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【発明の名称】 複合金属酸化物及び導電性複合金属酸化物の製造方法
【発明者】 【氏名】村松 利光

【氏名】細野 秀雄

【氏名】金 聖雄

【氏名】林 克郎

【要約】 【課題】安価に入手容易な出発原材料からエレクトライドを含む導電性複合金属酸化物を製造する手段を提供すること。

【構成】略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を還元雰囲気中で1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却することにより得られるカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物、さらに、該複合金属酸化物を1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却することを含んでなる導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を還元雰囲気中で1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却することにより得られるカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物。
【請求項2】
略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を、還元雰囲気中で1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却した後、得られる複合金属酸化物を、さらに、1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却する工程を含んでなることを特徴とする導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を還元雰囲気中で、1470℃より高く1650℃未満の温度にt1時間で保持し冷却した後、得られる複合金属酸化物を1470℃より高く1650℃未満の温度にt2時間で保持し冷却する工程を含んでなり、t1/t2が1を超えることを特徴とする導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
還元雰囲気がカーボン部材から構成される容器中で加熱することにより形成される請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
容器が多重構造の容器中であり、該多重構造の容器が外側容器内部に内側容器が挿入したものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
外側容器がアルミナ坩堝であり、内側容器がカーボン坩堝である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により製造される導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物及び導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陽イオンと陰イオンが結合したイオン結晶において、陰イオンが占めるべき位置を電子が占める物質は、一般に、「エレクトライド」と命名されている。電子は負の電荷をもつという点では陰イオンと同じであるが、質量が小さく量子力学的に振舞うという点で陰イオンと異なるため、エレクトライドはユニークな性質を示すことが知られており、電子放出材料や還元材料等としての用途が期待がされている。
【0003】
エレクトライドの具体例として、例えば、非特許文献1には、クラウンエーテルとアルカリ金属を反応させることにより得られる化合物がエレクトライド化合物として記載されている。その後、いくつかの有機系エレクトライド化合物が見出されたが、それら化合物はいずれも100K程度以下の低温でのみ安定であり、空気や水と反応する非常に不安定な化合物であるという問題がある。
【0004】
一方、特許文献1には、12CaO・7Al(以下、C12A7と記載することがある)又は12SrO・7Al(以下、S12A7と記載することがある)又はそれらの混晶化合物を、蓋をしたカーボン坩堝中で還元雰囲気中にて1600℃程度に保持し、徐冷する方法により、本来は電気絶縁体であるC12A7、S12A7又はそれらの混晶化合物から電気伝導体を製造することが記載されている。
【0005】
上記特許文献1に記載の方法において出発原材料として使用されているC12A7又はS12A7結晶は、フラーレンと同様のケージ(籠)構造を有しており、そのケージ内に酸素イオンを包接している(フリー酸素イオンということがある)と考えられている。上記特許文献1の方法により得られる電気伝導体は、包接された酸素イオンを電子で置換したエレクトライドとみなすことができるものであり、室温・空気中でも安定であるという長所を有するが、このエレクトライドを高い収率で得るためには、製造過程における溶融液の状態の雰囲気、温度の制御及び冷却過程の制御が難しいという問題がある。
【0006】
この問題に対して、例えば、特許文献2には、C12A7又はその同型化合物を出発原材料として用い、カーボン部材から構成される容器中で、1470℃より高く1650℃未満の温度に保持して溶融した後、冷却することにより複合金属透明ガラスを製造し、次いでそれを真空度雰囲気中又は乾燥した不活性ガス雰囲気中で、950℃ないし1470℃の範囲内の温度に保持して結晶化させることにより電気伝導性複合金属酸化物結晶化合物を製造する方法が記載されている。
【0007】
上記方法により製造される電気伝導性複合金属酸化物結晶化合物はエレクトライドを包含するものであり、エレクトライドの量産が可能である利点を有するものの、出発原材料の純度、結晶性などに制限がある。また、目的とする電気伝導性複合金属酸化物結晶化合物を得るためには、中間体である複合金属透明ガラスの処理温度を比較的恒温で処理しなければならず、しかも雰囲気を真空又は不活性ガス充填などに調整する必要があり、工業的に不利である。
【特許文献1】国際公開第2005/000741号パンフレット
【特許文献2】特開2005−314196号公報
【非特許文献1】F.J.Tehan,B.L.Barrett,J.L.Dye,J.Am.Chem.Soc.,96,7203−7208(1974)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に非晶質のC12A7は酸素イオンを有しているものの、その殆どがカルシウムイオン又はアルミニウムイオンとイオン結合している状態にあり、結晶性C12A7のように結晶ケージ内に包接されたいわゆるフリー酸素イオンを有していないため、従来は非晶質のC12A7からエレクトライドを工業的に適した手法で製造することは困難であると考えられていた。
【0009】
本発明の目的は、より安価で入手容易な非晶質の出発原材料からカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物を製造する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、今回、略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分とする原材料を出発物質として用いた場合であっても、それを還元雰囲気中で特定の温度範囲内で加熱−冷却処理を行うと、エレクトライドと同様の挙動を示すカルシウムアルミネート含有複合金属酸化物が得られること、そして得られる複合金属酸化物をさらに上記温度範囲内で加熱−冷却処理を行うと導電性のカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は、略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を還元雰囲気中で1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却することにより得られるカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物を提供するものである。
【0012】
本発明は、また、略非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料を、還元雰囲気中で1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却した後、得られる複合金属酸化物を、さらに、1470℃より高く1650℃未満の範囲内の温度で加熱処理し冷却する工程を含んでなることを特徴とする導電性カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来はエレクトライドを製造することは困難であると考えられていた非晶質のカルシウムアルミネートを主成分とする原材料を出発物質として用いた場合でも、該原材料を還元雰囲気中で特定の範囲内の温度に加熱し冷却するという簡便な方法で、カルシウムアルミネートエレクトライドを含有する複合金属酸化物を製造することが可能である。
【0014】
以下、本発明の複合金属酸化物及びその製造方法について更に詳細に説明する。
【0015】
本発明において出発物質として用いられる非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料には、酸化カルシウム(CaO)を含む原材料と、アルミナ(Al)を含む原材料とを混合し、その混合物を、例えば、キルン中で焼成したり、電気炉内で溶融したりすることにより熱処理して得られる、CaOとAlとを主たる成分とする、水和活性を有する物質が包含され、該物質中のCaO及び/又はAlの一部は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等のアルカリ(土類)金属化合物により置換されていてもよく、あ
るいはまた、CaOとAlとを主成分とする上記の物質に上記のアルカリ(土類)金属化合物が少量固溶していてもよい。
【0016】
本明細書において、「略非晶質」なる用語は、X線回折測定において明確な結晶のピークを示さない完全なる非晶質のみならず、結晶化度が低いものをも包含する意味で使用する。
【0017】
上記非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料の形態は特に制限されるものではなく、塊状もしくは粉末であってもよく、また、粉末を静水圧プレス等の処理により成型体としたものであってもよい。
【0018】
本発明によれば、上記非晶質のカルシウムアルミネートを主成分として含む原材料は、まず、還元雰囲気中で、1470℃より高く1650℃未満の温度で加熱処理し冷却される。それにより、カルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物を得ることができる。かくして得られる複合金属酸化物は、さらに、1470℃より高く1650℃未満の温度で再び加熱処理し冷却することにより、導電性を有するカルシウムアルミネートエレクトライド含有複合金属酸化物に変えることができる。
【0019】
本発明において第一段階の加熱処理を還元雰囲気中にて行うことが、第二段階での加熱処理により複合金属酸化物に導電性を付与させるために重要である。
【0020】
上記の「還元雰囲気」としては、例えば、エレクトライド生成に必要な低酸素分圧の雰囲気や、原材料にマイナスイオンを溶け込ませる雰囲気等が挙げられ、具体的に、前者の低酸素分圧雰囲気は、例えば、原材料をカーボン部材から構成される容器中で加熱することにより形成することができ、また、後者の原材料にマイナスイオンを溶け込ませる雰囲気は、例えば、原材料に炭素原材料を添加し、不活性ガス雰囲気にてアルミナ製容器中で加熱することにより形成することができる。中でも、カーボン部材から構成される容器中で加熱する方法が好適である。
【0021】
ここで使用しうる容器の形状としては、特に制限はないが、耐熱性などの観点から、多重構造であることができ、外側容器内部に内側容器が挿入された構造であることが望ましい。
【0022】
上記外側容器及び内側容器は蓋をすることができるものであることが好ましく、蓋をすることによって、系内の空気入れ替わりを抑制して容器内の酸素濃度を低く調整することが可能となり、容器内をエレクトライドの合成に必須不可欠の条件である還元性雰囲気に容易に保つことができ、容器の外側の雰囲気を特に制御することなく大気中での処理が可能となる。
【0023】
本発明においては、外側容器がアルミナ坩堝であり、内側容器がカーボン坩堝であることが好ましい。
【0024】
還元雰囲気中での加熱処理は、1470℃より高く1650℃未満、好ましくは1580〜1620℃の範囲内の温度で行うことができる。1470℃以下の温度では、出発原材料を溶融させることができず、逆に、1650℃以上の温度では、溶融した成分の一部が蒸発するので好ましくない。
【0025】
加熱処理は、系内の温度が上記範囲内の温度に達してから、1分以上、特に10分以上、さらに特に1〜24時間保持することにより行うことが好ましい。加熱保持時間が1分未満では、最終的に得られる複合金属酸化物が導電性を発揮できなくなる可能性がある。
【0026】
なお、系の温度が上記温度に達するまでの昇温速度は、仕込む原材料の量や電気炉の容積等に依存し、特に限定されるものではないが、電気炉の能力や生成する複合金属酸化物への影響などの観点から、通常200〜800℃/時間、好ましくは300〜500℃/時間であることが望ましい。
【0027】
上記の加熱処理により形成される複合金属酸化物は、次いで冷却(徐冷)される。その際の冷却速度は、生成する複合金属酸化物がガラス状となることなく結晶化するように制御することが望ましく、一般に、常温環境下に設置された電気炉等の加熱装置の熱源を停止してから、500℃/時間以下、特に300〜500℃/時間程度とすることができるが、これに限られるものではなく、複合金属酸化物の量や電気炉の容積・設置環境等に応じて適宜変えることができる。
【0028】
上記工程を経て得られる複合金属酸化物は、本発明が1つの目的としている導電性複合金属酸化物を得るための中間体であり、その理化学的性状は明確ではなくまた上記処理条件等によっても異なる場合があるが、例えば、3CaO・Al(C3A)とCaO・Al(CA)の複合体であることができる。
【0029】
また、上記C3A及びCAは、原材料である非晶質のカルシウムアルミネートの分解物であるが、上記の加熱−冷却処理により還元性を有しており、カーボンの存在下で処理した場合には、カーボンがO2−の一部を置換してC2−として、また、容器中に不純物として又は雰囲気に微量に含まれている水素がHイオンとして該C3A及びCAに溶け込んでエレクトライドを形成していると考えることができる。
【0030】
本発明によれば、上記の如くして得られる複合金属酸化物は、さらに、1470℃より高く1650℃未満の温度で再度加熱処理し冷却することにより、導電性の複合金属酸化物に変えることができる。この処理により、上記還元性のC3A及びCAの複合体からC12A7を生成し、最終的に得られる複合金属酸化物の導電性を向上させることができる。
【0031】
この第二段階の加熱処理の温度が1470℃以下であると、得られる複合金属酸化物の導電性が不十分となり、反対に1650℃以上では溶融した成分の一部が蒸発するので好ましくない。
【0032】
本発明において、上記加熱処理は、大気中で行うこともできるが、一般には、還元雰囲気で行うことが複合金属酸化物の導電性などの観点から好ましい。ここで使用される還元雰囲気は、前記第一段階の加熱−冷却処理で説明した雰囲気と同様の雰囲気であることができ、カーボン部材から構成される容器中で行うと、製造設備が簡易であり、好適である。
【0033】
第二段階の加熱処理において、上記範囲内の温度の保持時間は、最終複合金属酸化物の導電性や生産性などの観点から、通常1分以上、特に10分以上、さらに特に30〜120分の範囲内であることが好適である。
【0034】
また、第二段階の加熱処理後の冷却時の冷却速度は、生成する複合金属酸化物がガラス状となることなく結晶化するように制御することが望ましく、一般に、常温環境下に設置された電気炉等の加熱装置の熱源を停止してから、500℃/時間以下、特に300〜500℃/時間程度とすることができるが、これに限られるものではなく、複合金属酸化物の量や電気炉の容積・設置環境等に応じて適宜変えることができる。
【0035】
さらに、第一段階の加熱処理時の加熱保持時間t1と第二段階の加熱処理時の加熱保持時間t2との間には、t1/t2の比が1を超える関係にあることが望ましく、特にt1/t2が4以上、さらに特に6以上であることが好適である。第一段階の加熱処理時の加熱保持時間t1と第二段階の加熱処理時の加熱保持時間t2との間の関係を上記の如く調整することにより、理由は定かではないが、導電性複合金属酸化物中に含まれるエレクトライド含有量が増加し、導電性を向上させることができる。
【0036】
以上に述べた本発明の方法により製造される導電性複合金属酸化物は、12CaO・7Al(C12A7)、3CaO・Al(C3A)及びCaO・Al(CA)の複合体であることができ、該C12A7は、その構造中に電子が包接されている。そのことは、X線回折結果、室温において電気伝導度を示すこと、さらには外観が2.8eVにピークを持つ吸収バンドに起因する濃緑色に変化することなどから確認することができる。また、第二段階の加熱−冷却処理により得られる導電性複合金属酸化物は、第一段階の加熱−冷却処理により得られる複合金属酸化物よりもC12A7すなわちエレクトライドの含有量が多く、このことはX線回折の結果及び電気伝導度の増加により確認することができる。
【0037】
本発明の製造方法において、上記の加熱−冷却処理の回数は2回に制限されるものではなく、必要に応じてさらに多数回繰り返して行うことも可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0039】
実施例1
図1のX線回折パターンを示す略非晶質のカルシウムアルミネート(電気化学工業社製)の微粉末を出発原材料として用いた。この粉末はC12A7相のピークは若干確認できるものの、きれいな単相ではなく殆どは非晶質であり、薄グレー色を有している。
【0040】
この微粉末を、内径45mm、深さ65mm、側部肉厚7.5mm、底部肉厚10mmの円筒状のカーボン製坩堝(新日本テクノカーボン製、材質:CIP成形品Grade IGS−744)の中に約80g入れ、同材質のカーボン製の蓋をする。蓋をすることにより、坩堝の中をエレクトライドの合成に必須不可欠の条件である還元性雰囲気に保つことができ、容器の外側の雰囲気が特に制御されない大気中での処理が可能となる。この蓋をしたカーボン製坩堝を、更に蓋付きのアルミナ製坩堝に入れ、電気炉の中で、大気中で400℃/時間の昇温速度で1600℃まで昇温させた後、同温度で1時間保持し、次いで約400℃/時間の降温速度で室温まで冷却した(溶融−冷却1回目)。なお、融解時のカーボン坩堝中の酸素分圧は10−16程度の強い還元性雰囲気となっていた。
【0041】
得られた固形物は、黒緑色の塊状であり、このもののX線回折パターンを図2の2−1に示す。図2の2−1によれば、得られた固形物はC3A、CAが殆どであり、C12A7は殆ど認められなかった。
【0042】
上記1回目の溶融−冷却工程で得られた固形物を、蓋つきのアルミナ坩堝に入れた蓋つきのカーボン坩堝にいれたまま、再び大気中で400℃/時間の昇温速度で1600℃まで昇温させた後、同温度で1時間保持し、次いで約400℃/時間の降温速度で室温まで冷却した(溶融−冷却2回目)。なお、融解時のカーボン坩堝中の酸素分圧は10−16程度の強い還元性雰囲気となっていた。
【0043】
得られた固形物は黒緑色の塊状であり、図2の2−2に2回目の溶融−冷却工程で得られた固形物のX線回折パターンを示す。図2の2−2によれば、C12A7とC3Aの複合体が形成されていることがわかる。
【0044】
実施例2
上記実施例1において、溶融−冷却2回目の1600℃での保持時間を6時間にする以外は、上記実施例1と同様の操作を行うことにより固形物を得た。
【0045】
得られた固形物は黒緑色の塊状であり、テスターで導通が確認できたため、更に正確に電気伝導度を測定したところ、0.1S/cmであった。図3に溶融−冷却2回目終了後の固体物のX線回折パターンを示す。
【0046】
実施例3
上記実施例1において、溶融−冷却1回目の1600℃での保持時間を6時間とする以外は実施例1と同様の操作を行うことにより固形物を得た。
【0047】
得られた固形物は黒緑色の塊状であり、テスターで導通が確認できたため、更に正確に電気伝導度を測定したところ、1S/cmであった。図4の4−1に溶融−冷却2回目終了後の固体物のX線回折パターンを示す。
【0048】
実施例4
溶融−冷却1回目の1600℃での保持時間を12時間とする以外は実施例1と同様の操作を行うことにより固形物を得た。
【0049】
得られた固形物は黒緑色の塊状であり、上記実施例3で得られた固形物とほぼ同じ外観であった。図4の4−2に溶融−冷却2回目終了後の状態のX線回折パターンを示す。これによると1回目の1600℃での保持時間が6時間である実施例3の場合よりも1回目の1600℃での保持時間が12時間である実施例4の方が、さらに結晶性が向上し、単相に近い状態であることが確認された。得られた黒緑色状塊について電気伝導度を測定したところ、4S/cmと良好な導電性を示した。
【0050】
比較例1
溶融−冷却過程における溶融状態の保持温度を1450℃とする以外は実施例1同様の操作を行うことにより固形物を得た。
【0051】
得られた固形物は緑色ないし黒緑色の塊状であり、実施例1と比べて大きな違いはないが、やや明度の高い(薄い)外観であった。この固形物はテスターによる測定では電気伝導性は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、出発原材料である略非晶質のカルシウムアルミネートのX線回折図の一例である。
【図2】図2の2−1は、実施例1において溶融−冷却1回目に得られた複合金属酸化物のX線回折図であり、2−2は、実施例1において溶融−冷却2回目に得られた複合金属酸化物のX線回折図である。
【図3】図3は、実施例2の処理の結果得られた固形物のX線回折図である。
【図4】図4の4−1は、実施例3の処理の結果得られた固形物のX線回折図であり、4−2は、実施例4の処理の結果得られた固形物のX線回折図である。
【出願人】 【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100060782
【弁理士】
【氏名又は名称】小田島 平吉

【識別番号】100074217
【弁理士】
【氏名又は名称】江角 洋治

【識別番号】100080241
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 修


【公開番号】 特開2008−13396(P2008−13396A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185804(P2006−185804)