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【発明の名称】 表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子及びその樹脂組成物
【発明者】 【氏名】藤田 直子

【氏名】加和 学

【氏名】相馬 実

【氏名】小田 崇

【氏名】海野 春生

【氏名】諸星 勝己

【氏名】伊藤 智啓

【氏名】甲斐 康朗

【氏名】村松 宏信

【要約】 【課題】ポリカーボネート樹脂の分子量を特定の水準以上に保持しつつ、樹脂中に良好な分散状態で均一に配合することができる表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子と、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む高透明性で機械的強度、寸法安定性、熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する。

【構成】分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子。X線光電子分光装置を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射したとき、得られる光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、及びハロゲン原子の含有量(atm%)はそれぞれ2以で、得られるAl2pとSi2sの光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、アルミニウム原子に対する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子であって、
X線光電子分光装置を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られる光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、前記表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子中の窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、及びハロゲン原子の含有量(atm%)がそれぞれ2以下であり、かつ、
X線光電子分光装置を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られるAl2pとSi2sの光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、アルミニウム原子に対する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30である表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子。
【請求項2】
分散剤が、有機スルホン酸、有機燐酸及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子。
【請求項3】
分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む請求項1又は2に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子。
【請求項4】
シリル化剤残基が、アルキル基及び/又はアリール基を有している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む有機ゾル。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項7】
分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子と、ポリカーボネート樹脂とを含む樹脂組成物であって、JIS K7105の方法で測定されたヘーズ(曇価)が40%以下である樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物中のアルミニウム原子に対するシリル化剤に由来する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30である請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む請求項7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を有する表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法において、シリル化剤が一官能シリル化剤及び/又は二官能シリル化剤であり、かつシリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子の原子比が、それぞれ0.05以下である表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
シリル化剤が、下記一般式(1)で表されるシリル化剤及び/又は下記一般式(2)で表されるシリル化剤である請求項10に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
SiX (1)
SiX (2)
(式(1),(2)中、R〜Rは各々独立してアルキル基又はアリール基を表し、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基、又は水酸基を表す。)
【請求項12】
X,X,Xが各々独立して水素原子、アセトキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は水酸基である請求項11に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
シリル化剤が一般式(1)で表される請求項11又は12に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対するシリル化剤の使用量が0.001〜50重量部の範囲である請求項10ないし13のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を気相で行う請求項10ないし14のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理する工程を含む請求項10ないし15のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む請求項10ないし16のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を有する有機ゾルの製造方法において、シリル化剤が一官能シリル化剤及び/又は二官能シリル化剤であり、かつシリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子の原子比が、それぞれ0.05以下である有機ゾルの製造方法。
【請求項19】
シリル化剤が、下記一般式(1)で表されるシリル化剤及び/又は下記一般式(2)で表されるシリル化剤である請求項18に記載の有機ゾルの製造方法。
SiX (1)
SiX (2)
(式(1),(2)中、R〜Rは各々独立してアルキル基又はアリール基を表し、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基、又は水酸基を表す。)
【請求項20】
X,X,Xが各々独立して水素原子、アセトキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は水酸基である請求項19に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項21】
シリル化剤が一般式(1)で表される請求項19又は20に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項22】
酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対するシリル化剤の使用量が0.001〜50重量部の範囲である請求項18ないし21のいずれか1項に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項23】
酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を気相で行う請求項18ないし22のいずれか1項に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項24】
酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理する工程を含む請求項18ないし23のいずれか1項に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項25】
分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む請求項18ないし24のいずれか1項に記載の有機ゾルの製造方法。
【請求項26】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いた成形体。
【請求項27】
酸化アルミニウムナノ粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物の成形体であって、ヘーズ(曇価)が5%以下であり、引張弾性率が5GPa以上である成形体。
【請求項28】
酸化アルミニウムナノ粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物の成形体であって、ヘーズ(曇価)が5%以下であり、線熱膨張係数が45ppm/K以下である成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子及びその製造方法と、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む樹脂組成物と、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む有機ゾル及びその製造方法に関する。詳しくは本発明は、特にポリカーボネート樹脂の充填剤として用いた場合に、透明性、機械的物性に優れた樹脂組成物を提供し得る表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子及びその製造方法と、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む有機ゾル及びその製造方法に関する。
本発明はまた、この表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含むポリカーボネート樹脂組成物の成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂の機械的強度・寸法安定性・耐熱性等を向上させる方法として、樹脂にフィラー(充填剤)を添加する方法が試みられている。
【0003】
しかし、樹脂の強化材として広く利用されているガラス繊維では、樹脂との屈折率差及びガラス繊維のサイズの問題から、透明な材料を得ることはできないため、自動車用窓材のような透明性を要求される材料には、ガラス繊維を用いることは困難であった。
【0004】
この課題を解決するためには、より樹脂との屈折率差が小さく、より微細で、樹脂に対して均一に分散させることができるフィラーが望まれる。
酸化アルミニウムはポリカーボネート樹脂との屈折率差が小さいため、透明性に優れた樹脂組成物を得ることが期待される。
【0005】
酸化アルミニウムを樹脂フィラーとする技術としては、従来、様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1では、長軸長さ1〜10μm、アスペクト比が40〜70の針状ベーマイト及び針状アルミナを、混練機で樹脂に溶融混練することにより樹脂組成物を製造しているが、用いる針状粒子のサイズが可視光線波長に比べて相当に大きく、また、分散性も十分でないため、十分な透明性を得るにはいたっていない。
【0006】
特許文献2,3には、酸化アルミニウムの針状ナノ粒子を用いた樹脂組成物が開示され、このうち、特許文献2では、ナノ粒子の酸化アルミニウム粒子とポリカーボネートとの樹脂組成物が高透明性で機械的強度に優れていることが報告されている。しかしながら、このものは、本発明者らの検討によれば、酸化アルミニウム粒子の添加量が少なく、またその分散性も不十分であるために、自動車用窓材用途などの低線熱膨張係数が要求される樹脂組成物としては未だ十分とはいい難かった。
【0007】
特許文献3には、針状ベーマイト粒子を表面処理なしで樹脂中に分散させることが開示されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、実質的に表面処理を施していない粒子をポリマー中に凝集塊を形成せずに分散させるためには、樹脂としては、ポリマー鎖中に強い極性基をもつ樹脂(例えば、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタンなど)に限られ、比較的極性の小さいポリカーボネート樹脂の場合には、粒子の凝集が避けらない。また、ベーマイト自体の触媒作用のため、ポリカーボネート樹脂の分子量低下を招いてしまい、機械的物性が大幅に低下するということが判明した。
【0008】
ところで、酸化アルミニウムを改質して有機溶媒中に分散させる方法として、酸化アルミニウムをスルホン酸で処理する方法が知られている(例えば、特許文献4)。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、スルホン酸処理ベーマイトをポリカーボネート樹脂と混合すると、やはりポリカーボネート樹脂の分子量低下を招いてしまうことが判明した。
【0009】
さらに、酸化アルミニウム表面をシランカップリング剤で処理して分散性を向上させる方法が、特許文献5に記載されているが、ここに開示されている三官能のシランカップリング剤で処理した場合には、樹脂組成物中のベーマイトの凝集が避けられず、結果として樹脂組成物の透明性が損なわれる。また、塩基性又は酸性の官能基を有するシランカップリング剤で処理したベーマイトをポリカーボネート樹脂に配合した場合には、ポリカーボネート樹脂の分子量を低下させてしまい、得られる樹脂組成物の機械的物性が損なわれることも判明した。
【0010】
このように、従来において、酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂組成物において、その特性改善のために様々な検討がなされているが、現状では、高透明性と寸法安定性と優れた機械的特性とを兼ね備えた樹脂組成物は未だ提供されていない。
【特許文献1】特開2003−54941号公報
【特許文献2】特開2006−62905号公報
【特許文献3】特表2005−528474号公報
【特許文献4】特表2003−517418号公報
【特許文献5】特開2004−149687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な課題は、高透明性と、寸法安定性と優れた機械的特性を兼ね備えるポリカーボネート樹脂組成物を実現すべく、ポリカーボネート樹脂の分子量を特定の水準以上に保持しつつ、ポリカーボネート樹脂中に良好な分散状態で均一に配合することができる表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子、及びその製造方法を提供することにある。
本発明はまた、このような表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む樹脂組成物及び有機ゾルと、この有機ゾルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子であって、X線光電子分光装置を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られる光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、前記表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子中の窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、及びハロゲン原子の含有量(atm%)がそれぞれ2以下であり、かつ、X線光電子分光装置を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られるAl2pとSi2sの光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、アルミニウム原子に対する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30であることを特徴とする。
【0013】
請求項2の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、請求項1において、分散剤が、有機スルホン酸、有機燐酸及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項3の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、請求項1又は2において、分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む。
【0015】
請求項4の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、請求項1ないし3のいずれか1項において、シリル化剤残基が、アルキル基及び/又はアリール基を有していることを特徴とする。
【0016】
本発明(請求項5)の有機ゾルは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明(請求項6)の樹脂組成物は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明(請求項7)の樹脂組成物は、分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子と、ポリカーボネート樹脂とを含む樹脂組成物であって、JIS K7105の方法で測定されたヘーズが40%以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項8の樹脂組成物は、請求項7において、樹脂組成物中のアルミニウム原子に対するシリル化剤に由来する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30であることを特徴とする。
【0020】
請求項9の樹脂組成物は、請求項7又は8において、分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む。
【0021】
本発明(請求項10)の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を有する表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法において、シリル化剤が一官能シリル化剤及び/又は二官能シリル化剤であり、かつシリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子の原子比が、それぞれ0.05以下であることを特徴とする。
【0022】
請求項11の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項10において、シリル化剤が、下記一般式(1)で表されるシリル化剤及び/又は下記一般式(2)で表されるシリル化剤であることを特徴とする。
SiX (1)
SiX (2)
(式(1),(2)中、R〜Rは各々独立してアルキル基又はアリール基を表し、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基、又は水酸基を表す。)
【0023】
請求項12の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項11において、X,X,Xが各々独立して水素原子、アセトキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は水酸基であることを特徴とする。
【0024】
請求項13の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項11又は12において、シリル化剤が一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0025】
請求項14の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項10ないし13のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対するシリル化剤の使用量が0.001〜50重量部の範囲であることを特徴とする。
【0026】
請求項15の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項10ないし14のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を気相で行うことを特徴とする。
【0027】
請求項16の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項10ないし15のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理する工程を含むことを特徴とする。
【0028】
請求項17の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法は、請求項10ないし16のいずれか1項において、分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む。
【0029】
本発明(請求項18)の有機ゾルの製造方法は、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を有する有機ゾルの製造方法において、シリル化剤が一官能シリル化剤及び/又は二官能シリル化剤であり、かつシリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子の原子比が、それぞれ0.05以下であることを特徴とする。
【0030】
請求項19の有機ゾルの製造方法は、請求項18において、シリル化剤が、下記一般式(1)で表されるシリル化剤及び/又は下記一般式(2)で表されるシリル化剤であることを特徴とする。
SiX (1)
SiX (2)
(式(1),(2)中、R〜Rは各々独立してアルキル基又はアリール基を表し、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基、又は水酸基を表す。)
【0031】
請求項20の有機ゾルの製造方法は、請求項19において、X,X,Xが各々独立して水素原子、アセトキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は水酸基であることを特徴とする。
【0032】
請求項21の有機ゾルの製造方法は、請求項19又は20において、シリル化剤が一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0033】
請求項22の有機ゾルの製造方法は、請求項18ないし21のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対するシリル化剤の使用量が0.001〜50重量部の範囲であることを特徴とする。
【0034】
請求項23の有機ゾルの製造方法は、請求項18ないし22のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する工程を気相で行うことを特徴とする。
【0035】
請求項24の有機ゾルの製造方法は、請求項18ないし23のいずれか1項において、酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理する工程を含むことを特徴とする。
【0036】
請求項25の有機ゾルの製造方法は、請求項18ないし24のいずれか1項において、分散剤が少なくとも炭素数8以上の有機酸を含む。
【0037】
本発明(請求項26)の成形体は、請求項6ないし9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いたことを特徴とする。
【0038】
本発明(請求項27)の成形体は、酸化アルミニウムナノ粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物の成形体であって、ヘーズが5%以下であり、引張弾性率が5GPa以上であることを特徴とする。
【0039】
本発明(請求項28)の成形体は、酸化アルミニウムナノ粒子を含有するポリカーボネート樹脂組成物の成形体であって、ヘーズが5%以下であり、線熱膨張係数が45ppm/K以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明により提供される表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、ポリカーボネート樹脂の分解性を失活させてあるので、これを充填剤としてポリカーボネート樹脂に含有させて樹脂組成物を得ることにより、ポリカーボネート樹脂の特性を生かした状態で充填剤添加の効果、すなわち、機械的強度・寸法安定性・熱安定性等の向上効果を十分に得ることができる。また、適切な大きさの粒子を用いることにより、透明性を保持した樹脂組成物とすることも可能である。
従って、本発明によれば、機械的強度・寸法安定性・熱安定性等に優れ、しかも高透明性の樹脂組成物及びその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0042】
[表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子]
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、分散剤及びシリル化剤で表面被覆された表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子であって、X線光電子分光装置(略称XPS又はESCA)を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られる光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、前記表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子中の窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、及びハロゲン原子の含有量(atm%)がそれぞれ2以下であり、かつX線光電子分光装置(略称XPS又はESCA)を用いて、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られるAl2pとSi2sの光電子ピーク面積から表面元素組成を算出したときの、アルミニウム原子に対する珪素原子の濃度(mol%)が0.05〜30であることを特徴とする。
【0043】
{酸化アルミニウムナノ粒子}
本発明の酸化アルミニウムナノ粒子を構成する酸化アルミニウムは、下記の式(3)で示されるものであり、通常、1種もしくは2種以上の混合物からなる。
Al・nHO (3)
具体的には、上記式(3)において、n=0のものは酸化アルミニウムを表し、δ、γ、θ、α型等の種類がある。n=1のものはベーマイト、nが1を超えて3未満のものはベーマイトとアルミナ水和物の混合物を示し、一般には擬ベーマイトと呼ばれる。n=3のものは水酸化アルミニウム、nが3を超えるとアルミナ水和物を表す。
【0044】
これらの中でも入手の容易さと、粒子の分散性保持、及び屈折率の観点から、ベーマイト、擬ベーマイトが好ましい。
【0045】
本発明で使用する酸化アルミニウムナノ粒子は、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状のいずれでもよい。
その粒子サイズは短軸長さが1〜10nmであり、長軸長さの下限は通常20nm以上であり、上限は通常1000nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下であり、アスペクト比(縦横の寸法比)の下限は5以上が好ましく、より好ましくは10以上で、その上限は1000以下が好ましく、さらに好ましくは700以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは400以下である。
酸化アルミニウムナノ粒子を配合して高透明性の樹脂組成物を得ようとする場合には特に粒子サイズは短軸長さが6nm以下であり、長軸長さが50〜700nmであることが好ましい。
【0046】
このような酸化アルミニウムナノ粒子は、例えば前掲の特許文献1、2に開示された方法により製造することができる。
【0047】
{窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、ハロゲン原子の含有量:atm%}
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を前記測定条件でX線光電子分光分析して求めた窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のそれぞれ)の含有量(atm%)はそれぞれ2以下であり、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下である。
【0048】
窒素原子含有量が上記上限よりも多いと、窒素は塩基性を示すために、ポリカーボネート樹脂と混合した場合には、樹脂の分子量を大きく低下させ、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度を低下させるといった問題点がある。
【0049】
チオール基由来の硫黄原子含有量が上記上限より多いと、チオールが弱酸性質を示すことから、同様にポリカ―ボネート樹脂の分子量を低下させたり、樹脂組成物とした場合に悪臭がして、自動車用の窓材用途などの商品には適さないといった問題がある。
【0050】
ハロゲン原子含有量が上記上限よりも多いと、ハロゲン由来の酸性質のために同様にポリカ―ボネート樹脂の分子量を低下させたり、周囲に使用する金属類の腐食の原因となるといった問題点がある。
【0051】
なお、本発明に係るX線光電子分光法による窒素原子、チオール基由来の硫黄原子、ハロゲン原子各原子の含有量は、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られる光電子ピーク面積から表面元素組成を算出して求める。また、後述のアルミニウム原子に対する珪素原子の濃度についても、X線光電子分光法により、単色化されたAl−Kα線を試料表面に照射し、得られるAl2pとSi2sの光電子ピーク面積から表面元素組成を算出して求める。例えば、具体的には以下の通りである。
<測定条件>
測定装置:PHI社製 Quantum2000
X線源:単色化Al−Kα線
出力:16kV−30W
X線発生面積:150μmφ
帯電中和:電子銃2μA、イオン銃使用
分光系:パスエネルギー
ワイドスペクトル測定時=187.85eV
ナロースペクトル(N1s、F1s、Si2p、Cl2p、Br3p、
I3d)測定時=58.7ev
ナロースペクトル(Al2p,S2p)測定時=29.35eV
測定領域:300μm四方
取り出し角:45°
エネルギー軸の基準(補正方法):ベーマイトのAl2pピークを74.0eV
としてエネルギー軸を補正
【0052】
{アルミニウム原子に対する珪素原子の濃度:mol%}
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子中のアルミニウム原子に対する珪素原子の濃度(mol%)(以下「Si/Al比(mol%)」と記載する場合がある。)は、0.05〜30、好ましくは0.15〜25、さらに好ましくは0.2〜25、特に好ましくは0.3〜23である。
【0053】
Si/Al比(mol%)が上記下限よりも小さいと、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子がポリカーボネート樹脂を分解する作用を抑制できず、また、Si/Al比(mol%)が上記上限よりも多いと表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子のアスペクト比が損なわれ、得られる樹脂組成物の寸法安定性や機械的物性が低下したり、ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が大きくなり、樹脂組成物が透明にならないといった問題点がある。
【0054】
[表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法]
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、例えば、前述のような酸化アルミニウムナノ粒子を、一官能シリル化剤及び/又は二官能シリル化剤であって、シリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子の原子比が、それぞれ0.05以下であるシリル化剤で処理する工程を有する本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法により製造することができる。
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法はまた、更に酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理する工程を含んでいてもよい。
【0055】
後述のように酸化アルミニウムナノ粒子表面にスルホン酸系の分散剤や燐酸系の分散剤を吸着させることによって、酸化アルミニウムナノ粒子を分散させかつ表面処理をすることができる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この表面処理方法は、酸化アルミニウムナノ粒子のポリカーボネート樹脂を加水分解する触媒活性を低下させることができるが、機能は十分ではない。すなわち、後述の分散剤は酸化アルミニウムナノ粒子表面に化学吸着しているに過ぎないため、遊離の分散剤成分が存在するとともに、樹脂組成物を溶融して成形する際の加熱時に、前記分散剤の脱着がおき、これら遊離の分散剤が触媒になってポリカーボネート樹脂の加水分解を進行させたり、分散剤が脱離したサイトがもとの未処理の酸化アルミニウムナノ粒子に戻ってしまい、この結果、酸化アルミニウムナノ粒子が触媒となってポリカーボネート樹脂の加水分解を進行させてしまう。
また、分散剤を使用しない場合にも、酸化アルミニウムナノ粒子自体が持つ酸点、塩基点が、ポリカーボネート樹脂を加水分解する触媒となってしまう。
このため、本発明では、このような酸化アルミニウムナノ粒子の活性点をシリル化剤によって不活性化する。
【0056】
{シリル化剤}
本発明において、酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理に用いるシリル化剤は、一官能及び/又は二官能のシリル化剤であって、かつシリル化剤中の珪素原子に対する窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子比(以下、これらを「Z/Si比」と記載する場合がある。)が、それぞれ0.05以下、好ましくはそれぞれ0.01以下、さらに好ましくはそれぞれ0.005以下のものである。
【0057】
シリル化剤のZ/Si比が大きすぎると、本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の窒素含有量、チオール基由来の硫黄原子含有量、ハロゲン原子含有量の上限の説明としてそれぞれ前述した理由により、ポリカーボネート樹脂を加水分解して、樹脂組成物の機械的物性を損ねるといった問題点がある。
【0058】
また、三官能もしくは三官能以上のシリル化剤のみを用い、一官能及び/又は二官能のシリル化剤を用いない場合は、酸化アルミニウムナノ粒子同士をシリル化剤が架橋し、酸化アルミニウムナノ粒子を凝集させることにより、酸化アルミニウムナノ粒子の本来もつアスペクト比を損失させたり、酸化アルミニウムナノ粒子の分散性を悪化させ、得られる樹脂組成物において、満足な寸法安定性、透明性、機械的強度が得られないといった問題点があるので好ましくない。
しかしながら、三官能もしくは三官能以上のシリル化剤は、酸化アルミニウムナノ粒子のゾル中及び/又は樹脂組成物の分散性及び樹脂組成物の機械的物性を損なわない範囲であれば、上記一官能及び/又は二官能のシリル化剤と適宜併用することができる。
【0059】
特に、本発明で用いるシリル化剤は、下記一般式(1)で表されるシリル化剤及び/又は下記一般式(2)で表されるシリル化剤、特に下記一般式(1)で表されるシリル化剤であることが好ましい。
SiX (1)
SiX (2)
(式(1),(2)中、R〜Rは各々独立してアルキル基又はアリール基を表し、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基、又は水酸基を表す。)
【0060】
上記式(1),(2)において、R〜Rとしては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基等の炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、シクロへキシル基、ビシクロヘプチル基、アダマンチル基等の炭素数4〜12の脂環族アルキル基、フェニル基、ベンジル基、トルイル基、ナフチル基といったアリール基が挙げられる。また、Si上の置換基はシラシクロヘキサンのように環状となっていてもよい。
【0061】
また、シリル化剤中の官能基は一つの分子内に2個以下であることが好ましく、上記式(1),(2)において、X,X,Xは各々独立して水素原子、加水分解性の置換基又は水酸基であるが、ここで、加水分解性の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基が好ましい。これらの加水分解性の置換基は加水分解されて水酸基となった後に、酸化アルミニウムナノ粒子の水酸基と反応していく。従って、X,X,Xは水酸基であっても良い。
【0062】
なお、シリル化剤に、N、SH、ハロゲンが含有されると、ポリカーボネート樹脂と混合した際に、これらが酸性もしくは塩基性を示し、ポリカーボネート樹脂の加水分解の触媒となり、ポリカーボネート樹脂の分子量を低下させるので、シリル化剤にはこれらの元素が置換基に含有されないことが好ましく、本発明において、シリル化剤中のこれらの元素の比率Z/Si比は前述の如く0.05以下、好ましくは0.01以下より好ましくは0.005以下であり、特には実質的に含有されないことが好ましい。
【0063】
{シリル化剤の具体例}
上記シリル化剤の具体的な化合物としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
<一官能ヒドロシラン>
トリメチルシラン、トリエチルシラン
ジメチルフェニルシラン、メチルエチルフェニルシラン、ジエチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシラン
<二官能ヒドロシラン>
ジメチルシラン、ジエチルシラン、メチルエチルシラン、ジイソプロピルシラン
メチルフェニルシラン、エチルフェニルシラン、イソプロピルメチルシラン
ジフェニルシラン
<一官能アルコキシシラン>
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン
ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、
フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン
ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン
<一官能アセトキシシラン>
トリメチルアセトキシシラン、トリエチルアセトキシシラン
フェニルジメチルアセトキシシラン
<二官能アルコキシシラン>
ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジヘキシルジエトキシシラン
フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン
オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン
ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、
ブテニルメチルジメトキシシラン、ブテニルメチルジエトキシシラン、
<二官能アセトキシシラン>
ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルアセトキシシシラン
フェニルメチルジアセトキシシラン
ジフェニルアセトキシシラン
<二種類の異なる官能基をもつシラン化合物>
ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルエチルメトキシシラン
【0064】
上記一官能及び/又は二官能のシリル化剤と適宜併用することができる三官能もしくは三官能以上のシリル化剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
<三官能アルコキシシラン>
メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、
<三官能アセトキシシラン>
メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、
<四官能アルコキシシラン>
テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン
<四官能アセトキシシラン>
テトラアセトキシシラン
<多官能アルコキシシラン>
アルコキシシランのオリゴマー(例えば三菱化学(株)製「MKCシリケート」(登録商標)シリーズの「MS−51」等のテトラメトキシシランの数量体等。
【0065】
これらのシリル化剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうちで、トリメチルメトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランが、酸化アルミニウムナノ粒子に対する反応性や、得られた粒子の分散性、樹脂分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性の観点から好ましく、トリメチルメトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシランがより好ましい。
【0066】
{シリル化剤による表面処理の方法}
シリル化剤による表面処理に供される酸化アルミニウムナノ粒子の形態は、粉体でもゾル(分散液)でも構わない。
この場合、ゾルの溶媒とシリル化剤との相溶性の面から、ゾルの溶媒としては有機溶媒であることが好ましい。或いは、シリル化剤による表面処理は、無溶媒で行うことが好ましい。
表面処理は、必要に応じて加熱することにより実施される。
【0067】
シリル化剤による酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理は、反応器内に大量に水分が含まれている場合には、シリル化剤が酸化アルミニウムナノ粒子表面とは反応せずに自己縮合反応をおこし、酸化アルミニウムナノ粒子の表面被覆が十分行われないことがあるので、反応系内の水分量を減少させることが好ましい。
【0068】
溶媒を用いたゾルの形態ではなく、酸化アルミニウムナノ粒子を粉体の状態でシリル化処理する場合には、ヘンシェルミキサーなどの乾式の攪拌機や、気相流通反応装置を使用することも可能である。酸化アルミニウムナノ粒子を、粉体で用いる場合には、市販のものを用いるか、もしくは、水熱合成により生成した酸化アルミニウムナノ粒子を乾燥後、所望の焼成条件において焼成するか、凍結乾燥法、スプレードライ、濾過などの方法により、所望の結晶形態の粉体としたものを用いることができる。この場合、後述の有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤を作用させた後に粉化させてもよい。有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤を加えずに紛化した場合は、シリル化処理の後にこれら分散剤を添加することが好ましい。
【0069】
粉体の酸化アルミニウムナノ粒子を気相で処理する方法は工業的な方法としては製造コストの面からは好ましい。しかしながら、粒子の分散性については液相処理に比較すると、若干劣る場合がある。このような場合には超音波分散機のような、凝集した粒子を再分散させる装置を使用することにより、粒子の分散性をより改善することができる。
酸化アルミニウムナノ粒子により均一な処理を行えること、及び酸化アルミニウムナノ粒子の分散性を保持するという意味では、酸化アルミニウムナノ粒子はゾルの形態で、液相にて処理することが好ましい。
【0070】
{酸化アルミニウムナノ粒子ゾルの調製}
酸化アルミニウムナノ粒子をゾルで用いる場合、このゾルの調製には、粉体の酸化アルミニウムナノ粒子を所望の溶媒に分散させる方法、水ゾルで得られた酸化アルミニウムナノ粒子を、水と共沸する溶媒を加えて共沸脱水により溶媒置換するか、限外濾過により所望の溶媒に置換する、もしくは、凍結乾燥法、スプレードライ、濾過などの方法により、所望の結晶形態の粉体としたものを所望のゾルに分散させる、などの方法を採用することができる。この場合、溶媒中もしくは、酸化アルミニウムナノ粒子に、後述の有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤を含有させておくと、酸化アルミニウムナノ粒子の凝集を防ぐことが可能となる。
酸化アルミニウムナノ粒子ゾルを形成するための溶媒としては、後述の表面処理溶媒を用いることができる。
【0071】
{表面処理反応条件}
<反応温度>
液相、気相にかかわらず、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理する際の加熱温度は、通常0〜400℃程度の範囲が選択される。
液相での処理では、常圧で処理する場合は、通常シリル化剤の種類、及び選択した溶媒の沸点により上限がきまるが、15〜200℃程度であることが、酸化アルミニウムナノ粒子表面との反応性、シリル化剤の自己縮合物の生成抑制の観点から好ましい。
気相での処理では上記範囲内の温度が選択されるが、シリル化剤の熱安定性や、酸化アルミニウムナノ粒子との反応性、酸化アルミニウムナノ粒子の結晶形態、粒子の凝集度を勘案して選択する。一般には、15〜300℃の範囲、好ましくは20〜200℃の範囲で選択される。
反応温度が上記下限より低いと、反応速度が著しく低下し、また上記上限より反応温度が高いと、シリル化剤の自己縮合反応が主に進行したり、シリル化剤自体の熱分解や、酸化アルミニウムナノ粒子間の凝集が進み、好ましくない。
【0072】
<反応時間>
反応時間としては、特に限定されるものではないが、通常1分から40時間程度反応させればよい。
反応させる際に、シリル化剤由来の副生成物を除去しながら反応させると、シリル化剤と酸化アルミニウムナノ粒子表面との反応が進行しやすくなり好ましい。
また、シリル化反応の後に、数時間から一週間程度の熟成期間をもたせることも、シリル化剤と酸化アルミニウムナノ粒子表面との反応を進める上で有利である。その場合、酸化アルミニウムナノ粒子の分散性を損なわない程度に温度や時間を調節することが重要である。
【0073】
{表面処理溶媒}
液相での表面処理を行う際には、無溶媒でも溶媒を用いてもどちらでもよいが、液相中で酸化アルミニウムナノ粒子が凝集させないような反応液とすることが好ましい。
気相の場合もシリル化剤は、溶媒で希釈させなくてもよいが、シリル化剤の濃度の調整や高沸点のシリル化剤を用いる場合のハンドリングなどの点から、シリル化剤を適宜溶媒で希釈して酸化アルミニウムナノ粒子と接触させてもよい。
いずれの場合においても、溶媒を用いる場合に、用いる溶媒としては、酸化アルミニウムナノ粒子のシリル化反応を大きく阻害せず、酸化アルミニウムナノ粒子の凝集を招かないものであれば、どのようなものを用いても良い。
また、コストの面からは、その用途において、ポリカーボネート樹脂と混合する際に溶媒交換の不要な溶媒であることが好ましく、従って、後工程でポリカーボネート樹脂を溶解させる場合にはその溶媒と同一の溶媒であることが好ましく、また、ポリカーボネート樹脂の溶解能のある溶媒が好ましい。
【0074】
表面処理溶媒としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、テトラリンといった芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールといったアルコール系溶媒、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ヘキサメチルジシロキサン、エチレングリコールのエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンといったケトン系溶媒、1,3−ジオキソランなどのアセタール系溶媒、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性溶媒、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン溶媒などの1種又は2種以上が挙げられるが、シリル化反応を大きく阻害しない溶媒であること、酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態を妨げない溶媒であることが好ましい。
【0075】
{シリル化剤の使用量}
上記シリル化剤の使用量は特に限定するものではないが、酸化アルミニウムナノ粒子を十分被覆し、ポリカーボネート樹脂の分解を抑制するに充足する量であればよい。そのためには、シリル化剤の構造や、酸化アルミニウムナノ粒子との反応性にもよるが、酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対し、0.001〜50重量部であれば、酸化アルミニウムナノ粒子表面を被覆する上で好ましい。上記シリル化剤の使用量はさらに好ましくは、酸化アルミニウムナノ粒子1重量部に対して0.005〜40重量部、特には0.01〜30重量部である。
【0076】
{加水分解副生物及び未反応原料の除去}
シリル化剤で処理した反応系にはシリル化剤の自己縮合物、加水分解副生物(アルコール、カルボン酸など)のほか、未反応のシリル化剤も含有されることがある。
得られる表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子に、シリル化剤の自己縮合物や加水分解副生物が残留すると、これをポリカーボネート樹脂の充填剤として用いた場合、酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂の相溶性が悪化し、酸化アルミニウムナノ粒子のポリカーボネート樹脂中への分散性が悪化することがあるため、樹脂組成物を溶融させる前に除去しておくことが好ましく、酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂とを混合する前に除去しておくことがさらに好ましい。
【0077】
未反応のシリル化剤が樹脂組成物に含有される場合には、樹脂組成物を溶融させた際に、未反応のシリル化剤の自己縮合が進行して、自己縮合物の塊ができ、樹脂組成物から除去できなくなったり、シリル化剤が樹脂組成物中の酸化アルミニウムナノ粒子を凝集させることがある。
このような現象の程度はシリル化剤の反応性、官能基数、溶媒やポリカーボネート樹脂との相溶性により異なる。トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルアセトキシシランのように一官能のシリル化剤の場合には自己縮合物がシリル化剤の二量体にしかならないので、樹脂組成物中に残留しても溶融させた際に除去することができるが、二官能シリル化剤の場合には、未反応シリル化剤が酸化アルミニウムナノ粒子と樹脂を架橋し酸化アルミニウムナノ粒子を凝集させてしまったり、自己縮合物がシリル化剤の二量体以上になり、除去が困難となるので、樹脂組成物を溶融する前に除去することが好ましい。
【0078】
この除去操作は、具体的には、蒸留や有機溶媒での抽出、もしくは有機溶媒への樹脂組成物の沈殿、限外濾過により行うことができる。
【0079】
蒸留により除去する場合には、シリル化処理時の溶媒として、シリル化剤よりも高沸点の溶媒を添加しておき、シリル化処理後の反応液から、未反応のシリル化剤や自己縮合物、加水分解生成物を蒸留することによりこれらの成分を除去することができる。或いは、かかる高沸点の溶媒をシリル化処理時の溶媒としてではなく、該処理反応の後で未反応のシリル化剤やその自己縮合物や加水分解生成物を蒸留により系外に追い出す際に、かかる追い出しの効率や程度を高める目的の置換溶媒として加えて用いてもよい。
【0080】
有機溶媒でこれらの成分を抽出する場合には、シリル化処理した酸化アルミニウムナノ粒子を、濾過、沈降、遠心分離、シリル化剤の蒸留、などの方法で一部のシリル化剤、シリル化剤の自己縮合物、シリル化剤の加水分解生成物と分離した後に、さらにヘキサン、アセトン、メタノールなどの有機溶媒で残存するシリル化剤、シリル化剤の自己縮合物、シリル化剤の加水分解生成物を抽出することもできる。
また、シリル化処理した酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂を混合して得られた樹脂組成物を、前記有機溶媒で抽出したり、ヘキサンなどの有機溶媒にシリル化処理した酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂の混合ゾル溶液を滴下することによって除去することもできる。
【0081】
副生成物のうち、シリル化剤の自己縮合物だけが蒸留によって除去できない場合には、シリル化処理した酸化アルミニウムナノ粒子から、未反応のシリル化剤や加水分解生成物を蒸留で除去し、ポリカーボネート樹脂を混合した後の混合液又は樹脂組成物の段階で前記と同様の方法により除去することができる。
【0082】
限外濾過により除去する場合には、シリル化処理で用いた溶媒と同じ溶媒を限外濾過のカラムに流通させることにより、未反応のシリル化剤とともに、自己縮合物、加水分解生成物を除去することもできるし、適当な溶媒への溶媒置換を同時に行うこともできる。
【0083】
酸化アルミニウムナノ粒子を気相にてシリル化剤で処理した場合には、各種の分離装置(分離膜、サイクロンなど)を経て未反応のシリル化剤や自己縮合したシリル化剤やシリル化剤の加水分解生成物を、直接酸化アルミニウムナノ粒子と分離することができる。また、分離したシリル化処理酸化アルミニウムナノ粒子を必要に応じて溶媒洗浄することも可能である。
【0084】
{分散剤}
本発明の酸化アルミニウムナノ粒子には、有機スルホン酸、有機燐酸及びこれらの誘導体(以下「有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤」と称す場合がある。)の1種又は2種以上からなる分散剤により表面処理した粒子を用いることもできる。
【0085】
分散剤として用いる有機スルホン酸、有機燐酸及びこれらの誘導体の化学構造は特に限定されるものではないが、炭素数6以上の有機酸が、樹脂の熱分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性、酸性基に起因する樹脂組成物の腐食性質(例えば二軸押出機使用時の金属腐食性)の改善の観点からは好ましく、この点において、有機酸の炭素数は8以上であることがより好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0086】
また、樹脂組成物の線熱膨張係数の低減と弾性率の向上の効果の点から、有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤の化学構造中に剛直な有機残基が含まれることが好ましい。かかる剛直な有機残基として具体的には、各種芳香環構造(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環など)が好ましく、そのなかでもベンゼン環とナフタレン環が特に好ましい。さらに、かかる各種芳香環構造は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、溶融流動性の観点から機械的物性が低下しない範囲で嵩高い構造が好ましく、具体的には、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜12程度の、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基などが挙げられる。
【0087】
分散剤のうち、有機スルホン酸、及びその誘導体の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、などのベンゼンスルホン酸類、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、及び炭素数10〜14の直鎖アルキル基をつアルキルベンゼンスルホン酸の混合物、などのアルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、フェナントラセンスルホン酸などの多環芳香族スルホン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0088】
有機燐酸及びその誘導体の具体例としては、トリブチルホスフェート、ジエチルホスフェート、メチルホスフェート、ブトキシエチルホスフェートなどの燐酸モノ/ジ/トリアルキルエステル(例えば、城北化学工業(株)から市販のアシッドホスフェート類)、トリフェニルホスフェート、フェニルホスフェート、燐酸ジメチルフェニルエステル、燐酸ナフチルエステルなどの燐酸アリールエステル、ジメチルホスホネートなどのホスホン酸エステル、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイトなどの亜燐酸エステル、トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(三光(株)から市販)などの環状亜燐酸エステル、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ドデシルフェニルホスホン酸、ナフタレンホスホン酸、アントラセンホスホン酸、フェナントラセンホスホン酸などのホスホン酸、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸などのホスフィン酸、及びこれらの低級アルコールとのエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0089】
これらのうちで、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸類、長鎖アルキル基が置換したベンゼンスルホン酸類や、ナフタレンスルホン酸類が、酸化アルミニウムナノ粒子に対する吸着能と、得られたポリカーボネート樹脂組成物中での酸化アルミニウムナノ粒子の分散性、ポリカーボネート樹脂組成物の良好な溶融流動性、樹脂の熱分解性の抑制効果、樹脂組成物の機械的物性の観点から好ましく、その中でも長鎖アルキル基が置換したベンゼンスルホン酸類や、ナフタレンスルホン酸類が好ましく、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸とジノニルナフタレンスルホン酸がより好ましい。
【0090】
表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子中の分散剤又は樹脂組成物中の分散剤の分析は公知の方法によって分析すれば良く、特にその方法に限定はない。例えば抽出、単離を行い、各種クロマトグラフ法、FT−IR法、MS法、NMR法によって同定したり、XPS法や元素分析法によって確認する方法が挙げられる。
【0091】
{有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤による処理条件}
有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤による酸化アルミニウムナノ粒子の処理は、酸化アルミニウムナノ粒子をシリル化剤で処理した後に行っても構わないし、シリル化剤で処理する前に行っても構わない。本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、これら分散剤を含有することで、樹脂分解性の抑制が図られる。この場合、分散剤は、酸化アルミニウム粒子表面に吸着もしくは化学的に結合していてもよい。シリル化剤を酸化アルミニウムナノ粒子の表面に均一に処理し、酸化アルミニウムナノ粒子の分散性を良好に保つという意味では、酸化アルミニウムナノ粒子を分散剤で処理した後に、シリル化剤で処理する方法が好ましい。
【0092】
有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤(以下単に「分散剤」と記す場合がある)による酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理方法としては、例えば、特表2003−517418号公報に開示されている方法を採用することができる。
ただし、本発明においては、分散剤の炭素数によって溶媒は限定されず、また、溶媒を存在させずに直接処理することもできる。
具体的な方法を以下に示す。
【0093】
(1)水及び/又は有機溶媒中で酸化アルミニウムナノ粒子と分散剤を接触させる方法
この際に用いる水及び/又は有機溶媒としては、常圧下、40〜400℃の温度範囲で液体であるものが例示できる。この常圧下、40〜400℃の温度範囲で液体を呈する有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、テトラリンといった芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールといったアルコール系溶媒、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ヘキサメチルジシロキサン、エチレングリコールのエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンといったケトン系溶媒、1,3−ジオキソランなどのアセタール系溶媒、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性溶媒、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン溶媒などの1種又は2種以上を挙げることができる。
【0094】
酸化アルミニウムナノ粒子は、このような水及び/又は有機溶媒に分散させる前の時点で、水も含む別の溶媒に分散した状態のゾルであってもよく、この場合、この分散溶媒の沸点は特に制限されない。
酸化アルミニウムナノ粒子を水及び/又は有機溶媒中で分散剤と接触させる方法としては、例えば、酸化アルミニウムナノ粒子の水及び/又は有機溶媒分散液(ゾル)に対して分散剤を添加する、あるいは分散剤に酸化アルミニウムナノ粒子の水及び/又は有機溶媒分散液を添加する方法が挙げられる。この際、分散剤は予め水及び/又は各種有機溶媒で希釈して用いてもよいが、分散剤が水及び/又は各種有機溶媒に溶解することが好ましい。
また、分散剤の水及び/又は有機溶媒溶液に酸化アルミニウムナノ粒子の粉体を添加して水及び/又は有機溶媒のゾルとしてもよい。
これらの処理条件下では、添加する分散剤もしくは酸化アルミニウムナノ粒子は除々に添加することが好ましい。
また、表面処理は、上記の方法のほかに、限外濾過を用いて、溶媒に有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤を混合し、その溶媒を循環させることで、酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理を行うこともできる。
【0095】
有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤による表面処理の際の酸化アルミニウムナノ粒子の濃度は、分散剤と水及び/又は有機溶媒を用いた場合は、希薄濃度であることが好ましく、分散剤と酸化アルミニウムナノ粒子と水及び/又は有機溶媒を含む合計の処理液の総量に対して80重量%以下が好ましく、0.5〜50重量%であることがより好ましい。また有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤の濃度は、分散剤と酸化アルミニウムナノ粒子と水及び/又は有機溶媒中の濃度として0.01〜50重量%であることが好ましい。
この場合の処理温度及び圧力は特に限定されないが、通常常圧下、5〜400℃、好ましくは40〜300℃の温度範囲であり、処理時間は通常1〜48時間である。
【0096】
なお、酸化アルミニウムナノ粒子に含有される水分子は、例えば上記に挙げた溶媒と共沸させられる場合には共沸脱水することにより、また水分量が制限された溶媒を用いて限外濾過することによってもゾルから減少させることができる。
また、加熱及び/又は減圧による水及び/又は有機溶媒の蒸留及び/又は乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、スラリードライ、濾過などを経ることで、水及び/又は有機溶媒を減少させることができ、必要に応じて分散剤で処理した酸化アルミニウムを固形物として取り出すこともできる。
また、分散剤で処理した酸化アルミニウムナノ粒子の水及び/又は有機溶媒の分散液(ゾル)は、各種溶剤変換工程、例えば、沸点差を利用した蒸留、限外濾過などを経ることで、所望の有機溶媒の分散液(ゾル)に変換することもできる。
さらに、上記の分散剤で処理した酸化アルミニウムナノ粒子の固形物は所望の有機溶媒へと再分散させることで、分散剤で処理した酸化アルミニウムナノ粒子の有機溶媒分散液(ゾル)とすることもできる。
【0097】
(2)粉体の酸化アルミニウムナノ粒子と分散剤を直接接触させる方法
酸化アルミニウムナノ粒子の粉体に分散剤を直接作用させて処理する方法としては、例えば、酸化アルミニウムナノ粒子の粉体に対して分散剤を添加する、あるいは分散剤に酸化アルミニウムナノ粒子の粉体を添加する方法がある。この際、この処理温度で液状となる分散剤を用いた場合には、無溶媒で処理することも可能である。分散剤が処理温度で固体の場合には水や有機溶媒に分散剤を溶解させて用いることが好ましい。
【0098】
分散剤を予め水及び/又は各種有機溶媒で希釈して用いる場合、分散剤が水及び/又は各種有機溶媒に溶解することが好ましい。
酸化アルミニウムナノ粒子単体の表面を有効に分散剤で処理する観点から、酸化アルミニウムナノ粒子の粉体と分散剤は攪拌下(例えばヘンシェルミキサーミキサー類もしくはメカニカルスターラーを備えた攪拌槽などの良好な攪拌下)で処理されることが好ましく、また、酸化アルミニウムナノ粒子の粉体は、1次粒子同士が可能な限り凝集していない表面積の大きな状態(例えば、凍結乾燥やスプレードライ、スラリードライで得られた粉体)が好ましく、必要に応じて水などの出発溶媒を適度に残留させて凝集を防いだ湿った状態で用いてもよい。
処理温度は特に限定されないが、通常5〜400℃であり、10〜300℃が好ましい。また、処理時間は通常1〜48時間であり、処理圧力は特に限定されない。
このようにして分散剤で処理した酸化アルミニウムナノ粒子の粉体を所望の有機溶媒へと再分散させることで、分散剤で処理した酸化アルミニウムナノ粒子の有機溶媒分散液(ゾル)とすることもできる。
【0099】
上記(1),(2)の方法における酸化アルミニウムナノ粒子に対する有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤の使用量は通常0.01〜200重量%であり、本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を用いたポリカーボネート樹脂組成物の良好な流動性、透明性、熱安定性と機械的物性の確保の観点からは、0.02〜100重量%がより好ましい。分散剤の使用量が0.01重量%未満ではポリカーボネート樹脂組成物の良好な流動性、酸化アルミニウムナノ粒子の分酸性(透明性)、ポリカーボネート樹脂の熱安定性に対し十分な効果が得られず、また200重量%を超えると酸化アルミニウムナノ粒子表面に作用していない過剰な分散剤の影響が大きくなり、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的物性が低下し、過剰な分散剤によるポリカーボネート樹脂の分解や揮発成分の増大などの理由により滞留熱安定性も問題となる。また、過剰の分散剤の金属腐食性により、樹脂組成物の製造装置(例えば二軸押出機)からの金属成分の溶出が問題となる場合もある。
【0100】
酸化アルミニウムナノ粒子の所望のゾル中もしくは、樹脂組成物中の分散性を良好に保つ必要がある場合には、有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤による酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理は、液相で処理することが好ましい。
【0101】
[有機ゾル]
本発明の有機ゾルは、上述のような本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の製造方法、即ち、前述の酸化アルミニウムナノ粒子に上述の分散剤及びシリル化剤による表面処理を行って、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を製造する工程で得られ、通常、後述の本発明の樹脂組成物の製造方法における表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散溶媒に本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を0.1〜50重量%の濃度で含むものである。
【0102】
前記有機ゾル中の水分は、多すぎると、シリル化された酸化アルミニウムナノ粒子からシリル化剤残基が加水分解されたり、酸化アルミニウムナノ粒子や、ゾル中の不純物金属元素が触媒するポリカーボネートの加水分解反応に使用される水源となることがあるので、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。この水分量は、後述するカールフィッシャー法により分析することができる。
【0103】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上述のような、分散剤及びシリル化剤で表面被覆されることにより表面改質された本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子と、ポリカーボネート樹脂とを含む。
【0104】
{表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の含有量}
本発明の樹脂組成物において、上述のような表面改質された本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の含有量は通常0.1〜70重量%であり、樹脂組成物の機械的強度や弾性率、寸法安定性を高める効果の点でその下限は好ましくは5重量%、更に好ましくは10重量%、最も好ましくは15重量%であり、樹脂組成物の靭性(脆くなく粘り強い性質)と成形性を確保する点でその上限は好ましくは60重量%、更に好ましくは50重量%、最も好ましくは40重量%である。
【0105】
なお、樹脂組成物中の酸化アルミニウムナノ粒子の含有量とシリル化されたSi成分の合計量を、後述する灰分量の測定により確認することができる。この灰分量は、樹脂組成物を空気中で600℃まで昇温した際の残留分として分析されるので、通常、酸化アルミニウム(Al)及びシリカ(SiO)成分の含有量の合計量として算出される。従って、灰分量は実際には、酸化アルミニウムナノ粒子と、酸化アルミニウムナノ粒子に含有されるシリル化剤に由来するSi成分の量により決まる。ここで表面改質された酸化アルミニウムナノ粒子を含む樹脂組成物の灰分は通常0.1〜70重量%であり、樹脂組成物の機械的強度や弾性率、寸法安定性を高める効果の点でその下限は好ましくは5重量%、更に好ましくは10重量%、最も好ましくは15重量%であり、特に好ましくは20重量%であり、樹脂組成物の靭性(脆くなく粘り強い性質)と成形性の点でその上限は好ましくは60重量%、更に好ましくは50重量%、最も好ましくは40重量%である。
【0106】
{表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態}
本発明のポリカーボネート樹脂組成物における本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態は、特に限定されないが、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の1次粒子がポリカーボネート樹脂中で、凝集せずに高分散していることが好ましく、特に、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の1次粒子が実質的に単独で、均一に分散している状態が、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性、寸法安定性、機械的物性確保の観点から好ましい。
樹脂組成物中の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態は、得られるポリカーボネート樹脂組成物を、後述する透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。
【0107】
ポリカーボネート樹脂組成物中の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態は、具体的には、TEMによる任意の10視野観察において、現実に分散している粒子(以下「分散粒子」と記す場合がある。但し、1次粒子が判別できる凝集粒子は凝集状態で1つの粒子と考える。)の長径(最大の差し渡し直線距離)が10〜1000nmであることが望ましく、この上限値は透明性と機械的物性の点でより好ましくは700nm、更に好ましくは500nmであり、一方この下限値は機械的強度と弾性率を大きくする効果及び熱膨張率を低減する効果においてより好ましくは30nm、更に好ましくは50nmである。
【0108】
かかる分散粒子は、アスペクト比(縦横の寸法比)が大きいことが機械的強度と弾性率を大きくする効果及び寸法安定性の効果において好ましい。ここでいうアスペクト比の定義は、TEMで観察される1つの分散粒子について、その長径を短径(最小の差し渡し直線距離)で除した値を、前記任意の10視野観察で観測される全ての分散粒子について算術平均した値である。かかる算出において、市販の画像処理ソフトウェアを利用してもよい。
【0109】
{ポリカーボネート樹脂}
ポリカーボネート(PC)樹脂とは、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有できる1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される共重合体であり、必要に応じて芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステルや芳香族ジカルボン酸塩化物)を共重合成分として使用したものであってもよい。
【0110】
ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZ(中心炭素がシクロヘキサン環に参加しているもの)が好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0111】
共重合可能な3価フェノール類としては、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンやフロログルシノールなどが例示できる。
【0112】
ポリカーボネート樹脂は、1種の単独使用でも2種以上のポリマーブレンドとしての併用であってもよく、複数種の単量体の共重合体であってもよい。
【0113】
ポリカーボネート樹脂の製造方法に特に制限は無く、例えば(a)ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体(例えばホスゲン)とを原料とし、生成ポリマーを溶解する有機溶媒(例えば塩化メチレンなど)とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法、(b)ビスフェノール類と前記求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし、ピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法、(c)ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステル(好ましくはジフェニルカーボネート)とを原料とし、溶融重縮合させる溶融重合法、(d)ビスフェノール類と一酸化炭素や二酸化炭素を原料とする製造方法など、公知のいずれの方法も採用できる。
【0114】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、当業者に汎用されているクロロホルムを展開溶媒とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ。対照には単分散ポリスチレンを用いる。検出には波長254nmの汎用紫外線検出器を用いる。)の重量平均分子量として、通常、1.5万以上、好ましくは2万〜20万であり、機械的物性の点でその下限値は好ましくは3万、更に好ましくは4万であり、溶融流動性の点でその上限値は好ましくは15万、更に好ましくは10万であり、これら総合的に見ると最も好ましいのは4万〜9万の範囲である。
一方、数平均分子量は、ポリマーの分子鎖の長さの指標を示しており、通常3千〜5万であり、重量平均分子量と同じ理由で下限は好ましくは5千、更に好ましくは7千、上限は好ましくは4万、更に好ましくは3万である。
【0115】
なお、前記GPCの測定には、与えられた樹脂組成物をクロロホルムに約0.1重量%で溶解し、不溶成分を0.45μmの市販メンブレンフィルターで濾過して用いる。この測定方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0116】
本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、ポリカーボネート樹脂の加水分解に対する触媒活性が低減されているため、樹脂組成物の調製に用いたポリカーボネート樹脂の重量平均分子量に対する、得られる樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の割合を25%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上とすることができる。
【0117】
また、本発明で用いるポリカーボネート樹脂のガラス移転点Tgは通常120〜220℃であり、耐熱性と溶融流動性の観点から好ましくは130〜200℃であり、より好ましくは140〜190℃である。
【0118】
{その他の成分}
本発明の樹脂組成物は、本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂とを含むものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。
【0119】
例えば各種の用途や所望の性能を得るために、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどの耐衝撃性改善剤を配合してもよい。
【0120】
耐衝撃性改善剤は、通常、ポリカーボネート樹脂マトリクス中で相分離して存在するので、光散乱による透明性低下を抑制するためには、耐衝撃性改善剤の屈折率をポリカーボネート樹脂マトリクスの屈折率に極力近づけることが望ましい。
【0121】
更に、ホスファイト系などの熱安定剤(例えばMARK2112の商品名で常用されているトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなど)、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、離型剤、顔料等の着色剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、成形時の熱安定性を向上させるため、イルガノックス1010、同1076(チバガイギー社製)等のヒンダードフェノール系、スミライザーGS、同GM(住友化学社製)に代表される部分アクリル化多価フェノール系、イルガフォス168(チバガイギー社製)やアデカスタブLA−31等のホスファイト系に代表される燐化合物などの安定剤、長鎖脂肪族アルコールや長鎖脂肪族エステル等の添加剤を添加することができる。
【0122】
更に、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、気相成長法炭素繊維やカーボンナノチューブなどの微細炭素フィラー、ワラストナイト、珪酸カルシウム、硼酸アルミニウムウィスカー等の、本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子以外の無機充填剤等の添加剤を配合することもできる。
【0123】
{ヘーズ:曇価}
本発明の樹脂組成物のヘーズ(曇価)は、JIS K7105の方法で測定した値で、40%以下であることを特徴とし、好ましくはヘーズ(曇価)は20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。
このヘーズ(曇価)の測定方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0124】
{線熱膨張係数}
本発明の樹脂組成物の線熱膨張係数(K/ppm)は、窒素雰囲気下で、昇温速度5℃/分で測定した30℃〜60℃の範囲の長さ方向の寸法変化から決定する。この線熱膨張係数(K/ppm)は好ましくは20〜60で、より好ましくは30〜50である。線熱膨張係数は通常小さいほうが好ましいが、小さすぎると、靭性が低下することがあり、樹脂組成物の機械的物性の観点からは好ましくない。
この線熱膨張係数の測定方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0125】
{靱性、引張強度}
本発明の樹脂組成物の物性の評価は、靭性試験及び引張試験により行う。
靭性試験は、混練して取り出した樹脂組成物を手で曲げて、曲がるかどうかによって判断する。本発明の樹脂組成物は、手で曲がることが好ましく、曲がらずに折れてしまう場合は好ましくない。
【0126】
引張試験は、樹脂組成物を幅4mm、厚さ9mmの成形体もしくはISO規格のダンベル片を用い、室温(23℃)下、試験速度1mm/minでサンプル片を引張ることにより行う。通常、引張強度の数値(MPa)は、70〜150であるが、数値は高いほど好ましい。下限は、より好ましくは80である。
なお、これらの測定方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0127】
{Si/Al比(mol%)}
本発明の樹脂組成物中のアルミニウム原子に対するシリル化剤に由来する珪素原子の濃度(mol%)(以下「Si/Al比(mol%)」と記載する場合がある。)は、0.05〜30が好ましく、さらに好ましくは0.1〜25、特に好ましくは0.1〜20である。Si/Al比(mol%)が小さいと、酸化アルミニウムナノ粒子がポリカーボネート樹脂を分解する作用を抑制できず、また、Si/Al比(mol%)が大きすぎると表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子のアスペクト比が損なわれ、樹脂組成物の機械的物性や寸法安定性が低下したり、ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が大きくなり、樹脂組成物が透明にならないといった問題がおこる。
【0128】
{N,SH,ハロゲン含有量}
本発明の樹脂組成物に、N、SH、ハロゲンが含有されると、ポリカーボネート樹脂の加水分解の触媒となり、ポリカーボネート樹脂の分子量を低下させるので、これらの元素が含有されないことが好ましく、さらに好ましくは、N、ハロゲンが含有されないことが好ましい。これらの元素又は基の濃度は樹脂組成物中にそれぞれ0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0129】
{溶融流動性}
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種成型(射出成型、プレス成型、射出プレス成型、押出し成型等)での良好な成型性の点から、溶融流動性が高い(つまり見かけの溶融粘度が低い)ことが好ましい。
この見かけの溶融粘度は、具体的には、温度が230℃、剪断速度が500秒−1の条件において通常20000Pa・s以下、好ましくは10000Pa・s以下、更に好ましくは8000Pa・s以下である。かかる見かけの溶融粘度の測定は、市販の溶融粘度測定機(例えばキャピログラフやフローテスタ)により、ノズル寸法L/D=8.1/2の条件で行われる。
【0130】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、使用する表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の形態、必要とされる粒子の分散度に応じて適宜選択することができる。
表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子は、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散ゾルとしても、粉体の形態のいずれでも用いることができるが、より樹脂組成物中の酸化アルミニウムナノ粒子の分散状態を良好にするためには、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散ゾルとして用いることが好ましい。
【0131】
ここでいうゾルとは、いわゆるコロイド分散液であり、静置(即ち重力場)で粒子が非沈降性の分散液である。酸化アルミニウムナノ粒子同士が凝集せずかかる分散状態を維持する機構に制限はないが、通常、電気的反発力や溶媒への親和性(相溶性)を有する有機化合物による粒子表面の化学修飾を例示できる。
【0132】
表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を分散液の形態で用いる場合には、まず、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を所定の有機溶媒中に分散させる。
この有機溶媒は、特に限定されるものではなく、任意のものを用いることができ、また、前述の有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤やシリル化剤での処理の際に使用した有機溶媒をそのまま使用することもできるが、後の樹脂組成物の製造過程において、ポリカーボネート樹脂と少なくとも部分的に混合可能で、溶解した樹脂と表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子とが均一に混合可能なものを選択することが好ましい。
コストの面からは、ポリカーボネートと混合する際に溶媒交換の不要な溶媒であることが好ましく(すなわちポリカーボネートを溶解させる場合にはその溶媒と同一の溶媒であることが好ましく)、ポリカーボネートの溶解能のある溶媒が好ましい。
【0133】
このような有機溶媒としては、具体的にはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコールのエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、1,3−ジオキソランなどのアセタール系溶媒などを例示することができる。これらの有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。このうち、特に好ましい溶媒は、テトラヒドロフラン、クロロホルム、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランである。
【0134】
表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分散液の溶媒を、有機スルホン酸・有機燐酸及びこれらの誘導体の分散剤、シリル化剤による酸化アルミニウムナノ粒子の表面処理の際に用いた溶媒とは異なる溶媒に換えたい場合には、溶媒の沸点差を利用して蒸留により溶媒を交換したり、限外濾過により溶媒交換を行うことができる。また、凍結乾燥法、スプレードライ、濾過などによって表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を溶媒と分離した後に所望の溶媒に再分散させることもできる。
【0135】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、最も簡便な方法として直接混練法(第一の製造方法)が挙げられる。この場合、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散ゾル又はその粉体とポリカーボネート樹脂とを加熱混合し、溶融混練することにより、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子が均一に分散した樹脂組成物を得ることができる。溶融混練に用いる混練機としては、一般的な二軸混練押出機、微量混練押出機、ラボプラストミル、ロール混練機等、製造スケールに応じて選択使用することができる。また、乾式の固体状態又はガラス転移点近傍の温度で強力な剪断を印加し、次いで溶融混練させる形式の混練工程も採用可能である。
【0136】
本発明の樹脂組成物を製造する第二の製造方法としては、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散液を用いる場合はそのまま、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子粉体を用いる場合は所望の溶媒の分散液とし、ポリカーボネート樹脂のモノマーと混合して反応溶液を調製し、その後モノマーを重合させることにより、樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
【0137】
この場合、ジヒドロキシ化合物とホスゲンの縮合反応であるホスゲン法、もしくは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのエステル交換反応であるいわゆるエステル交換法などの方法で重合を行う。
【0138】
原料として用いるジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0139】
本発明の樹脂組成物を製造する第三の製造方法としては、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散液を用いる場合はそのまま、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子粉体を用いる場合は所望の溶媒の分散液とし、前記表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子分散液と、ポリカーボネート樹脂を含む有機溶媒を混合攪拌し、溶媒の留去に必要な温度と圧力下にて溶媒のみを留去し、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子が均一に分散した、目的とする樹脂組成物を得る方法が挙げられる。この場合、溶媒減量とともに、溶液の粘度が上昇するが、攪拌できなくなるまで攪拌を継続することが望ましく、これにより樹脂組成物中における表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を凝集させることなく、より均一に分散させることができる。ただし、溶媒の減量には、例えば薄膜蒸発機やニーダー、スプレードライヤー又はスラリードライヤーなどの攪拌機構のない(又は攪拌効果が微弱な)装置を利用してもよい。
【0140】
係る第一、第二、および第三の製造方法において、ポリカーボネート樹脂と混合する以前に、予め前述の方法で、分散剤及びシリル化剤で酸化アルミニウムナノ粒子を処理し、次いでポリカーボネート樹脂と混合すると、分散剤及びシリル化剤が酸化アルミニウムナノ粒子により効果的に作用することで、得られるポリカーボネート樹脂組成物中の酸化アルミニウムナノ粒子の分散性が更に向上し、透明性、流動性、熱安定性、寸法安定性などの観点から好ましい。
【0141】
上記第二、第三の製造方法により得られた樹脂組成物は、必要に応じて、第一の製造方法と同様に、混練機により融点以上の温度で加熱混練することで樹脂と表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の混合をより強力に行うことができるとともに、樹脂の結晶性を低下させ、透明性を向上させることができる。
【0142】
第一の製造方法における溶融混練、及び第二,第三の製造方法で得られる樹脂組成物を更に溶融混練する場合の加熱溶融温度は、通常150〜350℃であり、下限値は好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃、上限値は好ましくは300℃、さらに好ましくは280℃、特に好ましくは250℃である。
【0143】
加熱溶融温度が150℃に満たない場合は、ポリカーボネート樹脂成分が溶融せず、また350℃を超える場合には、ポリカーボネートの熱分解、加水分解、酸化劣化、分散剤の脱離によるポリカ―ボネート樹脂の加水分解促進、シリル化処理した酸化アルミニウムナノ粒子の変質、が顕著となり好ましくない。
【0144】
なお、加熱溶融の際に揮発成分(水やポリカーボネートが分解して生成するビスフェノールA)などを除去してポリカーボネートの分子量を保持するために、ベント式押出機の使用などにより減圧下にて溶融混合してもよい。
【0145】
このようにして得られる樹脂組成物は、必要に応じてペレット状とされる。
【0146】
[樹脂組成物の分析]
ポリカーボネート樹脂と、酸化アルミニウムナノ粒子とを含む樹脂組成物中に含まれる酸化アルミニウムナノ粒子が、分散剤及びシリル化剤で表面被覆された本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子であるか否かは、例えば以下のような方法により分析可能である。
[1]HAADF−STEM,STEM−EDXによる表面分析
HAADF−STEM:High Angle Annular Dark Field−Scanning TEMの略
この表面分析において、酸化アルミニウムナノ粒子表面にSi成分が検出されると、その樹脂組成物は本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含むものであることを直接確認できる。
[2]バルク元素分析
この分析により樹脂組成物中にSi成分が検出されれば、より簡便に、その樹脂組成物は本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含むものであることを確認できる。
なお、いずれも分析方法の詳細は実施例の項に記載する。
【0147】
[樹脂組成物の用途]
本発明の樹脂組成物は、成形体として、機械的強度・寸法安定性・熱安定性・透明性等において、優れた特性を併せ持つことから、例えば自動車内装材として計器盤の透明カバーなどに、自動車外装材として窓ガラス(ウィンドウ)やヘッドランプ、サンルーフ及びコンビネーションランプカバー類などに、更には家電や住宅に用いられる透明部材・備品・家具などの分野において、ガラス代替材料として有効に用いることができる。
【0148】
[成形体]
本発明の樹脂組成物は成形体として前述の用途に使用されるが、本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明の成形体の形状、大きさ、特性、及びその成形方法は次の通りである。
【0149】
{形状・大きさ}
本発明の成形体は、窓ガラスなどの平板や薄板状などの面状として通常成形される。その面の形状は、平面、曲面(例えば球面、非球面、円筒状・円錐状も含む)、いくつかの平面乃至曲面の連続した組み合わせなどが可能である。
かかる面状の成形体の厚さは、通常0.1〜10mmであり、窓ガラスなどの構造部材の用途では機械的強度や透明性の点で好ましくは1〜8mm、更に好ましくは2〜6mmである。
一方、その面積は、通常1cm〜10mであり、窓ガラスなどの構造部材の用途では、窓としての機能及び機械的強度の点で好ましくは10cm〜7m、更に好ましくは100cm〜5mである。
かかる成形体が曲面を含む場合、その箇所の曲率半径は、通常10〜10000mm、窓ガラスなどの構造部材の用途では成形性の点でその下限は好ましくは100mmである。
本発明の成形体は、二色成形法や多色成形法などの成形技術を駆使して、窓枠や額縁のように、更に別の材料(通常、高弾性率かつ低線熱膨張係数の複合材料を用いる。)を一体化した構造としてもよい。
【0150】
{特性}
本発明の樹脂組成物を用いた本発明の成形体では、射出成形や射出圧縮成形の条件の制御により、高度の透明性(ヘーズ(曇価)が5%以下)を保持したまま、弾性率の向上や線熱膨張係数の低減を効果的に達成することが可能である。これは、酸化アルミニウムナノ粒子のフィラーとしての配向性など、成形体の物性に影響する因子が成形体中でより好ましく制御されるためであると推測される。
具体的には、成形体の面方向の引張弾性率(ヤング率)は大きいほど好ましいが、よく制御された成形により、通常5GPa以上、好ましくは7.5GPa以上、更に好ましくは8.5GPa以上、最も好ましくは9.5GPa以上が達成可能であり、別の尺度としてこの引張弾性率(単位:GPa)を灰分(重量%)で除した数値(この値は大きいほど好ましい。)が通常0.25以上、好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.4以上、最も好ましくは0.45以上が可能である。
また、本発明の成形体は、面方向の線熱膨張係数(この値は小さいほど好ましい。)として、通常45ppm/K以下、好ましくは40ppm/K以下、更に好ましくは35ppm/K以下を達成することが可能である。
【0151】
いずれの測定においても、例えば窓状などの大判成形品から、必要に応じて切削して測定に好都合な小片を得て、この小片について測定を行ってもよい。かかる小片としては、例えばISOやASTM規格の寸法のダンベル片の形状が好適なものとして挙げられる。
【0152】
更に、本発明の成形体には次のような物性が望まれる。
(1) 窓ガラスの規格であるJIS R3211規格における耐衝撃性試験(約230gの鋼球を5〜6m程度の高さから落下させ衝突させた場合に裏面側に生じる破片の総重量が一定値以下であることが必要)に合格する。
(2) 耐光性(特に耐紫外線性)に優れる。
このために、汎用の紫外線吸収剤(例えばベンゾトリアゾール系化合物。商品名の例としてはSUMISORB340が挙げられる。)0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%程度を成形体を構成する樹脂組成物に含有させておいてもよく、また、市販の紫外線カットフィルムを成形体表面に貼ってもよい。
(3) 成形体の表面硬度が大きく、鉛筆硬度として通常F以上、好ましくはH以上、更に好ましくは2H以上である。
このために必要に応じてシリカ系のハードコート層を成形体表面に積層してもよく、この場合において、中間層のアンカーコートとしてアクリル系の有機薄膜を介在させてもよい。)
【0153】
{成形方法}
本発明の成形体の成形方法は、上記の形状や大きさに成形できるかぎりにおいて制限はないが、通常、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、プレス成形、真空プレス成形、前記二色成形法や多色成形法など、公知の方法が使用できる。
このうち、数10cm四方以上、好ましくは1m四方以上程度の比較的大きな窓状の成形体を得る場合には、射出圧縮成形が好ましい。
【実施例】
【0154】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下において、各種分析測定方法の詳細は次の通りである。
【0155】
[1]表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の分析方法
(1)X線光電子分光法(XPS)
以下の条件で表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子表面のSi,Al,SHのS,N,F,Cl,Br,Iについて分析を実施した。
<測定条件>
測定装置:PHI社製 Quantum2000
X線源:単色化Al−Kα線
出力:16kV−30W
X線発生面積:150μmφ
帯電中和:電子銃2μA、イオン銃使用
分光系:パスエネルギー
ワイドスペクトル測定時=187.85eV
ナロースペクトル(N1s、F1s、Si2p、Cl2p、Br3p、
I3d)測定時=58.7ev
ナロースペクトル(Al2p,S2p)測定時=29.35eV
測定領域:300μm四方
取り出し角:45°
エネルギー軸の基準(補正方法):ベーマイトのAl2pピークを74.0eV
としてエネルギー軸を補正
酸化アルミニウムナノ粒子の表面元素組成は、ナロースペクトルから定量した。ただし、下記の実施例1,4、6及び比較例5のN,F,Cl,Br,I、また実施例5,8,9,10及び比較例3,6のF,Cl,Br,Iに関しては、ワイドスペクトルから定量した。
なお、X線光電子分光法(XPS)に供する表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子の試料作成方法は、以下のように行った。
表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を、シリル化処理した後に、ポリカーボネート樹脂組成物を調製すると同様の処理をポリカーボネート樹脂を用いずに行う。(すなわち、シリル化の工程で過剰の未反応のシリル化剤を含有する場合はそれを除去する。)
【0156】
(2)シクロヘキサノンゾルの水分の分析方法
カールフィッシャー法(電量滴定法)
測定装置:(株)ダイアインスツルメント製CA−100
試薬:三菱化学(株)製アクアミクロンAKX/CXU
採取器:ガラス注射器(1ml)
パラメーター:End Sense:0.1μg/S
【0157】
[2]酸化アルミニウムナノ粒子/ポリカ−ボネート樹脂組成物の分析方法
(1)Si,Alの元素分析方法
試料をアルカリ溶融後、酸溶解した溶液について、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)にて測定を行った。
測定装置:
ICP−AES:(株)堀場製作所製ULTIMA2C
【0158】
(2)Nの分析方法
微量窒素分析計:三菱化学(株)製TN−10(燃焼分解−化学発光法)
有機元素分析計:PERKIN ELMER SERIES II CHNS/O 2400
【0159】
(3)ハロゲンの分析方法
燃焼吸収−IC(イオンクロマトグラフ)法
還元剤を添加したアルカリ水溶液を吸収液とした。
【0160】
(4) 樹脂組成物中の酸化アルミニウムナノ粒子表面のSi,Alの分析
HAADF−STEM,STEM−EDXによる酸化アルミニウムナノ粒子表面の分析
TEM:透過電子顕微鏡
(試料の作製方法)
ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物をウルトラミクロトームにより、設定30nmにて薄切した。
(TEM測定装置及び条件)
TEM装置:FEI社Tecnai G2 F20 S−Twin
加圧電圧:200kV
EDXシステム:EDAX社Phoenix 検出器:Sapphire
30mm SUTW
HAADF像取得条件:カメラ長100mm
引出電圧:4500V
GunLens:6
Spot:HAADF−STEM撮影時 6、EDX測定時 3〜6
取得したEDXスペクトルから、装置に付属のソフトウエアEmispec Systems社 ES Vision 4.0 にて、薄膜近似のスタンダードレス法により、SiとAlの濃度を半定量計算した。
バックグランド補正は、上記ソフトウエアにおいて、
Correction Mode:Modeled
Model:Multi−Polynomial
Max Polynomial Order:3
にて、実施した。
【0161】
(5)灰分の測定方法
酸化アルミニウムナノ粒子/ポリカーボネート樹脂組成物をセイコーインスツルメンツ製「TG−DTA320」により、白金パンを使用し、空気中、室温(約23℃)から600℃に10℃/分で昇温し、30分保持した重量減から残留成分のもとの樹脂組成物に対する重量%として算出した。
【0162】
(6)重量平均/数平均分子量の測定方法
(GPC分析条件−1)
実施例1〜10及び比較例1〜6においては、樹脂組成物の0.1重量%クロロホルム溶液を調製し、不溶分を0.45μmのフィルターで濾過し、可溶分のみをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析した。
測定装置:東ソー社製ビルトアップシステム8022
カラム:東ソー社製Tosoh TSKgel GMHhr−M(30cm×2)
カラム温度:40℃
検出器:東ソー社製TOSOH UV 8020(254nm)
移動相:CHCl3(試薬特級)
較正法:ポリスチレン換算
注入量:0.1重量%(樹脂組成物として)×100μL
なお、平均分子量計算は、分子量400のポリスチレンの溶出位置を含むピークの低分子量側極小点で垂直分割したピークの高分子量成分のみを対象にして行った。
実施例11〜14においては、次のGPC分析条件−2に記載の項目のみ条件を変えて、その他は上記GPC分析条件−1と同様の方法で分析を行った。
(GPC分析条件−2)
測定装置:東ソー社製HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製TSK GEL SUPER HZM−M
検出器:東ソー社製UV−8220(254nm)
注入量:0.1重量%(樹脂組成物として)×10μL
【0163】
(7)ヘーズ(曇価)の測定方法
樹脂組成物を溶融混練した後、加熱プレス成型をして厚さ1.0mmの試験片フィルムを作成し、このフィルムについて、JIS K7105の方法により、へイズメーター((株)村上色彩技術研究所製「HM−65型」)により測定した。
【0164】
(8)線熱膨張係数の測定方法
1.簡易法(以下、特に断りない場合はこの方法を用いた。)
樹脂組成物を溶融混練した後、底面の直径5mm、長さ10mmの円柱状、又は、真空微量混練装置で成型した直径3mm、長さ10mmのストランドを試料とし、ディラトメーター(ブルカーエイエックスエス(旧マックサイエンス)社製「TD5000」を使用し、窒素雰囲気下で、荷重は20gで、昇温速度5℃/分で測定した30℃〜60℃の範囲の長さ方向の寸法変化から決定した。試料は計測前に、100℃まで昇温速度5℃/分で昇温し、室温まで降温させた後に測定した。標準試料は石英を用い、GaとInの融解温度(軟化温度)に基づき温度補正を行った。
2.切り出し法
下記の射出成形により得たISO規格のダンベル片の引張り部分から、長手方向の長さ70mmの短冊状に試料を切り出し端面を平滑に仕上げ、ASTM D696(1979年)に準拠した石英管式縦型線膨張計を用いて25℃〜100℃に2℃/分の速度で昇温した場合の長さ変化から、この温度範囲での線熱膨張係数を算出した。
<射出成形>
日精樹脂工業社製FN2000射出成形機(スクリュー径40mm)を使用し、金型温度110℃、射出圧力130MPaの成形条件で、ISO規格のダンベル片(引張試験用。引張り部分:幅10.2mm、厚さ4.2mm)を成形した。
【0165】
(9)引張試験(引張強度、引張ひずみ、引張弾性率の測定)方法
1.プレス法(以下、特に断りない場合はこの方法を用いた。)
混練後の樹脂組成物を、170℃でプレス成型し、厚さ4mm、幅9mm(即ち断面形状が4mm×9mmである短冊状)に切削加工してサンプルを作成し、試験温度を室温(23℃)、試験速度を1mm/minで引張試験を行った。
2.小型射出成型法
混練後の樹脂組成物を小型射出成型器で幅5mmで厚さ1mmのマイクロダンベル片に成形し、試験温度を室温(23℃)、試験速度を1mm/minとして引張試験を行った。
3.ISO法
上記射出成形で得たISO規格のダンベル片を用い、引張速度は1mm/minの条件で引張試験を行なった。
【0166】
(10)靱性の評価方法
樹脂組成物を溶融混練して取り出した樹脂組成物を試料とし、これを手で曲げ、手で曲がるものを「○」、曲がらずに折れてしまうものを「×(脆い)」とした。
【0167】
<参考例1>針状ベーマイトの合成(1)
針状ベーマイトは特開2006−62905号公報の実施例2に開示されている方法で合成した。
すなわち、機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液をテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに代え、密栓し、オイルバスヘ移し、180℃で8時間加熱した。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、内容物を遠心分離(30000rpm,30min)して上澄みを除去後、遠心水洗を3回行った。
上記操作を繰り返し、遠心分離した沈殿物を集め、ここへ蒸留水を入れ、機械攪拌することにより水に分散したベーマイト粒子(水ゾル)を得た。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子のサイズを調べたところ、長軸長さ約100〜200nm、短軸長さ(径)5〜6nm、アスペクト比16〜40の針状形状であった。
【0168】
<参考例2>針状ベーマイトの合成(2)
針状ベーマイトは特開2006−62905号公報の実施例2に開示されている方法で合成した。
すなわち、機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに塩化アルミニウム六水和物(1.8M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(4.70M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.88)。溶液をテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに代え、密栓し、オイルバスヘ移し、180℃で8時間加熱した。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、内容物を遠心分離(30000rpm,30min)して上澄みを除去後、遠心水洗を3回行った。
上記操作を繰り返し、遠心分離した沈殿物を集め、ここへ蒸留水を入れ、機械攪拌することにより水に分散したベーマイト粒子(水ゾル)を得た。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子のサイズを調べたところ、長軸長さ約200〜350nm、短軸長さ(径)5〜6nm、アスペクト比40〜60の針状形状であった。
【0169】
<参考例3>針状ベーマイトの合成(3)
参考例1において、水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)の部分を水酸化ナトリウム(5.80M,40ml,25℃)と濃度を変え、反応溶液のpHを8.0を確認し、24時間加熱した以外は参考例1と同様の方法でベーマイト粒子を得た。粒子の大きさは、長軸長さ約100nm、短軸長さ(径)約10nm、アスペクト比約10であった。これを液体窒素を用いて急冷し、フリーズドライ装置を用いてベーマイト粒子を粉末化した。
【0170】
<参考例4>ベーマイトの水ゾルからシクロヘキサノンゾルへの溶媒交換及び分散剤による処理
フラスコ内に参考例1で合成したベーマイト水分散溶液(5重量%、500g)と、シクロヘキサノン1000gを入れ、磁気攪拌機を用いてフラスコ内を良く攪拌しながら和光純薬工業(株)製パラトルエンスルホン酸一水和物を4g添加し、30分間室温のまま攪拌を続けた。次に、減圧下ロータリーエバポレーターを用いて水を除去した。蒸留はフラスコ内のゾルが透明感を増すまで行った。共沸するため適宜シクロヘキサノンを足しながら水を除去した。フラスコ内のゾルの固形分が10重量%になるようにシクロヘキサノンの量を調整し、ゾルを得た。
このゾルは、収量250g、固形分10重量%、ヘーズ(曇価)3.2%の、薄黄色の透明ゾルであった。なお、ヘーズ(曇価)は10mm角のセルにゾルを入れ、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製「HM−65型」)により測定した。
このベーマイトゾルの水分含有量は0.3重量%であった。
【0171】
<参考例5>ベーマイトの水ゾルからメタノールゾルへの溶媒交換
ガラス容器内に、参考例2で合成したベーマイト水分散液(10重量%、200ml)とメタノール800mlを入れ、良く攪拌した。この混合液をセラミック濾過膜(日本ガイシ(株)社製「UF50000」)に送液ポンプを用いて循環流通させ、濾液を500ml回収するごとにメタノールを500mlガラス容器内に追加する操作(限外濾過)を16回繰り返した後、メタノールゾルを回収して約2Lのゾルとした。
【0172】
<参考例6>ベーマイト水ゾルからドデシルベンゼンスルホン酸を含有するフリーズドライベーマイトの調製
参考例2のベーマイト水分散液を、透析膜(Viskase Companies,inc製(輸入元:三光純薬(株)、透過分子量(MWCO)14,000、孔径(ポアサイズ)50Å)で精製して7重量%としたベーマイト水分散液1430g(固形分100g)に、ドデシルベンゼンスルホン酸19gをメタノール19gで希釈した後添加し、三井三池化工(株)製ヘンシェルミキサーFM10BFにより室温で30分間攪拌した。次いで、共和真空技術(株)製凍結乾燥機RLEII−52を用いて、次の手順で凍結乾燥を行った。
(1) ベーマイト水分散液を500gずつに分けて凍結乾燥装置の棚3段にセットし、3時間かけて−40℃で凍結を行った。
(2)この間、コールドトラップも並行して−50℃に冷却した。
(3)10分のうちに速やかに排気を行い、0.2Torr(約27Pa)の真空とした。
(4)このまま20時間フリーズドライを行い、水分を昇華させた。
(5)+30℃にて4時間2次乾燥を行い、僅かに残存する水分を除去した。
(6)乾燥空気により常圧に戻した。この一連の操作の結果、118gの分散剤処理ベーマイト粉末が得られた。
【0173】
<参考例7>超高分子量ポリカーボネートの合成方法
パイロットスケールの装置を使用し、工業生産プラントに準ずる反応条件により、4−t−ブチルフェノールなどの末端停止剤は添加せず、ビスフェノールAのナトリウム塩溶液及び塩化メチレンの2相系にホスゲンを注入する工業的製法によりビスフェノールAオリゴマーを調製した。オリゴマーの分析値は、クロロホルメート濃度は0.48規定、フェノール性水酸基濃度は0.2規定、固形分濃度は26.4重量%であった。
【0174】
4−t−ブチルフェノール0.30g、上記ビスフェノールAオリゴマー187.7ml、ジクロロメタン87mlを、メカニカルスターラー、攪拌用のバッフル(邪魔板)及び下部に二方コックを備えたセパラブルフラスコに加え攪拌した。そこへ2重量%トリエチルアミン水溶液3.5mlと水60mlを添加し、更に25重量%水酸化ナトリウム水溶液22mlを加えて3時間激しく攪拌した。その後、ジクロロメタン203mlを加えた後に355mlの脱塩水を加え、30分攪拌した後、静置して一昼夜おいた後、ジクロロメタン相を捕集した。
【0175】
このジクロロメタン相を0.1NのHCl水溶液438mlとともに15分間激しく攪拌して酸洗浄を行った後、脱塩水438mlとともに15分間激しく攪拌する水洗を4回行った。こうして洗浄精製して得たジクロロメタン相を回収して城北化学工業(株)製JP650(トリスー(2,4−シ゛−t−ブチルフェニル)ホスファイト)を0.05g加えた。この溶液から、ジクロロメタンを留去し、さらに0.8kPa、120℃で一昼夜乾燥した。得られたポリカーボネート中のナトリウム濃度は10ppm以下であった。
この超高分子量ポリカーボネートの「GPC分析条件−1」による重量平均分子量は、23×10、数平均分子量は3.7×10であった。
【0176】
<実施例1>
参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを、42KHzの超音波分散機(以下、特に断らない限り、超音波処理はこの装置を用いた)で1時間分散させた後、9.92gをテフロン(登録商標)製のメカニカルスターラーを備えた四つ口フラスコに仕込み、窒素下で攪拌した。そこへ、シリル化剤としてALDRICH社製トリメチルメトキシシラン8.78gを室温で滴下し、滴下終了後、超音波分散機で1時間分散させた後、バス温63℃、内温約57℃で4.5時間加熱攪拌した。その後、室温まで降温し、翌日まで室温で放置した。
翌日、超音波分散機で30分分散させてから、原料のトリメチルメトキシシランとメタノールを留去し、さらにシクロヘキサノンを50g足してゾルが約10〜15gになるまでシクロヘキサノンを追い炊きした。
【0177】
トリメチルメトキシシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルをベーマイト濃度5重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してから、超音波分散機で2時間分散させた後、このベーマイトのシクロヘキサノンゾル16.00gとポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ノバレックス(登録商標)7030A、GPC分析条件−1による重量平均分子量7.1×10、数平均分子量2.6×10)の8.7重量%ジクロロメタン溶液21.49gとを混合し、溶媒を留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)を得た。
【0178】
このものを120℃、0.8KPaで一晩乾燥させた後、井元製作所製微量混練機で230℃で3分保温し、その後、同温度で15rpmにて5分混練して押出した。
この樹脂組成物の灰分は24重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は4.08×10、数平均分子量は0.94×10であった。また、ヘーズ(曇価)は6.6%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0179】
<実施例2>
スケールを15倍とし実施例1と同様にトリメチルメトキシシランでベーマイトの処理を行った。
実施例1と同様に処理後翌日まで室温下保存し、150mlのシクロヘキサノンを加えて超音波分散機で30分分散させから、原料のトリメチルメトキシシランとメタノールとを留去し、さらにシクロヘキサノンを750ml足してゾルが約150mlになるまでシクロヘキサノンを追い炊きした。途中、ベーマイトの析出がみられた場合には、超音波分散機で分散させた。
【0180】
トリメチルメトキシシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルにベーマイト濃度が5重量%になるようにシクロヘキサノンを添加し、超音波分散機で2時間超音波分散させた後、この5重量%のベーマイトのシクロヘキサノンゾル300gと参考例7で得られた超高分子量ポリカーボネートの8.7重量%ジクロロメタン溶液402gとを混合し、溶媒を留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物を得た(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)。
【0181】
このものを実施例1と同様に乾燥させた後、東洋精機製作所製ラボプラストミルで230℃、10rpmで1分間で混練し、取り出した。
この樹脂組成物のGPC分析条件−1による重量平均分子量は12.6×10、数平均分子量は1.3×10、ヘーズ(曇価)は9.1%であった。また、真空微量混練機で260℃で成型した直径3mm、長さ10mmのストランドの線熱膨張係数は37ppm/K、灰分は24重量%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0182】
<実施例3>
参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを12.10g、シリル化剤としてGelest社製フェニルメチルジメトキシシランを9.19g用い、バス温60℃、内温約55℃で
0.5時間加熱攪拌して降温、放置した以外は実施例1と同様の方法でベーマイトの処理を行った。
【0183】
翌日、実施例1と同様にシクロヘキサノンを加えて追い炊きを行った。
このフェニルメチルジメトキシシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルにベーマイト濃度が5重量%となるようにシクロヘキサノンを添加し、超音波分散機で2時間超音波分散させた後、このゾル20.00gと実施例1で用いたと同様のポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液26.82gとを混合し、ジクロロメタンを留去させて、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネートのシクロヘキサノンゾルを得た。
【0184】
このゾルの重量の6.5倍容量のヘプタン中にこのゾルを少量ずつ添加し、未反応のフェニルメチルジメトキシシラン及びその自己縮合物を除去した。その後、固形分を濾過して溶媒を留去させた後、実施例1と同様に乾燥後微量混練して押出した。
この得られたシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)のGPC分析条件−1による重量平均分子量は4.37×10、数平均分子量は0.72×10であった。また、ヘーズ(曇価)は8.4%、灰分は23重量%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0185】
<実施例4>
トリメチルメトキシシランの代わりに信越化学工業(株)社製トリエチルシランを9.75g用い、反応温度をバス温105℃、内温92℃で、反応時間を4.5時間とした以外は実施例1と同様の方法でベーマイトをシリル化処理した。実施例1と同様にトリエチルシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルを5重量%濃度に調整した後、実施例1と同様にこのゾル16.06gとポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液21.41gとを混合し、溶媒を留去してシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物を得、同様に乾燥後微量混練し押出した。
【0186】
この樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)のGPC分析条件−1による重量平均分子量は4.01×10、数平均分子量は0.87×10、ヘーズ(曇価)は9.6%であった。また、灰分は21重量%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0187】
<実施例5>
参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを10g、シリル化剤として、フェニルメチルメトキシシランの代わりにアルドリッチ社製フェニルメチルシランを5.09g仕込み、反応温度を、バス温105℃、内温約92℃にした他は実施例3と同様にベーマイトをシリル化処理した。フェニルメチルシラン処理したベーマイトは実施例3と同様な追い炊き操作の後、最終的にシクロヘキサノンを加えて4.2重量%濃度に調整し、実施例1と同様にこのゾル19.03gとポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液21.49gとを混合し、ジクロロメタンを留去させ、実施例3と同様の操作を行って、ヘプタン中にシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物を沈殿させた。このものを実施例1と同様に乾燥後微量混練して押出した。
【0188】
この樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)のGPC分析条件−1による重量平均分子量は4.75×10、数平均分子量は1.2×10であった。また、ヘーズ(曇価)は31.4%、灰分は23重量%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子として、ポリカーボネート中に良好に分散していたが、部 分的にやや凝集している場所が認められた。
【0189】
<実施例6>
シリル化剤として、東京化成工業(株)社製トリメチルメトキシシランの代わりにトリメチルアセトキシシランを11.09g用い、バス温105℃、内温約92℃で0.5時間加熱攪拌した以外は実施例1と同様の方法で、ベーマイトをシリル化した。
【0190】
トリメチルアセトキシシラン処理したベーマイトを実施例1と同様に追い炊き操作を施した後、最終的にシクロヘキサノンを加えて5重量%濃度に調整し、実施例1と同様にこのゾル16.04gとポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液21.46gとを混合し、溶媒を留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)を得た。このものを実施例1と同様に乾燥後微量混練して押出した。
【0191】
この樹脂組成物のGPC分析条件−1による重量平均分子量は3.35×10、数平均分子量は0.76×10であった。また、灰分は23重量%であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
このコンポジットをHAADF−STEM,STEM−EDXにより、樹脂組成物中のベーマイト表面に半値幅で2nm以下に絞った電子線を照射して分析すると、ベーマイト表面にSiがAlに対して、2〜10mol%濃度で存在していた。ベーマイトが存在しないところにはSi成分は検出されなかった。
【0192】
<実施例7>
実施例6の15倍のスケールでベーマイトのトリメチルアセトキシシラン処理を行った。その後、実施例6と同様にトリメチルアセトキシシラン処理後翌日まで室温下保存した後、750mlのシクロヘキサノンを加え、約300gになるまでシクロヘキサノンを留去した。途中、ベーマイトの析出がみられた場合には、適宜超音波分散機で分散させた。
【0193】
トリメチルメトキシシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルにベーマイト濃度が5重量%になるようにシクロヘキサノンを添加し、超音波分散機で2時間超音波分散させた後、実施例1と同様にこのゾル300gとポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液402gとを混合し、溶媒を留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)を得た。
【0194】
このものを実施例1と同様に乾燥させた後、実施例2で用いたと同じラボプラストミルで230℃、40rpmで3分間混練して取り出した。
この樹脂組成物のGPC分析条件−1による重量平均分子量は4.89×10、数平均分子量は1.3×10であった。また、ヘーズ(曇価)は5.0%、底面の直径5mm、長さ10mmの円柱の成型体の線熱膨張係数は48ppm/K、灰分は23重量%、引張強度は71MPa(引張りひずみ3.0%)であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0195】
<実施例8>
シリル化剤として、トリメチルアセトキシシランのかわりに、東京化成工業(株)社製ジメチルジアセトキシシランを7.40g用いた他は、実施例6と同様の方法でジメチルジアセトキシラン処理したベーマイトの5重量%ゾルを得た。このゾル16.09gを実施例3と同様にポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液21.46gと混合し、ジクロロメタンを留去させた後、ヘプタン中にシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)を沈殿させた。このものを実施例1と同様に乾燥後、微量混練して押出した。
【0196】
この樹脂組成物のGPC分析条件−1による重量平均分子量は4.18×10、数平均分子量は1.2×10であった。また、ヘーズ(曇価)は36.2%、灰分は22重量%であった。樹脂組成物中のベーマイトは一次粒子が10本程度に凝集気味であったが、比較的良好にポリカーボネート中に分散していた。
【0197】
<実施例9>
参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを12.06g、シリル化剤として信越化学工業(株)製のトリメチルシラノールを9.00g用いた他は、実施例6と同様の方法で、トリメチルシラノール処理したベーマイトの5重量%ゾルを得た。このゾル20.16gを実施例1と同様にポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液26.39gと混合し、溶媒を留去してシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)を得た。
このものを実施例1と同様に乾燥後、微量混練して押出した。
【0198】
この樹脂組成物のGPC分析条件−1による重量平均分子量は3.70×10、数平均分子量は0.92×10であった。また、ヘーズ(曇価)は4.1%、灰分は24重量%であった。
【0199】
<実施例10>
参考例4と同様に、p−トルエンスルホン酸一水和物のかわりに和光純薬工業(株)社製ベンジルホスホン酸を用いてベーマイト濃度が7.9重量%のシクロヘキサノンゾルを調製した。
このゾル15.25gと、東京化成工業(株)社製トリメチルアセトキシシラン13.22gとを用い、実施例6と同様にシリル化処理を行い、超音波分散機で30分分散させから、原料のトリメチルアセトキシシランと酢酸を留去し、さらにシクロヘキサノンを60g足してゾルが約15g前後になるまでシクロヘキサノンを留去した。
トリメチルアセトキシシラン処理したベーマイトのシクロヘキサノンゾルをベーマイト濃度4.5重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してから、超音波分散機で2時間超音波分散させた後、ベーマイトのシクロヘキサノンゾル22.12gとポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液26.81gとを混合し、溶媒を留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%を得た。
このものを実施例1と同様に乾燥後、微量混練して押し出した。
【0200】
この樹脂組成物の灰分は24重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は1.74×10数平均分子量は、0.45×10、であった。また、ヘーズ(曇価)は31.4%、であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0201】
<実施例11>
参考例2で得られたベーマイトの水ゾルを参考例5に記載した限外濾過により、メタノールに置換し、ベーマイトのメタノール分散液とした。これを減圧下濃縮し、ベーマイトのメタノールゾル(6重量%)とした。窒素下で、テフロン(登録商標)製のメカニカルスターラーを 備えた1Lの四つ口フラスコに、超音波分散処理をしたベーマイトのメタノールゾル(6重量%)317g及び、信越化学社製トリメチルメトキシシラン247g、及びGelest社製フェニルメチルジメトキシシラン24.1gを混合し、超音波分散させた後、バス温80℃、4.5時間で加熱攪拌した。
上記ゾルの2/3を取り出し、380gのジオキサンを加え、超音波分散機で分散させてから、原料のトリメチルメトキシシランとメタノールを留去した。さらにジオキサンを計1010ml加え攪拌した後、ゾル残留量が約470gになるまでジオキサンを留去した。
上記操作を繰り返し、シリル化処理したベーマイトのジオキサンゾル(ベーマイト濃度2.7重量%)を含有するジオキサンゾルを計1.4kg得た。
このゾルに10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)社製)を含有するジオキサン溶液70.1gを加え攪拌した。ゾル重量10gに対し計20mlの割合でジオキサンを加え、加えたと同容量のジオキサンを留去した。このようにしてドデシルベンゼンスルホン酸含有シリル化ベーマイトのジオキサンゾル(ベーマイト濃度2.7重量%)を計1.3kg調製した。
このゾル540gを超音波1時間かけた後、参考例7と同様の方法で合成したポリカーボネート(GPC分析条件−2による重量平均分子量は7.9×10、数平均分子量は3.4×10)の8.7重量%ジクロロメタン溶液545gと混合して溶媒を留去させ、ヘプタン4Lで抽出操作をした後、ヘプタンを留去し、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化処理ベーマイト含有量24重量%)を得た。
このものを実施例1と同様に乾燥させた後、実施例2と同じラボプラストミルで250℃、40rpmで5分間混練し、取り出した。
【0202】
この樹脂組成物の灰分は20重量%、GPC分析条件−2による重量平均分子量は5.90×10、数平均分子量は0.93×10、ヘーズ(曇価)は3.6%であった。
また、この樹脂組成物を微量混練機で270℃で成型した底面の直径5mm、長さ10mmの円柱の成型体の線熱膨張係数は59ppm/K、小型射出成型法でマイクロダンベルを製作して測定したときの引張強度は60MPa(引張りひずみ37%)であった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0203】
<実施例12>
20mmφの筒型のパイレックス製のガラス反応器を備えた固定床気相流通反応装置を用いて、次の方法でベーマイトのシリル化反応を行った。
参考例6で得たドデシルベンゼンスルホン酸を含有するベーマイト2gの層に、信越化学製のトリメチルメトキシシラン13gと東京化成工業(株)社製のジメチルジメトキシシラン0.85gの混合液を0.1ml/minの速度で窒素気流下2時間フィードすることにより、ベーマイトをシリル化した。このときのベーマイト相の温度は60〜80℃であった。過剰のシリル化剤はベーマイト層を通した後、冷却凝縮して液体としてベーマイトと分離した。次いで、シリル化処理されたベーマイト2gを、ベーマイト濃度3重量%のテトラヒドロフラン(THF)ゾルとした。超音波を1.5時間かけた後、ポリカーボネート7030Aの8.7重量%ジクロロメタン溶液53.6gと混合し、エバポレーターで溶媒を留去させ、シリル化ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化ベーマイト含有量30重量%)を得た。
これを実施例1と同様に真空乾燥した。その後、混練温度を270℃、保温時間を2分、混練時間を5分、20rpmとした以外は、実施例1と同様に、微量混練した。
【0204】
この樹脂組成物の灰分は24%、GPC分析条件−2による重量平均分子量は2.42×10、数平均分子量は0.46×10、ヘーズ(曇価)は7.6%であった。
また、この樹脂組成物を微量混練機で270℃で成型した底面の直径5mm、長さ10mmの円柱の成型体の線熱膨張係数は50ppm/Kであった。
【0205】
<実施例13>
参考例6で用いたと同じ透析膜を用いて、参考例2で得られたベーマイト水ゾルを精製した後、ドデシルベンゼンスルホン酸を用いない点以外は参考例6と同様の方法で、フリーズドライベーマイトを得た。
このベーマイト4.5kgに対しメタノール71kg、と水0.7kgを混合して6重量%のベーマイトのメタノールゾルを調製した。このゾル76kgを用い、実施例11と同様にトリメチルメトキシラン59kgとフェニルメチルジメトキシシラン5.7kgを用いてシリル化した。
反応後THFを80kg添加した後に未反応のトリメチルメトキシシランを留去した。
上記ゾルに順次計326kgのTHFを加え、加えたと同量の溶媒を留去した後、最終的にべーマイト濃度3重量%のTHFゾルとした。
冷却後、東京化成品のドデシルベンゼンスルホン酸を10重量%含有するTHF溶液8.6kgを加えた後、THFを120kg加え、その後、THF120kgを留去し、シリル化処理したベーマイトのTHFゾル(ベーマイト濃度3重量%)を約計160kg得た。
このゾル83kgと、実施例11で用いたと同じポリカーボネートの12重量%塩化メチレン溶液48kgを加えた後溶媒を留去させ、得られた固体を、その5倍量のヘプタンで室温にて抽出操作をし、再び溶媒を除去し、120℃で乾燥させた。こうしてシリル化処理ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物(シリル化ベーマイト含有量30重量%)を得た。
【0206】
この樹脂組成物のGPC分析条件−2による重量平均分子量は2.77×10、数平均分子量は0.55×10であった。また、ヘーズ(曇価)は2.3%であった。
また、TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
これを日本製鋼所製TEX−30二軸押出機(深溝,同方向回転)を用いて、スクリュ回転数200rpm、樹脂温260〜290℃、吐出量15kg/h、ベント真空度0.1MPaの運転条件でペレット化した。こうして得たペレットの灰分は23重量%であった。
これのペレットを用いて前記の射出成形によりダンベル片を作成した。
得られたダンベル片について、線熱膨張係数を前記切り出し法で、引張弾性率を前記ISO法(成形機の樹脂温度設定は210℃とした。)で、それぞれ測定したところ、線熱膨張係数は35ppm/Kで、引張弾性率は8.8GPaであった。この引張弾性率の値を灰分(23重量%)の数値で除した値は0.38であった。また、引張強度は65MPa(引張りひずみ1.1%)であった。
【0207】
<実施例14>
実施例13において、灰分が20重量%となるように原料の配合を調整し、成形機の樹脂温度設定は240℃とした他は、同様の操作を行なった。
この樹脂組成物をのGPC分析条件−2による重量平均分子量は3.03×10、数平均分子量は0.60×10であった。また、ヘーズ(曇価)は3.6%、であった。線熱膨張係数は36ppm/Kであった。
TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
引張試験の結果、この成形体の引張弾性率は9.7GPaで、この引張弾性率の値を灰分(実測値19重量%)の数値で除した値は0.51であった。また、引張強度は60MPa(引張りひずみ0.84%)であった。
【0208】
<比較例1>
参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを10g、シリル化剤として東京化成工業(株)社製3−アミノプロピルトリメトキシシラン4.98g、反応温度をバス温105℃、内温約92℃とした以外は、実施例3と同様にベーマイトのシリル化を行った。このベーマイトの5重量%ゾル20.00gと実施例1で用いたと同じポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液26.82gとを混合した後、ジクロロメタンを留去させ、シリル化処理ベーマイト/ポリカーボネートのシクロヘキサノンゾルを得た。実施例3と同様に、ヘプタン中にこのゾルを沈殿させ、シリル化ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物を得た(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)。
このものを実施例1と同様に乾燥後、微量混練し、押出すことができなかったので、そのまま取り出した。
【0209】
この樹脂組成物の灰分は28重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は0.073×10、数平均分子量は0.059×10であった。また、ヘーズ(曇価)のサンプルは成型できなかった。樹脂組成物中には、ベーマイトの存在する部分、存在しない部分があり、組織が不均一であった。
【0210】
<比較例2>
シリル化剤としてフルオロケム社製3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン12.27gを用いた以外は比較例1と同様の方法でシリル化ベーマイト/ポリカーボネート樹脂組成物を得た(シリル化処理ベーマイト含有量30重量%)。このものを実施例1と同様に乾燥後、微量混練して押出した。
この樹脂組成物の灰分は23重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は0.28×10、数平均分子量は0.12×10であった。また、ヘーズ(曇価)のサンプルは成型できなかった。樹脂組成物中のベーマイトは凝集していた。
【0211】
<比較例3>
参考例4で得られたベーマイトのシクロヘキサノンゾルを3.24g、シリル化剤としてチッソ(株)製フェニルトリメトキシシラン1.76gを用い、追い炊きを1回とし、ポリカーボネートの8.7重量%ジクロロメタン溶液を15.17g用いた以外は比較例1と同様の方法でシリル化ベーマイト/ポリカ―ボネート樹脂組成物を得た(シリル化処理ベーマイト含有量20重量%)。このものを実施例1と同様に乾燥後、実施例1と同じ微量混練機で240℃で5分保温し、その後同温度で15rpmにて5分混練して押出した。
この樹脂組成物の灰分は23重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は4.33×10、数平均分子量は1.0×10であった。また、ヘーズ(曇価)は76.7%であった。樹脂組成物中のベーマイトは凝集していた。また、シリル化剤の自己縮合物の塊が観察された。
【0212】
<比較例4>
比較例3の38倍のスケールでシリル化ベーマイト/ポリカ―ボネート樹脂組成物を得た。このものを実施例1と同様に乾燥後、実施例2で用いたと同じラボプラストミルで230℃、40rpmで3分混練し、取り出した。
この樹脂組成物の灰分は25重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は6.76×10、数平均分子量は1.1×10であった。また、ヘーズ(曇価)は82%、底面の直径5mm、長さ10mmの円柱の成型体の線熱膨張係数は75ppm/Kであった。
樹脂組成物中のベーマイトは凝集していた。
【0213】
<比較例5>
ベーマイトのシリル化処理を行うことなく、参考例4で得られたシクロヘキサノンのベーマイトゾルを5重量%に調整したもの386gを超音波分散機で2時間分散させた後、ポリカーボネートの10重量%ジクロロメタン溶液を450gを混合し、溶媒を留去して、ベーマイト/ポリカ―ボネート樹脂組成物を得た(シリル化処理されていないベーマイト含有量30重量%)。このものを、実施例1と同様に一晩乾燥させた後、実施例2で用いたと同じラボプラストミルで、240℃、40rpm、10分混練し、取り出した。
この樹脂組成物の灰分は25重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は1.41×10、数平均分子量は0.48×10であった。また、ヘーズ(曇価)は5.0%、底面の直径5mm、長さ10mmの円柱の成型体の線熱膨張係数は47ppm/Kであった。TEMでの分析によれば、樹脂組成物中のベーマイトは、一次粒子としてポリカーボネート中に良好に分散していた。
【0214】
<比較例6>
参考例2の方法で合成した粉体のベーマイト1.5gとテトラヒドロフラン13.5gを混合して、ベーマイトの10重量%テトラヒドロフラン溶液15gを調製し、2時間超音波処理を行った後に、実施例1で用いたと同じポリカーボネート(7030A)の8.7重量%ジクロロメタン溶液を40.2g混合し、溶媒を留去して、ベーマイト/ポリカ―ボネート樹脂組成物を得た(シリル化されておらず、分散剤も含有しないベーマイト含有量30重量%)。このものを実施例1と同様に乾燥後、実施例1と同じ微量混練機で260℃で5分保温し、その後同温度で15rpmにて5分間混練して押出した。
この樹脂組成物の灰分は25重量%、GPC分析条件−1による重量平均分子量は1.44×10、数平均分子量は0.27×10、ヘーズ(曇価)は85.6%であった。
樹脂組成物中のベーマイトは凝集していた。
【0215】
以上の実施例1〜14及び比較例1〜6における表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子又は酸化アルミニウムナノ粒子の表面元素分析結果、表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子又は酸化アルミニウムナノ粒子とポリカーボネート樹脂組成物中の元素分析の結果、物性(靭性試験、引張試験)の測定結果、樹脂組成物に含まれる灰分、樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂成分の重量平均分子量及び数平均分子量、ヘーズ(曇価)、線熱膨張係数を表1,2にまとめた。
【0216】
【表1】


【0217】
【表2】


【0218】
表1,2より本発明の表面被覆酸化アルミニウムナノ粒子を含む樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の分子量の低下が少なく、機械的特性、透明性、寸法安定性、熱安定性に優れることが分かる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成19年7月31日(2007.7.31)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛


【公開番号】 特開2008−56556(P2008−56556A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−199344(P2007−199344)