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【発明の名称】 自動車用ドアガードバー
【発明者】 【氏名】吉岡 典恭

【要約】 【課題】自動車の側突事故による負荷をどのような形でしかもどの部位に受けたとしても、ビーム部の折れ位置を一定箇所にコントロールすることにより、大型化或いは高重量化を招かないようにした。

【構成】自動車用ドア1のドア袋部4内部におけるアウタパネル2に装着してドア1の側突時における強度及び剛性を保持するドアガードバー7が、ビーム部8を中央にして、その長手方向両端部にドア1に装着するための取付けブラケット部9を有して構成する場合、ビーム部8における乗員に対してより遠ざかった自動車前方に、ビード部或いはエンボス部8e、孔部8f又は急斜面部8gからなるウイークポイント部10を形成して、側突時の負荷により所定位置が折れ曲がるように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアの内部に装着して該ドアの側突時における強度及び剛性を保持するドアガードバーであって、該ドアガードバーをビーム部を中央にして、その長手方向両端部に前記ドアに装着するための取付けブラケット部を有して構成する場合、前記ビーム部における乗員に対してより遠ざかった自動車前方に、前記側突時の負荷により所定位置が折れ曲がるように構成したウイークポイント部を設けたことを特徴とする自動車用ドアガードバー。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアの強度及び剛性を向上させるためにドアの内部に装着される自動車用ドアガードバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種のドアガードバーとしては、図10に示すような焼入れ鋼管あるいはアルミ押出し成形により構成された断面一定タイプのものと、図11に示すようなプレス成形品により構成した断面異形タイプのものとが、広く知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−129756号公報。
【特許文献2】特開2003−94943号公報。
【0003】
図10に示す断面一定タイプのドアガードバーaは、断面一定の管体からなるビーム部bと、ビーム部bの両端部に固着した別体の取付けブラケットc、cとを有して構成して、ビーム部bが自動車の前後方向に延在するように、取付けブラケットc、cを不図示の自動車用ドアのアウタパネルの内側に装着することにより、自動車用ドアの強度及び剛性を向上させている。
【0004】
図11に示す断面異形タイプのドアガードバーeは、ハイテン材或いはダイクエンチ材等の板材をプレス成形により一体に形成したビーム部f及びビーム部fの両端に一体に形成された取付けブラケット部g、gとから構成し、ビーム部fは、その中央部の断面形状を大きくして、両端部に行くに従って断面形状が漸減的に小さくなるように形成されて、やはり、ビーム部fが自動車の前後方向に延在するように、取付けブラケットg、gを不図示の自動車用ドアのアウタパネルの内側に装着することにより、自動車用ドアの強度及び剛性を向上させている。
【0005】
ところで、ドアガードバーは、一般に、その両端部が自動車用ドアのアウタパネルの内側に固着されて、自動車の側突事故等に際して、ドア自体が乗員側に変形しないようにし、乗員を保護しようとするものである。
【0006】
そして、ドアガードバーの両端部を固定して、自動車の側突による負荷をドアガードバーが受けた場合に、ドアガードバーに働く曲げモーメントは、図12の実線xで示すように、横軸にドアガードバーの長さをとり、縦軸に曲げモーメントの大きさをとった場合、通常、ドアガードバーの中央部において最大となり、両端部に行くにしたがって、漸減する略扁平V字状に現れるものとしている。
【0007】
そこで、上記従来の2つのドアガードバーa、eについて、上記曲げモーメントxに対応すべくどのように対処しているかについて説明すると、先ず、図10に示す断面一定タイプのドアガードバーaは、当然ながら、断面一定のために長さ方向全域において断面係数が同一値であることから、耐力モーメントの推移がy破線で描画するような水平線として現れることになり、また、図11に示す断面異形タイプのドアガードバーeは、断面が中央部において太く形成し、この中央部から両端部に行くに従って漸減的に形成されていることから、z破線で描画する耐力モーメントの推移が、中央部において最大となり、両端部に行くに従って漸減する略扁平なV字状に現れることになり、y破線及びz破線で描画する耐力モーメントは、共に、自動車の側突による衝撃を受けることによりドアガードバーに発生するものと設定されたx実線で示す耐力モーメントが高い位置に推移するように設定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、図10に示す断面同一タイプのドアガードバーaにおいては、ビーム部bの全長に渡って、y破線で描画した耐力モーメントを発生するように、肉厚寸法を設定することになり、また、図11に示す断面異形タイプのドアガードバーeにおいては、z破線で描画した耐力モーメントを発生するように、その中央部において最も太く、両端部に行くに従って漸減させることになる。
【0009】
ところで、自動車における実際の側突事故に際して、ドアガードバーは、衝突物による負荷を受ける位置すなわち衝撃による入力を受ける位置において、局部的な変形を起し、当該部位において折れ曲がる場合もあるが、当該局部変形がそれほど大きくない場合には、最大値の曲げモーメントが発生する中央部が折れやすい傾向を示す。
【0010】
しかしながら、側突事故に際して、実際にドアガードバーにおけるどの部位から折れ曲がるかは、自動車のレイアウト、ドアガードバーの強度バランス、負荷を受けた位置、或いは当該位置における形状等、種々の要因が複雑に関連して決まることになり、これを予め予測することは非常に難しい。
【0011】
もし、実際のドアガードバーの折れ曲がり箇所が、乗員に対して危害を加える位置であるとすると、ドアガードバー自体の本来機能を果たしえないことになりかねない。
【0012】
このために、従来では、図12の波線y或いはzで示す耐力モーメントをなるべく高く設定すべく、図10に示す断面同一タイプのドアガードバーaにおいては、板厚を厚く設定する等の対策を行い、また、図11に示す断面異形タイプのドアガードバーeにおいては、断面形状を大きく設定する等の対策を行っているが、いずれの対策もドアガードバーの大型化や高重量化を招くことになって、最近の自動車の軽量化要求に要求を及ぼすことになってしまう。
【0013】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、自動車の側突事故による負荷をどのような形でしかもどの部位に受けたとしても、ビーム部の折れ位置を一定箇所にコントロールすることにより、大型化或いは高重量化を招かない自動車用ドアガードバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の自動車用ドアガードバーは、自動車用ドアの内部に装着して該ドアの側突時における強度及び剛性を保持するドアガードバーであって、該ドアガードバーをビーム部を中央にして、その長手方向両端部に前記ドアに装着するための取付けブラケット部を有して構成する場合、前記ビーム部における乗員に対してより遠ざかった自動車前方に、前記側突時の負荷により所定位置が折れ曲がるように構成したウイークポイント部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成する本発明は、ビーム部に所定位置が折れ曲がるように構成したウイークポイント部を設けたことにより、側突事故による負荷を受けた場合のビーム部の折曲箇所を予めコントロールすることができ、このウイークポイント部が乗員に対してより遠ざかった自動車の前方に位置していることから、ビーム部の折曲により乗員に危害を加えることがなく、しかも、ビーム部において発生する曲げモーメントに対する断面係数を高く設定するために、ビーム部の肉厚寸法を厚くすることや、ビーム部の中央部の断面形状を大きくする等の対策を必要とせず、ドアガードバーの軽量化、延いては自動車全体の軽量化を果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施の形態について、説明する。
【0017】
図1はガードバーを装着した一般的な自動車用ドアの側面図、図2は本発明における第1の実施の形態による図1におけるドアガードバーを描画した斜視図、図3は図2のA矢視図である。
【0018】
図1において、自動車のドア1は、車外側に存するアウタパネル2と車室内側に存するインナパネル3とを接合して形成されたドア袋部4とドア袋部4の上部側に存してドアガラス5を昇降可能に支持するサッシュ6とを有して構成している。
【0019】
ドア袋部4内には、その長手方向が自動車の前後方向に延在するように、ドアガードバー7が配設されている。
【0020】
ドアガードバー7は、第1の実施の形態では、ハイテン材或いはダイクエンチ材等の板材をプレス成形により一体に成形された断面異形タイプのものを使用しており、自動車の側突時に受けた負荷によりドア1が車室内にいる乗員側に変形するのを防止するビード部8と、ビード部8の両端部に設けられた取付けブラケット部9、9とで構成しており、取付けブラケット部9、9をアウタパネル2にボルト締め或いは溶接等することによって、固着されている。
【0021】
従って、ビーム部8は、その長手方向に一対の膨出部8a、8bを形成すると共に、膨出部8a、8bの略中央部において最大断面部8cとなり両端部に行くに従って漸減的に小断面部8dとなる形状に成形される断面係数分布になっている。
【0022】
小断面部8dにおける自動車前方側(矢印方向)には、ビード部或いはエンボス部8eを形成することにより、側突時の負荷により所定位置が折れ曲がるようにしたウイークポイント部10が形成されている。
【0023】
ウイークポイント部10は、ビーム部8における乗員に対してより遠ざかった自動車前方に位置するものであり、通常乗員の身体が非常に遠ざかる足元付近(運転席或いは助手席側ドアの場合には、通常不図示のインストルメントパネルの左右端下部付近)に存在するように、着座状態の乗員の胴部より500〜600mm程度前方に離れている。
【0024】
さらに、ウイークポイント部10の設置位置について、図4を用いて具体的に説明する。
【0025】
図4において、例えば運転席或いは助手席における乗員11の着座位置は、通常、センターピラー12よりも若干自動車前方、すなわちドア1の後方寄りであるとされている。
【0026】
この結果、ドアガードバー7における両取付けブラケット部9によるドア1への取付け点間における中央線がSに存するとした場合、乗員11は、中央線Sに対して、後方よりに着座していることになる。
【0027】
かかること点から、ドアガードバー7におけるウイークポイント部10は、乗員11に対してより遠ざかった自動車の前方に位置させるのであることから、中央線Sとドアガードバー7における自動車前方の取付け点Tとの間Uに形成すればよいことになる。
【0028】
次に、ウイークポイント部10を有するドアガードバー7における断面2次モーメントについて、図5を用いて説明する。
【0029】
すなわち、図5において、自動車の側突による負荷をドアガードバー7が受けた場合に、ドアガードバー7に働く曲げモーメントは、実線で示すように、横軸にドアガードバーの長さをとり、縦軸に曲げモーメントの大きさをとった場合、ドアガードバー7のビーム部8の中央部において最大となり、両端部に行くにしたがって、漸減する略扁平V字状に現れるものとして設定して、実線視よりも高い位置に断面係数が存するように、破線視した略扁平V字状になるように設定しているも、ウイークポイント部10においては、断面係数を実線視状態の下側に存するように設定したことになる。
【0030】
かかる構成において、ビーム部8における乗員に対してより遠ざかった所定位置である自動車前方に、側突時に折れ曲がるように構成したウイークポイント部10を設けたことから、自動車の側面衝突による負荷が、ビーム部8に対してどのような形で、或いはビーム部8のどの位置において加わったとしても、必ず、ウイークポイント部10から折曲されることになって、ビーム部8の折れ位置をコントロールすることができ、乗員に対向する部位にビーム部8の折れ位置が存しさせないように構成することができる。
【0031】
次に、図6乃至図9を用いて、本発明に係る別の実施の形態について説明する。
【0032】
先ず、図6及び図7に示す本発明に係る第2の実施の形態によれば、ウイークポイント部10は、ビーム部8の膨出部8a、8bにおける乗員に対してより遠ざかった自動車前方における位置に、それぞれ孔部8fを形成することによって、構成している。
【0033】
図8及び図9に示す本発明に係る第3の実施の形態によれば、ウイークポイント部10は、ビーム部8の膨出部8a、8bにおける乗員に対してより遠ざかった自動車前方における位置に、それぞれ急斜面部8gfを形成して断面係数を急激に小さくすることによって構成している。
【0034】
上記第2及び第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ウイークポイント部10が自動車の側突事故時に折れ曲がることにより、ビーム部8の折れ位置をコントロールすることができ、乗員に対向する部位にビーム部8の折れ位置が存しさせないように構成することができる。
【0035】
なお、上記に説明した断面異形タイプのドアガードバー7は、ハイテン冷間プレスによる場合もあるが、通常ダイクエンチ(ホットプレス)を用いて、板材を素材としてプレス成形し、同時に所定の剛性を出すために焼入れ処理を行うことによって、製作しているのであるが、かかる焼入れは、プレス成形過程において、通常、プレス成形型を冷却水により冷却する方法やプレス成形型から冷却水を噴出させて直接冷却する方法によって、行うものである。
【0036】
従って、かかるプレス成形型の冷却水による冷却の場合には、プレス成形型の一部分の冷却を控えることによって、またプレス成形型から冷却液を噴出させて直接冷却する場合には、プレス成形品の一部分に冷却液の噴出を抑えることによって、プレス成形品の一部分の焼入れ処理を抑えるようにすることができる。
【0037】
このような処理を利用することにより、ドアガードバー7にウイークポイント部10の形成を行うことができる。
【0038】
すなわち、ドアガードバー7のプレス成形過程において、ウイークポイント部10を形成する部位に相当するプレス成形型の一部分の冷却を抑えることによって、或いは冷却液を噴出する冷却管からの冷却液の噴出量を制御することによって、又はプレス成形型における当該部位には冷却管を設置しないこと等により、焼入れを施さない或いは焼入れ処理を少なくするようにして、ウイークポイント部10の形成が可能となる。
【0039】
また、上記実施の形態においては、本発明を断面異形タイプのドアガードバーに採用した場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、断面同一タイプのドアガードバーにも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明は、ビーム部に所定位置が折れ曲がるように構成したウイークポイント部を設けたことにより、側突事故による負荷を受けた場合のビーム部の折曲箇所を予めコントロールすることができ、このウイークポイント部が乗員に対してより遠ざかった自動車の前方に位置していることから、ビーム部の折曲により乗員に危害を加えることがなく、しかも、ビーム部において発生する曲げモーメントに対する断面係数を高く設定するために、ビーム部の肉厚寸法を厚くすることや、ビーム部の中央部の断面形状を大きくする等の対策を必要とせず、ドアガードバーの軽量化、延いては自動車全体の軽量化を果たすことができるために、自動車用ドアの強度及び剛性を向上させるためにドアの内部に装着されるドアガードバー等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガードバーを装着した一般的な自動車用ドアの側面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態による図1におけるドアガードバーを描画した斜視図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】本発明にかかるドアガードバーへのウイークポイント部設置位置を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態によるドアガードバーに掛かる曲げモーメントおよびこれに対する耐力モーメントを説明するための線図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態を採用したドアガードバーの斜視図である。
【図7】図5のB矢視図である。
【図8】本発明に係る第3の実施の形態を採用したドアガードバーの斜視図である。
【図9】図7のC矢視図である。
【図10】従来技術である断面同一タイプのドアガードバーの斜視図である。
【図11】従来技術である断面異形タイプのドアガードバーの斜視図である。
【図12】従来技術におけるドアガードバーに掛かる曲げモーメントおよびこれに対する耐力モーメントを説明するための線図である。
【符号の説明】
【0042】
1 自動車のドア
7 ドアガードバー
8 ビーム部
8e ビード部或いはエンボス部
8f 孔部
8g 急斜面部
9 取付けブラケット部
10 ウイークポイント部


【出願人】 【識別番号】000178804
【氏名又は名称】ユニプレス株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100083954
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 輝夫


【公開番号】 特開2008−1272(P2008−1272A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173819(P2006−173819)