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【発明の名称】 アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法及びアルカリ土類金属炭酸塩粒子
【発明者】 【氏名】高田 宏

【要約】 【課題】粒子の形態制御がなされ、粒径分布の改良された針状または柱状の形態のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法とアルカリ土類金属炭酸塩粒子を提供する。

【解決手段】アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンを反応させて製造するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法において、核形成工程及び粒子成長工程とを有し、該核形成工程はアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とをダブルジェット法で反応容器内の液に添加、反応させて行われ、かつ核形成工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a1、b1、粒子成長工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a2、b2とし、該粒子成長工程終了時における長軸径と短軸径の成長速度比をVr=(a2−a1)/(b2−b1)で表したとき、Vrが2以上であることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとを反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を製造するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法において、核形成工程及び粒子成長工程とを有し、該核形成工程はアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とをダブルジェット法で反応容器内の液に添加、反応させて行われ、かつ核形成工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a1、b1、粒子成長工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a2、b2とし、該粒子成長工程終了時における長軸径と短軸径の成長速度比をVr=(a2−a1)/(b2−b1)で表したとき、Vrが2以上であることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子が、平均アスペクト比2以上の針状または柱状の形態を有することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項3】
前記核形成工程または前記粒子成長工程の少なくとも一部が、反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰な条件下で行われることを特徴とする請求項1または2に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項4】
前記核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部が、反応容器内の液がpH9以上の条件下で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項5】
前記核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部が、形態制御剤の存在下に行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項6】
前記核形成工程におけるアルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液の添加速度が、該核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たり0.1モル/min以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項7】
前記反応容器内の液が、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール及びi−プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項8】
前記粒子成長工程終了時のアルカリ土類金属炭酸塩粒子に対して、前記核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比が50モル%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項9】
前記粒子成長工程の少なくとも一部が、炭酸ガスを炭酸イオン源として用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法により形成されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子であって、平均アスペクト比が2以上の針状または柱状の形態を有し、かつ粒径分布が25%以下であることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度分布が改良された針状または柱状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法及びアルカリ土類金属炭酸塩粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、紙、ゴム、樹脂、プラスチック、塗料、化粧品、医薬品等の添加剤として、また、誘電セラミック材料や高温超伝導体材料の原材料等として広範囲の工業分野で利用されている。
【0003】
アルカリ土類金属炭酸塩粒子は、その物理的な性状によって発現する機能や特性が異なることが知られており、例えば、低光沢でウェットインキ着肉性等に優れた塗料の製造には紡錘状炭酸カルシウムが適し、高光沢で不透明性、インキ着肉性及びインキセット性に優れた塗料の製造には針状炭酸カルシウムが適するとされている。また、チタン酸ストロンチウムの製造原料に炭酸ストロンチウムを用いる場合、平均粒径0.8μm以下の粒子を用いると電気特性が改善されることが報告されている。更に、透明な樹脂やプラスチック材料に適用する場合には、透明性を損なわない為にμmオーダー以下の平均粒径を備えた粒子が求められる。このように、目的に応じて粒子形状や粒径を選択する必要があるため、形態が制御されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の工業的な利用価値は高い。それ故、特に工業的用途が広い針状や柱状等の異方性形状を有する粒子の形態を精密に制御し、かつ目的とする機能を十分に発現させるため、より均一な粒子、即ち粒径分布に優れた粒子を製造できる技術が求められている。
【0004】
一般に、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法は、炭酸ガス法と称されるアルカリ土類金属イオンを含む溶液に炭酸ガスを反応させて調製する「液−気」法と、アルカリ土類金属イオンを含む溶液と炭酸イオンを含む溶液を反応させて調製する「液−液」法に大別される。現在、工業的に行われているのは主に「液−気」法であり、アルカリ土類金属イオンを含む溶液としてはアルカリ土類金属水酸化物、具体的にはCa(OH)2やSr(OH)2、Ba(OH)2が使用されることが多いが、これらの水酸化物は溶解度が低いため通常スラリーとして用いられる。
【0005】
「液−気」法においては、水酸化カルシウムスラリーの温度と炭酸ガスの導入速度を3段階に変化させて、1〜2μmの柱状炭酸カルシウムを製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、炭酸化反応が30%に達する前に水溶性の単糖類や少糖類を水酸化カルシウムスラリーに添加し1〜2μmの紡錘状炭酸カルシウムを製造する方法(例えば、特許文献2参照。)、水酸化ストロンチウムスラリーの温度と炭酸ガスの導入速度を規定し、0.72μmの針状炭酸ストロンチウムを製造する方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、「液−気」法では、i)反応過程におけるスラリー中のアルカリ土類金属水酸化物の溶解速度や炭酸ガスのスラリーへの溶解速度を厳密に制御することが難しいこと、ii)反応過程において核形成と粒子成長が並行して進行すること、iii)核形成を水酸化ストロンチウムスラリー中で行うために、反応液を均一に攪拌することが困難で反応液内でのイオン濃度や過飽和度の不均化が生じ、さらに高い塩濃度の影響により生成した核が直ちに凝集すること等の課題によって、調製できるアルカリ土類金属炭酸塩粒子は粒径分布の広いものであった。
【0007】
上記i)の課題に対して、炭酸イオンを含む水溶液とカルシウム化合物の水溶液とを、超音波照射下で直接反応させて炭酸カルシウム結晶を製造する方法(例えば、特許文献4参照。)や、バリウム塩の水溶液と炭酸アルカリの水溶液を別々の供給口から同時に反応容器に添加することにより、針状の炭酸バリウムを製造する方法(例えば、特許文献5参照。)、同様にストロンチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉛の各イオンから選択される少なくとも1種を含む金属イオン源と炭酸源をダブルジェット法により液中で反応させて針状及び棒状の炭酸塩を製造する方法(例えば、特許文献6参照。)等の「液−液」法を用いた方法が提案されている。しかし、これら提案されている各方法もii)の課題を解決し得る技術手段を有していないため、製造できる粒子の粒径分布は依然として満足できるものではなかった。
【0008】
上記ii)の課題に対しては、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉛の各イオンから選択される少なくとも1種を含む金属イオン源の液中で炭酸源を反応させる製造方法で、粒子数増加工程と粒子体積増加工程を含みかつ炭酸源の添加速度及び時間を制御して反応させ、アスペクト比が1より大きい形状を有する炭酸塩の製造方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしこの方法では、イオン源の添加方法がシングルジェット法であるため、前記i)の課題を内包する製造方法であり、また、反応容器内に溜められた金属イオン源の中へ炭酸源を添加するため、前記iii)の課題が不可避となり、粒径分布の劣化を改良する技術としては不十分であった。
【特許文献1】特公昭55−51852号公報
【特許文献2】特開2001−139328号公報
【特許文献3】特開2006−124199号公報
【特許文献4】特開昭59−203728号公報
【特許文献5】特開平5−155615号公報
【特許文献6】特開2006−21988号公報
【特許文献7】特開2006−169038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の形態制御がなされたアルカリ土類金属炭酸の製造方法を提供することにある。より詳しくは、粒径分布の改良された針状または柱状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法とアルカリ土類金属炭酸塩粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルカリ土類金属の炭酸塩の核形成工程と粒子成長工程とを分離し、各工程毎に最適な条件を付与することによって、針状または柱状の異方性形状を有する粒子であっても、その平均アスペクト比や平均粒径、および粒径分布を制御できることを見出すに至った。本発明はこのような検討から得られた知見に基づき導かれたものである。
【0011】
従って、本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとを反応させてアルカリ土類金属炭酸塩粒子を製造するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法において、核形成工程及び粒子成長工程とを有し、該核形成工程はアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液とをダブルジェット法で反応容器内の液に添加、反応させて行われ、かつ核形成工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a1、b1、粒子成長工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a2、b2とし、該粒子成長工程終了時における長軸径と短軸径の成長速度比をVr=(a2−a1)/(b2−b1)で表したとき、Vrが2以上であることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0013】
2.前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子が、平均アスペクト比2以上の針状または柱状の形態を有することを特徴とする前記1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0014】
3.前記核形成工程または前記粒子成長工程の少なくとも一部が、反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰な条件下で行われることを特徴とする前記1または2に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0015】
4.前記核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部が、反応容器内の液がpH9以上の条件下で行われることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0016】
5.前記核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部が、形態制御剤の存在下に行われることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0017】
6.前記核形成工程におけるアルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液の添加速度が、該核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たり0.1モル/min以上であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0018】
7.前記反応容器内の液が、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール及びi−プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0019】
8.前記粒子成長工程終了時のアルカリ土類金属炭酸塩粒子に対して、前記核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比が50モル%以下であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0020】
9.前記粒子成長工程の少なくとも一部が、炭酸ガスを炭酸イオン源として用いることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法。
【0021】
10.前記1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法により形成されたアルカリ土類金属炭酸塩粒子であって、平均アスペクト比が2以上の針状または柱状の形態を有し、かつ粒径分布が25%以下であることを特徴とするアルカリ土類金属炭酸塩粒子。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の形態制御がなされたアルカリ土類金属炭酸の製造方法を提供することにある。より詳しくは、粒径分布の改良された針状または柱状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法とアルカリ土類金属炭酸塩粒子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態及びその詳細について説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものである。
【0024】
本発明において、粒子製造工程における核形成工程とは、核粒子を発生させるためのプロセスであり、粒子成長工程とは新たな核粒子の発生を殆ど伴わずに粒子を成長させるプロセスを意味する。換言すれば、核形成工程では粒子数は増加し、粒子成長工程では粒子数は実質的に増加しない(オストワルド熟成を施すと粒子数は減少する場合もある)。よって、両者は新たな核の発生の有無によって区別できる。ここで粒子数が実質的に増加しないとは、粒子成長工程終了時の粒子数が、粒子成長工程開始時(熟成工程を含む場合には熟成工程終了時)の125%以内であることを意味する。
【0025】
本発明に係るアルカリ土類金属炭酸塩は、アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンを反応させて形成することができる。アルカリ土類金属イオン源はCa2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+であり、Ca2+の場合の具体的な化合物としてはCaCl2、Ca(NO32、CaSO4、Ca(OH)2、Ca(CH3COO)2及びそれらの水和物等を挙げることができる。Sr2+、Ba2+、Ra2+の場合の具体的な化合物も同様である。炭酸イオン源として用いることができる化合物としては、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、(NH42NO3、NH4HCO3、(NH22CO等が挙げられる。本発明においては、アルカリ土類金属イオン源と炭酸イオン源のいずれも溶媒に対する溶解度が高く濃度の高い溶液を調製できる化合物がより好適である。
【0026】
前述のように、アルカリ土類金属の炭酸塩を製造する方法としては、アルカリ土類金属塩の溶液に炭酸ガスを導入し反応させる方法(「液−気」法)や、アルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液を反応させる方法(「液−液」法)が知られている。いずれの方法においても、アルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとが反応すると、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の析出が直ちに生じる。反応により生じたアルカリ土類金属炭酸塩微粒子は、生成直後から成長を始めるため、早く発生した核ほど成長しやすく、後から発生した核ほど成長しにくい。核形成工程中の成長は核の粒径分布を増大し、粒子成長終了後の粒径分布の劣化を招くため好ましくない。核形成工程中に起こる核の粒径分布の広がりには、核形成時間と核形成温度が大きく影響する。即ち、核形成工程の時間が長いと早く発生した核の成長によって分布が劣化し、また、核形成工程の温度が高いと核の成長速度が増大し早く発生した核と後から発生した核の粒径差が増幅される。
【0027】
本発明では、核形成工程の時間を任意に設定できるが、粒径分布の劣化を防止するために1800秒以内で終了することが好ましく、300秒以内がより好ましく、120秒以内がさらに好ましい。また、同様に核形成工程の温度も任意に設定できるが、核形成工程中の核粒子の成長を抑制するため、なるべく低い温度で行うことが好ましく、具体的には−10℃〜40℃の間で行うことが好ましい。さらに低い温度では、反応容器内の液が凍結したり、温度制御のために特殊な設備が必要となり生産コストが増大する。
【0028】
核形成の方法としてアルカリ土類金属塩の溶液中に炭酸ガスのみを導入する、いわゆる炭酸ガス法と、アルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液を同時に添加するダブルジェット法を選択できるが、本発明における核形成工程には、核発生を制御し易いダブルジェット法を適用することを特徴とする。ダブルジェット法では、撹拌混合装置内の過飽和度を高めて単位時間当たりの核発生数を増大することができるため、核形成工程の時間を短縮し核形成工程における分布劣化を改善することが可能となる。
【0029】
本発明に係るダブルジェット法とは、2種類の溶液を必要に応じて適当な送液装置等を用いて各々反応容器内の液の液面上または液中に滴下または噴射、あるいは注入することにより該容器内の液中で反応させる方法であり、本発明においてはアルカリ土類金属塩溶液及び炭酸塩溶液を添加液として用いることにより実施できる。
【0030】
ダブルジェット法では、送液装置等で添加液の添加速度を変更することによってモル添加速度を任意に設定したり変更したりすることができるが、モル添加速度が小さい場合には、単位時間当たりに形成される核粒子数が減少するため生産効率が低下し、添加時間を長くして形成される核粒子数を増やすと生成した核の成長が並行して生じるため粒径分布が劣化する。従って、本発明では前記核形成工程におけるモル添加速度を、該工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たり0.1モル/min以上に設定することが好ましい。さらに0.2〜4モル/minが好ましく、0.5〜2モル/minがより好ましい。モル添加速度が4モル/minより大きい場合には、反応容器内の攪拌効率が相対的に低下し不均一な核が生成したり、局所的な核密度の増加による凝集発生の懸念が増大する。
【0031】
本発明における粒子成長工程では、新たな結晶核が発生しないようにアルカリ土類金属イオンと炭酸イオンを反応させることが重要である。そのためには、粒子成長工程をダブルジェット法で実施する場合にはアルカリ土類金属塩の溶液と炭酸イオンを含む溶液の添加速度の調整が必要であり、炭酸ガス法で実施する場合には炭酸ガス導入速度の調整が必要である。なお、本発明では、核形成工程終了後に必要に応じて反応容器内の液温を核形成工程より高く保持する(熟成工程)こともできる。通常熟成工程では、粒径の小さな粒子が溶解し粒径の大きな粒子が成長する現象(オストワルド熟成)が起こる。従って、本発明においては、熟成工程を粒子成長工程の一部と見なすことができる。粒子成長工程は、粒子の成長速度を高めるために核形成工程と同等以上の温度で行うことが好ましく、具体的には0℃〜60℃の間で行うことが好ましい。0℃より低い温度では十分な粒子成長速度が得られないため粒子成長工程に長時間を要し、60℃以上では針状粒子または柱状粒子の直径が大きくなりアスペクト比を高めることが難しくなる。
【0032】
本発明でいうアスペクト比とは、針状または柱状の形態を有する粒子の長さ(長軸径)と直径(短軸径)との比(長軸径/短軸径)であり、平均アスペクト比とは300個以上の粒子について個々のアスペクト比を求めて得られた算術平均の値を意味する。平均アスペクト比を計算する際に長軸径や短軸径の平均値も求めることができる。本発明においては、針状または柱状の形態を有するアルカリ土類金属炭酸塩粒子が平均アスペクト比が2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、更に好ましくは5以上、50以下である。
【0033】
本発明のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法においては、形成工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a1、b1、粒子成長工程終了時の該アルカリ土類金属炭酸塩粒子の長軸径と短軸径の平均値を各々a2、b2とし、該粒子成長工程終了時における長軸径と短軸径の成長速度比をVr=(a2−a1)/(b2−b1)で表したとき、Vrが2以上であることを特徴とする。
【0034】
本発明においては、Vr=(a2−a1)/(b2−b1)は、粒子成長工程における成長速度比として定義する。アスペクト比の高い針状粒子または柱状粒子を得るためには、核形成工程でアスペクト比の高い核粒子を形成する方法と、粒子成長工程でアスペクト比を高める方法があるが、核形成段階でアスペクト比を高めようとすると粒径分布の劣化を伴う場合が多い。本発明においては、核形成工程において得られる核の特性として、アスペクト比よりも粒径分布がより重要である。これは、核形成段階でより均一な核を形成することが粒子成長後の粒径分布の向上に大きく寄与するためである。そのため、本発明においては核形成の段階では粒径分布が劣化しにくい低アスペクト比粒子であることが好ましく、粒子成長工程で短軸径の成長を抑制しつつ長軸径を選択的に成長させて高アスペクト比粒子を形成することが好ましい。
【0035】
本発明のアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造方法においては、上記で規定するVrが2以上であることを特徴とするが、好ましくは5以上であり、より好ましくは5以上、50以下であり、特に好ましくは5以上、10以下である。
【0036】
本発明において、アルカリ土類金属炭酸塩粒子の粒径は、粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径で表し、平均粒径とは300個以上の粒子について個々の粒径を求めて得られた算術平均の値を意味する。粒径分布は、平均粒径を求める際に用いた個々の粒径の標準偏差を平均粒径で除した値に100を乗じた値で表す。
【0037】
粒径分布[%]=粒径の標準偏差/平均粒径粒子×100
本発明は、粒径分布に優れたアルカリ土類金属炭酸塩粒子の製造に有用である。本発明のアルカリ土類金属炭酸塩粒子は、粒径分布が25%以下であることを特徴の1つとし、20%以下であることがより好ましく、更に好ましくは1%以上、20%以下である。
【0038】
また、平均粒径は250nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。粒径分布と同様の方法で長軸径及び短軸径の分布を定義した場合、長軸径の分布は40%以下が好ましく、30%以下であることがより好ましく、短軸径の分布は30%以下が好ましく、20%以下であることがより好ましい。また、長軸径の平均値は80〜500nmであることが好ましく、100〜350nmがより好ましく、100〜250nm以下がさらに好ましい。短軸径の平均値は10〜80nmが好ましく、15〜70nmがより好ましく、20〜60nmがさらに好ましい。
【0039】
上記の平均アスペクト比や平均粒径、成長速度比の算出に必要となる個々の粒子の長軸や短軸、投影面積は電子顕微鏡像から測定することができ、必要に応じて画像解析装置を用いて求めることもできる。
【0040】
本発明においては、核形成工程と粒子成長工程で消費される原料(アルカリ土類金属塩及び炭酸塩)のモル比を任意に変えることができるが、平均アスペクト比が2以上の針状粒子または柱状粒子を形成するには、粒子形成終了時のアルカリ土類金属炭酸塩粒子に対する核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比を少なくする方が有利である。これは、針状粒子または柱状粒子の異方形状の形成には粒子成長工程の寄与が大きいためである。従って、本発明では、核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩のモル比を50モル%以下に設定することが好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下が更に好ましく、特に好ましくは、1モル%以上、20%モル以下である。
【0041】
本発明では、反応容器内の液がアルコールを含むことが好ましい。反応容器内の液にアルコールを添加するのは核形成工程、粒子成長工程のいずれの時点でも良いが、少なくとも粒子成長工程開始前に添加することが好ましく、核形成工程開始前に反応容器内の液にアルコールを含有させておくことがより好ましい。本発明で用いるアルコールは水と任意の比率で混じり合うことができるものであり、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール及びi−プロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。アルコールの添加量としては、反応容器内の液の5〜80体積%が好ましく、5〜50体積%がより好ましく、10〜50体積%がさらに好ましい。
【0042】
本発明では、粒子凝集性を改良するために核形成工程、粒子成長工程の少なくとも一部を、反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰となる条件下で行うことが好ましい。反応容器内の液がアルカリ土類金属イオン過剰となるように操作する方法に、特に制限はないが、ダブルジェット法で添加されるアルカリ土類金属塩溶液とは別に必要量のアルカリ土類金属塩またはその溶液を反応容器内に添加する方法や、ダブルジェット法で添加されるアルカリ土類金属塩溶液と炭酸塩溶液の流量のバランスで調整する方法が好ましい。アルカリ土類金属イオンの過剰量としては、反応容器内の液に溶解しているアルカリ土類金属イオンのモル濃度として0.001〜0.5モル/Lが好ましく、0.01〜0.5モル/Lがより好ましく、0.01〜0.2モル/Lがさらに好ましい。この範囲をはずれると凝集発生の懸念が増大する。
【0043】
本発明においては、反応容器内の液のpHを任意に設定することができるが、粒子の凝集抑制及び針状粒子または柱状粒子を形成するための異方成長性の観点から、核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部をpH9以上の条件下で行うことが好ましい。さらにはpH値として9〜13.5が好ましく、pH値として10〜13が特に好ましい。これより高いpH値にしても凝集抑制や異方成長性に対する効果は変わらない。
【0044】
本発明では、針状粒子または柱状粒子を形成するために、核形成工程または粒子成長工程の少なくとも一部を形態制御剤の存在下で実施することが好ましい。形態制御剤として用いることができる化合物としてはアミン類を挙げることができ、一級アミン類やアミノアルコール類は本発明で好ましく用いることができる。
【0045】
本発明では、粒子成長工程の一部で炭酸ガスを炭酸源として用いることが好ましい。この場合、粒子凝集の懸念を回避するために、熟成工程終了後または粒子成長工程の途中段階から適用することが好ましい。具体的な態様として、核形成工程及び熟成工程終了後の反応液にアルカリ土類金属の水酸化物を添加してスラリーを形成し、該スラリー中に炭酸ガスを導入して核粒子を成長させる方法を挙げることができる。この方法ではアルカリ土類金属塩のスラリーを用いるため、実効的に高濃度の溶液を用いることができ生産性の向上に有効である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記実施例における各種条件は、本発明の特徴や趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0047】
実施例1
《アルカリ土類金属炭酸塩粒子の調製》
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製:本発明〕
容量8Lのステンレス製の反応容器に、エタノール800mlと水を加えて4000mlの水溶液(溶液A1)を調製した。また、塩化ストロンチウム6水和物から調製した1.0モル/L水溶液1000ml(溶液B1)と、炭酸ナトリウムから調製した1.0モル/L水溶液1000ml(溶液C1)を準備した。
【0048】
〈核形成工程〉
反応容器内の溶液A1を5℃に保持し800rpmで攪拌しながら、5℃に冷却した各々250mlの溶液B1と溶液C1とを、ダブルジェット法を用いて等しい添加速度で溶液A1の液中に1分間かけて添加した。核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たりのモル添加速度としては、1モル/minに相当する。
【0049】
〈熟成工程〉
続いて、上記反応容器内の反応液を攪拌しながら30分間で30℃に昇温し、そのまま10分間保持した。
【0050】
〈粒子成長工程〉
引き続き、30℃に保持した反応液を攪拌しながら、30℃に保持した溶液B1と溶液C1の残量750mlを、添加終了時の添加速度が添加開始時の2.1倍となるようにダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に180分間で添加した。なお、核形成工程終了時、粒子成長工程間と粒子成長工程終了後に、それぞれ反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長工程での新たな核の生成は認められなかった。また、粒子成長工程における成長速度比は7.9であった。
【0051】
粒子成長工程終了後の反応液をフィルターで濾過し、取り出された反応物に数回水洗処理を行い、最後にエタノールで洗った後乾燥した。得られた反応物のX線回折スペクトルを測定し、反応物が炭酸ストロンチウムであることを同定した。
【0052】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子2の調製:本発明〕
反応容器に、エタノール800mlと塩化ストロンチウム6水和物を0.1モル含む水を加えて4000mlの水溶液(溶液A2)を調製した。また、塩化ストロンチウム6水和物から調製した1.0モル/L水溶液900ml(溶液B2)と、炭酸ナトリウムから調製した1.0モル/L水溶液1000ml(溶液C2)を準備した。
【0053】
〈核形成工程及び熟成工程〉
上記アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製において、溶液A1、溶液B1、溶液C1の代わりに、溶液A2、溶液B2、溶液C2を用いた以外は同様にして、核形成工程及び熟成工程を行った。
【0054】
〈粒子成長工程〉
熟成工程に引き続き、30℃に保持した反応液を攪拌しながら、30℃に保持した溶液B2の残量650mlと溶液C2の残量750mlを、溶液C2の添加終了時の添加速度が添加開始時の2.1倍となるように、ダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に180分間で添加した。溶液B2も溶液C2と同じ流速で添加し、溶液C2に先立ち添加を終了した。
【0055】
核形成工程終了時、粒子成長工程間と粒子成長工程終了後に、それぞれ反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長工程での新たな核の生成は認められなかった。また、粒子成長工程における成長速度比は8.8であった。
【0056】
粒子成長工程終了後の反応液をフィルターで濾過し、取り出された反応物に数回水洗処理を行い、最後にエタノールで洗った後乾燥した。得られた反応物のX線回折スペクトルを測定し、反応物が炭酸ストロンチウムであることを同定した。
【0057】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子3の調製:本発明〕
上記アルカリ土類金属炭酸塩粒子2の調製において、溶液A2の代わりに、以下に示す溶液A3を使用した以外は同様にして、炭酸ストロンチウム粒子を調製した。
【0058】
核形成工程終了時、粒子成長工程間と粒子成長工程終了後に、それぞれ反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長工程での新たな核の生成は認められなかった。また、粒子成長工程における成長速度比は14.5であった。
【0059】
〈溶液A3の調製〉
エタノール800mlに形態制御剤としてエチレンジアミンを0.3モル加え、さらに塩化ストロンチウム6水和物を0.1モル含む水を加えて4000mlの水溶液を調製し、これを溶液A3とした。溶液A3のpH値は約12であった。
【0060】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子4の調製:本発明〕
上記アルカリ土類金属炭酸塩粒子3の調製において、核形成工程及び粒子成長工程を下記に示す条件に変更した以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子4を調製した。
【0061】
核形成工程終了時、粒子成長工程間と粒子成長工程終了後に、それぞれ反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長工程での新たな核の生成は認められなかった。また、粒子成長工程における成長速度比は5.3であった。
【0062】
〈核形成工程〉
反応容器内の溶液A3を5℃に保持し800rpmで攪拌しながら、5℃に冷却した各々500mlの溶液B2と溶液C2とを、ダブルジェット法を用いて等しい添加速度で溶液A3の液中に2分間で添加した。
【0063】
〈粒子成長工程〉
熟成工程に引き続き、30℃に保持した反応液を攪拌しながら、30℃に保持した溶液B2の残量400mlと溶液C2の残量500mlを、溶液C2の添加終了時の添加速度が添加開始時の2.3倍となるようにダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に85分間で添加した。溶液B2も溶液C2と同じ流速で添加し、溶液C2に先立ち添加を終了した。
【0064】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子5の調製:本発明〕
上記アルカリ土類金属炭酸塩粒子3の調製において、核形成工程及び粒子成長工程を下記に示す条件に変更した以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子5を調製した。
【0065】
核形成工程終了時、粒子成長工程間と粒子成長工程終了後に、それぞれ反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長工程での新たな核の生成は認められなかった。また、粒子成長工程における成長速度比は34.8であった。
【0066】
〈核形成工程〉
反応容器内の溶液A3を5℃に保持し800rpmで攪拌しながら、5℃に冷却した各々125mlの溶液B2と溶液C2を、ダブルジェット法を用いて等しい添加速度で溶液A3の液中に30秒間で添加した。
【0067】
〈粒子成長工程〉
熟成工程に引き続き、30℃に保持した反応液を攪拌しながら、30℃に保持した溶液B2の残量775mlと溶液C2の残量875mlを、溶液C2の添加終了時の添加速度が添加開始時の3.6倍となるようにダブルジェット法を用いて反応容器内の液中に240分間で添加した。溶液B2も溶液C2と同じ流速で添加し、溶液C2に先立ち添加を終了した。
【0068】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子6の調製:比較例〕
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製において、核形成工程における溶液B1と溶液C1の添加時間を20分間とした以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子6を調製した。核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たりのモル添加速度は0.05モル/minに相当する。
【0069】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子7の調製:比較例〕
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製において、下記の核形成工程に変更した以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子7を調製した。
【0070】
〈核形成工程〉
反応容器内の溶液A1を5℃に保持し800rpmで攪拌しながら、5℃に保持した各々1000mlの溶液B1と溶液C1を、ダブルジェット法を用いて等しい添加速度で溶液A1の液中に100分間で添加した。核形成工程で形成されるアルカリ土類金属炭酸塩1モル当たりのモル添加速度としては0.01モル/minに相当する。
【0071】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子8の調製:比較例〕
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製において、粒子成長工程における溶液B1と溶液C1の添加時間を40分間に短縮した以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子8を調製した。粒子成長工程開始前と粒子成長工程間、及び粒子成長工程終了後に反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、粒子成長と並行して新たな核が生成されていることが確認された。
【0072】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子9の調製:比較例〕
前記アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製において、核形成工程に先立ち反応容器内の溶液A1に溶液B1を全量添加し、以降の核形成工程と粒子形成工程は溶液C1だけをシングルジェット法で添加した以外は同様にして、アルカリ土類金属炭酸塩粒子9を調製した。
【0073】
《アルカリ土類金属炭酸塩粒子の特性値の測定》
〔粒子形状の観察〕
上記調製した各アルカリ土類金属炭酸塩粒子について、走査型電子顕微鏡にて約200個の粒子を撮影し、その形状を観察し、主体を占める粒子の形状を、針状粒子、球状粒子、不定形のイガグリ状粒子に分類した。
【0074】
〔平均アスペクト比の測定〕
上記調製した各アルカリ土類金属炭酸塩粒子500個について、走査型電子顕微鏡を用いて粒子の長さ(長軸径)と直径(短軸径)を測定し、その比(長軸径/短軸径)をアスペクト比として算出し、その平均値を求め、これを平均アスペクト比とした。
【0075】
〔成長速度比Vrの測定〕
走査型電子顕微鏡を用いて、各アルカリ土類金属炭酸塩粒子調製時の核形成工程終了時の粒子の長軸径平均値と短軸径平均値a1,b1と、粒子成長工程終了時の粒子の長軸径平均値と短軸径平均値a2,b2を、それぞれ粒子200個について測定し、下式に従って、成長速度比Vrを測定した。
【0076】
成長速度比Vr=(a2−a1)/(b2−b1
〔平均粒径の測定〕
上記調製した各アルカリ土類金属炭酸塩粒子を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、粒子の投影面積に等しい面積を有する円の直径を粒径と定義し、300個の粒子について測定した個々の粒径の算術平均値を求め、これを平均粒径とした。
【0077】
〔粒径分布の測定〕
上記平均粒径の測定で求めた個々の粒径の標準偏差を平均粒径で除した値に100を乗じた値を求め、これを粒径分布とした。
【0078】
粒径分布[%]=粒径の標準偏差/平均粒径粒子×100
以上により得られた結果を、表1に示す、なお、アルカリ土類金属炭酸塩粒子8、9は不均一な粒子形状を呈しているため、平均アスペクト比やVr、平均粒径、粒径分布の測定を行うことができなかった。また、アルカリ土類金属炭酸塩粒子7は、核形成工程と粒子成長工程が分離されていないため、Vrを求めることができない。
【0079】
【表1】


【0080】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件に従って調製したアルカリ土類金属炭酸塩粒子1は、アスペクト比が高く、粒径分布に優れたアルカリ土類金属炭酸塩であることが分かる。これに対し、比較例であるアルカリ土類金属炭酸塩粒子6は、核形成工程におけるモル添加速度が0.05モル/minと低く、添加に時間を要している(20分間)ため、核形成工程で生成された核の成長が並行して生じており、Vrが小さいために平均アスペクト比が低く、さらに粒径分布の劣化も招いている。また、アルカリ土類金属炭酸塩粒子7は、核形成工程と粒子成長工程が分離されていないため、針状粒子と球状粒子が混在した不均一な粒子形状となり、加えて粒径分布の劣化を引き起こしている。また、アルカリ土類金属炭酸塩粒子8は、粒子成長工程における添加速度を適切に制御していないために粒子成長工程でも核の生成が起こり、柱状粒子と球状粒子が混在した不均一な粒子形状となり、加えて粒径分布の劣化を引き起こしている。
【0081】
以上の結果は、粒径分布の改良には核形成工程と粒子成長工程をその目的通りに明確に機能分離することが重要性であることを示している。
【0082】
アルカリ土類金属炭酸塩粒子9は、アルカリ土類金属炭酸塩粒子1のダブルジェット法をシングルジェット法に変更して粒子調製を行ったものであるが、成長後の粒子はアルカリ土類金属炭酸塩粒子1のものとは異なり、針状粒子にイガグリ状の粒子が混在したものであった。イガグリ状の粒子は、核形成工程で核の凝集が発生し、この凝集体が粒子成長工程で針状成長したものと思われる。アルカリ土類金属炭酸塩粒子9における核形成工程での核の凝集発生は、反応溶液内に予め塩化ストロンチウムを全量添加したために、核形成が塩濃度の高い条件下で行われたことが原因と推定される。
【0083】
本発明であるアルカリ土類金属炭酸塩粒子1と2の比較から、粒子調製をアルカリ土類金属イオン過剰な条件下で行うことにより、粒子凝集性が改良され小粒径化及び粒径分布の改良に結びついていることが理解できる。また、アルカリ土類金属炭酸塩粒子1と3の比較から、本発明の製造方法に形態制御剤を適用することにより、アスペクト比を顕著に高められることが判る。またこの場合、高アスペクト比化に伴う粒径分布の劣化は殆ど認められない。
【0084】
アルカリ土類金属炭酸塩粒子1、4及び5の比較では、本発明の製造方法においては、核形成工程と粒子成長工程のモル比の配分により、アスペクト比の調整が可能であることが示されている。尚、実施例4のように、核形成工程のモル比が50%を超えるような場合には粒子成長後のアスペクト比が低下し、針状または柱状粒子に期待される特性を十分に得ることが難しくなる。
【0085】
実施例2
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子10の調製〕
〈核形成工程及び熟成工程〉
アルカリ土類金属炭酸塩粒子1の調製と同様に実施した。
【0086】
〈粒子成長工程〉
熟成工程に引き続き、30℃に保持した反応液を攪拌しながら、水酸化ストロンチウム8水和物0.75モルを反応容器に添加した。反応液は炭酸ストロンチウム粒子と水酸化ストロンチウムの未溶解物を含むスラリーとなった。この反応液を攪拌しながら、炭酸ガスと窒素ガスの混合ガス(CO2:N2=3:7)を一定の流速でスラリー中に導入し炭酸化反応を行った。粒子成長工程終了後に反応液を採取し電子顕微鏡を用いて確認したところ、形成された粒子の形態は実施例1の粒子と同等であり、粒子成長工程で新たな核が生成されていないことが確認された。
【0087】
粒子成長工程終了後の反応液の体積は、実施例1に記載のアルカリ土類金属炭酸塩粒子1に対して減少しており、同一の製造装置で粒子形成を行う場合、得られる粒子の特性を変えることなく、生産性を30%向上できることが確認された。
【0088】
〔アルカリ土類金属炭酸塩粒子11の調製〕
上記アルカリ土類金属炭酸塩粒子10の調製において、使用した塩化ストロンチウム6水和物を、塩化バリウムまたは塩化カルシウムに変更して、各々塩化バリウムと炭酸カルシウムを調製した。得られた粒子は、上記炭酸ストロンチウム粒子であるアルカリ土類金属炭酸塩粒子10と同様に針状または柱状の形状を示し、かつ粒径分布に優れることが確認された。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタホールディングス株式会社
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−74634(P2008−74634A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−252438(P2006−252438)