トップ :: B 処理操作 運輸 :: B41 印刷;線画機;タイプライタ−;スタンプ

【発明の名称】 熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シート
【発明者】 【氏名】竹原 寛明

【要約】 【課題】熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーに用いた場合に、塗工時の生産性を向上することができ、かつ、耐環境性に優れる熱転写インク受像層を製造することが可能な熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シートを提供する。

【構成】少なくとも下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位を有し、重合度が400〜1500であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱転写インク受像用バインダー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位を有し、重合度が400〜1500であるポリビニルアセタール樹脂からなることを特徴とする熱転写インク受像用バインダー。
【化1】


式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【請求項2】
支持体と、前記支持体上に積層された請求項1記載の熱転写インク受像用バインダーからなる熱転写インク受像層とからなることを特徴とする熱転写インク受像シート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーに用いた場合に、塗工時の生産性を向上することができ、かつ、耐環境性に優れる熱転写インク受像層を製造することが可能な熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シートに関する。
【0002】
従来から、文字や画像を形成し記録する手段の一つとして、熱転写方式が用いられている。このような熱転写方式による記録の基本原理としては、まず、各色の顔料又は染料を分散させたバインダー樹脂を含有するインクシートを画像形成媒体となるインク受像シートに重ねる。次に、画像情報をイエロー、シアン、マゼンタの3原色に分解し、各色を電気信号としてサーマルヘッドを介して熱に変換し、インクシートの上から熱量を制御しながらサーマルヘッドを走査することによって、インクシートからインク受像シートに顔料又は染料を転写する。このような各色の転写プロセスを繰り返すことで、画像が形成される。
また、現在では、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、耐候性等の耐環境性を向上させるため画像形成後にオーバーコート層と呼ばれる紫外線吸収剤やバインダー樹脂を含有する層をインク受像シート上に形成することが一般的に行われている。
【0003】
このような熱転写方式は、主に溶融型と染料昇華型とに大別される。このうち溶融型はカードプリンタ、バーコードプリンタ、チケットプリンタ等に使用され、染料昇華型は、写真印刷、医療・分析機器出力端末、IDカードの写真印刷用等に使用されている。特に染料昇華型は、近年のデジタル化に伴い、銀塩に代わる写真印刷方式として広く展開されており、将来の成長が期待されている。
【0004】
染料昇華型熱転写方式は、写真印刷に関して銀塩写真に匹敵する画像特性を備えているが、近年では、更に、印刷の高速化に対応することができ、かつ、耐候性、耐腐食性、耐水性、耐擦り傷性等の耐環境性に優れたものが求められている。
【0005】
このような印刷の高速化に対応するためには、耐熱性が高く、かつ、インクシートから転写される染料を効率よく吸収し、保持することができるインク受像シートが必要とされている。また、耐環境性に優れたものとするためには、特にインク受像シートのバインダー樹脂成分の強度が高いことが必要とされている。
【0006】
しかしながら、インク受像シートの耐熱性や強度を上げるためには、ガラス転移温度の高いバインダー樹脂を使用することや、重合度の高いバインダー樹脂を使用すること等が検討されている。しかしながら、ガラス転移温度の高いバインダー樹脂を使用したり、重合度の高いバインダー樹脂を使用すると、バインダー樹脂の溶解に要する時間が長くなったり、基材への塗工時に調整される溶液の粘度が上がるためポンプ輸送性が低下したりして生産性が低下するという問題があった。
【0007】
これに対して、溶液中のバインダー樹脂の濃度を低下させることで粘度を調整することが検討されている。しかしながら、溶液中のバインダー樹脂の濃度を低下させると、塗工時の弾性が低下し、液だれ、ムラ等の不具合が発生したり、必要な膜厚が得られなかったりするという問題があった。
【特許文献1】特許第2925699号公報
【特許文献2】特許第3395090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーに用いた場合に、塗工時の生産性を向上させることができ、かつ、耐環境性に優れる熱転写インク受像層を製造することが可能な熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位を有し、重合度が400〜1500であるポリビニルアセタール樹脂からなる熱転写インク受像用バインダーである。
【0010】
【化1】


式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱転写インク受像シートの作製に使用する塗工溶液のバインダーとしてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、塗工速度を上げると液だれ、ムラ等の不具合が発生する原因は、高い剪断速度の下で塗工溶液の弾性率が低下するため、形成される塗膜の形状が維持されなくなることであることを見出した。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、塗工溶液のバインダーとして特定の構造単位からなり、特定の重合度を有するポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、塗工時の高い剪断速度の下でも液だれ、ムラ等の不具合の発生を防止することができるとともに、熱転写インク受像シートに使用した際、インクシートから転写される染料等を効率的に吸収、保持することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の熱転写インク受像用バインダーは、少なくとも下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂からなる。
【化2】


式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0013】
本発明の熱転写インク受像用バインダーを適当な溶媒に溶解して熱転写インク受像シートの受像層を形成するための塗工溶液とした場合、塗工速度を上げた際の高剪断時においても溶液の弾性率が低下することなく、塗工時の液だれ、ムラ等の不具合の発生を防止することができ、熱転写インク受像シートに使用した際、インクシートから転写される染料を効率的に吸収、保持することができるため、塗工時の生産性を向上させることができ、耐候性等の耐環境性に優れる。
【0014】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は35モル%である。17モル%未満であると、樹脂の凝集力が低下し、得られる熱転写インク受像層の耐環境性が悪化することがある。35モル%を超えると、水分を透過しやすくなるため、かぶりが発生して保存安定性が悪くなったり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり、熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーとして用いることができなかったり、吸湿性が上がるため画像保存性が低下したりすることがある。78モル%を超えると、残存水酸基が少なくなってポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ、インク受像シート作製時の塗膜強度が低下することがある。
【0016】
上記一般式(3)で表されるアセトアセチル単位におけるアセトアセチル基は、自己架橋性を有しており、加熱又は酸触媒下での加熱によって、他の分子中のアセトアセチル基や水酸基と架橋構造を形成し、部分的に高分子量成分をつくる。このため、塗工速度を上げた際の高剪断時においても、塗工溶液の粘度が低下することを防ぐことができる。
【0017】
上記一般式(3)で表されるアセトアセチル単位を有する分子は、分子間で金属と錯体を形成する。このため、上記ポリビニルアセタール樹脂は、熱転写インク受像層に使用した場合には、インクシートから転写される染料と相互作用し、染料をより効果的に吸収、保持することができるため、転写効率を向上させることができる。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセトアセチル単位の含有量の好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は15モル%である。0.5モル%未満であると、架橋構造が形成されることによる効果が充分に得られず、高剪断時に弾性率が低下してしまうため、塗工時に液だれ、ムラ等が発生することがあり、また、染料を効果的に吸収、保持することができないことがある。15モル%を越えると、架橋度が高くなりすぎて有機溶媒に不溶となるため、塗膜性が低下することがある。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度の好ましい下限が80℃である。80℃未満であると、本発明の熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液の塗膜強度が低下することがある。
なお、本明細書において、ガラス転移温度とは、DSC曲線において、低温側、高温側の各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、低温側からガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる部分の温度のことをいう。
【0020】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の下限が400、上限が1500である。重合度を上記範囲内とすることにより、本発明の熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液の塗膜強度及び塗工性に優れるものとすることができる。400未満であると、本発明の熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液の塗工性が低下し、塗工時に液だれ、ムラ等が発生することがあることに加え、塗膜強度が低下することがある。1500を超えると、本発明の熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液の塗工性が低下し、塗工時にムラ等の不具合が発生することがある。
【0021】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセトアセチル基を側鎖に有するポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。
【0022】
上記ポリビニルアルコールのケン化度の下限は75モル%であることが好ましい。75モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水溶性が低下するため、アセタール化反応が困難になることがある。また、水酸基量が少ないとアセタール化反応自体が困難になることがある。
【0023】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0024】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0025】
上記アルデヒドとして、アセトアルデヒドを単独で用いた場合、又は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用した場合、得られるインク受像シートは、熱溶融性、冷却硬化性等がシャープとなることから、熱転写インク受像層において染料を良好に吸収、保持することが可能となるためより好ましい。
【0026】
上記アルデヒドとして、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用する場合、アセトアルデヒドの使用量の好ましい下限は50モル%である。50モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂を用いた溶液の塗膜強度が低下したり、得られるインク受像シートの熱溶融性、冷却硬化性等が低下したりすることがある。
【0027】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の好ましい下限が40モル%、好ましい上限が78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーとして用いることができないことがある。78モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって得られるポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ塗膜の強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0028】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性の酸触媒が好適である。非ハロゲン性の酸触媒を用いれば、残存ハロゲン化物量を100ppm以下とすることが容易になる。また、ハロゲン性の酸触媒を用いる場合には、得られたポリビニルアセタール樹脂を水や水/アルコールの混合溶液等により充分に洗浄して精製することが好ましい。
【0029】
なお、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応においては、アルデヒドの酸化防止のため、又は、得られるポリビニルアセタール樹脂の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系又は樹脂系にヒンダードフェノール系、ビスフェノール系、リン酸系等の酸化防止剤を添加する方法が知られている。しかし、本発明の熱転写インク受像用バインダーを製造する場合には、上記酸化防止剤を使用しないことが好ましい。酸化防止剤を使用すると、酸化防止剤がポリビニルアセタール樹脂中に残存し、塗工溶液のポットライフの低下、得られるインク受像シートの保存性の低下等を引き起こし、かぶりや画像/階調部の鮮明性を損なうことがある。
【0030】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られたポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0031】
上記変性ポリビニルアルコールを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、アセトアセチル基を側鎖に有する変性ポリ酢酸ビニルを従来公知の方法によりケン化することによって製造することができる。
【0032】
このような製造方法によって上記変性ポリビニルアルコールを製造した場合、上記ポリビニルアセタール樹脂は、下記一般式(4)で表される構造単位を有していてもよい。
【0033】
【化3】


【0034】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表されるアセチル単位の含有量の好ましい上限が25モル%である。25モル%を超えると、得られる熱転写インク受像層でブロッキングが生じるとともに、画像が不鮮明となるとなることがある。より好ましい上限は15モル%である。
【0035】
上記ポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、支持体と、前記支持体上に積層された本発明の熱転写インク受像用バインダーからなる熱転写インク受像層とからなる熱転写インク受像シートを製造することができる。
このような熱転写インク受像シートもまた、本発明の一つである。
本発明の熱転写インク受像シートでは、上記熱転写インク受像層を形成する際、高剪断時においても溶液の弾性率が低下することなく、塗工時の液だれ、ムラ等の不具合の発生を防止することができる。また、インクシートから転写される染料を効率的に吸収、保持することができ、画像特性に優れた画像を形成することができる。更に、本発明の熱転写インク受像シートにおいて、上記熱転写インク受像層は、強度が高く、耐擦り傷性等の耐環境性に優れる。
【0036】
本発明の熱転写インク受像シートを製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の熱転写インク受像用バインダー、有機溶剤等を混合して塗工溶液を調製し、支持体上に塗工、乾燥して、熱転写インク受像層を形成することによって製造することができる。
【0037】
上記有機溶剤としては特に限定されず、本発明の熱転写インク受像用バインダーを溶解することができ、かつ、含有水分量の少ないものが好適に用いられる。具体的には、例えば、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類等が挙げられる。上記有機溶剤として、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いる場合には、脱水したものを用いることが好ましい。また、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
上記支持体としては特に限定されず、例えば、コンデンサー紙、グラシン紙等の紙類、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミドに代表されるポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマーに代表されるポリオレフィン、酢酸セルロースに代表されるセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素ポリマー、ポリオキシメチレンに代表されるポリエーテル等のフィルム類が用いられる。また、これらの支持体は、単独で使用してもよく、2種以上を積層して使用してもよい。
【0039】
上記支持体の厚さは、材料の特性やシートとしたときの強度等の観点から適宜調整されるが、一般的には、好ましい下限が1.0μm、好ましい上限が100μmである。
上記熱転写インク受像層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限が1.0μm、好ましい上限が100μmである。
【0040】
上記塗工溶液を塗工する方法としては特に限定されず、一般的な方法を用いることができ、例えば、バーコーター、グラビア印刷、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0041】
上記熱転写インク受像層と上記支持体との間に接着層を介在させてもよい。このような接着層を介在させることによって、上記熱転写インク受像層が上記支持体から容易に剥離しないようにすることができる。
【0042】
上記接着層を構成する接着剤としては、上記支持体と上記熱転写インク受像層との接着性を向上する素材であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、熱転写インク受像層のバインダーとして用いることによって、印刷速度を高速化した場合であっても、液だれ、ムラ等の不具合の発生を防止し、熱転写インク受像シートに使用した際、インクシートから転写される染料等を効率的に吸収、保持することが可能となるため、生産性を向上させることが可能であり、耐擦り傷性、耐候性等の耐環境性に優れる熱転写インク受像シートを製造することが可能な熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
重合度500、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gを蒸留水700gに加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にアセトアルデヒド40gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド30gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して6時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水洗後のポリビニルアセタール樹脂を脱水した後、60メッシュの篩にかけて通過した粒子のみを蒸留水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。この溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水し、40℃で12時間乾燥した後、60メッシュの篩にかけ、通過した粒子のみを蒸留水で10時間流水洗浄した。洗浄後、脱水、乾燥して得たポリビニルアセタール樹脂を熱転写インク受像用バインダーとした。得られたポリビニルアセタール樹脂の重合度は500、アセチル単位含有量は1.7モル%、残存水酸基量は28モル%、アセトアセチル単位含有量は5モル%であった。
また、得られたポリビニルアセタール樹脂について、示差走査熱量計(DSC−6200R、セイコー電子工業社製)を用い、JIS K 7121に準拠する方法により、昇温速度10℃/分でガラス転移温度を測定したところ、90℃であった。
【0046】
(比較例1)
重合度500、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gの代わりに、重合度500、ケン化度98モル%であってアセトアセチル単位を含有しないポリビニルアルコール100gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂、熱転写インク受像用バインダーを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の重合度は500、アセチル単位含有量は1.7モル%、残存水酸基量は28モル%であった。
また、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度を測定したところ、90℃であった。
【0047】
(比較例2)
重合度500、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gの代わりに、重合度500、ケン化度98モル%であってアセトアセチル単位を含有しないポリビニルアルコール100gを用いたこと、及び、アセトアルデヒド40gの代わりに、ブチルアルデヒド40gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂、熱転写インク受像用バインダーを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の重合度は500、アセチル単位含有量は1.7モル%、残存水酸基量は28モル%であった。
また、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度を測定したところ、68℃であった。
【0048】
(比較例3)
重合度500、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gの代わりに、重合度2000、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂、熱転写インク受像用バインダーを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の重合度は2000、アセチル単位含有量は1.7モル%、残存水酸基量は28モル%、アセトアセチル単位含有量は5モル%であった。
また、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度を測定したところ、90℃であった。
【0049】
(比較例4)
重合度500、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gの代わりに、重合度300、ケン化度98モル%、アセトアセチル単位含有量が5モル%の変性ポリビニルアルコール100gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂、熱転写インク受像用バインダーを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の重合度は300、アセチル単位含有量は1.7モル%、残存水酸基量は28モル%、アセトアセチル単位含有量は5モル%であった。
また、実施例1と同様の方法によりガラス転移温度を測定したところ、88℃であった。
【0050】
(評価)
実施例1及び比較例1〜4で得られた熱転写インク受像用バインダーについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0051】
(1)粘弾性評価
得られた熱転写インク受像用バインダー30gをメチルエチルケトン70gに溶解し、ミックスローターで48時間撹拌し、溶解させた。溶解後、30分、20℃で静置させた。その後、レオメーター(Bohlin社製)を用いて、剪断応力の高い領域(100〜200Pa)の弾性率(G’)を測定した。
【0052】
(2)ムラ評価
得られた熱転写インク受像用バインダー10g、メチルエチルケトン40g及びトルエン40gを24時間ボールミルで混合して塗工溶液を作製し、ポリエステル基材上に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工して乾燥し、インク受像シートを得た。
得られたインク受像シートの厚さを測定し、以下の基準でムラの評価を行った。
○:厚さのバラツキが±5%未満であった。
×:厚さのバラツキが±5%以上であった。
【0053】
(3)耐擦り性評価
得られた熱転写インク受像用バインダー10g、メチルエチルケトン40g及びトルエン40gを24時間ボールミルで混合して塗工溶液を作製し、ポリエステル基材上に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工して乾燥し、インク受像シートを得た。
得られたインク受像シートの表面を、堅牢度試験機(RT−200、大栄科学精器製作所社製)を用いて金属面で20往復擦った後、インク受像シートの表面を観察し、以下の基準で耐擦り性の評価を行った。
○:擦り傷は見られなかった。
×:若干の擦り傷が見られた。
××:擦り傷が見られた。
【0054】
【表1】


実施例1で得られた熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液は、弾性率の低下が見られなかった。また、熱転写インク受像シートとしたときの、ムラ評価でも良好な結果が得られた。
比較例1、2及び4で得られた熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液は、弾性率の低下が見られた。比較例3で得られた熱転写インク受像用バインダーを用いた溶液は、熱転写インク受像シートとしたときの、ムラ評価で不具合を生じた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、熱転写インク受像シートの熱転写インク受像層のバインダーに用いた場合に、塗工時の生産性を向上することができ、かつ、耐環境性に優れる熱転写インク受像層を製造することが可能な熱転写インク受像用バインダー及び熱転写インク受像シートを提供できる。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成18年10月19日(2006.10.19)
【代理人】 【識別番号】100086586
【弁理士】
【氏名又は名称】安富 康男

【識別番号】100119529
【弁理士】
【氏名又は名称】諸田 勝保


【公開番号】 特開2008−18705(P2008−18705A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−285421(P2006−285421)