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【発明の名称】 インクジェットプリンタ及び画像形成方法
【発明者】 【氏名】真角 智

【氏名】近藤 愛

【要約】 【課題】カチオン重合性化合物を含有する活性光線硬化性インクジェットインクを用いるインクジェットプリンタにおいて、装置内での析出物の発生を抑制し、安定した画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及び画像形成方法を提供する。

【構成】カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、インクを貯留するインクタンク101及びインクタンクからインクを出射するノズルNまでのインク供給路102を構成する接インク部材を、インクと実質的に電子の授受を行わない構成とするインクジェットプリンタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンク及び該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路を構成する接インク部材が、該インクと実質的に電子の授受を行わない構成であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記接インク部材の全てが、絶縁性材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記接インク部材の少なくとも一部が、単一の導電性材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記接インク部材が、複数の導電性材料で構成され、かつ該複数の導電性材料同士が実質的に絶縁状態であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記接インク部材を構成する材料が、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンクまたは該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路にフィルタを備え、該フィルタ及びフィルタ隣接部が、該インクと実質的に電子の授受を行わない材料で構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、絶縁性材料で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、単一の導電性材料から構成されていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、複数の導電性材料で構成され、かつ該複数の導電性材料同士が実質的に絶縁状態であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記フィルタ及びフィルタ隣接部を構成する材料が、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記カチオン重合性組成物を含有するインクが、光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記カチオン重合性組成物を含有するインクの含水率が、0.5質量%以上、3.0質量%以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタを用いて、カチオン重合性組成物を含有するインクを記録媒体上に出射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン重合性組成物を含有するインクを用いた新規の構成からなるインクジェットプリンタと画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、簡便で、かつ安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷等、様々な印刷分野に応用されてきている。一般には、水を主溶媒とした水系のインクジェットインクをインク吸収性を備えた専用紙に記録するが、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後に紫外線(UV光)等の活性エネルギー線(放射線)の照射により架橋させる活性光線硬化型インクジェット方式など水系以外のインクジェットも実用化されている。
【0003】
中でも、紫外線硬化型インクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べて比較的低臭気であり、即乾性で、インク吸収能のない記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつあり、様々な活性光線硬化型インクジェットの技術が開示されている。
【0004】
活性光線硬化型インクジェット用インクは、(メタ)アクリレートに代表されるラジカル系重合性化合物を用いるものが実用化されているが、最近では、記録媒体に対する密着性、低臭気、酸素による重合阻害が少ない等の理由で、カチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェット用インク及びそれを用いたインクジェットプリンタの提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
一方、インクジェットプリンタにおいて、インクタンクやインクタンクとインクジェット記録ヘッド間のインク供給路を構成する材料は、耐久性や加工の簡便性という観点からステンレス、アルミニウムなどの金属を用いることが多い。特に、インク中の異物等を取り除き、目詰まりを防止する目的で、インク供給路にフィルタを設置され、これらのフィルタを構成する部材としても、金属を用いることが多い。
【0006】
上記の様な金属材料から構成されるインクジェットプリンタにより、カチオン重合性化合物を含有する活性光線硬化性インクジェットインクを用いて画像形成する場合、インクジェットプリンタの使用環境やインク供給路の構成材料により、インク中に析出物が発生し、この析出物がインク供給路を詰まらせたり、ノズル部に到達して出射不良を引き起こすことが判明した。一般に、活性光線硬化性インクジェットの析出は、活性光線の漏れ光が原因であることがあり、それに関する対策はこれまでになされているが、電子の授受による析出物の発生に関しては、これまでに記載されたものはなく、更に電子の授受が使用する接インク部材の素材、構成により制御できることはこれまで全く記載されたものはない。
【特許文献1】特開2005−290246号公報
【特許文献2】特開2004−34543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、カチオン重合性化合物を含有する活性光線硬化性インクジェットインクを用いるインクジェットプリンタにおいて、装置内での析出物の発生を抑制し、安定した画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンク及び該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路を構成する接インク部材が、該インクと実質的に電子の授受を行わない構成であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0010】
2.前記接インク部材の全てが、絶縁性材料で構成されていることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンタ。
【0011】
3.前記接インク部材の少なくとも一部が、単一の導電性材料で構成されていることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンタ。
【0012】
4.前記接インク部材が、複数の導電性材料で構成され、かつ該複数の導電性材料同士が実質的に絶縁状態であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンタ。
【0013】
5.前記接インク部材を構成する材料が、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンタ。
【0014】
6.カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンクまたは該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路にフィルタを備え、該フィルタ及びフィルタ隣接部が、該インクと実質的に電子の授受を行わない材料で構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0015】
7.前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、絶縁性材料で構成されていることを特徴とする前記6に記載のインクジェットプリンタ。
【0016】
8.前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、単一の導電性材料から構成されていることを特徴とする前記6に記載のインクジェットプリンタ。
【0017】
9.前記フィルタ及びフィルタ隣接部が、複数の導電性材料で構成され、かつ該複数の導電性材料同士が実質的に絶縁状態であることを特徴とする前記6に記載のインクジェットプリンタ。
【0018】
10.前記フィルタ及びフィルタ隣接部を構成する材料が、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素であることを特徴とする前記6に記載のインクジェットプリンタ。
【0019】
11.前記カチオン重合性組成物を含有するインクが、光酸発生剤を含有することを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0020】
12.前記カチオン重合性組成物を含有するインクの含水率が、0.5質量%以上、3.0質量%以下であることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0021】
13.前記1〜12のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタを用いて、カチオン重合性組成物を含有するインクを記録媒体上に出射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、カチオン重合性化合物を含有する活性光線硬化性インクジェットインクを用いるインクジェットプリンタにおいて、装置内での析出物の発生を抑制し、安定した画像記録を行うことができるインクジェットプリンタ及び画像形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、1)カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンク及び該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路を構成する接インク部材が、該インクと実質的に電子の授受を行わない構成であることを特徴とするインクジェットプリンタ、または2)カチオン重合性組成物を含有するインクを、記録媒体上に出射するインクジェットプリンタにおいて、該インクを貯留するインクタンクまたは該インクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路にフィルタを備え、該フィルタ及びフィルタ隣接部が、該インクと実質的に電子の授受を行わないように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタにより、装置内での析出物の発生を抑制し、安定した画像記録を行うことができるインクジェットプリンタを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
すなわち、カチオン重合性組成物を含有するインクは、通常、同時に存在する光酸発生剤が、活性エネルギー線の照射を受けることにより酸を発生し、その酸によりカチオン重合性モノマーの重合が開始される。
【0026】
しかし、このカチオン重合性組成物を含有するインクは、インクタンクやインク流路で長期間にわたり停滞された際、接インク部から電子の供給を受けると、活性エネルギー線の照射なしに、その電子の授受によってインク中に酸が発生し、それにより重合が開始するため、不正な重合組成物が発生することを、初めて突き止めた。
【0027】
上記不正な重合物の発生を防止する手段について鋭意検討を進めた結果、インクジェットプリンタの接インク部材を、インクと実質的に電子の授受を行わないように構成することにより、解決できることを見出したものである。
【0028】
以下、本発明の各構成要素の詳細について説明する。
【0029】
〔インクジェットプリンタ〕
本発明のインクジェットプリンタは、主には、カチオン重合性組成物を含有するインクを貯留するインクタンク、該インクタンクから記録ヘッドにインクを送液するためのインク供給路、該インク供給路より供給されたインクを、記録媒体上に出射する記録ヘッド、及び記録媒体上に着弾したインク液滴を硬化させるための活性光線照射光源より構成され、また、インクタンクと記録ヘッドのインク供給路には、フィルタあるいは中間タンクが設けられている。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係るフィルタ及び中間タンクを備えたインクジェットプリンタの全体構成を示す図である。
【0031】
1はカチオン重合性組成物を含有するインクを貯留して供給するインクタンク1であり、図1では、一例として、イエローインクタンク1Y、マゼンタインクタンク1M、シアンインクタンク1C及び黒インクタンク1Kからなる構成を示している。Jはインクタンク1とインク供給路とを接続するジョイントである。
【0032】
2は、記録媒体上にインク液滴を吐出して画像を形成するノズルを有する記録ヘッドであり、イエロー記録ヘッド2Y、マゼンタ記録ヘッド2M、シアン記録ヘッド2C及び黒記録ヘッド2Kで構成される。3は、活性エネルギー線である紫外線を記録媒体上に着弾したインクに照射する活性エネルギー線源である。
【0033】
4はキャリッジであり、キャリッジ4は記録ヘッド2及びエネルギー線源3を一体に搭載しており、キャリッジガイド5により案内されて矢印WX1、WX2で示すように往復移動して、記録媒体Pを走査し、記録媒体Pに画像を形成する。
【0034】
6はフィルタボックスであり、イエロー用フィルタボックス6Y、マゼンタ用フィルタボックス6M、シアン用フィルタボックス6C及び黒用フィルタボックス6Kで構成される。7は中間タンクであり、イエロー用中間タンク7Y、マゼンタ用中間タンク7M、シアン用中間タンク7C及び黒用中間タンク7Kで構成される。
【0035】
記録用インクはインクタンク1から中間タンク7に送られ、中間タンク7からインク供給路8を経て記録ヘッド2に供給される。インク供給路8はイエローインク用、マゼンタインク用、シアンインク用及び黒インク用の供給路で構成されており、各単色インクはそれぞれ独立して、インクタンク1からインク供給路8を経て記録ヘッド2に供給される。
【0036】
10は記録ヘッド2の回復処理を行うメンテナンスユニットであり、記録ヘッド2をキャッピングする吸引キャップ9を有する。12は廃インクを収容する廃インク容器であり、フラッシングにおいて、記録ヘッド2から強制吐出されたインクを受け、収容する。
【0037】
図2は、本発明のインクジェットプリンタのインク供給路構成の一例を示す概略構成図である。
【0038】
図2のa)においては、インクタンク101は、ジョイントJ1を介してインク供給路102に接続され、更にこのインク供給路102の端部は、ジョイントJ2を介してキャリッジ103に収納されている記録ヘッド104に接続されている。画像形成情報に従って記録ヘッド104のノズルNより記録媒体上に、インク液滴が吐出され、ついで、瞬時に活性エネルギー線源Lより、着弾したインクに活性エネルギー線を照射して、インクを硬化させる。
【0039】
図2のb)は、インク供給路102の途中に、フィルターを内蔵した中間タンクユニット105を設けた一例である。インクタンク101の排出口とインク供給路102とをジョイントJ1で接続し、ジョイントJ3を介して中間ユニットタンク105に接続されている。インクはジョイントJ3部より中間タンク前室106に送液された後、フィルタ107により異物等を除いて中間タンク108に送液される。次いで、中間タンク108とインク供給路102がジョイントJ4を介して接続されており、中間タンク108に貯留された濾過済のインクを記録ヘッド104に供給するインク供給ラインである。なお、図2のb)に示す109は、フィルタ107に隣接するフィルタ隣接部である。
【0040】
図2のc)は、図2のb)における中間タンクユニット105に代えて、フィルタボックス110を設けた例である。インクの入側をジョイントJ5を介し、またインクの出側をジョイントJ6を介して、それぞれインク供給路102と接続されているフィルタボックス110中には、フィルタ107が設けられており、インク中の異物等を除いた後、インクを記録ヘッド104に供給するインク供給ラインである。なお、図2のc)に示す111は、フィルタ107に隣接するフィルタ隣接部である。
【0041】
上記説明した図2においては、便宜上、マゼンタ用の記録ヘッドへインクを供給するラインのみを示してあるが、図1に記載のように、同様の供給ラインが、イエロー用記録ヘッド、シアン用記録ヘッド、黒用記録ヘッドにも設けられている。また、図2には、説明に必要な構成のみを示しており、図2に記載はしていないが、例えば、インクの送液を制御する電磁弁、分岐ジョイント、送液ポンプの他、記録ヘッドの制御部等が設けられる。
【0042】
本発明のインクジェットは、例えば、図1あるいは図2に示すインクジェットプリンタあるいはインクインク供給ラインにおいて、1)インクを貯留するインクタンク及びインクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路を構成する接インク部材が、インクと実質的に電子の授受を行わない材料であること、あるいは2)インクを貯留するインクタンクまたはインクタンクからインクを出射するノズルまでのインク供給路中にフィルタを備え、該フィルタ及びフィルタ隣接部が、インクと実質的に電子の授受を行わない材料で構成されていることを特徴とする。
【0043】
本発明において、接インク部とは、インクタンク、インク供給路、中間タンクユニット、フィルタボックス等と、それらを接続するジョイント群で、本発明に係るカチオン重合性組成物を含有するインクと直接的に接する部分であり、例えば、図2のa)に示すインク供給ラインでは、インクタンク101の内部、インク供給路102の内部、ジョイントJ1、J2及び記録ヘッド内部104である。また、図2のb)に示すインク供給ラインでは、インクタンク101の内部、インク供給路102の内部、ジョイントJ1〜J4、中間タンクユニット105のフィルタ107とフィルタ隣接部109及び記録ヘッド内部104である。また、図2のc)に示すインク供給ラインでは、インクタンク101の内部、インク供給路102の内部、ジョイントJ1、J2、J5、J6、フィルタボックス110内のフィルタ107とフィルタ隣接部111及び記録ヘッド内部104である。
【0044】
本発明においては、これらの接インク部を構成する部材が、インクと実質的に電子の授受を行わない材料であることを特徴とする。本発明でいうインクとの実質的な電子の授受とは、インクを構成するいずれかの成分を酸化あるいは還元することであり、この様な特性を持つ材料を、接インク部に使用すると、例えば、インクと電子の授受を有する部材とが長期間にわたり接触した場合、両者間での電子の授受により、析出物が発生し、その結果、析出物が記録ヘッドまで到達することにより、ノズル詰まり、ノズル欠あるいは斜め出射という不良を招く結果となる。
【0045】
従って、本発明のインクジェットプリンタにおいては、接インク部をインクとの実質的な電子の授受を起こさない部材で構成することを特徴とし、更には、下記に記載の構成から選ばれる少なくとも1つ、あるいはそれらを組み合わせることにより、接インク部における電位差の発生を防止することで、インクとの実質的な電子の授受を防止することにより、析出物の発生を抑制することができる。
【0046】
1)接インク部材の全てを、絶縁性材料で構成すること、 2)接インク部材の少なくとも一部を、単一の導電性材料で構成すること、 3)接インク部材を複数の導電性材料で構成し、複数の導電性材料同士が実質的に絶縁状態にすること、 4)接インク部材を構成する材料を、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素とすること、特に、フィルタ及びフィルタ隣接部を構成する材料として、 5)フィルタ及びフィルタ隣接部を、絶縁性材料で構成すること、 6)フィルタ及びフィルタ隣接部を、単一の導電性材料で構成すること、 7)フィルタ及びフィルタ隣接部を複数の導電性材料で構成し、複数の導電性材料同士を実質的に絶縁状態とすること、 8)フィルタ及びフィルタ隣接部を構成する材料を、イオン化傾向が水素元素以下の金属元素とすること、また、中間タンクを構成する材料とすること等の方法が挙げられる。
【0047】
以下、上記インクとの実質的な電子の授受を起こさない部材について、更に説明する。
【0048】
本発明でいう上記1)項及び5)項に係る絶縁性材料は、表面抵抗率が1×108Ω□cm以上である材料であり、更に好ましくは表面抵抗率が1×1010Ω□cm以上の材料である。絶縁性材料の表面抵抗率測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6911に準拠した方法に基づき測定することができる。また、本発明に係る絶縁性材料は、上記で規定する表面抵抗率を備えた単一材料で構成されたものであっても、あるいは導電性材料、例えば、金属材料を基材として用い、インクと接する部分を上記絶縁性材料で被覆して絶縁性を付与した形態であっても良い。
【0049】
本発明に係る絶縁性材料としては、例えば、ゴム、プラスチック材料、繊維、セラミック等を挙げることができ、柔軟性が要求されるインク供給路等には、例えば、二トリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロゴム(FFKM)、ミラブル型シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(VQM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ブチルゴム(IIR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、エピクロロヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等を用いることができる。
【0050】
また、インクタンク、中間タンク、フィルタボックス、ジョイント等には、例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、TFE(テトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシレジン;テトラフルオロエチレン−パールルオリネイティドアルキルビニルエーテルコポリマー)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)、FFKM、FEPM、PI(ポリイミド)等を適宜選択して用いることができる。
【0051】
また、上記絶縁性材料を被覆する金属基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、鉛、銀、金及びそれら金属同士或いは別の金属を用いた合金を用いることができる。
【0052】
本発明でいう上記2)、3)項及び6)、7)項に係る導電性材料としては、一般に構造物の形成も適用されている金属材料を用いることができ、具体的には、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、鉛、銀、金及びそれら金属同士或いは別の金属を用いた合金を用いることができ、その中でも、特に、ステンレスやアルミニウムは加工性取り扱い性、コストの点で望ましい。この様に単一の導電性材料を用いて接インク部材あるいはフィルタ及びフィルタ隣接部を構成することにより、インクとの実質的に電子の授受を防止することができる。
【0053】
また、接インク部材あるいはフィルタ及びフィルタ隣接部を、複数の異なる導電性材料で構成する場合には、複数の導電性材料同士を実質的に絶縁状態とすること、例えば、異なる導電性材料間に、上記絶縁材料を設けて両導電性材料間を絶縁状態とすることにより、インクとの実質的な電子の授受を防止することができる。
【0054】
接インク部に導電性材料を適用するインクジェットプリンタの構成部位としては、インクタンク、ジョイント部、インク供給路分岐部、インクポンプ、中間タンク、フィルタ、弁、その他流路等があるが、その中でも、特に、インクとの接触面積が大きいフィルタ部や、インクの滞留時間が長いインクタンク内、インクタンク近傍、とりわけ、記録ヘッドの近傍に配置される中間タンクに上記の構成を採ることが重要となってくる。
【0055】
本発明のインクジェットプリンタの記録ヘッドに設けるノズルは内径が100μm以下という微小な孔であり、インク中の微細な異物を確実に取り除くことが、安定な出射を行う上では重要な要件となってくる。従って、本発明に適用するフィルタとしては、上記のような微細な異物を除くことができる構成とすることが好ましく、例えば、スクリーンメッシュと呼ばれるステンレス等の合金からなる金網の単層体、ステンレス等の合金からなる金網を積層し、各層を焼結した焼結金属フィルタ、ステンレス鋼の微細繊維を複雑に編み込んだ金網にて繊維間の接点を焼結した焼結金属ファイバフィルタ、金属粉末を焼結した焼結金属フィルタ等が挙げられ、これらの中でも、特に、ボックス状の焼結金属ファイバフィルタを使用することが好ましい。
【0056】
また、本発明でいう上記4)項及び8)項に係るイオン化傾向が水素元素以下の金属元素とは、銅、水銀、銀、白金、金を挙げることができ、接インク部材としてこれらのイオン化傾向が水素元素以下の金属元素を用いることにより、インクとの実質的に電子の授受を防止することができる。
【0057】
〔カチオン重合性化合物を含有するインク〕
次いで、本発明のインクジェットプリンタに適用するインクについて説明する。
【0058】
本発明に係るインクでは、放射線硬化性化合物として、カチオン重合性化合物を含有することを特徴とする。
【0059】
本発明においては、カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーを用いることができ、その中でも、オキシラン基を有する化合物、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0060】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0061】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0062】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0063】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0064】
ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0065】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0066】
本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0067】
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0068】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0069】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0070】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、オキシラン基を有する化合物を5〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することが好ましい。
【0071】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号に記載されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0072】
本発明で用いることのできるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0073】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明に係るカチオン重合性化合物を含有するインクにおいては、重合開始剤として、光酸発生剤を含有することが好ましい。本発明で用いることのできる光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメ−ジング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0075】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。
【0076】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0077】
【化1】


【0078】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0079】
【化2】


【0080】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0081】
【化3】


【0082】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0083】
【化4】


【0084】
上記光酸発生剤(光カチオン重合開始剤)は、カチオン重合性モノマー100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させても、更なる硬化性向上効果を期待することができない。これら光カチオン重合開始剤は、1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0085】
本発明に係るインクでは色材を含有することが好ましく、色材としては顔料であることが好ましい。
【0086】
本発明に係るインクに用いられる顔料としては、酸性及びまたは塩基性に表面処理された有機顔料が好ましく用いられ、分散剤のインク中における含有量が顔料質量の35〜65%であることが好ましい。本発明のインクにおいては、分散剤の含有量が35%未満であると、分散剤が十分に顔料表面全体に吸着できず分散安定性が不十分な場合があり、65%を超えると、顔料表面に吸着されない分散剤がインク中に遊離して、重合阻害を起こし問題となる場合がある。顔料のアミン価は酸価よりも大きいことが好ましく、その差が1mg/gKOH以上10mg/g未満であることが更に好ましい。1mg/gKOH未満であればその効果がなく、10mg/g以上の場合は塩基性処理を過度に行う必要がありコストアップとなるばかりでなく、重合阻害の原因にもなり好ましくない。
【0087】
本発明に用いる顔料としては、カーボンブラック、カーボンリファインド、およびカーボンナノチューブのような炭素系顔料、鉄黒、コバルトブルー、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、および酸化鉄のような金属酸化物顔料、硫化亜鉛のような硫化物顔料、フタロシアニン系顔料、金属の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、およびリン酸塩のような塩からなる顔料、並びにアルミ粉末、ブロンズ粉末、および亜鉛粉末のような金属粉末等の無機顔料、ニトロ顔料、アニリンブラック、ナフトールグリーンBのようなニトロソ顔料、ボルドー10B、レーキレッド4Rおよびクロモフタールレッドのようなアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む。)、ピーコックブルーレーキおよびローダミンレーキのようなレーキ顔料、フタロシアニンブルーのようなフタロシアニン顔料、多環式顔料(ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラノン顔料など)、チオインジゴレッドおよびインダトロンブルーのようなスレン顔料、キナクリドン顔料、キナクリジン顔料、並びにイソインドリノン顔料のような有機系顔料を使用することもできる。
【0088】
顔料の具体例としては、 C.I Pigmen Yellow−1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、109、114、120、128、129、138、150、151、154、180、185、 C.I Pigmen Orange−16、36、38、 C.I Pigmen Red−5、7、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、112、122、123、144、146、168、184、185、202、 C.I Pigmen Violet−19、23、 C.I Pigmen Blue−1、2、3、15:1、15:2、15:3、15:4、18、22、27、29、60、 C.I Pigmen Green−7、36、 C.I Pigmen White−6、18、21、 C.I Pigmen Black−7、等を挙げることができる。
【0089】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明の光硬化型インクでは、印字後に反応、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0090】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明に係るインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1〜10質量%とすることが好ましい。
【0091】
本発明に係るインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0092】
また、カチオン重合性を含有する本発明に係るインクにおいては、インクの保存安定性を向上させる点で、含水率は、0.5質量%以上、3.0質量%以下の範囲に調整することが好ましい。含水率を0.5質量%未満にするとインク保存安定性が低下し、含水率が3.0質量%を超えると析出物の発生が増え、ノズルの目詰まり、吐出安定性が低下する。
【0093】
本発明に係るインクにおいては、インクジェット画像形成に用いる場合は、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが好ましい。
【0094】
本発明において、本発明のインクジェットプリンタにより、本発明に係るインクにより画像形成を行う際に用いる記録媒体としては、様々な記録媒体を用いることができるが、本発明のインクの特性をいかんなく発揮できる観点から、インクの吸収能を実質的に持たない記録媒体であることが好ましく、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録媒体の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0095】
これらの各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録媒体によっては、インク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明に係るインクは、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲な記録媒体に良好な高精細な画像を形成できる。
【0096】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録媒体のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体を使用する方が有利である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0098】
実施例1
《インクの調製》
(シアンインクの調製)
下記の組成からなるシアンインクを調製した。
【0099】
はじめに、PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤)の全量とオキセタンOXT221の14部とを65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した溶液に、顔料であるC.I.Pigment Blue 15:4の全量を添加し、直径0.3mmのジルコニアビーズと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて4時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去し、分散液を調製した。
【0100】
次いで、上記調製した分散液に、下記の残りの添加剤を加えて、シアンインクを調製した。最終的なシアンインクにおける各添加剤の組成を以下に示す。
【0101】
顔料:C.I.Pigment Blue 15:4 4.0部
アジスバーPB822(味の素ファインテクノ製、分散剤) 2.0部
オキセタンOXT221(東亜合成社製オキセタン化合物) 71.0部
オキセタンOXT212(東亜合成社製オキセタン化合物) 5.0部
オキセタンOXT101(東亜合成社製オキセタン化合物) 5.0部
脂環式エポキシ化合物1 18.0部
光重合開始剤1(分子量466、1分子量当たり3つのアリール基を持つ)4.0部
重合禁止剤(トリイソプロパノールアミン) 0.1部
ハイドロキノン 0.1部
水 1.0部
【0102】
【化5】


【0103】
(イエローインクの調製)
上記シアンインクの調製において、顔料(C.I.Pigment Blue 15:4)を、C.I.Pigment Yellow 150に変更した以外は同様にして、イエローインクを調製した。
【0104】
(マゼンタインクの調製)
上記シアンインクの調製において、顔料(C.I.Pigment Blue 15:4)を、C.I.Pigment Red 122に変更した以外は同様にして、マゼンタインクを調製した。
【0105】
(ブラックインクの調製)
上記シアンインクの調製において、顔料(C.I.Pigment Blue 15:4)を、C.I.Pigment Black 7に変更した以外は同様にして、ブラックインクを調製した。
【0106】
《インクジェットプリンタ》
図2のa)に記載の構成からなるインク供給ラインを有し、インクタンク101及びジョイントJ1、J2の構成部材を表1に記載の構成としたインクジェットプリンタ1〜4に準備した。なお、表1に記載の絶縁部材としては、インクタンクのインク接触部に、ポリエチレン樹脂を用いて、その表面を被覆して絶縁状態とした。また、インク供給路102は、絶縁部材である耐インク性のあるテフロン(登録商標)チューブを黒色のポリオレフィンチューブで被覆したもので構成した。
【0107】
《インクジェットプリンタの析出耐性評価》
上記調製した各インクを、各インクジェットプリンタのインクタンクからジョイントJ2部まで充填した。上記インクを充填した状態で23℃の環境下で3日間放置した後、インクタンク101及びジョイントJ1部での析出物の有無を目視観察し、得られた結果を表1に示す。
【0108】
【表1】


【0109】
表1に記載の結果より、ジョイント部とインクタンクとを異なる金属材料で構成した比較例のインクジェットプリンタ1は、長期間にわたりカチオン重合性組成物を含有するインクと接触することで析出物の発生が認められた。これに対し、同一種類の金属で構成したインクジェットプリンタ2、3及び異種の金属で構成されているがインク接触部を絶縁材料で被覆したインクジェットプリンタ4では、インクとの電子授受が防止され、析出物の発生が抑制されてることが分かる。
【0110】
実施例2
《インクジェットプリンタ》
図2のc)に記載のフィルタボックスを備えた構成からなるインク供給ラインを有し、フィルタ107及びフィルタ隣接部111の構成部材を表2に記載の構成としたインクジェットプリンタ5〜11に準備した。なお、表2に記載の絶縁部材としては、オレエチレン樹脂を用い、フィルタ隣接部のインク接触部全面を被覆して、絶縁状態とした。また、インク供給路102は、絶縁部材である耐インク性のあるテフロン(登録商標)チューブを黒色のポリオレフィンチューブで被覆したもので構成し、各ジョイントはフィルタ隣接部材料と同一とした。
【0111】
《インクジェットプリンタの析出耐性及び吐出安定性の評価》
(析出耐性の評価)
上記調製した各インクを、各インクジェットプリンタのインクタンクからジョイントJ2部まで充填した。上記インクを充填した状態で23℃の環境下で3日間放置した後、フィルタボックス内の析出物の有無を判定した。
【0112】
(吐出安定性の評価)
上記インク供給ライン内に各インクを23℃の環境下で3日間放置した後、ノズル数256、2〜20plのマルチサイズドットを720×720dpi(dpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す)の解像度で吐出でき、50℃の加温した記録ヘッドを用いて、3時間の連続吐出を行った。次いで、各色インクの出射状態を目視観察し、各色インクの平均出射状態を求め、下記の基準に従って吐出安定性を評価した。
【0113】
A:ノズル欠及び出射曲がりの発生が認められない
B:ノズル欠の発生は認められないが、出射曲がりのあるノズルが数カ所で認められる
C:明らかなノズル欠及び出射曲がりが発生しており、実用に耐えない
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0114】
【表2】


【0115】
表2に記載の結果より明らかなように、フィルタボックスのフィルタとフィルタ隣接部を異なる導電性部材で構成したインクジェットプリンタ5、9は、長期間にわたりカチオン重合性組成物を含有するインクと接触することで析出物の発生が認めら、かつ吐出安定性に乏しいことが分かる。これに対し、同一種類の金属で構成したインクジェットプリンタ6〜8、水素元素よりイオン化傾向が小さい銅及び銀を用いたインクジェットプリンタ10及び異種の金属で構成されているがインク接触部を絶縁材料で被覆したインクジェットプリンタ11では、インクとの電子授受が防止され、析出物の発生が抑制されると共に、連続出射時のノズル詰まりの発生が無く、良好な出射安定性が得られることが分かる。
【0116】
実施例3
《インクジェットプリンタ》
図2のb)に記載の中間タンクユニットを備えた構成からなるインク供給ラインを有し、フィルタ107及びフィルタ隣接部109の構成部材を表3に記載の構成としたインクジェットプリンタ12〜18に準備した。なお、表3に記載の絶縁部材としては、オレエチレン樹脂を用い、フィルタ隣接部のインク接触部全面を被覆して、絶縁状態とした。また、インク供給路102は、絶縁部材である耐インク性のあるテフロン(登録商標)チューブを黒色のポリオレフィンチューブで被覆したもので構成し、各ジョイントはフィルタ隣接部材料と同一とした。
【0117】
《インクジェットプリンタの析出耐性及び吐出安定性の評価》
実施例2に記載の方法と同様にして、中間タンクユニット内部の析出耐性及び吐出安定性を評価し、得られた結果を表3に示す。
【0118】
【表3】


【0119】
表3に記載の結果より明らかなように、中間タンクユニットのフィルタとフィルタ隣接部を異なる導電性部材で構成したインクジェットプリンタ12、16は、長期間にわたりカチオン重合性組成物を含有するインクと接触することで析出物の発生が認めら、かつ吐出安定性に乏しいことが分かる。これに対し、同一種類の金属で構成したインクジェットプリンタ13〜15、水素元素よりイオン化傾向が小さい銅及び銀を用いたインクジェットプリンタ17及び異種の金属で構成されているがインク接触部を絶縁材料で被覆したインクジェットプリンタ18では、インクとの電子授受が防止され、析出物の発生が抑制されると共に、連続出射時のノズル詰まりの発生が無く、良好な出射安定性が得られることが分かる。
【0120】
実施例4
実施例1〜3において、各インクの調製に用いた光重合開始剤1に代えて、下記の光重合開始剤2を用いた以外は同様にして、各インクの調製及びそのインクを用いたインクジェットプリンタの評価を行った結果、いずれも前記表1〜表3と同様の結果を得ることができた。
【0121】
【化6】


【0122】
実施例5
実施例1〜3において、各インクの調製に用いた脂環式エポキシ化合物1に代えて、Cel2021P(ダイセル化学工業社製)を用いた以外は同様にして、各インクの調製及びそのインクを用いたインクジェットプリンタの評価を行った結果、いずれも前記表1〜表3と同様の結果を得ることができた。
【0123】
実施例6
実施例1〜3において、各インクの含水率(実施例1〜3で用いたインクの含水率は0.9%)を、0.1%、0.3%、0.5%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、5.0%に変更した以外は同様にして各インクを調製し、実施例1〜3に記載の各インクジェットプリンタを用いて同様の評価を行った結果、インクの含水率が0.5〜3.0%の範囲でより良好な結果が得られることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施の形態に係るフィルタ及び中間タンクを備えたインクジェットプリンタの全体構成を示す図である。
【図2】本発明のインクジェットプリンタのインク供給路構成の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0125】
1、101 インクタンク
2、104 記録ヘッド
3 エネルギー線源
4、103 キャリッジ
6、110 フィルタボックス
7、108 中間タンク
8、102 インク供給路
105 中間タンクユニット
106 中間タンク前室
107 フィルタ
109、111 フィルタ隣接部
J1〜J6 ジョイント
L 活性エネルギー線源
N ノズル
【出願人】 【識別番号】303000420
【氏名又は名称】コニカミノルタエムジー株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−18663(P2008−18663A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−193892(P2006−193892)