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【発明の名称】 クレーンの危険防止及び制御方法
【発明者】 【氏名】クラウス シュナイダー

【氏名】マルティン ライェク

【要約】 【課題】複数のクレーンを用いて、共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬をより安全且つ効率的に行うための危険防止方法を提供する。

【構成】複数クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定する工程、所定の動きベクトルが損傷事故に至る場合に警報機能を作動する工程、並びに/若しくは、クレーンの制御に用いる動きベクトルを、クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための危険防止方法であって、
前記クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定する工程と、
所定の動きベクトルが損傷事故に至る場合に警報機能を作動する工程と、
前記クレーンの制御に用いる前記動きベクトルを、前記クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定する工程と、
を含むことを特徴とする危険防止方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記損傷事故は、前記クレーンにおける少なくとも1つの過荷重を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
起こり得る過荷重は、前記それぞれのクレーンに関連付けられた荷重トルク制限を介して判定される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
許可された動きベクトルは、予測計算によって判定される
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
許可された動きベクトルの判定は、反復的方法に基づいて行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る損傷事故は、前記クレーン同士の衝突を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る損傷事故は、前記クレーンと前記荷物との衝突を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る衝突の判定は、前記クレーンの少なくとも1つの形状モデル並びに、適宜前記荷物の少なくとも1つの形状モデルに基づいて行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記荷物の形状データが入力及び/又は判定される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記請求項の1つに記載の方法において、
考え得る障害物の形状データが入力され、前記クレーン及び/又は前記荷物の前記障害物との起こり得る衝突が計算される
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る衝突の計算は、前記クレーン、前記荷物及び/又は前記障害物の形状モデルに基づいて行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る損傷事故は、前記クレーンの前記トルク合計の限界を超えることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る損傷事故は、船舶の最大許容傾斜、最大許容接地圧、又はプラットホームの最大許容トルク等の外部制限についての限界を超えることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記請求項の1つに記載の方法において、
起こり得る損傷事故が予測計算において認識され、それらの考え得る防止策が考慮される
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記予測計算は、前記クレーンの動的特性、特にクレーン駆動装置の最大可能速度及び/又は加速度に基づいて行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記クレーンの変形が考慮される
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記警報機能は、前記クレーンの自動停止を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記起こり得る損傷事故からの安全距離は選択され得る
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記請求項の1つに記載の方法において、
データを船舶の浮力調整装置などの外部システムに転送して、特に、前記外部システムを制御する且つ/又はデータを前記外部システムと交換する
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記請求項の1つに記載の方法において、
前記クレーンは移動され得、且つ、自分の位置を判定する手段、特にGPS装置を有し得る
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記請求項の1つに記載の危険防止方法にしたがって複数のクレーンを操作するための危険防止システム。
【請求項22】
複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御システムであって、
前記荷物又は前記クレーンの所望の動きをプリセットするための入力手段と、
前記クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定するための少なくとも1つの演算装置とを備え、
前記クレーンの制御に用いる前記動きベクトルは、前記クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定される
ことを特徴とする制御システム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、
1つのソースが、前記荷物又は前記クレーンの所望の動きのプリセットに用いられる
ことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記クレーン又は前記荷物の考え得る動きベクトルは、前記クレーンの動的特性、特にクレーン駆動装置の最大可能速度及び/又は加速度に基づいて行われる
ことを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記所望の荷物の動きのプリセットは、所望の荷物位置、荷物の所望の移動方向及び/又は所望の向きをプリセットすることを含む
ことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記クレーンの制御に用いる動きベクトルは、選択可能な戦略、重み付け可能な戦略及び/又はプリセットされた戦略によって選択される
ことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記戦略は、前記所望の動きについてプリセットされた値からの最低偏差を含む
ことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記戦略は、以下のプリセット値、すなわち
危険防止システムからの安全距離の増大、
機構の遮断、
個々の機構に対する優先順位の関連付け
のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項22に記載のシステムにおいて、
特に1つのソースからの、前記荷物の所望の動きのプリセット値と前記個々のクレーンの所望の動きのプリセット値との間で特に選択を行い得る
ことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項22に記載のシステムにおいて、
その作動により保持手段の現在位置が判定される入力手段が設けられ、特に前記荷物の位置及び/又は向きが前記入力手段を介して判定される
ことを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記個々のクレーンにおける前記荷物の吊り下げ点の間の距離が一旦設定されると、前記荷物を移動させる間は前記距離が変更されないように、前記クレーンを制御する
ことを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記荷物の向きが一旦設定されると、前記荷物を移動させる間は前記向きが変更されないように、前記クレーンを制御する
ことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記荷物の所望の向きが前記荷物を移動させる間に移動されるように、前記クレーンを制御する
ことを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記所望の動きのプリセットは、ジョイスティック等の入力装置を介してオンラインで行われる
ことを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記所望の動きのプリセットは、クレーン配置プランナを介して、例えば記憶された軌道を取り出すことによりオフラインで行われる
ことを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項22に記載のシステムにおいて、
前記クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルによって実行され得る所望の動きのプリセット値のみが許可される
ことを特徴とするシステム。
【請求項37】
複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御方法であって、
前記荷物又は前記クレーンの所望の動きをプリセットする工程と、
前記クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定する工程とを含み、
前記クレーンの制御に用いる前記動きベクトルは、前記クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定される
ことを特徴とする制御方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、
前記請求項の1つに記載の制御システムの特徴を有することを特徴とする方法。
【請求項39】
複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御方法であって、
前記クレーンの制御のために許可された動きベクトルは、危険防止方法、特に前記請求項の1つに記載の危険防止方法に基づいて判定される
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行う危険防止制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日に至るまで、大型荷物、重い荷物、又は複雑な形状の荷物の吊り上げプロセス又は運搬プロセスは、複数のクレーンを用いる必要があり、通常は監督者の下で行われている。このプロセスにおいて、用いられるクレーンの各々はクレーン操縦者によって制御され、監督者が関係する全てのクレーン間の調整を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この形態は、少なくとも個々のクレーン操縦者が全体の状況を把握していないという理由並びに理解及びコミュニケーションに関する問題がエラーを起こし得るという理由のために、必然的に、多くの潜在的なエラー要素を生み出す。また、そのようなプロセスは、監督者を介して行われるクレーン間の調整が原因で仕事のスピードが非常に遅いので、あまり効率的ではない。
【0004】
誤認による問題とは別に、個々のクレーンの危険防止システムはそのような荷物の協働吊り上げ又は運搬に対して十分ではないという更なる問題が生じる。このことは主に、クレーンに起こる過荷重又は衝突などの損傷事故は、そのクレーン自体の移動のみが原因ではなく、他のクレーンの移動によっても起こるという事実に起因する。個々のクレーンに設けられる公知の過荷重防止装置は、そのクレーンに損傷を与え得るような各クレーンの移動を防ぐだけであり、他のクレーンに損傷を与えるような事故のことは考慮していない。このことは、衝突防止システムについてもいえる。つまり、同様に、自クレーンの移動を考慮しているのみであり、せいぜい静止状態の障害物までしか考慮していない。複数のクレーンを用いた場合の移動手順は、クレーン1つの場合と比べて相当複雑である。
【0005】
上記を鑑みて、本発明の目的は、複数のクレーンを用いた共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を、より安全且つより効率的に実行可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、本発明により、請求項1に記載の複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための危険防止方法によって達成される。この方法は、クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定すること、所定の動きベクトルが損傷事故に至る場合に警報機能を作動すること、並びに/若しくは、クレーンの制御に用いる動きベクトルを、クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定することを含む。
【0007】
したがって、本発明の危険防止方法により、クレーンを制御する2つの可能性が実質的に得られる。一方で、個々のクレーンは、それぞれ1人のクレーン操縦者によって操縦され続け得るが、このクレーン操縦者によってプリセットされた動きベクトルは、損傷事故に至るかどうかについて本発明の危険防止方法によってチェックされる。クレーン操縦者によってプリセットされた動きベクトルがクレーンのいずれかにおいて損傷事故に至る場合、動作の実行時に、クレーン操縦者に起きようとしている損傷事故について警告するアラーム機能が作動される。しかし、損傷事故に至り得る動きが全く実行されないように、クレーンの制御に用いる動きベクトルを自動的に限定し得る。
【0008】
或いは、本発明による危険防止方法は、クレーンの制御方法内において使用し得る。クレーンの確実な制御のためにどの動きベクトルが利用可能かは、クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を本発明により判定することによって、危険防止方法により自動的に判定される。該制御システムは、これらの動きベクトルの中から、所望の動きを達成するのに最も適したものを選択し得る。
【0009】
クレーンの動きベクトルは、全クレーンの制御に関する情報を含む1組のデータである。したがって、関係する全クレーンの動きは、関係する全クレーンの起こり得る損傷事故についてチェックされる。それにより、動作中の間、個々のクレーンの動きが実際のクレーンに損傷を与えないだけでなく、他のクレーンにおいても損傷を起こさないことが、本発明の危険防止方法により自動的に確保される
本発明による危険防止方法において判定される損傷事故は、少なくともクレーンの過荷重を含む。したがって、クレーンの1つにおいて過荷重に至り得るクレーンの動きが実行されないことが確実にされる。従来技術では、クレーンの個々の荷重トルク制限装置が、各ケースにおいて、動作の結果として自クレーンにおいて過荷重になるかどうかを判定するだけであるが、それとは異なり、本発明の危険防止装置により、クレーンが動いても、他のいずれのクレーンにおいても過荷重が起こらないことが確実にされる。
【0010】
この文脈において、好適には、それぞれのクレーンに関連付けられた荷重トルク判定装置を介して起こり得る過荷重を判定し得る。したがって、本発明による方法を用いれば、既存の荷重トルク制限装置を利用することが完全に可能である。しかし、個々のクレーンの動きが自身の荷重トルク制限装置によってチェックされるだけでなく、全クレーンの動きベクトルが全クレーンの荷重トルク制限装置によってチェックされる。したがって、一方では既存の技術を利用でき、他方では複数のクレーンによる共同吊り上げ又は運搬について実質的に向上した安全性を確保し得る。この点に関して、既存の荷重トルク制限装置は、必ずしも個々のクレーンに設ける必要はない。個々のクレーンに関連付けられたトルク制限装置が組み込まれた中央演算装置の方が実現性が高い。
【0011】
本発明による危険防止方法において、許可された動きベクトルは、好適には、予測計算によって判定される。したがって、現在の動きが直接損傷事故へと至るかどうかだけでなく、現在の動きによって将来の損傷事故が引き起こされ得るかどうかもチェックされる。特に好適には、損傷事故に至らない移動手順が利用可能である移動ベクトルのみが許可されるということが考慮される。そのような予測計算はとりわけ重要である。なぜなら、複数のクレーンによる共同吊り上げ又は共同運搬の際に、クレーンの全ての動きが作業に参加しているクレーンの少なくとも1つにおいて損傷事故を起こし得る状況が起こり得るからである。それとは対照的に、本発明による危険防止方法の予測計算は、システム全体がもはや安全に動作できないような状況を防止する。そのような予測計算は、過荷重以外の損傷事件にとって非常に重要であり得る。というのは、例えば、予測計算によって衝突が防止されるからであり、システムは、衝突を起こすことなく動作するたびに、その動作後に静止状態になる必要があるということが考慮されている。
【0012】
許可された動きベクトルは、好適には、反復的方法によって判定される。これにより、第1の動きベクトルが損傷事故とは無縁のそれ以降の動きベクトルを許可するかどうかを安定的且つ確実に判定できる。したがって、損傷のない移動手順が常に利用可能であることが確実にされ得る。そのような反復的プロセスにおいて、第1の動きベクトルを用いたクレーンの制御は、まず計算によってシミュレーションされ得、新たな動きベクトルを用いた更なる動きがそれによって起こる新たな状況からシミュレーションされ得、それ以降同様にシミュレーションが行われて、一連の許可された動きベクトルが生成される。
【0013】
しかし、同様に、反復的プロセスは個々の工程において既に使用され得る。つまり、安全性はまず、第1のクレーンについてチェックされて許可された動きベクトルが判定され、ここで許可されたベクトルについての許容度が次のクレーンに関してチェックされ、同様の処理が続けて行われる。
【0014】
さらに好適な様態では、本発明による危険防止方法において、起こり得る損傷事故は、クレーン同士の衝突を含む。したがって、本発明による危険防止システムによって、結局は同じ領域で作業する複数のクレーン同士が衝突しないことを確実にし得る。本発明の方法では、全クレーンの動きの互いに対する影響が考慮され、安全性が、個々のクレーンの動きのみが考慮される公知の衝突防止システムよりも大幅に向上される。
【0015】
更なる好適な様態では、本発明による危険防止方法において、起こり得る損傷事故は、クレーンと荷物との衝突を含む。このことにより、複数のクレーンによって複雑な荷物の吊り上げ又は運搬を行う際にも、クレーンが荷物と衝突しないことが確実になる。ここでは、本発明にしたがって全クレーンの動きを考慮することが必要である。なぜなら、クレーンの動きは、荷物が別のクレーンとそのクレーンを動かさなくても衝突するように、荷物を動かし得るからである。
【0016】
好適な様態では、本発明による危険防止方法において、起こり得る衝突の判定は、クレーンの少なくとも1つの形状モデル並びに、適宜荷物の少なくとも1つの形状モデルに基づいて行われる。そのような形状モデルは、例えば、ブーム長、高さ等のクレーンに関するデータを含み、好適には、これらのクレーンデータを、旋回角度及びブーム仰角(luffing angle)などの位置データと一緒にまとめて、クレーン及び荷物の3次元モデルを形成し得、それにより、形状モデルにおいて実際の吊り上げ状態を現実的にシミュレートすることができる。これにより、固定した領域との関連付け(rigid area associations)が不要である。なぜなら、衝突防止装置は、形状モデルのおかげで、異なる状況に動的に反応し得るからである。
【0017】
本発明による危険防止方法において、好適には、荷物の形状モデルは入力及び/又は判定され得る。したがって、信頼性の高い荷物の形状モデルを準備でき、本発明による危険防止方法の衝突防止装置の信頼性が一層高まる。このプロセスにおいて、荷物の位置及び/又は範囲は、好適には、クレーンの荷ホルダの位置を介して判定され得る。
【0018】
本発明による危険防止方法を用いる場合、さらに好適な様態では、考え得る障害物の形状データが入力され、クレーン及び/又は荷物の障害物との起こり得る衝突が計算され得る。この様態において、建物などの障害物を考慮に入れ得る吊り上げ又は運搬の現実的なシナリオを準備することができる。
【0019】
起こり得る衝突の計算は、好適には、クレーン、荷物及び/又は障害物の形状モデルに基づいて行われる。この形状モデルは、クレーン、荷物及び/又は障害物の起こり得る衝突が判定された3次元のシナリオである。
【0020】
さらに好適な様態では、起こり得る損傷事故は、クレーンのトルク合計の限界を超えることを含む。特にクレーンが船舶又はプラットホーム等の物体に固定的に設置されている場合、プラットホームにおける過荷重又は船舶の過剰な傾斜等の危険な状況が起こるようなクレーンのトルクが追加され得る。本発明によるシステムでは、クレーンの動きベクトルがクレーンのトルク合計の限界を超えるという結果に至るかどうかについてもチェックするので、そのような問題は回避され得る。
【0021】
さらに好適な様態では、起こり得る損傷事故は、船舶の最大許容傾斜、最大許容接地圧、又はプラットホームの最大許容トルク等の外部制限の限界を超えることを含む。1台のクレーンだけでなく全クレーンが監視する必要のあるこれらの外部制限は、本発明による危険防止方法によって確実に監視され得る。
【0022】
本発明による危険防止方法において、起こり得る損傷事故は、好適には、予測計算において認識され、それらの考え得る防止策が考慮される。したがって、各動きベクトルについての予測計算において、この動きベクトルを用いた場合に損傷事故を起こすことのない更なる移動動作が可能かどうかをチェックする。したがって、損傷事故を回避する可能性が存在することがわかっている移動のみが実行される。例えば、静止状態に至るまでの移動手順が、予測計算のこのプロセスにおいてチェックされ得る。
【0023】
本発明による危険防止方法において、予測計算は、好適には、クレーンの動的特性、特にクレーン駆動装置の最大可能速度及び/又は加速度に基づいて行われる。クレーンの動的特性を考慮することは非常に重要である。なぜなら、いうまでもないことだが、クレーンによって実際に実行され得る移動手順のみが実際には損傷のない状態のままであるからである。この目的のために、計算に用いるクレーンの動きベクトルが、クレーン駆動装置の可能最大速度及び/又は加速度の範囲内にある動きベクトルのみを含むことが重要である。この文脈において、クレーンの動きベクトルは、好ましくは、全クレーンの各クレーン駆動装置の速度及び/又は加速度に関するデータを含み、それにより、動きベクトルを実際に実行可能な動きベクトルに容易に限定することができる。計算量を低減するために、クレーンの移動ベクトルは、まずクレーン駆動装置の動き及び/又は加速に移し換える必要のあるブームの先端の動き及び/又は加速度など、より高度なレベルでデータを含み得る。この点に関して、例えばクレーンのブームの先端の特定の速度及び加速度などのより高度なレベルのデータは、最低レベルでの複数の動きベクトルがこれらのより高度なレベルの動きベクトルに対応し得るように、クレーン駆動装置の異なる動きによって可能であり得ることを考慮する必要がある。
【0024】
さらに好適な様態では、本発明による危険防止方法において、クレーンの変形が考慮される。したがって、実際の移動手順はシステム内により現実的に示され得、それにより安全性が高まる。
【0025】
本発明による危険防止方法において、警報機能はクレーンの自動停止を含む。したがって、特に全クレーンがそれぞれのクレーン操縦者によって制御される場合、損傷事故を起こし得る動作が実行されないことが、自動的に確実になる。或いは、損傷事故に至り得る方向への動きが制限され得る。
【0026】
さらに好適な様態では、本発明による危険防止システムにおいて、起こり得る損傷事故までの安全距離が選択され得る。したがって、システムの安全性がさらに向上され得る。つまり、クレーンの制御に用いる動きベクトルのみが損傷事故までの特定の安全距離を有する状況に至ることが確実にされる。衝突防止チェックにおいて、そのような安全距離は、クレーン間の空間距離若しくは荷物又は転倒してはならない障害物の間の空間距離であり得る。過荷重などの損傷事故以外の場合、それぞれの過荷重から特定の安全距離を有する或る1つの領域内へと全クレーンが移動することが確実になる。
【0027】
さらに好適な様態では、本発明による危険防止方法において、データを船舶の浮力調整装置などの外部システムに転送して、特に、その外部システムの制御及び/又はこの外部システムとのデータの交換が行われる。共同での吊り上げ又は運搬の安全性は、大抵の場合、クレーン自体だけでなく外部の影響にも依存するので、そのようなデータの交換及び外部システムによる考え得る制御が、安全性をさらに高め得る。特にクレーンが船舶に固定的に設置されている場合、船舶の浮力調整システムはクレーン制御によってコントロールされて、過度な傾斜が防止され得る。或いは、クレーンの危険防止システムは、浮力制御システム又は他の外部システムからデータを受け取ることができ、それにより特定の限定に対する制限を随時適合させ得る。
【0028】
さらに好適な様態では、本発明による危険防止方法において、クレーンは移動され得、且つ、クレーンは自分の位置を判定する手段、特にGPS装置を有している。したがって、本発明による危険防止方法は、移動式クレーン、クローラー型クレーン、又は他の移動可能なクレーン等の、複数のクレーンに用い得る。個々のクレーンの位置を判定する手段により、危険防止システムがクレーンの個々の位置を知り、損傷事故を正確に判定することができることが確実になる。
【0029】
本発明は、上記危険防止システムの1つにしたがって複数のクレーンを操作するための危険防止システムをさらに含む。上記危険防止システムが組み込まれた危険防止システムは、上記方法と同じ利点を有する。そのような危険防止システムは通常、特にクレーンの動作中に、つまり、複数のクレーンによって共通の荷物の吊り上げ又は運搬を行う間に、危険防止方法を自動的に実行する演算装置を含む。そのような自動危険防止システムは、全クレーンの動きをチェックし、それらを計算に含めて、さらに実際のクレーンの配置の間だけに起こる影響が本発明による危険防止システムによって考慮され得る、という大きな利点を有する。
【0030】
しかし、本発明は、純粋な危険防止システムに限定されない。それよりもむしろ、複数のクレーンを制御する制御システムに組み込まれ得る。
【0031】
したがって、本発明は、複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御システムであって、荷物又はクレーンの所望の動きをプリセットするための入力手段と、クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定するための少なくとも1つの演算装置とを備え、クレーンの制御に用いる動きベクトルがクレーンのいずれにおいても損傷事故に至り得ない動きベクトルに限定されることを特徴とする制御システムを含む。そのような制御システムは、上記危険防止システムと同じ利点を有し、この例では、制御システムが安全性を自動的に確保する。したがって、制御システムは、上記危険防止システムの更なる特徴の全てを備え得る。
【0032】
この点に関して、本発明による制御システムを用いると、全クレーンを、それぞれのクレーン操縦者によって個々に制御するか又は各ケースについて個別に制御することもできるが、集中制御することも可能であり、個々のクレーンは事故が起こり得るようには動かないことを確実にする。
【0033】
この文脈において、1つのソースが、荷物又はクレーンの所望の動きのプリセットに用いられる。したがって、全てのクレーンが集中制御され得る。この点に関して、荷物の移動は、好適には、単一のソースによってプリセットされて、それにより、クレーン操縦者が荷物の移動に完全に集中することができ、他方では制御システムが個々のクレーンの制御を監督する。
【0034】
クレーン又は荷物の考え得る動きベクトルは、好適には、クレーンの動的特性、特にクレーン駆動装置の最大可能速度及び/又は加速度に基づいて判定される。好適には、対応するクレーン駆動装置によって実際に実行され得る動きベクトルのみが制御に用いることが許可される。これは特に、荷物の所望の動きのプリセットに非常に重要である。したがって、クレーン操縦者は実行し得る動きのみをプリセットし得ることが確実になる。
【0035】
所望の荷物の動きのプリセットは、好適には、所望の荷物位置、荷物の所望の移動方向及び/又は所望の向きを含む。原則的に、荷物の移動に関する方向、位置又は回転がクレーン操縦者によって入力される。しかし、複数のクレーンが存在し且つそれらが複数の駆動装置を有しているので、荷物の動きベクトルは、通常、クレーンの動きベクトルよりも自由度が低い。荷物に対する結合点の特定的な位置及びクレーンの互いに対する結合点の特定的な位置などの境界条件を監視する必要があるのは明らかであり、危険防止システムによって規定された境界条件についても同様である。にもかかわらず、例えばクレーンの動きによって荷物の特定の移動方向を実現する複数の可能性が頻繁に起こる。
【0036】
したがって、本発明による制御システムは、特定の戦略によって、考え得る許可された動きベクトルの中から、クレーンの制御に実際に用いる動きベクトルを選択し得る。
【0037】
この点に関して、クレーンの制御に用いる動きベクトルは、好適には、選択可能な戦略、重み付け可能な戦略及び/又はプリセットされた戦略によって選択される。戦略が予め規定されている場合、クレーン操縦者は状況に応じて個々の戦略間で選択を行い得るか、若しくは、該戦略に適宜重み付けを行い得る。
【0038】
戦略は、好適には、所望の動きについてプリセットされた値からの最低偏差を含む。したがって、クレーン又は荷物の特定の動きがクレーン操縦者によってプリセットされる場合、この戦略によって、許可されたベクトルのうち、荷物及び/又はクレーンの実際の動きの所望の動きからの偏差が最小になる動きベクトルを用いてクレーン駆動装置の制御が行われることが確実にされる。
【0039】
さらに好適な様態では、戦略は以下のプリセット値、すなわち、危険防止システムからの安全距離の拡大、機構の遮断、個々の機構に対する優先順位の関連付け、のうち少なくとも1つを含み得る。危険防止システムからの安全距離が拡大された場合、その結果として、荷物の吊り上げ又は運搬が特に確実に行われる。対照的に、制御の効果は、個々の機構を遮断すること又は個々の機構に対して優先順位を関連付けることによって増大され得る。
【0040】
クレーン制御によって動きの特定のパラメータを自動的に一定に維持する戦略を用いることも同様に可能である。したがって、例えば、吊り上げ又は運搬の間、荷物の向きを一定に維持することが可能であり、それにより、クレーン操縦者は荷物をどの方向に移動するかを予め決定すればよい。或いは、クレーン操縦者が荷物の特定の回転をプリセットする一方で、例えば荷物の中心の位置を一定に維持することができる。
【0041】
本発明による制御システムにおいて、好適には、特に1つのソースからの、荷物の所望の動きのプリセット値と個々のクレーンの所望の動きのプリセット値との間で特に選択を行い得る。したがって、各クレーンは、特に、クレーンを荷物の上方に配置するために、クレーン操縦者によって独立して制御されてクレーンを荷物の上方へと移動し得る。その後、荷物の移動のみがプリセットされる異なるモードへと切り換えることができ、それ以降、クレーン操縦者は荷物の移動に完全に集中する必要があり、それ以上個々のクレーンの制御には関わらない。
【0042】
クレーンは、好適には、個々のクレーンにおける荷物の吊り下げ点の間の距離が一旦設定されると、荷物を移動させる間はその距離が変更されないように制御される。クレーンの吊り下げ点は、トラバースの上方など、荷物の上方にて一旦正確に配置すればよく、配置が為されると、クレーン制御が、荷物を移動させる間、吊り下げ点間の距離が一定に維持されるように監督する。
【0043】
さらに好適な様態において、荷物の向きが一旦設定されると、荷物を移動させる間はその向きが変更されないように、クレーンを制御し得る。したがって、クレーン操縦者は荷物の移動方向をプリセットすればよい。
【0044】
クレーンは、さらに好適には、荷物の所望の向きがその荷物を移動させる間に移動されるように制御され得る。この点に関して、クレーン操縦者は荷物の所望の回転をプリセットする。
【0045】
さらに好適な様態では、本発明による制御システムにおいて、荷物の位置及び/又は向きが判定され得、荷物上方にてクレーンの位置が判定される。この目的のために、クレーン操縦者は、クレーンを荷物上方に正確に配置すればよく、配置が為されると、本発明による制御システムは、ボタンを押す際に、荷物がどのような向きかということ及び荷物がどれくらいの大きさかということを認知する。例えば吊り下げ点の絶対距離は、手入力する必要がなく、クレーンにおける吊り下げ点の距離から判定し得る。
【0046】
本発明による制御システムにおいて、所望の動きのプリセットは、好適には、ジョイスティック等の入力装置を介してオンラインで行われる。したがって、クレーン操縦者は常時クレーン又は荷物の動きを制御する。
【0047】
さらに好適な様態において、所望の動きのプリセットは、クレーン配置プランナを介して、例えば記憶された軌道を取り出すことによりオフラインで行われる。クレーンの配置は、クレーン配置プランナにおいて事前に計画され、対応するファイル内に保存され得る。その後、実際の配置の間、クレーンはこのファイルから軌道を取り出すことにより制御され得る。しかし、クレーン操縦者は、好適には、安全確保のために入力装置を介してオンラインで介入し得る。
【0048】
本発明による制御システムを用いた場合、好適には、いずれのクレーンにおいても損傷事故に至らないような動きベクトルによって実行され得る所望の動きのプリセットのみが許可される。したがって、クレーン操縦者は損傷事故に至らない動きのみをプリセットし得るので、特に快適な操作が確保される。したがって、操縦者によってプリセットされた動きは後になってから中断されないが、操縦者は、その動作が損傷事故を起こすことなく実行可能であることを初めから知っていた方がよい。
【0049】
本発明は、複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御方法であって、荷物又はクレーンの所望の動きをプリセットする工程と、クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定する工程とを含み、クレーンの制御に用いる動きベクトルは、クレーンのいずれにおいても損傷事故に至らない動きベクトルに限定されることを特徴とする制御方法をさらに含む。本発明による制御方法は、上記制御システムと同じ利点を有する。
【0050】
本発明による制御方法は、好適には、さらに上で説明した制御システム又は危険防止方法の特徴を備えている。
【0051】
本発明は、複数のクレーンを用いて共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬を行うための制御方法であって、クレーンの制御のために許可された動きベクトルは、危険防止方法、特に上記の危険防止方法の1つに基づいて判定されることを特徴とする制御方法をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
ここで、以下の実施形態及び図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。
【0053】
公知の方法において、複数のクレーンを用いて行う重い大型の荷物の吊り上げプロセス及び運搬は、関係する全てのクレーン操縦者間の調整を行う監督者を配置して行われる。これに関して、各クレーン操縦者は、自クレーンを運転し、それぞれが自由に操作できるクレーンの危険防止システムのみを有する。しかし、これにより、一連の安全性の問題が生じる。なぜなら、そのような操作において、不均衡な負荷の配分、クレーンの不均一な吊り上げ動作、並びに、特に別のクレーンの移動によるクレーンの過荷重が原因で、過荷重が起こり得るからである。さらに、結果として、クレーン間の衝突、クレーンの荷物との衝突、並びにクレーンの建物との衝突が起こり得る。また、監督者とクレーン操縦者との間にコミュニケーションの問題が生じ得、各クレーン操縦者は頻繁に状況を評価することがない。さらに、個々のクレーンの荷重トルク(load torques)の追加が原因で外部システムに影響が及ぶ。船上に搭載された複数のクレーンの場合、例えば荷重トルクの追加が原因で勝手に船が傾く。
【0054】
本発明の本実施形態において、特に吊り上げ及び運搬に関係する全てのクレーンの安全性ついてのデータを考慮することに基づく、これらのリスクを回避するための危険防止戦略が得られる。第1のステップにおいて、それぞれのクレーンのデータが収集され、危険防止システムに利用可能になる。この目的のために、例えば荷重トルク制限及び駆動制御のために既にクレーンに搭載されている測定システムを使用し得る。クレーンに関するデータは、個々のクレーン駆動装置の位置、速度及び加速度、若しくは、クレーン又はブーム等のクレーン部品の位置、速度及び加速度を含む。荷物に関するデータも同様に判定され得る。
【0055】
4方向(3つの軸及び1つの回転方向)までのクレーンフックの現在位置、同じく4方向におけるクレーンフックの現在の速度、クレーンフックの現在の可能最大速度、個々のクレーンの荷重、クレーンの能力の程度、2つの軸方向におけるクレーンの合計トルク、並びに2つの軸の回りにおけるクレーンの傾きを、これらのデータから判定し得る。図1に示すように、これらのデータ又はこれらのデータから選択されたデータが任意の所望の数のモニタに表示され、それにより、個々のクレーン操縦者は全体の状況をより良く概観できる。いうまでもないが、各クレーンにおいて、関係する他のクレーン(特に関係する全てのクレーン)のデータが表示されることは、本発明による危険防止システムとは別に、非常に有益である。したがって、クレーン操縦者は、潜在的な安全上のリスクをより良く評価し、それらによりよく対応することができる。
【0056】
しかし、これらの安全上のリスクは、本発明による危険防止システムによって評価され得、その場合、モニタ上にデータを表示しなくて済み得る。本発明による危険防止システムは、この目的のために、クレーンの動きベクトルについて起こり得る損傷事故を判定し得る。本実施形態において、そのような動きベクトルは、全てのクレーンの動作を説明するデータセットである。動きベクトルは、クレーン操縦者自身によってプリセットされ得、そのベクトルによってクレーンが制御される。或いは、これらの動きベクトルはまた、クレーン制御において損傷事故を引き起こすかどうかがチェックされる考え得る動きベクトルである。
【0057】
クレーンの動きベクトルがクレーン操縦者によってプリセットされた場合、本発明の危険防止システムは、起こり得る損傷事故の認識に反応して、少なくとも1つの警告機能を作動させる。この警告機能は、操縦者が意図した移動を継続しないよう警告する。本発明の危険防止システムは、各クレーン操縦者が、危険防止システムによって、他の全てのクレーンにおいてと同様に、起こり得る損傷事故について自動的に通知されるという大きな利点を有する。安全性向上のために、起こり得る損傷事故が認識された場合、全てのクレーンの動作が停止されるか又はクレーンの動作が損傷事故を引き起こさないような方向に限定されるかのいずれかの対策によって、その事故は自動的に防止される。
【0058】
これに関して、いずれのクレーンにおいても損傷事故が起こらないようなクレーンの許可された動きベクトルは、本発明による予測計算によって判定される。そのような予測計算は、1つのクレーンにおいて損傷事故を起こさずに離れることが不可能な位置に移動されるのを回避するために、特に重要である。これに関して、そのような状況に至らない許可された動きベクトルは、反復的方法によって判定される。したがって、例えば、まず、そのような反復的方法の間に、特定の動きベクトルがいずれのクレーンにおいても損傷事故を起こさないかどうかについてチェックすることができ、さらにその上で、この動きベクトルを用いてクレーンの制御を行った後に、いずれのクレーンにおいても損傷事故を起こさない他の動きベクトルが可能であるかどうかをチェックする必要があり、以降も同様のことが続く。しかし、使用される反復的方法は、各クレーンの起こり得る損傷事故が全ての動きベクトル、つまり全てのクレーンの動作に依存するという理由からも必要である。したがって、或る1つの許可されたベクトルは、許可されたベクトルがまず1つのクレーンについて判定され、さらにその上で、次のクレーンについてチェックされ、それ以降、他のクレーンについても同様の処理が行われる、というような様態で判定され得る。
【0059】
本発明による危険防止システムは、制御システムにおいて用いられ得る。この文脈において、所望の荷物の移動又はクレーンの所望の動作のいずれかを予め設定するために1つのソースによって全てのクレーンが制御され得る。或いは、システムは、1つのソース無しで個々のクレーンを独立して設定しつつ、これらの移動の監視及び制限を行うことができる。
【0060】
本発明の危険防止方法は、クレーンの制御に使用する動きベクトルの動的限定を行うクレーン制御において用い得る。個々のクレーンについていずれの動きベクトルが損傷事故に至るかをチェックする場合、各クレーンは、利用可能な許可されたベクトルからなるベクトルセットを限定する。それによって限定され且ついずれのクレーンにおいても損傷事故に至り得ない動きベクトルからなるベクトルセットは、クレーンの確実な制御のために用い得る。動きベクトルを限定する影響要因は、特に、衝突防止制御、個々のクレーンの荷重トルク制限、並びに、外部システムの限定を考慮に入れることを含む。ここで、これらの影響要因についてより詳細に説明する。
【0061】
或る特定の移動が衝突に至るかどうかを判定する場合、関係する全てのクレーンの動きが考慮される。このクレーンの衝突防止チェックは、考え得る静止状態に至るまでの予測計算によって実施される。このことに関して、クレーンの所定の動的特性、特にクレーン駆動装置の考え得る速度及び加速度が考慮される。したがって、予測計算において、荷重トルク制限などの他の影響要因を考慮しつつ、クレーンのあらゆる動きについて、例えば考え得る静止状態によって、所定の動的特性の下で衝突防止が可能かどうかをチェックする必要がある。この予測計算により、衝突が起こりそうにない限りは、クレーンを自由に動かすことが可能になる。このことに関して、互いの間でのクレーンの荷物との衝突又は障害物との衝突の両方を考慮し得る。特に、3次元衝突チェックが実行され得る。これにより、2次元衝突チェックでは不可能な複雑な動作手順を確実に行うことができる。そのような3次元衝突チェックは、複雑な荷物の場合に特に重要であり、それにより、荷物のクレーン又は障害物との起こり得る衝突も考慮し得る。この目的のために、クレーン及び荷物両方の3次元モデル、さらには任意に障害物の3次元モデルが、本発明の危険防止システムにおいて用いられる。特に荷物の移動は全てのクレーンの動作に依存するので、複数のクレーンを用いた共通の荷物の吊り上げ及び/又は運搬について効果的な衝突防止チェックを行うために、全てのクレーン及び荷物の3次元モデルを用いる必要がある。さらに、対象物周辺の保護ゾーンとして任意の所望の安全距離を用いて、さらに安全性を高め得る。この衝突防止装置は、個々のクレーンを用いる際にも作動され得る。
【0062】
さらに、所与の動きベクトルにより個々のクレーンにおいて過荷重が生じるかどうかを判定する。この目的のため、個々のクレーンに既に設けられている荷重トルク制限装置を用いて、或る動きベクトルについて個々の荷重トルク制限装置によって判定された過荷重に応じて、許可された動きベクトルからなるベクトルセットを制限し得る。このことに関して、反復的プロセスによって予測計算を用いる。この文脈においては、個々のクレーンに設けられた既存の荷重トルク制限装置を利用するか、又は、これらの荷重トルク制限装置を中央コンピュータシステムにおいて用いるかのいずれかである。したがって、荷重トルク制限装置によるクレーンの動作停止に至る動きは、その開始が防止され得る。
【0063】
さらに、許可された最大接地圧などの外部システムの制限、船舶の傾斜、又はプラットホームの許可された最大トルクを、損傷事故として考慮し得る。したがって、本発明による危険防止システムは、保護すべきこれらのシステムを提供し得る。
【0064】
全てのクレーンが集中制御される場合、クレーン操縦者は、所望の荷物移動のみをプリセットすればよい。所望の荷物移動又は荷物の所望の空間位置のプリセットは、オンラインで、例えばジョイスティックを用いて行われ得るか、若しくは、移動計画書を用いてオフラインで、例えばクレーン配置プランナのファイルから得た軌道に基づいて行われ得る。荷物の移動手順は、6方向における自由度を有している。そのうち3つが平行移動に対応し、残りの3つが回転に対応している。回転は、任意の所望の仮想点の回りに入力され得、このとき、クレーン及び荷物保持手段の数に応じて最大3方向が実際に可能である。回転移動の角度範囲は、通常、形状的且つ物理的に制限される。というのは、クレーンを互いの上方に移動させることができず、且つ、任意の所望の様態で傾けることもできないからである。対照的に、回転軸は、本発明の制御システムにおいて自由に規定され得る。
【0065】
例えばプリセットされた荷物の方向は、通常、損傷事故に至り得ないクレーンの複数の異なる動きベクトルによって実現される。このことは、クレーンが、例えばクレーンのブーム仰角調整(luffing)機構及び旋回ギア並びに適宜走行ギア(traveling gear)によって、より多くの種類(方向)の自由度を有するという事実に基づいている。本発明の安全及び制御システムは、特に、複数のクレーンによる荷物の吊り上げ及び運搬に特に適したラフィング回動クレーン(luffing revolving cranes)のために設計されている。複数の所定の戦略(いずれかが選択されるか、或いは優先順位が与えられている)が、動きベクトル及びクレーンの制御に用いる移動手順の選択に利用可能である。例えば、荷物の方向、速度及び加速度に関する実際の値と現在値との差ができるだけ小さくなるようなクレーンの動きベクトルを、戦略として用いることができる。同様に、それを戦略として用いて、衝突防止からの安全距離を増やすことができる。同様に、個々の機構をブロックするか、又は、優先順位を個々の機構と関係付け得る。荷物移動の特定のパラメータを一定に維持して、クレーンの操縦者が例えば荷物移動の方向又は回転をプリセットすればよいだけにできる。
【0066】
ここで、考え得る制御モードについて、図2〜図5を参照しつつより詳細に説明する。これらの図面は、船舶に設置され得るような、固定的に設置された回動式ラフィングクレーンを2つ備えたタンデムクレーンを示す。両クレーン共に、ブーム用の旋回ギア及びブーム仰角調整機構、並びにロープ長の変更を可能にするホイストギア(hoisting gear)を備えている。これら2つのクレーンを用いて、例えばトラバース(traverse)によって、荷物を一緒に吊り上げるか又は運搬する。
【0067】
図2に示す平行移動に際して、荷物の移動方向をジョイスティックの方向によってオンラインでプリセットするが、クレーンは、平行移動の間に荷物の向きが変化しないように制御される。ここで、ジョイスティックによってプリセットされた位置1から位置2に向かう方向に沿って移動するために、両方のクレーンのブームのブーム上げを行い、クレーンを反対方向に回動させる必要がある。この点について、2つのクレーンのブーム上げ及び回動は、荷物が回転しないように互いに調整されている。荷物が傾かないようにするため、ロープ長に応じてマッチングを行い、荷物を水平に維持する必要がある。このモードでの移動のための基準点は、それ自身のクレーンのブームの先端又は荷物の中心のいずれかである。
【0068】
図3に荷物の回転移動を示す。この例では、荷物は垂直の回転軸の回りを回転する。荷物を位置1から位置2へと動かすために、クレーン1のブームのブーム上げを行い、同様にクレーン2のブームのブーム上げを行う必要がある。しかしここでは、図2に示したモードではいずれの場合にも同じ方向であったのとは異なり、いずれの場合にも時計回り方向にクレーンが回動する。例えば荷物の中心の位置はそれによって変化しないが、荷物は回動する。ロープ長は、それに対応して調整されて、荷物の水平方向の向きがさらに確実にされる。
【0069】
平行移動と回転移動とを組み合わせたタンデムクレーンの複合動作もまた可能である。したがって、荷物を移動することも整列させることも可能である。
【0070】
図示した荷物の移動を可能にするため、クレーンの制御において、旋回ギア及びブーム仰角調整機構並びにホイストギアそれぞれの最大速度及び加速度を考慮する必要がある。その後、瞬間的に作動される制動装置に応じて、速度及び加速度を低減することにより、所望の方向を位置する。
【0071】
この点に関して、荷物の所望の動きの結果として制動が行われるが、一方では、特にトラバースの吊り下げ点の間の長さを一定に保つ必要がある。さらに、動的衝突防止装置を備えた本発明による保護システムが使用される。これは、クレーン同士の衝突を防止すると共に、クレーンと荷物との衝突も防止する。この点に関して、衝突が起こり得ない限りは自由な移動が可能である。したがって、制御は、衝突防止距離及び全てのクレーンの力学(dynamics)を考慮に入れたロボット動作の予測計算に基づく。計算は、各クレーンが衝突を認識するとブレーキング処理を行うように、全てのクレーンにおいて随時並列に実行され得る。
【0072】
将来の衝突が認識された場合、クレーンの制御に用いる動きベクトルは、対応する方向において制限されて、衝突が回避される。特に荷物のクレーンとの衝突を考慮する必要があるので、クレーン及び荷物の対応する3次元形状モデルに基づいて3次元衝突防止チェックが実行される。
【0073】
この衝突防止システムについて、図4により詳細に説明する。この点に関して、衝突防止ベクトル及び将来の動きについての交点を計算する。将来の衝突が認識された場合、マスタースイッチ信号又は予測される衝突の方向におけるクレーンの動きベクトルが制限される。通常動作について、同じ統合時間/傾斜を衝突防止に用いる。
【0074】
図5は、クレーン1又はクレーン2が独立して制御されるモードを示す。このモードは、特に、荷物を取り上げる場合又はクレーンを荷物の上方に配置する場合に使用される。図5において、クレーン1はクレーン1の操縦室から制御される。クレーン2は、クレーン2のクレーン先端の動きに関するプリセット値がクレーン1におけるマスタースイッチの位置によって生成されるように制御される。クレーン制御は、このプリセット値をクレーン2の旋回ギア及びブーム仰角調整機構の対応する制御に反映させる。タンデム動作の予選択の時点におけるトラバース長は、クレーンのこの独立した制御を介して設定され得る。クレーンは、トラバース上方の対応する位置へと移動されるが、クレーンの位置は、ボタンを押した時点に決定され、記憶され得る。トラバースの長さ及び位置若しくは荷物の位置及び寸法は、これらの位置から得られる。これにより、絶対長の入力は必要ない。特に、クレーンにおける荷物取り上げ点の現在のスペーシングとしてタンデム動作を選択すると、トラバース長は自動的に判定され得る。その後、修正が行われる。具体的には、タンデム動作が選択解除され、個々のクレーンの修正移動が行われ、その後再度タンデム動作が選択される。
【0075】
さらに、本発明による制御システムにおいて、クレーンによる外部システムへの影響及び外部システムによるクレーンへの影響も考慮し得る。クレーンが重貨物船に備えられている場合、図6に示すように、クレーンの全トルクが、船舶の傾斜に影響する。ここで、危険防止システムは、船舶の傾斜が特定の限界内に留まるように構築されている。さらに、船舶の浮力調整装置(ballasting device)に情報を供給し得るか、若しくは、クレーンとの相互作用において強すぎる傾斜が回避されるように浮力調整装置を即座に制御し得る。この目的のために、3つの軸における重力中心及び2つの軸の回りにおけるクレーンの傾きに加えて、2つの軸の回りにおけるクレーンの全トルクが判定される。調整後、移動速度及び重力中心に応じて、船舶の浮力調整点を制御し得る。この際、何時でも船舶の乗員が追加的に干渉し得る。この浮力調整装置の制御によって、クレーンはより大きな合計トルクを有することができる。
【0076】
本発明の危険防止又は制御システムは、既存のクレーン制御装置に接続され得、それらと一緒に使用し得る。例えば、オンボード型の電子CANバスに接続され得る。
【0077】
クレーンに既に備えられているセンサシステムを用いて、クレーンの整列のためのデータを供給し且つ荷物に関するデータの判定を行うことができる。このセンサシステムは、通常、個々のクレーンの過荷重による危険防止及びクレーンの駆動のために既に設けられているものである。これらのデータの伝達は、CANバスによって行われ得る。同様に、制御の表示は、オンボード型の標準モニタを介して行われ得る。1つの利点として、公知の対象物の任意の所望の距離の表示が可能であることが挙げられる。同様に、個々のクレーンに既に設けられている過荷重防止装置を利用することも可能である。具体的には、各クレーンが独立してその過荷重を認識し、追加的に、本発明による危険防止システムによって、他のクレーンの過荷重認識に応じて動作する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】危険防止システムの制御パネルを示す図である。
【図2】本発明の制御システムによる2つのクレーンを用いた荷物の移動を示す図である。
【図3】本発明の制御システムによる2つのクレーンを用いた荷物の向きを示す図である。
【図4】本発明の制御方法による動的衝突防止手順を示す図である。
【図5】本発明の制御方法による、ソースからの2つのクレーンの直接制御を示す図である。
【図6】本発明の制御システムによる2つの船舶クレーンを用いた荷物の移動を示す図である。
【出願人】 【識別番号】501190549
【氏名又は名称】リープヘル−ヴェルク ネンツィング ゲーエムベーハー
【出願日】 平成19年8月28日(2007.8.28)
【代理人】 【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘

【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏

【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久

【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二

【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実

【識別番号】100115691
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 篤史

【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也

【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄

【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守

【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓

【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也


【公開番号】 特開2008−56492(P2008−56492A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2007−220713(P2007−220713)