トップ :: B 処理操作 運輸 :: B41 印刷;線画機;タイプライタ−;スタンプ




【発明の名称】 サーマルヘッド及びその製造方法
【発明者】 【氏名】大沼 一紀

【氏名】佐々木 浩司

【氏名】小山 昇

【要約】 【課題】下地電極層に影響を与えることなく保護膜のパターニング精度を高め、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができるサーマルヘッド及びその製造方法を提供する

【構成】電極層44a,44bとしてアルミニウム系金属材料層31とその上に形成した耐アルカリ性材料層32との積層構造とすることで、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法による保護膜45の形成時において、当該現像液による電極層の溶解を効果的に防止して電極層の形状精度を維持する。また、保護膜45の形成にリフトオフ法を用いることで、保護膜45のパターン精度を高める。これにより、ヘッドチップの加工サイズを安定化できるので、一枚の基板から作製できるヘッドチップの個数の増加を図り、生産性向上効果及び製造コスト低減効果を更に高めることが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板と、
前記基板の表面に形成された蓄熱層と、
前記蓄熱層の上に形成された発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体の上に形成された電極層と、
前記発熱抵抗体と前記電極層を被覆する保護膜とを備えたサーマルヘッドにおいて、
前記電極層は、アルミニウム系金属材料と耐アルカリ性材料の積層膜からなる
ことを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記耐アルカリ性材料は、クロム、チタン、モリブデン、タンタル、タングステン、ニオブ及び金の何れか又はこれらの合金である
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
前記電極層は、前記発熱抵抗体を挟んで対向する一対の電極群を形成しており、そのうち一方の電極群において前記保護膜で被覆されない領域に外部配線との接続用端子部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記蓄熱層の内部に空隙部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
絶縁性基板の表面に形成された蓄熱層に発熱抵抗体、電極層及び保護層が形成されたサーマルヘッドの製造方法であって、
前記電極層の形成は、
前記発熱抵抗体の上にアルミニウム系金属材料層を形成する工程と、
前記アルミニウム系金属材料層の上に耐アルカリ性材料層を形成する工程とからなり、
前記保護膜の形成は、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法によって行われる
ことを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記保護膜の形成には、前記基板上にリフトオフ層を形成する工程と、前記リフトオフ層の上にレジストマスク層を形成する工程とを有する二層レジスト法が用いられる
ことを特徴とする請求項5に記載のサーマルヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ等に利用されるサーマルヘッド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱プリンタ、熱転写プリンタ等のサーマルプリンタに搭載されるサーマルヘッドは、例えば、複数の発熱抵抗体を絶縁性基板上に直線的に整列配置し、印字情報に従って各発熱抵抗体を選択的に通電加熱させて、感熱プリンタにおいては感熱記録紙に発色記録させ、熱転写プリンタにおいてはインクリボンのインクを溶融して普通紙に転写記録させる。
【0003】
図11から図13は従来のサーマルヘッドの構成の一例を示すものであり、図11はヘッドチップ全体の平面図、図12は図11のA部の拡大図、図13は図12における[13]−[13]線方向断面図である。
【0004】
アルミナ等の絶縁性基板11の上面には、蓄熱層として機能するガラス材からなるグレーズ層12の上面形状が、断面円弧状となるように部分的に積層されている。このグレーズ層12の上面には、Ta−SiO2 などからなる複数の発熱抵抗体13が、蒸着、スパッタリング等により全体的に積層された後に、フォトリソグラフィ技術のエッチングを行うことにより直線状に整列して形成されている。これらの各発熱抵抗体13の両側の上面には、各発熱抵抗体13に対して通電するための個別電極14及び共通電極15がそれぞれ形成されている。
【0005】
個別電極14は、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられることが一般的であり、約0.3μm〜3μm程度の厚みに蒸着又はスパッタリング等により基板11上に全体的に形成された後、フォトリソグラフィ技術のエッチングを行うことにより所定の形状のパターンに加工される。そして、各発熱抵抗体13は、個別電極14及び共通電極15間に露出するようにして各個独立に形成され、この発熱抵抗体13は、各電極14,15間に電圧を印加することにより発熱されるようになっている。
【0006】
絶縁性基板11、グレーズ層12、発熱抵抗体13、個別電極14及び共通電極15の上面には、約7μm〜10μmの膜厚の保護層16が積層されている。この保護層16は発熱抵抗体13の酸化防止と、インクリボンとの接触による摩耗から発熱抵抗体13及び電極14,15を保護する目的で形成される。保護層16は、マスクスパッタリング等の手法により形成される。
【0007】
マスクスパッタリング法の具体的な手法を図14A,B及び図15に示す。まず、基板11上の保護膜16を成膜するエリア以外のエリアが隠れるように、メタルマスク17を被せる(図14A)。その後、スパッタにより保護膜16を成膜し(図14B)、メタルマスク17を外す(図15)。保護膜16は、メタルマスク17の開口部に対応する領域のみ成膜され、図14Bに示すように個別電極の端子部14aには成膜されない。
【0008】
実際のサーマルヘッドの製造においては、ひとつの絶縁性基板11上に複数個のサーマルヘッドを作製するようになっているため、最終工程において、絶縁性基板11を分割して所定数のサーマルヘッドチップを得るようにしている。分割されたサーマルヘッドチップは、ドライバーICと接続されてプリンタへ組み込まれる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−17524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、サーマルヘッドは基板11へ複数のチップを一括作製することで生産性の向上と製造コストの低減を図るようにしている。ここで、製造コストの更なる低減を図るためには、同一基板から得られるチップ数を増加させることが考えられる。この場合、チップ面積の減少が求められるが、ヘッドチップの長辺方向(図11のL)の長さは印字幅の制約から縮小は困難であるため、短辺方向(図11のW)の長さを縮小する必要がある。
【0011】
図15において、ヘッドチップ短辺方向の長さWの制約条件として、個別電極14の端子部14aの長さWbをはじめとする各パターン精度、分断(分割)精度等があるが、保護膜16の成膜時の寸法Waのバラツキによってチップ短辺方向の長さWが大きく影響される。マスクスパッタの場合、図14Bに示したように、スパッタ粒子の回り込みにより保護膜16の形成領域がマスクの開口領域よりも広くなり、保護膜16のパターン精度にΔWのバラツキが発生する。具体的には、経時変化も含めてマスクスパッタによる保護膜形成のバラツキが数百nmであることから、これに応じて各寸法のマージンを増やす必要があり、1枚の基板から得られるチップ数の増大が図れない。
【0012】
このような問題を解決する手段として、リフトオフ法による保護膜形成方法がある。リフトオフ法を用いて保護膜の成膜では、基板上の非成膜領域をレジストパターンで被覆しておき、保護膜の成膜後、レジストパターンとともに当該レジストパターン上に堆積した成膜材料をも同時に除去することで、基板上の所定領域にのみ保護膜を形成する。この方法によれば、レジストパターンの加工精度で保護膜の加工精度が決まるため、マスクスパッタによる保護膜形成方法に比べて、パターン精度の向上を図ることができる。
【0013】
しかしながら、保護膜の形成にリフトオフ法を用いた場合、レジスト現像液による下地の電極材料のエッチングが大きな問題となる。即ち、ポジ型のレジストパターンの形成には強アルカリ性の現像液が一般的に用いられており、これが電極層を構成するアルミニウムを溶解し、電極層の膜厚の減少を招いたり、電極層の形状精度が維持できなくなる。
【0014】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、下地電極層に影響を与えることなく保護膜のパターニング精度を高め、生産性の向上と製造コストの低減を図ることができるサーマルヘッド及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するに当たり、本発明のサーマルヘッドは、絶縁性の基板と、基板の表面に形成された蓄熱層と、蓄熱層の上に形成された発熱抵抗体と、発熱抵抗体の上に形成された電極層と、発熱抵抗体と電極層を被覆する保護膜とを備え、電極層は、アルミニウム系金属材料と耐アルカリ性材料の積層膜からなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のサーマルヘッドの製造方法は、絶縁性基板の表面に形成された蓄熱層に発熱抵抗体、電極層及び保護層が形成されたサーマルヘッドの製造方法であって、電極層の形成は、発熱抵抗体の上にアルミニウム系金属材料層を形成する工程と、このアルミニウム系金属材料層の上に耐アルカリ性材料層を形成する工程とからなり、保護膜の形成はアルカリ現像液を用いたリフトオフ法によって行われることを特徴とする。
【0017】
本発明では、電極層としてアルミニウム系金属材料とその上に形成した耐アルカリ性材料との積層構造としたので、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法による保護膜の形成時において、当該現像液による電極層の溶解を効果的に防止して電極層の形状精度を維持することができる。また、保護膜の形成にリフトオフ法を用いることで、保護膜のパターン精度を高めることが可能となる。これにより、ヘッドチップの加工サイズを安定化できるので、一枚の基板から作製できるヘッドチップの個数の増加を図り、生産性向上効果及び製造コスト低減効果を更に高めることが可能となる。
【0018】
アルミニウム系金属材料に積層される耐アルカリ性材料としては、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)及び金(Au)の何れか又はこれらの合金が挙げられる。また、金属材料以外にも酸化物や窒化物なども適用可能であるが、導電性を有する材料が好ましい。
【0019】
耐アルカリ性材料層の厚さは特に制限されないが、好ましくは、5nm以上100nm以下とされる。5nm未満では、膜にピンホールが発生し、露出した下地アルミニウム系材料層が現像液による浸食を受けるおそれがある。また、100nm超の膜厚では、下地アルミニウム系材料層の溶解防止効果に変化が見られなくなるからである。
【0020】
保護膜の形成に用いられるレジスト材料は、ポジ型レジスト材料が用いられる。特に、ポジ型レジスト材料を用いた二層レジスト法を採用することで、リフトオフ性が高まり、保護膜のパターニングを高精度に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明によれば、電極層の耐アルカリ性を高めることができるので、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法により保護膜を高精度に形成することができるとともに、現像液による電極層の溶解を阻止することができる。これにより、電極層の形状変化に伴うヘッドチップの特性変化や信頼性の低下を防止できるとともに、ヘッドチップの生産性の向上と製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態によるプリンタ装置30の概略構成図、図2はプリンタ装置30の要部の断面斜視図である。以下、このプリンタ装置30の構成について概略的に説明する。
【0024】
プリンタ装置30は、熱転写型あるいは昇華型のプリンタ装置であり、本発明に係るサーマルヘッド40を備え、このサーマルヘッド40でインクリボン1の色材を昇華させて印刷媒体2へ色材を転写させることで、カラー画像や文字を印刷する。
【0025】
ここで用いられるインクリボン1は、長尺状の樹脂フィルムからなり、一端が供給側スプール3aに、他端が巻取側スプール3bにそれぞれ支持され、これらに巻回された状態でインクカートリッジ(図示略)に収納されている。このインクリボン1は、樹脂フィルムの一方の面に、イエローの色材で形成されたインク層と、マゼンタの色材で形成されたインク層と、シアンの色材で形成されたインク層のほか、印刷媒体2上に印刷された画像や文字の保存性を向上するために印刷媒体2上に熱転写させるラミネートフィルムからなるラミネート層が設けられている。
【0026】
プリンタ装置30は、サーマルヘッド40と、このサーマルヘッド40と対向する位置に設けられたプラテン60と、装着されたインクリボン1の走行をガイドする複数のリボンガイド61a,61bと、インクリボン1とともにサーマルヘッド40とプラテン60との間に印刷媒体2を走行させるピンチローラ62aおよびキャプスタンローラ62b等を備えている。
【0027】
このような構成のプリンタ装置30においては、プラテン60をサーマルヘッド40に押圧しながら、サーマルヘッド40とプラテン60との間において、巻取側スプール3bを巻取方向に回転させることでインクリボン1を巻取方向に走行させるとともに、ピンチローラ62aとキャプスタンローラ62bを排紙方向(図1中矢印A方向)に回転させることで排紙方向に印刷媒体2を走行させる。
【0028】
印刷する際には、先ず、サーマルヘッド40からインクリボン1のイエローのインク層に対して熱エネルギーを印加し、イエローの色材をインクリボン1と重なり合って走行している印刷媒体2に熱転写する。次に、イエローの色材が熱転写された画像や文字を形成する画像形成部にマゼンタの色材を熱転写するため、図1中矢印B方向に印刷媒体2をサーマルヘッド40側に逆走させ、画像形成部の始端をサーマルヘッド40と対向させるとともに、インクリボン1のマゼンタのインク層をサーマルヘッド40と対向させる。そして、マゼンタのインク層に対しても熱エネルギーを印加して、マゼンタの色材を印刷媒体2の画像形成部に熱転写させる。シアンの色材およびラミネートフィルムについても、同様の方法で印刷媒体2に順次熱転写して、カラー画像を印刷する。
【0029】
このようなプリンタ装置30に用いられるサーマルヘッド40は、印刷媒体2の走行方向に対して直交方向に配置されており、印刷媒体2の幅方向の両端まで色材を熱転写できるように、図3中矢印L方向で示す長さが印刷媒体2の幅よりも長くなっている。
【0030】
次に、サーマルヘッド40の構成の詳細について説明する。
図3はサーマルヘッド40の全体斜視図、図4はサーマルヘッド40のヘッド部40Aの断面構造を示す部分破断斜視図である。
【0031】
サーマルヘッド40は、放熱体47の上に接着材料層46を介して接着された基板41を有しており、この基板41の幅方向中心部に長さ方向Lに沿ってヘッド部40Aが形成されている。ヘッド部40Aは外形が略円弧状を有しており、その頂部には発熱部43aが長さ方向Lに所定ピッチで直線的に配列されている。ヘッド部40Aは、基板41から外方へ突出形成されることによって、インクリボン1に対する当たりを良好にし、発熱部43aで発生させた熱エネルギーをインクリボン1に適切に印加できるようにしている。ヘッド部40Aの表面は、保護膜45で覆われている。
【0032】
発熱部43aは、一対の電極44a,44bで挟まれた構成を有しており、これら電極44a,44b間に電流が供給されたときの抵抗加熱作用によって発熱する。一方の電極44aは、個々の発熱部43a毎に形成された個別配線部52に接続された個別電極を構成しており、フレキシブル配線基板53を介して制御基板55に電気的に接続されている。また、他方の電極44bは、すべての発熱部43aに対して共通の共通配線部51に接続された共通電極を構成しており、フレキシブル配線基板54を介して制御基板55に電気的に接続されている。
【0033】
制御基板55は、放熱体47に固定されており、外部接続用配線部材56を介して、プリンタ装置30の制御部(図示略)に接続されている。フレキシブル配線基板53には半導体素子(図示略)が実装されており、この半導体素子は、制御基板55から送られた印刷データに対応して各発熱部43aの発熱動作を個別に制御する。
【0034】
以下、ヘッド部40Aの詳細について説明する。図5は、サーマルヘッド40の構成の詳細を示す断面図である。
【0035】
基板41は一方の面(表面)には、外面が略円弧状の蓄熱層としてのグレーズ層42が設けられている。基板41は、本実施形態では良熱伝導性かつ電気絶縁性のアルミナ基板が用いられている。グレーズ層42は、ホウケイ酸ガラス等の一般的なガラス質材料で構成されている。
【0036】
なお、基板41は、アルミナ基板に限らず、グレーズ層42と同種のガラス質材料で構成してもよい。この場合、グレーズ層42はプレス成形等により基板41と一体的に形成することができる(図9)。
【0037】
グレーズ層42の上には、発熱抵抗体43と、発熱抵抗体43に通電するための個別電極44a及び共通電極44bと、これら発熱抵抗体43、個別電極44a及び共通電極44bを保護する保護膜45とが順次設けられている。
【0038】
発熱抵抗体43は、例えば、Ta−NやTa−SiO2 等の高抵抗で耐熱性のある材料で形成されている。一対の電極44a,44b間に挟まれた発熱抵抗体43の露出領域は、発熱部43aとして構成されており、例えば画素サイズ(ドットサイズ)よりもやや大きく、略矩形又は正方形状に形成されている。この発熱抵抗体43は、基板41の表面上にフォトリソグラフィ技術を用いてエッチングによりパターン形成される。
【0039】
個別電極44a及び共通電極44bは、発熱抵抗体43の上に形成されたアルミニウム系材料層31と、このアルミニウム系材料層31の上に形成された耐アルカリ性材料層32の積層構造を有する電極層として形成されている。アルミニウム系材料層31としては、アルミニウム金属又はその合金(Al−Cuなど)で形成されている。なお、アルミニウム系材料層31の下地膜としてCr層を更に形成してもよい。
【0040】
また、耐アルカリ性材料層32は、クロム(Cr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)及び金(Au)の何れか又はこれらの合金で形成されているが、金属材料以外にも酸化物や窒化物などでもよい。本実施形態では、耐アルカリ材料層32はCr層で形成されている。
【0041】
耐アルカリ性材料層32は、後述するように、保護膜45のリフトオフ法によるパターン成膜時に、レジストマスクを形成するためのアルカリ性現像液に対して電極層に耐アルカリ性を付与するためのものであり、上記現像液からアルミニウム系材料層31の溶解を防止する。
【0042】
ヘッド部40Aは、一枚の集合基板から複数個同時に作製され、後に個片化される。図6は、集合基板上に形成されたヘッド部40Aの構成を示している。個々のヘッド部40Aは、個々のヘッドチップ40W上にそれぞれ設けられている。個別電極44a及び共通電極44bは、発熱部43aの端部からそれぞれヘッドチップ40Wの幅方向W(図5)に引き出され、発熱部43aを挟んで対向する一対の電極群を形成している。一方の個別電極44aは、その引出し端に外部配線(フレキシブル配線基板53)との電気的接続用の端子部44Lを備えている。他方の共通電極44bは、その引出し端にCu層33が積層形成されており、これに外部配線(フレキシブル配線基板54)と電気的に接続されている。
【0043】
保護膜45は、端子部44Lを除いて、発熱部43a、個別電極44a及び共通電極44bを被覆している。特に、保護膜45は、発熱部43aの酸化防止と、インクリボン1との接触による摩耗から発熱部43a及び電極44a,44bを保護する目的で形成される。
【0044】
保護膜45を構成する材料としては、高温下で高強度、耐摩耗性等の機械的特性および耐熱性、耐熱衝撃性、熱伝導性等の熱的特性に優れた金属あるいは半金属を含む無機材料が用いられ、例えば、炭化ケイ素や窒化ケイ素、サイアロン(商品名)等で形成されている。保護膜45の成膜には、後述するように、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法が用いられる。保護膜45の厚みは、例えば、7μm〜10μmとされる。
【0045】
一方、図5に示すように、基板41の他方の面(裏面)には、接着材料層46を介して放熱体47が接着されている。接着材料層46には、熱伝導性、耐熱性に優れた熱硬化性材料が用いられ、例えば、基板41よりも伝熱性に優れたシリコーン系接着剤が用いられる。放熱体47としては、アルミニウム、銅等の熱伝導性の高い金属材料が用いられている。
【0046】
次に、以上のように構成されるサーマルヘッド40、特に、ヘッド部40Aの製造方法について説明する。
【0047】
まず、基板41のグレーズ層42の上に発熱抵抗体43を成膜し所定形状にパターニングする。次いで、発熱抵抗体43の上に個別電極44a及び共通電極44bを構成する電極層を形成する。電極層の形成は、発熱抵抗体43の上にアルミニウム系材料層31を形成する工程と、耐アルカリ性材料層32を形成する工程とを有する。その後、Cu層33の形成と、必要に応じてアルミニウム系材料層31の下地膜形成が行われる。電極層のパターニングは、フォトリソグラフィ技術を用いたドライ又はウェットエッチングが適用可能である。
【0048】
次に、保護膜45の形成工程が行われる、保護膜45の形成は、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法によって行われる。特に本実施形態では、保護膜45の形成に、基板上にリフトオフ層を形成する工程と、リフトオフ層の上にレジストマスク層を形成する工程とを有する二層レジスト法が用いられる。
【0049】
図7及び図8は保護膜45の形成方法を説明する工程断面図である。
【0050】
まず、図7Aに示すように、電極層を形成した基板41の上にリフトオフ層21を形成した後、このリフトオフ層21の上にレジスト層22を形成する。リフトオフ層21及びレジスト層22は、例えば、液状ポジ型レジストをスピンコートして形成される。
【0051】
次に、リフトオフ層21及びレジスト層22に対して、発熱層43と、個別電極44a及び共通電極44b上の各端子部以外の領域とが開口するパターン形状に露光・現像処理を施し、図7Bに示すレジストマスク20を形成する。現像液は、例えばTHMA等の強アルカリ溶液が用いられる。このとき、リフトオフ層21の開口周縁部に一定範囲の切込みSが形成され、後工程での保護膜45のリフトオフ性が高められる。
【0052】
このとき、電極層がアルミニウム系材料層のみで形成されている場合、現像液により電極層がエッチングされ膜厚が減少したり、形状変化が生じる。しかし、本実施形態によれば、電極層としてアルミニウム系材料層の上に耐アルカリ性材料層(Cr層)が形成されているので、現像液から電極層を効果的に保護することができる。従って、電極層のエッチングによる膜厚の減少やパターン形状の変化が生じることはない。
【0053】
ここで、耐アルカリ性材料層32の厚さとしては、5nm以上100nm以下が好ましい。5nm未満では、膜にピンホールが発生し、露出した下地アルミニウム系材料層が現像液による浸食を受けるおそれがある。また、100nm超の膜厚では、下地アルミニウム系材料層の溶解防止効果に変化が見られなくなるからである。
【0054】
次に、図8Cに示すように、形成したレジストマスク20を介して保護膜45の構成材料の成膜が行われる。成膜方法としては、例えばスパッタ法が用いられる。これにより、レジストマスク20の開口部は勿論、レジストマスク20の上に保護膜45が成膜される。
【0055】
続いて、基板41をアセトン等の溶剤中で超音波洗浄を行うことにより、基板41からレジストマスク20を剥離除去する。これにより、レジストマスク20上の保護膜45も同時に除去される。以上のようにして、図8Dに示すように、基板41上に所定形状の保護膜45が形成される。その後、基板41をダイシングして図6に示したヘッドチップ40C単位に個片化される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、個別電極44aと共通電極44bを構成する電極層をアルミニウム系金属材料層31とその上に形成した耐アルカリ性材料32との積層構造としたので、アルカリ現像液を用いたリフトオフ法による保護膜45の形成時において、当該現像液による電極層の溶解を効果的に防止して電極層の形状精度を維持することができる。これにより、ヘッド部40Aの電気抵抗値のバラツキを防止して信頼性の高いサーマルヘッドを構成することができる。
【0057】
また、保護膜45の形成にリフトオフ法を用いているので、保護膜45のパターン精度を高めることが可能となる。即ち、保護膜45の成膜精度のバラツキを抑制でき、端子部44Lの形成幅Wb(図8D)の安定化を図ることができる。これにより、ヘッドチップ40Wの加工サイズを安定化できるので、一枚の基板から作製できるヘッドチップの個数の増加を図り、生産性向上効果及び製造コスト低減効果を更に高めることが可能となる。
【0058】
更に本実施形態によれば、保護膜45の形成に二層レジスト法を採用しているので、保護膜45のリフトオフ性を高めて、保護膜45の形状精度の更なる向上を図ることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0060】
例えば以上の実施形態では、サーマルヘッド40の基板41とグレーズ層42を別材料で構成したが、例えば図9に示すように、基板41とグレーズ層42を一体形成したサーマルヘッドにも本発明は適用可能である。また、図10に示すように、グレーズ層42の内部に空隙部28を形成した、いわゆるエアギャップ構造のサーマルヘッドに対しても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態において説明するプリンタ装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したプリンタ装置の用右の断面斜視図である。
【図3】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの全体斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの要部の構成を示す部分破断斜視図である。
【図5】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの一製造工程を説明する断面図である。
【図7】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの一製造工程を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの一製造工程を説明する断面図である。
【図9】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの構成の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態によるサーマルヘッドの構成の他の変形例を示す断面図である。
【図11】従来のサーマルヘッドの要部平面図である。
【図12】図11の要部拡大図である。
【図13】図12における[13]−[13]線方向断面図である。
【図14】従来のサーマルヘッドの製造方法を説明する一工程断面図である。
【図15】従来のサーマルヘッドの製造方法を説明する一工程断面図である。
【符号の説明】
【0062】
20…レジストマスク、21…リフトオフ層、22…レジスト層、28…空隙部、30…プリンタ装置、31…アルミニウム系材料層、32…耐アルカリ性材料層、40…サーマルヘッド、40A…ヘッド部、40W…ヘッドチップ、41…基板、42…グレーズ層(蓄熱層)、43…発熱抵抗体、43a…発熱部、44a…個別電極、44b…共通電極、44L…端子部、45…保護膜
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一

【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章

【識別番号】100072350
【弁理士】
【氏名又は名称】飯阪 泰雄


【公開番号】 特開2008−18635(P2008−18635A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192912(P2006−192912)