トップ :: B 処理操作 運輸 :: B66 巻上装置;揚重装置;牽引装置



【発明の名称】 油圧ウインチ装置
【発明者】 【氏名】中山 晃

【要約】 【課題】騒音および燃費を低減し、空フックを高速で降下する。

【構成】エンジン1により駆動されるウインチ用油圧ポンプ2と、ウインチ用油圧ポンプ2からの圧油により回転するウインチ駆動用油圧モータ6と、他の油圧アクチュエータ11に圧油を供給するアクチュエータ用油圧ポンプ3と、ウインチ用油圧ポンプ2の吐出油にアクチュエータ用油圧ポンプ3からの吐出油を合流させる合流手段8と、合流手段8による合流時には非合流時よりも、エンジン回転数の上限を低くするエンジン制御手段20とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動されるウインチ用油圧ポンプと、
前記ウインチ用油圧ポンプからの圧油により回転するウインチ駆動用油圧モータと、
他の油圧アクチュエータに圧油を供給するアクチュエータ用油圧ポンプと、
前記ウインチ用油圧ポンプの吐出油に前記アクチュエータ用油圧ポンプからの吐出油を合流させる合流手段と、
前記合流手段による合流時には非合流時よりも、エンジン回転数の上限を低くするエンジン制御手段とを備えることを特徴とする油圧ウインチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧ウインチ装置において、
前記アクチュエータ用油圧ポンプは、エンジンにより駆動されることを特徴とする油圧ウインチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧ウインチ装置において、
前記アクチュエータ用油圧ポンプは、電動モータにより駆動されることを特徴とする油圧ウインチ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の油圧ウインチ装置において、
前記アクチュエータ用油圧ポンプの負荷圧が所定値以下のときに、前記合流手段による合流を許可する第1の合流制御手段をさらに備えることを特徴とする油圧ウインチ装置。
【請求項5】
請求項1,2,4のいずれか1項に記載の油圧ウインチ装置において、
前記ウインチ用油圧ポンプの負荷圧が所定値以上のときに、前記合流手段による合流を禁止する第2の合流制御手段をさらに備えることを特徴とする油圧ウインチ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーン等に備えられる油圧ウインチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラクレーン等に搭載される油圧ウインチ装置は、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により回転する油圧モータとを備え、操作レバーの巻上げまたは巻下げ操作により油圧モータを回転し、ウインチドラムを巻上げまたは巻下げ駆動する(例えば特許文献1参照)。この種のウインチ装置を例えば都市部などの高層建築現場で使用する場合、ウインチドラムの巻上げによる荷の吊り上げと、ウインチドラムの巻下げによる空フックの降下とを繰り返し行う。この際、効率よく作業を行うためには空フックの降下速度を速めることが望ましく、エンジン回転数を最大まで上昇させてドラムの巻下げを行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開平7−41286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジン回転数を最大まで上昇させて作業を行ったのでは、騒音や燃費の点で問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による油圧ウインチ装置は、エンジンにより駆動されるウインチ用油圧ポンプと、ウインチ用油圧ポンプからの圧油により回転するウインチ駆動用油圧モータと、他の油圧アクチュエータに圧油を供給するアクチュエータ用油圧ポンプと、ウインチ用油圧ポンプの吐出油にアクチュエータ用油圧ポンプからの吐出油を合流させる合流手段と、合流手段による合流時には非合流時よりも、エンジン回転数の上限を低くするエンジン制御手段とを備えることを特徴とする。
アクチュエータ用油圧ポンプを、エンジンにより駆動してもよく、あるいは電動モータにより駆動してもよい。
アクチュエータ用油圧ポンプの負荷圧が所定値以下のときに、合流手段による合流を許可する第1の合流制御手段をさらに備えることが好ましい。
ウインチ用油圧ポンプの負荷圧が所定値以上のときに、合流手段による合流を禁止する第2の合流制御手段をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ウインチ用油圧ポンプの吐出油にアクチュエータ用油圧ポンプからの吐出油を合流させたときのエンジン回転数の上限を、非合流時のエンジン回転数の上限よりも低くしたので、騒音や燃費を抑えて高速でウインチを駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜4を参照して本発明による油圧ウインチ装置の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る油圧ウインチ装置の構成を示す油圧回路図である。この油圧ウインチ装置は例えばクローラクレーンに搭載される。図1に示すようにウインチ装置は、エンジン1により駆動される一対の油圧ポンプ2、3と、油圧ポンプ2からの圧油により回転する油圧モータ6と、油圧モータ6により回転駆動するウインチドラム7と、油圧ポンプ2から油圧モータ6への圧油の流れを制御する方向制御弁4と、方向制御弁4を操作する操作レバー5と、油圧ポンプ3からの圧油を油圧ポンプ2の吐出油に合流させる合流弁8とを有する。
【0008】
操作レバー5を巻上げまたは巻下げ操作すると、油圧ポンプ2からの圧油が制御弁4を介して油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が巻上げまたは巻下げ回転する。これによりウインチドラム7が巻上げまたは巻下げ駆動してウインチロープ13が巻き取りまたは繰り出され、フック14を介して吊り荷15が昇降する。
【0009】
合流弁8は、コントローラ20からの信号により位置イまたは位置ロに切り換えられる電磁切換弁である。図示のように合流弁8が位置イに切り換わった状態では、油圧ポンプ3からの圧油は合流弁8、方向制御弁10を介して旋回用油圧モータ11に供給可能であり、操作レバー16の操作により方向制御弁10を切り換えると油圧モータ11が回転し、旋回体12が旋回する。この状態では、油圧ポンプ2からの圧油のみが油圧モータ6に供給可能である。
【0010】
一方、合流弁8が位置ロに切り換わった状態では、油圧ポンプ3からの圧油は合流弁8およびチェック弁9を介して方向制御弁4の上流側に導かれる。これにより油圧ポンプ2からの圧油だけでなく油圧ポンプ3からの圧油も油圧モータ6に供給可能となる。このとき、油圧ポンプ3から油圧モータ11への圧油の供給は阻止される。
【0011】
コントローラ20には、エンジン1の回転速度を検出する回転センサ21と、油圧ポンプ3の負荷圧を検出する圧力センサ22と、合流弁8の切換を指令する切換スイッチ23と、エンジン1の回転速度を指令するスロットル24とが接続されている。切換スイッチ23は、運転室内でのオン操作により合流弁8の位置ロへの切換を指令し、オフ操作により位置イへの切換を指令する。コントローラ20は、以下のような処理を実行し、エンジン回転数と合流弁8の切換を制御する。
【0012】
図2は、コントローラ20で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは切換スイッチ23のオンによりスタートし、切換スイッチ23のオフにより終了する。なお、切換スイッチ23がオフ状態では、合流弁8は位置イに切り換えられ、エンジン回転数Neは、後述の図3の特性(実線)に沿ってスロットル開度θに応じて制御される。
【0013】
ステップS1では、圧力センサ22により検出されたポンプ負荷圧P2と、回転センサ21により検出されたエンジン回転数Neと、スロット24の開度θとを読み込む。ステップS2では、切換スイッチ23がオンか否かを判定する。
【0014】
ステップS2では、圧力センサ22により検出された負荷圧P2が予め定めた所定値P2setよりも大きいか否か、すなわち油圧ポンプ3の圧油を油圧モータ6に供給可能か否かを判定する。油圧ポンプ3からの圧油により旋回動作を行っているときは、P2>P2setとなることがある。この場合、油圧ポンプ3からの圧油を油圧モータ6に供給するとエンジン出力が不足するおそれがあるため、ステップS2が肯定され、ステップS3に進む。
【0015】
コントローラ20には、予め図3の実線に示すようなスロットル開度θと目標回転数Neiとの対応関係、つまりスロットル開度が大きいほど目標回転数Neiが大きくなるような関係が定められている。なお、図3において、Ne1はアイドル回転数を、Ne2はエンジン最大回転数を表す。ステップS3では、この対応関係に基づいてスロットル開度θに応じた目標回転数Neiを算出し、これをエンジン目標回転数Nerefとして設定するとともに、エンジン回転数Neをこの目標回転数Nerefに制御する。次いでステップS4で、合流弁8への出力をオフし、合流弁8を位置イに切り換える。
【0016】
一方、P2≦P2setのときは、ステップS2で油圧ポンプ3からの圧油を油圧モータ6へ供給可能と判定し、ステップS5に進む。ステップS5では、図3の関係によりスロットル開度θに対応した目標回転数Neiを算出する。そして、目標回転数Neiが予め定めた所定値Ne3以下であれば、目標回転数Neiをそのままエンジン目標回転数Nerefとし、目標回転数Neiが所定値Ne3より大きければ、所定値Ne3をエンジン目標回転数Nerefとする。すなわちエンジン目標回転数Nerefが所定値Ne3以下となるようにエンジン目標回転数Nrefの最大値を制限し、エンジン回転数Neをこの目標回転数Nrefに制御する。なお、Ne3は、アイドル回転数Ne1より大きく最大回転数Ne2より小さな値に設定される。次いでステップS6で、合流弁8への出力をオンし、合流弁8を位置ロに切り換える。
【0017】
第1の実施の形態に係る油圧ウインチ装置の主要な動作を説明する。
吊り荷15を吊り上げる場合は、通常、切換スイッチ23をオフする。これにより合流弁8が位置イに切り換えられ、油圧ポンプ3からの圧油は旋回モータ11へ供給可能となる。この場合、エンジン回転数Neは図3の実線の特性に沿ってスロットル開度θに応じて制御される。
【0018】
荷を吊り上げた後、空フック14を降下する場合は、切換スイッチ23をオンする。このときP2≦P2setであれば、合流弁8が位置ロに切り換えられ(ステップS6)、油圧ポンプ3からの圧油が方向制御弁4に導かれ、油圧モータ6には油圧ポンプ2,3の合流油が供給可能となる。この場合、エンジン回転数Neは図3の点線の特性に沿って制御され(ステップS5,ステップS6)、スロットル開度θがθ3より大きい場合のエンジン回転数Neは所定値Ne3となる。
【0019】
その結果、エンジン回転数とモータ回転数(吊り荷の降下速度)との関係は図4に示すようになり、同一のモータ回転数(Nm2やNm3)を得るためのエンジン回転数Neは、合流ありの場合の方が合流なしの場合よりも小さくなる。すなわち、油圧ポンプ3からの圧油を合流した分だけ、油圧ポンプ2の吐出量が少なくて済み、エンジン回転数Neを低減できる。これにより空フック14を高速で降下できるとともに、燃費を改善および騒音を低減できる。
【0020】
一方、切換スイッチ23のオフ時に操作レバー16の操作により旋回体12を旋回し、P2>P2setの状態では、切換スイッチ23をオンしても合流弁8は位置イに切り換わったままである(ステップS2→ステップS4)。これにより油圧ポンプ3から油圧モータ6への圧油の供給は阻止され、油圧ポンプ3からの圧油により旋回運転を支障なく行うことができる。
【0021】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)切換スイッチ23のオンにより合流弁8を切り換えて油圧ポンプ2,3の合流回路を形成するとともに、エンジン回転数Neの上限値を所定値Ne3に低減するようにした。これによりウインチドラム7を高速で駆動することができるとともに、燃費を改善および騒音を低減できる。
(2)油圧ポンプ3の負荷圧P2が所定値P2setより大きい場合には、切換スイッチ23のオンによっても合流弁8を位置ロに切り換えないので、切換スイッチ23のオン時にエンジン出力が不足することを防止できる。
【0022】
以上では、P2>P2set時に合流弁8を位置ロに切り換えて、油圧ポンプ3からの圧油を全て油圧ポンプ2からの圧油に合流させるようにしたが、合流弁8を所定量だけ位置ロ側に切り換えて、油圧ポンプ3からの圧油の一部を油圧ポンプ2からの圧油に合流させるようにしてもよい。
【0023】
−第2の実施の形態−
図5を参照して本発明による油圧ウインチ装置の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では合流用の油圧ポンプ3をエンジン1により駆動するようにしたが、第2の実施の形態では電動モータによって駆動する。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0024】
図5に示すように油圧ポンプ3には電動モータ31が連結されている。電動モータ31にはインバータ32を介してバッテリ33から駆動電流が供給される。第2の実施の形態では、切換スイッチ23がオンされると、コントローラ20は上述したステップS5,ステップS6の処理を実行し、合流弁8を位置ロに切り換えるとともに、エンジン回転数Neの上限を所定値Ne3に制限する。
【0025】
このときコントローラ20はインバータ32にも制御信号を出力し、油圧ポンプ3が所定回転数で回転するように電動モータ31の回転を制御する。これにより油圧モータ6には油圧ポンプ2,3の合流油が供給され、エンジン回転数Neの上限を抑えた状態で油圧モータ6を高速回転することができる。この場合、電動モータ31により油圧ポンプ3を駆動するので、ポンプ負荷圧P2の大きさに拘わらず油圧ポンプ3の圧油を合流させることができる。その結果、エンジン回転数Neの上限を下げた状態で空フック14の高速降下と旋回動作を同時に行うことができる。
【0026】
切換スイッチ23がオフされると、コントローラ20は上述したステップS3,ステップS4の処理を実行し、合流弁8を位置イに切り換えるとともに、エンジン回転数Neをスロットル開度θに応じて制限する。このときコントローラ20はインバータ32に制御信号を出力し、旋回指令に応じて電動モータ31の回転を制御する。
【0027】
このように第2の実施の形態では、合流用の油圧ポンプ3を電動モータ31により駆動するようにしたので、ポンプ負荷圧P2の大きさに拘わらず油圧ポンプ3の圧油を合流させることができ、制御構成が簡単である。
【0028】
なお、上記実施の形態では、旋回用油圧モータ11に圧油を供給する油圧ポンプ3からの圧油をウインチ用油圧ポンプ2からの圧油に合流させるようにしたが、他の油圧アクチュエータに圧油を供給するアクチュエータ用油圧ポンプからの圧油を合流させてもよい。また、ドラムにブレーキ冷却用の圧油を供給する油圧ポンプ等、他の油圧ポンプからの圧油を併せて合流させるようにしてもよい。
【0029】
第1の実施の形態では、P2≦P2setのときに、合流弁8の切換によりポンプ圧油の合流を許可するようにしたが、エンジン出力の不足を回避して合流させるのであれば、第1の合流制御手段としてのコントローラ20における処理はこれに限らない。また、上記実施の形態では、油圧ポンプ2の負荷圧に拘わらず合流を許可するようにしたが、圧力センサにより油圧ポンプ2の負荷圧を検出し、この負荷圧が所定値以上のときに合流を禁止するようにしてもよい。すなわち、第2の合流制御手段としてのコントローラ20での処理により、空フックを降下するとき以外は合流を禁止するようにしてもよい。
【0030】
以上では移動式クレーンに適用したが、本発明は所定箇所に設置された固定式クレーンにも用いることができる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の油圧ウインチ装置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ウインチ装置の構成を示す油圧回路図。
【図2】図1のコントローラにおける処理の一例を示すフローチャート。
【図3】スロットル開度とエンジン目標回転数との関係を示す図。
【図4】エンジン回転とモータ回転との関係を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る油圧ウインチ装置の構成を示す油圧回路図。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン
2,3 油圧ポンプ
6,11 油圧モータ
8 合流弁
20 コントローラ
23 切換スイッチ
31 電動モータ

特許の図
【出願人】 【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀


【公開番号】 特開2008−44699(P2008−44699A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219869(P2006−219869)