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【発明の名称】 アルミン酸ストロンチウムよりなる結晶性ナノ構造物とその製造方法
【発明者】 【氏名】板東 義雄

【氏名】チャングイ イエ

【氏名】デミトリー ゴルバーグ

【要約】 【課題】結晶性のアルミン酸ストロンチウムナノチューブおよび結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドならびにそれらの製造方法を提供する。

【解決手段】硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で115〜150℃に10時間以上加熱して非晶質アルミン酸ストロンチウムナノチューブを生成させた後、さらに、該ナノチューブを1250〜1350℃に3〜10時間加熱して外径150〜200nmの結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブを製造する。あるいは上記水溶液を圧力容器中で160〜200℃に10時間以上加熱して直径50nm以下の非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドを生成させた後、上記と同様に加熱処理して、結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸ストロンチウムよりなる結晶性ナノ構造物であって、外径の平均が15×10nm以上20×10nm以下のチューブ状であることを特徴とする結晶性ナノ構造物。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ構造物の製造方法であって、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で加熱して、非晶質アルミン酸ストロンチウムよりなるナノチューブを生成する第1工程と、この生成物を12.5×10℃以上13.5×10℃以下で加熱して結晶性のチューブ状にする第2工程とからなることを特徴とする結晶性ナノ構造物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のナノ構造物の製造方法であって、前記第1工程での加熱を11.5×10℃以上15.0×10℃以下で10時間以上とし、前記第2工程での加熱時間を3〜10時間とすることを特徴とするナノ構造物の製造方法。
【請求項4】
アルミン酸ストロンチウムよりなる結晶性ナノ構造物であって、直径が50nm以下のロッド状であることを特徴とする結晶性ナノ構造物。
【請求項5】
請求項4に記載の結晶性ナノ構造物の製造方法であって、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で加熱して、非晶質のアルミン酸ストロンチウムよりなるナノロッドを生成する第1工程と、この生成物を12.5×10℃以上13.5×10℃以下で加熱することにより結晶性のナノロッド状にすることを特徴とする結晶性ナノ構造物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の結晶性ナノ構造物の製造方法であって、前記第1工程での加熱を16.0x10℃以上20.0x10℃以下で10時間以上とし、前記第2工程での加熱時間を3〜10時間とすることを特徴とする結晶性ナノ構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミン酸ストロンチウムよりなる結晶性ナノ構造物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミン酸ストロンチウム(SrAl)は、長寿命蛍光材料のひとつであり、格子定数a=8.447Å、b=8.816Å、c=5.163Å、β=93.42°を有する単斜晶系に属する化合物である(たとえば、非特許文献1〜4参照。)。この材料のバルク体、フィルム状物、ナノ粒子の合成と光学特性に関する研究は、ここ数年、非常に活発に行われている(たとえば、非特許文献5〜8参照。)。しかしながら、一次元のアルミン酸塩のナノメートルサイズの構造物に関する研究は、アルミン酸ストロンチウムナノロッドの報告があるだけであり、かつ、合成の詳細やナノロッドの構造解析が十分に提供されていないのが実状である(たとえば、非特許文献9参照。)。
【0003】
【非特許文献1】「T.Katsumata, et al. J.Cryst. Growth 237巻、361頁、2002年。」
【非特許文献2】「F.Clabau, et al. Chem.Mater. 17巻、3904頁、2005年。」
【非特許文献3】「Y.Liu, et al. J.Phys.Chem.B 107巻、3991頁、2003年。」
【非特許文献4】「J.Holsa, et al. J.Alloys Comp.374巻、56頁、2004年。」
【非特許文献5】「Z.Fu, et al. J.Phys.Chem.B 109巻、14396頁、2005年。」
【非特許文献6】「P.Escribano, et al. J.Solid State Chem.178巻、1978頁、2005年。」
【非特許文献7】「L.Wang, et al. J.Alloys Comp.370巻、276頁、2004年。」
【非特許文献8】「N.Honda, et al. Jpn. J.Appl.Phys.44巻、695頁、2005年。」
【非特許文献9】「Y.Lin, et al. Mater.Chem.Phys.65巻、103頁、2000年。」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の現状に鑑み、結晶性のアルミン酸ストロンチウムナノチューブおよび結晶性のアルミン酸ストロンチウムナノロッドならびにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、発明1の結晶性ナノ構造物は、外径の平均が15×10nm以上20×10nm以下のチューブ状であることを特徴とする。
発明2は、発明1発明のナノ構造物の製造方法であって、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で加熱して、非晶質アルミン酸ストロンチウムよりなるナノチューブを生成する第1工程と、この生成物を12.5×10℃以上13.5×10℃以下で加熱して結晶性のチューブ状にする第2工程とからなることを特徴とする。
発明3は、発明2発明のナノ構造物の製造方法であって、前記第1工程での加熱を11.5×10℃以上15.0×10℃以下で10時間以上とし、前記第2工程での加熱時間を3〜10時間とすることを特徴とする。
発明4の結晶性ナノ構造物は、直径が50nm以下のロッド状であることを特徴とする。
発明5は、 発明4発明の結晶性ナノ構造物の製造方法であって、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で加熱して、非晶質のアルミン酸ストロンチウムよりなるナノロッドを生成する第1工程と、この生成物を12.5×10℃以上13.5×10℃以下加熱することにより結晶性のナノロッド状にすることを特徴とする。
発明6は、発明5発明の結晶性ナノ構造物の製造方法であって、前記第1工程での加熱を16.0x10℃以上20.0x10℃以下で10時間以上とし、前記第2工程での加熱時間を3〜10時間とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブあるいは結晶性のアルミン酸ストロンチウムナノロッドが初めて実現される。また、本発明の方法により、上記ナノチューブあるいはナノロッドを簡単なプロセスで容易に製造することが可能となる。さらに、この簡便なプロセスは、種々のチタン酸塩やジルコン酸塩のような他のナノチューブなどのナノ構造物を開発することに応用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブは単斜晶系に属し、その外径は150〜200nmである。該ナノチューブの製造方法は、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で115〜150℃に10時間以上加熱して非晶質アルミン酸ストロンチウムナノチューブを生成させた後、該生成物を空気中で1250〜1350℃に3〜10時間加熱することからなる。
【0008】
上記において、圧力容器中での加熱温度は、上述の範囲が好ましく、この上限値よりも高いと、ナノチューブの代わりにナノロッドが生成する。逆に、下限値よりも加熱温度が低いと、少量のナノチューブに混在して、ナノ粒子やナノプレートが生成する。圧力容器中での加熱時間は、10時間以上が好ましく、10時間未満ではナノ粒子やナノチューブ(筒状)に巻かれる前のナノプレートの状態である。非晶質アルミン酸ストロンチウムナノチューブが生成した後の加熱温度は、上述の1250〜1350℃の範囲が好ましく、1350℃よりも加熱温度が高いと、結晶中の酸素原子が消失し、結晶の欠陥が生じる。逆に1250℃よりも加熱温度が低いと結晶化が不十分となる。1250〜1350℃に加熱する際の時間は、上記の3〜10時間の範囲が好ましく、10時間で十分に結晶化が完結するのでこれ以上の時間をかける必要はない。加熱する時間が3時間未満では、結晶化が完結しない。
【0009】
本発明に用いる臭化セチルトリメチルアンモニウム/n−ブタノール/水系溶媒は、高いイオン性を有し、臭化セチルトリメチルアンモニウム/水系溶媒よりも本発明の反応においては、その効果が高い。また、尿素は、徐放性のPH調整剤として用いた。
【0010】
本発明の結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドは、単斜晶系で、その直径は50nm以下である。また、その製造方法は、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸ストロンチウム、尿素、n−ブタノールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムの混合物の水溶液を圧力容器中で、160〜200℃に10時間以上加熱して非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドを生成させた後、該生成物を1250〜1350℃に3〜10時間加熱することからなる。
【0011】
上記において、圧力容器中での加熱温度は、上述したように、160〜200℃の範囲が好ましく、200℃で十分にナノロッドが生成するので、これ以上温度を上げる必要はない。160℃未満であるとナノチューブが生成する。加熱時間は、10時間以上が好ましく、10時間未満であるとナノロッドの収量が低下する。非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドを加熱して結晶化させる温度は上述の1250〜1350℃の範囲が好ましく、1350℃よりも高いと、酸素原子の消失による結晶欠陥が生じる。1250℃よりも低いと、結晶化が不十分となる。また、このときの加熱時間は、3〜10時間の範囲が好ましく、10時間で十分に結晶化が進むので、これ以上の時間をかける必要はない。3時間未満では結晶化が完結しない。
次に、実施例を示して、さらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
和光純薬工業(株)製の硝酸アルミニウム九水和物(純度99.9%)4ミリモル、和光純薬工業(株)製の硝酸ストロンチウム(純度98%)2ミリモル、和光純薬工業(株)製の尿素(純度99%)0.01モル、和光純薬工業(株)製のn−ブタノール(純度99%)0.1モル、和光純薬工業(株)製の臭化セチルトリメチルアンモニウム(純度98%)2ミリモルを丸底フラスコに入れ、これに50mlの脱イオン水を加えて、空気中、室温で2時間マグネチックスタラーを用いて撹拌し、内容物を溶解させた。この水溶液の半分を容量40mlのテフロン(登録商標)で内張りしたオートクレーブに入れ、120℃で16時間加熱した。オートクレーブを室温に冷却すると白色生成物が約100mg得られた。
【0013】
得られた白色生成物の走査型電子顕微鏡像の写真を図1に示したが、線状の形態を有していることが分かった。
【0014】
さらに、この白色生成物の透過型電子顕微鏡像の写真を図2に示したが、チューブ状形態をしていることが分かった。また、図2の中に挿入した電子線回折の結果から、このチューブ状物質は非晶質であることが分かった。さらに、図2のナノチューブの図を見れば分かるように、長さ方向全体にわたって同じ太さの外径を持っていない。すなわち、この図におけるナノチューブでは、太い部分で160nm程度、細い部分で130nm程度の外径であることが分かる。
【0015】
次に、上記の非晶質ナノチューブを横型管状炉の中で、空気中、1300℃、4時間加熱処理した。
【0016】
この加熱処理を施した後のサンプルの透過型電子顕微鏡像の写真を図3に示したが、チューブ状形態が維持されていることが確認された。また、その外径は、およそ175nmであることが読み取れる。
【0017】
さらに、このサンプルの電子線回折の結果を図4に示したが、結晶化が進み単結晶構造となっていることが分かった。
【0018】
この結晶化したナノチューブのエネルギー分散型X線分析の結果を図5に示したが、ナノチューブの化学組成は、ストロンチウム、アルミニウム、酸素原子からなっており、その原子比は、化学量論組成のアルミン酸ストロンチウム(SrAl)に近似していた。なお、この図5に現れている銅のシグナルは、炭素膜をコートした試料取り付け用の銅グリッドに由来するものである。
【0019】
オートクレーブ中、120℃の加熱でアルミン酸ストロンチウムナノチューブが生成される機構は、120℃、4〜8時間の加熱でナノ粒子やナノプレートが生成し、10時間以上の加熱で、このナノプレート(小薄片)が筒状に巻かれてナノチューブになるものと推察される。
【実施例2】
【0020】
実施例1で作製した水溶液の残り半分をテフロン(登録商標)で内張りした容量40mlのオートクレーブに入れ、180℃で48時間加熱した。加熱後、オートクレーブを室温に冷却し、白色の生成物約120mgを得た。
【0021】
この生成物の透過型電子顕微鏡像の写真を図6及び図7に示したが、直径が50nm以下のナノロッドであり、その直径は、実施例1のナノチューブの外径よりも細かった。また、図8に示したエネルギー分散型X線分析の結果から、ストロンチウムとアルミニウムの原子比は1:2であった。さらに、図9に示したように、電子線回折の測定結果から、このナノロッドは非晶質であることが分かった。
【0022】
次に、実施例1と同様に、この非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドを横型管状炉の中で、空気中、1300℃、4時間加熱処理した。
【0023】
この加熱処理を施した後のナノロッドの透過型電子顕微鏡像の写真を図10に示したが、直径50nm以下のナノロッドであることが分かった。また、加熱処理後のエネルギー分散型X線分析の結果を図11に示したが、化学量論組成のアルミン酸ストロンチウムであることが分かった。さらに、このアルミン酸ストロンチウムナノロッドの電子線回折の結果を図12に示したが、結晶化していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、結晶性のアルミン酸ストロンチウムナノチューブならびにアルミン酸ストロンチウムナノロッドが得られたので、この材料が白熱電球や蛍光灯に代わる新規な蛍光材料として利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】120℃、16時間反応後に得られた非晶質アルミン酸ストロンチウムナノチューブの走査型電子顕微鏡像の写真である。
【図2】120℃、16時間反応後に得られた非晶質アルミン酸ストロンチウムナノチューブの透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図3】1300℃で加熱処理した後の結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブの透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図4】結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブの電子線回折の結果を示す図である。
【図5】結晶性アルミン酸ストロンチウムナノチューブのエネルギー分散型X線分析の結果を示す図である。
【図6】非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドの透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図7】非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドの高倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図8】非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドのエネルギー分散型X線分析の結果を示す図である。
【図9】非晶質アルミン酸ストロンチウムナノロッドの電子線回折のパターンである。
【図10】結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドの透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図11】結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドのエネルギー分散型X線分析の結果である。
【図12】結晶性アルミン酸ストロンチウムナノロッドの電子線回折のパターンである。
【出願人】 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【出願日】 平成18年12月26日(2006.12.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−156174(P2008−156174A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−348707(P2006−348707)