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【発明の名称】 アンモニア合成方法
【発明者】 【氏名】秋鹿 研一

【氏名】小島 綾一

【氏名】酒井 裕雄

【氏名】長谷川 義洋

【氏名】持田 典秋

【氏名】橋本 啓治

【氏名】大久保 正和

【要約】 【課題】高活性なアンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成方法を提供する。

【構成】本発明に係るアンモニア合成方法は、窒素と水素とを反応させてアンモニアを合成するアンモニア合成方法であって、モリブデン酸コバルトの水和物を窒化してできるコバルト・モリブデン複合窒化物を含むアンモニア活性の触媒を用いて、0.1MPa以上3MPa以下の反応圧力にして、窒素と水素とを反応させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素と水素とを反応させてアンモニアを合成するアンモニア合成方法であって、モリブデン酸コバルトの水和物を窒化してできるコバルト・モリブデン複合窒化物を含むアンモニア活性の触媒を用いて、0.1MPa以上3MPa以下の反応圧力にして、窒素と水素とを反応させることを特徴とするアンモニア合成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はアンモニア合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニアを合成するには、鉄を主成分とし、アルミナ、酸化カリウムなどを助触媒として添加した鉄系触媒が広く用いられている。
【特許文献1】特開2000−264625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、アンモニア合成装置の建設経費、運転経費を低減するためには、アンモニア合成活性が従来の鉄系触媒に比べてさらに高い触媒が望まれている。
【0004】
本発明は、高活性なアンモニア合成触媒及びアンモニア合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は次の発明により解決される。
【0006】
本発明に係るアンモニア合成方法は、窒素と水素とを反応させてアンモニアを合成するアンモニア合成方法であって、モリブデン酸コバルトの水和物を窒化してできるコバルト・モリブデン複合窒化物を含むアンモニア活性の触媒を用いて、0.1MPa以上3MPa以下の反応圧力にして、窒素と水素とを反応させることを特徴としている。
【0007】
アンモニア合成においては、鉄系触媒、ルテニウム系触媒、モリブデン系触媒が高いアンモニア合成活性を有することが知られているが、これらの中で、モリブデン系触媒については、鉄系触媒やルテニウム系触媒に比べて、触媒機能に関する研究例が少なく、高活性触媒の開発はあまりなされていない。このような状況にあって、モリブデン系触媒の一つとして、窒化モリブデン(MoN)が知られている。酸化モリブデンをアンモニア気流下、適切な温度と時間で処理して得た窒化モリブデンは比表面積が大きいと言う特性を有しているが、触媒活性はそれほど大きくはない。
【0008】
しかし、本発明者らは、上記のような方法でモリブデンが窒化されると、比表面積が非常に大きくなることと、モリブデンとコバルト、ニッケル、鉄などの遷移金属がバイメタル化することにより高活性を有することに着目し、モリブデン系複合窒化物触媒が高活性触媒であるとの結果を得た。このため、本発明においては、モリブデンと組み合わせる遷移金属としてコバルトを選定し、触媒を高活性化することを図っている。
【0009】
本発明におけるモリブデンとコバルトよりなる窒化物としては、(1)コバルト添加窒化モリブデン(Co/MoN)、(2)窒化モリブデンと窒化コバルトの混合物、(3)コバルト・モリブデン複合窒化物(CoMoN)の何れであってもよいが、上記の中、特に、コバルト・モリブデン複合窒化物を主成分とするものが高活性を有する。これは、モリブデンとコバルトがバイメタル化することにより、一段と活性化されためである。(2)及び(3)におけるモリブデンとコバルトの含有比(Co/Moモル比)が1/1程度であると、長期間触媒活性が保たれ、安定しているので、Co/Moモル比は1/1程度が好ましい。
【0010】
コバルト・モリブデン複合窒化物(CoMoN)はモリブデン酸コバルト又はモリブデン酸コバルト水和物を窒化処理したものであって、前駆体であるモリブデン酸コバルト又はモリブデン酸コバルト水和物の調製の方法によって、触媒活性が異なる。
【0011】
さらに、上記のコバルト・モリブデン複合窒化物(CoMoN)に、セシウムやカリウムなどのアルカリが添加されると、一層高活性を有するものになる。
【0012】
本発明に係るアンモニア合成方法によれば、アンモニア合成活性が高い、上記何れかのアンモニア合成触媒を使用するので、アンモニア合成反応が効率よく行われる。
【0013】
本発明に係る触媒は、コバルト添加窒化モリブデン、窒化モリブデンと窒化コバルトの混合物、及びコバルト・モリブデン複合窒化物などの窒化物を主成分とするものであって、アンモニア合成活性が極めて高い触媒である。このため、この触媒を使用すれば、アンモニアの転化率が向上し、効率のよいアンモニア合成を行うことができる。
【0014】
又、本発明に係るアンモニア合成方法によれば、使用する触媒がコバルト添加窒化モリブデン、窒化モリブデンと窒化コバルトの混合物、及びコバルト・モリブデン複合窒化物などの窒化物を主成分とするものであり、アンモニア合成活性が極めて高いものであるので、アンモニアの転化率が高くなり、原料ガスのリサイクル比を小さくすることができる。このため、アンモニア合成装置が小型化され、装置の建設費及び運転費が低減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアンモニア合成方法によれば、使用する触媒がアンモニア合成活性が極めて高いものであるので、アンモニアの転化率が高くなり、原料ガスのリサイクル比を小さくすることができる。このため、アンモニア合成装置が小型化され、装置の建設費及び運転費が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
各触媒は次に記載する方法により製造される。
(第1の発明に係る触媒(A)の製法)硝酸コバルトの水溶液中に酸化モリブデンを浸漬して、酸化モリブデンに硝酸コバルトを含浸させ、これを乾燥した後、窒化処理する。窒化処理においては、硝酸コバルトを含浸させた酸化モリブデンをアンモニア雰囲気の中に置き、所定の昇温速度で所定温度まで加熱した後、その温度で所定時間以上保持する。具体的な窒化条件の一例を示せば、例えば、623Kまでの昇温速度を10K/min、623K〜723Kまでの昇温速度を0.6K/min 、723K〜973Kまでの昇温速度を3K/min で行い、973Kで1時間保持する。
【0017】
この処理により、コバルト添加窒化モリブデン(Co/MoN)を主成分とする触媒物質が得られる。この触媒におけるコバルトとモリブデンの含有比(Co/Moモル比)は1/20程度であることが好ましい。
【0018】
(第2の発明に係る触媒(B)の製法)酸化モリブデンの粉末と酸化コバルトの粉末を混合し、この混合物を窒化処理する。窒化処理は触媒(A)を製造する場合と同じ条件で行う。この製法によれば、窒化モリブデンと窒化コバルトの混合物を主成分とするものが得られる。この触媒におけるコバルトとモリブデンの含有比(Co/Moモル比)は1/1程度であることが好ましい。
【0019】
(第4の発明に係る触媒(C)の製法)硝酸コバルト(Co(NO・6HO)とモリブデン酸アンモニウム((NHMo24・4HO)を混合し、この混合物を空気中で焼成する。この焼成によりモリブデン酸コバルト(CoMoO)を主成分とする焼成物が得られる。焼成条件の一例を挙げれば、1073Kで3時間焼成する。
【0020】
次いで、上記モリブデン酸コバルト(CoMoO)を主成分とする焼成物をアンモニア雰囲気の中に置き、所定の昇温速度で所定温度まで加熱した後、その温度で所定時間以上保持する。具体的な窒化条件の一例を示せば、例えば、加熱は昇温速度を5K/min にして行い、973Kで6時間保持する。
【0021】
上記の処理により、コバルト・モリブデン複合窒化物(CoMo N)を主成分とする物質が得られる。この触媒におけるコバルトとモリブデンの含有比(Co/Moモル比)は1/1程度であることが好ましい。
【0022】
(第5の発明に係る触媒(D)の製法)硝酸コバルト(Co(NO・6HO)とモリブデン酸アンモニウム((NHMo24・4HO)の水溶液を混合し、 沸騰させる。生成した沈殿物(モリブデン酸コバルトの水和物(CoMoO・0.9HO))を濾別し、洗浄する。次いで、濾別・洗浄して得たモリブデン酸コバルトの水和物を窒化処理する。窒化処理は、例えば、触媒(C)を製造する場合と同じ条件で行う。上記の処理により、コバルト・モリブデン複合窒化物(CoMo N)を主成分とする物質が得られる。この触媒におけるコバルトとモリブデンの含有比(Co/Moモル比)は1/1程度であることが好ましい。
【0023】
(第6の発明に係る触媒(E)の製法)硝酸コバルト(Co(NO・6HO)と、モリブデン酸カリウム(KMoO)又はモリブデン酸セシウム(CsMoO)の水溶液を混合し、 加熱して沸騰させる。生成した沈殿物(モリブデン酸コバルトの水和物(CoMoO・0.9HO))を濾別し、洗浄する。次いで、濾別・洗浄して得たモリブデン酸コバルトの水和物を窒化処理する。窒化処理は、例えば、触媒(C)を製造する場合と同じ条件で行う。この処理により、コバルト・モリブデン複合窒化物(CoMo N)を主成分とする物質が得られる。
【0024】
上記の製法によって得られる触媒(E)は触媒(D)よりも高いアンモニア合成活性を示す。これは、残存するカリウム又はセシウムが電子供与効果を発揮し、触媒表面での窒素活性化を促進する作用をしているためと考えられる。この触媒におけるコバルトとモリブデンの含有比(Co/Moモル比)は1/1程度であることが好ましい。
【0025】
(第7の発明に係る触媒(F)の製法)硝酸カリウム(KNO)又、は硝酸セシウム(CsNO)の水溶液中にモリブデン酸コバルトの水和物(CoMoO・0.9HO)を浸漬して、モリブデン酸コバルトの水和物に硝酸カリウム又、は硝酸セシウムを含浸させ、これを乾燥した後、窒化処理する。窒化処理は、例えば、触媒(C)を製造する場合と同じ条件で行う。この処理により、カリウム又はセシウムが添加されたコバルト・モリブデン複合窒化物(CoMo N)を主成分とする物質が得られる。前述のように、カリウム又はセシウムを添加することにより触媒表面での窒素活性化が促進されるので、触媒(F)は極めて高いアンモニア合成活性を示す。
【0026】
カリウム又はセシウムの添加量は、カリウム添加の場合、K/Mo(モル比)=30/100程度、セシウム添加の場合、Cs/Mo(モル比)=10/100程度であるのが好ましい。
【0027】
本発明に係るアンモニア合成方法は、第1の発明〜第7の発明に係るアンモニア合成触媒の何れかの触媒上で窒素と水素の混合ガスを反応させることにより行う。反応は、反応温度200〜550℃、好ましくは300〜550℃、反応圧力0.1〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa、空間速度360〜36000、窒素と水素のモル比1/10〜1/1の条件で行うことが好ましい。
【実施例】
【0028】
上記の方法によって製造した各触媒について、アンモニア合成実験を行い、アンモニア合成活性を測定した。実験は次のように行った。実験装置に上記各触媒0.4gを充填し、N/H 比が1/3の原料ガスを60cm/minの流量で流通させ、反応温度を673K、反応圧力を0.1〜3MPaに調整してアンモニア合成反応を行った。そして、反応後ガスを採取してアンモニア濃度の分析を行い、この分析値からアンモニア合成活性を求めた。
【0029】
なお、比較のために、触媒として窒化モリブデン(MoN)を用いた実験も行った。
【0030】
実験結果は、表1及び図1〜図3に示す。表1は圧力を0.1MPaで反応させた際の結果である。表1により明らかなように、本発明の各触媒を用いた場合のアンモニア合成活性は、窒化モリブデンを用いた比較例の値に対し、格段に高い値であった。特に、コバルト・モリブデン複合窒化物にアルカリを添加した触媒F−1(K添加)、触媒F−2 (Cs添加)を用いた場合には、極めて高いアンモニア合成活性が得られた。
【0031】
図1は各触媒のアンモニア合成活性に係る経時変化を示す図である。この実験においては、反応圧力0.1MPaで行った。この図に示すように、窒化モリブデンを用いた比較例(○印)においては、触媒活性が低い上に、短時間使用しただけで失活してしまった。これに対し、実施例においては、何れの触媒を使用した場合にも、高い活性が持続した。特に、◆で示した触媒(D)を使用した場合には、他の触媒と比べて一段と高い活性が得られている。
【0032】
図2はコバルト・モリブデン複合窒化物にアルカリを添加した触媒において、アルカリの添加量とアンモニア合成活性の関係を示す図である。この実験においては、反応圧力を0.1MPaにして行った。図2によれば、カリウムを添加した触媒(F−1)においては、K/Mo(モル比)=30/100の付近で触媒活性が最も大きくなる。又、セシウムを添加した触媒(F−2)においては、Cs/Mo(モル比)=10/100の場合に最も大きい触媒活性が得られた。
【0033】
図3は反応圧力とアンモニア合成活性の関係を示す図である。この図によれば、コバルト・モリブデン複合窒化物を主成分とする触媒(D)、これにセシウムを添加した触媒(F−2)の何れにおいても、反応圧力の増加に伴い触媒活性も増加している。この傾向は、本発明の触媒がルテニウム系触媒などの他の触媒とは違い、水素被毒の度合いが非常に小さいものであることを示している。
【0034】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】各触媒のアンモニア合成活性に係る経時変化を示す図である。
【図2】アルカリの添加量とアンモニア合成活性の関係を示す図である。
【図3】反応圧力とアンモニア合成活性の関係を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
【識別番号】502385115
【氏名又は名称】秋鹿 研一
【出願日】 平成19年10月1日(2007.10.1)
【代理人】 【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎


【公開番号】 特開2008−13435(P2008−13435A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2007−257137(P2007−257137)