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【発明の名称】 インクジェット記録装置、データ生成装置および記録物
【発明者】 【氏名】中澤 広一郎

【氏名】石川 卓英

【氏名】高宮 英秋

【要約】 【課題】カール抑制専用の部品を設けることなく、またインクや記録性向上液の組成に過度な制約を与えることなく、カールを抑制する。

【構成】記録ヘッドからインクおよびインクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、記録媒体の一方の面にインクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、記録媒体の他方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドからインクおよび当該インクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記記録媒体の他方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成する手段、
を具えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記反応液吐出データを生成する手段は、前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記他方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データの他に、前記一方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記反応液吐出データを生成する手段は、前記一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づきインクが吐出される前記記録媒体の位置の裏面の少なくとも一部に、前記反応液が吐出されるように、前記他方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体上の領域を複数に分割してなる単位領域それぞれについて、前記インク吐出データが示すインク吐出数をカウントするカウント手段をさらに有し、
前記反応液吐出データを生成する手段は、前記カウント手段によるカウント結果と前記記録媒体の一方の面にインクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記他方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体上の領域を複数に分割してなる単位領域それぞれについて、前記インク吐出データが示すインク吐出数をカウントするカウント手段をさらに有し、
前記反応液吐出データを生成する手段は、前記カウント手段によるカウント結果と前記記録媒体の一方の面にインクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記一方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データと前記他方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドからインクおよび当該インクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
両面記録を行う場合に、前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データと前記記録媒体の他方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記一方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成し、且つ前記一方の面にインクを吐出するためのインク吐出データと前記他方の面にインクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記他方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
記録ヘッドからインクおよび当該インクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、
両面記録を行う場合に、前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データと前記記録媒体の他方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記一方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成し、且つ前記一方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データに基づいて、前記他方の面に反応液を吐出するための反応液吐出データを生成することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドからインクおよび当該インクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置で用いるデータを生成するデータ生成装置において、
前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記記録媒体の他方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成する生成手段、
を備えることを特徴とするデータ生成装置。
【請求項9】
記録媒体の一方の面にインク画像が形成された記録物であって、
前記インク画像の形成箇所の裏面側に相当する領域に、前記インク画像を構成する成分を凝集させる成分が存在することを特徴とする記録物。
【請求項10】
前記記録媒体の他方の面にインク画像が形成されており、
前記他方の面のインク画像の形成箇所の裏面側に相当する領域に、前記インク画像を構成する成分を凝集させる成分が存在することを特徴とする請求項9に記載の記録物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、データ生成装置および記録物に関する。特に、インクと記録性向上液とを用いて記録を行うためのインクジェット記録装置、データ生成装置および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの小液滴を飛翔させて、紙等の記録媒体に小液滴を付着させて印刷を行う記録方法である。このため、記録媒体上に着弾した際に、特に普通紙等の記録媒体を用いた場合には、インク液滴が記録媒体中に浸透して輪郭部が不明瞭となる場合があった。また、隣接する異なる色間の境界滲み(所謂、カラーブリード)が発生するという現象が生じる場合があった。
【0003】
これに対し、カラーブリードを軽減する技術として、特許文献1には、多価金属塩を含む溶液を記録媒体に付与した後、少なくとも一つのカルボキシル基を有する染料を含むインクを付与する方法が開示されている。即ち、多価金属イオンを含有する溶液(記録性向上液)と、イオンと反応し得る染料を含むインクが記録媒体上で接触することにより、不溶性物が形成される。その結果として、輪郭部の不明瞭性が改善され、また、カラーブリードが軽減され、更に、記録裏面への色材の裏抜けが低減された(以下、裏抜け性ともいう)高品位の画像を得ることが可能となる。
【0004】
また、特許文献2には、塩との作用によって増粘又は凝集するブラックインクと、その塩を含有するカラーインクとを組合せて使用することにより、画像濃度が高く、且つカラーブリードが生じない高品位のカラー画像が得られる、という技術が開示されている。
【0005】
上述の技術では、いずれも、混合されると互いに反応する2液をセットとして用い、画像形成の際に、これらの特性の異なる2液を用いて記録媒体上に画像を形成する。これにより、良好な画像を得ること(以下、反応に関わらず略無彩色の液体を用いたインクセットを2液システムと呼ぶ)を達成している。その他にも、2液を用いる各種の技術が特許文献3や特許文献4に開示されている。
【0006】
このようなインクセットを使用する2液システムでは、輪郭部の不明瞭性が改善される。また、異なる色のインクを複数用いた場合には、カラーブリードが軽減され、更に、裏抜け性の優れた高品位の画像形成が可能となる。すなわち、2液システムを用いた画像形成方法は、記録性向上液中の多価金属イオンがインク中の色材と反応する。例えば、色材が染料の場合は染料凝集、顔料の場合は分散破壊が生ずる。この結果、輪郭部の不明瞭性の改善、及びカラーブリードの発生を抑制する効果が得られる。
【0007】
しかしながら、2液システムを用いた場合、記録媒体上又は記録媒体中で、記録性向上液とインクの2液を接触させて反応させる必要があるため、画像形成にインクのみを用いる1液システムに比べて、記録媒体に打ちこまれる液体量が増大することがある。これによって、2液システムでの場合は、記録後の紙のカールの発生度合いが増大し、1液システムの場合よりもカールが顕著に生ずる。
【0008】
これに対し、特許文献5には、インクに、従来から知られているカール防止剤を添加し、カールを抑制する技術が開示されている。詳しくは、インク中にカール防止剤として1,3−ジオール類、1,3,5−トリオール類、アミノ−1,3−ジオール類等を添加している。かかる方法により、カールの発生を抑制することができる。しかしながら、インク中に多量のカール防止剤を添加しなければならず、得られる画像の画質、ノズルの目詰まり、および、装置の信頼性等の悪化を生じるおそれがある。
【0009】
以上の構成に代わるものとして、カールを抑制するためのカール防止剤を塗布ローラにより記録紙の裏面に塗布する方法が開示されている(特許文献6)。特許文献6には、さらに記録媒体幅の液体吐出ヘッドを用いて、カール防止剤を選択的に付与することも開示されている。具体的には、表面におけるインクの付与領域に応じてカール防止剤を選択することが記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−202328号公報
【特許文献2】特開平6−106735号公報
【特許文献3】特開平3−240557号公報
【特許文献4】特開平3−240558号公報
【特許文献5】特開平6−157955号公報
【特許文献6】特開平8−216384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、カール防止剤を塗布ローラにより記録紙の裏面に塗布する特許文献6に記載の方法では、カール抑制のためだけに、カール防止剤と塗布ローラを設ける必要が生じる。また、全面塗布によるカール防止剤の消費量が多くなり、塗布ロータを設けることにより装置サイズが大きくなるおそれがある。
【0012】
一方、記録媒体の幅の吐出ヘッドを用いてカール防止剤を選択的に付与することにより、カール防止剤の消費量を抑えることはできる。しかしながら、カール防止液の吐出ヘッドを用いる構成であっても、カール抑制専用の部品を設けることには変わりなく、装置サイズが大きくなることやコスト高になることは依然として解決されてない。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、カール抑制専用の部品を設けることなく、記録媒体のカールを抑制し、高品位な画像記録が可能なインクジェット記録装置、データ生成装置および記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために本発明では、ヘッドからインクおよび当該インクと反応する反応液を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録媒体の一方の面に前記インクを吐出するためのインク吐出データに基づいて、前記記録媒体の他方の面に前記反応液を吐出するための反応液吐出データを生成する手段、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成によれば、記録画像の裏面に反応液を吐出することができる。この結果、カール抑制専用の部品を設けることなく、記録媒体のカールを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
1.基本構成
1.1 機構部の構成
図1は、本発明の第1の実施形態で適用する
インクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【0018】
また、図2は、本発明の第1の実施形態で適用するインクジェット記録装置の側面からの構成を示す断面図である。
【0019】
インクジェット記録装置1は、主として、給紙部2、送紙部3、排紙部4、キャリッジ部5、クリーニング部6から構成されている。また、本実施形態では、記録媒体の両面に記録を行なうことができる構成となっており、記録媒体反転部9を具える。
【0020】
(A)給紙部
給紙部2は、記録媒体Pを積載する圧板21と、記録媒体Pを給送する給送回転体22とがベース20に取り付けられている。圧板21には可動サイドガイド23が移動可能に設けられており、この可動サイドガイド23が記録媒体Pの積載位置を規制している。圧板21はベース20に結合された回転軸21aを中心に回転可能であり、圧板バネ24により給送回転体22に向けて付勢されている。給送回転体22と対向する圧板21の部位には、記録媒体Pの重送を防止するために人工皮等の摩擦係数の大きい材質からなる分離パッド25が設けられている。さらに、ベース20には、記録媒体Pの一方向の角部を覆い、記録媒体Pを一枚ずつ分離するための分離爪26を具える。普通紙ポジションでは分離爪26が作用し、圧板21と給送回転体22の当接を解除するリリースカム29が設けられている。また、ベース20に一体形成された土手部27を具え、記録媒体Pが厚紙等であって分離爪26が使用できないとき、厚紙等を分離する。厚紙ポジションでは分離爪26が作用しないように切り換えるための切り替えレバー28が設けられている。
【0021】
上記構成において、待機状態ではリリースカム29が圧板21を所定位置まで押し下げている。このため、圧板21上に積載されている記録媒体Pと給送回転体22の当接は解除された状態となっている。この状態で搬送ローラ36の有する駆動力が、ギア等により給送回転体22及びリリースカム29に伝達されると、リリースカム29は圧板21から離れる。そして、圧板21は上昇し、給送回転体22と記録媒体Pが当接し、給送回転体22の回転に伴い記録媒体Pはピックアップされて給送され始め、分離爪26によって一枚ずつ分離されて送紙部3に送られる。給送回転体22及びリリースカム29は記録媒体Pを送紙部3に送り込むまで回転する。記録媒体Pを送紙部3に送り込み終えた時点で、リリースカム2の作用により、再び記録媒体Pと給送回転体22との当接が解除されて待機状態となり、搬送ローラ36からの駆動力は遮断される。
【0022】
(B)送紙部
送紙部3は、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ36とPEセンサ32を有している。搬送ローラ36にはこれに従動して回転するピンチローラ37が設けられている。
【0023】
ピンチローラ37はピンチローラガイド30に回動可能に保持され、ピンチローラガイド30をピンチローラバネ31で付勢することで、ピンチローラ37を搬送ローラ36に圧接させて記録媒体Pの搬送力を生み出している。さらに、記録媒体Pが搬送されてくる送紙部3の入口には記録媒体Pをガイドする上ガイド33及びプラテン34が配設されている。また、上ガイド33には記録媒体Pの先端および後端の検出を紙端センサ(PEセンサ)32に伝えるPEセンサレバー35が設けられている。
【0024】
上記構成において、送紙部3に送られた記録媒体Pはプラテン34、ピンチローラガイド30及び上ガイド33に案内されて、搬送ローラ36とピンチローラ37とのローラ対へと送られる。この時、PEセンサレバー35は、記録媒体Pの先端に押されて回転し、その回転をPEセンサ32が検知する。このPEセンサ32の検出信号に基づき後述の制御装置が記録媒体Pの記録位置を求める。また、記録媒体Pは搬送モータ(不図示)によりローラ対36、37が回転することでプラテン34上を搬送される。
【0025】
なお、記録ヘッド7は、後述のキャリッジ50に対して交換可能に装着されると共に、インクタンクを着脱可能に保持する構成となっている。また、この記録ヘッド7には、複数のノズルが配列されると共に、各ノズル内にヒータ等の電気熱変換素子が配置されている。この電気熱変換素子を駆動することによりインクに熱を与え、その熱によりインクに膜沸騰を発生させる。そして、そのときの気泡の成長または収縮によって生じる圧力変化によってノズルからインクを吐出して記録媒体P上に画像を形成する。
【0026】
(C)排紙部
排紙部4には2本の排紙ローラ41,41Aが副走査方向の異なる位置に並設されると共に、搬送ローラ36と排紙ローラ41とに当接する伝達ローラ40と、排紙ローラ41と排紙ローラ41Aとに当接する伝達ローラ40Aとが設けられている。搬送ローラ36の回転駆動力が伝達ローラ40を介して排紙ローラ41に伝達され、さらにその回転駆動力は伝達ローラ40Aを介して排紙ローラ41Aに伝達される。
【0027】
また、排紙ローラ41、41Aに従動して回転し得るように、拍車42、42Aが排紙ローラ41、41Aにそれぞれ当接しており、また拍車42、42Aには、クリーニングローラ44が回転可能に当接している。
【0028】
以上の構成によって、キャリッジ部5で画像形成された記録媒体Pは、前記排紙ローラ41、41aと拍車42、42aとに挟持され、各ローラの回転によって搬送されて排紙トレー100上に排出される。
【0029】
排紙ローラ41Aの下流側には、記録後に排紙される記録媒体Pを支持するための後述の排紙サポート104が設けられ、排紙サポート104は案内部材102に回転可能に取付けられている。案内部材102は、プラテン34からの突出位置とプラテン34上へ退避位置との間を直線移動可能に支持されており、この案内部材102の移動に伴って排紙サポート104が回転動作を行う。なお、前記給紙部2から記録ヘッド7を経て排紙サポート104に至る記録媒体の搬送経路によって第1の搬送経路が構成されている。
【0030】
(D)キャリッジ部
キャリッジ部5は、記録ヘッド7を交換可能に装着するキャリッジ50を有している。そしてキャリッジ50は、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)に対して直交する主走査方向に延出するガイド軸81と記録ヘッド7と記録媒体Pとの隙間を維持するガイドレール82とによって主走査方向に移動可能に支持されている。なお、これらガイド軸81及びガイドレール82はシャーシ8に取り付けられている。また、キャリッジ50はシャーシ8に取り付けられたキャリッジモータ(不図示)によりタイミングベルト83を介して駆動される。このタイミングベルト83は、アイドルプーリー84の間に適度な張りをもたせて支持されている。さらに、キャリッジ50には、電気基板9から記録ヘッド7へヘッド駆動信号を伝えるためのフレキシブル基板56が接続されている。
【0031】
上記構成において、記録媒体Pに画像形成を行う場合には、ローラ対36、37の回転によって記録媒体Pを副走査方向へと搬送し、記録媒体Pをプラテン34上の記録位置へと移動させる。また、キャリッジモータ80によりキャリッジ50を駆動し、主走査方向における記録媒体P上の画像形成位置へと記録ヘッド7を移動させる。その後、記録開始指令に従って、キャリッジ50が主走査方向へと移動すると共に、電気基板9からの信号により記録ヘッド7から記録媒体Pに向けてインクを吐出して画像が形成される。
【0032】
また、キャリッジ50に対する記録ヘッド7の着脱や、記録ヘッド7に対するインクタンクの着脱は、操作キー(不図示)を押してキャリッジ50を所定の交換位置へと移動させた後、その交換位置で行うように構成されている。
【0033】
(E)クリ−ニング部
クリーニング部6は、記録ヘッド7のクリーニングを行うポンプ60と、記録ヘッド7の乾燥を抑えるためのキャップ61と、搬送ローラ36の回転駆動力を給紙部2およびポンプ60に切り換える駆動切り替えアーム62とから構成されている。給紙、クリーニング以外の時は、駆動切り替えアーム62が、搬送ローラ36の軸心を中心に回転する遊星ギア(不図示)を所定位置に固定しているので、給紙部2及びポンプ60に駆動力は伝達されない。キャリッジ50が移動することで、駆動切り替えアーム62を矢印A方向に移動され、遊星ギアがフリーになる。したがって、搬送ローラ36の正転、逆転に応じて遊星ギアが移動し、搬送ローラ36が正転したときは給紙部2に駆動力が伝達され、逆転したときはポンプ60に駆動力が伝達されるようになっている。
【0034】
(F)記録媒体反転部
図3は、本発明の第1の実施形態における反転ユニットを含む記録媒体反転部を示す簡略図である。
【0035】
記録媒体反転部9は、第1の搬送経路に連なる給紙用搬送経路94と、搬送ローラ36およびインクジェット記録装置1の背面側(図2において右側)に位置する反転ユニット90とから構成される。反転ユニット90は、用紙押えローラ95と、反転用小ローラ92と、ループ状の反転用搬送経路93と、反転用大ローラ91とからなる。搬送ローラ36は、モータによって正方向および逆方向に回転駆動が可能である。なお、給紙用搬送経路94と反転用搬送経路93とにより第2の搬送経路が形成されている。また、反転ユニット90は、記録装置に対し装着可能に構成されている。
【0036】
自動両面記録時には、まず、搬送ローラ36を正転させて、記録媒体Pを正方向へ搬送することにより、給紙部2から給紙された記録媒体Pの一方の面(以下、「表面」あるいは「第一の記録面」ともいう。)に記録を行う。その後、搬送ローラ36を逆方向送りして、給紙用搬送経路94にある記録媒体Pを反転用搬送経路93に送り、ここで記録媒体Pの表裏が反転される。すなわち、記録媒体Pは、図3に示すようにA→B→C→D→E→F→Gの順で反転用搬送経路93を通り、表裏が反転される。この後、表裏の反転された記録媒体Pは、給紙用搬送経路94を経て再度プラテン34へと送られる。そして、記録ヘッド7によって他方の面(以下、「裏面」あるいは「第二の記録面」ともいう。)に図8および図9にて説明される裏面側のデータに基づく記録が行われる。
【0037】
なお、記録される画像の裏面に反応液を付与する方式である本実施形態の記録方法では必ず両面記録を行う構成となるため、特に片面のみに画像記録する場合は記録スループットが低下する。このため、カールを発生させる高い画像デューティを記録する場合には、自動または手動で本実施形態における記録方法に切り換える仕組みを有していてもよい。すなわち、低い画像デューティを記録する場合には、記録する画像データのみに基づいた従来の記録方法によって画像を記録してもよい。これにより、記録スループットを極端に低下させない記録ができる。
【0038】
また紙厚センサ等で紙厚を検知して、カールの発生しやすさを判別して記録方法を切り換えてもよい。具体的には、カールの発生しやすい記録媒体の場合には本実施形態の記録方法を実行する一方で、カールの発生しにくい記録媒体の場合には従来の記録方法を実行するのである。
【0039】
(G)記録ヘッド
図4は、本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドを示す構造図である。ここで、Sは記録性向上液(「反応液」ともいう。)用の吐出ノズルを示す。また、CMYKは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクの吐出ノズルを示す。この形態において、図4における右方向へインクジェットヘッドをスキャンするときに吐出を行なうことにより、吐出する記録性向上液はインクより先に吐出する。また、左方向へインクジェット記録ヘッドをスキャンするときに吐出を行うことにより、吐出する記録性向上液はインクの後に吐出される。
【0040】
図5は、本発明の第1実施形態に係る他の記録ヘッドを示す構造図である。本記録ヘッドは、鏡面配置構成となっており、双方向記録をしても往復の色むらが発生しない高速記録が可能となる。
【0041】
1.2 記録システムの概要
次に、このインクジェット記録装置の制御系の概略構成について説明する。
【0042】
図6は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【0043】
100はこの実施形態におけるインクジェット記録装置の各駆動部の制御を行う制御部である。制御部100には、MPU101と、ROM102と、DRAM103と、ゲートアレイ(G.A.)とを具える。MPU101は、種々の演算、判別、制御などの処理を行う。また、ROM102は、MPU101によって実行するプログラムなどを格納している。DRAM103は、入力されたデータを一時的に格納すると共にMPU101による演算処理のワークエリアとして機能する。
【0044】
また、この制御装置100には、ホストコンピュータなどの外部機器との間で信号の授受を行うためのインターフェース105が接続されており、ここから入力された信号はゲートアレイ104を介してMPU101及びDRAM103に入力される。さらに、この制御装置100には、各種ドライバ(108、110、112)が接続されている。これらドライバのうち、ヘッドドライバ108は、記録ヘッド7の各ノズル内に設けられたヒータを駆動する。また、モータドライバ110は、搬送ローラ36などの回転駆動を行う搬送モータ109を駆動し、モータドライバ112は、キャリッジ50を駆動するキャリッジモータ111を駆動する。
【0045】
さらに、制御装置100には、キャリッジ50の位置を検出するエンコーダ111および前記PEセンサ113などが接続されている。
【0046】
上記構成を有する制御系において、ホストコンピュータからの記録データがインターフェース105を介して送られると、ゲートアレイ104を通してDRAM103に記録データが一時蓄えられる。その後、DRAM103のデータをゲートアレイ104によって、ラスタデータから記録ヘッド7で記録するための記録イメージデータに変換し、再度DRAM103に記憶させる。そのデータを再度ゲートアレイ104によって、ヘッドドライバ108を介して記録ヘッド7に送り、対応したノズル位置のヒータを駆動して発熱させ、その熱エネルギーによってインクを吐出させて記録を行う。
【0047】
図7は、本発明の第1実施形態における記録システムを画像データの流れに沿って示したブロック図である。本実施形態の記録装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの4色のインクと、記録性向上液を用いて記録を行うものである。そのため、これらのインクと記録性向上液を吐出する記録ヘッドが用いられる。
【0048】
ホスト装置1000のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションJ0001は記録装置で記録する画像データを生成する処理を実行する。この画像データもしくはその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のPCは、先ずデジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納される画像データをも取り込むことができる。さらには、インターネットを介してウエブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、PCのモニタに表示されてアプリケーションJ0001を介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データR、G、Bが生成される。そして、記録の指示に応じてこの画像データがプリンタドライバに渡される。
【0049】
本実施形態のプリンタドライバはその処理として、前段処理部J0002、後段処理部J0003、γ補正部J0004、ハーフトーニング部J0005、および記録データ生成部J0006を有している。前段処理部J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態の前段処理部J0002は、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、本記録システムの記録装置によって再現される色域内に写像する関係を内容とする3次元LUTを用いる。そして、これに補間演算を併用して8ビットの画像データR、G、Bをプリンタの色域内のデータR、G、Bに変換するデータ変換を行う。後段処理部J0003は、上記色域のマッピングがなされたデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせ、すなわちイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに対応した色分解データY、M、C、Kを求める処理を行う。本実施形態では、この処理は前段処理と同様3次元LUTに補間演算を併用して行う。γ補正部J0004は、後段処理部J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとにその階調値変換を行う。具体的には、本システムで用いる記録装置の各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。ハーフトーニング部J0005は、8ビットの色分解データY、M、C、Kそれぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。本実施形態では、誤差拡散法を用いて8ビットデータを4ビットデータに変換する。この4ビットデータは、記録装置におけるドット配置のパターン化処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。最後に、記録データ生成処理部J0006によって、上記4ビットのインデックスデータを内容とする記録イメージデータに印刷制御情報を加えた記録データを生成する。なお、上述したアプリケーションおよびプリンタドライバの処理は、それらのプログラムに従ってCPUにより行われる。その際、プログラムはROMもしくはハードディスクから読み出されて用いられ、また、その処理実行に際してRAMがワークエリアとして用いられる。
【0050】
記録装置は、データ処理に関して2値データ生成処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008を行う。2値データ生成処理J0007は、実際の記録画像に対応する画素ごとに、記録イメージデータである4ビットのインデックスデータ(階調値情報)に対応したドット配置パターンに従ってドット配置を行う。このように、4ビットデータで表現される各画素に対し、その画素の階調値に対応したドット配置パターンを割当てることで、画素内の複数のエリア各々にドットのオン・オフが定義される。そして1画素内の各エリアごとに「1」または「0」の2値の吐出データが配置される。
【0051】
記録性向上液用のデータ(以下、Sデータと呼ぶ)は、後述されるように、2値データ生成処理J0007において、Y、M、C、Kデータにより生成される。Sデータの生成方法の一例は次の通りである。まず、記録媒体の表裏面夫々に対応するY、M、C、Kデータをメモリに格納する。そして、メモリから裏面データを読み出し、この裏面データを上下左右反転(ミラー反転)して裏面反転データを得る。最後に、メモリから読み出した表面データと裏面反転データの論理和により表面用のSデータを生成する。同様に、裏面データと表面反転データの論理和により裏面用のSデータを生成する。なお、Y、M、C、Kデータに対応する位置だけでなく、その隣接位置にも記録性向上液を割り当てるボールド処理を行うことも可能である。このようにして得られる1ビットの吐出データY、M、C、KおよびSは、マスクデータ変換処理J0008によってマスク処理がなされる。すなわち、記録ヘッドによる所定幅の走査領域の記録を複数回の走査で完成するための各走査の吐出データは、それぞれの走査に対応したマスクを用いた処理によって生成される。走査ごとの吐出データY、M、C、KおよびSは、適切なタイミングでヘッド駆動回路J0009に送られ、これにより、記録へッドJ0010が駆動されて吐出データに従ってそれぞれのインクが吐出される。なお、記録装置における上述の2値データ生成処理やマスクデータ変換処理は、それらに専用のハードウエア回路を用い記録装置の制御部を構成するCPUの制御の下に実行される。なお、これらの処理がプログラムに従ってCPUにより行われてもよく、また、上記処理がPCにおける例えばプリンタドライバによって実行されるものでもよい。
【0052】
2.特徴構成
図8は、本発明の第1実施形態における記録性向上液用のデータの生成方法の例を示すフローチャートである。
【0053】
ステップS801では、記録媒体である記録用紙の表面および裏面の両面に記録する両面記録か否かを判断する。片面記録である場合、表面画像データ(表面インク吐出データ)を用いて表面の記録性向上液用の吐出データ(表面反応液吐出データ)を生成する(S802)。
【0054】
また両面記録であれば、表面画像データと、裏面画像データを上下左右反転した裏面反転画像データから、表面の記録性向上液用の吐出データを生成する(S803)。具体的には、表面画像データと、裏面反転画像データとの論理和をとり、その結果を表面の記録性向上液用の吐出データとする。
【0055】
次に、ステップS804では、ステップS802あるいはS803で得た表面記録性向上液の吐出データを間引くか否かを判断する。ここでは、画像データ(インク吐出データ)あるいはユーザからの指示に基づいて間引くか否かの判断を行う。例えば、画像データの量(インク吐出データが示すインク吐出数)を検出し、その検出値が閾値よりも大きければ間引き処理を行わないと判断し、検出値が閾値以下であれば間引きを行うと判断する。これによれば、インクドット数が多く、にじみやすい画像には記録性向上液を比較的多く付与し、インクドット数が少なく、にじみが少ない画像には記録性向上液を比較的少なく付与することができる。また、記録性向上液の付与の有無をユーザが指定できるような操作部をホスト装置あるいは記録装置に設け、この操作部においてユーザによる指定があったか否かを検知することで、間引くか否かの判断を行うようにしてもよい。なお、本発明においてステップS804の判断工程を設けることは必須ではなく、この判断工程を設けない構成であってもよい。この場合、常に間引き処理を行う構成としてもよいし、常に間引き処理を行わない構成としてもよい。
【0056】
記録性向上液の吐出データを間引く場合には、ステップS805において間引き処理を行い、記録用表面記録性向上液の吐出データを生成する(S806)。一方、記録性向上液を間引かない場合には、ステップS805を経ずに、ステップS806に進む。
【0057】
次に、ステップS807では、S806で得られた記録用表面記録性向上液用吐出データに基づき、記録用裏面記録性向上液用吐出データを生成する。詳しくは記録用表面記録性向上用吐出データの上下左右を反転することにより、記録用裏面記録性向上用吐出データを生成する(S807)。但し、このS807におけるデータ生成処理はこれに限られるものではない。例えば、片面記録モードの場合、S802で得られた表面画像データの上下左右を反転することにより、記録用裏面記録性向上液用吐出データを生成することもできる。また、両面記録モードの場合、S803の表面画像データを上下左右反転することにより得られる表面反転画像データと不図示の裏面画像データとの論理和をとることで、記録用裏面記録性向上液用吐出データを生成することもできる。
【0058】
図9は、画像データ(インク吐出データ)および記録性向上液吐出データ(反応液吐出データ)を模式的に示す図である。図9に示される「先端」は記録媒体の搬送方向下流側の端部を指し、「後端」は記録媒体の搬送方向上流側の端部を指す。図9(a)は記録媒体Pの表面にインクで記録される画像データ901を示している。ステップS801において、片面記録と判断した場合には、表面画像データ(表面インク吐出データ)901が存在する位置と同一の箇所に、表面記録性向上液吐出データ905が存在することとなる(図9(d))。そして、必要に応じ、記録性向上液の吐出データを間引く処理(S805)を行い、記録用表面記録性向上液吐出データを生成する(S806)。この記録用表面記録性向上液吐出データを上下左右反転することにより、記録用裏面記録性向上液吐出データ906を生成する(図9(e))。このように記録用裏面記録性向上液吐出データ906は、表面画像データから得られる記録用表面記録性向上液吐出データ905に基づき生成される。つまり、記録用裏面記録性向上液吐出データ906は、表面画像データ(表面インク吐出データ)901から間接的に生成される。これにより、記録媒体の一方の面(表面)にインク画像が形成される場合、そのインク画像の形成箇所の裏面側に相当する領域に、記録性向上液が吐出されることになる。なお、上述した通り、記録用裏面記録性向上液吐出データ906は表面画像データを上下左右反転することにより生成することも可能である。以上のように記録用裏面記録性向上液吐出データ906は、表面画像データ(表面インク吐出データ)901から直接あるいは間接的に生成されればよい。要するに、記録用裏面記録性向上液吐出データ906は、表面画像データ901に基づき生成されればよい。
【0059】
一方、ステップS801において、両面記録と判断した場合には、図9(a)に示した画像データ901の他に、図9(b)に示す、記録媒体Pの裏面にインクで記録される画像データ(裏面インク吐出データ)902が存在する。この裏面画像データ902を上下左右反転することにより裏面反転画像データ903(図9(c))を生成する。そして、表面画像データ901と裏面反転画像データ903との論理和から記録媒体表面に記録する記録性向上液の吐出データ907を生成する(図9(f))。これにより、記録媒体の他方の面(裏面)にインク画像が形成される場合、そのインク画像の形成箇所の裏面側に相当する領域に、記録性向上液が吐出されることになる。そして、必要に応じ、記録性向上液の吐出データを間引く処理(S805)を行い、記録用表面記録性向上液吐出データを生成する(S806)。この記録用表面記録性向上液吐出データを上下左右反転することにより、記録用裏面記録性向上液吐出データ908を生成する(図9(g))。但し、裏面記録性向上液吐出データ908の生成の仕方はこれに限られるものではない。例えば、表面画像データ901を上下左右反転することにより得られる表面反転画像データ(不図示)と裏面画像データ902との論理和をとることで、記録用裏面記録性向上液用吐出データ908を生成することもできる。いずれにせよ、記録用裏面記録性向上液吐出データ908は、少なくとも表面画像データ901に基づき生成されることになる。
【0060】
これらの処理により、記録後のカールを抑制し、かつ個々の画像領域や画像デューティ等が種々に異なる多様な画像形成においても、カールを抑制することができる。すなわち、2液システムの特徴を利用し、これによって、画像領域、画像デューティに応じてバランスよくカール作用を相殺することができる。
【0061】
図10は、記録媒体の断面を示す模式図である。一般的にカールの発生原因は、記録媒体を形成するセルロース等の繊維間の水の吸着及び蒸発の影響が大きいと考えられている。
【0062】
図10(1a)、図10(2a)に示すように水性インク1001を記録媒体Pの片面に記録した場合は、通常、時間とともに図10(1b)、図10(2b)に示すように記録媒体Pは記録面を内側にしてカールする。これは両面記録でも同様である。図10(3a)に示すように表裏面で異なる位置に記録した場合は、図10(3b)に示すようにS字にカールする。一方、図10(4a)に示すように表裏面で同じ位置に記録した場合は、図10(4b)に示すようにカールの発生はほとんど見られない。図10(4b)では図10(1b)と図10(2b)で発生するカールが互いに相殺していると考えることができる。そこで、上述した処理を行うことにより、図10(5a)に示すように記録媒体Pに付与されるインク1001の表裏逆面に記録性向上液1002を付与することで、互いに内側へカールしようとする力を相殺し、図10(5b)に示すようにカールを抑制できる。
【0063】
なお、上述では、一方の面のインク吐出位置の裏側に相当する位置の全てに反応液を吐出する構成となっている。しかし、本実施形態は、これに限られるものではなく、一方の面のインク吐出位置の裏側に相当する位置の一部にだけ反応液を吐出する構成としてもよい。要するに、本実施形態では、一方の面のインク吐出位置の裏側に相当する位置の少なくとも一部に反応液を吐出する構成であればよいのである。
【0064】
3. 記録性向上液(反応液)
3.1 記録性向上液1
本実施形態にかかる記録性向上液は、少なくとも1種のインク中の少なくとも1成分と反応して、インクを凝集或いはゲル化せしめる特性を有する。例えば、水性媒体中に、イオン性基の作用によって安定に分散又は溶解させられている色材を有するインクを用いる。この場合、記録性向上液としては、記録媒体上等でインクと混合された場合に、インクの分散安定性を破壊し及びインクを凝集させることができる成分を含むものが好ましい。具体的には、多価金属のイオン及びその塩から選ばれる少なくとも何れかを含むものが挙げられる。
【0065】
本実施形態で使用する記録性向上液に用いることのできる多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+、及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられるがこれに限定されるものではない。また、その塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための陰イオンとしては、例えば、Cl-、NO3-、I-、Br-、ClO3-、SO42-、CO32-、CH3COO-、及びHCOO-等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、記録性向上液中の上記塩の含有量は、本実施形態にかかる効果を考慮すると、記録性向上液全量に対して、多価金属塩として、0.01〜20質量%が好ましい。
【0066】
又、本発明で使用する記録性向上液は、無色であることが好ましいが、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。即ち、可視域に吸収を示すものであっても、実質上、画像に影響を与えない範囲であれば、可視域に吸収を示す淡色のものであってもかまわない。
【0067】
3.2 記録性向上液2
本実施形態にかかる別の記録性向上液は、記録媒体に透明のトップコート層を形成して、印字物に耐光性・耐水性・定着性・濃度をあたえる特性を有する。例えば、カルボキシル基を有し中和によって水溶化する高分子を含むものである。具体的には、スチレン−アクリルポリマーの水溶液が用いられ、これが記録された記録媒体上に吐出されると、記録媒体表面上に高分子膜が生成される。記録性向上液中のカルボン酸塩を有する高分子としては、記録性向上液中に安定して溶解すればよい。例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸のハーフエステル、イタコン酸等のアクリル酸系単量体の1種以上を用いて得られたビニル共重合体を塩基性物質の添加により可溶化したものが好ましい。この際の塩基性物質としては、特に制限されることなく水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール等があげられる。上記アクリル酸系単量体と共重合させることのできる単量体としては、目的とする特性を有する高分子を形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、次のような単量体の少なくとも1種を用いることができる。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート単量体、更には、スチレンモノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、2−(ベンゾイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(5−エチル−2−ピリジル)エチル(メタ)アクリレート、[1,1−ビフェニル]−4−イル(メタ)アクリレート、7−オキソ−1,3,5−シクロヘプタトリエン−1−イル(メタ)アクリレート、8−キノリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−メチルペンチル(メタ)アクリレート、1−シクロヘキシル−3−アゼチジニル(メタ)アクリレート、9−カルバゾリルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル(メタ)アクリレート、3−ニトロフェニル(メタ)アクリレート、1−(3−ペリレニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0068】
また、記録性向上液中のカルボン酸塩を有する高分子の含有量としては、記録性向上液全量に対して、好ましくは1.0〜15重量%、より好ましくは1〜6重量%の範囲があげられる。記録性向上液中の高分子の含有量が15重量%を超えると、記録性向上液の粘度が高くなる傾向があり、インクジェット記録方法での吐出安定性が得られないことがある。
【0069】
また本実施形態にかかる別の記録性向上液は、樹脂エマルジョンを含むものであっても良い。樹脂エマルジョンにおける樹脂成分としては酢酸ビニル系・アクリル系・スチレン系・オレフィン系等の単独重合または共重合樹脂などがあげられる。
【0070】
本実施形態で使用する記録性向上液に用いられる水性媒体としては、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、記録性向上液の乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0071】
また、水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0072】
本実施形態で使用する記録性向上液中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、記録性向上液全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、記録性向上液に含有される水の含有量は記録性向上液全質量に対して好ましくは50〜95質量%の範囲である。更に上記の成分のほかに、必要に応じて、所望の物性値を持つ記録性向上液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加することができる。
【0073】
4.インク
上記したような構成を有する記録性向上液は、少なくとも一種類のインクとともに画像を形成する際に用いられ、該インクと反応して、インクを凝集又はゲル化せしめる。その際に使用されるインクとしては、特に、色材がイオン性基によって水性媒体に分散又は溶解させられているインクと組合せて記録に用いることで、カールの抑制された、しかも高品質の画像が形成される等の好ましい効果を得られる。かかるインクに用いることのできる色材としては、例えば、染料、顔料(自己分散型顔料、マイクロカプセル化顔料を含む)、更には着色樹脂等が挙げられるが、本発明においては、特に、色材として顔料を用いることが好ましい。以下これらの色材について詳述する。
【0074】
4.1 染料
インクの色材として用いる染料としては従来から公知の物を用いることができ、例えば、酸性染料、直接染料、分散染料等を用いることができる。例えば、アニオン性染料としては、既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度とを有するものであれば、大抵のものを用いることができる。また、これらのうちのいずれかを混合して用いることも可能である。アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0075】
(イエロー用の色材)
C.I.ダイレクトイエロー8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132
C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
C.I.リィアクティブイエロー2、3、17、25、37、42
C.I.フードイエロー3
【0076】
(レッド用の色材)
C.I.ダイレクトレッド2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
C.I.リィアクティブレッド7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
C.I.フードレッド87、92、94
【0077】
(ブルー用の色材)
C.I.ダイレクトブルー1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
C.I.リィアクティブブルー4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
【0078】
(ブラック用色材)
C.I.ダイレクトブラック17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック1、2
【0079】
4.2 顔料
顔料としては、例えばカーボンブラックや有機顔料等が挙げられる。
【0080】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができる。なお、これらに限定されるものではなく従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。又、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0081】
(有機顔料)
有機顔料として具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
【0082】
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:1、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。勿論上記以外でも従来公知の有機顔料が使用可能である。
【0083】
(分散剤)
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。分散剤の具体例は、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体或いはこれらの塩等が含まれる。又、これらの分散剤は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、特には3,000〜15,000の範囲のものが好ましい。
【0084】
(自己分散型顔料)
色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤なしで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂、自己分散型顔料を用いることもできる。このような顔料の一例として例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックとしては、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したものを挙げることができる。
【0085】
(アニオン性CB)
アニオン性カーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に、例えば、−COO(M2)、−SO3(M2)、−PO3H(M2)、−PO3(M2)2から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。
【0086】
上記式中、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。これらの中では特に、−COO(M2)や−SO3(M2)をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため本実施態様に特に好適に用い得るものである。
【0087】
ところで、上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては、Li、Na、K、Rb及びCs等が挙げられる。また、有機アンモニウムの具体例としては、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。そして、M2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含むインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることができる。これは、当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。
【0088】
ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックは、例えば、M2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とする。そして、その後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
【0089】
ところで、上述したような種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。又、他の原子団と親水性基の組合わせの具体例としては、−C24COO(M2)、−Ph−SO3(M2)、−Ph−COO(M2)等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。
【0090】
ところで、本実施形態においては、上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種、若しくはそれ以上を適宜選択してインクの色材に用いてもよい。又、インク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としては、インク全質量に対して、0.1〜15質量%、特には1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更に、インクの色調の調整等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0091】
(着色微粒子/マイクロカプセル化顔料)
色材として上記したものの他に、ポリマー等でマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子等も用いることができる。マイクロカプセルに関しては、本来的に水性媒体に対する分散性を有すが、分散安定性を高めるために上記したような分散剤を更にインク中に共存させてもよい。また、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したアニオン系分散剤等を用いることが好ましい。
【0092】
4.3 水性媒体
上述したような色材を分散させる水性媒体は、特に限定されるものでなく、記録性向上液に用いる水性媒体として前記したものと同様のものを用いることができる。また、カラーインクをインクジェット法(例えば、バブルジェット(登録商標)法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、インクジェット吐出特性を有するようにインクが所望の粘度、及び表面張力を有するように調整することが好ましい。使用する水性媒体を下記に例示するものの中から適宜に選択して調整して構成することが好ましい。本実施形態の記録方法では、記録性向上液とインクを単独で記録した際、カールする方向が互いに同じとなることが好ましい。例えば、記録性向上液では記録媒体が内側へカールするなら、インクも内側へカールするような水性媒体を選択することが好ましい。
【0093】
本実施形態で使用するインクに用いられる水性媒体の例としては、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上述のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0094】
また、水としては脱イオン水を使用することが望ましい。
【0095】
本実施形態で使用するインク中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲が好適である。又、インクに含有される水の含有量は、インク全量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲である。更に、上記の成分の他に、必要に応じて、保湿剤を添加することは勿論、所望の物性値を持つ記録性向上液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加しても構わない。
【0096】
(カール防止剤の添加)
本発明では特許文献5に挙げられたカール防止剤を添加しなくても効果は高いが、インクおよび/または記録性向上液にはカールを防止する効果がある材料を併用してもよい。このようなものの具体例としては、糖類、より具体的には、単糖類、オリゴ糖類及び糖アルコール類、又、1,1,1−トリス(ヒドロキシルメチル)プロパン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール等が挙げられる。勿論、これらの化合物に限定されるものではない。
【0097】
4.4 インクセット
上述した記録性向上液と組み合わせて、本実施形態にかかるインクセットを構成するインクの色調は特に限定されず、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー及びブラックから選ばれる1つの色調を示すインクとすればよい。具体的には、所望の色調のインクとなるように適宜前記した色材のなかから選択して用いることができる。ここで各インク中の色材の含有量は、例えばインクジェット記録に用いる場合には、インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、又所望の色調や濃度を有するように適時選択すればよい。目安としては、例えば、インク全量に対して1〜50質量%の範囲が好ましい。
【0098】
また、記録性向上液と組み合わせるインクは、1種類に限定されるものでなく、異なる色調のインクを2つ以上組み合わせて、多色画像の形成に適したインクセットとすることがより好ましい。この場合2つ以上のインクのうち、少なくとも1つのインクが記録性向上液と反応すればよい。
【0099】
水性媒体に色材がイオン性基の作用によって分散させられているインクであれば、他のインクを染料を色材として含むインクとしてもよく、勿論、全てのインクを水性媒体に色材がイオン性基の作用によって分散させられているインクとしてもよい。このようなインクセットによれば、多色画像をインクジェット装置で形成する場合に問題とされる、異なる色調のインクが記録媒体上で隣接して付与されたときのブリーディングを抑えることができる。より具体的には、インクジェット多色画像において問題とされるブリーディングは、黒色インクと他のカラーインクとの間が特に顕著になり易い。他のカラーインクとは、例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクから選ばれる少なくとも1つのインクが該当する。本態様においても記録性向上液と相互作用するように水性媒体にイオン性基の作用によって色材を分散させた構成とするインクとしては黒色インクを組み合わせることが好ましい。そして他のカラーインクについては、染料を水性媒体に溶解したインクとしてもよく、もちろん黒色インクと同様に色材をイオン性基の作用によって水性媒体に分散させたインクとしてもよい。
【0100】
4.5 インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について
上述のインクセットは、インクジェット記録用のインクセットとして好適に用いることができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法がある。これらの記録方法に本実施形態のインクセットを構成する記録性向上液及びインクは特に好適である。ところで上記各実施態様にかかる記録性向上液及びインクをインクジェット記録用に用いる場合には、記録性向上液及びインクは、インクジェットヘッドから吐出可能である特性を有することが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、液体の特性としては、例えば、その粘度を1〜15cps、表面張力が25mN/m(dyne/cm)以上が好ましい。特に、粘度を1〜5cps、表面張力が25〜50mN/m(dyne/cm)とすることが好ましい。
【0101】
5.実施例
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」又は「%」とあるものは特に断わらない限り質量基準である。先ず下記に述べるようにして、夫々顔料とアニオン性化合物とを含むブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の各色インクである顔料インクを得た。
【0102】
(顔料インク)
<顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価240、重量平均分子量=5,000)1.5部
・モノエタノールアミン1.0部
・ジエチレングリコール5.0部
・イオン交換水81.5部
【0103】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散液とした。
【0104】
<顔料インクK1の作製>
上記の分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製して顔料インクとした。このときの表面張力は34mN/mであった。
・上記顔料分散液30.0部
・グリセリン10.0部
・エチレングリコール5.0部
・N−メチルピロリドン5.0部
・エチルアルコール2.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)1.0部
・イオン交換水47.0部
【0105】
(顔料インクC1、M1、Y1)
顔料インクK1の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、下記表1の顔料に代えた以外は、顔料インクK1の調製と同様にして顔料を含有した顔料インクC1、M1及びY1を調製した。
【0106】
【表1】


【0107】
<記録性向上液S1の作製>
次に下記の成分を混合溶解した後、更にポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過して記録性向上液S1を得た。
・硝酸マグネシウム3.0部
・ジエチレングリコール10.0部
・メチルアルコール5.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)0.1部
・イオン交換水81.9部
【0108】
<実施例1>
両面記録可能な記録装置として、インクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)に自動両面ユニットDPU−10(キヤノン製)を装着したものを用いる。記録材料としては、上記で調製した記録性向上液1と、調製したブラックインク、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクを用いる。この記録装置において、画素の解像度は600dpi(縦)×600dpi(横)であり、1画素は2(縦)×4(横)のエリアで構成される。従って、各エリアの解像度は、1200dpi(縦)×2400dpi(横)となる。記録ヘッドの吐出量は3plであり、上述した1200dpi(縦)×2400dpi(横)の各エリアに対してインク滴を吐出できる構成である。このような記録装置を用いて、A4サイズの普通紙オフィスプランナー(キヤノン製)の全面に記録を行なう。具体的には、まず、図4に示すインク配列でKCMY各色の記録デューティを100%、記録性向上液の記録デューティを100%として、上記普通紙の表面に4パス双方向記録を行なう。次に、その裏面に記録性向上液の記録デューティを100%として4パス双方向で記録を行う。このようにして、インク画像の裏面に反応液が付与されてなる、カール評価用の記録物を作成した。
【0109】
また、別の記録紙(普通紙)に、10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、記録性向上液の記録デューティを100%としてブラックインクと各カラーインクで交互にベタ記録する。次に、その裏面の、表面画像に相対する位置に記録性向上液の記録デューティを100%として4パス双方向記録を行う。このようにしてブリード評価用の記録物を作成した。
【0110】
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同じ記録装置を使用する。但し、記録条件が実施例1と異なり、実施例2の記録条件は次の通りである。まず、図4に示すインク配列でKCMY各色の記録デューティを100%、記録性向上液の記録デューティを50%として、上記普通紙の表面に4パス双方向記録を行なう。次に、その裏面に記録性向上液の記録デューティを50%として4パス双方向記録を行う。このようにして、カール評価用の記録物を作成した。
【0111】
また別の記録紙に、10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、記録性向上液の記録デューティを50%としてブラックインクと各カラーインクで交互にベタ記録を行なう。次に、その裏面の、表面画像に相対する位置に記録性向上液の記録デューティを50%として4パス双方向記録を行う。このようにしてブリード評価用の記録物を作成した。
【0112】
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同じ記録装置を使用する。但し、記録条件が実施例1と異なり、比較例1の記録条件は次の通りである。図4に示すインク配列でKCMY各色の記録デューティを100%、記録性向上液の記録デューティを100%として、上記普通紙の表面に4パス双方向記録を行った。しかし、裏面には反応液を付与しなかった。このようにしてカール評価用の記録物を作成した。 また別の記録紙に、10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、記録性向上液の記録デューティを100%としてブラックインクと各カラーインクで交互にベタ記録してブリード評価用の記録物を作成した。なお、裏面に反応液を付与しなかった。
【0113】
[評価]
得られた画像について、下記のようにして、カールの発生、及びブリードについての評価を行った。その際の評価方法及び評価基準を以下に示した。評価結果を表2に示した。
【0114】
(カール)
実施例1、実施例2、比較例1で得た記録物を、30℃/15%環境に1週間放置し、その後、カールの度合いを目視にて観察して、下記の基準で評価した。
○:カールが殆ど発生していない。
△:カールが少し発生した。(平らな机上で、紙浮き高さが1cm未満を目安とした)
×:カールが発生している。(平らな机上で、紙浮き高さが1cm以上を目安とした)
【0115】
(ブリード)
実施例1、実施例2、比較例1で得た記録物のブラック記録部とカラー記録部との境界のブリードを目視で観察し、以下の基準にて評価した。
○:2色間の境界線が鮮明で、境界部に滲みや混色が見られない。
×:2色間の境界線の識別不能である。
【0116】
【表2】


【0117】
(第2の実施形態)
1.本実施形態の概要
上述した第1の実施形態は、カールを軽減するための記録性向上液吐出データを生成するか否かを記録媒体全域の画像データに基づいて判断するものであったが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。すなわち、記録媒体のカールを軽減するための記録性向上液吐出データを生成するか否かを、記録媒体全域を複数の所定単位で区画してなる単位領域毎の画像データ(インク吐出データ)に基づいて判断するものであってもよい。
【0118】
この第2の実施形態では、記録媒体上の領域を予め定められた複数の単位領域に分割し、各単位領域に対応するインク吐出データが示すインク吐出数(記録ドット数)をカウントする。そして、単位領域内の記録ドット数が閾値よりも大きい場合には、裏面のカール軽減のための記録性向上液吐出データを作成する。一方、単位領域内の記録ドット数が閾値未満である場合には、裏面のカール軽減のための記録性向上液吐出データを作成しない。このような構成によれば、スループットの低下を抑制する効果や、記録性向上液の消費量を低減する効果がある。
【0119】
すなわち、インク画像のデュ−ティーは記録媒体全域で一律になることは稀であり、高い画像デューティの単位領域と低い画像デューティの単位領域が混在することが多い。例えばA4版の普通紙の上半分はイラストによる高い画像デューティが存在し、下半分には文字説明による低い画像デューティが存在することがある。この場合、記録用紙の裏面全体にカール軽減のための記録性向上液を付与する必要性は低く、高い画像デュ−ティの単位領域が存在する表面の上半分の裏側にだけ記録性向上液を付与すれば、カール抑制効果を得ることはできる。つまり、低い画像デュ−ティの単位領域が存在する表面の下半分の裏側には記録性向上液を付与しなくとも、カールはある程度軽減できる。それににもかかわらず、記録用紙の裏面全体に記録性向上液を付与してしまうと、スループットの低下や記録性向上液の過剰な消費を招く場合もある。
【0120】
そこで、本実施形態では、記録媒体上の領域を複数に分割してなる単位領域毎に、カール抑制のための記録性向上液吐出データを作成するか否かを判断するようにしている。記録性向上液の付与有無を単位領域毎に判断することで、記録性向上液の過剰な消費を低減することができ、場合によってはスループットの低下も抑制できる。なお、本発明において「単位領域」とは、記録媒体上の領域を複数に分割することにより得られる領域を指す。特に、本実施形態では、図12に示されるように、記録媒体上の領域を記録ヘッドの副走査方向の幅の単位で主走査方向に沿って分割することにより得られる領域1202を「単位領域」と定めている。
【0121】
2. 特徴構成図11は、本発明の第2の実施形態における記録性向上液用データの生成方法を示すフローチャートである。ステップS1101で、記録用紙の表面および裏面の両面に記録する両面記録か否かを判断する。片面記録の場合、片面の記録媒体上の領域を複数に分割してなる単位領域それぞれについて、インク吐出データの吐出数(記録ドット数)をカウントし、そのカウント結果をDRAMに103記憶する(S1102)。次に、表面画像データに基づいて、表面の記録性向上液用吐出データを生成する(S1103)。次に、表面の記録性向上液用吐出データと、記憶された記録ドット数とに基づいて、裏面用の記録性向上液吐出データを生成する(S1104)。なお、このS1104では、表面の画像データと、記憶された記録ドット数とに基づいて、裏面用の記録性向上液吐出データを生成するようにしてもよい。そして、全単位領域のデータ作成が終了したか否かを判断し(S1105)、終了していなければ、次の単位領域の処理に移る。また、全単位領域のデータ作成が終了していれば、記録性向上液吐出データの作成処理を終了する。
【0122】
片面記録の場合の処理では、表面の単位領域内の記録ドット数が予め定めた所定ドット数(閾値)未満のときは、その単位領域に対応する裏面に記録性向上液を吐出しないように、裏面の記録性向上液吐出データを生成する。一方、記録ドット数所定ドット数以上のときは、第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0123】
一方、両面記録の場合、記録媒体上の領域を複数に分割してなる単位領域それぞれについて、インク吐出データの吐出数(記録ドット数)をカウントし、そのカウント結果をDRAMに103記憶する(S1106)。このステップS1106における記録ドット数のカウントは、記録媒体の表面と裏面の夫々について行う。そして表面画像データと、裏面画像データを上下左右反転した裏面反転画像データと、記憶した裏面の記録ドット数に基づいて、表面の記録性向上液用吐出データを生成する(S1107)。
【0124】
両面記録の場合の処理では、裏面の単位領域内の記録ドット数が予め定めた所定ドット数(閾値)未満である場合には、表面の画像データのみから表面の記録性向上液吐出データを作成する。一方、裏面の単位領域内の記録ドット数が予め定めた所定ドット数以上である場合には、第1の実施形態と同様に、表面画像データと、裏面画像データを上下左右反転した裏面反転画像データから、表面の記録性向上液吐出データを作成する。
【0125】
次に裏面画像データと、表面画像データを上下左右反転した表面反転画像データと、記憶した表面の記録ドット数から、裏面の記録性向上液用吐出データを生成する(S1108)。
【0126】
表面の単位領域内の記録ドット数が予め定めた所定ドット数未満である場合には、裏面の画像データのみから裏面の記録性向上液吐出データを作成する。一方、裏面の単位領域内の記録ドット数が予め定めた所定ドット数以上である場合には、第1の実施形態と同様に、裏面画像データと、表面画像データを上下左右反転した表面反転画像データから、裏面の記録性向上液吐出吐出データを作成する。
【0127】
そして、全ての単位領域のデータ作成が終了したか否かを判断し(S1109)、終了していなければ、次の単位領域の処理に移る。また、全ての単位領域のデータ作成が終了していれば、記録性向上液吐出データの作成処理は終了する。
【0128】
なお、本実施形態では、記録媒体上の領域を記録ヘッドの副走査方向の幅の単位で主走査方向に沿って分割することにより得られる領域を「単位領域」と定めているが、単位領域の形態はこれに限られるものではない。例えば、記録媒体上の領域を主走査方向と副走査方向の両方について複数に分割することにより得られる領域を「単位領域」と定めてもよい。
【0129】
また、『予め定めた所定ドット数(閾値)』は、記録媒体の種類、インクの特性、吐出量、画像解像度、単位領域に対する単位時間あたりの最大付与量等とカール発生の程度を考慮して、プリンタの設計者により適宜決定される設計値である。したがって、ここでは閾値の具体的数値について開示しないが、閾値の数値をどのような値にするかは当業者であれば容易に決定できるであろう。なお、表面の所定ドット数(閾値)と裏面の所定ドット数(閾値)は、同じであっても、異なってもよい。
【0130】
また、図11では図示していないが、第1の実施形態と同様に記録性向上液の吐出データを間引く処理を組み込むことも可能である。
【0131】
図12は、第2の実施形態の片面記録を例にとった画像データおよび記録性向上液吐出データを模式的に示した図である。図12に示される「先端」は記録媒体の搬送方向下流側の端部を指し、「後端」は記録媒体の搬送方向上流側の端部を指す。図12(a)は記録媒体Pの表面にインクで記録される画像データ1201a、1201bを示している。ステップS1101において片面記録と判断された場合、ステップS1102において、図12(b)で示したような予め設定された複数の単位領域1202のそれぞれについて記録ドット数をカウントし、そのカウント結果をDRAMに記憶する。図12(c)は、ステップS1103において画像データ1201a、1201bに基づいて生成される、表面の記録性向上液用吐出データ1203a、1203bを示している。ここでは、表面画像データ1201a、1201bが存在する位置と同一の箇所に、表面記録性向上液吐出データ1203a、1203bが存在することとなる。
【0132】
図12(d)は、表面画像データ1201aの裏面に相当する領域の記録用裏面記録性向上液吐出データ1204を示している。表面画像データ1201aのような高ディーティ画像が存在する箇所では、単位領域1202における記録ドット数Naが所定ドット数N0以上であると判断される。この場合、表面画像データ1201aの裏面に対応する領域に記録性向上液を吐出する必要があるので、図12(d)のように表面画像データ1201aの裏面側に記録するための記録用裏面記録性向上液吐出データ1204が生成される(ステップS1104)。本例では、ステップS1104において、記録用表面記録性向上液吐出データ1203a、1203bと、先に記憶した記録ドット数に基づいて、裏面記録用裏面記録性向上液吐出データ1204が生成される。
【0133】
なお、ステップS1104では、表面画像データ1201a、1201bと、先に記憶した記録ドット数に基づいて、裏面記録用裏面記録性向上液吐出データ1204を生成してもよい。一方、表面画像データ1201bのような低ディーティ画像が存在する箇所では、各単位領域1202における記録ドット数Nbが所定ドット数N0未満であると判断される。この場合、表面画像データ1201bの裏面に相当する領域に記録性向上液は吐出しないので、12(d)に示されるように表面画像データ1201bの裏面に記録するための記録用裏面記録性向上液吐出データは生成されない。以上のように、記録用裏面記録性向上液吐出データ1204は、表面画像データから直接あるいは間接的に生成されればよい。すなわち、記録用裏面記録性向上液吐出データ1204は、表面画像データ1201a、1201bに基づき生成されればよい。
【0134】
以上により、カールが発生しやすい高い画像デューティを持つ画像領域1201aでは第1の実施形態に従い相対する面に記録性向上液を付与してカールを抑制する。一方、カールが発生しにくい低い画像デューティを持つ画像領域1201bの相対する面には記録性向上液が付与されないので、記録スループットの低下が抑制される。また、記録性向上液の消費量抑制効果も併せ持つことができる。
【0135】
2. 実施例
<実施例3>
両面記録可能な記録装置として、インクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)に自動両面ユニットDPU−10(キヤノン製)を装着したものを用いる。記録材料としては、上記で調製した記録性向上液1と、調製したブラックインク、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクを用いる。この記録装置において、画素の解像度は600dpi(縦)×600dpi(横)であり、1画素は2(縦)×4(横)のエリアで構成される。従って、各エリアの解像度は、1200dpi(縦)×2400dpi(横)となる。記録ヘッドの吐出量は3plであり、上述した1200dpi(縦)×2400dpi(横)の各エリアに対してインク滴を吐出できる構成である。このような記録装置を用いて記録用紙に記録を行う。記録用紙としては、A4サイズの普通紙オフィスプランナー(キヤノン製)を用いる。具体的には、まず、図4に示すインク配列でKCMY各色の記録デューティを100%、記録性向上液の記録デューティを100%として、記録用紙の上半分の領域に4パス双方向記録を行った。引き続き、上記記録用紙の下半分の領域に、KCMY各色の記録デューティを5%、記録性向上液の記録デューティを5%として、4パス双方向に記録した。次に、記録用紙の上半分の領域の裏面に相当する領域のみに記録性向上液の記録デューティを100%として4パス双方向で記録を行った。このようにして、カール評価用の記録物を作成した。
【0136】
また別の記録紙に、10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、記録性向上液の記録デューティを100%としてブラックインクと各カラーインクで交互にベタ記録を行なう。次に、その裏面の、表面画像に相対する位置に、記録性向上液の記録デューティを100%として4パス双方向に記録した。このようにしてブリード評価用の記録物を作成した。(ここでは所定ドット数N0を記録デューティ30%に相当する記録ドット数とした。) <比較例2>
比較例2では、実施例3と同じ記録装置を使用する。但し、記録条件が実施例3と異なり、比較例2の記録条件は次の通りである。
図4に示すインク配列でKCMY各色の記録デューティを100%、記録性向上液の記録デューティを100%として、記録用紙の上半分の領域に4パス双方向記録を行った。引き続き、上記記録用紙の下半分の領域に、KCMY各色の記録デューティを5%、記録性向上液の記録デューティを5%として、4パス双方向に記録した。このようにして、カール評価用の記録物を作成した。なお。この比較的2では、裏面に対して記録性向上液を吐出していない。
また別の記録紙に、10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、記録性向上液の記録デューティを100%としてブラックインクと各カラーインクで交互にベタ記録した。このようにしてブリード評価用の記録物を作成した。なお、裏面に対して記録性向上液は吐出しなかった。
【0137】
[評価]
第1の実施形態と同様な評価を行った。その評価結果を表3に示した。
【0138】
【表3】


【0139】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)に対して直交する主走査方向にキャリッジを移動させながら記録ヘッドにより記録を行う、いわゆるシリアルプリンタの構成について説明した。しかしながら、本発明は、シリアルプリンタに限定されるものではない。本発明は、記録媒体Pの記録幅に相当する長さを有する記録ヘッド(ラインヘッドとも言う)を用い、記録媒体Pを搬送させながら上記記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う、いわゆるラインプリンタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の第1実施形態におけるインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるインクジェット記録装置の側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における記録媒体反転部の概略構成を示す説明側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるインクジェット記録ヘッドを示す構造図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるインクジェット記録ヘッドを示す構造図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】本発明の第1実施形態における記録システムを画像データの流れを示すブロック図である。
【図8】本発明の第1実施形態における記録性向上液吐出データの生成を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態における画像データおよび記録性向上液吐出データを模式的に示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態における記録媒体の断面を示す模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態における記録性向上液吐出データの生成を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態における画像データおよび記録性向上液吐出データを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0141】
901 表面画像データ
902 裏面画像データ
903 裏面反転画像データ
905 記録用表面記録性向上液吐出データ
906 記録用裏面記録性向上液吐出データ
907 記録用表面記録性向上液吐出データ
908 記録用裏面記録性向上液吐出データ
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成19年4月9日(2007.4.9)
【代理人】 【識別番号】100077481
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 義一

【識別番号】100088915
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 和夫


【公開番号】 特開2008−18711(P2008−18711A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−101615(P2007−101615)