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【発明の名称】 酸化カルシウム粉末及びその製造方法
【発明者】 【氏名】三隅 修

【氏名】渡辺 高行

【要約】 【課題】従来の酸化カルシウム粉末と比べて、高い反応性を有する酸化カルシウム粉末を提供する。

【構成】BET比表面積が60m2/g以上であって、かつ直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35mL/g以上の酸化カルシウム粉末。この酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が30m2/g以上であって、かつ直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上の水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成する方法で製造できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が60m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35mL/g以上である酸化カルシウム粉末。
【請求項2】
BET比表面積が70〜120m2/gの範囲にある請求項1に記載の酸化カルシウム粉末。
【請求項3】
直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.40〜0.70mL/gの範囲にある請求項1に記載の酸化カルシウム粉末。
【請求項4】
粒子径が0.25mm以下の粒子を80質量%以上含有する請求項1に記載の酸化カルシウム粉末。
【請求項5】
請求項1に記載の酸化カルシウム粉末からなる吸湿材。
【請求項6】
請求項1に記載の酸化カルシウム粉末からなる酸性ガスの吸着材。
【請求項7】
BET比表面積が30m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上である水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成することを特徴とする請求項1に記載の酸化カルシウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高反応性の酸化カルシウム粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化カルシウム(生石灰)粉末は、水との反応性が高いため吸湿材として利用されている。また、酸化カルシウム粉末は、塩基性酸化物であって、酸に対して高い反応性を有するため、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、二酸化硫黄ガス、炭酸ガスなどの酸性ガスの吸着材(化学吸着材)として利用されている。
【0003】
特許文献1には、BET比表面積が10m2/g以上の水酸化カルシウム粉末を、300Pa以下の減圧下で焼成して得られた酸化カルシウム粉末が開示されている。この特許文献1の実施例の記載によれば、酸化カルシウム粉末の吸湿性は、その原料となる水酸化カルシウム粉末のBET比表面積が大きい方が高くなる傾向にある。
【0004】
特許文献2には、水酸化カルシウム粉末の焼成により酸化カルシウム粉末を製造するに際して、原料となる水酸化カルシウム粉末のBET比表面積、焼成温度、焼成時間及び雰囲気圧力を、それぞれ特定の関係を満たすように設定して製造した、BET比表面積が30m2/g以上で、かつ総細孔容積が1.0×10-4dm3/g(0.1mL/g)以上の酸化カルシウム粉末が開示されている。この特許文献2には、酸化カルシウム粉末の水和反応性及び酸性ガス等との反応性にとって、BET比表面積とともに総細孔容積が大きいことが重要であるとの記載がある。但し、この特許文献2の実施例に開示されている酸化カルシウム粉末のうち、BET比表面積が最も大きいものは56.2m2/gで、その総細孔容積は0.18×10-4dm3/g(0.018mL/g)である。
【特許文献1】特開2005−58949号公報
【特許文献2】特開2006−21945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の酸化カルシウム粉末と比べて、高い反応性(または活性)を有する酸化カルシウム粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、高BET比表面積で、かつ大きな細孔容積を有する酸化カルシウム粉末を工業的に有利に製造する方法について検討したところ、BET比表面積が30m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上である水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成することによって、BET比表面積が60m2/g以上と高BET比表面積であって、かつ直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35mL/g以上と細孔容積の大きい酸化カルシウム粉末を得ることが可能となることを見出した。
【0007】
従って、本発明は、BET比表面積が60m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35mL/g以上である酸化カルシウム粉末にある。
【0008】
本発明の酸化カルシウム粉末の好ましい態様は以下の通りである。
(1)BET比表面積が70〜120m2/gの範囲にある。
(2)直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.40〜0.70mL/gの範囲にある。
(3)粒子径が0.25mm以下の粒子を80質量%以上含有する。
【0009】
本発明はまた、BET比表面積が30m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上である水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成することを特徴とする上記本発明の酸化カルシウム粉末の製造方法にもある。
【0010】
本発明はさらに、上記本発明の酸化カルシウム粉末からなる吸湿材にもある。
本発明はさらに、上記本発明の酸化カルシウム粉末からなる酸性ガスの吸着材にもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酸化カルシウム粉末は、高BET比表面積で、かつ細孔容積が大きいため、反応性が高く、吸湿性や酸性ガスの吸着性に優れたものである。従って、本発明の酸化カルシウム粉末は、吸湿材や酸性ガスの吸着材として有用である。
また、本発明の製造方法を利用することによって、高BET比表面積で、かつ細孔容積の大きい酸化カルシウム粉末を工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が60m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35mL/g以上である。BET比表面積は好ましくは70〜120m2/gの範囲、より好ましくは80〜120m2/gの範囲にある。直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は、好ましくは0.40〜0.70mL/gの範囲にある。
【0013】
本発明の酸化カルシウム粉末は、酸化カルシウムの一次粒子もしくは一次粒子の凝集粒子(二次粒子)からなる。本発明の酸化カルシウム粉末の粒度は、解砕操作あるいは篩分けなどの通常の分級操作により、適宜制御することができるが、通常は80質量%以上、好ましくは90質量%以上が、粒子径が0.25mm以下の粒子からなる。
【0014】
本発明の酸化カルシウム粉末は、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを、その含有率が20質量%、特に10質量%を超えない範囲で含んでいてもよい。
【0015】
本発明の酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が30m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上である水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成することからなる方法によって製造することができる。
【0016】
原料の水酸化カルシウム粉末のBET比表面積は30〜60m2/gの範囲にあることが好ましい。直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は0.20〜0.50mL/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.50mL/gの範囲にあることがより好ましい。水酸化カルシウム粉末は、通常は80質量%以上、好ましくは90質量%以上が、粒子径が0.25mm以下の粒子からなる。減圧焼成時の焼成炉内での水酸化カルシウム粉末の発塵を防止するために、水酸化カルシウム粉末を微細な粒子(例えば、粒子径が0.15mm以下の粒子)の割合が少なくなるように分級して使用してもよい。
【0017】
本発明の酸化カルシウム粉末の製造において用いる、BET比表面積が30m2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.20mL/g以上である水酸化カルシウム粉末は、例えば、下記の(1)〜(3)に記載の方法により製造することができる。
【0018】
(1)粉末状もしくは粒状の生石灰に、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸塩、糖類、糖アルコール、一価アルコール、多価アルコール、一級アミン、二級アミン、アルコールアミン、コハク酸、金属コハク酸及びリグニンスルホン酸塩よりなる群から選ばれる水溶性化合物を含む消化水を、該生石灰の消化に必要な理論量の1.5〜5質量倍の量にて、攪拌下に接触させることにより消化を行ない、含水率が5〜33質量%の低含水水酸化カルシウムを得る工程、該低含水水酸化カルシウムに水を加えて攪拌し、含水率が35〜55質量%の高含水水酸化カルシウムを得る工程、そして該高含水水酸化カルシウムを乾燥する工程からなる方法。この方法は、特開2005−350343号公報に記載がある。
【0019】
(2)粉末状もしくは粒状の生石灰に、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸塩、糖類、糖アルコール、一価アルコール、多価アルコール、一級アミン、二級アミン、アルコールアミン、コハク酸、金属コハク酸及びリグニンスルホン酸塩よりなる群から選ばれる水溶性化合物を含む消化水を、該生石灰の消化に必要な理論量の3.2質量倍以上の量にて攪拌下に接触させることにより消化を行ない、含水率が35〜55質量%の高含水水酸化カルシウムを得る工程、そして該高含水水酸化カルシウムを乾燥する工程からなる方法。この方法は、上記特開2005−350343号公報に記載がある。
【0020】
(3)粉末状もしくは粒状の酸化カルシウムを、その消化後に生成する水酸化カルシウムの量に対して0.8〜3質量%に相当する量のジエチレングリコールを含む、消化に必要な理論量の1.5質量倍以上の水に接触させることにより、消化を行ない、含水率が5〜30質量%の低含水水酸化カルシウム粉末を得た後、該低含水水酸化カルシウム粉末を乾燥する方法。この方法は、特開2003−300725号公報に記載がある。
【0021】
本発明の酸化カルシウム粉末の製造においては、上記の水酸化カルシウム粉末を、通常は300Pa以下、好ましくは1〜200Paの範囲、より好ましくは1〜150Paの範囲の圧力下、通常は315〜500℃、好ましくは330〜450℃の温度にて焼成して、酸化カルシウム粉末とする。焼成時間は、焼成温度などの条件によっても異なるが一般に30分〜30時間の範囲にある。
【0022】
本発明の酸化カルシウム粉末は、吸湿材及び酸性ガスの吸着材として利用することができる。例えば、本発明の酸化カルシウム粉末は、水蒸気や酸性ガスを含む気体に分散させて、水蒸気や酸性ガスを吸着させることができる。本発明の酸化カルシウム粉末により吸着処理可能な酸性ガスの例としてはフッ化水素ガス、塩化水素ガス、二酸化硫黄ガス及び炭酸ガスを挙げることができる。また、本発明の酸化カルシウム粉末は、酸性溶液の中和剤として、酸性溶液に投入して、該酸性溶液を中和させることができる。
【実施例】
【0023】
実施例において、BET比表面積及び直径2〜100nmの細孔の全細孔容積は、以下の方法により測定した。
【0024】
[BET比表面積の測定]
Quantachrome(株)製、全自動ガス吸着量測定装置(Autosorb−3B)を用いて、5点法にて測定する。
【0025】
[細孔容積の測定]
Quantachrome(株)製、全自動ガス吸着量測定装置(Autosorb−3B)を用いて窒素ガス吸着法により測定した脱離等温線からBJH法により累積細孔容積曲線を算出して、その累積細孔容積曲線から直径2〜100nmの細孔の全細孔容積を求める。
【0026】
[実施例1]
(1)水酸化カルシウム粉末の製造
粒子径が40〜70mmの酸化カルシウム塊状物(焼成生石灰)を、目開き74μm(200メッシュ)篩を75質量%以上パスするまで粉砕した。得られた酸化カルシウム粉末の活性度は、5分値で205mL、10分値で212mLであった。なお、活性度は下記の方法(日本石灰協会参考試験方法の粗粒滴定法に基づく方法)により測定した。
【0027】
[活性度の測定方法]
30℃の純水500mLを容量2Lの容器に入れ、少量のフェノールフタレイン指示薬を加え、攪拌機にて攪拌を350rpmにて続ける。試料の酸化カルシウム粉末を25g正確に計り取り、純水中に投入する。投入と同時に、その時刻を記録し、指示薬の色が消えないように、4Nの塩酸をビュレットから滴下し続ける。試料投入後の5分間に滴下した塩酸の量を活性度の5分値とし、10分間に滴下した塩酸の量を活性度の10分値とする。
【0028】
有効容積75Lのジャケット付き撹拌混合機のジャケットに110℃のスチームを導入して、撹拌混合機内の温度を110℃に調節した後、撹拌混合機内に、上記(1)にて製造した酸化カルシウム粉末9kgと、純水に1.8質量%のジエチレングルコールを溶解させて得た消化水8.67kg(生成する水酸化カルシウムに対するジエチレングルコール量:1.31質量%)とを投入し、両者を撹拌速度85rpmの条件で5分間撹拌混合して含水率20質量%の低含水水酸化カルシウム粉末を得た。得られた低含水水酸化カルシウム粉末を、真空ポンプを用いて乾燥機内の圧力を0.5×105Pa以下となるように脱気しながら、180℃の温度にて含水率が0.5質量%以下となるまで乾燥し、解砕した。
得られた水酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が47.0m2/gで、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は0.274mL/gであった。また、得られた水酸化カルシウム粉末の粒度を篩を用いて測定したところ、粒子径が0.25mm以下の粒子の含有率は98質量%以上であった。
【0029】
(2)酸化カルシウム粉末の製造
上記(1)にて製造した水酸化カルシウム粉末を真空焼成電気炉に入れ、炉内圧力を、真空ポンプを用いて50Pa以下にした後、炉内温度を常温から1.5℃/分の速度で425℃まで昇温し、その炉内温度を維持しながら9時間焼成した。次いで、真空焼成電気炉の炉内温度が250℃となるまで放冷して、炉内から焼成物を取り出した。なお、焼成時は、真空ポンプにて常に真空焼成電気炉内を脱気して、炉内圧力が50Pa以上にならないようにした。また、焼成物の取り出しは、窒素ガスにて炉内圧力を大気圧に調整した後に行なった。
【0030】
得られた焼成物の化学組成をX線回折法により分析したところ、得られた焼成物は酸化カルシウム粉末であることが確認された。得られた酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が103.4m2/gで、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は0.420mL/gであった。また、得られた酸化カルシウム粉末の粒度を篩を用いて測定したところ、粒子径が0.25mm以下の粒子の含有率は98質量%以上であった。
【0031】
[実施例2]
有効容積75Lのジャケット付き撹拌混合機(高速混合機プローシェアーミキサー、大平洋機工(株)製)のジャケットに110℃のスチームを導入して、撹拌混合機内の温度を110℃に調節した後、撹拌混合機内に、上記実施例1で水酸化カルシウム粉末の製造に用いた酸化カルシウム粉末9kgと、純水に1.8質量%のジエチレングルコールを溶解させて得た消化水9.73kg(生成する水酸化カルシウムに対するジエチレングルコール量:1.47質量%)とを投入し、両者を撹拌速度85rpmの条件で5分間撹拌混合して含水率25質量%の低含水水酸化カルシウム粉末を得た。次いで撹拌混合機内に、さらに純水(二次水)を3.2kg投入し、純水と低含水水酸化カルシウム粉末とを撹拌速度120rpmの条件で5分間撹拌混合して、含水率37%の高含水水酸化カルシウム粉末を得た。得られた高含水水酸化カルシウム粉末を、真空ポンプを用いて乾燥機内の圧力を0.5×105Pa以下となるように脱気しながら、180℃の温度にて含水率が0.5質量%以下となるまで乾燥し、解砕した。
得られた水酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が38.5m2/gで、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は0.317mL/gであった。また、得られた水酸化カルシウム粉末の粒度を篩を用いて測定したところ、粒子径が0.25mm以下の粒子の含有率は98質量%以上であった。
【0032】
得られた水酸化カルシウム粉末を実施例1と同様に50Pa以下の減圧下で焼成した。得られた焼成物の化学組成をX線回折法により分析したところ、得られた焼成物は酸化カルシウム粉末であることが確認された。得られた酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が88.2m2/gで、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積は0.489mL/gであった。また、得られた酸化カルシウム粉末の粒度を篩を用いて測定したところ、粒子径が0.25mm以下の粒子の含有率は98質量%以上であった。
【出願人】 【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男


【公開番号】 特開2008−1534(P2008−1534A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170106(P2006−170106)