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【発明の名称】 無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料
【発明者】 【氏名】伊東 宏明

【氏名】千葉 隆人

【氏名】岩崎 利彦

【要約】 【課題】透明性に優れ、同時に機械強度を増強した光学素子を得るために、粒子表面処理剤の被覆率を高め、且つ、分散性を向上させた無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料を提供する。

【構成】下記一般式(A)で表される粒子表面処理剤を、無機微粒子表面に吸着させ、次いで加水分解性のアルコキシシランもしくはシラノール基を有するシランカップリング剤を更に添加して、該粒子表面処理剤と縮合反応をさせる無機微粒子の表面改質方法において、該粒子表面処理剤の分子量が80〜1000であることを特徴とする無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される粒子表面処理剤を、無機微粒子表面に吸着させ、次いで加水分解性のアルコキシシランもしくはシラノール基を有するシランカップリング剤を更に添加して、該粒子表面処理剤と縮合反応をさせる無機微粒子の表面改質方法において、該粒子表面処理剤の分子量が80〜1000であることを特徴とする無機微粒子の表面改質方法。
一般式(A) X−M−OH
(式中、Xは吸着基を表し、Mは2価の連結基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(A)で表される粒子表面処理剤を、無機微粒子表面に吸着させた表面吸着率が70%〜95%であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子の表面改質方法。
【請求項3】
前記無機微粒子が少なくともアルカリ土類金属を含む炭酸塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子の表面改質方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属を含む炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の無機微粒子の表面改質方法。
【請求項5】
前記一般式(A)の官能基Xが少なくとも、カルボン酸、リン酸、またはチタネート系カップリング剤から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法。
【請求項6】
前記無機微粒子表面への吸着が、非イオン性活性剤の存在化、分散機を用いて反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法により得られた無機微粒子を含有することを特徴とする熱可塑性複合材料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料に関し、更に詳しくは、透明性に優れ、且つ引っ張り強度が増強された熱可塑性複合材料に用いる無機微粒子の表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩の中でも特に炭酸カルシウムは安定性に優れ、形状の設計に自由度があるなどの特徴を持つことから、種々の樹脂にフィラーとして添加され、樹脂の増強剤や寸法安定性を向上させるといった用途で使用されてきた。これら炭酸塩は樹脂との親和性を向上させるために、脂肪酸や樹脂酸、リン酸類などで表面処理を行うことが一般的である。これらの化合物は酸基を有することから、炭酸塩粒子表面の塩基と酸塩基効果による吸着反応を示すことが知られている。更に、樹脂との親和性向上や、樹脂と共有結合を形成する目的で末端官能基を有する剤を用いるなど様々な粒子表面処理方法が提案されている。
【0003】
一方で樹脂製の光学素子の強度や寸法安定性を向上させるために同様な技術が適用できる。このような光学素子には数十nmのナノサイズ微小粒子を用いることが重要であり、光学的な散乱を抑えることで透明性を確保させる。しかしながら、炭酸塩ナノ粒子はその表面エネルギーの高さから強い凝集状態を作り、光学的な散乱を引き起こし易い。更には、このようなナノサイズの微粒子を前記方法で表面処理したとしても、粒子表面が改質剤で十分に覆われないため樹脂−粒子間の密着性が低く、散乱による透明性低下が大きな課題であった。その理由として、炭酸塩はステアリン酸などに代表される長鎖アルキル基を有する粒子表面処理剤で表面処理を行うことが一般的に用いられているが、密着性向上のため更に炭素鎖を長くしても改質剤分子間の立体障害効果により炭酸カルシウム表面上の被覆率はむしろ低下し不十分であった。
【0004】
上記課題に対し、炭酸カルシウムを500℃の高温で長時間焼成し、スチーム処理によって表面をOH基とする水酸化カルシウム層に変性させ、続く工程でOH基との結合反応性に優れるシランカップリング剤を用いて表面を十分に改質する技術が紹介されて(例えば、特許文献1参照。)いる。また、カルボキシル基と水酸基とを有するポリマーで表面を処理した後、同様に有機のシランカップリング剤で処理することにより表面改質をする方法を提案して(例えば、特許文献2、3参照。)いる。
【0005】
しかしながら、これら特許文献で提案している手法は、たしかに樹脂強度を増強させる効果が見られるものの、光学素子といった透明性が要求されるナノ微粒子の分散には好適ではなかった。その理由としては、ナノ微粒子になると、表面エネルギーが高いために粒子密度自体が低くなり、粒子表面の曲率半径が表面官能基などの分子間距離に影響を及ぼす結果、分散剤やカップリング剤の吸着率が低下してしまうことがある。また、ナノ微粒子の分散系では従来用いられてきた高分子分散剤を用いると、分散剤の大きさが粒子サイズに近いため高分子が粒子間で架橋して凝集を引き起こすといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−112920号公報
【特許文献2】特開平5−139728号公報
【特許文献3】特開平8−337719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透明性に優れ、同時に機械強度を増強した光学素子を得るために、粒子表面処理剤の被覆率を高め、且つ、分散性を向上させた無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.下記一般式(A)で表される粒子表面処理剤を、無機微粒子表面に吸着させ、次いで加水分解性のアルコキシシランもしくはシラノール基を有するシランカップリング剤を更に添加して、該粒子表面処理剤と縮合反応をさせる無機微粒子の表面改質方法において、該粒子表面処理剤の分子量が80〜1000であることを特徴とする無機微粒子の表面改質方法。
一般式(A) X−M−OH
(式中、Xは吸着基を表し、Mは2価の連結基を表す。)
2.前記一般式(A)で表される粒子表面処理剤を、無機微粒子表面に吸着させた表面吸着率が70%〜95%であることを特徴とする前記1記載の無機微粒子の表面改質方法。
【0009】
3.前記無機微粒子が少なくともアルカリ土類金属を含む炭酸塩であることを特徴とする前記1又は2記載の無機微粒子の表面改質方法。
【0010】
4.前記アルカリ土類金属を含む炭酸塩が、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記3記載の無機微粒子の表面改質方法。
【0011】
5.前記一般式(A)の官能基Xが少なくとも、カルボン酸、リン酸、またはチタネート系カップリング剤から選ばれる1種であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法。
【0012】
6.前記無機微粒子表面への吸着が、非イオン性活性剤の存在化、分散機を用いて反応させることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法。
【0013】
7.前記1〜6のいずれか1項記載の無機微粒子の表面改質方法により得られた無機微粒子を含有することを特徴とする熱可塑性複合材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、透明性に優れ、同時に機械強度を増強した光学素子を得るために、粒子表面処理剤の被覆率を高め、且つ、分散性を向上させた無機微粒子の表面改質方法及び熱可塑性複合材料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を更に詳しく説明する。
【0016】
《一般式(A)について》
本発明においては前記一般式(A)に示される粒子表面処理剤により、微粒子表面を改質することを特徴とする。一般式(A)のX部位は微粒子との吸着/もしくは結合反応を示す部位であり、OH基は水酸基としてシランカップリング剤と脱水縮合により共有結合する官能基として働く。また、Mは2価の連結基を表しており、本願ではその構造を特に限定するものではない。
【0017】
一般式(A)において、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はチタネートカップリング残基等が好ましい。2価の連結基Mとしては、アルキレン基、フェニレン基などが挙げられるがアルキレン基が好ましい。
【0018】
本願の目的には微粒子の種類を特に限定するものではなく、後述する組成のいかなる系にも適用できる特徴を持つが、中でもシランカップリング剤との吸着能を有さない微粒子が好ましく、特に炭酸塩微粒子においてその効果が発揮される。炭酸塩は一般的に塩基性表面であることが知られており、粒子表面処理剤や分散剤の有する酸性基と酸塩基効果に起因する吸着反応を示す。
【0019】
一般式(A)中の酸性基Xおよび2価の連結基Mで示される粒子表面処理剤の具体例としては、カルボン酸、リン酸、スルホン酸類などから、樹脂との親和性に合わせて適宜選ぶことができる。また、炭酸塩微粒子に対してはチタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤なども用いることが出来る。中でもカルボン酸類は所望の構造が入手し易く、吸着効果も高いことなどから好ましく用いることが出来る。カルボン酸類としては、いわゆる脂肪酸、樹脂酸、またはそのエステル構造などが一般的に用いられており、具体的には、プロピオン酸、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、牛脂ステアリン酸、パーム核脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム脂肪酸、パームステアリン酸、牛脂脂肪酸、大豆脂肪酸、部分硬化パーム核脂肪酸、部分硬化ヤシ脂肪酸、部分硬化牛脂脂肪酸、部分硬化大豆脂肪酸、極度硬化パーム核脂肪酸、極度硬化ヤシ脂肪酸、極度硬化牛脂脂肪酸、極度硬化大豆脂肪酸などの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び飽和不飽和混合脂肪酸のアンモニウム塩またはアミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩など、ナフテン酸などの脂環族カルボン酸のアンモニウム塩またはアミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩など、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸などの樹脂酸のアンモニウム塩またはアミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。
【0020】
また、本発明の実施には上記構造の誘導体として水酸基(OH基)を有することが特徴である。この水酸基は一般式(A)で示される分子のM部位の何れかの部位と連結しており、本願発明の効果をいかんなく発揮するには前記構造の末端部位に置換されていることが好ましい。また、水酸基はM部位へ少なくとも1置換されていることが重要であるが、2置換以上されていても本発明の効果を得る事が出来る。
【0021】
また更には、一般式(A)で示される粒子表面処理剤の分子量が80〜1000であることを特徴とする。これは、分子量が80より小さい処理剤は、酸性基としての性能が保てないだけでなく、表面の改質効果がほとんど現れない。また、1000よりも分子量が大きくなると、分子自体が嵩高くなり、分子間の立体反発により全ての吸着サイトと吸着せず吸着率が低くなってしまい好ましくない。更に好ましい分子量範囲としては、100〜500であり、100〜250が最も好ましい。
【0022】
本発明で用いることが出来る具体的な粒子表面処理剤としては、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブチル酸、ヒドロキシバレリアン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシエナント酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシペラルゴン酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシペンタデシル酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、またはこれらアルキル鎖の炭素数と同じで不飽和結合を有する剤、同じくこれら構造のメチルエステル、エチルエステル、カリウム塩、ナトリウム塩などを挙げることができる。
【0023】
リン酸化合物としては、前記カルボン酸と同様に脂肪族類の基を有するリン酸構造が好ましく、本発明で用いることが出来る具体的なリン酸化合物としては、ヒドロキシプロピルリン酸、ヒドロキシブチルリン酸、ヒドロキシバレリルリン酸、ヒドロキシヘキシルリン酸、ヒドロキシヘプチルリン酸、ヒドロキシカプリルリン酸、ヒドロキシペラルゴンリン酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシステアリルリン酸、またはこれらアルキル鎖の炭素数と同じで不飽和結合を有する剤、同じくこれら構造のメチルエステル、エチルエステル、カリウム塩、ナトリウム塩などを挙げることができる。ここでリン酸化合物のリンに結合するヒドロキシ置換されたアルキル基は、1置換体および2置換体が存在するが、本発明の分子量範囲であれば2置換体を用いることも出来る。
【0024】
また、本発明においてはこれら一般式(A)で示される粒子表面処理剤を1種だけでなく、2種以上併用することで吸着率の向上とシランカップリング剤との結合能を両立することができる。
【0025】
本発明において光学素子の透明性と機械強度を両立するためにも、後述する表面吸着率測定法により求めた粒子表面処理剤の吸着率が高いことが好ましい。本願で用いる粒子表面処理剤は、その無機微粒子表面への吸着率が70〜95%であることが好ましく、更に好ましくは75〜95%、最も好ましくは80〜90%である。吸着率が低いと、光学素子としての透明性を表すヘイズ値が著しく減少し、また、95%を超えるような吸着率が高い分子は、吸着はするもののシランカップリング剤との結合がし難く、表面改質が不十分になり好ましくない。
【0026】
吸着量を向上させる手段としては、本発明で用いられる比較的低分子量の粒子表面処理剤を用いることで達成することができる。また、以下の構成を組み合わせることでその効果を最大化することが重要である。
【0027】
粒子表面処理剤の添加量としては、分散時の粒子量に対して0.1質量%〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜5質量%程度で使用量と吸着量のバランスが良く好ましい。また、粒子表面処理剤の反応プロセスとしては、室温で撹拌することである程度の吸着量が得られるが、さらに吸着量を向上させるには、一般公知に用いられる各種分散機中で粒子凝集を解しながら行うことが好ましい。具体的にはビーズミル分散機や、超音波ホモジナイザーといった分散機を用いることが出来る。更に、ポリエチレングリコール類やエチレンオキサイド鎖を有するノニオン性活性剤を併用することで、解した粒子の再凝集を抑制でき本発明の効果を最大限得るために好ましい。
【0028】
また、本発明の表面改質処理では、反応効率や均一な表面処理といった観点から湿式法により吸着反応させることが重要であり、分散媒としては、水および/または一般的な有機溶媒中で行うことができる。より具体的には、水、アルコール類、または水とアルコール類の混合分散媒を用いることができる。特に、粒子表面処理剤の無機微粒子への吸着反応は非水系溶媒中で行われることが好ましく、非水系溶媒としてはアルコール類が好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール中などで処理することで高い吸着率を得る事が出来る。
【0029】
《無機微粒子》
本願の目的には無機微粒子の種類を特に限定するものではなく、下記に示す組成のいかなる系にも適用できる特徴を持つ。本発明で用いられる無機微粒子としては、例えば、酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子、燐化物、複酸化物微粒子、オキソ酸塩微粒子、複塩微粒子、錯塩微粒子等。更には、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、シュウ酸塩、水酸化物などから選ばれる。より具体的には、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム等、更には、リン酸塩、硫酸塩等、硫化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ケイフッ化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化バリウム、フッ化バリウム等が挙げられる。
【0030】
中でもシランカップリング剤との吸着能を有さない微粒子で効果があり、特に炭酸塩微粒子、更にはアルカリ土類金属の炭酸塩が無機微粒子の安定性の観点から好ましい。本発明で用いることができる更に好ましい無機微粒子の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムが挙げられ、最も好ましいのは炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムである。
【0031】
本発明の表面改質方法により改質された無機微粒子は光学素子要素に用いることが好ましい。更に詳しくは、透明性、機械強度、寸法安定性に優れた無機微粒子含有樹脂光学素子に用いることから、粒子の形状、サイズをコントロールした合成炭酸塩を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に用いられる無機微粒子の形状としては、球形だけでなく、ファイバー状、繊維状、棒状、針状、円盤状、平板状、ラグビーボール状、紡錘状、等を挙げることができ、機械強度や寸法安定性を確保するためにはファイバー状、繊維状、棒状、針状、円盤状の無機微粒子を用いることができる。
【0033】
無機微粒子のサイズとしては、透明性、機械強度の確保といった観点から、投影面積から見積もった平均円相当径が10〜200nmが好ましく、好ましくは20〜150nm、更に好ましくは30〜100nmであることが望ましい。更には、窒素吸着法により測定したBET値が10〜100m2/gであることが好ましく、更に好ましくは30〜80m2/g、最も好ましくは40〜80m2/gである。
【0034】
《炭酸塩の合成方法》
炭酸塩を製造する方法としては、炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液とを反応させて炭酸塩を製造する方法や、塩化物と炭酸ガスとの反応によって炭酸塩を製造する方法などが一般的に知られている。また、アラゴナイト構造を有する針状の炭酸塩の製造方法としては、例えば、前者の方法において、炭酸イオンを含む溶液と塩化物の溶液との反応を超音波照射下に行う方法や、Ca(OH)2水スラリーに二酸化炭素を導入する方法において、あらかじめCa(OH)2水スラリー中に、種晶となる針状アラゴナイト結晶を入れ、該種晶を一定方向にのみ成長させる方法が挙げられる。
【0035】
以下、本発明で用いることができる方法を具体的に説明する。合成炭酸カルシウムは、Ca(OH)2のエタノールスラリーを作る。このスラリーにN2ガスで希薄化させたCO2ガスを導入してCaCO3を析出させる。この時のCa(OH)2スラリーとCO2ガスを反応させる場合の各々の反応条件、具体的には、Ca(OH)2スラリーの温度、濃度、CO2ガスの単位時間における導入量等の主として反応速度に起因する各要因、を制御することによって、析出するCaCO3粒子の大きさ、形状等を決定することができる。
【0036】
本発明で用いるナノ微粒子を粒子合成法により得るためには、核形成時の溶解度を下げる観点から、摂氏0℃以下、更には生成物の溶解性に乏しい非水系溶媒中で核形成を行うことが重要である。具体的には、前記Ca(OH)2スラリーを摂氏0℃以下、好ましくは−10℃以下において、非水系溶媒中、好ましくはアルコール類もしくはアルコール類/水の混合媒、更に好ましくはエタノール/水混合媒中にN2ガスで希薄化させたCO2ガスを導入してCaCO3微粒子を生成させる。
【0037】
ナノ微粒子はその特性上、生成した核粒子同士が強い凝集状態を作り易いため、このまま樹脂と複合化しても粒子径に依存した光散乱を発生し光学素子には好ましくない。この凝集を抑制する手段としては種々の方法が挙げられるが、一般的には静電的な斥力による反発を引き起こさせることが重要である。前記方法によるナノ微粒子の合成では、核形成時のpHを高く保つことで最も凝集のしやすい等、電点から大きく離すことが出来る。好ましいpH範囲は9〜14であり、更に好ましくは11〜13程度が望ましい。また、核形成後のゼータ電位の絶対値としては20mV以上が好ましく25mV以上にすることがさらに好ましい。pH調整でゼータ電位を制御できない場合は、イオン性の界面活性剤などを併用して凝集を抑制することができる。また、粒子間の凝集を抑制する他の方法として一般的に用いられる分散剤や界面活性剤などを粒子表面に吸着させ、その立体反発により凝集体の生成を抑制することができる。
【0038】
《シランカップリング剤》
本発明において、表面処理した無機微粒子に対し処理するシランカップリング剤の種類は、特に限定されるものではなく、従来から、ゴムやプラスチックなどに配合されるシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファンなどを例示できる。これらのなかでは、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0039】
加水分解性シラン又はその部分加水分解物の具体的な種類は特に制限されるものではないが、例えば、一般式:R5bSiX4-b(式中、R5はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基で例示される一価炭化水素基であり:Xはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基等のアルコキシ基置換アルキル基;イソプロペノキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシモ基、メチルエチルケトオキシモ基などのケトオキシモ基;アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロイロキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基などのアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基などで例示される加水分解性基であり、bは0〜2の整数である)で示される加水分解性シランまたはその部分加水分解縮合物を使用することができる。前記一般式において、Xはアルコキシ基、アルコキシ基置換アルキル基又はケトオキシモ基であることが好ましい。また、bは0又は1であることが好ましい。なお、b=2の場合、すなわち2官能性の加水分解性シランを配合すると、硬化後の接着剤の低モジュラス化が可能となるので必要に応じて使用してもよい。
【0040】
更に具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシラン、エチルトリエトキシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシラン;メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、ビニルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、テトラ(ブタノキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピル(ブタノキシム)シラン、3−クロロプロピル(ブタノキシム)シラン、メチルトリ(プロパノキシム)シラン、メチルトリ(ペンタノキシム)シラン、メチルトリ(イソペンタノキシム)シラン、ビニル(シクロペンタム)シラン、メチルトリ(シクロヘキサノキシム)シランおよびこれらの部分加水分解物などが例示される。
【0041】
シランカップリング剤の加水分解物成分としては、1種類の化合物のみを使用してもよく、また2種類以上を混合して使用してもよい。これらシランカップリング剤の添加量としては、微粒子に対して1〜20質量%の範囲であり、2〜10質量%の範囲が好ましい。配合量が少なすぎると分散性に劣り凝集し易く、配合量が多すぎるとシラノール間の重合が粒子を含んだネットワーク構造をとるため増粘傾向であり好ましくない。
【0042】
シランカップリング処理は湿式および乾式で一般に行われるが、処理の均一性といった観点から湿式で行うことが好ましい。この場合、分散媒としては水、アルコール類、もしくは水/アルコール類の混合媒が好ましい。また、カップリング剤の粒子表面への吸着は比較的低温でも進行するが、好ましくは5℃〜70℃、更に好ましくは20℃〜50℃程度である。シランカップリング剤は粒子表面に吸着させた後、カップリング反応により共有結合を形成させることで強固な結合状態が得られることが特徴である。具体的には湿式処理後、分散媒を除去し、100℃〜150℃で1〜2時間程度熱処理を行うことが重要である。
【0043】
シランカップリング剤は、加水分解性のアルコキシ基もしくはシラノール基の少なくとも1つが一般式(A)のOH基と脱水縮合する。
【0044】
《熱可塑性複合材料》
本発明の熱可塑性複合材料に用いられる樹脂としては、一般的に用いられるいかなる樹脂にも適用でき、光学素子に用いることが好ましい。用途によって異なるが、一般的には例えば、光学的に透明性が高く、また複屈折性を示さない樹脂が用いられることが通例である。このような特性をもつ樹脂しては、セルロース類またはシクロオレフィン系ポリマーに代表される環状構造を有する樹脂を挙げることができる。更には優れた低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性を得るためには溶融成型可能な樹脂が好ましく、前記樹脂の中でも成型が容易な熱可塑性樹脂としてシクロオレフィン系ポリマーを用いることが好ましい。
【0045】
前記シクロオレフィン系ポリマーとしては、モノマーとしてノルボルネンを用いている日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、三井化学(株)製のトーパス、JSR(株)アートンなどが挙げられる。これらのポリマーは、一般的な汎用ポリオレフィンと比較して水分透過率が低く、またガラス転移温度が高いことから熱安定性に優れていることが知られている。ただし、光学素子に用いることができるものとしては、これらの樹脂に限定されるものではない。
【0046】
本発明に係る光学素子成型物は、前記表面処理が施された無機微粒子を含んで成る熱可塑性複合材料を成型して得られる。成型方法としては、格別制限されるものはないが、溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられる。
【0047】
成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、寸法安定性、耐熱性、低吸水性に優れる。そのため、本発明に係る光学素子は各種光学レンズや、導光板、各種光学フィルムなどに好ましく用いることができる。
【0048】
本発明に係る光学素子は用途を特に限定しないが、一般的な光学部品に適用することができる。光学部品への具体的な適用例としては、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0050】
《炭酸塩微粒子の作製》
エタノール/水の50%200ml液を−10℃に冷やし、Ca(OH)2を16g加えスラリー状とし、強撹拌しながら容器下部から炭酸ガス/窒素ガス30%にして300ml/minの流速で導入し、pHが低下し始めるまで反応させた。この分散液からサンプリングした粒子を、電子顕微鏡SEMで得た画像から画像処理により投影平均円相当径を求めたところ約80nmであった。さらに、この分散液を低温状態のままろ過し、純水で十分に洗浄してから乾燥させた。この炭酸塩微粒子について窒素吸着法によるBET測定を行ったところ約45m2/gであった。
【0051】
《一般式(A)で表される化合物による表面処理》
200ml容ビーカーに表1の一般式(A)で示される粒子表面処理剤を0.5gとり(表1のS−1は一般式(A)で示される粒子表面処理剤を加えない水準とした)エタノール100g中に溶解した後、前記炭酸塩の微粒子を10g加えた。続いて花王社性界面活性剤エマルゲン120を1.0g加え、SMT社製超音波分散機UH−300を用いて60分間かけて分散を行った。分散後、500ml容ナスフラスコに移し、50℃で60分間処理後、ロータリーエバポレーターを用いて30分かけて徐々にエタノールを除去した。
【0052】
上記粒子を再びエタノール100g中に入れ、前記超音波分散を30分かけて分散した後、ろ過しながら十分に未反応改質剤を洗い落とし、真空乾燥して表面処理済粒子を得た。
【0053】
ただし、表1の一般式(A)で示される粒子表面処理剤は、OH基がカルボニル基から最も遠い末端部に置換したものを使用した。また、ここで比較例としたカルボキシ変性ポリビニルアルコール(PVA)はカルボニルの置換率を約50%とし、ポリスチレン換算の平均分子量が異なる処理剤を用いた。
【0054】
《表面吸着率測定法》
粒子表面処理剤の処理量指標として以下に示す表面吸着率の評価を行った。
【0055】
炭酸塩の場合、表面は塩基性であることが知られているので、まずは未処理の粒子に濃度既知の酸を吸着させ、溶液中の残存酸量を適当なアルカリ溶液で滴定して求めることで、逆算的に表面の塩基吸着サイト数を求める。一方で、表面処理後のサンプルについても同様に残存酸量を測定し、その減量分から粒子表面処理剤の吸着数を求める。これら未処理での吸着サイト数と、処理済サンプルの粒子表面処理剤吸着数から、表面吸着率を求めることができる。
【0056】
表面未処理または表面処理済の粒子2.0gを取り、0.01モル/Lの過塩素酸/エタノール溶液を30ml入れて分散液を作り、超音波ホモジナイザーを用いて2時間分散を行った。続いて、該分散液の粒子を遠心分離機により沈降させ、上澄み液5mlを取ってエタノール45mlを加えて希釈した。この希釈溶液を0.01モル/Lの水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)/エタノール溶液で滴定し、溶液中に残存する過塩素酸量を測定した。
【0057】
滴下量から粒子表面に吸着した過塩素酸量を見積もり、表1の未処理水準(S−1)の表面吸着量に対する割合を以下の式により表面吸着率として求め、結果を表1に示す。
【0058】
【数1】


【0059】
《シランカップリング剤処理》
エタノール/水の90%液120gに、信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−603)を0.2g溶解させ、次いで前記の表面処理済粒子を6.0g入れて3時間室温で強撹拌させた。処理後、ろ過してアセトンで十分に洗浄した後、110℃で2時間熱処理して、樹脂添加フィラーを得た。
【0060】
《熱可塑性複合材料試料の作製》
HAAKE社製2軸混練装置に、日本ゼオン社製ZEONOR1060Rを83g、滑剤として花王社製ワックスEB−Pを0.15g、前記樹脂添加フィラー5.0gを入れて、不活性ガス雰囲気下、240℃、30rpm条件で10分間混練分散を行い、無機微粒子を含有した樹脂ペレットを得た。このペレットを溶融押し出し装置を用いて金属ロール上に製膜し、冷却剥離させることで100μm厚のシート状成型体を作製した。
【0061】
《ヘイズ測定》
ヘイズはJIS K7136に従い日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて測定し、100μm換算での値を表1に示した。
【0062】
《フィルム機械強度測定》
機械強度試験機テンシロンを用い、室温下でのシートの押し出し方向の破断伸度を測定した。評価は、破断伸度が20%未満を×、20%以上30%未満を△、30%以上50%未満を○、50%以上を◎とした。
【0063】
【表1】


【0064】
以上のように、本発明の実施により、透明性に優れ、同時に機械強度を増強した熱可塑性複合材料および光学素子を得るために、粒子表面処理剤の被覆率を高め、且つ、分散性を向上させた微粒子の表面改質方法を提供することができた。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタホールディングス株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−50188(P2008−50188A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−226312(P2006−226312)