膠状態を確認するために、例えば、粒径測定装置や濁度計を用いることができる。粒径測定装置や濁度計で分散過程の粒径や濁度の時間変化を測定した場合、粒径や濁度は凝集粒子が解膠されるに従い低下し、殆どの粒子が一次粒子化されると一定の値に収斂する。
【0052】
本発明においては、分散操作によって殆どの粒子が一次粒子まで解膠されていること、即ち上記の確認方法によれば、測定値が収斂した状態まで分散操作を実施することが好ましい。分散操作の時間が長くなるほど、粒子間でのオストワルド熟成による粒径分布の劣化が懸念されるため、分散操作時間を短縮するために適切な凝集防止剤や分散機を選択すること、またオストワルド熟成の影響を軽減するために、分散操作時の反応溶液の温度を低く維持することは重要である。
【0053】
本発明における分散操作では、メディア分散機、超音波分散機、高速攪拌型分散機のいずれか、またはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0054】
メディア式分散機は装置内にビーズ等を投入し、その衝突やビーズ粒子間のせん断により粒子を分散するものであり、本発明で用いることができる具体的な装置例として、寿工業アペックスミルやアシザワ工業LMZなどが挙げられる。一次粒子を粉砕することなく凝集を解砕するためには、小粒径のビーズを用いることが好ましい場合が多く、具体的には平均粒径が0.3mm以下のビーズを用いることが好ましく、更に好ましくは平均粒径0.1mm以下のビーズを用いることが好ましい。ビーズ種としてはガラス、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどを用いることができる。
【0055】
超音波分散機は超音波によって発生したキャビテーション(真空泡)が潰れるときに発生するエネルギーを用いて分散を行うもので、本発明で用いることができる具体的な装置例として、SMT社UH150や日本精機製作所US−300Tなどが挙げられる。
【0056】
高速攪拌型分散機は高速攪拌している攪拌羽根近傍のせん断力により粒子を分散させるもので、本発明で用いることができる具体的な装置例として、プライミクス社TKホモミクサーMARKIIやMテクニッククレアミックスCLM−3.7などが挙げられる。
【0057】
本発明において、アスペクト比とは針状の形態を有する粒子の長さ(長軸径)と直径(短軸径)との比(長軸径/短軸径)であり、平均アスペクト比とは、300個以上の粒子について個々のアスペクト比を求めて得られた算術平均の値を意味する。平均アスペクト比を計算する際に長軸径や短軸径の平均値も求めることができる。本発明は、平均アスペクト比が2以上の針状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩の製造に特に有用である。
【0058】
アスペクト比の高い針状粒子を得るためには、核形成工程でアスペクト比の高い核粒子を形成する方法と、粒子成長工程でアスペクト比を高める方法があるが、核形成段階でアスペクト比を高めようとすると粒径分布の劣化を伴う場合が多い。
【0059】
本発明においては、核形成工程において得られる核粒子の特性として、アスペクト比よりも粒径分布がより重要である。これは、核形成段階でより均一な核粒子を形成することが粒子成長後の粒径分布の向上に大きく寄与するためである。そのため、本発明においては核形成の段階では粒径分布が劣化しにくい低アスペクト比粒子であることが好ましく、粒子成長工程で短軸径の成長を抑制しつつ長軸径を選択的に成長させて、高アスペクト比粒子を形成することが好ましい。
【0060】
従って、本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、核形成工程終了時の核粒子の平均アスペクト比をAR1(=a1/b1)、粒子成長工程終了時の粒子の平均アスペクト比をAR2(=a2/b2)としたとき、AR1が1以上、2以下であることが好ましく、1以上、1.5以下がより好ましい。同時にAR2/AR1は2以上であることが好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。ここで、a1、b1は各々核形成工程終了時の粒子の長軸径平均値と短軸径平均値であり、a2、b2は各々粒子成長工程終了時の粒子の長軸径平均値と短軸径平均値である。
【0061】
本発明において、粒径はアルカリ土類金属炭酸塩粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径で表し、平均粒径とは300個以上の粒子について個々の粒径を求めて得られた算術平均の値を意味する。粒径分布は、平均粒径を求める際に用いた個々の粒径の標準偏差を平均粒径で除した値に100を乗じた値で表す。
【0062】
粒径分布(%)=粒径の標準偏差/平均粒径粒子×100
本発明は、粒径分布に優れたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造に有用である。本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、粒径分布が35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。また、平均粒径は60〜220nm以下が好ましく、70〜200nm以下がより好ましい。上記の平均アスペクト比や平均粒径の算出に必要となる個々の粒子の長軸や短軸、投影面積は、電子顕微鏡像から測定することができ、必要に応じて画像解析装置を用いて求めることもできる。
【0063】
針状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子においては、核形成時には長軸方向に接合した粒子凝集が発生する場合が多いため長軸径の分布劣化の原因となる。一方、粒子成長時には短軸方向に接合した粒子凝集が発生する場合が多いため短軸径の分布劣化を招く。本発明の製造方法によって粒子凝集性を改良すると、長軸径と短軸径双方の分布向上が期待できる。具体的には、核形成工程終了後から粒子成長工程開始までの間に分散操作を行う(分散操作A)ことによって主に長軸径の分布を、粒子成長工程終了後に分散操作を行う(分散操作B)ことによって主に短軸径の分布を改良できる。即ち、分散操作Aと分散操作Bを組み合わせて実施することによって、長軸径と短軸径双方の分布改良効果が得られる。
【0064】
粒径分布と同様の方法で長軸径の分布を定義した場合、本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩粒子においては、長軸径の分布は40%以下が好ましく、30%以下であることがより好ましい。長軸径の平均値は150〜450nmであることが好ましく、200〜450nmがより好ましく、200〜400nm以下が更に好ましい。同様に短軸径の分布は35%以下が好ましく、30%以下であることがより好ましい。また、短軸径の平均値は20〜80nmが好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。
【0065】
本発明においては、核形成工程と粒子成長工程で消費される原料(アルカリ土類金属塩及び炭酸塩)のモル比を任意に変えることができるが、平均アスペクト比が2以上の針状粒子を形成するには、粒子形成終了時のアルカリ土類金属炭酸塩に対する核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比を少なくする方が有利である。これは、針状粒子の異方形状の形成には粒子成長工程の寄与が大きいためである。従って、本発明では核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比を50モル%以下に設定することが好ましく、更には30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。
【0066】
本発明においては、粒子凝集を防止するために核形成工程開始前に少なくとも反応容器内の液に凝集防止剤を添加しておくことが必要であるが、アルカリ土類金属塩溶液や炭酸塩溶液に凝集防止剤を添加することもできる。本発明で用いることができる凝集防止剤は、アルカリ土類金属炭酸塩粒子に対して吸着性を有し、立体障害として作用し、粒子間の凝集を防止することができる化合物であり、天然物と合成化合物のいずれであってもよい。
【0067】
本発明において好ましく用いることができる凝集防止剤の例として、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドンなどの窒素含有ポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの中性ポリマー、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系ポリマー等の水溶性ポリマーを用いることができる。中でも好ましい化合物として、アミド基を有するポリマーが挙げられる。ポリマーの平均分子量に制限はないが、分子量が小さいと凝集抑制効果が小さく、大きいと反応液の増粘を引き起こす。本発明で用いられる凝集防止剤の平均分子量は好ましくは1万〜100万、より好ましくは3万〜50万、更に好ましくは5万〜30万である。
【0068】
また、上記凝集防止剤の添加量としては、反応容器内の液や添加溶液に対して0.1〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0069】
使用した凝集防止剤は、最終製品が疎水性塗料やプラスチックの場合等、製品性能に悪影響を与える可能性がある場合には、粒子形成後の脱塩工程及び水洗処理工程、あるいは溶媒置換の工程等で取り除くこともできる。
【0070】
本発明では、粒子凝集性を改良するため核形成工程、粒子成長工程の少なくとも一部を、反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰となる条件下で行うことができる。反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰となるように操作する方法に特に制限はないが、ダブルジェット法で添加されるアルカリ土類金属塩溶液とは別に必要量のアルカリ土類金属塩またはその溶液を反応容器内に添加する方法や、ダブルジェット法で添加されるアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液の流量のバランスで調整する方法が好ましい。
【0071】
アルカリ土類金属イオンの過剰量としては、反応容器内の液に溶解しているアルカリ土類金属イオンのモル濃度として0.001〜0.5モル/Lが好ましく、0.01〜0.5モル/Lがより好ましく、0.01〜0.2モル/Lが更に好ましい。この範囲をはずれると凝集発生の懸念が増大する。
【0072】
本発明においては、反応容器内の液のpHを任意に設定することができるが、粒子の凝集抑制及び針状粒子を形成するための異方成長性の観点から、核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部をpH9以上の条件下で行うことが好ましい。更にはpH値9〜13.5が好ましく、pH値10〜13が特に好ましい。これより高いpH値にしても、凝集抑制や異方成長性に対する効果は変わらない。
【0073】
本発明では、針状粒子を形成するために、核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部を形態制御剤の存在下で実施することができる。形態制御剤に用いることができる化合物としてはアミン類を挙げることができ、その中でも、一級アミン類やアミノアルコール類は本発明で好ましく用いることができる。
【0074】
本発明に適用可能な形態制御剤としては、例えば、ジアミン化合物やアミノアルコール化合物等があり、具体的にはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、2−アミノエタノール等を挙げることができる。
【0075】
本発明では、反応容器内の液がアルコールを含んでいてもよい。反応容器内の液にアルコールを添加するのは核形成工程、粒子成長工程のいずれの時点でもよいが、少なくとも粒子成長工程開始前に添加することが好ましく、核形成工程開始前に反応容器内の液にアルコールを含有させておくことがより好ましい。
【0076】
本発明で用いるアルコールは水と任意の比率で混じり合うことができるものであり、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールの内少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0077】
形態制御剤やアルコールを使用する場合には、これら溶剤の総量として反応容器内の液の10体積%を超えない範囲で用いることが好ましい。
【0078】
本発明においては、粒子成長工程終了後に限外濾過膜を用いて凝集防止剤を除去することができる。即ち、形成した粒子の粒径と凝集防止剤の分子量を考慮して適切な濾別特性を有する限外濾過膜を選択し、粒子成長工程終了後に限外濾過膜を用いて濃縮・希釈操作を行うことにより凝集防止剤を除去することが可能である。
【0079】
また、凝集防止剤を除去すると同時に脱塩・水洗処理を施したり、種種の目的から適当な溶媒への置換処理を行うこともできる。例えば、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を分散液として保存する際に、溶媒を粒子成長工程の溶媒よりも溶解度の低い溶媒に置換することによって、より好ましくはアルコール等のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の貧溶媒に置換することによって、保存時のオストワルド熟成による粒径や形状の変化を防止することができる。
【0080】
また、製造したアルカリ土類金属炭酸塩粒子をゴムやプラスチック、塗料等の填料または顔料として使用する場合に、乾燥工程を経ることなく適切な溶媒に対する分散液を得ることができるため、乾燥後の固形物を粉砕する工程を省略できるだけでなく、粒子を乾燥させることによって発生する乾固凝集を回避でき、一次粒子を配合した場合に得られる効果を有効に発現させることができる。
【0081】
本発明に用いることができる限外濾過膜としては、アルカリ土類金属炭酸塩粒子を濾別できる分画分子量を有し、溶媒に対する耐性を有するものである限り特に制限はない。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施態様における各種条件は、本発明の特徴や趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
実施例1
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造〕
《粒子−1の製造:本発明》
塩化ストロンチウム6水和物5.3gと凝集防止剤としてポリビニルピロリドン(分子量:13万)19.2gとを含む640mlの水溶液(溶液A1)と、塩化ストロンチウム6水和物3.4gとポリビニルピロリドン(分子量:13万)12.8gとを含む140mlの水溶液(溶液A2)を準備した。また、塩化ストロンチウム6水和物から1.0モル/L濃度の水溶液200ml(溶液B1)と、炭酸ナトリウムから1.0モル/L濃度の水溶液200ml(溶液C1)を調製した。
【0084】
(核形成工程)
溶液A1を容量2Lのステンレス製の反応容器に入れて5℃に保持し、1000rpmで攪拌しながら5%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを11.5に調整した。続いて、4℃に冷却した各々40mlの溶液B1と溶液C1とを、ダブルジェット法を用いて等しい添加速度、且つ一定の流速で溶液A1の液中に30秒間で添加した。
【0085】
(分散操作)
核形成工程終了後の反応液を5℃に保持したまま、超音波分散機(SMT社UH150)を用いて分散操作を施した。分散操作は反応液の濁度が減少して一定の値に収斂するまで行った。
【0086】
(粒子成長工程)
次いで、上記反応液を攪拌しながら5℃に冷却した溶液A2を添加し、5%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを11.5に調整した。引き続き、5℃に保持した溶液B1と溶液C1の残量160mlを等しい添加速度で、粒子成長に伴う表面積の増加に合わせて流量を加速しながらダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に160分間で添加した。
【0087】
粒子成長工程終了後に限外濾過膜を用いて水洗処理を施し、更に限外濾過膜を用いてエタノール溶媒への置換を行い、粒子−1を製造した。
【0088】
なお、粒子成長工程の途中及び工程終了後に反応液を採取し、電子顕微鏡を用いて確認したが、粒子成長工程での新たな核粒子の生成は認められなかった。また、得られた粒子−1の電子顕微鏡観察及びX線回折スペクトルから、粒子−1が針状形状を有する炭酸ストロンチウムであることが同定された。
【0089】
《粒子−2の製造:本発明》
上記粒子−1の製造において、核形成工程終了後の分散操作を行わず、代わりに粒子成長工程終了後に超音波分散機(SMT社UH150)を用いて分散操作を行ったこと以外は、粒子−1の製造と同様にして粒子−2を製造した。
【0090】
《粒子−3の製造:本発明》
上記粒子−1の製造において、粒子成長工程終了後にも超音波分散機(SMT社UH150)を用いて分散操作を行ったこと以外は、粒子−1の製造と同様にして粒子−3を製造した。
【0091】
《粒子−4の製造:本発明》
上記粒子−3の製造において、溶液A1の代わりに以下の様に調製した溶液A3を使用したこと以外は、粒子−3の製造と同様にして粒子−4を製造した。
【0092】
溶液A3:塩化ストロンチウム6水和物5.3gと凝集防止剤としてポリビニルピロリドン(平均分子量13万)19.2g、エチレンジアミン4ml、エチルアルコール28mlを含む640mlの水溶液。
【0093】
《粒子−5の製造:本発明》
上記粒子−3の製造において、溶液A1の代わりに以下の様に調製した溶液A4を使用したこと以外は、粒子−3の製造と同様にして粒子−5を製造した。
【0094】
溶液A4:塩化ストロンチウム6水和物5.3gと凝集防止剤としてポリビニルピロリドン(平均分子量13万)19.2g、エチレンジアミン4ml、エチルアルコール92mlを含む640mlの水溶液。
【0095】
《粒子−6の製造:比較》
上記粒子−1の製造において、溶液A1及び溶液A2を凝集防止剤のポリビニルピロリドンを除いて調製し使用したこと以外は、粒子−1の製造と同様にして粒子−6を製造した。
【0096】
《粒子−7の製造:比較》
上記粒子−1の製造において、核形成工程終了後の分散操作を行わないこと以外は、粒子−1の製造と同様にして粒子−7を製造した。
【0097】
《粒子−8の製造:比較》
核形成工程と粒子成長工程を分離せずに、以下の様にして粒子−8を製造した。
【0098】
塩化ストロンチウム6水和物8.7gと凝集防止剤としてポリビニルピロリドン(分子量:13万)32.0gとを含む780mlの水溶液(溶液A3)を準備した。また、上記粒子−1の製造と同様に溶液B1及び溶液C1を準備した。
【0099】
溶液A3を容量2Lのステンレス製の反応容器に入れて5℃に保持し、1000rpmで攪拌しながら5%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを12に調整した。続いて、5℃に保持した溶液B1と溶液C1を等しい添加速度で、且つ一定の流速でダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に200分間で添加した。次いで、超音波分散機(SMT社UH150)を用いて分散操作を行った後、限外濾過膜を用いて水洗処理を施し、更に限外濾過膜を用いてエタノール溶媒へ置換し粒子−8を製造した。
【0100】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子の評価〕
(粒子形状の観察)
上記のように製造した各粒子について、走査型電子顕微鏡にて少なくとも300個の粒子を撮影してその形状を観察し、主体を占める粒子の形状を針状粒子、球状粒子、不定形のイガグリ状粒子に分類した。
【0101】
(粒径及び分布の測定)
上記走査型電子顕微鏡にて観察した個々の粒子について、短軸径及び長軸径を測定し、前述の方法でそれらの平均値及び分布を求めた。
【0102】
以上により得られた結果を表1に示す。なお、粒子−6は粒子凝集が激しく、短軸径及び長軸径を測定することができなかった。
【0103】
【表1】


【0104】
表1に記載した各粒子の解析結果より明らかなように、本発明が規定する製造方法によって短軸径分布及び長軸径分布に優れた針状粒子を製造できる。
【0105】
本発明の粒子−1と比較例の粒子−6〜粒子−8を比較すると、本発明の構成要件、即ち「凝集防止剤を含む溶液中でダブルジェット法を用いてアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とを反応させる製造方法であって、該製造方法が核形成工程後に粒子成長工程を有し、且つ該核形成工程終了以降に分散操作を行うこと」が針状粒子の分布改良のために必要な条件であることが判る。
【0106】
粒子−1〜粒子−3の比較から、核形成工程終了後に分散操作を実施する方が粒子成長工程終了後に実施するより分布改良への効果が大きいため好ましく、核形成工程終了後と粒子成長工程終了後の両方で分散操作を実施することがより好ましいことが判る。
【0107】
また、粒子−3〜粒子−5の比較から、形態制御剤やアルコールを使用する場合には、これら溶剤の総量として反応容器内の液の10体積%を超えない範囲で用いることが好ましいことが判る。
【0108】
実施例2
実施例1の粒子−3の製造方法において、核形成工程終了後と粒子成長工程終了後の分散操作の方法を、超音波分散機からメディア分散機(寿工業アペックスミル)または高速攪拌型分散機(プライミクス社TKホモミクサーMARKII)に変更したこと以外は、粒子−3の製造と同様にして粒子−9と粒子−10を製造した。
【0109】
メディア分散機または高速攪拌型分散機による分散操作も、反応液の濁度が一定の値に収斂するまで行った。粒子−9及び粒子−10を解析したところ、粒子−3同様に分布に優れる粒子であることが確認できた。
【0110】
実施例3
実施例1の粒子−3の製造において、溶液A1及び溶液A2で使用した凝集防止剤のポリビニルピロリドンに代えて、ポリビニルアルコール(重合度:1700)、ポリエチレンイミン(分子量:7万)、ヒドロキシエチルセルロース(分子量:12万)の水溶性ポリマーを用いて粒子を調製し、分布の良好な粒子を調製できることを確認した。また、それら粒子の比較から、粒子−3の製造で使用したポリビニルピロリドンのようにアミド基を有する水溶性ポリマーで特に好ましい結果が得られた。
【0111】
実施例4
実施例1の粒子−3の製造方法において、粒子成長工程終了後の限外濾過膜を用いた水洗処理の代わりに、フィルターを用いて濾過、水洗、乾燥した後にエタノール中に分散して粒子−11を製造した。
【0112】
粒子−11について、実施例1と同様の方法で各特性の測定を行った結果、乾燥プロセスにおいて発生した粒子凝集に起因して、短軸径及び長軸径分布の劣化が認められた。即ち、本発明のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法において、過剰な凝集防止剤や形態制御剤、塩等の除去を目的に水洗処理を施す場合には、限外濾過膜を用いることが粒子の凝集を防止する上で好ましいことが確認された。
【0113】
実施例5
実施例1の粒子−1〜粒子−8の製造で使用した塩化ストロンチウム6水和物を、塩化バリウム、塩化カルシウムにそれぞれ変更して、各々塩化バリウムと炭酸カルシウムを調製した。
【0114】
得られたアルカリ土類金属炭酸塩粒子について、実施例1と同様の方法で各特性の測定を行った結果、本発明の製造方法で製造したアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、実施例1に記載の本発明に係る炭酸ストロンチウム粒子と同様に針状の形状を示し、且つ粒径分布に優れることが確認された。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタホールディングス株式会社
【出願日】 平成19年1月12日(2007.1.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−169086(P2008−169086A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−4404(P2007−4404)