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【発明の名称】 被覆酸化マグネシウム粉末、その製造方法及びそれを含む樹脂組成物
【発明者】 【氏名】横田 好明

【氏名】清川 敏夫

【氏名】國重 正明

【要約】 【課題】耐水性に優れた酸化マグネシウム粉末表面に被覆層を形成することによって、アルカリ溶出を制御した被覆MgO粉末及びその製造方法を提供する。さらに、このアルカリ溶出を抑制した被覆MgO粉末を含む耐水性に優れた樹脂組成物を提供する。

【解決手段】酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を有し、その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を有する被覆酸化マグネシウム粉末であって、その表面の少なくとも一部に有機シリケートよりなる被覆層をさらに有する、被覆酸化マグネシウム粉末である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を有し、その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を有する被覆酸化マグネシウム粉末であって、その表面の少なくとも一部に有機シリケートよりなる被覆層をさらに有する、被覆酸化マグネシウム粉末。
【請求項2】
有機シリケートが、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケートからなる群から選択される1以上である、請求項1記載の被覆酸化マグネシウム粉末。
【請求項3】
リン酸マグネシウム系化合物が、Mg(x=1〜3、y=2、z=6〜8)で示される、請求項1又は2記載の被覆酸化マグネシウム粉末。
【請求項4】
複酸化物が、アルミニウム、鉄、ケイ素及びチタンからなる群から選択される1以上の元素とマグネシウムとを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の被覆酸化マグネシウム粉末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の被覆酸化マグネシウム粉末と、樹脂と、を含む樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂である、請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項9】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂又は液晶ポリマーである、請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。
【請求項11】
酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を形成し、
その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を形成し、
複酸化物よりなる被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を有する酸化マグネシウム粉末と有機シリケート化合物とを混合し、及び、
100〜200℃で0.5〜5時間乾燥することをこの順番で行なう、被覆酸化マグネシウム粉末の製造方法。
【請求項12】
有機シリケート化合物が、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケート、からなる群から選択される1以上である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
リン酸マグネシウム系化合物が、表面に複酸化物よりなる被覆層を形成した酸化マグネシウム粉末と、リン酸、リン酸塩及び酸性リン酸エステルからなる群から選択される1種以上との化合物である、請求項11記載の製造方法。
【請求項14】
酸性リン酸エステルが、イソプロピルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート及びステアリルアシッドホスフェートからなる群から選択される1種以上のエステルである、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
酸化マグネシウム粉末に対するリン酸マグネシウム系化合物の含有量が、リンに換算して全体の0.1〜10質量%となるようにリン化合物を添加する、請求項11〜14のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性を備えた被覆を有する被覆酸化マグネシウム粉末、その製造方法及びそれを含む樹脂組成物に関する。特に、放熱部材として使用する汎用樹脂、汎用エンジニアプラスチック、スーパーエンジニアプラスチック、特に液晶ポリマー(LCP)に充填して使用する際に、高い耐水性を有しアルカリ溶出を抑制することができる被覆酸化マグネシウム粉末、その製造方法及びそれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、積層体、プリント配線板、多層配線板等の電子部品により構成されている。電子部品には、通常、樹脂組成物がプリプレグ、スペーサ、封止剤、接着性シート等に用いられており、樹脂組成物には、様々な性能又は特性が要求されている。例えば、最近の傾向として、電子デバイスにおける大容量パワー素子搭載、高密度な実装が見られ、それに伴い樹脂組成物及びその適用品に対し、従来よりもさらに優れた放熱性、絶縁性、耐水性が要求されている。
【0003】
一方で、電気、電子、自動車、OA機器などの産業用途に使用される高性能プラスチックは、エンジニアプラスチック(エンプラ)と称され、通常、耐熱性が100℃以上で、優れた機械的特性を有するものである。
【0004】
従来は、光学部品、電気、電子部品、自動車部品の用途においては、アルミダイキャスト、亜鉛ダイキャストに代表される金属が使われてきた。しかし、所定形状への加工コストが高いため、最近では上記のエンプラを中心に熱可塑性樹脂への移行が進んでいる。これらの材料には金属並みの高い剛性、寸法安定性が要求されるが、樹脂に繊維状、板状、粒状などの無機充填材を高い割合で充填することにより、かかる性能を向上させた成型材料が使用されている。そのため、前述の要求特性に加えて、特に材料の放熱特性の向上が求められている。
【0005】
例えば、半導体封止用の樹脂組成物に用いるフィラーは、従来、二酸化ケイ素(以下、シリカという)、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)が用いられてきた。しかし、シリカの熱伝導性は低く、高集積化、高電力化、高速化等による発熱量の増大に対応する放熱が充分ではないため、半導体の安定動作等に問題が生じていた。一方、シリカより熱伝導性が高いアルミナを使用すると、放熱性は改善されるが、アルミナは硬度が高いために、混練機や成型機及び金型の摩耗が激しくなるという問題点があった。
【0006】
そこで、シリカに比べて熱伝導率が1桁高く、アルミナと同等の熱伝導率を有する酸化マグネシウム(MgO)が半導体封止用樹脂フィラーの材料として検討されている。しかし、MgO粉末は、シリカ粉末に比べ、吸湿性が大きい。そのため、半導体の封止用樹脂フィラーとしてMgO粉末を用いた場合、吸湿した水とMgOが水和して、フィラーの体積膨張によるクラックの発生、熱伝導性の低下等の問題が発生していた。こうして、半導体封止用樹脂フィラーとして用いるMgO粉末に耐水性を付与することが、半導体の長期的な安定動作を保証する上で大きな課題となっていた。
【0007】
この課題を解決するために、例えば、MgO粉末を、C〜C30のアルキル基又はC〜C30のアルケニル基を有する酸性リン酸エステル、例えば、C17のステアリルアシッドホスフェートで表面処理し、これらの化合物そのものからなる被膜を形成することにより得られる高耐酸性及び高耐水性MgO粉末が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、上記のような酸性リン酸エステルによる表面処理では、耐水性の向上は、例えば、C17のステアリル基による撥水性の付与による向上効果に過ぎず、MgO粉末自体の耐水性はある程度改善されるものの、未だ十分とはいえない。
【0009】
MgO粉末の耐水性を改善させる別の方法として、アルミニウム(Al)塩又はケイ素(Si)化合物とMgO粉末を混合し、固体分をろ別し、乾燥させて、焼成することにより、そのMgO粉末の表面を、Al又はSiとMgとの複酸化物を含む被覆層で被覆することを特徴とする被覆MgO粉末の製造方法が提案されている(特許文献2,3参照)。
【0010】
これらの方法は、単なる表面処理ではなく、AlもしくはSiをMgO粉末表面で反応させて得られる複酸化物により被覆しているため、得られた被覆MgO粉末の耐水性はかなり改善される。
【0011】
ところが、表面を複酸化物で完全に被覆することは困難であるため、MgO粉末表面には複酸化物による被覆が完全ではない領域が残留し、その部分から水和反応が進行するため、近年要求される耐水性水準を満足するには至らない。
【0012】
また、MgO粉末の耐水性をさらに改善させる方法として、MgO粉末表面の複酸化物による被覆の不完全領域を補完して耐水性を向上するために、複酸化物よりなる被覆層上に、さらにリン酸マグネシウム系化合物による被覆層を形成することが提案されている(特許文献4)。
【0013】
それらの特許文献に開示された耐水性を有するMgO粉末は、放熱部材として使用する汎用樹脂、汎用エンジニアプラスチックの殆どにおいては使用可能なレベルになった。
【0014】
しかし、さらなるスーパーエンジニアプラスチックの高性能化と用途開発が進む中、今までに要求されていなかった材料に対しても熱伝導性が要求されるようになった。
【0015】
特に液晶ポリマー(以下、「LCP」という場合がある)においても、従来求められていなかった熱伝導性と絶縁性が要求されるようになった。
【0016】
液晶ポリマーは、液晶構造を発現する高分子の総称である。高分子液晶も低分子液晶と同じく、所定の温度範囲で(サーモトロピック)液晶性を示すもの、あるいは溶液状態で(リオトロピック)液晶性を示すものに分類される。さらに液晶ポリマーは、その液晶構造の発現のもととなるメソゲン基が直接主鎖にのみ入ったもの(主鎖型液晶ポリマー)、側鎖にのみ入ったもの(側鎖型液晶ポリマー)、あるいはその両者に入ったもの(複合型液晶ポリマー)に分類される。現在実用化されている液晶ポリマーは、代表的なものとして、リオトロピック液晶ポリマーでは全芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマーでは全芳香族ポリエステルがある。液晶ポリマーの特徴はその剛直鎖の配向に起因し、一般に耐熱性、すぐれた強度特性、低熱膨張性及び配向状態を得やすいことであり、これらの性質を利用して、高強度、高弾性率の繊維としての応用や、成形品として前述の特性を利用し電気、電子部品などに使用されている。
【0017】
液晶ポリマーのような高温で成形されるエステル結合した材料については、従来の被覆を有する酸化マグネシウム粉末では、被覆が完全ではないことに起因して、耐水性が十分でなく、酸化マグネシウム粉末よりマグネシウムが溶出し、液晶ポリマー自体がアルカリ分解してしまう問題が生じている。
【0018】
【特許文献1】特開2001−115057号公報
【特許文献2】特開2003−34522号公報
【特許文献3】特開2003−34523号公報
【特許文献4】特開2006−151778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、耐水性に優れた酸化マグネシウム粉末表面に被覆層を形成することによって、アルカリ溶出を制御した被覆MgO粉末及びその製造方法を提供することである。さらに、このアルカリ溶出を抑制した被覆MgO粉末を含む耐水性に優れた樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、種々検討を重ねる中で、MgO粉末表面の複酸化物による被覆の不完全領域を補完して耐水性を向上するために、複酸化物よりなる被覆層上に、リン酸マグネシウム系化合物による被覆層を形成した被覆酸化マグネシウム粉末に対して、さらにエチルシリケートなどの有機シリケートによって被覆層を形成することを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は、酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を有し、その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層であって、その表面の少なくとも一部に有機シリケートよりなる被覆層をさらに有する、被覆酸化マグネシウム粉末である。好ましくは、有機シリケートが、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケートからなる群から選択される1以上である被覆酸化マグネシウム粉末である。また、好ましくは、リン酸マグネシウム系化合物が、Mg(x=1〜3、y=2、z=6〜8)で示される、被覆酸化マグネシウム粉末である。また、好ましくは、複酸化物が、アルミニウム、鉄、ケイ素及びチタンからなる群から選択される1以上の元素とマグネシウムとを含む、被覆酸化マグネシウム粉末である。
【0022】
また、本発明は、被覆酸化マグネシウム粉末と、樹脂と、を含む樹脂組成物である。好ましくは、樹脂が熱硬化性樹脂である樹脂組成物である。また、より好ましくは、熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、又はシリコーン樹脂である樹脂組成物である。また、より好ましくは、樹脂が熱可塑性樹脂である樹脂組成物である。また、より好ましくは、熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂又は液晶ポリマーである樹脂組成物である。
【0023】
また、本発明は、樹脂組成物を用いた放熱部材である。
【0024】
また、本発明は、酸化マグネシウム粉末表面の少なくとも一部に複酸化物よりなる被覆層を形成し、その表面の少なくとも一部にリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を形成し、複酸化物よりなる被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層を有する酸化マグネシウム粉末と有機シリケート化合物とを混合し、及び、100〜200℃で0.5〜5時間乾燥することをこの順番で行なう、被覆酸化マグネシウム粉末の製造方法である。好ましくは、有機シリケート化合物が、エチルシリケート、プロピルシリケート、及びブチルシリケート、からなる群から選択される1以上である製造方法である。また、好ましくは、リン酸マグネシウム系化合物が、表面に複酸化物よりなる被覆層を形成した酸化マグネシウム粉末と、リン酸、リン酸塩及び酸性リン酸エステルからなる群から選択される1種以上との化合物である、製造方法である。また、好ましくは、酸性リン酸エステルが、イソプロピルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート及びステアリルアシッドホスフェートからなる群から選択される1種以上のエステルである製造方法である。また、好ましくは、酸化マグネシウム粉末に対するリン酸マグネシウム系化合物の含有量が、リンに換算して全体の0.1〜10質量%となるようにリン化合物を添加する製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって、アルカリ溶出を抑制し、耐水性に優れた被覆MgO粉末及びその製造方法を提供することができる。さらに、このアルカリ溶出を抑制した被覆MgO粉末を含む耐水性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の被覆MgO粉末は、複酸化物による被覆層を有する被覆MgO粉末表面の少なくとも一部に、リン酸マグネシウム系化合物による被覆層を有し、さらにその表面の少なくとも一部にエチルシリケートなどの有機シリケートの被覆層を有するものである。複酸化物による被覆層、リン酸マグネシウム系化合物による被覆層は、耐水性の点で十分でなくても、これらの被覆層が相互に補完しあうことにより、本発明の効果を奏するためのMgO粉末の被覆を得ることができるのである。
【0027】
MgO粉末の粒径は、特に限定されず、用途に応じて決定することが好ましい。例えば、電子部品の封止剤等に使用する場合には、一般的には100×10−6m以下のものを用いる。また、MgO粉末の純度も、特に限定されず、用途に応じて決定することが好ましい。例えば、電子部品の絶縁特性を満足するためには、純度90質量%以上であることが好ましく、純度95質量%以上であることがより好ましい。なお、本発明の特性を有するMgO粉末は、公知の方法、例えば、電融法、焼結法等を用いて製造することができる。
【0028】
本発明の被覆MgO粉末は、MgO粉末の表面が複酸化物で被覆されている。この複酸化物よりなる被覆層を「複酸化物被覆層」という。この複酸化物は、具体的には、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)及びチタン(Ti)からなる群から選択される1以上の元素とマグネシウムとを含むものであることが好ましい。この複酸化物により表面を被覆することにより、MgO粉末の耐水性が大幅に向上する。
【0029】
複酸化物として、具体的には、フォルステライト(MgSiO)、スピネル(AlMgO)、マグネシウムフェライト(FeMgO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)などをあげることができる。これらの中でも、特に、フォルステライトが好ましい。
【0030】
一個のMgO粉末粒子の重量に対する、その表面を被覆する複酸化物の重量の割合は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。複酸化物の含有量が上記の範囲にあると、MgO粉末の表面が複酸化物により被覆されて耐水性が大幅に向上する。さらには、充填後の樹脂組成物の熱伝導率も高くなり、熱伝導性フィラーとして、例えば、放熱部材に適用した際、十分な効果を発揮することができる。
【0031】
この複酸化物被覆層を有するMgO粉末の平均粒径は、5×10−6〜500×10mが好ましく、10×10−6〜100×10−6mがより好ましい。またBET比表面積は、5.0×10/kg以下が好ましく、1.0×10/kg以下がより好ましい。
【0032】
本発明の被覆MgO粉末は、上記の複酸化物被覆層を有するMgO粉末表面の少なくとも一部に、リン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層(リン酸マグネシウム系化合物被覆層)をさらに有する。
【0033】
このリン酸マグネシウム系化合物は、後述するように、MgO粉末表面で表面処理剤としてのリン化合物とMgとが反応して生成されるものであり、具体的には、例えば、Mg(x=1〜3、y=2、z=6〜8)で示されるものが好適である。
【0034】
その場合、MgO粉末表面に形成されたフォルステライトなどの複酸化物被覆層上に形成されるリン酸マグネシウム系化合物は、Mgの他に、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)又はチタン(Ti)などを1種もしくは2種以上含んでいてもよい。
【0035】
上記のリン酸マグネシウム系化合物被覆層により、本発明の被覆MgO粉末は、従来の複酸化物被覆層のみを有するMgO粉末に比べて、より高い耐水性を持たせることができる。このように十分な耐水性を発現させるためには、リン酸マグネシウム系化合物被覆層の重量が、リン酸マグネシウム系化合物被覆層及び複酸化物被覆層を含めたMgO粉末の重量に占める割合は、リンに換算して、0.1〜10質量%、好ましくは、0.2〜5質量%、さらに好ましくは、0.2〜3質量%である。
【0036】
また、リン酸マグネシウム系化合物被覆層は、複酸化物被覆層を有するMgO粉末の少なくとも一部、つまり具体的には、複酸化物の被覆層が形成されていないか、あるいは、複酸化物の被覆層が比較的疎である領域に形成されていることが必要であるが、実際には、複酸化物被覆層を有するMgO粉末の全表面を覆って形成されていることが好ましい。
【0037】
本発明の被覆MgO粉末は、上記の複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末の表面に、さらに有機シリケートよりなる被覆層(有機シリケート被覆層)を有する。リン酸マグネシウム系化合物被覆層と有機シリケート被覆層が相乗的に作用するために、MgO粉末の耐水性をさらに向上し、アルカリ溶出を抑制した被覆MgO粉末を得ることができる。
【0038】
有機シリケートとしては、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートなどを用いることができるが、特にエチルシリケートを用いることが耐水性向上のために好ましい。
【0039】
有機シリケート層は、複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末の表面の少なくとも一部、つまり具体的には、複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層が形成されていないか、あるいは、比較的疎である領域に形成されていることが必要であるが、実際には、その全表面を覆って形成されていることが好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、上記の本発明の被覆MgO粉末を樹脂に含有させたものである。本発明の被覆MgO粉末と同様、本発明の樹脂組成物の耐水性も飛躍的に向上することができるため、各種放熱部材を形成する上で非常に有用である。
【0041】
使用される樹脂は、特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂等があげられる。これらのうち、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶ポリマーが好ましい。また、これらの樹脂には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤等を配合することができる。
【0042】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂等があげられる。
【0043】
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等があげられる。
【0044】
シリコーン樹脂としては、ミラブル型シリコーンゴム、縮合型液状シリコーンゴム、付加型液状シリコーンゴム、UV硬化型シリコーンゴム等があげられ、付加型液状シリコーンゴムが好ましい。また、1液型及び2液型のシリコーンゴムのいずれでもよいが、2液型のシリコーンゴムが好ましい。
【0045】
これらの樹脂組成物には、上記の被覆MgO粉末の他に、充填材を含有することができる。充填材としては、特に限定されるものではなく、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等があげられる。また必要に応じて離型剤、難燃剤、着色剤、低応力付与剤等を適宜含有することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、耐水性を飛躍的に向上することができるため、各種放熱部材を形成する上で非常に有用である。用途としては、例えば、電気・電子、自動車用途をはじめ広範囲な分野で使用することができる。電気・電子分野においては、パソコン、携帯電話用コネクタ、光ピックアップ、パワーモジュール向け部品等に使用することができ、また、パワーモジュールなどのような電気・電子分野で開発された技術は、自動車用途においても使用することができる。
【0047】
具体的には、樹脂組成物を用いた放熱部材として例えば放熱シート、放熱スペーサもしくは放熱グリース等があげられる。放熱シートは、発熱性電子部品、電子デバイスから発生した熱を除去するための電気絶縁性の熱伝導性シートであり、シリコーンゴムに熱伝導性フィラーを充填して製造され、主として放熱フィン又は金属板に取り付けて用いられる。放熱グリースは、シリコーンゴムの代わりにシリコーンオイルを用いた以外は放熱シートと同じである。放熱スペーサは、発熱性電子部品、電子デバイスから発生した熱を電子機器のケース等に直接伝熱するための、発熱性電子部品、電子デバイスとケースの間のスペースを埋める厚みを有したシリコーン固化物である。また、本発明の液晶ポリマー樹脂組成物は、機械的特性を活かしてAV機器やOA機器部品、振動特性を活かしてCDピックアップなどの情報機器や音響製品、はんだ耐熱性を活かして表面実装電子部品、さらに、優れた熱伝導性と絶縁性を活かし、その応用展開は進んでいる。
【0048】
次いで、本発明の被覆MgO粉末の製造方法について説明する。本発明の被覆酸化マグネシウム粉末の製造は、まず、MgO粉末の表面に複酸化物の被覆層を有するMgO粉末を製造することにより実施される。
【0049】
まず、MgO粉末表面に複酸化物を形成するために使用する化合物(複酸化物原料化合物)を存在させる。複酸化物原料化合物は、アルミニウム化合物、鉄化合物、ケイ素化合物及びチタン化合物からなる群から選択される1以上の化合物であることが好ましい。化合物の形態は限定されないが、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、オキシ塩化物、水酸化物、酸化物が用いられる。この化合物の具体例としては、ヒュームドシリカ、硝酸アルミニウム、硝酸鉄などをあげることができる。
【0050】
複酸化物原料化合物を、例えば、それらの化合物をMgO粉末に湿式添加したのち、攪拌混合することにより、MgO粉末表面に付着させる。
【0051】
次に、複酸化物原料化合物が表面に付着したMgO粉末を、高温で、例えば、LPGと酸素との燃焼により形成された高温火炎中で溶融することにより、MgO粉末を球状化し、表面に複酸化物被覆層を形成する。また、複酸化物原料化合物が表面に付着したMgO粉末を、複酸化物の融点以下の温度で焼成することにより、複酸化物被覆層を形成することも可能である。
【0052】
MgO粉末に対するこれらの化合物の配合量は、最終的に得られる被覆MgO粉末の複酸化物の含有量がMgOに対して、5〜50質量%となるように決定することが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
【0053】
次に、このようにして得られた複酸化物被覆MgO粉末に対して、所定量のリン化合物を添加し、攪拌及び焼成するという表面処理を行なうことによって、複酸化物被覆MgO粉末表面にさらにリン酸マグネシウム系化合物による被覆層を形成する。
【0054】
この表面処理に使用するリン化合物としては、リン酸、リン酸塩、酸性リン酸エステルなどをあげることができ、これらは単独で使用しても、また、2種以上を同時に使用してもよい。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムなどがあげられる。また、酸性リン酸エステルとしては、例えば、イソプロピルアシッドホスフェート(PAP)、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェートなどがあげられる。中でも、PAPは後述する表面処理工程における熱処理の際に、MgOと反応してリン酸マグネシウム系化合物よりなる耐水性に優れた被覆層を容易に形成しうるという点、及び、炭素数が少ないため焼成時に有機分の残留が少ないという点で好ましい。
【0055】
上記の表面処理工程におけるリン化合物の添加量は、被覆MgO粉末の表面に生成するリン酸マグネシウム系化合物被覆層の耐水性を向上させるという観点から、被覆MgO粉末に対するリン酸マグネシウム系化合物の含有量が、リンに換算して全体の0.1〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、0.2〜5質量%、さらに好ましくは、0.2〜3質量%である。
【0056】
本発明の製造方法におけるリン化合物による表面処理は、被覆MgO粉末に所定量のリン化合物を添加し、例えば、5〜60分間攪拌後、300℃以上の温度で、0.5〜5時間焼成することにより実施される。焼成温度が低いと、例えばリン化合物としてPAPを使用した場合に有機分が残留し、リン酸マグネシウム系化合物による被覆層が生成しにくくなる。また、焼成温度が高いと、得られた被覆層の耐水性が低下する。好ましい焼成温度は、300〜900℃であり、さらに好ましい焼成温度は、500〜700℃である。
【0057】
この表面処理における焼成工程により、被覆MgO粉末の表面に付着したリン化合物が、MgO粉末表面の、特に複酸化物被覆層が形成されていないか、もしくは、複酸化物被覆層が非常に疎である領域のMgOと反応して、耐水性に優れたリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層となる。
【0058】
この複酸化物被覆層とリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末の表面に、さらに有機シリケート被覆層を形成することにより、耐水性がさらに向上し、アルカリ溶出を抑制した被覆MgO粉末を得ることができる。有機シリケート被覆層を形成するためには、まず、有機シリケート処理を行なう。有機シリケート処理は、被処理MgO粉末に対して有機シリケートを混合する処理である。具体的には、被処理MgO粉末に対して有機シリケートを所定量(例えば6質量%程度)添加し、所定攪拌時間(例えば10分間程度)攪拌処理した後、所定の処理温度で所定の乾燥時間乾燥する処理である。処理温度は100〜200℃が好ましく、150℃程度、すなわち140〜160℃が更に好ましい。乾燥時間は0.5〜5時間が好ましく、2時間程度(1時間半〜2時間半)が更に好ましい。
【0059】
有機シリケート処理を行なうための有機シリケートとしては、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケートなどを用いることができるが、特にエチルシリケートを用いて処理することが好ましい。
【0060】
また、さらに、本発明の被覆MgO粉末を樹脂に含有させることにより、本発明の樹脂組成物を製造することができる。含有させるための方法としては、攪拌等の公知の技術を用いることができる。充填した樹脂組成物の耐水性も飛躍的に向上することができるため、各種放熱部材を形成する上で非常に有用である。
【実施例】
【0061】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
合成例1(複酸化物被覆層の形成)
結晶子径が58.3×10−9mの単結晶の集合体であるMgO粉末(タテホ化学工業株式会社製KMAO−H)を、衝撃式粉砕機を用いて、粒径100×10−6m以下に粉砕した。ヒュームドシリカ(純度99.9質量%以上、比表面積200±20m/g)を、MgOに対して混合比が10質量%になるように湿式添加し、400〜500rpmで10分間攪拌混合した。攪拌混合後、ろ過、脱水して得られたケーキを、乾燥機を用いて、130℃で一晩乾燥した。乾燥したケーキをサンプルミルで解砕して、原料のMgO粉末と同程度の粒径に調整し、シリカを表面に存在させたMgO粉末を得た。この粉末を、LPGと酸素との燃焼により形成された高温火炎中に供給し、溶融・球状化処理を行い、フォルステライト(MgSiO)で被覆されたMgO粉末を得た。
【0063】
合成例2(リン酸マグネシウム系化合物被覆層の形成)
合成例1で調製したフォルステライトで被覆されたMgO粉末をヘンシェルミキサーに入れ、リン酸マグネシウム系化合物の一種であるPAPをMgO粉末に対して6質量%添加し、10分間攪拌処理した後、500℃で1時間焼成し、リン酸マグネシウム系化合物被覆層をさらに有するMgO粉末を得た。この粉末のX線回折パターンを粉末X線回折法により測定したところ、リン酸マグネシウム系化合物被覆層の組成は、Mgであった。
【0064】
実施例1
合成例2で作製した複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末に対してエチルシリケートを5質量%添加し、10分間攪拌処理した後、処理温度150℃で2時間乾燥処理し、有機シリケート処理した被覆酸化マグネシウム粉末を得た。その粉末についてアルカリ溶出評価試験を実施し、その結果を表1に示す。なお、アルカリ溶出評価試験は以下の方法で行なった。250mlビーカにイオン交換水100mlと試料5gを入れ、250rpmで30分間攪拌した。攪拌後、pHメータでpHを測定し、イオン交換水に対するアルカリ溶出性を確認した。
【0065】
実施例2
合成例2で作製した複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末に対してエチルシリケートを2質量%添加した点を除いて、実施例1と同様にして、有機シリケート処理した被覆酸化マグネシウム粉末を得た。アルカリ溶出評価試験結果を表1に示す。
【0066】
実施例3
合成例2で作製した複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末に対してエチルシリケートを7.5質量%添加した点を除いて、実施例1と同様にして、有機シリケート処理した被覆酸化マグネシウム粉末を得た。アルカリ溶出評価試験結果を表1に示す。
【0067】
実施例4
合成例2で作製した複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末に対してエチルシリケートを10質量%添加した点を除いて、実施例1と同様にして、有機シリケート処理した被覆酸化マグネシウム粉末を得た。アルカリ溶出評価試験を実施した結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
合成例2で作製した複酸化物被覆層及びリン酸マグネシウム系化合物被覆層を有するMgO粉末を、エチルシリケート処理せずにそのまま使用した。アルカリ溶出評価試験を実施した結果を表1に示す。
【0069】
比較例2
合成例1で作製した複酸化物被覆層のみを有するMgO粉末に対してエチルシリケートを5質量%添加し、10分間攪拌処理した後、処理温度150℃で2時間乾燥処理し、エチルシリケート処理した酸化マグネシウム粉末を得た。アルカリ溶出評価試験を実施した結果を表1に示す。
【0070】
【表1】


【0071】
表1に示すように、アルカリ溶出評価値が比較例1ではpH9.64、比較例2ではpH10.46だった。これに対し、本発明の実施例ではpH9.16〜9・31の範囲とpHが比較例より低かったことから、本発明の被覆酸化マグネシウム粉末は、アルカリ溶出を抑制できたことが明らかである。
【出願人】 【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
【出願日】 平成18年9月25日(2006.9.25)
【代理人】 【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇

【識別番号】100075225
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 文雄

【識別番号】100113653
【弁理士】
【氏名又は名称】束田 幸四郎


【公開番号】 特開2008−74683(P2008−74683A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−258494(P2006−258494)