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【発明の名称】 キャスター
【発明者】 【氏名】苅田 保志

【要約】 【課題】簡素に構成できて、段差等の障害物により柔軟に対応できるようにした新規有用なキャスターを提供する。

【構成】外輪3の内側に内輪2を偏心させて配置し、この内輪2に車軸11を取り付けて、内輪2が外輪3に内接し且つ外輪の内面上を転動しながらその内接位置を変更し得るように構成したので、上載物の慣性力がそのまま衝突反力としてキャスターに作用することを防止し、かつ車軸11に急激な昇降動作が生じることを回避して、衝撃や騒音発生を有効に防止することができる。その際、内輪は、障害物の大きさに応じて必要な高さまで上がることができるので、一律に有効な緩衝作用が生じることになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪の内側に内輪を偏心させて配置し、この内輪に車軸を取り付けて、内輪が外輪に内接し且つ外輪の内面上を転動しながらその内接位置を変更し得るように構成したことを特徴とするキャスター。
【請求項2】
外輪が内輪に対して遊転自在に設けられている請求項1記載のキャスター。
【請求項3】
内輪の外周面と外輪の内周面との間に、車軸の軸心方向への相対変位を規制する凹凸係合部を設けている請求項1又は2何れかに記載のキャスター。
【請求項4】
外輪の両側面に添接し得る位置に、車軸の軸心方向への当該外輪の振れを規制するサポート部材を配置している請求項1〜3何れかに記載のキャスター。
【請求項5】
内輪と外輪に、異なる素材を用いている請求項1〜4何れかに記載のキャスター。




【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、路面上に存在する段差等の障害物を円滑に乗り越えることができるようにしたキャスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、荷物を運搬する際にキャスター付の台車等を利用することは、あらゆる場面で広く行われているところであり、キャスターはこれ以外にも搬送物の支持部材として広範に利用されている。そして、従来よりこの種のキャスターは、台車等への固定部位となる取付面(ステイ)よりブラケットを垂下させ、そのブラケットに車軸を架設して車輪を取り付けた構成からなるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、単にこのような構造であると、車輪が路面に存する段差や石等の障害物に衝き当たった際に、上載物の慣性力がそのまま衝突反力としてキャスターを介し台車等に作用する上に、単輪であるために障害物を乗り越える際に急激な昇降動作が生じ、これらが大きな衝撃や騒音の発生原因となっている。また、一時的に過大な操作力を必要とするなど操作性の低下にもつながっている。特に、車輪が障害物を乗り越えられずにロックした場合などには、上載物に著しい不具合が発生することが頻繁に見受けられる。
【0004】
このような不具合に対処し得るものとして、例えば特許文献1に示されるように、キャスターの車輪の前に径の小さい補助車輪を待機させ、一定以上の大きさの障害物があるときにこの補助車輪が機能して、障害物を乗り越え易くしたものが考えられている。
【特許文献1】特開2006−7855
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる特許文献1のものは、車軸や軸受等の数が倍増し、キャスターを支持箇所に2つづつ取り付けたようなものであるので、全体として構造が複雑で部品点数が多く、コストも大幅に増大するという問題がある。また、補助車輪の半径や設定位置と障害物の大きさとの関係によって緩衝効果が決まるため、障害物の大きさによらず一律に有効な緩衝作用が得られるとは言い難いものである。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、簡素に構成できて、段差等の障害物により柔軟に対応できるようにした新規有用なキャスターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のキャスターは、外輪の内側に内輪を偏心させて配置し、この内輪に車軸を取り付けて、内輪が外輪に内接し且つ外輪の内面上を転動しながらその内接位置を変更し得るように構成したことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、外輪に対して内輪は内接状態を保ったままで外輪内を転動することができるので、外輪が障害物に衝突してロックし、或いは円滑な走行が妨げられた状況下において、引き続き車軸を通して内輪に上載物の慣性が作用する場合、あるいは操作力が加わる場合には、先に内輪が外輪内を障害物上へ乗り上がる位置まで前上方に移動し、この内輪に付勢されるようにして外輪がやや遅れて障害物へ乗り上がるという作用が営まれる。したがって、上載物の慣性力がそのまま衝突反力としてキャスターに作用することを回避して、衝撃や騒音発生を有効に防止することができる。その際、内輪は、障害物の大きさに応じて必要な高さまで上がることができるので、障害物が極端に大きい場合を除いて、一律に有効な緩衝作用が生じることになる。
【0010】
上記の構成を簡素に実現するためには、外輪を内輪に対して遊転自在に設けておくことが有効である。
【0011】
このように互いに分離する内輪と外輪の間の確実な内接状態を維持するためには、内輪の外周面と外輪の内周面との間に、車軸の軸心方向への相対変位を規制する凹凸係合部を設けておくことが望ましい。
【0012】
また、キャスターを持ち上げた際などに外輪が車軸の軸心方向へ変位して内輪から逸脱してしまうことを的確に防止するためには、外輪の両側面に添接し得る位置に、車軸の軸心方向への当該外輪の振れを規制するサポート部材を配置しておくことが望ましい。
【0013】
内輪と外輪が分離していることを利用して、より有効な緩衝効果等を奏するためには、内輪と外輪に、異なる素材を用いておくことが有効となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明した構成であるから、簡素かつ廉価に構成できて、走行時に障害物に衝突した際の衝撃及び騒音を緩和し、特に車輪のロックを有効に回避するとともに、過大な操作力を要さずに障害物を乗り越えられるようにした、使い勝手に優れたキャスターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
この実施形態のキャスターは、台車等の四隅に配置して利用されるもので、図1及び図2に示すように、キャスター本体1の車軸11に内輪2を取り付け、この内輪2の外側に外輪3を配置して構成されている。
【0017】
キャスター本体1は、台車等に対する取付面(取付ステイ)12から一対のブラケット13を垂下させ、これらのブラケット13,13間に車軸11を架設したもので、車軸11にころがり軸受14を介して内輪2を軸支させている。内輪2の外周面21には、図2の縦断面に表わされるように、外向きに凹となるアール加工が施してある。一方、外輪3は、内径φ3が前記内輪2の外径φ2よりも大径となるように設定されたもので、外輪3が内輪2に対して相対的に上方へ最大に偏心した図2の状態にあるときでも、取付面12など周辺部位と干渉し得ない構造をなしている。外輪3の内周面31には、前記内輪2の外周面21に対応して内向きに凸となるアール加工が施してある。
【0018】
また、このキャスターには、外輪3の両側面に添接し得る位置に、車軸11の軸心m方向への当該外輪3の振れを規制するサポート部材4が内輪2側から延出させて配置してある。このサポート部材4は、内輪2の側面に中心を合致させて固定されたリング板状のもので、内接状態に拘わらず内輪2と外輪3との間に生じる三日月状の隙間を側方から略閉止し得る大きさをなしている。
【0019】
そして、取付面12を台車等の下面における四隅に配置して、このキャスターを固定キャスターとして用いるようにしている。
【0020】
なお、以上において、内輪2には鉄などの剛性の高い素材が、また外輪にはゴムやウレタン等の相対的に軟質の素材が用いられている。
【0021】
このキャスターを接地させると、図3に示す停止状態で上載荷重Wが車軸11に掛かり、内輪2は外輪3の内周最下端位置に内接し(内接点P)、外輪3は路面R上に接地する。
【0022】
この状態から、外部操作力Fを受けてキャスターが平坦な路面上を安定走行する際には、図4に示すように車軸11を介して先に内輪2が駆動され、内接点Pから力f0を受けて外輪3が従動するので、内輪2が外輪3の内周最下端位置よりもやや前上方に内接した状態を保って外輪3とともに同期して転動し、外輪3が路面R上を走行する。
【0023】
そして、外輪3が図5に示すように段差等の障害物Xに衝き当たり、外輪3に走行抵抗が掛かると、外輪3それ自体の重量や慣性は小さく、この外輪3に上載物の慣性力や外力Fが直接作用しているわけではないので、外輪3はいきおい走行慣性を失う。これに対して、内輪2には車軸11を介して上載物の慣性力や外力Fが作用しているので、内輪2は外輪3を足場にして内接状態のままで図5に矢印Aで示すように外輪3内を転動して車軸11が前上方に移動する方向に内接位置を変更する。このとき、外輪3が一時的にスロープとしての役割を果たし、内輪2は内接点Pにおける接線の向きを漸次変えながら障害物Xに乗り上げる方向に円滑に移動することができる。
【0024】
内輪2がある位置までくると、外輪3は障害物Xと接した点x1を支点にして内輪2の内接点Pから付勢力f1を受け、このとき外輪3と路面Fとの間には上載荷重が作用しておらず外輪3が動き易い状態にあるので、結果的に外輪3は図6に示すように路面Rから浮き上がり、一時的に過回転して内輪2の移動に追いつく。このため、内輪2は障害物X上において図3あるいは図4と同様の内接関係を外輪3との間で取り戻す。以上のようにして、仮に一時的に外輪3がロックしても、内輪2→外輪3と順次作動してキャスター全体が障害物X上に円滑に乗り上げることができる。
【0025】
一方、障害物Xから降りる際には、図7に示すように外輪3は障害物Xと接した点x2を支点にして内輪2の内接点Pから付勢力f2を受けるので、結果的に外輪3は図8に示すように先に路面R上に接地し、このとき内輪2と外輪3との内接位置Pは外輪3の内周最下端位置から見て後上方の高い位置に残される。そして、この位置から内輪2は外輪3の内周を一時的にスロープとして利用して、内接点Pにおける接線の向きを漸次変えながら円滑に車軸11を前下方に移動させる。このため、路面R上において内輪2は図3あるいは図4と同様の内接状態を外輪3との間で取り戻す。以上のようにして、外輪3→内輪2と順次作動してキャスター全体が障害物Xから円滑に降りることができる。
【0026】
このような作用効果は、外輪3が障害物Xに突き当たって停止している状態から外力Fを加えた場合も同様である。
【0027】
以上のように、本実施形態は、外輪3の内側に内輪2を偏心させて配置し、この内輪2に車軸11を取り付けて、内輪2が外輪3に内接し且つ外輪の内面上を転動しながらその内接位置を変更し得るように構成したものである。このため、上載物の慣性力は内輪2の連続的な動きにおいて急激な変化を生ずることなく維持され、そのまま衝突反力としてキャスターひいては上載物に作用することがない上に、車軸11の急激な昇降動作が緩和され、さらに障害物Xに対して昇降する際には内輪2と障害物Xとにより外輪3を2点で挟み込むことによって衝撃を吸収し、騒音の発生を有効に低減することとなる。その際、内輪2は障害物Xの大きさに応じて必要な高さまで外輪3内を上ることができるので、障害物Xが極端に大きいものである場合を除いて、当該障害物Xの大きさによらずに上記の効果が安定して得られることとなる。また、障害物Xを乗り上げるために過大な操作力Fを付与する必要もないため、操作性も格段に向上したものになる。
【0028】
この場合、内輪2の外径φ2と外輪3の内径φ3とは適宜の寸法に設定すればよいが、両者があまり近いと内外輪2,3を設けた意義が没却され、逆にかけ離れ過ぎると内輪2が動き過ぎることになるので、一般的には外輪3の内径φ3に対して内輪2の外径φ2は1割〜2割減の範囲に設定しておくことが効果的である。また、内輪2の幅寸法は、幅狭にすると変形し易く幅広にすると変形し難くなるので、上載荷重がさほど大きくない用途に対しては幅狭なものにして緩衝効果を高め、上載荷重が大きい用途に対しては幅広なものにして耐荷重性を高めること等が有効である。
【0029】
そして、上記の構造であれば、車軸11の数は従来どおりでよく、車軸を始めとして軸受等の構造を複雑化にせずに済むので、簡素かつ廉価に構成できて優れた性能を発揮し得るキャスターとしての利用価値を有することとなる。
【0030】
特に、外輪3は内輪2に対して遊転自在に配置しているだけであるので、内周に車軸11及び軸受14を取り付けた内輪2に対して、その外側に外輪3を配置し、その状態で車軸11をブラケット13にボルト等により取り付けるだけで構成することができるので、従来の補助車輪タイプのものに比して、一層の構造及び組立ての簡素化を果たすことができる。
【0031】
この場合、内輪2の外周面21及び外輪3の内周面31にそれぞれアール加工を施し、それらの接触部位に、車軸11の軸心m方向への相対変位を規制する凹凸係合部Yを形成しているので、主として走行中において軸心m方向への内輪2と外輪3との適正な相対位置を保って、確実な内接状態を維持することができる。特に、この凹凸係合部Yが、上記のようなアール加工のみで済むため、簡単に構成できて効果の大きいものとなる。
【0032】
また、外輪3の両側面に添接し得る位置に、車軸11の軸心m方向への当該外輪3の振れを規制するサポート部材4を設けているので、キャスターを持ち上げた場合などに外輪3が車軸11の軸心m方向に変位して内輪2から逸脱してしまうことを的確に防止することができる。そのサポート部材4も、内輪2の側面に固定した状態で当該内輪2側から延出させて設けているので、外輪3の側面に近接ないし当接させて適切な配置状態と有効な効果とを実現することが可能となる。
【0033】
さらに、上記のように内輪2と外輪3が分離していると、これら両輪2、3に異なる素材を用いることができるので、内輪を金属等により構成して上載荷重を実質的に支持する強度を確保するとともに、外輪3はウレタンやゴム等、各種樹脂等により構成して内輪2との間で滑りのない同期状態を実現し、また路面R上を適度な摩擦抵抗の下に転動し得るように構成することができる。さらに、障害物Xに衝突した際には上述したように内輪2と障害物Xとにより外輪3を2点で挟み込むことによって衝撃吸収と騒音発生防止を図ることになるが、その際に外輪3を弾性変形させることによってより高い衝撃吸収効果および騒音防止効果を上げることができる。
【0034】
したがって、本実施形態のキャスターは、台車はもとより、車椅子、医療関係(ストレッチャー、ベッド、ワゴン)など衝撃を低減したい機器の支持に、広範囲に亘って有効に適用することが可能となる。
【0035】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0036】
例えば、凹凸係合部の凹と凸は内輪側と外輪側とで逆の構成であってもよく、或いはアール加工以外に断面台形状の突起とこれに対応する溝との組み合わせによって構成してもよい。また、キャスターは必ずしも4輪で用いる場合に限らず、キャリーバックのように2輪で走行するようなものに適用しても有用なものとなる。さらに、内輪は必ずしも金属でなくとも樹脂等により構成してもよいし、本発明の基本的な作用効果を得る上では内、外輪は同じ素材であっても構わない。さらにまた、本発明の内、外輪にはローラのような幅広なものも概念的に含まれ、また本発明のキャスターを首振りキャスターとして構成することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャスターを示す側面図。
【図2】同縦断面図。
【図3】同実施形態に係るキャスターの通常接地状態を示す図。
【図4】同実施形態に係るキャスターの通常走行状態を示す図。
【図5】同実施形態に係るキャスターが障害物を乗り越える際の作用説明図。
【図6】同実施形態に係るキャスターが障害物を乗り越える際の作用説明図。
【図7】同実施形態に係るキャスターが障害物を乗り越える際の作用説明図。
【図8】同実施形態に係るキャスターが障害物を乗り越える際の作用説明図。
【符号の説明】
【0038】
2…内輪
3…外輪
4…サポート部材
11…車軸
m…軸心
Y…凹凸係合部


【出願人】 【識別番号】395021653
【氏名又は名称】苅田 保志
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直


【公開番号】 特開2008−13074(P2008−13074A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187148(P2006−187148)