トップ :: C 化学 冶金 :: C01 無機化学

【発明の名称】 アンモニア製造方法及び装置
【発明者】 【氏名】村本 知哉

【氏名】松澤 克明

【氏名】藤森 俊郎

【氏名】須田 俊之

【要約】 【課題】石炭、バイオマス、及び超重質油等の有機原料を用いて安価なプロセス設備により高効率でアンモニアを製造できるようにする。

【解決手段】有機原料Mと水蒸気を水蒸気ガス化炉に供給して水蒸気ガス化によりガス化ガス120を生成し、生成したガス化ガス120に水蒸気供給手段9により水蒸気と空気供給手段10により空気とを混合して自己熱改質器8によりガス化ガス120中の炭化水素を改質し、自己熱改質器8からの改質ガス11中の炭素成分を除去して得られた水素と窒素をアンモニア合成反応器16に供給してアンモニアを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機原料と水蒸気を水蒸気ガス化炉に供給して水蒸気ガス化によりガス化ガスを生成し、生成したガス化ガスに水蒸気と空気を混合して自己熱改質器によりガス化ガス中の炭化水素を改質し、自己熱改質器からの改質ガス中の炭素成分を除去して得られた水素と窒素をアンモニア合成反応器に供給してアンモニアを製造することを特徴とするアンモニア製造方法。
【請求項2】
前記水蒸気ガス化炉で生成されるガス化ガス中の炭化水素の濃度が自己熱改質器で改質可能な濃度に維持されるように水蒸気ガス化炉を制御することを特徴とする請求項1に記載のアンモニア製造方法。
【請求項3】
前記ガス化ガス中の炭化水素の濃度を、水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気の供給量により制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア製造方法。
【請求項4】
前記ガス化ガス中の炭化水素の濃度を、水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気の供給量と、水蒸気ガス化炉のガス化温度とにより制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア製造方法。
【請求項5】
前記自己熱改質器の上流に供給する空気の供給量は、アンモニア合成反応器に導入される改質ガス中の水素に対して窒素が3:1の割合になる窒素を含有する空気供給量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法。
【請求項6】
前記空気を予め空気分離機により酸素もしくは酸素富化空気と窒素に分離し、酸素もしくは酸素富化空気は自己熱改質器の上流に供給して水素の生成に供し、窒素はアンモニア合成反応器の上流に供給してアンモニアの合成に供することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法。
【請求項7】
前記自己熱改質器によって処理可能なガス化ガス中の炭化水素濃度は15%以下であり好ましくは10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法。
【請求項8】
前記自己熱改質器上流に供給する水蒸気のガス化ガス1重量%に対する供給量は0.35〜0.40重量%であり、空気の供給量は0.60〜0.70重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法。
【請求項9】
有機原料を水蒸気を用いてガス化する水蒸気ガス化炉と、ガス化ガスに水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、ガス化ガスに空気を供給する空気供給手段と、水蒸気と空気の存在下でガス化ガス中の炭化水素を改質して水素を生成する自己熱改質器と、改質ガス中の炭素成分を除去する炭素除去手段と、炭素除去手段から導出された水素と窒素を用いてアンモニアを製造するアンモニア合成反応器とを備えたことを特徴とするアンモニア製造装置。
【請求項10】
前記水蒸気ガス化炉は、2塔式ガス化炉であることを特徴とする請求項9に記載のアンモニア製造装置。
【請求項11】
前記水蒸気ガス化炉出口のガス化ガス中の炭化水素濃度を検出する炭化水素濃度検出器と、該炭化水素濃度検出器の炭化水素濃度検出値が自己熱改質器で改質可能な炭化水素濃度を維持するように水蒸気供給手段を調節して水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気量を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載のアンモニア製造装置。
【請求項12】
前記制御器が、水蒸気ガス化炉のガス化温度を制御するようにしたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置。
【請求項13】
前記空気を酸素もしくは酸素富化空気と窒素に分離する空気分離装置を備え、空気分離装置で分離した酸素もしくは酸素富化空気を自己熱改質器の上流に供給し、空気分離装置で分離した窒素をアンモニア合成反応器の上流に供給するようにしたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置。
【請求項14】
前記自己熱改質器出口の改質ガスを自己熱改質器入口のガス化ガスと熱交換して自己熱改質器入口のガス化ガス温度を高める熱交換器を備えたことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置。
【請求項15】
前記水蒸気ガス化炉出口に、タール除去器と、二酸化炭素除去器と、圧縮機を順次備えたことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア製造方法及び装置に関し、特に石炭(褐炭等の低質炭を含む)、バイオマス、及び超重質油等の有機原料を用いて安価なプロセス設備により高効率でアンモニアを製造できるようにしたアンモニア製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンモニアを製造するためのプラントは種々建設されており、典型的には、天然ガスの炭化水素原料を用いて、水素及び窒素を含有する合成ガスを製造し、水素と窒素を合成反応させてアンモニアを製造している。図4はその一例の概略を示すフローシートであり、天然ガス(主にメタンCH)の炭化水素原料aを水蒸気改質器bに供給して水蒸気の存在下主に次の反応式Iにより改質する。
【0003】
CH+HO→CO+3H・・・(I)
シフト反応(副反応):(CO+HO←→CO+H)・・・(II)
【0004】
次に、改質を行った改質ガスを自己熱改質器c(ATR=autothermal reformer)に供給して空気の存在下残りの炭化水素を主に次の反応式III及び反応式IVにより改質する。
【0005】
2CH+O→2CO+4H(発熱反応)・・・(III)
【0006】
CH+HO→CO+3H(吸熱反応)・・・(IV)
シフト反応(副反応):(CO+HO←→CO+H)・・・(V)
【0007】
続いて、改質ガスを温度が制御されたシフト反応器dに供給して前記式のシフト反応Vによる一酸化炭素を二酸化炭素に変える反応を行わせて生成した二酸化炭素を分離する。これにより改質ガスは殆どが水素と前記空気供給による窒素のみとなるので、この水素と窒素をアンモニア合成反応器eに供給することによりアンモニアが製造される。アンモニア合成反応器eでは一般に、窒素に対する水素の比(HN比)が約3になるように作動されている。このような天然ガス等の炭化水素供給原料を用いてアンモニアを製造するプラントは例えば特許文献1に示されている。
【0008】
一方、原料に石炭又はコークスを用いて酸素及び水蒸気と反応させる酸素ガス化法(部分酸化法)によりガス化ガスを生成し、続いてガス化ガス中の炭化水素を改質器を用いて改質し、得られた改質ガスからアンモニアを製造する方法は特許文献2に示されている。
【0009】
又、石炭等をガス化することによってガス化ガスを製造する方法としては、特許文献2に示される酸化ガス化法の他に、熱分解法、水蒸気ガス化法等が知られている。
【特許文献1】特開平09−165215号公報
【特許文献2】特開昭60−011587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4の方法及び特許文献1に示される方法のように、アンモニア製造用の炭化水素原料aとして天然ガスを用いた場合には、天然ガス枯渇の問題や天然ガスは原料として比較的高価であるという問題がある上に、自己熱改質器cの前段に水蒸気改質器bを設置して炭化水素を改質する必要があるために装置が複雑且つ高価になるという問題がある。
【0011】
一方、石炭等をガス化することによりまずガス化ガスを生成し、このガス化ガスを改質してアンモニア製造用の改質ガスを得る方法において、前記熱分解法の場合には、原料のガス化率が低いという問題があり、ガス化ガス中の炭化水素(CH)の含有割合が高いために、前記図4の場合と同様に自己熱改質器cの前段に水蒸気改質器bを設ける必要があって装置が高価になるという問題がある。
【0012】
本発明者らは、図5に示す実験装置を用いて熱分解ガス化と水蒸気ガス化で発生するガスの組成濃度を計測する実験を行なった。図5の実験装置は、反応容器fの内部に硅砂gを装入して外部から電気炉hで加熱し、下部から水蒸気i又は窒素ガスjを導入して流動化させた状態において、上部から石炭kを一度に所定量投入し(連続投入でない)、発生するガス化ガスl中の各種ガスの発生濃度(Vol%)を計測した。
実験は以下の条件で行なった。
石炭:褐炭(水分35%)1.8g
砂層温度:830℃
水蒸気ガス化の場合:水蒸気供給量3.0g/min
熱分解の場合:窒素ガス供給量6L/min
【0013】
【表1】


【0014】
[表1]に示すように、熱分解ガス化では水素の生成量が33.28%と少なく、炭化水素の合計量は17.5%と多いのに対し、水蒸気ガス化では水素の生成量が60.37%と多く、炭化水素の合計量は3.44%と少ないことが分かる。
【0015】
このように、水蒸気ガス化法では原料のガス化率が高められてガス化ガス中の炭化水素濃度が低くなり、又、特許文献2に示す酸素ガス化法では、更に原料のガス化率が高められてガス化ガス中の炭化水素濃度が低減されるため、ガス化ガス中の炭化水素を図4の自己熱改質器cのみで改質することが可能となり、よって、自己熱改質器cの前段に備えられている水蒸気改質器bの設置を省略することができ、更に、アンモニア製造の生産性が高められるので、水蒸気ガス化法或いは酸素ガス化法を用いることは好ましいと言える。
【0016】
しかし、特許文献2に示されるような酸素ガス化法の場合には、ガス化器に供給する酸素を製造するための空気分離機が必要であるが、酸素ガス化には大量の酸素が必要であるために非常に大型の空気分離器を設置する必要があり、大型の空気分離器の設置費用、大型の空気分離機の運転費用が増大し、よってアンモニア製造コストが増加するという問題がある。
【0017】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、石炭、バイオマス、及び超重質油等の有機原料を用いて安価なプロセス設備により高効率でアンモニアを製造できるようにしたアンモニア製造方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、有機原料と水蒸気を水蒸気ガス化炉に供給して水蒸気ガス化によりガス化ガスを生成し、生成したガス化ガスに水蒸気と空気を混合して自己熱改質器によりガス化ガス中の炭化水素を改質し、自己熱改質器からの改質ガス中の炭素成分を除去して得られた水素と窒素をアンモニア合成反応器に供給してアンモニアを製造することを特徴とするアンモニア製造方法である。
【0019】
請求項2の発明は、前記水蒸気ガス化炉で生成されるガス化ガス中の炭化水素の濃度が自己熱改質器で改質可能な濃度に維持されるように水蒸気ガス化炉を制御することを特徴とする請求項1に記載のアンモニア製造方法である。
【0020】
請求項3の発明は、前記ガス化ガス中の炭化水素の濃度を、水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気の供給量により制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア製造方法である。
【0021】
請求項4の発明は、前記ガス化ガス中の炭化水素の濃度を、水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気の供給量と、水蒸気ガス化炉のガス化温度とにより制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア製造方法である。
【0022】
請求項5の発明は、前記自己熱改質器の上流に供給する空気の供給量は、アンモニア合成反応器に導入される改質ガス中の水素に対して窒素が3:1の割合になる窒素を含有する空気供給量であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法である。
【0023】
請求項6の発明は、前記空気を予め空気分離機により酸素もしくは酸素富化空気と窒素に分離し、酸素もしくは酸素富化空気は自己熱改質器の上流に供給して水素の生成に供し、窒素はアンモニア合成反応器の上流に供給してアンモニアの合成に供することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法である。
【0024】
請求項7の発明は、前記自己熱改質器によって処理可能なガス化ガス中の炭化水素濃度は15%以下であり好ましくは10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法である。
【0025】
請求項8の発明は、前記自己熱改質器上流に供給する水蒸気のガス化ガス1重量%に対する供給量は0.35〜0.40重量%であり、空気の供給量は0.60〜0.70重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のアンモニア製造方法である。
【0026】
請求項9の発明は、有機原料を水蒸気を用いてガス化する水蒸気ガス化炉と、ガス化ガスに水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、ガス化ガスに空気を供給する空気供給手段と、水蒸気と空気の存在下でガス化ガス中の炭化水素を改質して水素を生成する自己熱改質器と、改質ガス中の炭素成分を除去する炭素除去手段と、炭素除去手段から導出された水素と窒素を用いてアンモニアを製造するアンモニア合成反応器とを備えたことを特徴とするアンモニア製造装置である。
【0027】
請求項10の発明は、前記水蒸気ガス化炉は、2塔式ガス化炉であることを特徴とする請求項9に記載のアンモニア製造装置である。
【0028】
請求項11の発明は、前記水蒸気ガス化炉出口のガス化ガス中の炭化水素濃度を検出する炭化水素濃度検出器と、該炭化水素濃度検出器の炭化水素濃度検出値が自己熱改質器で改質可能な炭化水素濃度を維持するように水蒸気供給手段を調節して水蒸気ガス化炉に供給する水蒸気量を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載のアンモニア製造装置である。
【0029】
請求項12の発明は、前記制御器が、水蒸気ガス化炉のガス化温度を制御するようにしたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置である。
【0030】
請求項13の発明は、前記空気を酸素もしくは酸素富化空気と窒素に分離する空気分離装置を備え、空気分離装置で分離した酸素もしくは酸素富化空気を自己熱改質器の上流に供給し、空気分離装置で分離した窒素をアンモニア合成反応器の上流に供給するようにしたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置である。
【0031】
請求項14の発明は、前記自己熱改質器出口の改質ガスを自己熱改質器入口のガス化ガスと熱交換して自己熱改質器入口のガス化ガス温度を高める熱交換器を備えたことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置である。
【0032】
請求項15の発明は、前記水蒸気ガス化炉出口に、タール除去器と、二酸化炭素除去器と、圧縮機を順次備えたことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1つに記載のアンモニア製造装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の請求項1〜15に記載のアンモニア製造方法及び装置によれば、石炭、バイオマス、及び超重質油等のような比較的安価な有機原料を用いて水蒸気ガス化することにより高いガス化率でガス化ガスを生成することができ、且つ、ガス化ガス中の炭化水素の濃度を低く抑えることにより、自己熱改質器の前段に設置する水蒸気改質器を省略することができ、且つ酸素ガス化法のような大型の空気分離器を設けることが省略できるため、装置設備が安価になり、しかも水蒸気ガス化による高いガス化率によってアンモニアの生産性を高められるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1は本発明を実施する形態の一例の概略を示すフローシートであり、図中1は褐炭等の低級炭を含む石炭、バイオマス、及び超重質油等の有機原料Mと共に水蒸気が供給されて水蒸気ガス化を行うようにした水蒸気ガス化炉である。
【0036】
水蒸気ガス化炉1としては、図2に示すような2塔式ガス化炉100を用いることができる。図2に示す2塔式ガス化炉100は、流動層ガス化炉102で有機原料Mのガス化により生成したチャーと流動媒体を下部から導入するようにした流動層燃焼炉101を備えており、流動層燃焼炉101は、下部の風箱103に空気管104によって供給される空気によりチャーと流動媒体を高速で流動化させつつ上昇する間にチャーを燃焼させて流動媒体を加熱する。105は流動層燃焼炉101の流動層に補助燃料を供給する補助燃料管、106は流動層燃焼炉101内上部に設けた熱回収用の熱交換器である。
【0037】
流動層燃焼炉101の上部は移送管107を介してサイクロンからなる分離器108に接続されており、該分離器108は外筒109と内筒110からなり、移送管107から外筒109内に接線方向に導入された未燃チャーと流動媒体を含む排ガスは遠心分離され、排ガス及び粒径の細かい灰分は内筒110から排出され、粒径の粗い未燃チャーと流動媒体111は、分離器108に接続した降下管112により下部の流動層ガス化炉102に供給されるようになっている。
【0038】
流動層ガス化炉102は、分離器108で分離された流動媒体111を導入する導入部113と、原料供給ライン114から供給された有機原料Mを流動媒体111の熱でガス化するガス化部115と、導入部113とガス化部115とを流動層116内で連通して導入部113からガス化部115へ流動媒体111を移送させる連通部117と、導入部113、連通部117及びガス化部115の下部に渡って形成された水蒸気を投入するボックス部118とからなり、そのボックス部118に水蒸気供給手段119が接続されている。尚、図2において導入部113とガス化部115を連通部117で分けているのは、ガス化部115内で有機原料Mがガス化されることによる圧力の上昇によって、流動層ガス化炉102内の流動媒体111が分離器108に逆流するのを防止するためのものである。
【0039】
ガス化部115で生成されるガス化ガス120は、流動化のための空気や窒素などの不活性ガスを含まない水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素及び水蒸気等が混在したガスであり、生成したガス化ガス120は、排出管121より回収器122に導かれてガス化ガス120中に同伴した微粉末123が除去された後、内管124から導出される。また、ガス化部115でガス化されなかったチャーと流動媒体の一部は、オーバーフロー管125から流動層燃焼炉101に循環され、再度燃焼と流動化とが行われるようになっている。
【0040】
前記水蒸気ガス化炉1で生成したガス化ガス120は、図1に示すタール除去器2に導かれて水噴射等によりタールが除去された後、二酸化炭素除去器3に導かれて吸収法等により二酸化炭素(CO)が除去され、続いて圧縮機4により圧縮される。この時、ガス化ガス120中の二酸化炭素が二酸化炭素除去器3で除去されてガス化ガス120が減容されることにより圧縮機4による圧縮動力が低減される。
【0041】
圧縮機4で圧縮されたガス化ガスは硫黄除去器5により硫黄が除去された後、熱交換器6を経て外熱式バーナー7により例えば750℃前後まで加熱されて自己熱改質器8(ATR=autothermal reformer)に供給される。
【0042】
自己熱改質器8の上流側における、例えば硫黄除去器5出口にはガス化ガスに水蒸気を供給する水蒸気供給手段9が設けてあり、又、外熱式バーナー7出口にはガス化ガスに空気を供給する空気供給手段10が設けてあり、自己熱改質器8は水蒸気と空気の存在下でガス化ガス中の炭化水素から水素を生成する前記反応式III(発熱反応)及び反応式VI(吸熱反応)の反応を行い、これによって水素と窒素が主体で一部一酸化炭素及び二酸化炭素を含有した改質ガス11を生成するようになっている。
【0043】
自己熱改質器8出口の改質ガス11の温度は例えば1000℃前後に高められており、この高温の改質ガス11は前記熱交換器6によって前記水蒸気が供給されたガス化ガスを加熱した後、炭素成分除去手段14に供給される。炭素成分除去手段14は、高温シフト部12aと冷却器12bにて冷却した後の低温シフト部12cとからなる高温・低温シフト反応器12を有して前記改質ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変換するようになっており、更に、高温・低温シフト反応器12の後段に設けた二酸化炭素除去器13によって吸収法等により前記生成した二酸化炭素(CO)が除去されるようになっている。
【0044】
炭素成分除去手段14を出た改質ガス中にはまだ微量の一酸化炭素(CO)が含まれているため、改質ガスはメタン生成反応器15に供給されて一酸化炭素からメタンが生成される。メタン生成反応器15から出た改質ガスは殆どが水素と窒素になっているので、アンモニア合成反応器16に供給されてアンモニア(NH)が製造される。メタン生成反応器15において生成するメタンは非常に微量でありアンモニアの製造に悪影響を生じることは無いが、必要な場合には改質ガスから除去するようにしてもよい。
【0045】
前記水蒸気ガス化炉1出口にはガス化ガス120中の炭化水素濃度を検出する炭化水素濃度検出器17を設けており、該炭化水素濃度検出器17の炭化水素濃度検出値18が制御器19に入力され、制御器19は前記水蒸気供給手段119に備えた水蒸気供給弁20を調節して水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気供給量を制御するようになっている。前記制御器19には、前記自己熱改質器8によって改質可能な炭化水素濃度を求める試験を実施して得た炭化水素濃度21が予め入力されており、従って、制御器19は、前記炭化水素濃度検出器17からの炭化水素濃度検出値18が設定された炭化水素濃度21と一致するように、即ち自己熱改質器8で改質可能な炭化水素濃度21が維持されるように、水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気供給量を制御するようにしている。
【0046】
尚、前記制御器19は、水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気供給量を制御すると共に、水蒸気ガス化炉1のガス化温度を調節するようにしてもよい。ガス化温度を調節する方法としては、図2の流動層燃焼炉101から流動層ガス化炉102に循環する流動媒体の循環量を制御する方法、又は補助燃料管105によって流動層燃焼炉101に供給する補助燃料量を調節する方法等を用いることができる。
【0047】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0048】
図1、図2に示す如く、水蒸気ガス化炉1には石炭(褐炭等の低級炭を含む)、バイオマス等の有機原料Mを供給すると共に、水蒸気供給手段119により水蒸気を供給する。水蒸気ガス化炉1は有機原料Mを水蒸気ガス化してガス化ガス120を生成する。
【0049】
ガス化ガス120は、タール除去器2に導かれてタールが除去された後、二酸化炭素除去器3に導かれて二酸化炭素が除去され、続いて圧縮機4により圧縮される。この時、ガス化ガス120中の二酸化炭素が二酸化炭素除去器3で除去されてガス化ガス120が減容されることにより圧縮機4による圧縮動力が低減される。
【0050】
圧縮機4で圧縮されたガス化ガスは硫黄除去器5により硫黄が除去された後、熱交換器6を経て外熱式バーナー7により加熱され、自己熱改質器8(ATR)に供給される。
【0051】
この時、自己熱改質器8の上流側における、硫黄除去器5出口のガス化ガスには水蒸気供給手段9により水蒸気が供給され、又、外熱式バーナー7出口のガス化ガスには空気供給手段10により空気が供給されているので、自己熱改質器8では水蒸気と空気の存在下でガス化ガス中の炭化水素から水素を生成する前記反応式反応式II及び反応式IIIの反応が行われる。これにより水素と窒素が主体で一部一酸化炭素及び二酸化炭素を含有した改質ガス11が生成される。
【0052】
改質ガス11は、前記熱交換器6を経て高温・低温シフト反応器12に供給される。この時、自己熱改質器8出口の高温の改質ガス11(例えば1000℃)によって自己熱改質器8に供給されるガス化ガス120を加熱するようにしているので、自己熱改質器8に供給されるガス化ガス120の要求温度(例えば750℃)に加熱するための外熱式バーナー7の消費燃料を削減することができる。
【0053】
熱交換器6により冷却された改質ガス11は、例えば350℃前後に温度調節されて高温・低温シフト反応器12の高温シフト部12aに供給され、続いて、冷却器12bで例えば200℃前後に冷却されて低温シフト部12cに供給される。この時、高温シフト部12aでは前記シフト反応Vの左項の反応が行なわれ、低温シフト部12cでは右項の反応が行なわれることにより改質ガス中の一酸化炭素が二酸化炭素に変換される。続いて、改質ガスは炭素成分除去手段14に導かれて吸収法等により二酸化炭素が除去される。炭素成分除去手段14を経た改質ガス中には微量の一酸化炭素が残っているため、改質ガスはメタン生成反応器15に供給されて一酸化炭素からメタンが生成される。メタン生成反応器15から取り出された改質ガスは殆どが水素と窒素となっているので、アンモニア合成反応器16に供給されてアンモニア(NH)が製造される。
【0054】
前記したように、自己熱改質器8では水蒸気と空気の存在下でガス化ガス中の炭化水素から水素を生成する改質を行なっているが、処理できるガス化ガス120中に含有される炭化水素の濃度には限度がある。従って、自己熱改質器8が処理できる炭化水素の濃度範囲になるように、水蒸気ガス化炉1で生成されるガス化ガス120の成分を調節することができれは、図4に示したような自己熱改質器cの前段に水蒸気改質器bを設置することが省略できる。
【0055】
このため、水蒸気ガス化炉1出口のガス化ガス120中の炭化水素濃度を炭化水素濃度検出器17で検出し、該炭化水素濃度検出器17の炭化水素濃度検出値18を、自己熱改質器8での改質可能な炭化水素濃度を求める試験を実施して得た炭化水素濃度21が予め入力された制御器19に入力している。従って、制御器19は、前記炭化水素濃度検出器17からの炭化水素濃度検出値18が設定された炭化水素濃度21と一致するように、即ち自己熱改質器8で改質可能な炭化水素濃度21が維持されるように、水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気供給量を制御する。水蒸気供給量を増加すると炭化水素濃度は低下し、水蒸気供給量を低減すると炭化水素濃度は増加することで制御が行われる。
【0056】
自己熱改質器8によって処理可能なガス化ガス中の炭化水素濃度は自己熱改質器8の性能、種々の外的条件等によって変化するが、この種のプラントにおいて安定運転を行うことができる炭化水素濃度は通常15%以下であるため、制御器19に設定する炭化水素濃度21は15%以下、好ましくは10%以下としている。ここで、水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気量を増加すると、水蒸気ガス化炉1においてその水蒸気を例えば830℃の反応温度まで加熱するための熱エネルギー的な損失が増大するため、ガス化ガス120中の炭化水素濃度は、自己熱改質器8で処理できる炭化水素濃度の上限値に近い値に設定することが好ましい。
【0057】
尚、前記制御器19は、水蒸気ガス化炉1に供給する水蒸気供給量を制御すると共に、図2の流動層燃焼炉101から流動層ガス化炉102に循環する流動媒体の循環量を制御する方法、又は補助燃料管105によって流動層燃焼炉101に供給する補助燃料量を調節する方法等を用いてガス化温度を調節するようにしてもよい。
【0058】
前記自己熱改質器8の上流に空気供給手段で供給する空気の供給量は、アンモニア合成反応器16に導入される改質ガス11中の水素に対して窒素が3:1の割合になる窒素を含有する空気供給量に調整する。これによりアンモニア合成反応器16において安定したアンモニアの製造が行なわれるようになる。
【0059】
本発明者らが、ガス化ガス120中の炭化水素濃度を6%に調整した場合について試験を行なったところ、ガス化ガス1重量%に対して前記自己熱改質器8の上流に供給する水蒸気の供給量を0.35〜0.40重量%とし、空気の供給量を0.60〜0.70重量%としたところ、アンモニア合成に好適なH/N=3の改質ガスを安定して得ることができた。
【0060】
図3は本発明の他の形態を示したもので、図1に示した構成において、前記自己熱改質器8の上流に供給する空気を、予め空気分離機22に供給して酸素(O)もしくは酸素富化空気と窒素(N)とに分離するようにし、酸素もしくは酸素富化空気は自己熱改質器8の上流に供給して水素の生成に用い、窒素はアンモニア合成反応器16の上流、又はメタン生成反応器15の上流に供給することによってアンモニアの合成に用いるようにしている。
【0061】
図3の形態では空気を空気分離機22で酸素もしくは酸素富化空気と窒素に分離して供給するようにしているので、アンモニア合成反応器16に供給される水素と窒素の割合を調整することができ、よって調整の自由度を高めることができる。
【0062】
尚、ここで用いる空気分離機22は、アンモニア合成反応器16でのアンモニア合成に必要な窒素を生成できる程度の小規模な装置でよく、従って、前記特許文献2に示されるような酸素ガス化法の場合における空気分離機に対して1/4〜1/5程度の小型の設備とすることができ、よって安価に実施することができる。
【0063】
上記したように、本発明のアンモニア製造方法及び装置では、石炭、バイオマス、及び超重質油等のような比較的安価な有機原料を用いて水蒸気ガス化することにより高いガス化率でガス化ガスを生成することができ、且つ、ガス化ガス中の炭化水素の濃度を低く抑えることにより、自己熱改質器の前段に設置する水蒸気改質器を省略することができ、且つ酸素ガス化法のような大型の空気分離器を設けることが省略できるため、装置設備が安価になり、しかも2塔式ガス化炉100のようなガス化率が高い装置を用いることによってアンモニアの生産性を高めることができる。
【0064】
なお、本発明のアンモニア製造方法及び装置は、上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明を実施する形態の一例の概略を示すフローシートである。
【図2】本発明の水蒸気ガス化炉として用いられる2塔式ガス化炉の概略側面図である。
【図3】本発明を実施する形態の他の例の概略を示すフローシートである。
【図4】天然ガスを用いてアンモニアを製造する従来の一例の概略を示すフローシートである。
【図5】本発明者らが行なった熱分解ガス化と水蒸気ガス化で発生するガスの組成濃度を計測する実験に用いられた実験装置の概要図である。
【符号の説明】
【0066】
1 水蒸気ガス化炉
2 タール除去器
3 二酸化炭素除去器
4 圧縮機
6 熱交換器
8 自己熱改質器(ATR)
9 水蒸気供給手段
10 空気供給手段
11 改質ガス
14 炭素成分除去手段
16 アンモニア合成反応器
17 炭化水素濃度検出器
18 炭化水素濃度検出値
19 制御器
21 炭化水素濃度(設定)
22 空気分離機
100 2塔式ガス化炉
119 水蒸気供給手段
120 ガス化ガス
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【出願日】 平成18年11月22日(2006.11.22)
【代理人】 【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所


【公開番号】 特開2008−127256(P2008−127256A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−315812(P2006−315812)