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【発明の名称】 アルミナ微粒子及びアルミナゾルの製造方法
【発明者】 【氏名】伯田 幸也

【氏名】松井 啓太郎

【氏名】野口 多紀郎

【氏名】林 拓道

【要約】 【課題】高結晶性のアルミナ微粒子を分散質とする、金属触媒の支持体として有用なアルミナゾル及びその簡便かつ効率の良い合成方法を提供する。

【解決手段】アルミニウム塩水溶液を、410℃以上の超臨界状態の水中において水熱反応させて、一次粒子径が20nm以下であり、その粒子は残存水酸イオンが少なく、凝集のない、結晶化度が高いアルミナ微粒子が分散したアルミナゾルを製造する方法、上記アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾル及びその反応膜としての用途。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルであって、1)基本構造が、一般式
Al・nH
(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、2)アルミナの結晶相がガンマ型であり、3)アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、4)アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、5)残存水酸イオンを含まない、ことを特徴とするアルミナゾル。
【請求項2】
上記アルミナゾルが、アルミナ濃度0.3重量%のゾルの560nmでの吸光度が0.1より小さく、透明性を有するものである、請求項1に記載のアルミナゾル。
【請求項3】
上記アルミナゾルの分散質のアルミナ微粒子が、170m/gを超える高表面積を有する、請求項1に記載のアルミナゾル。
【請求項4】
粒子がプラスの表面電荷を持ち、凝集が抑制されている、請求項1に記載のアルミナゾル。
【請求項5】
高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルを製造する方法であって、アルミニウム塩の水溶液を、水熱条件下で水熱処理することにより、1)基本構造が、一般式
Al・nH
(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、2)アルミナの結晶相がガンマ型であり、3)アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、4)アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、5)残存水酸イオンを含まない、アルミナゾルを製造することを特徴とするアルミナゾルの製造方法。
【請求項6】
アルミニウム塩として、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、又はアルミニウムのアルコキシドを原料として使用する、請求項5に記載のアルミナゾルの製造方法。
【請求項7】
温度が410℃以上で、反応圧力が32.5MPa以下の超臨界水で水熱処理を行う、請求項5に記載のアルミナゾルの製造方法。
【請求項8】
水熱処理の時間が、20秒以内である、請求項5に記載のアルミナゾルの製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載のアルミナゾルを膜素材として用いて作製された触媒又は触媒担体用反応膜。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性のアルミナ微粒子が高分散したアルミナゾル及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、アルミニウム塩水溶液を水熱条件下で超臨界水により水熱処理することにより合成してなる、アルミナ微粒子がコロイド粒子として高分散したアルミナゾル、その製造方法及びその用途に関するものである。本発明は、基本構造が、一般式Al・nHO(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子が高分散した、透明性及び安定性が高いアルミナゾル、それを一段工程の合成反応で製造する方法及びその製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ガンマ型アルミナは、化学的な熱安定性、高表面積(>170m/g)及び表面酸性を有することから、例えば、触媒、あるいは触媒担体として広く利用されている。アルミナは、温度とともに結晶相がγ→δ→θ→αに変態し、それに伴い、比表面積は小さくなる。最近、ガンマ型アルミナを担体とした反応膜が注目されてきている。反応膜の性能は、反応物の膜内の移動速度に支配されることから、薄膜であることが望ましく、そのために、膜素材となるアルミナ粒子の微粒化及び当該アルミナ微粒子が高分散したアルミナゾルが必要とされている。
【0003】
アルミナゾル及びその製造方法に関しては、従来、種々のものが知られている。例えば、先行文献には、擬ベーマイト結晶からなるアルミナゾルが開示されており(特許文献1)、また、他の先行文献には、ベーマイト態結晶格子を有するアルミナゾルが開示されている(特許文献2)。
【0004】
これらのゾルは、従来、慣習的にアルミナゾルと呼ばれているが、実際には、ゾル状態の水酸化アルミニウムであって、その分散質は、酸化アルミニウム(アルミナ)ではなくて、水酸化アルミニウム(アルミナ水和物)である。従来のアルミナ水和物のゾルの製造方法では、アルミナ水和物の粉末を酸で解膠してコロイド粒子とするために、多量の酸を必要とし、生成する多量の塩のために、コロイド粒子のζ電位が低くなり、そのため、ゾルの安定性が悪くなる。
【0005】
また、他の先行文献には、分散質が実質的に酸化アルミニウムからなる安定なアルミナゾルが開示されている(特許文献3)。そこでは、原料アルミナ粉末を水に懸濁させ、得られた懸濁液に所定量の酸を添加した後、陽イオン交換樹脂を加えて撹拌混合し、次いで、陽イオン交換樹脂を分離して、アルミナゾルを調製する方法が提案されている。
【0006】
該アルミナ粉末の粒径は、10μm以下であれば使用可能であるが、好ましくは1μm以下の小さい粒径のものが良いとされており、これを粉砕して粒径を小さくする必要がある。また、アルミナ粉末の解膠を行うために酸の添加が必要であり、また、酸の添加により生じたアルミニウムイオンを除去するために、通常、1kgのアルミナに対して、1〜10リットルの割合で陽イオン交換樹脂を使用する必要がある。
【0007】
しかし、この種の方法では、原料アルミナ粉末を1μm以下に粉砕し、水に懸濁させ、酸を添加し、解膠させ、溶解したアルミニウムイオンをイオン交換樹脂より分離するという複雑な操作工程が必要であった。また、400℃以下の水熱合成法では、アルミナではなく、アルミナ水和物(ベーマイト)が生成し、粒子径も50nm以上のものしか得られていなかった。
【0008】
更に、従来、水熱合成法で、原料である硝酸アルミニウム水溶液を超臨界水熱処理することで、結晶性ベーマイト(AlO(OH))を合成できることが報告されている(非特許文献1)。しかし、この種の方法では、原料塩濃度を低くし、溶液pHを4程度まで大きくすることにより、100nm程度の板状のアルミナ水和物微粒子は生成するが、これ以上の低濃度下(0.01M)かつ高いpH条件下での反応は限界があり、そのため、数十nm以下の微粒子を合成することは困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−78925号公報
【特許文献2】特開昭53−112299号公報
【特許文献3】特開平7−89717号公報
【非特許文献1】Mater.Chem. Phys.,93,466−472(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、粒子の凝集が抑制された、粒度分布がシャープな結晶性アルミナ(ガンマ型アルミナ)微粒子を分散質とし、粘度が低く、安定であり、高濃度のゾルを調製することが可能な、結晶性アルミナ微粒子が分散したアルミナゾルの製造方法及び当該アルミナゾルを開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、アルミニウム塩を水熱条件で水熱処理することにより所期の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、粒度分布がシャープな結晶性アルミナ(酸化アルミニウム)微粒子を分散質とし、透明性及び安定性に優れたアルミナゾル及びその製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、高結晶かつ単結晶性で、粒子径が20nm以下のガンマ型アルミナ微粒子を分散質とする透明性及び安定性の高いアルミナゾル、及び当該アルミナゾルを短時間かつ効率良く製造することのできるアルミナゾルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルであって、1)基本構造が、一般式
Al・nH
(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、2)アルミナの結晶相がガンマ型であり、3)アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、4)アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、5)残存水酸イオンを含まない、ことを特徴とするアルミナゾル。
(2)上記アルミナゾルが、アルミナ濃度0.3重量%のゾルの560nmでの吸光度が0.1より小さく、透明性を有するものである、前記(1)に記載のアルミナゾル。
(3)上記アルミナゾルの分散質のアルミナ微粒子が、170m/gを超える高表面積を有する、前記(1)に記載のアルミナゾル。
(4)粒子がプラスの表面電荷を持ち、凝集が抑制されている、前記(1)に記載のアルミナゾル。
(5)高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルを製造する方法であって、アルミニウム塩の水溶液を、水熱条件下で水熱処理することにより、1)基本構造が、一般式
Al・nH
(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、2)アルミナの結晶相がガンマ型であり、3)アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、4)アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、5)残存水酸イオンを含まない、アルミナゾルを製造することを特徴とするアルミナゾルの製造方法。
(6)アルミニウム塩として、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、又はアルミニウムのアルコキシドを原料として使用する、前記(5)に記載のアルミナゾルの製造方法。
(7)温度が410℃以上で、反応圧力が32.5MPa以下の超臨界水で水熱処理を行う、前記(5)に記載のアルミナゾルの製造方法。
(8)水熱処理の時間が、20秒以内である、前記(5)に記載のアルミナゾルの製造方法。
(9)前記(1)から(4)のいずれかに記載のアルミナゾルを膜素材として用いて作製された触媒又は触媒担体用反応膜。
【0013】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルであって、基本構造が、一般式Al・nHO(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、アルミナの結晶相がガンマ型であり、アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、残存水酸イオンを含まない、ことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、高結晶性アルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルを製造する方法であって、アルミニウム塩の水溶液を、水熱条件下で水熱処理することにより、基本構造が、一般式Al・nHO(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、アルミナの結晶相がガンマ型であり、アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶であり、アルミナ微粒子がコロイド粒子として存在し、残存水酸イオンを含まない、ことで特徴付けられるアルミナゾルを製造することを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明は、上記アルミナゾルを膜素材として用いて作製された触媒、又は触媒担体用反応膜の点に、特徴を有するものである。本発明のアルミナゾルの製造方法では、アルミニウム塩の加水分解により、水酸化アルミニウムと酸が生成し、更に、水熱反応により、この水酸化アルミニウムが脱水反応により水が除去されるので、ガンマ型アルミナが合成される。加水分解の際に生成する酸がアルミナ粒子の表面電荷をプラスに調整し、粒子間の凝集を抑制するため、コロイド粒子(微粒子)としてアルミナゾルとなる。
【0016】
この方法では、酸を添加する必要がないこと、また、アルミニウム塩の転化率がほぼ100%であること、得られるアルミナゾル中に含まれるアルミニウム塩が非常に少ないこと、そのため、コロイド粒子がアルミニウム塩の加水分解により生じた酸により正に荷電し、電荷を中和する対イオンであるアニオンが周囲に存在する電気二重層を十分に形成するので、該アルミナゾルは、粘度が低く、透明で安定であり、高濃度のゾルを調製することができるという特徴を有している。
【0017】
本発明の第1の態様に係るアルミナゾルは、一般式Al・nHO(式中、nは0.5〜1.0の数である。)で表されるアルミナ微粒子を分散質とし、アルミナ微粒子が、γ型の結晶からなり、アルミナの粒子径が大きくても20nmの単結晶である、ことを特徴とするものであり、本発明の第2の態様に係るアルミナゾルの製造方法は、アルミニウム塩化合物の水溶液を、超臨界水を用いて、高温の水熱条件下で短時間水熱処理させることを特徴とするものである。
【0018】
周知のように、酸化アルミニウムには、約8種の変態が知られている。本発明において、分散質となるアルミナ微粒子(以下、コロイド粒子と記載することがある。)は、γ酸化アルミニウムである。該アルミナ微粒子の結晶形は、X線回折により同定することにより、前記従来のアルミナゾルを構成するベーマイトのアルミナ水和物と明確に識別(区別)することができる。
【0019】
また、本発明のアルミナゾル(以下、アルミナコロイド溶液と記載することがある。)を構成するアルミナ微粒子は、酸化アルミニウムであるため、焼成による重量減少が少ない。即ち、本発明のアルミナゾルは、110から1000℃までの温度間におけるアルミナ微粒子の重量減少が10重量%以下である。
【0020】
該アルミナ微粒子の重量減少は、試料のアルミナゾルを110℃で十分に乾燥した後に、試料重量を測定し、次いで、この試料を1000℃で1時間焼成した後に、試料の重量を測定して、その差から含水量を求めることで知ることができる。本発明のアルミナゾルを構成するアルミナ微粒子は、粒径分布が非常に狭くシャープであり、平均粒径が1〜20nm、好ましくは5〜10nmの範囲にある。
【0021】
当該アルミナゾルは、透明性に優れており、アルミナ濃度0.3重量%のゾルを分光光度計で測定すると、560nmの波長における吸光度は、0.1以下となる。本発明のアルミナゾルは、非常に安定であり、アルミナ濃度を0.5重量%に調整した水性ゾルを、遠心分離機により2000rpmで60分処理しても、アルミナ微粒子は、沈降しない。
【0022】
他方、アルミナ粉末を水に分散して得られる糊状の半固体(通常、このような半固体もゾルと呼ばれることがある。)は、アルミナ濃度を0.5重量%に調整して、遠心分離機により2000rpmで60分処理した場合、2層に分離するので、本発明のアルミナゾルと明確に識別(区別)される。本発明のアルミナゾルは、粘度が低く、安定であるため、アルミナ濃度を高くすることができる。アルミナ濃度は、通常、1〜20重量%の範囲に調整される。
【0023】
次に、本発明のアルミナゾルの製造方法について説明する。原料アルミニウム源としては、好適には、例えば、アルミニウムの塩基性硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、アルミニウムのアルコキシドを好適に用いることができる。本発明のアルミナゾルの製造方法で得られるアルミナゾルは、公知の方法により、分散媒の水を有機溶媒と置換して、オルガノゾルにすることも可能である。
【0024】
本発明のアルミナ微粒子を分散質とするアルミナゾルは、触媒及び触媒担体としての用途以外にも、例えば、次に述べるようなバインダー、研磨剤、フィラー吸着剤等の用途に有用である。本発明のアルミナゾルは、バインダー力が大きいので、種々の耐火物用のバインダーとして用いれば、高強度成形体を得ることができる。例えば、セラミックシートなどの無機繊維のバインダーとして用いれば、強度の優れた無機繊維が得られる。
【0025】
また、上記アルミナゾルは、アルミナ微粒子の硬度が高いので、種々の研磨剤、各種切削工具、あるいはマトリクスとの併用で、ハードコート膜として用いた場合、優れた効果を発揮する。また、特に、アルミナ微粒子の粒度分布が狭くシャープであるので、各種プラスチックやゴムのフィラーに用いた場合、機械的強度及び寸法安定性を大幅に向上させることができる。例えば、ポリエステルフィルムのフィラーとして用いた場合、微細なコロイド粒子がポリエステルと反応するため、平滑で耐磨耗性及び易滑性に優れた2次軸配向フィルムを得ることができる。また、屈折率が高いので、光学材料としての用途にも好適である。
【0026】
また、上記アルミナゾルは、塩基性が非常に強いので、各種酸類及び弗化物を吸着除去するための吸着剤として利用することができる。その他、本発明のアルミナゾルは、製紙の表面処理剤、化粧品配合剤、潤滑剤、増粘剤、アルミニウム鋳造合金などに好適に使用することができる。
【0027】
本発明では、アルミニウムイオンを超臨界状態の水中において水熱反応させ、一次粒子径が20nm以下であり、その粒子は、残存水酸イオンが少なく、凝集のない、結晶化度が高いガンマ型アルミナからなるアルミナ微粒子を分散したアルミナゾルを製造することを特徴としている。これらの特徴を有するアルミナ微粒子を得るには、反応により生成する核の凝集を抑制するとともに、結晶表面での2次核発生を抑制する必要がある。
【0028】
一般に、金属酸化物の結晶化度を上げるために、高温処理することが望ましいが、高温、高圧の超臨界水状態では、水は非極性のガス状となり、非極性を有するアルミナの生成速度が著しく大きくなるとともに、溶存するイオン濃度が極めて低くなることから、2次核発生や過度の結晶成長が生じ難く、生成する粒子径も小さくなる。
【0029】
本発明者らの研究により、400℃以下の水熱反応で合成されたアルミニウム酸化物は、結晶内部や結晶表面に、結晶水や水酸基を含むベーマイトであることが分かった。しかし、410℃以上の超臨界水状態の水中での水熱反応により合成又は処理することで、結晶水や水酸基を含まない結晶性の高いガンマ型アルミナを得ることができることが見出された。
【0030】
本発明に用いるアルミニウム源には、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムのアルコキシドなどの適当なアルミニウム化合物を用意する。これらは、水溶性であることが好適であるが、適当なAl化合物を加水分解させて得られる固体生成物アルミニウム水酸化物(AlxHO)を含むスラリーでも使用可能である。
【0031】
アルミニウム塩水溶液の濃度は、0.1〜1.0Mの範囲とすることが望ましく、また、原料溶液のpHは、2〜3の範囲とすることが望ましい。なお、該アルミニウム塩が加水分解される際に酸が生成することから、改めて酸を添加しなくてもよい。
【0032】
本発明のアルミナゾルの製造方法は、原料塩溶液を予め蒸留水を加熱した超臨界水と混合することにより、短時間で反応温度まで昇温できる急速昇温水熱反応法で行うことが好ましい。このようにすれば、前記アルミニウム塩水溶液が、昇温過程で生成しやすいベーマイトの生成が抑制され、従って、これらの昇温過程において生成した副反応物質が反応生成物中に残留して結晶の品質に悪影響を及ぼし、目的とするアルミナの収率を低下させることを確実に防止することができる。
【0033】
本発明のアルミナゾルの製造方法では、アルミナ微粒子が生成した後も、超臨界水条件下で所定時間水熱処理することで、結晶微粒子を成長させずに、結晶化度を向上させることが好ましい。このようにすれば、生成するアルミナの粒径が増大することなく、その結晶化度を向上させることができる。反応温度は、ガンマ型アルミナを得るためには、410℃以上であることが必要である。
【0034】
本発明のアルミナゾルは、アルミナコロイド溶液からなり、これを構成するアルミナ微粒子は、平均粒径が1〜20nmで、凝集が抑制されており、粒径分布が非常に狭くシャープであり、アルミナ濃度0.3重量%のゾルの560nmにおける吸光度は0.1以下の透明性を示し、また、アルミナ濃度0.5重量%の水性ゾルを遠心分離機により2000rpmで60分処理しても、アルミナ微粒子は沈降しない、という安定性を有し、溶存するイオン濃度が極めて低く、2次核発生や結晶成長が抑制され、水酸基を含まない結晶性の高いガンマ型アルミナから構成されている、という特徴を有している。
【0035】
従来、結晶性のアルミナ微粒子及び該アルミナ微粒子が高分散したアルミナゾルの製造方法は知られていた。しかし、従来法では、原料アルミナ粉末の1μm以下への粉砕、水への懸濁、酸の添加、解膠、アルミニウムイオンのイオン交換樹脂による分離の操作が必要であり、また、得られる粒子は、アルミナではなく、アルミナ水和物(ベーマイト)で、粒子径も50nm以上のものしか得られていなかった。
【0036】
これに対し、本発明では、原料の0.1〜0.3M程度のアルミニウム水溶液を超臨界水熱合成(410℃以上)することで、粒子径が20nm以下のアルミナナノ粒子が分散した、透明で、高分散性のアルミナゾルを合成するものであり、粒子径が20nm以下の結晶性ガンマ型アルミナが分散したアルミナゾルを1段工程の反応で合成することができる。また、流通式合成装置を用いることにより、10秒以下の短時間の反応時間での連続的な合成が可能であり、本発明は、従来技術では達成し得ないアルミナナノ粒子分散ゾル及びその製造技術を提供することを実現可能にするものとして有用である。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)粒子径分布が狭くシャープで、表面水酸基が少ない、高結晶性のガンマ型アルミナ微粒子を分散質とする、透明性及び安定性が高いアルミナゾルを製造し、提供することができる。
(2)上記アルミナゾルを利用することにより、高活性な触媒・触媒膜の調製の際に、結晶化度向上のための加熱処理が不要であり、また、セラミックス化の焼成温度を低下させることが可能となる。
(3)本発明の方法により、結晶性が高く、粒子径が20nm以下のガンマ型アルミナゾルを一段工程の反応で短時間に合成することができる。
(4)本発明の方法では、酸を添加することなく、分散性の高いアルミナゾルを製造することができる。
(5)流通式合成プロセスの適用が可能であるため、連続的にアルミナゾルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1に、以下に示す本発明の実施例に用いたアルミナゾルの製造装置の構成を示す。この製造装置は、原料である硝酸アルミニウム水溶液槽1、蒸留水槽2、送液用の2基の液体クロマト用高圧ポンプ3、4、反応管6及び蒸留水加熱用及び反応用の2基の電気炉5、7、反応液冷却用熱交換器8、及び圧力調整器(背圧弁)9から構成される。
【0040】
ガラス製容器(水溶液槽1)内の硝酸アルミニウム水溶液を、高速液体クロマト用無脈流高圧ポンプ3により送液した。一方、蒸留水槽2内の蒸留水は、別の高圧ポンプ4により管型電気炉5に送液され、そこで、蒸留水は、原料溶液の加熱に必要な超臨界水とした。硝酸アルミニウム水溶液は、前記超臨界水と混合点MPにて接触し、急速に反応温度まで昇温され、水熱反応を開始させた。反応液は、管状電気炉7によって一定温度に保持された反応管6内を、一定時間滞在後、反応管出口の二重管型の熱交換器(冷却管)8により冷却後、背圧弁9にて降圧し、回収容器10に捕集した。
【0041】
生成した粒子は、出口より粒子が分散した透明ゾルとして回収した。回収した溶液を適当なフィルターによりろ別し、生成した粉体を回収した。これらの粒子の特性は、粉末X線回折により結晶構造を同定した。また、粒子径や凝集の程度は、電子顕微鏡観察によって評価した。アルミナゾル中の粒度分布は、動的光散乱測定により、更に、含水量は、熱分析により、定量化した。
【0042】
原料塩の硝酸アルミニウム9水和物(99.9%)を蒸留水に溶解して、0.1Mに調整した。流通式水熱反応装置を用いて、超臨界水流量を33g/min、温度を583℃と固定し、超臨界水と原料溶液との混合温度が500℃となるように、原料溶液の流量を3.5g/minに調節した。反応液は、反応温度に保持された反応管(内径:1.8mm、容積:13.5cc)に一定時間滞在させた後、冷却、減圧し、ナノ粒子分散液として回収した。反応圧力が30MPa、滞在時間は2.6秒の条件で合成実験を行い、本発明製品1を得た。
【0043】
回収した粒子は、分散性が高く、ほとんど沈降はしなかった。ICP測定によれば、原料のアルミニウムイオンの反応率は、99%と極めて高かった。粒子サイズ及び形状は、透過型電子顕微鏡(FEI社製、TECNAI−G20)により観察した。観察サンプルは、粒子を含む回収溶液をエタノール(5ml)中に5滴程度滴下し、超音波処理(5min)した後、その溶液をマイクログリッド上に滴下し、室温で乾燥させ、作製した。結晶構造は、XRD(リガク社製、Lint2000)により同定した。図2に、生成物の電子顕微鏡像を示す。
【0044】
電子顕微鏡観察によれば、500℃で生成したγアルミナ粒子は、一次粒子径が5−8nmであり、それらが5から10個程度凝集して存在していた。図3(a)に、生成物のXRDチャートを示す。図3(a)には、d=1.40、1.99、2.4Åの回折ピークが認められ、主生成物は、γAl(JCPDF 29−063)に帰属されることが分かる。窒素吸着法から求めた比表面積は、258m/gであり、密度を3g/cmと仮定し、球形粒子として算出した粒子径は、7.8nmであった。熱分析の結果から、Al・nHOのnの値は、0.74であった。
【実施例2】
【0045】
実施例1において、反応温度を450℃、原料溶液の流量を7g/min、滞在時間を3.0秒とした以外は、実施例1と同様の条件で合成を行い、本発明製品2を得た。図3(b)に、生成物のXRDプロファイルを示す。500℃と同様、450℃の主生成物は、γAlであり、わずかにAlO(OH)のピークが認められた。窒素吸着法から求めた比表面積は、301m/gであり、密度を3g/cmと仮定し、球形粒子として算出した粒子径は、6.6nmであった。熱分析の結果から、Al・nHOのnの値は、0.87であった。
【0046】
比較例1
実施例1において、反応温度を400℃、原料溶液の流量を20g/min、滞在時間を5.5秒とした以外は、実施例1と同様の条件で合成を行い、比較例製品1を得た。図3(c)に、生成物のXRDチャートを示す。XRD(図3(c))プロファイルによれば、400℃での主生成物は、ベーマイトAlO(OH)であり、電子顕微鏡観察から、100nm以上の大きな板状粒子が認められた。また、熱分析の結果から、Al・nHOのnの値は、1.16であった。
【0047】
400℃以下の水熱合成で得られるベーマイト(含水酸化アルミニウム)微粒子は、結晶化度は高いものの、その形状は、板状で、粒子径も100nm以上の場合がほとんどである。本発明によって生成するアルミナ微粒子は、一次粒子径が20nm以下の微粒子であることが分かる。
【実施例3】
【0048】
実施例1において、硝酸アルミニウム水溶液の濃度を0.3Mとし、反応管(内径:0.9mm、容積:0.46cc)を小さくした以外は、実施例1と同様、超臨界水量33g/minに対し、原料溶液量を3.5g/min,5g/min,7g/min,10g/min,14.5g/minと混合比を変えることにより、反応温度を500,475,450,425及び410℃となるように調節した。反応液は、反応温度に保持された反応管に一定時間滞在させた後、冷却、減圧し、ナノ粒子分散液として回収した。
【0049】
反応圧力は30MPa、滞在時間は温度により0.085秒(500℃),0.09秒(475℃),0.1秒(450℃),0.12秒(425℃)及び0.14秒(410℃)の条件で合成実験を行った。図4に、生成物のXRDチャートを示す。XRDプロファイル(図4)から、主生成物は、γ−Alであり、AlO(OH)のピークは認められなかった。He−Neレーザを光源とする動的光散乱測定から求めた425℃で合成したアルミナゾルの粒度分布曲線を、図5に示す。粒子径は、平均粒子径として5.2nm、標準偏差1.3nmであり、比較的シャープな粒度分布を有していることが分かる。
【実施例4】
【0050】
実施例3において、硝酸アルミニウム水溶液の濃度を0.1Mとし、超臨界水量33g/minに対し、原料溶液量を10g/minとし、反応温度を425℃となるように調節した。反応圧力を背圧弁により25〜35MPaと調整し、滞在時間を0.063秒(25MPa),0.1秒(22.5MPa),0.12秒(30MPa),0.16秒(32.5MPa)及び0.23秒(35MPa)と、実施例3と同様、反応液は、反応温度に保持された反応管に一定時間滞在させた後、冷却、減圧し、ナノ粒子分散液として回収した。
【0051】
図6に、生成物のXRDチャートを示す。XRDプロファイル(図6)から、反応圧力35MPaでの合成物以外は、主生成物は、γ−Alであり、AlO(OH)のピークは認められなかった。35MPaでは水密度が高温でも比較的高く、脱水反応が促進されないため、γ−AlO(OH)相が残存するものと考えられる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加は、本発明に含まれるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上詳述したように、本発明は、アルミナ微粒子及びアルミナゾル及びそれらの製造方法に係るものであり、本発明によれば、粒子径分布が狭くシャープで、表面水酸基が少ない、高結晶性のガンマ型アルミナ粒子を分散質とする透明性及び安定性に優れたアルミナゾルを合成することができる。本発明では、該アルミナ微粒子を分散質とするアルミナ微粒子を利用することで、高活性な触媒・触媒膜の調製の際に、結晶化度向上のための加熱処理が不要であり、また、セラミックス化の焼成温度を低下させることが可能となる。また、本発明によれば、結晶性が高く、粒子径が20nm以下のガンマ型アルミナゾルを高濃度の酸を添加することなく、一段工程の合成プロセスで、短時間に製造し、提供することができる。更に、本発明により、上記アルミナゾルを膜素材として用いて作製された触媒又は触媒担体用反応膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】流通式水熱合成反応装置を示す。
【図2】生成物の電子顕微鏡像を示す。
【図3】生成物のXRDチャートを示す。
【図4】生成物のXRDチャートを示す。
【図5】アルミナゾルの動的光散乱法による粒度分布を示す。
【図6】生成物のXRDチャートを示す。
【符号の説明】
【0055】
(図1の符号)
1 硝酸アルミニウム水溶液槽
2 蒸留水槽
3 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
4 液体クロマトグラフィー用高圧ポンプ
5 電気炉
6 反応管
7 電気炉
8 二重冷却管
9 背圧弁
10 回収容器
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成19年6月18日(2007.6.18)
【代理人】 【識別番号】100102004
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 政彦


【公開番号】 特開2008−137884(P2008−137884A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2007−160786(P2007−160786)