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【発明の名称】 凹版および凹版の製造方法
【発明者】 【氏名】藤岡 秋夫

【氏名】大山 信仁

【要約】 【課題】溝を形成したガラス基板を用いた凹版であって、溝のパターンを高い寸法精度で形成することが可能であって、且つ、引っかき疵がつきにくく、さらに表面強度に優れた凹版、を提供することを目的とする。

【構成】、溝3を備えるガラス基板2の表面にフロスト面4が形成されており、且つ、該フロスト面4に金属メッキ層5が積層されている凹版1により、溝のパターンを高い寸法精度で形成することが可能であって、且つ、引っかき疵がつきにくく、さらに表面強度に優れた凹版1が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を備えるガラス基板の表面にフロスト面が形成されており、且つ、該フロスト面に金属メッキ層が積層されている、ことを特徴とする凹版。
【請求項2】
予め定められたパターンにて溝を形成したガラス基板の表面にフロスト加工を施して該ガラス基板にフロスト面を形成し、該フロスト面に無電解金属メッキを施して金属メッキ層を積層する、ことを特徴とする凹版の製造方法。
【請求項3】
フロスト面に無電解金属メッキを施されたガラス基板を焼成する、ことを特徴とする請求項2記載の凹版の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、凹版および凹版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凹版を用いた印刷(凹版印刷)は、比較的微細な印刷パターンをほぼ均一な厚みで且つ低コストで形成できる利点から、印刷物を製造する工程はもとより、液晶ディスプレイのカラーフィルターや各種電子機器の回路基板を作成する工程にも利用されてきている。
【0003】
凹版印刷は、一般的に、基板に予め定められたパターンで溝を形成した凹版の表面に、インクなどのペーストを塗り付けて溝内にペーストを詰め、溝内部から外側にはみ出た余分なペーストをドクターブレードで掻きとり、凹版に形成されている溝に詰められたペーストを被転写物に転写することによって実施できる。こうした凹版印刷に用いる凹版としては、金属製の基板にエッチングを施して溝を形成したものが用いられてきたが、金属製の基板にエッチングを施す方法では、形成される溝の深さにむらが生じやすく、微細な溝のパターンを高い寸法精度で作成するにしても、ある程度のレベルで溝の細さや精度の限界がきてしまうという問題があった。この問題は、液晶ディスプレイのカラーフィルターや各種電子機器の回路基板に、極微細なパターンを、高い寸法精度を維持しつつ形成することが要請されるようになればなるほど、極めて大きなものとなる。
【0004】
こうした問題に対して特殊なガラス基板にエッチングを施してなるガラス製の凹版が提案されている。この凹版は、溝を形成させる基板として特殊なガラスを用いることで、金属製の凹版よりも溝の深さのむらを生じにくくし、被転写物への転写のばらつきを抑えて微細な溝のパターンを高い寸法精度で形成できるようにするものである(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−57867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された凹版では、SiO2含有率の極めて高い特殊なガラスを基板に用いることが要請されるため、製造コストの大幅な上昇を招いて汎用性に劣るものとなってしまう虞がある。特に、液晶ディスプレイのカラーフィルターの製造にあたり平板状の凹版(平板凹版)を用いる場合、平板凹版として大型のものが要請されることが多く、こうした場合において特許文献1に示される特殊なガラスを要請されることは、極めて大きな問題となる。
【0007】
また、特許文献1に記載されたガラス製の凹版では、金属製の凹版に比べて十分な表面強度を確保できない虞があり、例えば、ドクターブレードにてペーストを掻き取る際、ドクターブレードの先端がガラス製の凹版に形成された溝の側面、特に側面前端部の角付近、に直接衝突して、溝部分が簡単に破損してしまう虞があった。また、この凹版では、ドクターブレードにてペーストを掻き取る際に引っかき疵が容易に生じる虞があった。
【0008】
本発明は、溝を形成したガラス基板を用いた凹版であり、溝のパターンを高い寸法精度で形成することが可能であって、且つ、引っかき疵がつきにくく、さらに表面強度に優れた凹版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)溝を備えるガラス基板の表面にフロスト面が形成されており、且つ、該フロスト面に金属メッキ層が積層されていることを特徴とする凹版、
(2)予め定められたパターンにて溝を形成したガラス基板の表面にフロスト加工を施して該ガラス基板にフロスト面を形成し、該フロスト面に無電解金属メッキを施して金属メッキ層を積層する、ことを特徴とする凹版の製造方法、
(3)フロスト面に無電解界金属メッキを施されたガラス基板を焼成する、ことを特徴とする上記(2)記載の凹版の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の凹版によれば、ガラス基板の表面に金属メッキ層が積層されて構成されているので、ガラス基板のみからなる凹版よりも、表面強度を高めることができる。また、この凹版によれば、ドクターブレードにてペーストを掻き取る際、ドクターブレードの先端が凹版に形成された溝の側面に直接衝突しても、金属メッキ層がガラス基板を保護してガラス基板の破損を抑制することができる。また、ドクターブレードにより凹版表面のペーストを掻き取る際において凹版の表面に引っかき疵が生じにくくなる。
【0011】
また本発明の凹版は、ソーダライムなどの一般的なガラスを用いて製造でき、しかも、フロスト加工や無電解金属メッキは大型のガラス基板に対して施すことができるので、本発明によれば、大型の平板凹版を容易に製造することができるようになる。
【0012】
本発明の凹版の製造方法によれば、ガラス基板のみからなる凹版よりも表面強度に優れた凹版を製造することができるようになる。
【0013】
本発明の凹版の製造方法によれば、ガラス基板に無電解金属メッキを施して凹版を形成するので、ガラス基板のフロスト面に金属メッキ層をほぼ均一な厚みでメッキすることができて、金属メッキ層を形成する際に厚みむらが生じにくく、高い寸法精度を維持しつつ凹版の表面強度を高めることができる。
【0014】
本発明の凹版の製造方法によれば、フロスト加工されたガラス基板に対して無電解金属メッキを施すので、無電解金属メッキがガラス基板に強固に密着した状態を形成することができ、ガラス基板から金属メッキ層が容易に剥離してしまう虞を低減できる。
【0015】
また、本発明の凹版の製造方法によれば、溝部分位置を構成する側面と凹版の表面(溝部分を除く表面)との境界部は、ガラス基板に無電解金属メッキが施される際に、ややR形状に形成されるので、ドクターブレードの先端が接触した際におけるガラス基板の破損の虞をより効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明の凹版の製造方法によれば、無電解金属メッキを施されたガラス基板を焼成することができるので、凹版の表面強度を一層高めることができる。
【0017】
そして、本発明の凹版の製造方法によれば、通常では凹版を製作する際の原版として用いられるガラス製の基板に対して直接溝のパターンを形成し、その原版自体を凹版となすことができるようになるため、溝部分の寸法精度に一層優れた凹版が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の凹版1は、図1に示すように、溝3を備えるガラス基板2の表面に金属メッキ層5を積層して形成されている。この凹版1において、ガラス基板2の表面には凹凸が施されてフロスト面4がほぼ全面に形成されており、フロスト面4を構成する凹凸(凹状部位と凸状部位)は、溝3の内側面に少なくとも複数の凹凸が形成される程度に微細な大きさにて形成されている。また、金属メッキ層5は、ガラス基板2のフロスト面4ほぼ全面を覆って積層されて形成される。そして、凹版1において、ガラス基板2の溝3に金属メッキ層5が積層されて溝部8が形成されており、凹版1における溝部8を除く表面と溝部8の側面との境界位置(境界部11)がややR形状に形成されている。
【0019】
凹版1の溝部8は、そのパターンや深さ、幅などの寸法を特に限定されず、また溝部8を構成する溝3は、ガラス基板2に形成可能な程度であれば、溝のパターンや、溝の深さや幅などの寸法を特に限定されず、適宜設定して形成されてよい。
【0020】
ガラス基板2に用いるガラスとしては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライム、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスを適宜選択することができる。
【0021】
本発明の凹版1は次のようにして製造することができる(図2、図3)。
まず、予め定められたパターンにて溝3を形成したガラス基板2を作成する。ガラス基板2に対する溝3の作成は、フォトレジストを用いる方法など公知方法を適宜用いることができる。
【0022】
フォトレジストを用いてガラス基板2に溝3を形成する場合には、例えば、次のようにして溝3を形成したガラス基板2を得ることができる。すなわち、ガラス基板2の基となるガラス材にクロムなどの金属薄膜6を形成したもの(ブランクスという。)を用いて(図2(A))、ブランクスの金属薄膜6上にレジストを塗布してレジスト膜7を作成したもの(フォトマスクブランクスという。)となしたうえで(図2(B))、フォトマスクブランクス上(すなわちレジスト膜7上)における予め定められた溝3のパターンの形成位置に対応する部位(溝対応部位10)にレーザビーム描画装置にて光を照射し、溝対応部位10とそれ以外の部位とでレジスト膜7の物性を異ならせる。そして、その物性の違いにもとづき溝形成部位10のレジスト膜7を取り除いて金属薄膜6表面を露出させ(図2(C))、金属薄膜6表面の露出した部位について金属薄膜6を構成する金属をエッチングしてガラス基板2表面を露出させる(図2(D))。さらに、ガラス基板2表面が露出した部位についてガラスをエッチングする(図3(A))。こうして、ガラス基板2に予め定められたパターンにて溝3を形成することができる(図3(B))。
【0023】
溝対応部位10以外のレジスト膜7については、金属薄膜6を構成する金属をエッチングした後、且つ、ガラスをエッチングする前もしくは後に除去される。レジスト膜7の除去は、公知方法を適宜用いて実地することができる。
【0024】
なお、金属薄膜6の形成は、蒸着法などの公知方法を適宜用いることができ、金属薄膜6を構成する金属のエッチング方法としては、ドライ法、ウェット法などの公知方法を適宜用いることができる。
【0025】
また、ガラスのエッチング方法としては、ドライ法、ウェット法など、公知方法を適宜用いることができる。ガラスのエッチングでは、金属のエッチングに比べ、一般的にエッチングされる位置によるエッチング量のむらが生じにくく、したがって形成される溝3の深さにもむらが生じにくくなり、高精度にエッチングを行うことが可能であり、ガラス基板2に溝3のパターンを高い寸法精度にて形成することが可能となる。
【0026】
次に、溝3を備えるガラス基板2に、フロスト面4を形成する(図3(C))。
【0027】
フロスト面4の形成は、ガラス基板2にフロスト加工を施すことによって形成することができる。フロスト加工によって形成される凹凸の大きさは、溝3の内側面に少なくとも複数の凹凸が形成される程度に微細な大きさにて形成され、凹状部位と凸状部位との間の高低差や間隔に応じて適宜設定される。
【0028】
これら凹状部位と凸状部位との間の高低差や間隔は、凹版1の溝部8に求められる寸法精度に影響しない程度に適宜設定される。
【0029】
フロスト加工は、公知方法を適宜選択して実施される。フロスト加工としては、例えば、ガラス基板2をフッ酸(HF)に溶解する方法を用いることができる。また、その際、ガラス基板2面を細かな領域ごとにガラスとフッ酸との反応のムラを設けることで、ガラス基板2に形成される凹凸の大きさを適宜選択することができ、また、フッ酸の濃度や温度、反応減速剤などの添加剤で条件を変えることで形成される凹状部位と凸状部位との間の高低差などといった凹凸状態も選択することができる。
【0030】
そして、フロスト面4を形成したガラス基板2に金属メッキ層5を積層する(図1)。
【0031】
ガラス基板2に対する金属メッキ層5の積層は、そのガラス基板2に無電解金属メッキを施すことによって実施できる。
【0032】
金属メッキ層5の厚みは、凹版1に形成される溝部8の幅と深さおよび、凹版1の溝部8の幅や深さに要請される寸法精度とに応じて適宜選択されるが、凹版1の溝部8を完全に埋没させない程度の厚みである。
【0033】
無電解金属メッキによってメッキされる金属としては、メッキ可能な金属であれば特に限定されず、ニッケルや、金、銀、銅、錫などを挙げることができるが、耐食性に優れ、調整容易である点で、ニッケルが好ましい。
【0034】
無電解金属メッキは、析出させようとする金属を含む化合物(金属化合物)と還元剤を溶剤(一般的に水)に溶かした液体(メッキ液)にガラス基板を浸漬し、ガラス基板の表面で金属を析出するメッキ方法を示す。金属メッキ層5の厚みは、金属の析出の度合いをコントロールすることで適宜設定することができ、その金属の析出の度合いは、メッキ液中における金属化合物と還元剤の酸化還元電位および両者の反応速度に応じて適宜設定することができる。
【0035】
具体的には、無電解金属メッキは、各文献「本間英夫、他3名、「ガラスと無電解ニッケルめっき密着性」、「表面技術」、社団法人表面技術協会、1993年、第44巻、第10号、831頁〜835頁」、「本間英夫、他2名、「ガラス基板上への無電解NiPめっき初期析出挙動」、「表面技術」、社団法人表面技術協会、2002年、第53巻、第4号、256頁〜261頁」、「本間英夫、他1名、「紫外線露光による選択的無電解めっき」、「化学と工業」、社団法人日本化学会、1997年、第11巻、1614頁〜1619頁」に記載された方法に準じて実施することができる。
【0036】
なお、ガラス基板2に対して金属がメッキされた状態が形成される機構は明らかでないが、ガラス基板2に形成されたフロスト面4の微細な凹凸が金属メッキ層5のアンカーとなり、金属メッキ層5を構成する金属がガラス基板2面に対して強固に密着している状態が形成されていると考えられる。
【0037】
こうして、ガラス基板2のフロスト面4に金属メッキ層5を積層して、境界部11をややR形状にしつつ溝部8を形成した凹版1が得られる。
【0038】
なお本発明の凹版1を製造するにあたり、金属メッキ層5が無電解金属メッキによって形成されている場合、得られる凹版1はさらに焼成されてもよい。凹版1の焼成は、オーブン装置による加熱などの公知方法を適宜選択することで実施できる。
【0039】
本発明の凹版1では、上記したように金属メッキ層5の形成後に焼成が行われることで、無電解金属メッキによって形成された金属メッキ層5の強度をより強固にすることができ、表面強度を一層高めることができる。
【0040】
このように本発明の凹版1においては、ガラス基板2の全面(溝3を含む)にフロスト面4が形成され、溝3を含みフロスト面4全面を覆うように金属メッキ層5が形成されている場合を例として説明したが、ガラス基板2の表面の一部にフロスト面4が形成されてもよく、またフロスト面4の一部に金属メッキ層5が積層形成されてもよい。例えば、凹版1において、溝3を形成した面(溝形成面)と溝3を形成していない面という、ガラス基板2の厚み方向に互いに背面の関係にある2つの面を考えた場合に、溝形成面にのみフロスト面4が形成されてもよい。このような凹版1は、ガラス基板のみで構成される凹版よりもドクターブレードとの接触の際に破損を生じる虞を低減しうる点で、表面強度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における凹版の1実施例を説明するための断面図である。
【図2】(A)本発明における凹版の製造に用いることができるブランクスの例を説明するための断面図である。(B)本発明における凹版の製造に用いることができるフォトマスクブランクスの例を説明するための断面図である。(C)本発明における凹版の製造工程においてレジスト膜に溝を形成した状態を説明するための断面図である。(D)本発明における凹版の製造工程において金属薄膜に溝を形成した状態を説明するための断面図である。
【図3】(A)本発明における凹版の製造工程においてガラス基板に溝を形成した状態を説明するための断面図である。(B)本発明における凹版の製造工程においてガラス基板に溝を形成した状態を説明するための断面図である。(C)本発明における凹版の製造工程においてガラス基板にフロスト面を形成した状態を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 凹版
2 ガラス基板
3 溝
4 フロスト面
5 金属メッキ層
6 金属薄膜
7 レジスト膜
8 溝部
10 溝対応部位
【出願人】 【識別番号】398015802
【氏名又は名称】株式会社進映社
【識別番号】591152643
【氏名又は名称】株式会社大山光学
【識別番号】591046722
【氏名又は名称】株式会社ブラザー
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】 【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇

【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮

【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子

【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介


【公開番号】 特開2008−12682(P2008−12682A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−182963(P2006−182963)