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【発明の名称】 静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置
【発明者】 【氏名】杷野 祥史

【氏名】藤井 正寛

【要約】 【課題】絶縁膜の形成が基板材料に依存することなくガラス基板にも適用でき、静電アクチュエータの発生圧力を向上させるとともに、低コストのもとで静電アクチュエータの駆動の安定性および駆動耐久性の向上を図る。

【構成】基板上に形成された個別電極5と、この個別電極5に所定のギャップを介して対向配置された振動板6と、前記個別電極5と前記振動板6との間に静電気力を発生させて該振動板6に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、前記固定電極および前記可動電極の対向面の一方または両方に設けられた絶縁膜7と、この絶縁膜7上に設けられた表面保護膜8とを備え、前記表面保護膜8がセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、
前記固定電極および前記可動電極の対向面の一方または両方に設けられた絶縁膜と、この絶縁膜上に設けられた表面保護膜とを備え、前記表面保護膜がセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなることを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
前記表面保護膜が、ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系材料からなることを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動電極の対向面に前記絶縁膜と前記表面保護膜が設けられていない場合において、その対向面に第2の絶縁膜を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の静電アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定電極の対向面に前記絶縁膜と前記表面保護膜が設けられていない場合において、その対向面に第2の絶縁膜を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の静電アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定電極が形成された基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電アクチュエータ。
【請求項6】
前記絶縁膜及び前記第2の絶縁膜のうち少なくとも一方が、シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の静電アクチュエータ。
【請求項7】
前記絶縁膜及び前記第2の絶縁膜のうち少なくとも一方が、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の静電アクチュエータ。
【請求項8】
酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料として、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から少なくとも一つが選ばれることを特徴とする請求項7記載の静電アクチュエータ。
【請求項9】
基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、
ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、
前記ガラス基板の前記固定電極上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上にセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなる表面保護膜を形成する工程と、
シリコン基板と前記ガラス基板とを陽極接合する工程と、
前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、
前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、
前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、 前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、
ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、
前記ガラス基板の前記固定電極上に絶縁膜を形成する工程と、
シリコン基板の接合面に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜上にセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなる表面保護膜を形成する工程と、
前記シリコン基板と前記ガラス基板とを陽極接合する工程と、
前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、
前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、
前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、 前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜及び前記第2の絶縁膜のうち少なくとも一方を、シリコン酸化膜または酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料により形成することを特徴とする請求項9または10記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項12】
酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料として、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から選ばれた少なくとも一つを用いることを特徴とする請求項11記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項13】
前記表面保護膜を、ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系材料により形成することを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項14】
前記ガラス基板の接合部における前記表面保護膜の部分を除去することを特徴とする請求項9、11乃至13のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項15】
前記シリコン基板の接合部における前記表面保護膜の部分を除去するか、あるいは当該接合部にのみシリコン酸化膜を設けることを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項16】
前記ギャップの封止は、前記ギャップ内の水分を除去する加熱真空引きを行った後、窒素雰囲気下で行うことを特徴とする請求項9乃至15のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項17】
液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、 請求項1乃至8のいずれかに記載の静電アクチュエータを備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項18】
液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、
請求項9乃至16のいずれかに記載の静電アクチュエータの製造方法を適用することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
請求項17記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、静電駆動方式のインクジェットヘッド等に用いられる静電アクチュエータ、液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載される静電駆動方式のインクジェットヘッドが知られている。静電駆動方式のインクジェットヘッドは、一般に、ガラス基板上に形成された個別電極(固定電極)と、この個別電極に所定のギャップを介して対向配置されたシリコン製の振動板(可動電極)とから構成される静電アクチュエータ部を備えている。そして、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、上記静電アクチュエータ部に静電気力を発生させることにより吐出室に圧力を加えて、選択されたノズル孔よりインク滴を吐出するようになっている。
【0003】
従来の静電アクチュエータにおいては、アクチュエータの絶縁膜の絶縁破壊や短絡を防止して駆動の安定性と駆動耐久性を確保するため、振動板や個別電極の対向面に絶縁膜が形成されている。絶縁膜には、一般にシリコンの熱酸化膜が使用されている。その理由としては製造プロセスの簡便さや、絶縁膜特性がシリコン熱酸化膜は優れているという理由からである。また、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を原料ガスとするシリコン酸化膜により絶縁膜を振動板の対向面に形成することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、振動板側の片方だけに絶縁膜を形成するのでは誘電体の絶縁膜内に残留電荷が生じてアクチュエータの駆動の安定性や駆動耐久性が低下することから、振動板側と個別電極側の両方に絶縁膜を形成する静電アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。また、上記残留電荷の発生を低減させるために、個別電極側の表面のみに体積抵抗の高い膜と低い膜とで二層の電極保護膜を形成する静電アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、アクチュエータの絶縁膜に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電材料、いわゆるHigh−k材(高誘電率ゲート絶縁膜)を用いることにより、アクチュエータの発生圧力を向上させることができる静電アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−19129号公報
【特許文献2】特開平8−118626号公報
【特許文献3】特開2003−80708号公報
【特許文献4】特開2002−46282号公報
【特許文献5】特開2006−271183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術において、静電アクチュエータの電極の絶縁膜として、シリコン熱酸化膜を用いる場合は、適用がシリコン基板に限られるという適用上の問題がある。したがって、可動電極である振動板側にしかシリコン熱酸化膜を形成することができない。一方、特許文献1に示すようにTEOS膜を用いる場合は、CVD法という膜の製法上、膜中に多くのカーボン系不純物が混入してしまい、駆動耐久性試験の結果、振動板と個別電極の繰り返しの接触によりTEOS膜が摩耗するなど膜の安定性に課題がある場合が多いということがわかった。
【0006】
特許文献2では、振動板側に熱酸化膜を、個別電極側にスパッタ法によりシリコン酸化膜(ここではスパッタ膜と記す)を形成するものであるが、スパッタ膜では絶縁耐圧が低くなるため、静電アクチュエータの絶縁破壊を防止するためには、膜厚を厚くするか、振動板側に熱酸化膜のような絶縁耐圧に優れた膜を別に形成する必要があった。
【0007】
また、特許文献3では、振動板および個別電極の両電極が共にシリコン基板で構成され、振動板側だけでなく、個別電極側にも熱酸化膜からなる絶縁膜を構成し、さらにシリコン基板の接合面には絶縁膜が設けられていない構成とするものである。しかし、シリコン基板はガラス基板よりも高価であり、コスト高になる問題がある。
【0008】
特許文献4では、個別電極側のみに体積抵抗の高い膜と低い膜とで二層の電極保護膜を形成し、振動板はモリブデンやタングステン、ニッケルなどの金属で構成するものである。しかし、このような絶縁構造では静電アクチュエータの構成が複雑になり、製造プロセスが煩雑化してコスト高となる問題がある。
【0009】
特許文献5では、後記の式(2)に示すように、アクチュエータの絶縁膜に、酸化シリコンよりも比誘電率の高い誘電材料を使用することで、アクチュエータの発生圧力を高めるものである。しかし、アクチュエータを駆動させるためには電極間に電圧を印加する必要があり、電極に設けられた絶縁膜の絶縁耐圧が低いと、絶縁耐圧の観点からアクチュエータに印加可能な電圧が低く制限されてしまい、いわゆるHigh−k材を絶縁膜として用いたアクチュエータであっても、High−k材の絶縁耐圧が酸化シリコンよりも低い場合には、アクチュエータの発生圧力を向上させることは困難であった(後記の式(2)より印加電圧Vを小さくしなければならないため)。
【0010】
さらにまた、上記の特許文献1〜5のいずれにも、アクチュエータの絶縁膜として、いわゆるHigh−k材と表面保護膜との組合せについては開示されていない。特に表面保護膜は絶縁膜を安定的に保護する部材であり、静電アクチュエータの長期駆動耐久性を保つうえでは欠かせない要素部材である。
【0011】
一方、静電アクチュエータを備える静電駆動方式のインクジェットヘッドにあっては、近年、高解像度化に伴い高密度化、高速度駆動の要求が一段と高まり、それに伴い静電アクチュエータもますます微小化する傾向にある。このような要求に応えるためには、絶縁膜の形成が基板材料に依存することなくガラス基板にも適用でき、低コストのもとで静電アクチュエータの発生圧力を向上させるとともに、駆動の安定性および駆動耐久性の更なる向上を図ることが重要な課題となる。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決する静電アクチュエータを提供することを目的とし、さらには高解像度化に伴う高密度化、高速駆動に対応し得る液滴吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る静電アクチュエータは、基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータにおいて、前記固定電極および前記可動電極の対向面の一方または両方に設けられた絶縁膜と、この絶縁膜上に設けられた表面保護膜とを備え、前記表面保護膜がセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなるものである。
【0014】
本発明では、固定電極および/または可動電極上に絶縁膜を形成し、更にその絶縁膜上にセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなる表面保護膜を形成するものである。したがって、表面保護膜が硬質膜であるため、可動電極が固定電極と繰り返し接触をしても、硬質膜の表面保護膜によって絶縁膜が保護されているため、絶縁膜の絶縁性を保持できるとともに、更に表面保護膜が硬質膜のため摩耗や剥離等を生じない。よって、静電アクチュエータの駆動の安定性および駆動耐久性が向上する。
【0015】
また、前記表面保護膜は、ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系材料からなることが好ましい。この中でもダイヤモンドライクカーボンを用いるのが下地絶縁膜との密着性が良好で、表面平滑性が高く、低摩擦性を有するため望ましい。
【0016】
また、前記可動電極の対向面に前記絶縁膜と前記表面保護膜が設けられていない場合において、その対向面にさらに第2の絶縁膜を設けることが好ましい。また、固定電極の対向面に前記絶縁膜と前記表面保護膜が設けられていない場合にも同様に、その対向面に第2の絶縁膜を設けることが好ましい。この場合、絶縁膜及び第2の絶縁膜のうち少なくとも一方を、絶縁耐圧および膜特性に優れたシリコン熱酸化膜とすることが好ましい。
これによって静電アクチュエータの駆動の安定性および駆動耐久性が更に向上する。
【0017】
また、絶縁膜及び第2の絶縁膜のうち少なくとも一方を、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料とすることにより、アクチュエータの発生圧力を向上させることができる。この場合、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料として、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から少なくとも一つを選ぶものとする。これらの材料は、いわゆるHigh−k材であるとともに、膜の低温成膜性、膜の均質性、製造プロセス適応性等が良好である。
また、本発明の静電アクチュエータにおいては、前記固定電極が形成された基板は、ガラス基板であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、前記ガラス基板の前記固定電極上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上にセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなる表面保護膜を形成する工程と、シリコン基板と前記ガラス基板とを陽極接合する工程と、前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
この製造方法により、駆動の安定性および駆動耐久性に優れた静電アクチュエータを安価に得ることができる。
【0020】
本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、基板上に形成された固定電極と、この固定電極に所定のギャップを介して対向配置された可動電極と、前記固定電極と前記可動電極との間に静電気力を発生させて該可動電極に変位を生じさせる駆動手段とを備えた静電アクチュエータの製造方法において、ガラス基板に前記固定電極を形成する工程と、前記ガラス基板の前記固定電極上に絶縁膜を形成する工程と、シリコン基板の接合面に第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜上にセラミックス系硬質膜または炭素系硬質膜からなる表面保護膜を形成する工程と、前記シリコン基板と前記ガラス基板とを陽極接合する工程と、前記シリコン基板を薄板に加工する工程と、前記陽極接合後に、前記シリコン基板の接合面と反対の表面からエッチング加工して前記可動電極を形成する工程と、前記固定電極と前記可動電極との間に形成されるギャップ内の水分を除去する工程と、前記ギャップの開放端部を気密に封止する工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
この製造方法により、駆動の安定性および駆動耐久性に優れた静電アクチュエータを安価に得ることができる。
【0022】
本発明の静電アクチュエータの製造方法では、上述した理由から、前記絶縁膜及び前記第2の絶縁膜のうち少なくとも一方を、シリコン酸化膜または酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料により形成する。また、前記表面保護膜をダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系材料により形成するものである。また、酸化シリコンよりも比誘電率が高い誘電材料として、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)の中から選ばれた少なくとも一つを用いるものとする。
【0023】
さらに、ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン等のカーボン系材料からなる表面保護膜は陽極接合が困難であるため、前記ガラス基板の接合部における前記表面保護膜の部分を除去するものとし、また前記シリコン基板の接合部における前記表面保護膜の部分を除去するか、あるいは当該接合部にのみ別途シリコン酸化膜を設けるものとする。これにより、ガラス基板とシリコン基板の接合強度を確保することができる。
【0024】
また、前記ギャップの封止は、前記ギャップ内の水分を除去する加熱真空引きを行った後、窒素雰囲気下で行うことが望ましい。これによって、ギャップ内、つまり静電アクチュエータ内部の絶縁膜や表面保護膜上に水分が存在することはないので、静電気力により可動電極が固定電極に吸着したままの状態となることを防止することができる。
【0025】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、上記のいずれかの静電アクチュエータを備えたものである。
【0026】
本発明の液滴吐出ヘッドは、上述のように優れた駆動の安定性及び駆動耐久性を有する静電アクチュエータを備えているので、信頼性の高い、液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドが得られる。
【0027】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出する単一または複数のノズル孔を有するノズル基板と、前記ノズル基板との間で、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室となる凹部が形成されたキャビティ基板と、前記吐出室の底部にて構成される可動電極の振動板に所定のギャップを介して対向配置される固定電極の個別電極が形成された電極基板とを備えた液滴吐出ヘッドの製造方法において、上記のいずれかの静電アクチュエータの製造方法を適用するものである。
これにより、信頼性の高い、液滴吐出特性に優れた液滴吐出ヘッドを安価に製造することができる。
【0028】
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを備えたものであるので、高解像度、高密度、高速度のインクジェットプリンタ等を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を適用した静電アクチュエータを備える液滴吐出ヘッドの実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、液滴吐出ヘッドの一例として、ノズル基板の表面に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するフェイス吐出型の静電駆動方式のインクジェットヘッドについて図1から図5を参照して説明する。なお、本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではなく、吐出室とリザーバ部が別々の基板に設けられた4枚の基板を積層した4層構造のものや、基板の端部に設けられたノズル孔からインク滴を吐出するエッジ吐出型の液滴吐出ヘッドにも同様に適用することができるものである。
【0030】
実施形態1.
図1は実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を分解して示す分解斜視図であり、一部を断面で表してある。図2は組立状態における図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図、図3は図2のA部の拡大断面図、図4は図2のa−a拡大断面図、図5は図2のインクジェットヘッドの上面図である。なお、図1および図2では、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
【0031】
本実施形態のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッドの一例)10は、図1および図2に示すように、複数のノズル孔11が所定のピッチで設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2に設けられた振動板6に対峙して個別電極5が配設された電極基板3とを貼り合わせることにより構成されている。
【0032】
インクジェットヘッド10のノズル孔11ごとに設けられる静電アクチュエータ部4は、図2から図4に示すように、固定電極として、ガラス製の電極基板3の凹部32内に形成された個別電極5と、可動電極として、シリコン製のキャビティ基板2の吐出室21の底壁で構成され、個別電極5に所定のギャップGを介して対向配置される振動板6とを備え、個別電極5の対向面(表面)には、絶縁膜7として、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を原料ガスとして用いたシリコン酸化膜(以下、便宜上「TEOS−SiO2膜」と略記する)が形成されている。さらにこの絶縁膜7上に表面保護膜8が形成されている。
【0033】
なお、絶縁膜7はTEOS−SiO2膜に限られるものではなく、いわゆるHigh−k材と呼ばれる酸化シリコン(SiO2)よりも比誘電率の高い誘電材料を用いることもできる。High−k材の例としては、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23、アルミナ)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta23)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)、窒化アルミ(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム(Y23)、ジルコニウムシリケート(ZrSiO)、ハフニウムシリケート(HfSiO)、ジルコニウムアルミネート(ZrAlO)、窒素添加ハフニウムアルミネート(HfAlON)、及びこれらの複合膜等をあげることができる。その中でも膜の低温製膜性、膜の均質性、プロセス適応性等を考慮した場合、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al23、アルミナ)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化タンタル(Ta23)、窒化ハフニウムシリケート(HfSiN)、酸窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)を使用することが望ましい。
【0034】
表面保護膜8としては、セラミックス系硬質膜であるTiN、TiC、TiCN、TiAlN等や、炭素系硬質膜であるダイヤモンドまたはDLC(ダイアモンドドライクカーボン)等が使用可能である。その中でも下地絶縁膜であるシリコン酸化膜との密着性が良好な、DLCを用いるのが望ましい。本実施形態1および以下に示す各実施形態ではDLCを用いている。
【0035】
また、シリコン製のキャビティ基板2とガラス製の電極基板3とは、直接またはシリコン酸化膜を介して陽極接合されている。そして、電極基板3に形成された個別電極5の端子部5aと、キャビティ基板2の接合面と反対の上面に形成された共通電極26とに、駆動手段として、ドライバICなどの駆動制御回路9が図2、図3、図5に示すように配線接続される。
以上により、インクジェットヘッド10の静電アクチュエータ部4が構成される。
【0036】
以下、各基板の構成についてさらに詳細に説明する。
ノズル基板1は、例えばシリコン基板から作製されている。インク滴を吐出するためのノズル孔11は、例えば径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち径の小さい噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから構成されている。噴射口部分11aおよび導入口部分11bは基板面に対して垂直にかつ同軸上に設けられており、噴射口部分11aは先端がノズル基板1の表面に開口し、導入口部分11bはノズル基板1の裏面(キャビティ基板2と接合される接合側の面)に開口している。
また、ノズル基板1には、キャビティ基板2の吐出室21とリザーバ23とを連通するオリフィス12とリザーバ23部の圧力変動を補償するためのダイヤフラム部13が形成されている。
【0037】
ノズル孔11を噴射口部分11aとこれよりも径の大きい導入口部分11bとから2段に構成することにより、インク滴の吐出方向をノズル孔11の中心軸方向に揃えることができ、安定したインク吐出特性を発揮させることができる。すなわち、インク滴の飛翔方向のばらつきがなくなり、またインク滴の飛び散りがなく、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。また、ノズル密度を高密度化することが可能である。
【0038】
キャビティ基板2は、例えば面方位が(110)のシリコン基板から作製されている。キャビティ基板2には、インク流路に設けられる吐出室21となる凹部22、およびリザーバ23となる凹部24がエッチングにより形成されている。凹部22は前記ノズル孔11に対応する位置に独立に複数形成される。したがって、図2に示すようにノズル基板1とキャビティ基板2を接合した際、各凹部22は吐出室21を構成し、それぞれノズル孔11に連通しており、またインク供給口である前記オリフィス12ともそれぞれ連通している。そして、吐出室21(凹部22)の底部が上記振動板6となっている。また、この振動板6は、シリコン基板の表面からボロン(B)を拡散させてボロン拡散層を形成し、ウェットエッチングによりエッチングストップしてそのボロン拡散層の厚さで薄く仕上げられている。
【0039】
凹部24は、インク等の液状材料を貯留するためのものであり、各吐出室21に共通のリザーバ(共通インク室)23を構成する。そして、リザーバ23(凹部24)はそれぞれオリフィス12を介して全ての吐出室21に連通している。また、リザーバ23の底部には後述する電極基板3を貫通する孔が設けられ、この孔のインク供給孔33を通じて図示しないインクカートリッジからインクが供給されるようになっている。
【0040】
電極基板3は、例えばガラス基板から作製される。中でも、キャビティ基板2のシリコン基板と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるのが適している。これは、電極基板3とキャビティ基板2を陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板3とキャビティ基板2との間に生じる応力を低減することができ、その結果剥離等の問題を生じることなく電極基板3とキャビティ基板2を強固に接合することができるからである。
【0041】
電極基板3には、キャビティ基板2の各振動板6に対向する表面位置にそれぞれ凹部32が設けられている。凹部32は、エッチングにより所要の深さで形成されている。そして、各凹部32内には、一般に、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極5が、例えば100nmの厚さでスパッタにより形成される。さらに、個別電極5の表面には前記のTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7が、さらにこの絶縁膜7の上にはDLCからなる表面保護膜8がそれぞれ所要の厚さで形成されている。したがって、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップ(空隙)Gは、この凹部32の深さ、個別電極5、絶縁膜7および表面保護膜8の各厚さにより決まることになる。このギャップGはインクジェットヘッドの吐出特性に大きく影響するので、凹部32の深さ、個別電極5の厚さ、絶縁膜7の厚さ、表面保護膜8の厚さを高精度に加工する必要がある。
また、表面保護膜として用いられる化合物は、一般に下地絶縁膜に対し膜応力が非常に大きいため、下地絶縁膜と表面保護膜との界面からの剥離を防止するため、表面保護膜8の膜厚は極力薄く形成することが好ましい。具体的には絶縁膜7の厚さに対し、10%以下の膜厚で形成することが望ましい。
本実施形態では、個別電極5上の絶縁膜7としてTEOS−SiO2膜を120nmの厚さ、表面保護膜8としてDLCを5nmの厚さとし、ギャップGの距離を200nmとしている。また、ITOからなる個別電極5の厚さは100nmとしている。したがって、凹部32は425nmの深さでエッチングされることになる。
【0042】
個別電極5は、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部5aを有する。端子部5aは、図2、図5に示すように、配線のためにこの部分の表面保護膜8および絶縁膜7が除去され、かつ、キャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部34内に露出している。
また、振動板6と個別電極5との間に形成されるギャップGの開放端部はエポキシ等の樹脂による封止材35で封止される。これにより、湿気や塵埃等が電極間ギャップへ侵入するのを防止することができ、インクジェットヘッド10の信頼性を高く保持することができる。
【0043】
上述したように、ノズル基板1、キャビティ基板2、および電極基板3は、図2に示すように貼り合わせることによりインクジェットヘッド10の本体部が作製される。すなわち、キャビティ基板2と電極基板3は陽極接合により接合され、そのキャビティ基板2の上面(図2において上面)にノズル基板1が接着等により接合される。
【0044】
そして最後に、図2、図5に簡略化して示すように、ドライバIC等の駆動制御回路9が各個別電極5の端子部5aとキャビティ基板2上面の共通電極26とに上記フレキシブル配線基板(図示せず)を介して接続される。
以上により、インクジェットヘッド10が完成する。
【0045】
次に、以上のように構成されるインクジェットヘッド10の動作を説明する。
駆動制御回路9により個別電極5とキャビティ基板2の共通電極26の間にパルス電圧を印加すると、振動板6は個別電極5側に引き寄せられて吸着し、吐出室21内に負圧を発生させて、リザーバ23内のインクを吸引し、インクの振動(メニスカス振動)を発生させる。このインクの振動が略最大となった時点で、電圧を解除すると、振動板6は離脱して、インクをノズル11から押出し、インク液滴を吐出する。
【0046】
その際、振動板6は個別電極5上に形成されたTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7とその上に形成されたDLCからなる表面保護膜8を介して個別電極5側に吸着する。すなわち、振動板6は個別電極5側の表面保護膜8と当接および離脱を繰り返すことになる。このとき、表面保護膜8には繰り返し接触によるストレス等が作用するが、表面保護膜8はDLCの硬質膜で形成されており、しかもDLC硬質膜は下地絶縁膜であるTEOS−SiO2膜との密着性が良好で、表面平滑性が高く、低摩擦性を有するため、表面保護膜8に剥離や摩耗等を生じることはない。したがって、個別電極5の絶縁膜7として一般的に使用されるTEOS−SiO2膜であっても、DLC硬質膜で表面を保護されているため、TEOS−SiO2膜への影響が少なく、TEOS−SiO2膜の絶縁性や密着性等の特性を保つことができる。
また、このインクジェットヘッド10は、上記のように構成された静電アクチュエータ部4を備えているので、静電アクチュエータ部4を微小化しても駆動耐久性および駆動の安定性に優れ、高速駆動および高密度化が可能となる。
【0047】
なお、本実施形態1では固定電極(個別電極)側に絶縁膜7とその上に表面保護膜8を形成する構成としたが、逆の構成、すなわち可動電極(振動板)側に絶縁膜7を形成し、その上に表面保護膜8を形成する構成としてもよい。例えば可動電極上の絶縁膜としてTEOS−SiO2膜等を振動板上に構成する場合においては、その絶縁膜上にさらに表面保護膜を形成することが望ましい。この場合、シリコン基板とガラス基板の接合部に表面保護膜が介在すると接合強度が低下するため、接合部のみ部分的に表面保護膜を除去してから接合することが望ましい。
【0048】
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図7は図6のB部の拡大断面図、図8は図6のb−b拡大断面図である。
本実施形態2においては、振動板6側に第2の絶縁膜7aとしてシリコン熱酸化膜を形成し、個別電極5側は実施形態1と同様にTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7とその上にDLCからなる表面保護膜8を形成する静電アクチュエータ部4の構成である。第2の絶縁膜7aであるシリコン熱酸化膜は、キャビティ基板2の電極基板3と接合する側の対向面全面に形成される。
膜厚については、振動板6側のシリコン熱酸化膜からなる第2の絶縁膜7aを50nm、個別電極5側のTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7を60nm、DLCからなる表面保護膜8を5nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であるので、対応部分には同一符号を付して説明は省略する。以下の実施形態3〜11においても対応部分には同一符号を用いるものとする。
【0049】
本実施形態2では、絶縁耐圧、膜特性に優れたシリコン熱酸化膜7aを振動板6側に更に形成したものであるので、高電圧駆動が可能で駆動耐久性および駆動安定性に優れた静電アクチュエータが得られる。
【0050】
実施形態3.
図9は本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図10は図9のC部の拡大断面図、図11は図9のc−c拡大断面図である。
本実施形態3においては、振動板6側に第2の絶縁膜7aとしてシリコン熱酸化膜を形成し、更にその上にDLCからなる表面保護膜8を形成し、個別電極5側にはTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7を形成する静電アクチュエータ部4の構成である。つまり、DLCからなる表面保護膜8を実施形態2における振動板6側のシリコン熱酸化膜の上に形成したものである。なお、DLCからなる第2の表面保護膜8aは陽極接合が困難であるので、キャビティ基板2と電極基板3の接合部36に対応する部分のDLC膜を除去し、下地絶縁膜のシリコン熱酸化膜を露出させ、このシリコン熱酸化膜を介して陽極接合するようになっている。
膜厚については、振動板6側のシリコン熱酸化膜からなる第2の絶縁膜7aを50nm、個別電極5側のTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7を60nm、DLCからなる表面保護膜8を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0051】
本実施形態3では、実施形態2と同様に、絶縁耐圧、膜特性に優れたシリコン熱酸化膜7aを振動板6側に更に形成したものであるので、高電圧駆動が可能で駆動耐久性および駆動安定性に優れた静電アクチュエータが得られる。
振動板側にDLCを設けるメリットとしては、シリコンはガラスに対し、より平滑な膜を、面内に渡り均一な状態で形成することができ、その結果ウエハ内のアクチュエータ特性のばらつきを抑えることができるという点がある。また当接電圧の低電圧化を狙い振動板を薄板化した場合には、振動板側に応力の大きいDLCを設けることで、振動板の離脱に必要な復元力を得やすく、アクチュエータを低電圧駆動できるというメリットもある。
【0052】
実施形態4.
図12は本発明の実施形態4に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図13は図12のD部の拡大断面図、図14は図12のd−d拡大断面図である。
本実施形態4においては、振動板6側も実施形態1の個別電極5側と同様の絶縁構造とする静電アクチュエータ部4の構成である。シリコン熱酸化膜以外の誘電体層で振動板6側に絶縁膜を形成する場合においては、当該絶縁膜上に更に表面保護膜を形成することが望ましい。
本実施形態4では、振動板6側には第2の絶縁膜7aとしてTEOS−SiO2膜を形成し、更にその上にDLCからなる第2の表面保護膜8aを形成している。なお、本実施形態4においてもDLCからなる第2の表面保護膜8aは陽極接合が困難であるので、上記のようにキャビティ基板2と電極基板3の接合部に対応する部分のDLC膜を除去して下地絶縁膜を露出させるか、あるいは図12、図14に示すように当該接合部にのみ、シリコン酸化膜27を設けておき、下地絶縁膜あるいは別途に付加したシリコン酸化膜を介して陽極接合するようになっている。
また、振動板の対向面に形成された表面保護膜が、個別電極の対向面に形成された表面保護膜と同種のDLCであるため、アクチュエータの駆動による接触帯電を伴う、アクチュエータの帯電量増加を最低限に抑えることが可能となり、アクチュエータの駆動耐久性が向上する。
膜厚については、振動板6側のTEOS−SiO2膜からなる第2の絶縁膜7aを50nm、DLCからなる第2の表面保護膜8aを5nm、個別電極5側のTEOS−SiO2膜からなる絶縁膜7を60nm、DLCからなる表面保護膜8を5nmとし、ギャップGの距離は200nmとしている。個別電極5は100nmの厚さである。その他の構成は実施形態1と同様であり、同様の効果がある。
【0053】
次に、このインクジェットヘッド10の製造方法の一例について図15から図17を参照して概要を説明する。図15はインクジェットヘッド10の製造工程の概略の流れを示すフローチャート、図16は電極基板3の製造工程の概要を示す断面図、図17はインクジェットヘッド10の製造工程の概要を示す断面図である。
【0054】
図15において、ステップS1からS5は電極基板3の製造工程を示すものであり、ステップS6はキャビティ基板2の元になるシリコン基板の製造工程を示すものである。
ここでは、主に実施形態1に示したインクジェットヘッド10の製造方法について説明するが、必要に応じて他の実施形態2〜4についても言及する。
【0055】
電極基板3は以下のようにして製造される。
まず、硼珪酸ガラス等からなる板厚約1mmのガラス基板300に、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用してフッ酸によってエッチングすることにより所望の深さの凹部32を形成する。なお、この凹部32は個別電極31の形状より少し大きめの溝状のものであり、個別電極5ごとに複数形成される。
そして、例えば、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を100nmの厚さで形成し、このITO膜をフォトリソグラフィーによりパターニングして個別電極5となる部分以外をエッチング除去して、凹部32の内部に個別電極5を形成する。
その後、ブラスト加工等によってインク供給孔33となる孔部33aを形成する(図15のS1、図16(a))。
【0056】
次に、個別電極5の絶縁膜7として、TEOSを原料ガスとして用いたTEOS−SiO2膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により例えば120nmの厚さでガラス基板300の表面全体に形成する(図15のS2)。ついで、このTEOS−SiO2膜にフォトリソグラフィーによりレジストパターニングする(図15のS3)。そして、TEOS−SiO2膜をドライエッチングして、各個別電極5上にTEOS−SiO2膜を形成する。その後上記レジストを剥離する(図15のS4、図16(b))。
【0057】
次に、図16(c)に示すように、シリコンマスク301を使用して、各個別電極5上のTEOS−SiO2膜上に、表面保護膜8となるDLC膜をプラズマCVD法により例えば厚さ5nmで形成する(図15のS5)。
以上により、電極基板3が作製される。
【0058】
なお、実施形態2と実施形態4の場合は上記と全く同じ方法で電極基板3を作製することができる。実施形態3の場合は上記のように各個別電極5上にTEOS−SiO2膜を形成するだけでよい。
【0059】
キャビティ基板2は上記により作製された電極基板3にシリコン基板200を陽極接合してから作製される。
【0060】
まず、例えば厚さが280μmのシリコン基板200の片面全面に、例えば厚さが0.8μmのボロン拡散層201を形成したシリコン基板200を作製する(図15のS6、図17(a))。
なお、実施形態2の場合は、シリコン基板200を熱酸化して基板全体に所望の厚さの熱酸化膜を形成する。
実施形態3の場合は、更に、シリコン基板200の接合面側の熱酸化膜上にDLC膜をプラズマCVD法により所望の厚さで全面成膜する。その後、電極基板3との接合部36に対応する領域を若干大きめにパターニングして、その領域のDLC膜部分をO2アッシングにより除去し、下地絶縁膜の熱酸化膜を露出させる。
実施形態4の場合は、シリコン基板200の接合面側の表面全面に、TEOS−SiO2膜をプラズマCVD法により所望の厚さで形成後、その上に上記のようにDLC膜を全面成膜し、さらに電極基板3との接合部36に対応する領域を若干大きめにパターニングして、その領域のDLC膜部分をO2アッシングにより除去し、下地絶縁膜のTEOS−SiO2膜を露出させる。
【0061】
次に、以上により作製されたシリコン基板200を上記電極基板3上にアライメントして陽極接合する(図15のS7、図17(b))。
ついで、この接合済みシリコン基板200の表面全面を研磨加工して、厚さを例えば50μm程度に薄くし(図15のS8、図17(c))、さらにこのシリコン基板200の表面全面をウエットエッチングによりライトエッチングして加工痕を除去する(図15のS9)。
【0062】
次に、薄板に加工された接合済みシリコン基板200の表面にフォトリソグラフィーによってレジストパターニングを行い(図15のS10)、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってインク流路溝を形成する(図15のS11)。これによって、吐出室21となる凹部22、リザーバ23となる凹部24および電極取り出し部34となる凹部27が形成される(図17(d))。その際、ボロン拡散層201の表面でエッチングストップがかかるので、振動板6の厚さを高精度に形成することができるとともに、表面荒れを防ぐことができる。
【0063】
次に、ICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングにより、凹部27の底部を除去して電極取り出し部34を開口した後(図17(e))、静電アクチュエータの内部に付着している水分を除去する(図15のS12)。水分除去はこのシリコン基板を例えば真空チャンバ内に入れ、窒素雰囲気にして行う。そして、所要時間経過後、窒素雰囲気下でギャップ開放端部にエポキシ樹脂等の封止材35を塗布して気密に封止する(図15のS13、図17(f))。このように静電アクチュエータ内部(ギャップ内)の付着水分を除去した後、気密封止することによって、静電アクチュエータの駆動耐久性を向上させることができる。
また、マイクロブラスト加工等により凹部24の底部を貫通させてインク供給孔33を形成する。さらに、インク流路溝の腐食を防止するため、このシリコン基板の表面にプラズマCVD法によりTEOS−SiO2膜からなるインク保護膜(図示せず)を形成する。また、シリコン基板上に金属からなる共通電極26を形成する。
【0064】
以上の工程を経て電極基板3に接合されたシリコン基板200からキャビティ基板2が作製される。
その後、このキャビティ基板2の表面上に、予めノズル孔11等が形成されたノズル基板1を接着により接合する(図15のS14、図17(g))。そして最後に、ダイシングにより個々のヘッドチップに切断すれば、上述したインクジェットヘッド10の本体部が完成する(図15のS15)。
【0065】
本実施形態のインクジェットヘッド10の製造方法によれば、キャビティ基板2と電極基板3とは直接接合法により陽極接合されているため、接合強度を高い信頼性で保持することができるとともに、駆動耐久性および吐出性能に優れた静電アクチュエータを備えたインクジェットヘッドを安価に製造することができる。
また、キャビティ基板2を、予め作製された電極基板3に接合した状態のシリコン基板200から作製するものであるので、その電極基板3によりキャビティ基板2を支持した状態となるため、キャビティ基板2を薄板化しても、割れたり欠けたりすることがなく、ハンドリングが容易となる。したがって、キャビティ基板2を単独で製造する場合よりも歩留まりが向上する。
【0066】
次に、実施形態5〜11は、絶縁膜として、前述のいわゆるHigh−k材を用いて静電アクチュエータの発生圧力を向上させる構成を示すものである。
【0067】
実施形態5.
図18は本発明の実施形態5に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図19は図18のE部の拡大断面図、図20は図18のe−e拡大断面図である。
本実施形態5の静電アクチュエータ部4は、個別電極5側及び振動板6側共に絶縁膜7、7aとして、例えばアルミナを使用する構成とするものである。DLCからなる表面保護膜8は個別電極5側のアルミナ膜の上に形成されている。
膜厚については、個別電極5側のアルミナ膜を40nm、振動板6側のアルミナ膜を100nm、表面保護膜8のDLC膜を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0068】
ここで、絶縁膜を有する静電アクチュエータの発生圧力について説明する。
駆動時における振動板6を吸引する静電圧力(発生圧力)Pは、静電エネルギーをE、振動板6の個別電極5に対する任意の位置をx、振動板6の面積をS、印加電圧をV、絶縁膜の厚さをt、真空中の誘電率をε0、絶縁膜の比誘電率をεrとすると、以下の式で表される。
【0069】
【数1】


【0070】
また、振動板6の駆動時における平均圧力Peは、振動板6が駆動していない時の振動板6から個別電極5までの距離(ギャップの距離)をdとして、以下の式で表される。
【0071】
【数2】


【0072】
そして、異なる材料の絶縁膜、例えばアルミナと酸化ハフニウムの2種類の材料よりなる絶縁膜を設けた場合の静電アクチュエータにおける平均圧力Peは、アルミナの膜厚をt1、酸化ハフニウムの膜厚をt2、アルミナの比誘電率をε1、酸化ハフニウムの比誘電率をε2とすると、式(2)から式(3)を導くことができる。また、表面保護膜8のDLCの膜厚をt3、比誘電率をε3とすると、式(3a)となる。
【0073】
【数3】


【0074】
上記の式(2)から、絶縁膜の比誘電率が大きいほど、あるいは絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比(t/ε)が小さいほど、平均圧力Peが高くなることが分かる。従って、酸化シリコンより比誘電率の高いHigh−k材を絶縁膜として適用すれば、静電アクチュエータにおける発生圧力を高くすることができる。
また、絶縁膜としてHigh−k材を適用したインクジェットヘッド10の場合、振動板6の面積を小さくしてもインク滴の吐出に必要なパワーを得ることが可能となる。このため、インクジェットヘッド10において振動板6の幅を小さくして、吐出室21のピッチ、すなわちノズル11のピットを小さくすることにより解像度を上げることができ、より高精細な印刷を高速で行うことのできるインクジェットヘッド10を得ることができる。さらに振動板6の長さを短くすることにより、インク流路における応答性を向上して駆動周波数を上げることができ、より高速の印刷を行うことが可能となる。
また例えば、絶縁膜7、7aの比誘電率を全体として2倍にすれば、絶縁膜7、7aの厚さを2倍にしてもほぼ同じ発生圧力が得られるため、静電アクチュエータにおけるTDDB(Time Depend Dielectric Breakdown、長時間の絶縁破壊強度)、TZDB(Time Zero Dielectric Breakdown、瞬間における絶縁破壊強度)等の耐絶縁破壊強度をほぼ2倍にできることが分かる。
【0075】
表1に、本発明の実施形態1〜11において適用する各種絶縁膜、表面保護膜の特性を示す。表1から、アルミナ(Al23)と酸化ハフニウム(HfO2)は共に比誘電率が酸化シリコン(SiO2)に比べて非常に大きい。従って、絶縁膜として、アルミナや酸化ハフニウム等の高誘電材料を使用すれば、静電アクチュエータの発生圧力を向上させることが可能となる。
【0076】
【表1】


【0077】
また、上記の式(2)、式(3)から、静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータは、絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比(t/ε)、絶縁膜が複数種類の場合は絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比の和(t11+t22)であることから、このパラメータを計算した値を表2に示す。
【0078】
【表2】


表2は、従来例と実施形態5の場合を示すものである。表2中、t、εの各添え字の1はアルミナ、添え字2はDLCを表す。従来例は、絶縁膜として酸化シリコンのみを110nmの厚さで形成したものであり、実施形態5は、上記のように個別電極5側のアルミナ膜が40nm、振動板6側のアルミナ膜が100nmで、アルミナ膜の膜厚は計140nmである。また、表面保護膜8のDLC膜の膜厚は5nmである。なお、実施形態5以下において、比誘電率は、酸化シリコンを3.8、アルミナを7.8、酸化ハフニウムを18.0、DLCを4.0として計算した。
【0079】
本実施形態5の静電アクチュエータは、前述のように、個別電極5側及び振動板6側共に絶縁膜7、7aとして、高誘電材料のアルミナ膜を形成した構成であるため、従来のシリコン酸化膜のみを設けた静電アクチュエータと比較すると、以下のような効果がある。
(1)アクチュエータの発生圧力が向上する。
高誘電材料のアルミナを使用することで、表2のようにt/εの値を小さくできるため、アクチュエータの発生圧力を向上させることができる。
(2)絶縁耐圧を確保できる。
アルミナ膜が十分な厚みで設けられているため、必要な絶縁耐圧を確保することができる。
(3)接合強度を確保できる。
アルミナ膜をシリコン基板の接合面に形成することで、アクチュエータとして最低限必要な接合強度を確保することができる。
(4)駆動耐久性が向上する。
DLC膜を表面保護膜として用いることで駆動耐久性を大幅に向上させることができる。
【0080】
また、DLC膜を形成する場合は、本実施形態5のように、電極基板3を構成するガラス基板上に形成するほうが望ましい。その理由としては以下の2つがあげられる。
(a)DLC膜は接合強度が低いため、キャビティ基板2と電極基板3(ガラス基板)との接合部分のDLC膜を除去する必要がある。DLC膜の除去の際はパターニングが必要であり、ガラス基板側にDLC膜を形成したほうがパターニングが容易で、より確実、簡便に除去できるからである。
(b)DLC膜は膜応力が高いため、薄膜の振動板側にDLC膜を形成すると、振動板が撓み、振動板当接に必要な当接電圧を印加しても、部分的に当接しない場合があるためである。一方、ガラス基板側にDLC膜を形成する場合、絶縁膜、ITO膜の下は厚いガラスであるため、振動板側にDLC膜を形成する場合に比べて、応力の影響を受けにくい。
【0081】
上記(a)についてさらに説明すると、例えば振動板側にDLC膜を形成した場合、接合部分のDLC膜を完全に除去するためには、非常に高精度のパターニングが必要である。仮に接合部の面積より狭い範囲でしかDLC膜を除去できなかった場合、わずかに除去できなかったDLC膜により、アクチュエータの接合強度が部分的に低下する可能性がある。
また、接合部の面積より広い範囲でDLC膜を除去した場合、相手側の個別電極表面に直接接触する絶縁膜露出部分が生じる可能性があり、振動板の応力集中等により局所的に寿命が低下する可能性がある。
一方、ガラス基板側にDLC膜を形成した場合、接合部分のDLC膜を完全に除去するためにはパターニングによる完全除去を行えばよく、しかも個別電極部分は表面より下がった低い位置に設けられているためDLC膜の除去は容易である。そのため、より確実、簡便にアクチュエータの接合強度を確保することができる。
従って、DLC膜を表面保護膜として使用する場合は、DLC膜をガラス基板側に形成することが望ましい。
また、DLC膜は実施形態1以下のそれぞれの図面に示されるように、個々の個別電極5の対向面における絶縁膜7の表面、または/および、個々の振動板6の対向面における第2の絶縁膜7aの表面に、それぞれ個別に形成される。
【0082】
実施形態6.
図21は本発明の実施形態6に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図22は図21のF部の拡大断面図、図23は図21のf−f拡大断面図である。
本実施形態6の静電アクチュエータ部4は、実施形態5と同様の絶縁構造であり、個別電極5側及び振動板6側共に絶縁膜7、7aとして、アルミナを使用するものである。DLCからなる表面保護膜8は振動板6側のアルミナ膜の上に形成されている。
膜厚については、実施形態5と同じであり、個別電極5側のアルミナ膜を40nm、振動板6側のアルミナ膜を100nm、表面保護膜8のDLC膜を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0083】
本実施形態6の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値は上記の表2のとおりである。
従って、本実施形態6は、アクチュエータの発生圧力、絶縁耐圧、接合強度、及び駆動耐久性について、実施形態5と同じ効果が得られる。
振動板側にDLCを設けるメリットとしては、シリコンはガラスに対し、より平滑な膜を、面内に渡り均一な状態で形成することができ、その結果ウエハ内のアクチュエータ特性のばらつきを抑えることができるという点がある。また当接電圧の低電圧化を狙い振動板を薄板化した場合には、振動板側に応力の大きいDLCを設けることで、振動板の離脱に必要な復元力を得やすく、アクチュエータを低電圧駆動できるというメリットもある。
【0084】
実施形態7.
図24は本発明の実施形態7に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図25は図24のH部の拡大断面図、図26は図24のh−h拡大断面図である。
本実施形態7の静電アクチュエータ部4は、振動板6側の第2の絶縁膜7aとして、シリコンの熱酸化膜(SiO2膜)を形成するものである。個別電極5側の絶縁膜7は実施形態5と同様にアルミナ膜を形成し、更にその上にDLCからなる表面保護膜8を形成する。
膜厚については、個別電極5側のアルミナ膜を40nm、振動板6側のシリコン熱酸化膜を80nm、表面保護膜のDLC膜を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0085】
本実施形態7の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値を表3に示す。表3中、t、εの各添え字の1は酸化シリコン、添え字2はアルミナ、添え字3はDLCを表す。従来例は表2と同じである。
【0086】
【表3】


【0087】
本実施形態7の静電アクチュエータは、個別電極5側の絶縁膜7がアルミナ膜で形成されているので、実施形態5と同様にアクチュエータの発生圧力を向上させることができる。
絶縁耐圧については、絶縁耐圧に優れたシリコン熱酸化膜が十分な厚みで設けられているため、必要な絶縁耐圧を確保することが可能である。
接合強度については、酸化シリコンどうしの接合となるため、従来の静電アクチュエータと同等の接合強度を確保することができる。
駆動耐久性については、表面保護膜としてDLCを用いているため実施形態5と同様に駆動耐久性を大幅に向上させることできる。
【0088】
実施形態8.
図27は本発明の実施形態8に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図28は図27のI部の拡大断面図、図29は図27のi−i拡大断面図である。
本実施形態8の静電アクチュエータ部4は、実施形態7と同様の絶縁構造であり、振動板6側の第2の絶縁膜7aをシリコン熱酸化膜(SiO2膜)で形成し、個別電極5側の絶縁膜7をアルミナ膜で形成するものである。DLCからなる表面保護膜8は振動板6側のシリコン熱酸化膜の上に形成されている。
膜厚については、実施形態7と同じであり、個別電極5側のアルミナ膜を40nm、振動板6側のシリコン熱酸化膜を80nm、表面保護膜のDLC膜を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0089】
本実施形態8の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値は上記の表3のとおりである。
従って、本実施形態8は、アクチュエータの発生圧力、絶縁耐圧、接合強度、及び駆動耐久性について、実施形態7と同じ効果が得られる。
振動板側にDLCを設けるメリットとしては、シリコンはガラスに対し、より平滑な膜を、面内に渡り均一な状態で形成することができ、その結果ウエハ内のアクチュエータ特性のばらつきを抑えることができるという点がある。また当接電圧の低電圧化を狙い振動板を薄板化した場合には、振動板側に応力の大きいDLCを設けることで、振動板の離脱に必要な復元力を得やすく、アクチュエータを低電圧駆動できるというメリットもある。
【0090】
実施形態9.
図30は本発明の実施形態9に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図31は図30のJ部の拡大断面図、図32は図30のj−j拡大断面図である。
本実施形態9の静電アクチュエータ部4は、個別電極5側の絶縁膜7として、酸化ハフニウムを使用し、振動板6側の第2の絶縁膜7aとして、アルミナを使用するものである。DLCからなる表面保護膜8は個別電極5側の酸化ハフニウム膜上に形成されている。
膜厚については、個別電極5側の酸化ハフニウム膜を40nm、振動板6側のアルミナ膜を100nm、表面保護膜のDLC膜を5nmとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0091】
本実施形態9の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値を表4に示す。表4中、t、εの各添え字の1はアルミナ、添え字2は酸化ハフニウム、添え字3はDLCを表す。従来例は表2と同じである。
【0092】
【表4】


【0093】
本実施形態9の静電アクチュエータは、個別電極5側の絶縁膜7が酸化ハフニウム膜で形成され、振動板6側の第2の絶縁膜7aがアルミナ膜で形成されているので、表4に示すようにt/εの値を非常に小さくできるため、アクチュエータの発生圧力をより一層向上させることができる。
絶縁耐圧については、絶縁耐圧が比較的よいアルミナ膜が十分な厚みで設けられているため、必要な絶縁耐圧を確保することが可能である。
接合強度については、接合部がアルミナ膜であるため、アクチュエータとして最低限必要な接合強度を確保できる。
駆動耐久性については、表面保護膜としてDLCを用いているため実施形態5と同様に駆動耐久性を大幅に向上させることができる。
【0094】
実施形態10.
図33は本発明の実施形態10に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図34は図33のK部の拡大断面図、図35は図33のk−k拡大断面図である。
本実施形態10の静電アクチュエータ部4は、個別電極5側の絶縁膜7として、酸化ハフニウム膜を使用し、振動板6側の第2の絶縁膜7aとして、シリコン熱酸化膜を使用するものである。DLCからなる表面保護膜8、8aは個別電極5側及び振動板6側の両方の絶縁膜上に形成されている。
膜厚については、個別電極5側の酸化ハフニウム膜を40nm、振動板6側のシリコン熱酸化膜を90nm、表面保護膜のDLC膜を5nmずつとしている、ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0095】
本実施形態10の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値を表5に示す。表5中、t、εの各添え字の1は酸化シリコン、添え字2は酸化ハフニウム、添え字3はDLCを表す。従来例は表2と同じである。
【0096】
【表5】


【0097】
本実施形態10の静電アクチュエータの場合、とくにDLCからなる表面保護膜8、8aが両方の絶縁膜7、7a上に形成されているので、接触帯電の現象がほとんど問題なく軽減される結果、駆動耐久性が著しく向上する効果がある。
アクチュエータの発生圧力、絶縁耐圧及び接合強度については、実施形態7と同様の効果がある。
【0098】
実施形態11.
図36は本発明の実施形態11に係るインクジェットヘッド10の概略断面図、図37は図36のM部の拡大断面図、図38は図36のm−m拡大断面図である。
本実施形態11の静電アクチュエータ部4は、個別電極5側の絶縁膜7として、酸化ハフニウム膜を使用し、振動板6側の第2の絶縁膜7aとして、アルミナ膜を使用するものである。つまり、本実施形態11では、実施形態9の絶縁構造に、DLCからなる表面保護膜8、8aを個別電極5側及び振動板6側の両方の絶縁膜上に形成する構成とするものである。
振動板の対向面に形成された表面保護膜が、個別電極の対向面に形成された表面保護膜と同種のDLCであるため、アクチュエータの駆動による接触帯電を伴う、アクチュエータの帯電量増加を最低限に抑えることが可能となり、アクチュエータの駆動耐久性が向上する。
膜厚については、個別電極5側の酸化ハフニウム膜を40nm、振動板6側のアルミナ膜を120nm、表面保護膜のDLC膜を5nmずつとしている。ギャップGの距離は200nmで、個別電極5は100nmの厚さである。
【0099】
本実施形態11の静電アクチュエータの発生圧力の向上に関係するパラメータ(絶縁膜の厚さに対する比誘電率の比)を計算した値を表6に示す。表6中、t、εの各添え字の1はアルミナ、添え字2は酸化ハフニウム、添え字3はDLCを表す。従来例は表2と同じである。
【0100】
【表6】


【0101】
本実施形態11の静電アクチュエータの場合も、DLCからなる表面保護膜8、8aが両方の絶縁膜7、7a上に形成されているので、駆動耐久性が特に大幅に向上する。
アクチュエータの発生圧力、絶縁耐圧及び接合強度については、実施形態9と同様の効果がある。
【0102】
以上の実施形態5〜11では、個別電極5側及び振動板6側の少なくとも一方が、High−k材からなる絶縁膜とその上にDLCからなる表面保護膜を設けた構成であるので、アクチュエータの発生圧力を低下させずに、駆動耐久性を向上させることができるので、実施形態1〜4に示したシリコン酸化膜とDLCを組み合わせた構成よりも更によい性能を発揮できる。
【0103】
次に、上記の実施形態5における電極基板3の別の製造方法を図39に示す。実施形態5〜11におけるインクジェットヘッド10の製造方法は基本的に図17と同じであるので、図17を用いて概要を説明する。
図39において、(a)の個別電極5の製造工程は図16(a)とほぼ同じである。そして、図39(b)に示すように、個別電極5側の絶縁膜7として、ガラス基板300の接合面側の表面全体に、ECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法により、アルミナ膜を所望の厚みで形成する。ついで、このアルミナ膜の上に、トルエンガスを原料ガスに用いた平行平板型RF−CVD法により、所望の厚みのDLC膜を全面成膜する。
【0104】
次に、図39(c)に示すように、ガラス基板300の接合部36及び個別電極5の端子部5aに対応する部分のみをパターニングして、その部分のDLC膜をO2アッシングにより除去する。DLC膜除去後、更にその部分のアルミナ膜をCHF3によるRIE(Reactive Ion Etching)ドライエッチングにより除去する。その後、ブラスト加工等によってインク供給孔33となる孔部33aを形成する。
以上により、実施形態5の電極基板3を作製することができる。
【0105】
なお、実施形態7の場合は上記と同じ方法でよく、実施形態6及び実施形態8の場合は個別電極5側にアルミナ膜を形成するだけでよい。また、実施形態9〜11の場合は上記同じ方法により個別電極5側に酸化ハフニウム膜を形成し、更にその上に表面保護膜としてDLC膜を形成する。
以上により、実施形態6〜11の電極基板3を作製することができる。
【0106】
キャビティ基板2の製造においては、実施形態5及び実施形態9の場合、図14(a)に示したシリコン基板200のボロン拡散層201の下面にECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法により、アルミナ膜を全面成膜すればよい。
実施形態6及び実施形態11の場合は、ボロン拡散層201の下面にアルミナ膜を全面成膜後、その上にDLC膜を全面成膜し、更に接合部36に対応する領域を若干大きめにパターニングして、その領域のDLC膜部分をO2アッシングにより除去する。
実施形態7の場合は、ボロン拡散層201を形成後、シリコン基板200全体を熱酸化すればよい。
実施形態8及び実施形態10の場合は、上記によりシリコン基板200を熱酸化後、接合面側のシリコン熱酸化膜の上にDLC膜を全面成膜し、更に接合部36に対応する領域を若干大きめにパターニングして、その領域のDLC膜部分をO2アッシングにより除去する。
その後は、図14(b)〜(g)に示した工程を経て各実施形態5〜11のインクジェットヘッド10の本体部を製造することができる。
【0107】
以上の実施形態では、静電アクチュエータおよびインクジェットヘッド、ならびにこれらの製造方法について述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものでなく、本発明の思想の範囲内で種々変更することができる。例えば、本発明の静電アクチュエータは、光スイッチやミラーデバイス、マイクロポンプ、レーザプリンタのレーザ操作ミラーの駆動部などにも利用することができる。また、ノズル孔より吐出される液状材料を変更することにより、インクジェットプリンタのほか、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、遺伝子検査等に用いられる生体分子溶液のマイクロアレイの製造など様々な用途の液滴吐出装置として利用することができる。
【0108】
例えば、図40は本発明のインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの概要を示すものである。
このインクジェットプリンタ500は、記録紙501を副走査方向Yに向けて搬送するプラテン502と、このプラテン502にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10を主走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ503と、インクジェットヘッド10の各インクノズルにインクを供給するインクタンク504とを有している。
したがって、高解像度、高速駆動のインクジェットプリンタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図。
【図2】組立状態における図1の略右半分の概略構成を示すインクジェットヘッドの断面図。
【図3】図2のA部の拡大断面。
【図4】図2のa−a拡大断面図。
【図5】図2のインクジェットヘッドの上面図。
【図6】本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図7】図6のB部の拡大断面図。
【図8】図6のb−b拡大断面図。
【図9】本発明の実施形態3に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図10】図9のC部の拡大断面図。
【図11】図9のc−c拡大断面図。
【図12】本発明の実施形態4に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図13】図12のD部の拡大断面図。
【図14】図12のd−d拡大断面図。
【図15】インクジェットヘッドの製造工程の概略の流れを示すフローチャート。
【図16】電極基板の製造工程の概要を示す断面図。
【図17】インクジェットヘッドの製造工程の概要を示す断面図。
【図18】本発明の実施形態5に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図19】図18のE部の拡大断面図。
【図20】図18のe−e拡大断面図。
【図21】本発明の実施形態6に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図22】図21のF部の拡大断面図。
【図23】図21のf−f拡大断面図。
【図24】本発明の実施形態7に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図25】図24のH部の拡大断面図。
【図26】図24のh−h拡大断面図。
【図27】本発明の実施形態8に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図28】図27のI部の拡大断面図。
【図29】図27のi−i拡大断面図。
【図30】本発明の実施形態9に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図31】図30のJ部の拡大断面図。
【図32】図30のj−j拡大断面図。
【図33】本発明の実施形態10に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図34】図33のK部の拡大断面図。
【図35】図33のk−k拡大断面図。
【図36】本発明の実施形態11に係るインクジェットヘッドの概略断面図。
【図37】図36のM部の拡大断面図。
【図38】図36のm−m拡大断面図。
【図39】電極基板の別の製造工程の概要を示す断面図。
【図40】本発明のインクジェットヘッドを適用したインクジェットプリンタの一例を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0110】
1 ノズル基板、2 キャビティ基板、3 電極基板、4 静電アクチュエータ部、5 個別電極(固定電極)、6 振動板(可動電極)、7 絶縁膜、7a 第2の絶縁膜、8 表面保護膜、8a 第2の表面保護膜、9 駆動制御回路(駆動手段)、10 インクジェットヘッド、11 ノズル孔、12 オリフィス、13 ダイヤフラム部、21 吐出室、23 リザーバ、26 共通電極、27 シリコン酸化膜、32 凹部、33 インク供給孔、34 電極取り出し部、35 封止材、36 接合部、200 シリコン基板、300 ガラス基板、500 インクジェットプリンタ。
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成18年11月29日(2006.11.29)
【代理人】 【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫

【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清

【識別番号】100061273
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 宗治

【識別番号】100070563
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 昇

【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫


【公開番号】 特開2008−18706(P2008−18706A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−322145(P2006−322145)