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【発明の名称】 表面処理アルミニウム酸化物粒子
【発明者】 【氏名】高原 淳

【氏名】大塚 英幸

【氏名】松野 亮介

【氏名】竹村 一樹

【要約】 【課題】高い難燃性と共に高い透明性を示す透明樹脂組成物を与えうる表面処理アルミニウム酸化物粒子を提供する。

【解決手段】本発明の表面処理アルミニウム酸化物粒子は、アルミニウム酸化物粒子の表面に、式(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム酸化物粒子の表面に、式(I)


で示されるリン酸エステル化合物を重合開始剤としてスチレンがグラフト重合されてなることを特徴とする表面処理アルミニウム酸化物粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理アルミニウム酸化物粒子が透明樹脂中に分散されてなる透明樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理アルミニウム酸化物粒子に関し、詳しくは透明樹脂に添加する難燃剤として有用な表面処理アルミニウム酸化物粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニウム粒子などのアルミニウム酸化物粒子は、熱可塑性樹脂中に分散させることにより難燃性を与える難燃剤として有用であり、特許文献1〔特開2003−171120号公報〕には、水酸化アルミニウム粒子の表面にシランカップリング剤により表面処理を施した表面処理アルミニウム酸化物粒子が開示され、該粒子を透明樹脂中に分散させた透明樹脂組成物は、難燃性を示すことも開示されている。
【0003】
かかるアルミニウム酸化物粒子としては、メタクリル樹脂、スチレン樹脂などのような透明樹脂に添加した場合に、高い難燃性と共に、高い透明性を示す透明樹脂組成物を与えうるものが求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−171120号公報
【非特許文献1】Chemistry of Materials, Vol.15, p3-5, 2003
【非特許文献2】Macromolecules, Vol.7, p2203-2209, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、高い難燃性と共に高い透明性を示す透明樹脂組成物を与えうる表面処理アルミニウム酸化物粒子を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、アルミニウム酸化物粒子の表面に、式(I)


で示されるリン酸エステル化合物を重合開始剤としてスチレンがグラフト重合されてなることを特徴とする表面処理アルミニウム酸化物粒子を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面処理アルミニウム酸化物粒子を透明樹脂中に分散させた透明樹脂組成物は、高い難燃性と共に、高い透明性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の表面処理アルミニウム酸化物粒子を構成するアルミニウム酸化物粒子としては、例えば結晶型がギブサイト型、バイヤライト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型、ダイアスポア型などの水酸化アルミニウム(Al23・3H2O)、結晶型がα型、γ型、擬γ型、δ型、χ型、κ型、ρ型、θ型、η型などである酸化アルミニウム(Al23・nH2O、0≦n<3)などからなる酸化アルミニウム粒子が挙げられる。アルミニウム酸化物粒子は単一の結晶型からなる単一相であってもよいし、2以上の結晶型からなる混合相であってもよい。また、2種以上のアルミニウム酸化物粒子を組み合わせて用いてもよい。好ましいアルミニウム酸化物粒子は、加熱されることにより熱分解する際に吸熱作用を示す、ギブサイト型、バイヤライト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などの水酸化アルミニウム粒子である。
【0009】
窒素吸着法によるアルミニウム酸化物粒子のBET比表面積は、透明性の点で、30m2/g以上であり、通常はコストの点で600m2/g以下である。
【0010】
アルミニウム酸化物粒子の粒子径は、入手の容易さの点で通常1nm以上であり、透明性の点で、通常150nm以下、好ましくは100nm以下である。アルミニウム酸化物粒子の粒子径は、動的光散乱法による粒度分布曲線における50質量%相当粒子径として測定される。
【0011】
式(I)で示されるリン酸エステル化合物は、リン酸モノ−[2−(4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イルオキシ)−2−フェニル−エチル]エステル〔Phosphoric acid mono-[2-(4-methoxy-2,2,6,6-tetramethyl-piperidin-1-yloxy)-2-phenyl-ethyl] ester〕であり、非特許文献1〔Chemistry of Materials, Vol.15, p3-5, 2003〕および非特許文献2〔Macromolecules, Vol.7, p2203-2209, 2004〕に記載されている。
【0012】
本発明の表面処理アルミニウム酸化物粒子は、例えばアルミニウム酸化物粒子の表面に、リン酸エステル化合物(I)を担持させたのち、スチレンを重合させる方法により製造することができる。
【0013】
アルミニウム酸化物粒子の表面に、リン酸エステル化合物(I)を担持させるには、例えばアルミニウム酸化物粒子をリン酸エステル化合物(I)と接触させればよい。リン酸エステル化合物(I)との接触は通常、テトラヒドロフランなどのようなリン酸エステル化合物(I)を溶解し得る有機溶媒中で行われ、例えばアルミニウム酸化物粒子、リン酸エステル化合物(I)および有機溶媒を混合することにより行われる。リン酸エステル化合物の使用量は、アルミニウム酸化物粒子に対して通常0.1質量倍〜10質量倍であり、有機溶媒の使用量は、アルミニウム酸化物粒子に対して通常10質量倍〜1000質量倍である。
【0014】
かくして接触させた後、固液分離することにより、固形分として、表面にリン酸エステル化合物(I)が担持されたアルミニウム酸化物粒子を得ることができる。得られた粒子は、エタノールなどのようなアルコール溶媒で洗浄してもよい。
【0015】
このようにしてアルミニウム酸化物粒子の表面にリン酸エステル化合物を担持させたのち、スチレンを重合させる。スチレンを重合させるには、例えばリン酸エステル化合物(I)を担持したのちのアルミニウム酸化物粒子の存在下に、スチレンを重合温度に加熱すればよく、具体的には、例えばリン酸エステル化合物(I)を担持したのちのアルミニウム酸化物粒子をスチレン中に分散させた後、重合温度に加熱すればよい。スチレンの使用量は、アルミニウム酸化物粒子に対して過剰量、例えば3質量倍〜1000質量倍である。重合温度は通常0℃〜160℃であり、重合時間は通常0.5時間〜20時間である。
【0016】
重合温度に加熱されることにより、アルミニウム酸化物粒子の表面に担持されたリン酸エステル化合物(I)を重合開始剤としてスチレンの重合が開始され、スチレンが表面にグラフト重合されて、目的の表面処理アルミニウム酸化物粒子を得ることができる。
【0017】
得られた表面処理アルミニウム酸化物粒子は、固液分離により、重合後の重合混合物から容易に取り出すことができる。取り出された表面処理アルミニウム酸化物粒子には、アルミニウム酸化物粒子の表面にグラフト重合されていないポリスチレンが付着していることがあるが、かかるポリスチレンは、例えばクロロホルムなどのようなポリスチレンを溶解しうる有機溶媒により洗浄すればよい。
【0018】
本発明の表面処理アルミニウム酸化物粒子は、難燃剤として有用であり、これを透明樹脂中に分散させた透明樹脂組成物は、高い難燃性を示すと共に、高い透明性をも示す。
【0019】
透明樹脂としては、例えばポリスチレンが挙げられる。
【0020】
透明樹脂組成物における表面処理アルミニウム酸化物粒子の含有量は、透明樹脂に対して0.001質量部〜1質量部である。
【0021】
透明樹脂組成物は、例えば透明樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、透明樹脂および表面処理アルミニウム酸化物粒子を溶融混練すればよい。また、透明樹脂を溶解しうる揮発性の溶媒に透明樹脂を溶解させると共に表面処理アルミニウム酸化物粒子を分散させ、次いで溶媒を揮発させてもよい。
【0022】
透明樹脂組成物の成形は通常の方法、例えば押出成形法、射出成形法、プレス成形法、流延キャスト法などの方法により行うことができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0024】
なお、各実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)透明性
実施例で得たフィルムについて、紫外可視分光光度計〔日立製作所社製、「U−3310」〕を用いて、波長700nmにおける光線透過率を求めた。
(2)熱分解開始温度
実施例で得たフィルムについて、熱重量分析装置〔リガク社製「TG−8120」〕を用いて、窒素ガス雰囲気下に昇温速度10℃/分にて50℃から800℃まで昇温した際に、急激な質量減少が開始する温度を熱分解開始温度として求めた。
(3)BET比表面積
比表面積測定装置〔マウンテック社製「Macsorb Model-1201」〕を用いて窒素ガス吸着法により求めた。
(4)50質量%相当粒子径
粒度分析計〔日機装社製「Nanotrac Model UPA-EX150」を用いて動的光散乱法により粒度分布曲線を求め、その50質量%相当粒子径を求めた。
(5)表面処理アルミニウム酸化物粒子の表面にグラフト重合されたポリスチレンの分子量
表面処理アルミニウム酸化物粒子の表面に付着しているグラフト重合されていないポリスチレンをテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、このポリスチレンの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。GPC法では、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)カラム〔昭和電工社製「GPCKF−804」〕を装着したGPC装置〔東ソー社製「HLC−8120GPC」〕を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用いた。
【0025】
参考例1〔リン酸エステル化合物の製造〕
〔4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルの製造〕
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル10gをジメチルホルムアミド200mLに溶解させたのち、水素化ナトリウム2.79gを加え、撹拌した。水素ガスの発生が確認できなくなったのち、ヨウ化メチル5.43mL(12.4g)を加え、さらに6時間撹拌した。その後、ジエチルエーテルを加え、その後、希塩酸〔HCl濃度1モル/L〕で洗浄し、さらに純水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧濃縮した。濃縮後の残渣を、ヘキサンおよび酢酸エチルを等容量比で混合した混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフ処理に付して精製し、収率45.5%で4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルを得た。
【0026】
〔ベンゾイル化および加水分解〕
上記で得た4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル3.82gを窒素ガス気流下にスチレン300mL(271g)に溶解させ、過酸化ベンゾイル6.67gを加え、96℃に加熱し、同温度で45分間保持して反応させた。反応後の反応混合物を、クロロホルムおよび酢酸エチルを等容量比で混合した混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフ処理に付して精製した。精製後の精製物をエタノール20mLに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液〔濃度2モル/L〕10mLを滴下して加え、80℃に昇温し、同温度で6時間反応させた。反応後の反応混合物からエタノールを減圧留去し、得られた残渣に純水を加え、酢酸エチルで抽出処理し、得られた抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥処理した後、溶媒留去し、残渣をカラムクロマトグラフ処理して、式(I−1)


で示される化合物を得た。
【0027】
〔リン酸エステル化合物の製造〕
上記で得た式(I−1)で示される化合物10.5gとトリエチルアミン0.91mL(0.66g)を予め乾燥処理したテトラヒドロフラン40mLに溶解させて、式(I−1)で示される化合物の溶液を得た。オキシ塩化リン0.3mL(0.51g)を予め乾燥処理したテトラヒドロフラン20mLに溶解させた溶液に、上記で得た式(I−1)で示される化合物の溶液に、15分掛けて滴下して加えた。その後、室温(概ね25℃)にて2時間撹拌したのち、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、得られた濾液に、イオン交換水を加え、その後、テトラヒドロフランを減圧留去した。減圧留去後をクロロホルムで抽出処理し、得られた抽出液を硫酸ナトリウムにより乾燥した。乾燥後、クロロホルムを減圧留去し、残渣を、クロロホルムおよびメタノールを等容量比で混合した混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフ処理に付して精製し、クロロホルムに溶解させたのち未溶解分を濾別し、クロロホルムを溶媒留去して、式(I)で示されるリン酸エステル化合物を得た。
【0028】
参考例2〔水酸化アルミニウム粒子の製造〕
アルミニウムアルコキシドを加水分解して得た擬ベーマイト型水酸化アルミニウム粒子〔BET比表面積290m2/g〕200gを希硝酸〔濃度1モル/L〕1800mLに加え、超音波を照射して分散させた後、85℃に加熱し、同温度を2時間保持した。その後、遠心分離処理により粗粒子を除去し、高圧ホモジナイザーにより粉砕処理して、50質量%相当粒子径37nmのベーマイト型水酸化アルミニウム粒子が分散された分散液を得た。この分散液の固形分濃度は3.6質量%であり、水素イオン濃度はpH3.5であった。
【0029】
上記で得た分散液にテトラヒドロフランを加えてベーマイト型水酸化アルミニウム粒子を凝集させ、遠心分離処理により固形分として凝集物を得、その後、減圧乾燥した。
【0030】
実施例1
〔リン酸エステル化合物の担持〕
参考例1で得たリン酸エステル化合物(I)20mgおよび参考例2で減圧乾燥した後のベーマイト型水酸化アルミニウム粒子20mgをテトラヒドロフラン40mLに加え、室温(約25℃)にて撹拌した。その後、超音波を照射し、遠心分離処理により固形分を得た。得られた固形分をエタノールと混合した後、デカンテーションにより固形分を得る洗浄操作を繰り返して洗浄し、遠心分離処理によりエタノールを除去した後、減圧乾燥して、ベーマイト型水酸化アルミニウム粒子の表面にリン酸エステル化合物(I)を担持させた。
【0031】
〔スチレンのグラフト重合〕
上記でリン酸エステル化合物(I)を担持させた後のベーマイト型水酸化アルミニウム粒子3mgおよびスチレン230gを混合し、超音波を照射したのち、脱気処理し、密封した状態で125℃に加熱し、同温度を保持して重合させた。その後、冷却し、クロロホルムにより洗浄して、グラフト重合されていないポリスチレンを除去し、遠心分離処理により固形分を得、得られた固形分を減圧乾燥して、表面処理アルミニウム酸化物粒子を得た。この表面処理アルミニウム酸化物粒子の表面にグラフト重合されたポリスチレンの数平均分子量(Mn)は14500であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.32であった。
【0032】
〔ポリスチレン組成物の製造〕
クロロホルム100質量部に対して、ポリスチレン〔数平均分子量230000、Mw/Mn1.96〕4質量部を加えて溶解させ、次いで上記で得た表面処理アルミニウム酸化物粒子0.2176質量部を加えて撹拌して、分散液を得た。この分散液を硝子シャーレに注ぎ入れ、大気中でクロロホルムを揮発させたのち、114℃(387K)で24時間加熱して、厚み60μm〜80μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムは、ポリスチレン100質量部あたり5.44質量部の表面処理水酸化アルミニウム粒子を含んでいる。
【0033】
このキャストフィルムの光線透過率は84%であり、熱分解開始温度は679℃、熱分解終了温度は724℃であった。
【0034】
比較例1
実施例1で得た表面処理アルミニウム酸化物粒子に代えて、参考例2で得たベーマイト型水酸化アルミニウム粒子0.204質量部を用いた以外は実施例1と同様に操作して、厚み60μm〜80μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムは、ポリスチレン100質量部あたり5.1質量部のベーマイト型水酸化アルミニウム粒子を含んでいる。
【0035】
このキャストフィルムの光線透過率は68%であり、熱分解開始温度は666℃、熱分解終了温度は702℃であった。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【代理人】 【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2008−127212(P2008−127212A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−310010(P2006−310010)