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【発明の名称】 結晶化金属酸化物薄膜の製造方法及びその用途
【発明者】 【氏名】土屋 哲男

【氏名】中島 智彦

【氏名】渡邊 昭雄

【氏名】熊谷 俊弥

【要約】 【課題】ガラスやシリコン基板上に結晶化したYを含む薄膜形成を可能にし、性能が高い蛍光体薄膜材料の製造方法を提供する。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された Y、Dy, Sm, Gd, Ho, Eu, Tm, Tb, Er, Ce Pr, Yb, La, Nd, Luからなる群れより選ばれる少なくとも一種類の希土類金属元素を含む有機金属薄膜または金属酸化物膜を、25〜600℃の温度に保持し、波長200nm以下の紫外光を照射しつつ、結晶化を行うことを特徴とする結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項2】
有機金属薄膜または金属酸化物膜は、スパッタリング、MBE,真空蒸着、CVD、化学溶液法(塗布熱分解法、スプレー法)のいずれかにより作製されることを特徴とする請求項1に記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項3】
有機金属薄膜の有機化合物が、β−ジケトナト、炭素数6以上の長鎖のアルコキシド、ハロゲンを含んでもよい有機酸塩から選ばれる1種である請求項1又は請求項2に記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項4】
紫外光がパルスレーザである請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項5】
有機金属薄膜または金属酸化物膜の温度を350〜450℃に保ち、紫外レーザを照射することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項6】
有機金属薄膜を室温で周波数10Hz以上とフルエンス30mJ/cm2以下の紫外レーザにより照射後、フルエンス30mJ/cm2以上のレーザ光を複数のフルエンスで照射することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項7】
基板が、シリコン、化合物半導体、有機基板、石英、無アルカリガラス、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ランタンアルミネート(LaAlO3酸化マグネシウム(MgO)、酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム((LaxSr1-x)(AlxTa1-x)O3)、ネオジムガレート(NdGaO3)、イットリウムアルミネート(YAlO3)単結晶、酸化アルミニウム(Al2O3) 、イットリア安定化ジルコニア((Zr,Y)O2, YSZ)、金属基板からなる群れより選ばれる請求項1ないし請求項6のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項8】
基板が、その上にIn2O3, SnO2,ZnOから選ばれる1種以上を含む導電性を有する中間層を有する基板である請求項7に記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法により、得られた結晶化金属酸化物薄膜を用いたDRAM用キャパシタ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法により、得られた結晶化金属酸化物薄膜を用いた耐プラズマ用薄膜。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法により、得られた結晶化金属酸化物薄膜を用いた蛍光体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法により、得られたエピタキシャル膜及び結晶化金属酸化物薄膜を用いた赤外センサデバイス用中間層薄膜。
【請求項13】
請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載した結晶化金属酸化物薄膜の製造方法により、得られたエピタキシャル膜及び結晶化金属酸化物薄膜を用いた強誘電体デバイス用中間層薄膜。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
希土類元素を用いた材料は、医療用品 (レントゲンフィルム) 、永久磁石 、ガラスの研磨剤、ガラスの発色剤、超小型レンズ、蛍光体、磁気ディスク 、レーザなど様々の分野で使われており、産業上重要な金属元素として知られている。従来は、バルク材料として用いられてきたが、近年、高度情報化社会の発展に伴い、希土類元素を含む材料を単層膜あるいは異種材料を含む積層膜とした新しいデバイスの創成も進められてきている。例えば、インターネットを中心とした情報化社会の発展に伴い、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)やプラズマディスプレイ(以下、PDPという)、電解放射ディスプレイ (以下、FEDという),有機ELに代表されるフラットパネルディスプレィ(以下、FPDという)の需要が益々高まってきているが、中でもフルカラーFEDや蛍光表示管などの蛍光体薄膜として、希土類酸化物が検討されている。また、高性能化が期待されるコンピューターや携帯電話などに使われている半導体集積回路は、半導体素子の微細化、低消費電力化のために、ゲート絶縁膜を高誘電率絶縁膜(High-K絶縁膜)にする必要性が高まっており、Y2O3、La2O3、CeO2、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Lu2O3などの希土類酸化物膜をゲート絶縁膜として用いることが検討されている。更に金属酸化物薄膜を用いた高性能デバイスを創製するためには薄膜の結晶方位を制御したエピタキシャル金属酸化物薄膜の作製が必要となってきているが、希土類酸化物は結晶構造や化学的安定性からエピタキシャル薄膜の作製のための中間層として使われている。例えば強誘電体材料や赤外センサ材料などの金属酸化物をシリコン基板に作製する場合において、シリコン基板と強誘電体材料の格子ミスマッチの緩和や不純物相の生成の制御のために酸化セリウムなどの希土類酸化物薄膜を中間層として用いることができる。このように、希土類金属酸化物薄膜の応用は多岐にわたるため、高度情報化社会の持続的発展のための極めて重要な材料である。しかしながら、いずれの場合も、薄膜化には高温加熱処理が必要であるため、基板と希土類酸化物膜界面での反応や基板の劣化などの大きな問題があった。本発明は、DRAM用キャパシタ、耐プラズマ用薄膜、蛍光体薄膜およびエピタキシャル薄膜、赤外センサデバイス中間層、誘電体デバイス中間層に利用できる結晶化金属酸化物薄膜及びその用途の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FEDは、平面状の電子放出源(エミッター)から真空中に電子を放ち、蛍光体にぶつけて発光させる原理の表示装置で、ブラウン管の電子銃にあたる装置を平面状にした技術で、ブラウン管(以下、CRTという)のような明るくてコントラストの高い画面を大型平面ディスプレイで実現する。CRTでは電子を放出する電子銃が発光面から十数〜数十cm離れた位置に一つあるが、FEDではガラス基板上に微小な突起状の電極が画素と同じ数だけ格子状に並んでおり、各々が数mm離れて向かい合って配置されたガラス基板上の蛍光体に向けて電子を発射する。CRTのように偏向が必要ないため薄型大画面の平面ディスプレイを作ることができ、また、消費電力もCRTディスプレイの半分程度で済む。LCDやPDPと並んで次世代の大型平面テレビ/ディスプレイを実現する技術として期待されている。
【0003】
従来蛍光体の作製法は、微粒子を作製後、スクリーン印刷により作製している。フルカラーFED実用化のためには、高効率で電界放出エミッタへの影響が少ない各種蛍光体が必須であり、フルカラーFEDの実現のための最重要課題となっている。これまでに、FED用蛍光体として使用可能性の高い材料は、赤:[SrTiO3:Pr、Y2O3:Eu]、青 :[Zn(Ga,Al)2O4:Mn 、Y3(Al,Ga)5O12、ZnS:Cu,Al],青[Y2SiO5:Ce、ZnGa2O4、ZnS:Ag,Cl]などが知られている。非酸化物蛍光体は電子線に対する安定性が悪いのに対して、酸化物蛍光体は、安定であるためFED用蛍光体として注目されている。
しかしながら、従来の蛍光体薄膜は、バインダーを用いて成型するため、電子線照射によるガスの放出により高い発光効率を維持できない問題があった。このような問題の解決法の一つとして、ガラス基板上に希土類系蛍光体薄膜を直接製造することで、特性の改善が検討されている。
その代表的なY2O3薄膜の作製方法としては、これまでに、電子線蒸着(非特許文献1)、スパッタ法(特許文献1)、ゾルゲル法(特許文献2)、噴霧熱分解法(非特許文献2)が報告されている。
しかしながら、いずれの手法においても500℃〜1000℃の高温の基板加熱処理を含むため有機基板やガラスなど耐熱性の低い材料上への作製が困難であった。
また、Y2O3などの希土類酸化物は、誘電率が大きいため、DRAMのキャパシタとして使うことができる(特許文献3)。通常、下部電極にはシリコンが用いられるため、酸化反応が起こらない低温で薄膜を作製することが望ましい。
同様にシリコンや単結晶基板の上にY2O3などの希土類酸化物膜を中間層として用いることができる。(特許文献4)では、CeO2(酸化セリウム)タブレットを用い、電子ビーム蒸着法で基板温度800℃においてCeO2エピタキシャル層をシリコン基板上に作製している。しかしながら有機材料やアルミ配線を含む読み出し回路などが有る場合は、溶融が起こるためデバイスの作製が困難である。以上のように、希土類薄膜の応用は多岐にわたり産業上極めて重要な材料であるため、500℃以下の低温結晶成長技術の開発により、新しいデバイスの作製が可能となる。
これまでにある種の金属酸化物膜を作製する方法として、金属有機酸塩ないし有機金属化合物M(ただしM=Si、Ge、Sn、Pbの4b族元素、Cr、Mo、Wの6a族元素、Mn、Tc、Reの7a族元素:R=CH、C、C、Cなどのアルキル基、あるいはCHCOO、CCOO、CCOO、CCOOなどのカルボキシル基、あるいはCOのカルボニル基:m、nは整数)を可溶性溶媒に溶かし、あるいは液体のものはそのまま、該溶液を基板上に分散塗布した後、酸素雰囲気下でエキシマレーザを照射することを特徴とする、エキシマレーザによる金属酸化物および金属酸化物薄膜の製造方法は知られている(特許文献5)。
【0004】
さらに、従来、塗布熱分解法として知られているような高温下で熱処理することなく、基板上に金属酸化物を製造する方法であり、金属有機化合物(金属有機酸塩、金属アセチルアセトナト、 炭素数6以上の有機基を有する金属アルコキシド)を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光を照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法が知られている(特許文献6)。
ここでは、金属有機化合物を溶媒に溶解させて溶液状とし、これを基板に塗布した後に、乾燥させ、波長400nm以下のレーザ光、例えば、ArF、KrF、XeCl、XeF、Fから選ばれるエキシマレーザを用いて照射することにより基板上に金属酸化物を形成することを特徴とする金属酸化物の製造方法が記載され、波長400nm以下のレーザ光の照射を、複数段階で行い、最初の段階の照射は金属有機化合物を完全に分解させるに至らない程度の弱い照射で行い、次に酸化物にまで変化させることができる強い照射を行うことも記載されている。また、金属有機化合物が異なる金属からなる2種以上の化合物であり、得られる金属酸化物が異なる金属からなる複合金属酸化物であって、金属有機酸塩の金属が、鉄、インジウム、錫、ジルコニウム、コバルト、鉄、ニッケル、鉛から成る群から選ばれるものであることも知られている。
【0005】
またさらに、La、MnおよびCa、SrもしくはBaの各酸化物の原料成分を含む前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜を結晶化させて、組成式(La1−x)MnO3−δ(M:Ca,Sr、Ba、0.09≦x≦0.50)で表わされるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物膜(超電導を示さない)を形成する複合酸化物膜の製造方法において、前記前駆体塗布液を被塗布物の表面に塗布して成膜した後、被塗布物表面に形成された薄膜に対し波長が360nm以下である光を照射して薄膜を結晶化させることを特徴とする複合酸化物膜の製造方法が知られている(特許文献7参照)。
ここでは、被塗布物の表面に形成された薄膜に対して光を照射する光源が、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザ、XeFエキシマレーザ、YAGレーザの3倍波光またはYAGレーザの4倍波光が用いられ、被塗布物の表面に塗布される前駆体塗布液が、Laのアルカノールアミン配位化合物と、Mnのカルボン酸塩と、Mの金属またはアルコキシドとを、炭素数が1〜4である一級アルコール中で混合させ反応させて調整することが記載されている。

【0006】
【特許文献1】特開2005−68352 号公報
【特許文献2】特開2002−235078 号公報
【特許文献3】特許公開2005−150416号公報
【特許文献4】特開1997−162088号公報
【特許文献5】特許2759125号明細書
【特許文献6】特開2001−31417号公報
【特許文献7】特開2000-256862号公報
【非特許文献1】Applied Surface Science, 212-213 (2003)815
【非特許文献2】Journal of Luminescence, 93 (2001) 313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のY2O3に代表される希土類元素を含む蛍光体薄膜の製造方法においては、金属有機化合物の熱分解および蛍光体薄膜形成を行う場合、高温でかつ多くの時間を要るため、ガラス上への薄膜化が困難であった。また、ある種の金属酸化物薄膜の低温化のために紫外線レーザが有効であることが特許文献5、特許文献6、特許文献7で示されているが、希土類酸化物に関する記載はない。さらに、いずれの文献でも紫外線レーザのいずれも効果があるとされているが、希土類酸化物に対しては、248nm 266nm 308nm,351nmなどのレーザでは、全く結晶成長が起こらないことが判明した。本発明は、200nm以下のレーザを用いることで希土類酸化物薄膜が結晶成長することを見出したため、ガラスやシリコン基板上に結晶化したY2O3を含む薄膜形成を可能にし、性能が高い蛍光体薄膜材料の製造方法を提供する。

【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は希土類金属酸化物薄膜の製造において、塗布熱分解法における熱処理過程の一部を紫外光(レーザ)照射で置き換える。すなわち、金属有機化合物の溶液を支持体上に塗布及び乾燥工程(1)、有機成分の熱分解仮焼成工程(2)、蛍光体薄膜への変換を行う本焼成工程(3)をへて製造する際に、工程(2)および工程(3)と並行してあるいは工程(2)の前に、紫外光(レーザ)、特に200nm以下の波長を照射することを特徴とするY薄膜に代表される結晶化希土類金属酸化物薄膜の製造方法である。これにより、蛍光体薄膜材料の低温・高速製膜(熱処理時間の大幅な短縮)が可能になるとともに、マスクの使用や紫外光の照射位置を精密に制御することにより、素子に必要なパターニングを製膜と同時に行うことができる。
【0009】
すなわち、本発明は、酸化物が蛍光体薄膜を形成する金属酸化物薄膜が結晶化する場合に、有機薄膜及び無機膜に紫外光(レーザ)を照射することを特徴とする蛍光体薄膜の製造方法である。なお、先駆体の有機膜や無機膜の製造方法は、他の物理的手法(スパッタリング、MBE、レーザーアブレーション)、化学的手法(スプレー熱分解、CVD)でも代用できる。
また、本発明では、酸化物が蛍光体物質を形成する金属として、希土類系元素であるY、Dy, Sm, Gd, Ho, Eu, Tm, Tb, Er, Ce Pr, Yb, La, Nd, Lu,のうち少なくとも一種類の元素を含む物質母材と発光中心として少なくとも一種のCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb, Luを添加した先駆体膜を用いることが出来る。
また、あらかじめ、In2O3,SnO2,ZnOおよび金属から選ばれる1種以上の導電物質を含んだ薄膜にも効果的である。
さらに本発明は、支持体として,有機基板、ガラス基板、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、ランタンアルミネート(LaAlO3酸化マグネシウム(MgO)、酸化ランタンストロンチウムタンタルアルミニウム((LaxSr1-x)(AlxTa1-x)O3)、ネオジムガレート(NdGaO3)、イットリウムアルミネート(YAlO3)単結晶、酸化アルミニウム(Al2O3) 、イットリア安定化ジルコニア((Zr,Y)O2, YSZ)基板から選ばれる1種等を用いることが出来る。
また、本発明では、金属有機化合物が、β−ジケトナト、長鎖のアルコキシド(Cが6以上)、ハロゲンを含んでもよい有機酸塩から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。さらに本発明では、紫外光としてレーザ及び又はランプ光を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来不可能であったガラス基板やシリコン及び有機を含む基板上に低温で製造効率が良く、大量生産に適し、しかも蛍光体薄膜が優れた発光を得ることができだけでなく耐プラズマ薄膜、high−K薄膜、赤外センサデバイス中間層、誘電体デバイス中間層への適用も可能とする発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
蛍光体を形成する金属の有機化合物溶液を支持体上に塗布し、乾燥工程、仮焼成工程、本焼成工程の各工程で、紫外光を照射することを特徴とする蛍光体の製造方法である。本発明で用いる紫外光としては、レーザ光を挙げることができる。
目的に応じて、所定の工程途中や各工程の前後を選ぶことが出来る。また、金属の有機化合物溶液を基板にスピンコートし、溶媒除去のため恒温槽中130℃で乾燥後、レーザチャンバ内の試料ホルダーに試料を装着し、室温でレーザ照射することもできる。
【0012】
金属有機化合物を塗布し乾燥させた膜および本焼成初期膜のそれぞれに対してレーザ照射し、さらにこれらレーザ照射膜に対して適切な熱処理を施すことにより例えばY2O3膜を作製した場合について述べると次の効果が確認された。
1.Y2O3膜を生成する金属有機化合物の溶液を支持体上に塗布乾燥させる工程後、金属の有機化合物中の有機成分を熱分解させる仮焼成工程中に、紫外光(レーザ、ランプ光)を照射することにより、低温で結晶化が促進されることが判明した。
【0013】
従来の薄膜形成法では、図1に示すように500℃では結晶化せず750℃において結晶化反応が進むことが知られているが、本発明の蛍光体薄膜の製造方法は、低温で薄膜結晶成長ができることを確認した。
図2に、エキシマレーザによるY2O3膜の結晶化反応の経時変化をX線回折測定より調べた結果を示す。500℃の熱処理工程では、Y2O3に起因するピークはほとんど観測されないが、ArFエキシマレーザによる100mJ/cm2, 1Hz, 100パルスの照射により結晶化しており、レーザ照射がY2O3の結晶化に有効であることがわかった。
図3に塗布熱分解法および光照射法により作製した膜のフォトルミネッセンスを測定した結果を示す。図からわかるように、高温で熱処理した場合と比べて、レーザ照射した場合の発光強度が最も高いことがわかる。

【0014】
本発明の具体例を示し、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例で使用した基板は、
石英基板および無アルカリガラス基板であり、原料溶液は、
2エチルヘキサン酸イットリウム溶液に2エチルヘキサンユーロピウム溶液を用いた。紫外光照射は、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、XeClエキシマレーザを用いた。

【実施例1】
【0015】
2エチルヘキサンイットリウム酸溶液に2エチルヘキサンユーロピウム溶液を10mol%添加して混合溶液(YI)を作成した。
YI溶液を石英基板に3000rpm; 10秒間でスピンコートし、400℃で10分間加熱した。その後、基板温度を400℃に保ち、大気中で193nmのパルスレーザをフルエンス:100mJ/cm2; 1Hz; 100パルス照射した。このようにして作製した膜厚約200nmのY2O3:Eu膜について照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例2】
【0016】
実施例1において、レーザのフルエンス:150mJ/cm2で照射した場合、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例3】
【0017】
実施例1において、レーザのフルエンス:200mJ/cm2で照射した場合、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例4】
【0018】
実施例1において、照射繰り返し数を10Hzとした場合、10秒間のレーザ照射により、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例5】
【0019】
実施例1において、照射繰り返し数を50Hzとした場合、2秒間のレーザ照射により、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例6】
【0020】
実施例1において、基板を石英に代えてITO/ガラス基板(ガラス基板上にITO被膜を設けたもの)とした場合、照射部は、結晶化したY2O3膜が得られた。また、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【実施例7】
【0021】
実施例1において、基板を石英に代えて無アルカリガラス基板とした場合、照射部のみ紫外励起による高い発光強度を示した。
【0022】
(比較例1)
実施例1において、レーザ光の波長を248nmとした場合、結晶化反応は起こらなかった。また、照射部は実施例1のArFレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0023】
(比較例2)
実施例1において、レーザ光の波長を308nmとした場合、結晶化反応は起こらなかった。また、照射部は実施例1のArFレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0024】
(比較例3)
実施例1においてレーザを照射しない場合、照射部は実施例1のArFレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0025】
(比較例4)
実施例1において、加熱温度を200℃とした場合、照射部は実施例1のArFレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0026】
(比較例5)
YI溶液を石英基板に3000rpm; 10秒間でスピンコートし、400℃で10分間加熱した。その後、750度で60分間加熱した。その結果、図に示すように結晶化反応は起きたが、生成膜は、実施例1のArFレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0027】
(比較例6)
YI溶液を無アルカリガラスに3000rpm; 10秒間でスピンコートし、400℃で10分間加熱した。その結果、生成膜は、レーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。
【0028】
(比較例7)
YI溶液をITO/石英基板に3000rpm; 10秒間でスピンコートし、400℃で10分間加熱した。その結果、生成膜はレーザ照射部に比べて1/4の発光強度しか得られなかった。

【実施例8】
【0029】
YI溶液を石英に3000rpm; 10秒間でスピンコートし、室温で20mJ/cm2,10Hz、3000パルス照射後、100mJ/cm2,1Hzで100パルス照射したところ、結晶性のY2O3膜が得られた。膜は照射部のみ発光した。

【実施例9】
【0030】
YI溶液をITO付き基板に3000rpm; 10秒間でスピンコートし、室温で20mJ/cm2,10Hz、3000パルス照射後、60mJ/cm2,1Hzで100パルス照射したところ、結晶性のY2O3膜が得られた。膜は照射部のみ発光した。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】熱処理により作製した膜のXRDパターン
【図2】本発明の光照射膜のXRDパターン
【図3】熱処理および光照射により作製した膜のPLスペクトル
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−44803(P2008−44803A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219834(P2006−219834)