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アルミナ粒子およびその製造方法、アルミナ粒子を用いた樹脂組成物 - 特開2008−88038 | j-tokkyo
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【発明の名称】 アルミナ粒子およびその製造方法、アルミナ粒子を用いた樹脂組成物
【発明者】 【氏名】清水 勇

【氏名】鷹見 秀樹

【氏名】柏原 孝行

【氏名】安藤 彰朗

【氏名】佐藤 裕

【氏名】坂本 広明

【要約】 【課題】微細粒子を用いて高熱伝導化させ、微細粒子の影響によって樹脂が硬化阻害を起こすことを防止することができるアルミナ粒子の提供。

【解決手段】平均粒径5μm以上の大径アルミナ粒子の表面に平均粒径4μm以下の微細アルミナ粒子が付着していることを特徴とする。アルミナは1400−1600℃で焼結するが、粒径が小さいほど焼結開始温度が低く、粒径が大きいと焼結開始温度が高く、焼結開始温度差を利用することで、大径粒子同士は焼結せずに、微細粒子を大径粒子表面に焼結させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径5μm以上の大径アルミナ粒子の表面に平均粒径4μm以下の微細アルミナ粒子が付着していることを特徴とするアルミナ粒子。
【請求項2】
前記大径アルミナ粒子の粒径が微細アルミナの5〜300倍であることを特徴とする請求項1に記載のアルミナ粒子。
【請求項3】
前記微細アルミナ粒子が焼結反応により大径アルミナ粒子に付着していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミナ粒子。
【請求項4】
大径アルミナ粒子の表面積の少なくとも10%の面積に、該微細アルミナ粒子が付着していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアルミナ粒子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアルミナ粒子をフィラーとして用いることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物が封止用に用いられることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物が放熱用に用いられることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
平均粒径5μm以上の大径アルミナ粒子と平均粒径4μm以下の微細アルミナ粒子を混合し、その後に熱処理を施し、焼結反応により大径アルミナ粒子の表面に小径アルミナ粒子を付着させることを特徴とするアルミナ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理が1150〜1500℃で行なわれることを特徴とする請求項8に記載のアルミナ粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性フィラーとして用いられるアルミナ粒子およびその製造方法、アルミナ粒子を用いた樹脂組成物、特に封止用樹脂組成物や放熱シート用途に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、エレクトロニクスの進展に伴い、パワーデバイス等電子機器内において発熱する部品が多く使用されてきている。電子回路を制御するに当り、これらの発熱部品からの熱を放散させて系全体を冷却することが重要となってきた。
【0003】
半導体素子を樹脂中に封止して用いる場合には、素子の発熱を、封止樹脂を介して外部へ放散させることとなり、封止樹脂の熱伝導率を向上させる方法として、無機フィラーの材質が検討されている。
【0004】
放熱シートとは、発熱部品と放熱フィンや金属板との間に設置され、圧着により隙間のないように密着し、発熱部品から発生した熱を放熱フィン等に伝えて、系全体の抜熱をさせるシートのことであり、従来の熱伝導性接着剤等に比べて取り扱いの容易さ等により最近普及してきた部材である。放熱シートの場合にも、熱伝導性フィラーによる熱伝導率特性向上が検討されている。
【0005】
一般に、封止樹脂や放熱シートに代表される高熱伝導性樹脂成形体は、高熱伝導性の無機フィラーと樹脂との組成物で構成されている。無機フィラーとしては、安価なシリカや水酸化アルミニウムや酸化アルミニウム(以下、アルミナ)、高熱伝導率の炭化珪素や窒化硼素、窒化アルミニウムといった材料が用いられている。封止樹脂用の樹脂としては、エポキシ樹脂が一般的である。また、放熱シート用の樹脂としてはシリコーン樹脂が一般的であるが、シリコーン樹脂に含まれるシロキサンによる接点不良の問題を解決すべく、アクリル系ゴム等の適用も検討されてきている。
【0006】
放熱シートや封止材料の開発においては、安価で高熱伝導率を有する無機フィラーを用いて、できるだけ熱伝導率を向上させるための研究開発が進められてきており、中でも、アルミナの形状や配合についての研究が多々なされている。
【0007】
例えば、樹脂に加えるアルミナの充填率を上げることで高熱伝導率化を目指す方法が多く研究されており、フィラーの充填・分散を容易にするものとして、下記特許文献1に記載されているように角を落とした丸味状アルミナを用いるものや、下記特許文献2に記載されているように球状アルミナを用いるもの等、流動性を良くすることにより充填率を上げるため、アルミナの形状に関する研究が行なわれた。
【0008】
また下記特許文献3には、熱伝導フィラー(実施例として炭化珪素)を樹脂に充填するに当り、大きな粒子とその間隙に入る小さな粒子を組合せることで、熱伝導フィラーの充填率を上げて熱伝導を向上させた放熱シートが得られることが記載されている。フィラーの充填率を上げるべく、大小の粒径の異なる粒子を配合することを開示したものである。また、その考えをさらに進めて、大きな粒子の間隙に入る小さな粒子の間隙にさらに微細粒子を加えるといった研究もなされている。(下記特許文献4参照)
しかし、微細粒子を添加すると、粒子の隙間をさらに粒子で埋めることができ、フィラーの充填率がさらに向上するため、熱伝導率を向上させることが可能となる、という思想は、特許文献1〜3には記載がない。また特許文献4では、微細粒子を添加することが記載されているが、実施例にあるようにエポキシ樹脂に関するもので、シリコーン樹脂を用いたものではなかった。
【0009】
また、下記特許文献5には、大径粒子よりなる粉体(粉体A)と小径粒子よりなる粉体(粉体B)を高温火炎中に導入し粉体A表面に粉体Bを溶融・付着させることにより樹脂との接着性向上のため必要な表面改質と球状化を同一工程で行なう方法が記載されている。
【0010】
しかし、この特許文献5に記載された表面改質方法では、溶融・付着する小径の粉体Bは溶融状態で球状となった後、大径の粉体Aの表面に付着する際に、半球状の突起もしくは、曲面付着(大径粒子表面を覆う)となる結果、樹脂内における粒子同士の接触点が点接触になり易く、熱伝導向上効果が十分でないという問題点があった。
【0011】
また、下記特許文献6には、母粒子に子粒子を一体化もしくは混じり合った複合粒子を機械的(圧縮と剪断)に形成させる方法が記載されている。
【0012】
この特許文献6に記載された複合粒子の製造方法によれば、大径粒子の隙間に小径粒子を均一に分散させる状態は作れるが、セラミックスを物理的に付着させることは困難であり、付着より先に大径粒子の破壊が起こると考えられる。
【0013】
また、下記特許文献7には、ボールミル等の混合の際の衝撃・摩擦・せん断等のエネルギーにより母粒子にシリカを含む子粒子(酸化チタン−シリカ複合粒子)を結合させる方法が記載されている。
【0014】
しかし、この特許文献7の方法では、母粒子と子粒子を結合させるバインダとして機能しているシリカ成分が存在しないアルミナ粒子同士が結合した複合粒子を作ることはできなかった。
【0015】
また、下記特許文献8には、電融アルミナとアルミナ水和物(水酸化アルミニウム等)を造粒後、1000〜1600℃で焼結する丸み状アルミナ粒子の製造方法が記載されている。
【0016】
しかし、この特許文献8の方法による熱処理後の粗大粒は2次凝集粒となるため、粗大粒同士の付着も起こっており、これを塊砕して単一粒子に変形するので、中間体としての大径粒子と小径粒子の結合した複合粒子は製造できなかった。
【特許文献1】特開昭63-020340号公報
【特許文献2】特開2000-095896号公報
【特許文献3】特開2001-139733号公報
【特許文献4】特開2001-226117号公報
【特許文献5】特開2004-262674号公報
【特許文献6】特許2672671号公報
【特許文献7】特開2004-231952号公報
【特許文献8】特開2002-348116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
微細粒子は凝集しやすいために二次粒子での挙動を示すことが多い。そのため、うまく微細粒子の凝集を解いて分散させないと、粒子の間隙に微細粒子を入れることは困難であり、熱伝導率の向上は見込めない。
【0018】
さらに、うまく分散ができたとしても、低硬度のシリコーン樹脂を用いた場合には、微細粒子によるシリコーン樹脂の硬化阻害が起こるといった問題を生じることがある。原因は明確ではないが、シリコーン樹脂の硬化反応を起こす触媒に微細粒子が何らかの影響を及ぼし、硬化反応が起こらなくなると考えられている。
【0019】
本発明は、微細粒子を用いて高熱伝導化させることと、微細粒子の影響によって樹脂が硬化阻害を起こすことを防止することの2つの課題を同時に解決させようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前述の課題を解決するため鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)平均粒径5μm以上の大径アルミナ粒子の表面に平均粒径4μm以下の微細アルミナ粒子が付着していることを特徴とするアルミナ粒子。
(2)前記大径アルミナ粒子の粒径が微細アルミナの5〜300倍であることを特徴とする請求項1に記載のアルミナ粒子。
(3)前記微細アルミナ粒子が焼結反応により大径アルミナ粒子に付着していることを特徴とする(1)または(2)に記載のアルミナ粒子。
(4)大径アルミナ粒子の表面積の少なくとも10%の面積に、該微細アルミナ粒子が付着していることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のアルミナ粒子。
(5)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のアルミナ粒子をフィラーとして用いることを特徴とする樹脂組成物。
(6)前記樹脂組成物が封止用に用いられることを特徴とする(5)に記載の樹脂組成物。
(7)前記樹脂組成物が放熱用に用いられることを特徴とする(5)に記載の樹脂組成物。
(8)平均粒径5μm以上の大径アルミナ粒子と平均粒径4μm以下の微細アルミナ粒子を混合し、その後に熱処理を施し、焼結反応により大径アルミナ粒子の表面に小径アルミナ粒子を付着させることを特徴とするアルミナ粒子の製造方法。
(9)前記熱処理が1150〜1500℃で行なわれることを特徴とする(8)に記載のアルミナ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアルミナ粒子は、大径アルミナ粒子に微細アルミナ粒子が付着しており、熱伝導の経路となる粒子間の接触箇所が予め形成されている。そのため、微細粒子を分散させて大きな粒子と接触させる場合と比べ接触箇所即ち熱伝導の経路が多くなることから、本発明のアルミナ粒子を用いると熱伝導率が向上する。また、微細粒子をそのまま添加した場合に硬化阻害を起こしてしまうシリコーン樹脂等と混合しても硬化阻害を起こすことなく使用できる。
【0022】
さらに、大径アルミナ粒子として球状アルミナ粒子を用いた場合には、球状粒子の特徴である流動性を殆ど損なうことなく高充填化でき、熱伝導率向上に寄与する。
【0023】
また、このアルミナ配合粒子をフィラー、もしくはその一部として用いた樹脂組成物を高熱伝導の封止樹脂とすることが可能である。
【0024】
また、このアルミナ配合粒子をフィラー、もしくはその一部として用いた樹脂組成物を使い、放熱シートや放熱グリースといった高熱伝導の放熱材料を作製することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者らは、微細粒子を添加して充填率を上げ、熱伝導率を向上させることを鋭意検討し、予め大径粒子の表面に微細粒子を付着させて接触箇所増加を確実にしておくことで、熱伝導率が向上することを見出した。特に、大径粒子が半球状の突起もしくは、曲面付着(大径粒子表面を覆う)の場合には粒子同士の接触が点接触になり易いが、付着させた微細粒子により、粒子同士の接触点が確実に増加するため、その効果が明確に現れる。なお、この場合に、微細粒子が不定形(非球状)であると、その接触点が球状微細粒子の場合よりも格段に増えることから、その効果がさらに明確となる。
【0026】
この不定形の微細粒子は、微細粒子を溶融球状化させないで、微細粒子の元の形状を維持した粒子を用いることが好ましい。ここに、不定形粒子とは、粒子の平均最大径L1に対する平均最小径L2の比L2/L1の値が0.7未満の粒子をいい、球状粒子とは、粒子の平均最大径L1に対する平均最小径L2の比L2/L1の値が0.7以上の粒子をいう。
【0027】
さらに、本発明の微細粒子を付着させた大径アルミナ粒子を用いることで、シリコーン樹脂と混合しても硬化阻害を起こすことがなくなった。
【0028】
微細粒子を大径粒子に付着させる方法として、熱処理を施して焼結反応により付着させる方法を開発したが、接着剤等を利用して、微細粒子を付着させても構わない。例えば、表面改質剤であるシランカップリング剤を大径粒子表面に付着させておき、その後、微細粒子と混合させることで、微細粒子を付着させた大径アルミナ粒子を得ることが可能となる。
【0029】
なお、大径粒子が球状等流動性に優れた形状を有する際に、大径粒子に突起を形成する本発明の粒子では流動性が劣化する傾向が生じるが、微細粒子の径が大径粒子に対して十分小さければ、流動性を著しく損なうことはなく、高充填化により熱伝導率を増加させることの妨げになることはなかった。
【0030】
微細粒子を大径粒子に付着させるのに、球状粒子を製造するのと同じ火炎中にて大径粒子と微細粒子を混合させる方法が特許文献5(特開平2004-262674号公報)に開示されている。これは、球状粒子の表面改質を施すために、大径球状粒子の表面に火炎中で溶融させた微細粒子を付着させるもので、微細粒子が他の成分であれば、大径粒子の表層部に他の元素を存在させるという表面改質を施すものである。高粘性の樹脂に対してフィラーとして用いる場合に、高流動性により充填率を高めるのが課題としている。
【0031】
微細粒子が同じ成分であっても表面処理の効果が得られると文献には記載があるが、流動性を高めるという課題の技術に対して、本願のような突起を有するのは文献の課題に対して反対の行為となる。即ち、本願はもともと流動性の高い球状粒子表面に、流動性を多少犠牲にしてでも熱伝導率を高めるために熱伝導パスを形成するものであり、樹脂との接着性を高めるという文献とは思想が異なるものである。
【0032】
また、文献では火炎中で微細粒子を溶融・付着させると記載されており、微細粒子を火炎中で溶融した状態で大径粒子表面に付着させており、微細粒子の溶融は起こらない焼結反応を用いている本発明とは態様が異なる。文献の場合には、微細粒子が溶融していることから球状化している状態で大径粒子に付着しており、本願の技術思想の一つである「熱伝導率を高めるために、接触点を増加させるのに効果的な不定形(非球状)微細粒子を大径粒子表面に(焼結反応で)付着させることは、文献の方法ではでき得ないものである。
【0033】
この特許文献5に記載された表面改質方法では、溶融・付着する小径の粉体Bは球状となるため、大径の粉体Aの表面において半球状の突起もしくは、曲面付着(大径粒子表面を覆う)となる結果、樹脂内における粒子同士の接触点が点接触になり易く、熱伝導向上効果が十分でないという問題点があった。
【0034】
大径粒子に付着させる微細粒子の粒径について説明する。微細粒子の粒径が大き過ぎると、大径粒子表面に大きな突起ができることになるので、粒子の流動性が悪化し、高充填化が困難となり、熱伝導率も向上しなくなる。さらに、本発明のように熱処理を施して粒子を付着させる場合には、微細粒子の粒径が大きくなると、焼結反応を起こすための温度を高くせざるを得ず、大径粒子同士の焼結反応が開始する温度になってしまう。大径粒子同士が焼結してしまうと、粒子の流動性が著しく悪化する。種々の実験の結果、粒子の流動性が悪化せずに熱伝導率向上に寄与するための微細粒子の粒径の好ましい範囲は4.0μm以下とした。
【0035】
また、微細粒子の粒径の下限は定めなくても良いが、0.1μm超とすることがより好ましい。これは、微細粒子の粒径が0.1μmより小さくなると、微細粒子が凝集しやすくなり、数μm〜数十μmの凝集粒子として大径粒子に付着することがあり、粒子の流動性の低下が起こることがあるためである。
【0036】
微細粒子の粒径が0.1μm超4.0μm以下の範囲であると、流動性を担保したまま熱伝導率の向上に寄与し、また凝集粒子による悪影響も防ぐことが可能となることから、より好適な範囲となる。
【0037】
大径粒子の粒径について説明する。大径粒子は小さすぎると、微細粒子との焼結反応の際に、大径粒子同士も焼結反応を開始してしまい、その結果、粒子の流動性が著しく悪化する。そのため、大径粒子の粒径は5.0μm以上とした。10μm以上であるとさらに好ましい。
【0038】
大径粒子の粒径の上限については、巨大な粒子であっても、微細粒子による接触箇所増加による熱伝導率向上の効果は得られることから、上限は規定しない。発明者らが用いた最大径の球状アルミナ粒子は100μmであり、上限を100μmと例示することができる。
【0039】
大径粒子の粒径d1と微細粒子の粒径d2の比d1/d2が5.0未満であれば、大径粒子表面に付着している微細粒子が大きな突起となり、粒子の流動性が著しく低下する。d1/d2が300を超えると、大径粒子表面に付着している微細粒子による突起が小さくなり過ぎ、流動性に悪影響を及ぼすことは殆どないが、他の粒子と接触する機会が減ることから、熱伝導率の向上は小さくなる。従って、微細粒子に対する大径粒子の粒径の比率は、5〜300倍の範囲であることが好ましく、さらに、10〜200倍の範囲であると、粒子の流動性を殆ど阻害することなく熱伝導率向上の効果が顕著に見られるため、より好ましい範囲となる。
【0040】
本発明者らは大径粒子の表面に付着している微細粒子の量についても熱伝導率向上と粒子の流動性に大きな影響を持つことを見出した。付着している微細粒子の量については、大径粒子表面にどれくらい微細粒子が付着している部分があるかという規定を採用した。即ち、走査型電子顕微鏡等により粒子の写真を撮り、画像処理により大径粒子の表面積Sと大径粒子上で微細粒子がなく大径粒子表面が観察される部分の面積S2を求め、両者の差S-S2から微細粒子の存在している部分の面積S1を算出し、大径粒子の表面積で割った値S1/Sを微細粒子が付着している部分の面積比として求める方法である。大径粒子の表面が見えない部分は必ずしも微細粒子が大径粒子に付着しているわけではなく、微細粒子同士が付着して大径粒子表面を覆っておる場合もある。その場合を含めて、本発明では大径粒子が微細粒子に覆われている部分を微細粒子が付着しているものとして定義する。従って、微細粒子が大径粒子の同じ箇所に複数個付いた場合でも一個付いた場合と同様に取り扱う。微細粒子が複数個付く際に、層状に付着したものが複数層になっても同様に取り扱う。
【0041】
少なくとも10個の粒子についてこのような観察・算出を行ない、平均値を用いることで、大径粒子の表面のうち微細粒子が付着している部分の面積比をより精度良く定めることができる。微細粒子の付着している部分が大径粒子の表面積の10%未満の場合には、微細粒子による接触箇所が少ないために、熱伝導率の向上が小さい。そこで、大径粒子の表面積の10%以上の部分で付着していることが望ましい。
【0042】
但し、微細粒子の粒径が小さい場合などは微細粒子が凝集体を形成し、かなり多数の微細粒子同士が凝集したまま付着してしまい、突起が大きくなり過ぎることがあり、その場合には流動性が悪化して高充填ができなくなる。この場合には、微細粒子の粒子径を限定することで、凝集粒子を除外することが必要となる。
【0043】
次に、本発明のアルミナ粒子を適用した用途について説明する。本発明のアルミナ粒子をフィラーもしくはその一部として用い、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂やアクリル樹脂等と混合することで、高熱伝導性の樹脂組成物を得ることができる。
【0044】
この樹脂組成物をチップホルダに流し込み、樹脂を硬化させると封止材となる。また、シート成形を施した後に樹脂を硬化させると、放熱シートや放熱グリースといった放熱材料とすることができる。シリコーン樹脂の場合には、高熱伝導率を有しかつ柔軟性のある放熱シートとすることができる。
【0045】
次に、本発明のアルミナ粒子を製造する方法について説明する。1)大径アルミナ粒子と微細アルミナ粒子を混合し、2)混合粉を、大径アルミナ粒子の表面で微細粒子との焼結反応が起こる温度で熱処理を行なう。以上の2つの工程を具備することで本発明のアルミナ粒子を得ることができる。
【0046】
ここで、焼結温度について説明する。一般に、アルミナは1400〜1600℃で焼結する材料であると知られているが、焼結開始温度は粒子の粒径や形状により大きく変化する。種々の実験の結果、粒径が小さいほど焼結開始温度が低く、粒径が大きいと焼結開始温度が高くなることを見出した。粒径による焼結開始温度差を利用することで、大径粒子同士は焼結せずに、微細粒子が大径粒子表面にて焼結反応を起こす温度条件を見出すことができた。
【0047】
即ち、平均粒径1μm以下の微細粒子の焼結開始温度は1150℃程度、平均粒径1〜4μm程度の粒子の焼結開始温度は1200℃程度、平均粒径5〜9μmでは1300℃程度、平均粒径が10μm以上であると焼結開始温度は1400℃を超え、平均粒径が20μm以上であると1500℃近くになるとの結果を得た。
【0048】
熱処理温度が1150℃未満の場合には、微細粒子の焼結開始温度以下となるため、微細粒子と大径粒子の焼結が十分に起こらないため、本発明のようなアルミナ粒子を得ることは難しい。微細粒子にかかわる焼結が不十分となり、アルミナ粒子を樹脂と混合する際に微細粒子は大径粒子に付着せずに単独で存在することになり、シリコーン樹脂の硬化阻害を引き起こし、封止できない、シート化できない、という問題を起こしやすくなる。そのため、熱処理温度の下限は1150℃が好ましい。
【0049】
一方、微細粒子の粒径が1〜4μmの場合には、焼結反応を開始するのに1200℃程度の温度が必要となるが、熱処理温度が1200℃以上であれば全ての粒径の微細粒子が焼結反応を十分に起こし得ることから、下限は1200℃であることがより好ましい。
【0050】
熱処理温度が1500℃を超えると20μm以上の大径粒子同士でも十分な焼結反応を起こすようになり、粒子の流動性に悪影響を及ぼしやすくなるため、1500℃以下の熱処理が好ましい。
【0051】
熱処理時間は、例えば0.5〜48時間という値が例示できる。
【0052】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
表1に示す粒径の大径アルミナ球状粒子と微細アルミナ不定形粒子を、体積比で90:10となるように混合機にて1時間混合した後、1400℃×1時間大気中で熱処理を施した。
【0054】
得られたアルミナ粒子を走査型電子顕微鏡で確認し、微細粒子がアルミナ粒子の表面に付着していることが確認できた。画像処理により大径粒子部の表面積Sと微細粒子のないエリアの面積S2を求め微細粒子の存在する部分の面積S1と大径粒子表面積Sとの比を粒子数10個の平均で求めた。
【0055】
このアルミナ粒子とシリコーン樹脂CY52-276(東レダウコーニング製)をアルミナ充填率が75vol%となるように秤量し、30分混合した後、得られたスラリーの粘度をレオメーター(レオロジカ製)により測定した。
【0056】
スラリーをシート形状の型に流し込み、樹脂硬化条件(70℃×30分)で硬化させ、放熱シートを得た。
【0057】
得られた放熱シートからφ50×2.5mmtの試料を切り抜き、熱流計法熱伝導率測定装置(栄弘精機)を用いて、熱流計法で測定して熱伝導率を測定した。
(Gr.1:大径粒子径)
Gr.1の発明例・比較例は、微細アルミナ粒子径を1.0μmとして大径アルミナ粒子径を4〜100μmまで変化させ、1400℃の熱処理で付着させた粒子を用いて、樹脂と混合した際のスラリー粘度とシート化して測定したシート熱伝導率を評価したものである。
【0058】
大径粒子径が小さくなると、スラリー粘度が増加し、シート熱伝導率も低下していき、大径粒子径が5μm未満となると、スラリー粘度が著しく増加し、シート熱伝導率が低くなった。
【0059】
大径粒子が5μm以上の場合に、シート熱伝導率が高熱伝導放熱シートとなる5.0W/mK以上となり、 大径粒子径が10μmを超えると、シート熱伝導率が5.5W/mKを超え、さらに好適な範囲となった。
(Gr.2:微細粒子径)
Gr.2の発明例・比較例は、大径アルミナ粒子径を35μmとして微細アルミナ粒子径を0.05〜5μmまで変化させた場合のものである。
【0060】
微細粒子が大きくなると熱伝導率が向上し、5.0W/mK以上となる範囲があるが、スラリー粘度の増加も起こり、付着部の面積分率も低下することが分かった。微細粒子径が4μmを超えると、スラリー粘度が著しく増加し、シート熱伝導率が5.0W/mKより小さくなり、好適な範囲と言えなくなった。
【0061】
微細粒子径が0.1μm超であれば上記結果に従うが、微細粒子径が0.1μm以下の場合には微細粒子の凝集体としての挙動が見られた。微細粒子が0.01μmの場合、電顕で確認したところ、0.01μmの微細粒子ではなく1.0μm程度の凝集体として存在し、1.0μmの微細粒子が付着した場合と同様な付着状況が観察された。また、スラリー粘度やシート熱伝導率も1.0μmの微細粒子の場合に類似した値を示していた。一方、微細粒子径が0.05μmの場合、4μm程度の凝集体の存在が確認でき、スラリー粘度が悪化し、シート熱伝導率も5.0W/mKであった。凝集体は必ずしも全てが4μm程度ではないため、付着している部分の面積比やスラリー粘度悪化も微細粒子が4μmの場合程は悪くなっていなかった。
(Gr.3:粒径比)
Gr.3の発明例・比較例は、大径アルミナ粒子径d1を10、35μmとして微細アルミナ粒子径d2を変えて、大径と微細の粒径比d1/d2を4〜350と変化させた場合のものである。
【0062】
粒径比が5〜300の間だと、スラリー粘度は高くなることがなく、シート熱伝導率も5.5〜6.0W/mKと高熱伝導シートが得られた。
【0063】
粒径比が5未満だと、スラリー粘度が著しく増加し、熱伝導率の向上が少なく5.0W/mKに留まった。粒径比が300超だと、スラリー粘度の増加はないものの熱伝導率の向上が少なく5.1W/mKに留まった。
(Gr.4:面積比)
Gr.4の発明例は、平均粒径35μmの大径アルミナ粒子と平均粒径1.0μmの微細アルミナ粒子を、突起部の面積比を変えるべく体積比を変えて、1400℃の熱処理で付着させる微細粒子の量を変化させたものである。大径粒子/小径粒子の体積比は、発明例14で98/2、発明例15で95/5、発明例16で93/7、発明例3は前述の通り90/10である。
【0064】
大径粒子の表面積Sと微細粒子の存在する部分の面積S1の面積比S1/Sが10%未満であると、熱伝導率の向上が少なく5.1W/mKに留まった。一方、S1/Sが10%を超えると、5.5〜6.2W/mKと高熱伝導シートを得ることができた。
【実施例2】
【0065】
表2に示す粒径の大径アルミナ球状粒子と微細アルミナ不定形粒子を、体積比で90:10となるように混合機にて1時間混合した後、表2に示す熱処理温度×1時間大気中で熱処理を施し、得られたアルミナ粒子を用いて、実施例1と同様に各特性を測定した。
(Gr.5:熱処理温度)
Gr.5の発明例は、熱処理温度を変化させたものである。
【0066】
1100℃の熱処理では、付着部が2%と十分に得られずに熱伝導率が5.0W/mK止まりであった。
【0067】
1550℃の熱処理では、付着部は十分にあるものの、スラリー粘度が10000Pa・s超と高くなり過ぎ、熱伝導率が向上せず、5.2W/mK止まりであった。
【0068】
1200〜1500℃の熱処理では、付着部が30%を超え、熱伝導率が5.8W/mK以上とさらに向上し、より好適な範囲となった。
(Gr.6:球状微細粒子)
Gr.6の発明例は、平均粒径35μmの大径アルミナ粒子と平均粒径1.0μmの微細アルミナ粒子を、1400℃の熱処理で付着させる微細粒子の形状を変化させたものである。発明例26は球状、発明例3は不定形である。球状粒子を付着させた場合、流動性が不定形粒子を付着させた場合より良く、スラリー粘度は低下した。熱伝導率は6.0W/mKと向上したが、不定形粒子の場合と比較するとやや低い値であった。
(Gr.7:熱処理なし)
大きな粒子と微細粒子を予め混合し熱処理するという工程を取らず、Gr.5と同じ体積比90:10になるように、樹脂と35μm粒子、1.0μm粒子を秤量し、1時間混合した後、シート成形を行なった。
【0069】
スラリーは突起がないため、粘度が低くなった。しかし、微細粒子が単独で存在しているため、樹脂が硬化阻害を起こし、シートを得ることができなかった。
【0070】
即ち、微細粒子が大きな粒子に付着していると、樹脂の硬化反応を進める触媒に影響を及ぼさなくなり、樹脂が硬化してシートを得ることができることが分かった。

【0071】
【表1】


【0072】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】大径アルミナ粒子の表面に微細アルミナ粒子が付着しているSEM像を示す図である。
【出願人】 【識別番号】397080173
【氏名又は名称】株式会社マイクロン
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄マテリアルズ株式会社
【出願日】 平成18年10月5日(2006.10.5)
【代理人】 【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一

【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊


【公開番号】 特開2008−88038(P2008−88038A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−273560(P2006−273560)