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【発明の名称】 高純度α−アルミナの製造方法
【発明者】 【氏名】水野 潤

【氏名】松葉 俊博

【氏名】山本 茂夫

【氏名】山田 崇詞

【要約】 【課題】Si分、Fe分、Ca分及びNa分が同時に低減された高純度α-アルミナの製造方法を提供する。

【解決手段】Al23を85〜93重量%、及びSiO2を7〜14重量%の範囲で含有する焼成容器を用いて、不純物がそれぞれアルミナ換算でNa分0.11質量%以下、Fe分6ppm以下、Ca分1.5ppm以下、及びSi分10ppm以下であり、平均粒子径が55μm以下である水酸化アルミニウムを1100〜1500℃の焼成温度で焼成し、得られたα-アルミナを洗浄処理することにより高純度α-アルミナを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al23を85〜93重量%、及びSiO2を7〜14重量%の範囲で含有する焼成容器を用いて、不純物がそれぞれアルミナ換算でNa分0.11質量%以下、Fe分6ppm以下、Ca分1.5ppm以下、及びSi分10ppm以下であり、平均粒子径が55μm以下である水酸化アルミニウムを1100〜1500℃の焼成温度で焼成し、得られたα-アルミナを洗浄処理することを特徴とする高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項2】
Si分が20ppm以下、Fe分が10ppm以下、Ca分が2ppm以下、及びNa分が40ppm以下のα-アルミナが得られる請求項1に記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項3】
水酸化アルミニウムが、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムである請求項1又は2に記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項4】
焼成容器に充填した水酸化アルミニウム充填物と焼成容器との接触面積が、水酸化アルミニウム充填物の表面積の30%以下となるようにすると共に、水酸化アルミニウム充填物と焼成容器とが接触しない非接触部分は5mm以上の隙間を設けて焼成する請求項1〜3のいずれかに記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項5】
洗浄処理が、α-アルミナ1kgに対して2L以上のリパルプ水でスラリー化して1時間以上攪拌する攪拌洗浄と、攪拌洗浄後のα-アルミナ1kgに対して3L以上の洗浄水を通水して洗浄する通水洗浄とからなる請求項1〜4のいずれかに記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項6】
洗浄処理後、更に800〜1000℃の温度で加熱処理し、再度洗浄処理を行う請求項1〜5のいずれかに記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【請求項7】
洗浄処理後、更に粉砕処理し、再度スラリー化した上で、イオン交換樹脂を用いて不純物金属を除去する請求項1〜6のいずれかに記載の高純度α-アルミナの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、高純度α-アルミナの製造方法に関し、具体的にはSi、Fe、Ca及びNa分が可及的に除去された高純度α-アルミナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-アルミナ(α-Al2O3)は、絶縁性、耐熱性、耐磨耗性、耐食性等に優れることから、耐火物、研磨材、碍子、電子部品、点火プラグ、充填材、触媒担体等に広く用いられており、なかでも、ファインセラミックスや電子部品等の用途には、高純度のα-アルミナが使用されている。従来において、高純度のα-アルミナを得る方法として、アルミニウムアルコキシド加水分解法、アルミン酸四級アンモニウム塩法、明礬熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、塩化アルミニウム熱分解法、水中火花放電法等が用いられているが、これらの方法は、製造工程が複雑であり、かつ、用いる原材料が高価であることから、得られるα-アルミナの価格が非常に高くなってしまう。
【0003】
そこで、汎用のα-アルミナを製造する方法として一般的に採用されているバイヤー法を利用し、純度の高いα-アルミナを得るための方法がいくつか提案されている。例えば、バイヤー法によって得られたアルミナを電気炉によって溶融し、この溶融アルミナに圧縮空気等を吹き付けることによって中空粒状体を得て、これを鉱酸に浸漬して不純物を溶出する方法(特許文献1参照)、アルミナをSiO2と共に電熱溶融させて得られたコランダムを粉砕し、塩酸とフッ酸で洗浄して高純度のα-アルミナを得る方法(特許文献2参照)、バイヤー法による水酸化アルミニウム又はこれを仮焼して得られた遷移アルミナを粉砕し、塩化水素ガスを含んだ雰囲気中で600〜1400℃で焼成する方法(特許文献3参照)、バイヤー法による水酸化アルミニウム及びこれを加熱処理して得られた中間アルミナを原料としてこれを炭素質物質で被覆し、減圧雰囲気で800℃以上の温度で焼成し、次いで常圧酸化雰囲気で加熱して脱炭処理する方法(特許文献4参照)等が挙げられる。しかしながら、これらの方法では、電融処理が必要であったり(特許文献1及び2)、特殊雰囲気下での焼成が必要である(特許文献3及び4)ことから、バイヤー法によって汎用アルミナを製造する際の焼成炉とは別の設備を用意しなければならない。
【0004】
一方で、バイヤー法を利用する際の一般的な課題として、バイヤー法では工程上で苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を用いるため、得られたアルミナ中にNa分が多量に残存してしまう点が挙げられる。Na分は電気絶縁性を阻害する要因になるため、アルミナを絶縁材料や電子部品材料として使用する場合にはできるだけ除去する必要がある。そこで、水酸化アルミニウムを低温と高温の2段階で焼成し、洗浄とろ過を繰り返す方法(特許文献5参照)、水酸化アルミニウムに塩酸又は塩化アルミニウムを添加して、珪酸質耐火容器(焼成容器)で焼成する方法(特許文献6参照)、水酸化アルミニウム又はアルミナに塩酸又は塩化アルミニウムとホウ酸又は酸化ホウ素を共存させて焼成する方法(特許文献7参照)、水酸化アルミニウムに塩酸又は塩化アルミニウムを添加し、シリカ系物質を混合して焼成した後に、シリカ系物質を分離する方法(特許文献8参照)、水酸化アルミニウムを焼成して結晶質を含まない無定形アルミナとした後、脂肪族低級カルボン酸で洗浄して再度焼成する方法(特許文献9参照)等が提案されている。しかしながら、これらの方法によっても、最終的に得られるα-アルミナには、いずれも100〜600ppm程度のNa分が含まれてしまい、電子部品材料をはじめとした用途では必ずしも満足できるものではない。また、これらの方法では、Si、Ca、Fe等の不純物金属を低減させる効果は望めない。
【0005】
そこで、例えばアルミナ粉末を直径2mm以下の鉄媒体で粉砕した後、このアルミナ粉末を塩酸又は硝酸で洗浄し、更に濃度10N以上の硫酸で洗浄することで、アルミナ中のFe分を除去する方法(特許文献10参照)、水酸化アルミニウム又はアルミナにフッ化物を含有させて焼成することでSi分を低減させる方法(特許文献11参照)等が提案されている。しかしながら、上記Fe分の除去に係る方法では、出発原料として純度99.99質量%以上のアルミナ粉末を用いる必要があり、また、その実施例においてFeと思われる不純物は40〜50ppmまで低減されたに過ぎない。一方、Si分の低減に係る上記方法では、用いられるフッ化物がα-アルミナの粒子成長促進剤としても作用するため、得られるα-アルミナが粗粒化する傾向がある。そのため、微細な粒子が求められる電子材料やセラミックス原料用の高純度α-アルミナを得る製法としては不向きである。
【特許文献1】特開昭55−7532号公報
【特許文献2】特開昭53−79797号公報
【特許文献3】特開平8−290914号公報
【特許文献4】特公平6−37293号公報
【特許文献5】米国特許第2405275号公報
【特許文献6】特公昭47−5744号公報
【特許文献7】特公昭48−34680号公報
【特許文献8】特開昭54−16398号公報
【特許文献9】特開昭55−140719号公報
【特許文献10】特開平10−324519号公報
【特許文献11】特開昭62−46922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で説明した従来の方法では、それぞれ単独であっても、あるいはいくつかの方法を組み合わせたとしても、Si分、Fe分、Ca分及びNa分が同時に低減された高純度α-アルミナを得ることは困難である。そこで、本発明者等は、これらの不純物金属を可及的に低減した高純度α-アルミナを製造する方法について鋭意検討した結果、Na分及びFe分がそれぞれ所定の値以下であって平均粒子径が制御された水酸化アルミニウムを特定の焼成容器を用いて焼成し、洗浄処理することによって、上記のような不純物金属が可及的に除去されたα-アルミナが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、Si分、Fe分、Ca分及びNa分が同時に低減された高純度α-アルミナを、簡便かつ低コストで得ることができる高純度α-アルミナの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、Al23を85〜93重量%、及びSiO2を7〜14重量%の範囲で含有する焼成容器を用いて、不純物がそれぞれアルミナ換算でNa分0.11質量%以下、Fe分6ppm以下、Ca分1.5ppm以下、及びSi分10ppm以下であり、平均粒子径が55μm以下である水酸化アルミニウムを1100〜1500℃の焼成温度で焼成し、得られたα-アルミナを洗浄処理することを特徴とする高純度α-アルミナの製造方法である。
【0009】
本発明の高純度α-アルミナ(α-Al2O3)を製造する方法において、使用する水酸化アルミニウムは、平均粒子径が55μm以下、好ましくは30μm以下であり、不純物は、アルミナ換算でNa分が0.11質量%以下(全Na2O分が0.15質量%以下)、アルミナ換算でFe分が6ppm以下、アルミナ換算でCa分が1.5ppm以下、及びアルミナ換算でSi分が10ppm以下である必要がある。平均粒子径が55μmより大きいとNa分の除去効率が低く、アルミナ中のNa分を40ppm以下に低減するためには適さない。また、Na分がアルミナ換算で0.11質量%(全Na2O分が0.15質量%)を超えて含まれていると、焼成及び洗浄処理によるNa分の除去操作を行なっても除去しきれず多くのNa分が残留してしまい、アルミナ中のNa分が40ppmを超えてしまうという問題が生じる。一方、Na分以外の不純物については、水酸化アルミニウム中の含有量がそのままアルミナへ移行し残留することから、製造工程でのコンタミ分を考慮して、Fe分、Ca分、及びSi分をそれぞれ上記範囲内にすることで、最終的にFe分が10ppm以下、Ca分が2ppm以下、及びSi分が20ppm以下の高純度α-アルミナを得ることができる。なお、水酸化アルミニウム中に含まれる不純物量については、アルミナ三水和物(Al2O3・3H2O:分子量155.96)1分子が、アルミナ(Al2O3:分子量:101.96)1分子に相当することから、水酸化アルミニウム中の不純物量をアルミナベースに換算する際には155.96/101.96≒1.53を乗じて求めることができる。そのため、アルミナ換算する前の不純物量で示せば、Na分は0.074質量%以下(全Na2O分が0.1質量%以下)、Fe分は4ppm以下、Ca分は1ppm以下、及びSi分は6ppm以下である。
【0010】
このような水酸化アルミニウムを得る手段については特に制限されず、例えばバイヤー法による水酸化アルミニウムであってもよいが、好適には、特開平11−278829号公報に記載された方法によって得られた水酸化アルミニウムを用いるのがよい。すなわち、溶解Na2O濃度(C)100g/L以上及び液中Fe濃度0.4mg/L以下であって、溶解Na2O分と溶解Al23分とのモル比(M、溶解Na2O分/溶解Al2O3分)が1.6〜2.0である過飽和アルミン酸ナトリウム溶液を原料溶液として用い、この原料溶液中に、75℃以下であって下記式(1)
T≦1.2×106 /C2 ・・・ ・・・(1)
の条件を満たす溶液温度(T、℃)で、BET比表面積1〜7m2/gの水酸化アルミニウムを種子として2〜15m2/Lの割合で添加する。
【0011】
この際、この添加種子から原料溶液中に持ち込まれる種子由来の混入Fe量を下記式(2)
Y=2.0×10-3×A×(3.0−M) ・・・ ・・・(2)
〔但し、式中Aは溶解Al2O3濃度(g/L)を示す〕で表される許容最大値Y(mg/リットル)以下に維持し、次いで下記式(3)
【数1】


で表される原料溶液の過飽和濃度Xを30g/L≦X≦50g/Lの範囲内に維持しながら、攪拌下に溶液温度(T)を55℃以下まで低下させて上記モル比(M)が3.0以上になるまで分解させ、析出した水酸化アルミニウムを固液分離することで、平均粒子径が15〜40μmであって、全Na2O分が0.1質量%以下、及びFe分が4ppm以下の水酸化アルミニウムを得ることができる。得られた水酸化アルミニウムは、粉砕処理することにより平均粒子径を更に小さいものにすることができる。なお、上記式(3)は、いわゆるホワイト(White)の式(Light Metals,(1984),pp237-253)から導かれるものである。
【0012】
上記のようにして水酸化アルミニウムを製造する際に原料溶液として使用する過飽和アルミン酸ナトリウム溶液は、どのような方法で調製してもよいが、好適にはバイヤー法によって得られた過飽和アルミン酸ナトリウム溶液、具体的には溶解Na2O濃度(C)100〜200g/L、溶解Na2O分と溶解Al23分とのモル比(M)1.5〜1.8、及び液中Fe濃度1〜15mg/Lの過飽和アルミン酸ナトリウム溶液を用い、この溶液中に、BET比表面積3〜7m2/gの水酸化アルミニウムを種子として15〜50m2/リットルの割合で添加し、70〜80℃で攪拌下に1〜3時間接触させ、次いで固液分離することにより精製過飽和アルミン酸ナトリウム溶液として得るのがよい。
【0013】
そして、このような水酸化アルミニウムを焼成するに際しては、Al23を85〜93重量%、及びSiO2を7〜14重量%の範囲で含有する焼成容器を用いる。一般的に使用される焼成容器であってSiO2が比較的多く含まれるいわゆる珪酸質系の焼成容器では、焼成後のアルミナにSi分が多く残存してしまうほか、CaやFeが揮散したり吸着することによって得られるアルミナの純度を低下させる問題がある。一方、SiO2が比較的少ない高アルミナ質系の焼成容器では、Si汚染は抑制できるものの、Naの低減効果が少なく、また、Ca汚染が著しくなる問題がある。そこで、本発明者等は、焼成容器の組成と焼成温度との組み合わせによる焼成試験を繰り返し行なった結果、Al23が85〜93重量%、及びSiO2が7〜14重量%の範囲である焼成容器を用いて上記水酸化アルミニウムを所定の温度で焼成することで、十分なNa低減効果が得られると共に、Si、Ca及びFe等の不純物金属による汚染を抑制してα-アルミナを得ることができることを新たに見出した。
【0014】
このような焼成容器に水酸化アルミニウムを充填して焼成する際には、焼成容器に由来する不純物の揮散や吸着による汚染を防ぐ目的から、焼成容器に充填した水酸化アルミニウム充填物と焼成容器との接触面積を可及的に少なくするのがよく、好ましくは接触面積が水酸化アルミニウム充填物の表面積の30%以下となるようにして焼成するのがよい。焼成容器と接触した部分は、得られたα-アルミナにおいて特にSi分の量が多くなるが、接触面積を上記範囲にすることで、接触部分を介した不純物汚染を可及的に回避することができる。また、水酸化アルミニウム充填物と焼成容器とが接触しない非接触部分については、好ましくは5mm以上の隙間を設けて焼成することによって不純物汚染を可及的に回避することができる。
【0015】
焼成容器に対して水酸化アルミニウム充填物の接触面積を少なくする手段については特に制限はないが、例えば、焼成容器の形状に応じて予めプレス成形した水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム充填物)を、高純度アルミナ製焼結ピース等からなるスペーサーを介して焼成容器に入れて、焼成容器の内壁面との間に所定の隙間を形成するように収容してもよい。また、焼成容器の内壁底面部に接して自重を支え得る脚部を備えるようにプレス成形した水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム充填物)を、脚部のみが焼成容器と接触するように収容してもよい。あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなって焼成時には焼失するシート材を焼成容器の内壁面に配置しておき、このシート材を介して水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウム充填物)を収容するようにしてもよい。この際、水酸化アルミニウムは、焼成されてα-アルミナになると、焼結によってある程度の形状を維持することができることから、焼成容器の内壁底面部に配置するシート材に開口部を設けておけば、シート材が焼失した後であってもこの開口部に充填された水酸化アルミニウムがその自重を支える脚部となって、脚部以外が焼成容器と接触することを回避することができる。なお、焼成容器の蓋体と水酸化アルミニウム充填物との間には所定の隙間を設けるようにすればよい。また、焼成容器と接触して不純物の混入のおそれがある部分については、焼成後に除去するようにしてもよく、具体的には、焼成後に得られたα-アルミナの表層から5mm(深さ5mm)の部分を除去するようにするのがよい。
【0016】
そして、焼成容器に入れた水酸化アルミニウムを1100〜1500℃の焼成温度で焼成する。焼成温度が1100℃未満であるとNa分の除去効果が不十分と成り易く、得られるα−アルミナ中のNa分を40ppm以下にできない問題があり、反対に1500℃以上を超えると焼成容器からの不純物汚染が著しくなり、α−アルミナ中のFe分を10ppm以下、Ca分を2ppm以下、及びSi分を20ppm以下に保つことができない。この焼成によって水酸化アルミニウムに含まれるNa分を低減させることができ、最終的にNa分が40ppm以下のα-アルミナを安定的に得ることができるようになるが、焼成におけるNa分の低減効果は、水酸化アルミニウムの粒径や焼成条件の影響を大きく受ける。すなわち、水酸化アルミニウムの粒径がより小さい方がNa分の低減効果が大きく、あるいは、焼成温度がより高い方がNa分の低減効果が大きくなる。
【0017】
効果的にNa分を低減させるためには、水酸化アルミニウムからα-アルミナの粒子が結晶成長するまで焼成を行なうのがよく、適切な焼成時間としては、水酸化アルミニウムに含まれるNa分や粒径のほか、焼成する際の温度にも依存するため必ずしも限定されないが、好ましくは1時間以上とするのがよい。また、焼成雰囲気については大気中であってもよい。
【0018】
そして、本発明においては、焼成により得られたα-アルミナを洗浄処理する。この洗浄処理の目的のひとつは、焼成して得られたα-アルミナに含まれているNa分を更に除去することにある。そこで、好ましくは、焼成によって得られたα-アルミナを純水、塩酸、リン酸、ふっ化水素酸等のリパルプ水でスラリー化し、攪拌洗浄することでα-アルミナ中のNa分を溶解させ、次いで、洗浄水を通水して通水洗浄するのがよい。
【0019】
洗浄処理の条件については、水酸化アルミニウムのNa分や粒径のほか、焼成する際の温度にも依存するが、例えば次のような条件を例示することができる。すなわち、上記攪拌洗浄については、好適にはα-アルミナをスラリー化する際にα-アルミナ1kgに対して2L以上のリパルプ水でスラリー化し、1時間以上攪拌するのがよい。リパルプ水の量が2L/kg-アルミナより少ないと1時間以上攪拌してもNa分の低減効果が十分に望めないおそれがある。2L/kg-アルミナを超えてスラリー化して1時間以上攪拌しても、攪拌洗浄の効果は飽和する。次いでろ過しながら、粒子間に含まれる溶出したNa分を含む残存液を十分な洗浄水をかけて置換するようにするのがよい。具体的には、攪拌洗浄後の通水洗浄については、α-アルミナ1kgに対して3L以上、好ましくは5L以上の洗浄水を通水して通水洗浄するのがよい。通水洗浄が3L/kg-アルミナより少ないと溶解したNa分の洗浄効果が十分に望めないおそれがある。5L/kg-アルミナを超えて通水洗浄をしてもその効果は飽和する。
【0020】
上記洗浄処理後のα-アルミナについては、例えば定置乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等の一般的な手法で乾燥させることにより、Si分が20ppm以下、Fe分が10ppm以下、Ca分が2ppm以下、及びNa分が40ppm以下の高純度α-アルミナを得ることができる。本発明においては、必要に応じて、得られた高純度α-アルミナを、更に800〜1000℃、好ましくは900〜1000℃の温度で加熱処理し、再度洗浄処理を行ってもよい。このような加熱処理と再洗浄処理を繰り返すことで、高純度α-アルミナの物性を変化させることなく、Na分を10ppm以下まで更に低減させることができる。あるいは、高純度α-アルミナを粉砕して再度スラリー化し、例えば強イオン性のイオン交換樹脂等と接触させることで、更に不純物金属を除去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、Si、Fe、Ca、Na等の不純物金属が可及的に除去された高純度α-アルミナを簡便かつ安価に製造することができる。具体的には、Si分が20ppm以下、Fe分が10ppm以下、Ca分が2ppm以下、及びNa分が40ppm以下の高純度α-アルミナを得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、原料となる水酸化アルミニウムの粒径とほぼ変化のない高純度α-アルミナを得ることができるため、その用途の制約を受けることがなく、絶縁材や研磨材等の一般的なα-アルミナの用途はもちろん、ファインセラミックス用、電子材料用、医薬品用等を含めた幅広い範囲での利用が期待でき、その工業的な重要性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の好適な実施の形態を説明する。
図1は、焼成容器1を用いて水酸化アルミニウムを焼成する様子を表す断面説明図である。上記焼成容器1は、それぞれAl23を85〜93重量%、及びSiO2を7〜14重量%の範囲で含有する焼成容器本体2と蓋体3とからなり、この焼成容器1には予めプレス成形された水酸化アルミニウム充填物4が入れられている。この水酸化アルミニウム充填物4は、図2に示すように、脚部4aを備えたゲタ型にプレス成形されており、この脚部4aのみが焼成容器1と接触するように、焼成容器1の内壁面からそれぞれ所定の間隔dをおいて配置される。
【0023】
焼成容器1を用いて水酸化アルミニウムを焼成する際には、例えば図3に示したシート材5を用いることもできる。このシート材5はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなるものであって、焼成後には焼失するものである。このシート材5は水酸化アルミニウムを焼成容器1に充填する際に中敷きとして用いられ、焼成容器1の形状に合わせて焼成容器本体2の内壁側面部2aに対応するもの(図3では4枚)と、内壁底面部2bに対応するもの(図3では1枚)とをそれぞれ用意するのがよい。このうち、焼成容器本体2の内壁底面部2bに対応するシート材5については、充填された水酸化アルミニウムが、焼成後に自重を支え得る脚部を形成するように開口部5aをいくつか設けておくようにするのが好ましい。
【0024】
このシート材5の使用方法としては、先ず、焼成容器本体2の内壁面に上記シート材5を配置する。このとき、内壁底面部2bには開口部5aを備えたシート材5を配置するようにする。そして、全てのシート材5を配置した焼成容器本体2に原料となる水酸化アルミニウムを充填する。この際、加圧しながら水酸化アルミニウム充填物の形状を整えるようにするのがよい。全ての水酸化アルミニウムを充填した後、焼成容器本体2を蓋体3で蓋をする。
【0025】
上記によって水酸化アルミニウムを充填した焼成容器1は、例えばシャトルキルンや電気炉等に入れて1100〜1500℃の焼成温度で焼成する。焼成時間については、水酸化アルミニウムの粒径や含まれるNa分等にもよるため必ずしも限定されないが、好ましくは1時間以上とするのがよい。この際、焼成雰囲気は大気中で行なうことができる。
【0026】
そして、焼成によって得られたα-アルミナについては、所定の洗浄処理を行う。洗浄処理の好適な方法としては、先ず、室温まで放冷したα-アルミナを純水、塩酸、リン酸、ふっ化水素酸等のリパルプ水に投入してスラリー化させて攪拌洗浄し、α-アルミナ中に残存している不純物金属(主にはNa分)を溶出させる。この際、好ましくは、α-アルミナ1kgに対して2L以上のリパルプ水でスラリー化するのがよく、攪拌時間は1時間以上とするのがよい。攪拌洗浄後は、ろ過機にスラリーを注入してリパルプ水を吸引・ろ別し、溶出した不純物金属を取り除くようにする。次いで、ろ別したα-アルミナに洗浄水(例えば純水)を通水しながら粒子間に残った不純物金属を含んだリパルプ水を洗浄水で置換し、吸引ろ別してα-アルミナを洗浄する。この際、α-アルミナ1kgに対して3L以上、好ましくは5L以上の洗浄水を通水して洗浄するのが好ましい。このようにして洗浄処理した後は、例えば噴霧乾燥して乾燥させることでSi分が20ppm以下、Fe分が10ppm以下、Ca分が2ppm以下、及びNa分が40ppm以下の高純度α-アルミナを得ることができる。
【0027】
本発明においては、必要に応じて、上記で得られた高純度α-アルミナを、更に800〜1000℃の温度で加熱処理し、再度洗浄処理を行ってもよく、あるいは高純度α-アルミナを粉砕して再度スラリー化し、例えば強イオン性のイオン交換樹脂等と接触させることで、更に不純物金属を除去するようにしてもよい。これらの処理を更に行うことで、Na分を10ppm以下まで更に低減させることができる。
【実施例】
【0028】
[焼成容器別試験(試験No.1〜21)]
焼成容器1(焼成容器本体2及び蓋体3)の材質と得られるα-アルミナに含まれる不純物金属量との関係を調べるため、それぞれ表1に示した化学組成(質量%)を有する焼成容器A〜Gを用いて水酸化アルミニウムを焼成し、その後洗浄処理を行って高純度α-アルミナを製造した。焼成容器A及びBはいわゆる珪酸質系の焼成容器であり、焼成容器E、F及びGは高アルミナ質系の焼成容器である。なお、各焼成容器の材質は、蛍光X線分析法による分析結果である。また、各焼成容器本体の寸法(内径)を表1に示した。
【0029】
【表1】


【0030】
また、原料として表2に示した高純度水酸化アルミニウム(日本軽金属社製:品番BHP39)を用意し、これを図4に示したように、65mmφ×80mmHの円柱形であり(図中R=65mm、H=80mm)、尚且つ、焼成容器本体の内壁底面部に対応する面に深さ5mmの凹溝を設けて周縁部と中央部とからなる脚部4a(図中r=10mm、t=10mm、s=5mm)を形成するように予めプレス成形した水酸化アルミニウム充填物4を所定の数だけ準備し、上記焼成容器A〜Gにそれぞれ充填した。この際、各焼成容器A〜Gと水酸化アルミニウム充填物4とは脚部4aのみで接触するように充填した。すなわち、水酸化アルミニウム充填物4と各焼成容器とが接触する面積は、円柱状の脚部4aの表面の合計であり、これは水酸化アルミニウム充填物4の表面積の8%に相当する。また、水酸化アルミニウム充填物4と各焼成容器A〜Gとが接触しない部分については、水酸化アルミニウム充填物4と焼成容器本体及び蓋体との間に少なくとも5mm以上の隙間dを設けるようにして充填した。
【0031】
上記のようにして水酸化アルミニウム充填物が充填された焼成容器A〜Gを電気炉に入れ、大気雰囲気中でそれぞれ表2に示す焼成温度で10時間(保持時間)の焼成を行なった。この際、各試験番号において用いた水酸化アルミニウムの平均粒径及び各不純物金属の量は表2に示す通りである。ここで、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、日機装株式会社製 レーザー散乱法Microtrac 9320HRA(X100)を用いて測定した。また、原料とした水酸化アルミニウム中に含まれる不純物金属の量は、原子吸光法及びICP発光分光分析法により求めた値であり、Na分については1%≒10000ppmとした。以降、焼成処理後及び洗浄処理後のα-アルミナに含まれる不純物金属量についてもそれぞれ同様にして測定した。なお、原料とした水酸化アルミニウム中に含まれる不純物量については、アルミナ換算した値である。
【0032】
【表2】


【0033】
焼成後、得られたα-アルミナを室温で放置し、α-アルミナに含まれる不純物金属をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。次いで、このα-アルミナを、α-アルミナ1kgに対して2Lの純水(リパルプ水)でスラリー化させ、1時間攪拌洗浄した。攪拌洗浄後、ろ過機にスラリーを注入してリパルプ水を吸引・ろ別し、溶出した不純物金属を取り除いた。更に、ろ別したα-アルミナに純水(洗浄水)を通水してα-アルミナ1kgに対して5Lの洗浄水が通水されるまで通水洗浄を行なった。このようにして洗浄処理した後、乾燥させて不純物金属が除去されたα-アルミナを得た。得られたα-アルミナに含まれた不純物金属の測定結果を表2に示す。なお、不純物測定しなかったものについては表中でNAを付している。また、検出されない値についてはNDを付している。
【0034】
上記焼成容器別試験の結果、焼成容器A及びBを用いて焼成し、洗浄処理して得られたα-アルミナ(試験No.9〜12)は、Si分が20ppmを超えるものがあったほか、Na分及びFe分が他の容器を用いて得たα-アルミナより高い値で含まれることが分かった。また、焼成容器E、F、及びGを用いて得られたα-アルミナ(試験No.13〜21)は、いずれも2ppmを超えるCa分が含まれていた。これに対して、焼成容器C及びDを用いて焼成し、洗浄処理して得られたα-アルミナ(試験No.1〜8)は、他の焼成容器の場合と比べて特にCa分の含有量が少なく(2ppm以下)、同時にNa分、Si分、及びFe分の含有量もそれぞれ低い値(Na分:40ppm以下、Si分:20ppm以下、Fe分:10ppm以下)であった。
【0035】
[水酸化アルミニウム別焼成試験(試験No.22〜34)]
上記焼成容器別試験で良好な結果を得られた焼成容器Cを用いて、原料にする水酸化アルミニウム(粒径及び不純物金属量を変えたもの)と焼成温度との関係を調べるため、水酸化アルミニウム別焼成試験を行った。用意した水酸化アルミニウムは、高純度水酸化アルミニウム粉末(商品名BHP39、日本軽金属株式会社製)、試作水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属株式会社製、表3参照)、及び普通粒水酸化アルミニウム(商品名B53、日本軽金属株式会社製)の3種である。また、これらの水酸化アルミニウムを焼成容器Cに充填する際には、上記焼成容器別試験と同様にして、図4に示した脚部4aを備えた円柱状の水酸化アルミニウム充填物4にプレス成形して充填した。その後、電気炉を用いて、表3に示す各焼成温度で10時間(保持時間)の焼成を行なった。また、得られたα-アルミナについては、上記焼成容器別試験と同様にして洗浄処理し、乾燥させて不純物金属が除去されたα-アルミナを得た。得られたα-アルミナに含まれた不純物金属の測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】


【0037】
上記の水酸化アルミニウム別焼成試験の結果、粒径が55μmを超える水酸化アルミニウム(試験No.26及び27)を用いた場合には、洗浄処理して得られたα-アルミナのNa分が40ppmを超えるものがあった。また、原料とする水酸化アルミニウムに含まれるNa分、Fe分、Ca分、及びSi分の少なくともいずれかがアルミナ換算で「Na分0.11質量%以下」、「Fe分6ppm以下」、「Ca分1.5ppm以下」、及びSi分10ppm以下」の条件を満たさない水酸化アルミニウム(試験No.31〜34)である場合、洗浄処理して得られたα-アルミナに含まれる不純物金属量が「Na分40ppm以下」、「Ca分2ppm以下」、「Si分20ppm以下」、及び「Fe分10ppm以下」のいずれかの基準を超えてしまった。尚、焼成温度が1000℃(試験No.28及び30)の場合には洗浄処理して得られたα-アルミナのNa分が40ppmを超えてしまい、焼成温度が1600℃の場合(試験No.29)の場合には、洗浄処理して得られたα-アルミナのSi分が20ppmを超えてしまった。
【0038】
これに対して、試験No.22〜25については、洗浄処理後に得られたα-アルミナは、Na分、Ca分、Si分及びFe分がいずれも上記基準を満たして不純物量が低いものであった。尚、表3中のNA、NDについては表2と同様である。
【0039】
[充填方法別焼成試験(試験No.35〜43)]
水酸化アルミニウムを焼成容器に充填する方法によって、得られるα-アルミナ中に含まれる不純物量の違いを確認するため、上記焼成容器C及びDを用いて以下のような充填方法別焼成試験を行った。先ず、高純度水酸化アルミニウム(日本軽金属社製BHP39:平均粒子径26μm、Na分0.039質量%、Ca分0.3ppm、Si分3ppm、Fe分2ppm)をゲタ型にプレス成形し、図2に示したように、脚部4aを備えた水酸化アルミニウム充填物4を用意して、これを焼成容器C及びDに充填した。この水酸化アルミニウム充填物4は、250mm(L)×200mm(D)×80mm(H)であって、焼成容器の内壁底面部に対応する面には15mm(l)×5mm(h)の脚部4aを5つ備えた形状をしている。水酸化アルミニウム充填物4を焼成容器C及びDに充填する際は、脚部4aのみが焼成容器と接触するようにして、それ以外の部分は焼成容器本体及び蓋体との間に少なくとも5mm以上の隙間dが形成されるようにした。この際の水酸化アルミニウム充填物4と焼成容器との接触面積は、水酸化アルミニウム充填物4の表面積の10%である。そして、表4に示したように、焼成温度1450℃及び保持時間10〜12時間とする以外は上記焼成容器別試験と同様にして焼成を行なった。その後、焼成後のα-アルミナを上記焼成容器別試験と同様にして洗浄処理し、上記焼成容器別試験と同様にして不純物金属量を測定した(試験No.35及び36)。
【0040】
また、比較例として、原料の水酸化アルミニウムを通常の方法、すなわち、水酸化アルミニウムをプレス成形せずにそのまま焼成容器本体に入れ、焼成容器本体の内壁底面部及び内壁側面部と接触するように充填した。そして、上記と同様にして焼成及び洗浄処理を行い、不純物金属量を測定した(試験No.37及び38)。これら試験No.35〜38の結果は表4に示すとおりであり、脚部を設けない水酸化アルミニウム充填物の場合(試験No.37及び38)では、α-アルミナ中に20ppmを超えるSi分が含まれていた。
【0041】
【表4】


【0042】
また、この充填方法別焼成試験では、参考として、焼成後の水酸化アルミニウム充填物4の部位別の不純物量を確認するため、ゲタ型にプレス成形した場合(試験No.35)とプレス成形せずにそのまま充填した場合(試験No.38)について、それぞれ所定の部位を分別回収し、これらを個別に洗浄処理して不純物量を比較した。先ず、ゲタ型にプレス成形した水酸化アルミニウム充填物4については、図5(A)に示すように、焼成後の水酸化アルミニウム充填物4の脚部4a(部位I)、焼成容器本体の内壁底面部側であって脚部4aを除いた厚さ5mmの表層部分(部位II)、蓋体側の厚さ5mmの表層部分(部位IV)、及びこれら以外の残りの部分(部位III)に含まれる不純物量をそれぞれ調べた。また、そのまま充填した水酸化アルミニウム充填物4については、焼成容器本体と接触する厚さ5mmの表層部分(部位I)、部位Iを除いて蓋体側の厚さ5mmの表層部分(部位IV)、及びこれら以外の残りの部分(部位III)に含まれる不純物量をそれぞれ調べた。すなわち、いずれの場合も部位Iは焼成容器と接触する部分であり、部位II〜IVは非接触部分である。結果を表4に示した。この結果から明らかなように、焼成容器と接触する部分のα-アルミナには多量のSi分が混入することが確認された。そのため、焼成後のα-アルミナのうち焼成容器と接触していた部分については、少なくとも表層から5mm(深さ5mm)を除去するようにすれば、最終的に得られるα-アルミナのSi分を低減することができる。
【0043】
更に、水酸化アルミニウム充填物と焼成容器との間に設ける隙間の影響を確認するため、水酸化アルミニウム充填物と焼成容器との隙間を1〜10mmに調整して焼成し、焼成後のα-アルミナに含まれる不純物金属量を測定した。具体的には、ゲタ型にプレス成形した水酸化アルミニウム充填物4と焼成容器1(焼成容器C)との隙間d(図1に示した隙間d)を5mm以上にした場合(試験No.39〜41)と、5mmに満たない場合(試験No.42及び43)について、焼成温度1350〜1400℃及び保持時間10〜12時間とした以外は上記焼成容器別試験と同様にして焼成を行ない、焼成後のα-アルミナに含まれる不純物金属量を測定した。なお、不純物金属量を測定した部位は、図5(A)に示した部位IIである。
【0044】
表5に示した結果から明らかなように、隙間dが5mmに満たない場合(試験No.42及び43)、焼成後のα-アルミナには20ppmを超えるSi分が含まれることが確認された。そのため、少なくともd=5mmの隙間を設けるように水酸化アルミニウムを充填して焼成すれば、最終的に得られるα-アルミナのSi分を低減することができる。
【0045】
【表5】


【0046】
[Na分の除去効果試験(試験No.44〜55)]
洗浄処理によるNa分除去の効果を確認するため、攪拌洗浄及び通水洗浄の条件を変化させ、洗浄処理前後でのα-アルミナに含まれるNa分の変化量を調べた。表6に示すように、試験No.44〜48では、平均粒子径38μm、Na分0.092質量%(アルミナ換算)の高純度水酸化アルミニウムを用いて、焼成温度1200℃、保持時間10時間として焼成容器Cを用いて上記[充填方法別焼成試験]と同様に水酸化アルミニウム充填物を焼成した。試験No.49〜55では、平均粒子径27μm、Na分0.077質量%(アルミナ換算)の高純度水酸化アルミニウムを用いて、焼成温度1400℃、保持時間10時間として焼成容器Cを用いて上記[充填方法別焼成試験]と同様に水酸化アルミニウム充填物を焼成した。
【0047】
次いで、上記で得られたα-アルミナについて、表6に示した洗浄条件になるように、上記[焼成容器別試験]と同様にして攪拌洗浄及び通水洗浄を行った。洗浄処理後、乾燥させ、不純物金属が除去されたα-アルミナを得た。この処理において、洗浄処理前のα-アルミナに含まれるNa分と洗浄処理後のα-アルミナに含まれるNa分より導出したNa除去率の結果を表6に示した。ここで、Na除去率とは、『Na除去率(%)=100×(洗浄処理前のα-アルミナに含まれるNa分−洗浄処理後のα-アルミナに含まれるNa分)÷(洗浄処理前のα-アルミナに含まれるNa分)』で導出される値をいう(100%なら完全除去に相当)。
【0048】
表6から明らかなように、α-アルミナ1kgに対して2L以上のリパルプ水でスラリー化して1時間以上攪拌洗浄すると共に、攪拌洗浄後のα-アルミナ1kgに対して3L以上の洗浄水を通水する通水洗浄を行った場合には、いずれもNa除去率が90%以上であるという優れた除去効果を発揮した。
【0049】
【表6】


【0050】
[追加のNa分の除去効果試験(試験No.56〜62)]
洗浄処理して得られた高純度のα-アルミナについて、更にNa分の除去効果を高めるために、表7に示すように、以下のような追加のNa除去処理を行った。上記[Na分の除去効果試験]の試験No.45に示す方法で攪拌洗浄及び通水洗浄を行い、最終的に得られたα-アルミナ(以下「試験No.45供試材」という)を、先ず、再び800℃で1時間加熱処理した後、再度、純水2L/kg-アルミナとなるようにスラリー化して1時間攪拌洗浄し、更に純水5L/kg-アルミナとなるように通水洗浄を行った(試験No.56)。また、試験No.57については、上記試験No.45供試材を1000℃で1時間再加熱した以外は試験No.56と同様にした。更に、試験No.58については、試験No.57で行った一連の処理を合計2度行った。
【0051】
【表7】


【0052】
一方、試験No.59では、試験No.45供試材を平均粒子径5μm以下まで粉砕した上で、純水でスラリー化し、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイアイオンSK1B)と接触させてNa分を除去した。この際、α-アルミナ1kgに対して陽イオン交換樹脂が50mlの割合となるようにして、α-アルミナのスラリーと陽イオン交換樹脂とを24時間接触させた後、分離回収した。尚、本試験で使用した試験No.45供試材は、試験No.45と同じ方法の試験によって得られたものであって、上記[Na分の除去効果試験]の試験No.45で得られたα-アルミナそのものではない。そのため、本試験に使用したα-アルミナにはNa分が異なる2種類のものが存在する。
【0053】
更には、試験No.60では、試験No.45供試材を500℃で1時間再加熱した以外は試験No.56と同様な処理を行い、試験No.61では、試験No.45供試材を700℃で1時間再加熱した以外は試験No.56と同様な処理を行い、試験No.62では、試験No.45供試材を1200℃で1時間再加熱した以外は試験No.56と同様な処理を行った。
【0054】
以上について、表7から明らかなように、試験No.56〜59及び62では、いずれも十分なNa除去効果が認められた。すなわち、試験No.56〜59及び62では、追加のNa除去効果試験によってNa変化量(ΔNa)がいずれも5ppm以上の値を示した。
【0055】
ところで、この追加のNa分の除去効果試験では、事前に試験No.45供試材のBET比表面積を測定した上で追加のNa分除去効果試験を行った。そして、追加のNa分除去効果試験で得られたα-アルミナのBET比表面積を測定して、追加のNa分除去処理前後の値を比較した。BET比表面積は、α-アルミナの1次粒子径と反比例する関係にあり、「BET比表面積が減少≒α-アルミナの1次粒子径が大きく成長」、「BET比表面積は変化なし≒α-アルミナの1次粒子径の成長もなし」等のようにα-アルミナの1次粒子径変化の判断指標として利用することができる。尚、BET比表面積の測定には、Micromeritics社製 比表面積自動測定装置(型式:Flowsorb II 2300)を用いた。
【0056】
表7に示すとおり、試験No.56〜61では、追加のNa分の除去効果試験の前後でBET比表面積の変化量(ΔBET)がほとんどなく(特にNo.56〜58、60、61では変化がなく)、処理の前後によって粒子成長(物性変化)は起きなかったものと考えられる。すなわち、本試験では、試験No.56〜59について、アルミナ粒子を変化させずにNa分を効率的に除去できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によって得られた高純度α-アルミナは、α-アルミナの一般的な用途であるセラミックス材料のほか、耐火物、碍子、研磨材、医薬品、吸着剤、充填材、触媒担体、特殊ガラス原料、単結晶原料、蛍光材料、プラズマ溶射材等に広く用いることができるが、特に、Si分、Fe分、Ca分、及びNa分の含有量が少なく、ファインセラミックス、電子部品、単結晶原料、蛍光材料等の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、焼成容器を用いて水酸化アルミニウムを焼成する様子を表す断面説明図である。
【図2】図2は、水酸化アルミニウムをプレス成形した水酸化アルミニウム充填物の斜視説明図である。
【図3】図3は、水酸化アルミニウムを焼成する際に用いるシート剤の組み立て説明図である。
【図4】図4は、試験用に準備した水酸化アルミニウム充填物の斜視説明図である。
【図5】図5は、焼成容器に対する水酸化アルミニウムの充填方法([充填方法別焼成試験]の一部で利用)を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1:焼成容器
2:焼成容器本体
2a:内壁側面部
2b:内壁底面部
3:蓋体
4:水酸化アルミニウム充填物
4a:脚部
5:シート材
5a:開口部
【出願人】 【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
【出願日】 平成18年12月15日(2006.12.15)
【代理人】 【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也

【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫

【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣

【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司


【公開番号】 特開2008−150238(P2008−150238A)
【公開日】 平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願番号】 特願2006−339032(P2006−339032)