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【発明の名称】 印判
【発明者】 【氏名】神戸 一幸

【要約】 【課題】文字コマが固定印字面の露出孔に対して、挿入可能な範囲内にない場合に、文字コマの固定印字面の露出孔への挿入動作をできないようにして、文字コマの噛込みを防止する印判を提供する。

【構成】印字面の変更を行う場合に、文字コマが、露出孔に対して、正対していない状態で、本体ケースを保持して操作部を時計回りに回転させると、ボス2cが螺旋溝121に沿って摺動し、文字コマが露出孔正しく挿入されずに、露出孔の周囲の部材に当接する。このとき文字コマの圧縮応力により、保持部材120に上方へ付勢力が印加され、ボス2cは、螺旋溝121の側面121eに形成されている係止部121dに係止され、露出孔へ文字コマが挿入される方向への保持部材120の移動が規制されて、文字コマ噛込みが防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
当該本体ケース内に回動可能に支持され、印影を形成するための印字面を有する複数の文字コマからなる第一印字体と、
当該第一印字体のいずれかの文字コマが挿入されて印字面が露出する露出孔を有し、その露出孔から露出された前記印字面とともに印影を形成する第二印字体と、
前記本体ケースの一端側の内側部に支持され、前記第二印字体を保持する保持部材と、
前記保持部材の外周部と前記本体ケースの一端側の内側部との間に設けられ、前記露出孔に対して前記文字コマを挿入及び退出させる案内機構と、
当該案内機構により前記文字コマを前記露出孔に対して挿入する場合に、前記文字コマが前記露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、前記案内機構の動作を停止する噛込み防止機構と
を備えたことを特徴とする印判。
【請求項2】
前記本体ケース内に設けられ、前記第一印字体を回転可能に収容し、前端部に前記露出孔に挿入される文字コマを保持し、後端部が前記本体ケース外に露出する内部支持ケースを備え、
前記本体ケースは、筒状に形成され、
前記案内機構は、前記保持部材の外周部と前記本体ケースの一端側の内側部とのいずれか一方に前記露出孔を挟んで対向するように設けられた一対の凸部と、他方に設けられ、前記各凸部が摺動する一対の螺旋溝とによって構成され、
前記内部支持ケースの後端部が、前記本体ケースに対して、その軸芯周りの一方向に回転されると、前記凸部が前記螺旋溝を摺動して、前記露出孔に対して前記文字コマが挿入され、前記内部支持ケースの後端部が逆回転されると、前記凸部が前記螺旋溝を逆方向に摺動して、前記露出孔から前記文字コマが退出され、
前記噛込み防止機構は、前記螺旋溝の側面に設けられた係止部であり、
前記案内機構により前記文字コマを前記露出孔に対して挿入する動作時に、前記文字コマが前記露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、前記凸部が前記係止部に係止させられて前記案内機構の動作を停止させて、前記文字コマの噛込みが防止されることを特徴とする請求項1に記載の印判。
【請求項3】
前記第二印字体の印字面を上方に向けた場合に、前記係止部は、前記螺旋溝の下側の側面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印判。
【請求項4】
前記一対の凸部の各々に対応して、前記係止部が、前記一対の螺旋溝の各々に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の印判。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの印字面を組み合わせて1つの印影を形成することが可能な印判に関し、詳細には、2つの印字面の組み合わせ時に、印字面の噛込みを防止できる印判に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の文字が予め形成された固定印字面に開口した露出孔から、回転式のベルト上にインク含浸可能な日付印や番号印の文字コマが複数列設された回転式印判の何れかの文字コマの印字面を露出させて、当該固定印字面と文字コマの印字面とを組み合わせて1つの印影を形成する印判が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の印判では、印字面の変更を行なう際には、固定印字面に開口した露出孔から文字コマを後退させて引き抜いた後に、ベルトを回転させて所望の印字面の文字コマを選択し、再度、固定印字面に開口した露出孔に文字コマを挿入して、当該文字コマの印字面を固定印字面の露出孔から露出させて、新しい1つの印影を形成する。この従来の印判では、印字面の変更を行なう際に、文字コマの整列位置が少しずれていても、固定印字面に開口した露出孔に挿入できるように、露出孔の文字コマ挿入側には、文字コマを誘導するための面取りがなされている。従って、文字コマの固定印字面の露出孔への位置合わせには、挿入可能となる誘い込み可能範囲がある。
【特許文献1】特開2006−76159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の印判では、印字面の変更を行なう際に、文字コマが列設された回転式のベルトの移動量が適切でない場合、文字コマが適切な位置に移動されず、文字コマの固定印字面の露出孔への位置合わせが、上記誘い込み可能範囲を超えてずれてしまう場合がある。この状態で、文字コマを固定印字面に開口した露出孔に挿入しようとすると、文字コマが固定印字面の露出孔に正しく挿入されず、固定印字面の裏面に当接して押しつぶされる噛込みが発生する問題があった。この噛込みが発生すると文字コマは押しつぶされて変形するために、再度正しい位置に合わせて、文字コマを固定印字面の露出孔から露出させても捺印のかすれが生じてしまう問題があった。また、文字コマ自体が変形して元に戻らないという問題もあった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、文字コマが固定印字面の露出孔に対して、挿入可能な範囲内にない場合に、文字コマの固定印字面の露出孔への挿入動作をできないようにして、文字コマの噛込みを防止できる印判を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の印判は、本体ケースと、当該本体ケース内に回動可能に支持され、印影を形成するための印字面を有する複数の文字コマからなる第一印字体と、当該第一印字体のいずれかの文字コマが挿入されて印字面が露出する露出孔を有し、その露出孔から露出された前記印字面とともに印影を形成する第二印字体と、前記本体ケースの一端側の内側部に支持され、前記第二印字体を保持する保持部材と、前記保持部材の外周部と前記本体ケースの一端側の内側部との間に設けられ、前記露出孔に対して前記文字コマを挿入及び退出させる案内機構と、当該案内機構により前記文字コマを前記露出孔に対して挿入する場合に、前記文字コマが前記露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、前記案内機構の動作を停止する噛込み防止機構とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の印判は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記本体ケース内に設けられ、前記第一印字体を回転可能に収容し、前端部に前記露出孔に挿入される文字コマを保持し、後端部が前記本体ケース外に露出する内部支持ケースを備え、前記本体ケースは、筒状に形成され、前記案内機構は、前記保持部材の外周部と前記本体ケースの一端側の内側部とのいずれか一方に前記露出孔を挟んで対向するように設けられた一対の凸部と、他方に設けられ、前記各凸部が摺動する一対の螺旋溝とによって構成され、前記内部支持ケースの後端部が、前記本体ケースに対して、その軸芯周りの一方向に回転されると、前記凸部が前記螺旋溝を摺動して、前記露出孔に対して前記文字コマが挿入され、前記内部支持ケースの後端部が逆回転されると、前記凸部が前記螺旋溝を逆方向に摺動して、前記露出孔から前記文字コマが退出され、前記噛込み防止機構は、前記螺旋溝の側面に設けられた係止部であり、前記案内機構により前記文字コマを前記露出孔に対して挿入する動作時に、前記文字コマが前記露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、前記凸部が前記係止部に係止させられて前記案内機構の動作を停止させて、前記文字コマの噛込みが防止されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の印判は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記第二印字体の印字面を上方に向けた場合に、前記係止部は、前記螺旋溝の下側の側面に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の印判は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記一対の凸部の各々に対応して、前記係止部が、前記一対の螺旋溝の各々に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の印判は、案内機構により文字コマを第二印字体の露出孔に対して挿入する場合に、文字コマが露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、噛込み防止機構が作動して、案内機構の動作を停止する。従って、第一印字体の文字コマが噛み込まれて、当該第一印字体の文字コマが変形したり、印字面が損傷したり、印字がかすれたりすることがない。
【0011】
また、請求項2に記載の印判は、請求項1に記載の発明の効果に加え、案内機構により第一印字体の印字面を第二印字体の露出孔に対して挿入する動作時に、第一印字体の文字コマが第二印字体の露出孔の周囲の部材に当接することにより生じる応力により、凸部が螺旋溝の側面に設けられた係止部に係止させられて案内機構の動作を停止させて、文字コマの噛込みが防止される。従って、文字コマが噛み込まれて、当該第一印字体の文字コマが変形したり、印字面が損傷したり、印字がかすれたりすることがない。
【0012】
さらに、請求項3に記載の印判は、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、印字面を変更する場合には、第二印字体の印字面を上方に向けて、第一印字体を回転させるのであるが、係止部は、第二印字体の印字面を上方に向けた場合に、螺旋溝の下側の側面に形成されているので、文字コマの噛込みが生じない場合に、重力により、凸部が螺旋溝の係止部に係止されることがない。
【0013】
さらに、請求項4に記載の印判は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、一対の凸部の各々に対応して、係止部が、一対の螺旋溝の各々に設けられているので、一対の螺旋溝の各々に設けられた各係止部に一対の凸部の各々が係止されて確実に第一印字体の文字コマの噛込みを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態の一例としての日付印1について、図面を参照して説明する。図1は、捺印可能な状態の日付印1の斜視図である。図2は、印字面211の変更が可能な状態の日付印1の斜視図である。図3は、日付印1の分解斜視図である。図4は、移動印字部材210を保持した保持体230の斜視図である。図5は、図1に示す一点鎖線において矢視方向Aから見た、日付印1の断面図である。図6は、図1に示す一点鎖線において矢視方向Bから見た、操作部205を除いた状態の日付印1の断面図である。図7は、保持部材120の平面図である。図8は、移動印字部材210が露出孔114に挿入される際の、図1に示す一点鎖線において矢視方向Aから見た、日付印1の断面図である。
【0015】
図1に示すように、日付印1は、使用者が把持する外部筐体としての円筒状の本体ケース2を有している。この本体ケース2は、その長手方向の一方の端部に筒端部2aを有し、他方の端部に筒端部2dを有している。筒端部2aの開口径は、本体ケース2の中央部の胴回りより1回り大きく形成され、筒端部2dの開口径は、本体ケース2の中央部と同じ大きさに形成されている。さらに、本体ケース2の外周面には、開口部2bが形成され、開口部2bは、筒端部2dに設けられた操作部205の本体ケース2に対する周方向への回転操作により開口・閉鎖される。
【0016】
また、筒端部2aの内部には、紙等の被捺印媒体に印影を形成するための印字面111が保持されている。この印字面111は、正面視、円形状に形成され、本体ケース2の軸方向に対して直交する平面となっている。また、印字面111の表面は所定の文字や記号が予め形成された印影が不変の固定印字面となっており、その中央部に後述する移動印字部材210の印字面211が露出する正面視、長方形の露出孔114が穿設されている。従って、この印字面111と数字や記号などを組み合わせて任意の日付等の印影を形成可能な印字面211との合成により、一つの印影を形成できるようになっている。また、本体ケース2の筒端部2aには、日付印1の非使用時に、印字面111,211を覆って保護するためのキャップ10が、着脱可能に設けられている。
【0017】
図1に示す状態の日付印1の本体ケース2を保持しながら操作部205を本体ケース2に対して周方向に略180度回転させると、図2に示すように、本体ケース2の内部に収容された移動印字部200(図3参照)が回転し、開口部2bが開口して、印字面211の変更が可能な状態となる。印字面の変更方法については後述する。
【0018】
次に、本体ケース2の内部の構造と本体ケース2に収納される移動印字部200とについて説明する。図3に示すように、本体ケース2の内部には、印字面211を保持する移動印字部200と、印字面111を保持する固定印字部100とが収容されている。また、本体ケース2の筒端部2aの内側部には、筒端部2aの直径方向において、一対のボス2cが互いに対向するように形成されている。
【0019】
次に、固定印字部100の構造を説明する。固定印字部100は、図3及び図5に示すように、本体ケース2の筒端部2aの内周に嵌合する保持部材120に、印字面111を有する固定印字部材112とその固定印字部材112に接触してインクを供給するインク貯蔵体113とが保持されて構成されている。この保持部材120は、円筒状に形成されており、保持部材120の外周には、螺旋状に形成された溝である螺旋溝121がその円筒の軸芯上の一点に対して、互いに対称となるように、2本設けられている。従って、各螺旋溝121は、保持部材120の外周において、半周ずつ設けられている。また、この螺旋溝121には、筒端部2aの内側部にあるボス2cが係合されるようになっている。尚、固定印字部材112が、本発明の「第二印字体」に相当する。
【0020】
図3に示すように、螺旋溝121の末端121aには、螺旋溝121の底面を隆起させたストッパ121bが設けられ、末端121aに位置させたボス2cの螺旋溝121に沿った方向への移動が規制される。また、螺旋溝121の始端121cにも同様のストッパ121gが設けられており、始端121cに位置させたボス2cの移動が規制される。保持部材120は、筒端部2aの内径よりもわずかに径が小さく形成され、螺旋溝121の末端にボス2cが係合されたとき、これら螺旋溝121とボス2cの一対の係合部を結んだ線を軸線Xとして(図6参照)、移動印字部材210が挿入される露出孔114(後述)と交差する方向に揺動可能になっている。尚、ボス2cが本発明の「凸部」に、螺旋溝121が本発明の「螺旋溝」に相当し、ボス2cと螺旋溝121とが、本発明の「案内機構」に相当する。
【0021】
また、保持部材120の内部からは、印字面111とは反対の方向に2つの一対のガイド部材123がそれぞれ突設されている。また、固定印字部材112及びインク貯蔵体113(図5参照)を保持する保持部材120のその保持部分の側面には、一対の突起部122が設けられている。この突起部122は、キャップ10の内側に設けられた係合部(図示外)に係合されて、キャップ10が嵌合されるようになっている。さらに、図2及び図3に示すように固定印字部100の印字面111の略中央には、印字面111と直交する方向に固定印字部100を貫通する正面視、長方形の露出孔114が設けられている。露出孔114は、移動印字部材210の印字面211を、本体ケース2から露出させるための孔である。
【0022】
次に、移動印字部200について図3及び図4を参照して説明する。図3に示すように、移動印字部200は、円筒状の内部支持ケース201内に、印字面211を有する5つの移動印字部材210が長板状の保持体230(図4参照)に保持されて構成されている。内部支持ケース201は、収容される本体ケース2の内周にあわせて、当該本体ケース2より直径の小さい円筒状に形成されている。また、内部支持ケース201の印字面側の端部には、その外周を取り巻く鍔203が、内部支持ケース201の外周面と直交する方向に延設されている。この鍔203の外周は、本体ケース2の筒端部2aの内周より、ごく僅か小さい大きさとなっている。また、内部支持ケース201を本体ケース2へ収容する際にボス2cに干渉しないように、鍔203には2ヶ所に切欠部204が設けられている。また、保持体230の両側部には、固定印字部100の一対のガイド部材123の間に挟み込まれる2つのガイド片232がそれぞれ形成されている。
【0023】
また、図3に示すように、内部支持ケース201の一側面には、軸方向に沿って4本の長細い溝状のガイド溝202が開口されている。これらのガイド溝202は、図2に示すように、内部支持ケース201を本体ケース2に収容し、印字面211の変更が行える状態では、開口部2bより露出されるようになっている。
【0024】
次に、本発明の「第一印字体」に相当する移動印字部材210の構造を図4及び図5を参照して説明する。図4に示すように、保持体230の長手方向に沿って、それぞれ個別に回転可能に支持された5本のベルト体220が張設されている。このベルト体220の外周面には、当該ベルト体220の回転方向に沿って文字コマ212が複数列設され、文字コマ212の先端面には、印影を形成する印字面211が設けられている。各文字コマ212の根元部分がベルト体220の一部からなる連結部213によって連結された構造となっている。従って、移動印字部材210は、連結部213と、印字面211を有する文字コマ212とから構成されている。この移動印字部材210の長さは、ベルト体220の半周以下となっている。この移動印字部材210を構成する、印字面211を有する文字コマ212と連結部213とは、例えば多孔性樹脂などのインク含浸体からなり、一体に形成される。
【0025】
さらに、ベルト体220の外周面には、各ベルト体220を個々に回転させる際にスライド操作するつまみであるスライド部221が突設されており、保持体230の長手方向に沿ってスライド部221をスライド移動させることでベルト体220を回転させることができる。さらに、ベルト体220の外周面で、移動印字部材210が固定された側と反対側の外周面には、各文字コマ212の印字面211にそれぞれ対応した印影の見本222が印刷されている。尚、保持体230を内部支持ケース201に収容すると、前述したガイド溝202(図3参照)からスライド部221が内部支持ケース201の外方に突出される。
【0026】
また、図5に示すように、ベルト体220のスライド部221には、そのスライド方向と直交する方向に出退可能に付勢された突起223が突設されている。また、保持体230の内部には、突起223に係合してベルト体220の回転に負荷を与えることで位置決めする凹部231が、ベルト体220の回転方向に沿って文字コマ212の数だけ設けられている。この構成は、突起223が凹部231に係合された状態では、その凹部231に対応した文字コマ212が、保持体230の長手方向の一方の側面に位置されるように、ベルト体220の位置決めを行うためのものである。また、スライド部221が操作されていずれかの文字コマ212が保持体230の長手方向の一方の側面(図5における紙面下側の側面)に位置されたとき、他方の側面(図5における紙面上側の側面)には、その印字面211に対応した印影の見本222が位置されるようになっている。移動印字部200の操作部205の底面には見本窓2eが開口されており、保持体230の長手方向の他方の側面に位置された見本222が、その見本窓2eを介して目視可能となっている。
【0027】
次に、固定印字部100の構造について図5乃至図7を参照して詳細に説明する。図5及び図6に示すように、固定印字部100は、印字面111を有する固定印字部材112の背面にインク貯蔵体113が保持部材120により保持されている。インク貯蔵体113は、例えば多孔性樹脂からなり、内部にインクを染み込ませることによってインクを貯蔵することができる。固定印字部材112もまた多孔性樹脂からなり、印字面111は、公知のように、固定印字部材112の印影となる部分をマスクした状態で圧縮しつつ露光し、露光された部分が溶解して孔を塞ぐことによって形成される。固定印字部材112は、インク貯蔵体113からインクの供給を受ける。また、図5及び図7に示すように、固定印字部材112及びインク貯蔵体113を貫通する露出孔114の周囲には、移動印字部材210の文字コマ212が挿入される側から印字面111に向かって傾斜面となり、移動印字部材210の文字コマ212の挿入を容易にする孔縁部115が形成されている。孔縁部115は、移動印字部材210の挿入をサポートすることができればよく、傾斜面に限らず、弧面であってもよい。
【0028】
このような構成の日付印1を組み立てる際には、図3に示すように、まず、分離可能な操作部205を分離した内部支持ケース201を本体ケース2の筒端部2a側より本体ケース2に挿入し、筒端部2d側から操作部205を内部支持ケース201に係合させて固定させる。そして、筒端部2a側より固定印字部100の一対のガイド部材123の間に保持体230の2つのガイド片232をそれぞれ挟み込ませつつ、本体ケース2のボス2cを固定印字部100の螺旋溝121に係合させ、固定印字部100の取り付けを行う。
【0029】
螺旋溝121の始端121cより螺旋溝121に係合されたボス2cがストッパ121gを乗り越えた位置では、固定印字部100は本体ケース2の筒端部2aから露出している。従って、移動印字部材210の選択されている印字面211は、固定印字部100の露出孔114から露出しない位置にある(図2参照)。また、この状態では、固定印字部100は、ボス2cと螺旋溝121の一対の係合部を結ぶ軸線Xを揺動中心として(図6参照)、露出孔114と交差する方向に揺動可能となっている。
【0030】
次に、固定印字部100を回転させながらボス2cを螺旋溝121に沿ってスライドさせる。このとき、ガイド片232がガイド部材123に挟まれているので、固定印字部100が回転されれば内部支持ケース201も回転されることとなる。よってこの操作は、内部支持ケース201の操作部205を本体ケース2に対して回転させることで行うことができる。螺旋溝121にボス2cが案内されると、固定印字部100は本体ケース2に納められる方向に移動される。このように螺旋溝121にボス2cが案内されて行くと、移動印字部材210の文字コマ212は、孔縁部115に案内されつつ、露出孔114に挿入される。さらに、固定印字部100は、ボス2cと螺旋溝121の一対の係合部を結ぶ軸線X(図6参照)を揺動中心として、図8に示すように、露出孔114と交差する方向に揺動する。従って、揺動するうちに、固定印字部100が移動印字部材210の文字コマ212にならうこととなり、印字面211が露出孔114の正規位置に位置決めされ、挿入が完了する(図1、図5参照)。また、ボス2cが螺旋溝121のストッパ121bを乗り越え末端121aの位置に達することで、本体ケース2に対して固定印字部100が位置決めされる(図3及び図5参照)。
【0031】
印字面211の変更を行う場合は、日付印1の組み立て時と同様に、本体ケース2を保持して操作部205を回転させれば、ボス2cが螺旋溝121に沿って摺動される。すると、固定印字部100は本体ケース2の軸方向に出退される。そして、固定印字部100の露出孔114より移動印字部材210の選択されている印字面211の文字コマ212が引き抜かれた状態となる(図2参照)。この状態でスライド部221を操作すれば、任意の印字面211の選択を行うことができる。尚、捺印可能な状態に固定印字部100を移動させる場合、螺旋溝121がボス2cを案内する方向が固定印字部100の出退方向(本体ケース2の軸方向)に対して斜めとなっているため、固定印字部100と移動印字部200とが急激に接近することがない。
【0032】
次に、図9乃至図11を参照して、「噛込み防止機構」について説明する。図9は、保持部材120の側面図であり、図10及び図11は、保持部材120の変形例の側面図である。図9に示すように、印字面111を上方に向けた場合において、保持部材120の側面に形成された各螺旋溝121の経路の略中央部の下方側の側面121eには、本体ケース2の筒端部2aの内周面に形成された1対のボス2cが各々係止される係止部121dが形成されている。この係止部121dは、図9に示すように、螺旋溝121の下方側の側面121eに対して、水平及び垂直に切り込んだ直角三角形の直角を挟む二辺で切り欠いた状態の切り欠き部となっている。この係止部121dは、ボス2cが螺旋溝121の下方側の側面121eに押圧されて摺動して来た場合に、ボス2cを係止する構造となっている。このボス2cと、螺旋溝121の係止部121dとが、本発明の「噛込み防止機構」に相当する。尚、係止部121dの働きの詳細については後述する。
【0033】
また、係止部121dは、図9に示す直角の切り欠きに限られず、図10に示すように、井戸形状の切り欠き部でも、図11に示すように、円弧状の切り欠き部でも良く、ボス2cが係止できる形状であれば良い。これに対して、各螺旋溝121の上方側の側面121fは、窪み等がない滑らかな傾斜した平面となっている。
【0034】
次に、図12乃至図19を参照して、係止部121dによる噛込み防止機構の動作について説明する。図12は、日付印1の側面図であり、図13は、日付印1の平面図である。また、図14は、図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図であり、図15は、保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図であり、図16は、図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図であり、図17は、保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図であり、図18は、保持部材120の螺旋溝121の係止部121dにボス2cが係止された状態を示す図であり、図19は、図12に示すC−C線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【0035】
図14に示すように、印字面の変更を行う場合に、ベルト体220のスライド部221(図4参照)の移動が十分でなく、所望の印字面が形成された文字コマ212が、露出孔114に対して、正対していない状態(挿入可能な範囲で向き合っていない状態)で、本体ケース2を保持して操作部205を時計回りに回転させると、図15に示すように、ボス2cが螺旋溝121に沿って摺動し、固定印字部を保持した保持部材120は本体ケース2に納められる方向に移動される。このときには、保持部材120へは重力がかかっているので、ボス2cは、螺旋溝121の上側の側面121f側へ押圧される力がかかっている。さらに、ボス2cが螺旋溝121を案内されていくと、図16に示すように、文字コマ212が露出孔114に正しく挿入されずに、露出孔114の周囲の部材に当接することになる。図16に示す例では、文字コマ212は、インク貯蔵体113の裏面に当接して、文字コマ212が露出孔114の周囲の部材であるインク貯蔵体113により押圧されて、変形して文字コマ212に圧縮応力が発生する。この圧縮応力が保持部材120にかかる重力より大きくなると、インク貯蔵体113が保持されている保持部材120には、その応力により、図16における上方(重力と反対方向)へ付勢力が印加される。すると、保持部材120は、図16に於ける上方へ押圧されるので、図17に示すように、螺旋溝121の下側の側面121eに対して、ボス2cが押圧されて摺動されることになる。
【0036】
このときに、本体ケース2に対して操作部205を、更に、時計回りに回転(露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への回転)させようとしても、図18に示すように、各ボス2cは、各螺旋溝121の側面121eに各々形成されている係止部121dの垂直の壁に当接して係止される。従って、本体ケース2に対して操作部205をそれ以上、時計回りの回転(露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への回転)をさせることができない状態となる。よって、図19に示すように、文字コマ212の一部又は全部が露出孔114に正対していない状態の場合には、係止部121dの働きにより、露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への保持部材120の移動が規制されて、文字コマ212の噛込みが防止できる。尚、図18に示すように、各ボス2cが、各螺旋溝121の側面121eに各々形成されている係止部121dに係止された場合には、日付印1の操作者は、本体ケース2に対して操作部205を時計回りに回転(露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への回転)させることが出来ないので、文字コマ212が正しい位置になっていないことを認知することができる。従って、操作者は、本体ケース2に対して操作部205を反時計回りに回転(露出孔114から文字コマ212が退出される方向への回転)させて、文字コマ212をインク貯蔵体113の裏面から離し、ベルト体220のスライド部221(図4参照)により、文字コマ212を正しい位置にすることができる。
【0037】
次に、図20乃至図25を参照して、文字コマ212の全部が露出孔114に挿入可能に正対している場合の、係止部121dによる噛込み防止機構の動作について説明する。図20は、図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図であり、図21は、保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図であり、図22は、図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図であり、図23は、保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図であり、図24は、保持部材120の螺旋溝121の係止部121dにボス2cが係止されずに摺動する状態を示す図であり、図25は、図12に示すC−C線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【0038】
図20に示すように、印字面の変更を行う場合に、ベルト体220のスライド部221(図4参照)の移動量が正しく、所望の印字面が形成された文字コマ212が、露出孔114に対して、正対している状態(挿入可能な範囲で向き合っている状態)で、本体ケース2を保持して操作部205を時計回りに回転させると、図21に示すように、ボス2cが螺旋溝121に沿って摺動し、固定印字部を保持した保持部材120は本体ケース2に納められる方向に移動される。このときには、ボス2cには、保持部材120への重力により、螺旋溝121の上側の側面121fへ押圧される力が働く。さらに、ボス2cが螺旋溝121を案内されていくと、図22に示すように、文字コマ212が露出孔114に正しく挿入され、露出孔114の周囲の部材に当接しない。従って、保持部材120には、重力以外の付勢力が印加されなので、ボス2cには、保持部材120への重力により、螺旋溝121の上側の側面121fへ押圧される力が働いたままである。よって、図23に示すように、螺旋溝121の上側の側面121fに対して、ボス2cが押圧されて摺動されることになる。従って、図23に示すように、各ボス2cは、各螺旋溝121の側面121eに各々形成されている係止部121dに係止されることはなく、本体ケース2に対して操作部205をさらに時計回りの回転(露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への回転)をさせることができる。よって、図24に示すように、各ボス2cは、各螺旋溝121の末端121aまで案内されて、図25に示すように、文字コマ212の全部が露出孔114に正しく挿入される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の日付印1は、保持部材120の外周に形成された螺旋溝121に係止部121dを形成しているので、文字コマ212が露出孔114の周囲の部材に当接した時の文字コマ212に生じる圧縮応力により、本体ケース2の内周面に形成されたボス2cを係止部121dに係止して、文字コマ212の噛込みを防止することができる。また、係止部121dは、一対の螺旋溝121の一方のみに形成しても良いが、一対の螺旋溝121の両方に形成すれば、一対のボス2cを各々係止できるので、本体ケース2に対して操作部205を時計回りに回転(露出孔114へ文字コマ212が挿入される方向への回転)させることを阻止する力が、係止部121dを1つ設けたものに対して2倍になるので、確実に噛込みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】捺印可能な状態の日付印1の斜視図である。
【図2】印字面211の変更が可能な状態の日付印1の斜視図である。
【図3】日付印1の分解斜視図である。
【図4】移動印字部材210を保持した保持体230の斜視図である。
【図5】図1に示す一点鎖線において矢視方向Aから見た、日付印1の断面図である。
【図6】図1に示す一点鎖線において矢視方向Bから見た、操作部205を除いた状態の日付印1の断面図である。
【図7】保持部材120の平面図である。
【図8】移動印字部材210が露出孔114に挿入される際の、図1に示す一点鎖線において矢視方向Aから見た、日付印1の断面図である。
【図9】保持部材120の側面図である。
【図10】保持部材120の変形例の側面図である。
【図11】保持部材120の変形例の側面図である。
【図12】日付印1の側面図である。
【図13】日付印1の平面図である。
【図14】図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【図15】保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図である。
【図16】図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【図17】保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図である。
【図18】保持部材120の螺旋溝121の係止部121dにボス2cが係止された状態を示す図である。
【図19】図12に示すC−C線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【図20】図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【図21】保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図である。
【図22】図13に示すD−D線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【図23】保持部材120の螺旋溝121をボス2cが摺動する状態を示す図である。
【図24】保持部材120の螺旋溝121の係止部121dにボス2cが係止されずに摺動する状態を示す図である。
【図25】図12に示すC−C線に於ける矢視方向の部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 日付印
2 本体ケース
2c ボス
2a 筒端部
2d 筒端部
100 固定印字部
111 印字面
112 固定印字部材
113 インク貯蔵体
114 露出孔
115 孔縁部
120 保持部材
121 螺旋溝
121e 側面
121f 側面
121d 係止部
200 移動印字部
201 内部支持ケース
202 ガイド溝
210 移動印字部材
211 印字面
212 文字コマ
【出願人】 【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚

【識別番号】100119611
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 千里


【公開番号】 特開2008−18696(P2008−18696A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194823(P2006−194823)