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【発明の名称】 インクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法
【発明者】 【氏名】安西 純人

【要約】 【課題】他のモータ6と同期して駆動されることがあるPFモータ5などの搬送モータを、その時期を重ねた駆動を妨げることなく待たせること。

【構成】インクジェットプリンタ1は、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータ5と、キャリッジ10の駆動に利用されるキャリッジモータ11と、搬送モータ5の発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上である場合、その搬送モータ5の発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算し、その休止時間の経過を待った後に、キャリッジモータ11の駆動を開始する印字制御手段54と、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、
キャリッジの駆動に利用されるキャリッジモータと、
上記搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上である場合、その搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算し、その休止時間の経過を待った後に、上記キャリッジモータの駆動を開始する印字制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、
キャリッジの駆動に利用されるキャリッジモータと、
上記搬送モータの蓄熱量に関する値を演算する蓄熱演算手段と、
上記搬送モータの蓄熱量に関する値についての所定の値の範囲に対応付けられた休止割合データを有する休止時間割合テーブル、および上記搬送モータの前回の駆動時間を記憶する記憶手段と、
上記蓄熱演算手段により演算された上記搬送モータの蓄熱量に関する値が上記休止時間割合テーブルの上記所定の値の範囲内である場合、上記記憶手段に記憶される上記搬送モータの前回の駆動時間と、上記休止時間割合テーブルにおいてその該当する上記所定の値の範囲と対応付けられた上記休止割合データとに基づいて休止時間を演算し、その休止時間の経過を待った後に、上記キャリッジモータの駆動を開始する印字制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記印字制御手段は、前記搬送モータの蓄熱量に関する値により判断される前記搬送モータの蓄熱レベルが前記キャリッジモータの蓄熱レベルより高い場合、前記搬送モータの前回の駆動時間に基づく休止時間を演算するとともにその休止時間の経過を待ち、その逆の場合には、前記キャリッジモータの前回の駆動時間に基づく休止時間を演算するとともにその休止時間の経過を待つこと、を特徴とする請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記印字制御手段は、前記搬送モータの蓄熱量に関する値により判断される前記搬送モータの蓄熱レベルが所定のレベルより低く、且つ、前記キャリッジモータの蓄熱レベルが所定のレベルより低い場合、休止時間を待つことなく前記キャリッジモータの駆動を開始すること、を特徴とする請求項2または3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記蓄熱演算手段は、前記搬送モータの駆動速度に基づいて演算される前記搬送モータの瞬時的な発熱量に関する値から、前記搬送モータの蓄熱量に関する値を演算すること、を特徴とする請求項2から4の中のいずれか1項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
印刷媒体の搬送において前記搬送モータと時期を重ねて駆動される他の搬送モータと、
給紙動作時に、前記搬送モータの駆動を制御する第一搬送制御手段とは独立して、上記他の搬送モータの駆動を制御する第二搬送制御手段と、
を有することを特徴とする請求項2から5の中のいずれか1項記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクジェットプリンタにおいて印刷媒体の搬送に利用される搬送モータの制御方法であって、
上記搬送モータとは異なるモータであるキャリッジモータの駆動を制御する際に、上記搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上であるか否かを判断するステップと、
上記搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上である場合に、上記搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算するステップと、
上記演算された休止時間が経過した後に、上記キャリッジモータの駆動を開始するステップと、
を有することを特徴とする搬送モータの制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キャリッジが1パスするときのキャリッジモータの電流値(実行電流値)とキャリッジの移動時間とから1パス当たりの単位発熱量を演算し、現在の発熱温度を求め、複数の閾値と比較するインクジェット式記録装置を開示する。そして、インクジェット式記録装置は、休止時間テーブルにおいて、現在の発熱温度が超えた閾値と対応付けられている休止時間で休止してから、所定のパスの動作を開始する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−79179号公報(要約、特許請求の範囲、発明の詳細な説明など、特に、段落0105、図15から図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリッジモータが駆動されるとき、インクジェットプリンタのその他のモータ、たとえばPF(ペーパフィード)モータやASF(オートシートフィード)モータは、停止している。したがって、キャリッジモータが駆動され始めるとき、それを冷却するために休止時間を設けても、印字動作を妨げてしまうことはない。これに対して、PFモータが駆動されるとき、たとえば給紙時などではASFモータなどが時期を重ねて駆動されることがある。このとき、PFモータは、ASFモータなどの駆動と同期して駆動される必要がある。そのため、特許文献1の技術を用いて、PFモータなどの搬送モータの休止時間を設けることはできない。
【0005】
本発明は、他のモータと同期して駆動されることがあるPFモータなどの搬送モータを、その時期を重ねた駆動を妨げることなく待たせることができるインクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、キャリッジの駆動に利用されるキャリッジモータと、搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上である場合、その搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算し、その休止時間の経過を待った後に、キャリッジモータの駆動を開始する印字制御手段と、を有するものである。
【0007】
この構成を採用すれば、キャリッジモータの駆動を開始するときに、搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間により休止する。搬送モータが他のモータと時期を重ねて駆動されることがあったとしても、その時期を重ねた同期駆動を妨げることなく搬送モータを待たせることができる。
【0008】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、印刷媒体の搬送に利用される搬送モータと、キャリッジの駆動に利用されるキャリッジモータと、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算する蓄熱演算手段と、搬送モータの蓄熱量に関する値についての所定の値の範囲に対応付けられた休止割合データを有する休止時間割合テーブル、および搬送モータの前回の駆動時間を記憶する記憶手段と、蓄熱演算手段により演算された搬送モータの蓄熱量に関する値が休止時間割合テーブルの所定の値の範囲内である場合、記憶手段に記憶される搬送モータの前回の駆動時間と、休止時間割合テーブルにおいてその該当する所定の値の範囲と対応付けられた休止割合データとに基づいて休止時間を演算し、その休止時間の経過を待った後に、キャリッジモータの駆動を開始する印字制御手段と、を有するものである。
【0009】
この構成を採用すれば、キャリッジモータの駆動を開始するときに、搬送モータのそのときまでの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算し、休止する。搬送モータが他のモータと時期を重ねて駆動される場合でも、その時期を重ねた同期駆動を妨げることなく搬送モータを待たせることができる。また、印刷の途中において休止時間を演算し、必要なだけ待たせることができる。
【0010】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、上述した発明の構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、印字制御手段は、搬送モータの蓄熱量に関する値により判断される搬送モータの蓄熱レベルがキャリッジモータの蓄熱レベルより高い場合、搬送モータの前回の駆動時間に基づく休止時間を演算するとともにその休止時間の経過を待つ。その逆の場合、印字制御手段は、キャリッジモータの前回の駆動時間に基づく休止時間を演算するとともにその休止時間の経過を待つ。
【0011】
この構成を採用すれば、キャリッジモータの駆動を開始するときに、キャリッジモータを待たせるための休止時間と、搬送モータを待たせるための休止時間との中の長い方の時間を確保する。1回の休止動作により、キャリッジモータおよび搬送モータをそれらが必要とする時間で待たせることができる。
【0012】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、印字制御手段は、搬送モータの蓄熱量に関する値により判断される搬送モータの蓄熱レベルが所定のレベルより低く、且つ、キャリッジモータの蓄熱レベルが所定のレベルより低い場合、休止時間を待つことなくキャリッジモータの駆動を開始する。
【0013】
この構成を採用すれば、搬送モータおよびキャリッジモータがともに休止が必要ではないとき、休止時間が設定されない。したがって、インクジェットプリンタは、本来の印刷速度により印刷することができる。
【0014】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、蓄熱演算手段は、搬送モータの駆動速度に基づいて演算される搬送モータの瞬時的な発熱量に関する値から、搬送モータの蓄熱量に関する値を演算する。
【0015】
搬送モータの駆動速度は、印刷媒体の搬送距離や搬送速度の検出のために検出する。したがって、この構成を採用すれば、搬送モータの温度を検出するための専用のセンサなどを別途追加する必要がない。
【0016】
本発明に係る他のインクジェットプリンタは、上述した発明の各構成に加えて、以下の特徴を有するものである。すなわち、印刷媒体の搬送において搬送モータと時期を重ねて駆動される他の搬送モータと、給紙動作時に、搬送モータの駆動を制御する第一搬送制御手段とは独立して、他の搬送モータの駆動を制御する第二搬送制御手段と、を有する。
【0017】
この構成を採用すれば、給紙動作時に、搬送モータおよび他の搬送モータが同時に駆動される。そして、この同期動作を妨げることなく、搬送モータが必要とする休止時間により休止することができる。
【0018】
本発明に係る搬送モータの制御方法は、インクジェットプリンタにおいて印刷媒体の搬送に利用される搬送モータの制御方法である。そして、搬送モータとは異なるキャリッジモータの駆動を制御する際に、搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上であるか否かを判断する。また、搬送モータの発熱あるいは蓄熱が所定のレベル以上である場合に、搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間を演算する。また、演算された休止時間が経過した後に、キャリッジモータの駆動を開始する。
【0019】
この方法を採用すれば、キャリッジモータの駆動を開始するときに、搬送モータの発熱あるいは蓄熱に応じた休止時間により休止する。搬送モータが他のモータと時期を重ねて駆動される場合でも、その時期を重ねた同期駆動を妨げることなく搬送モータを停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタおよびその搬送モータの制御方法を、PF(ペーパフィード)モータの場合を例として、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の構成図である。インクジェットプリンタ1は、LD(リタード)ローラ2、PFローラ3、排紙ローラ4を有する。PFローラ3および排紙ローラ4は、搬送モータとしてのPFモータ5により回転駆動される。LDローラ2は、他の搬送モータとしてのASFモータ6により回転駆動される。LDローラ2およびPFローラ3が共に回転駆動されることで、給紙トレイ7上に存在する印刷媒体としての用紙は、プラテン8上の印刷位置へ供給される。排紙ローラ4などが回転駆動されることで、給紙位置の用紙は、排紙トレイ9に排出される。以下において、この用紙の給紙方向を副走査方向とよび、それと略垂直な方向を主走査方向とよぶ。
【0022】
また、インクジェットプリンタ1は、キャリッジ10を有する。キャリッジ10のプラテン8側には、インクを吐出する図示外の記録ヘッドが設けられる。キャリッジ10は、CR(キャリッジ)モータ11の駆動によりプラテン8上を主走査方向へ移動する。
【0023】
インクジェットプリンタ1は、PFモータ5、ASFモータ6およびCRモータ11などを駆動するモータドライバ21と、PFローラ3による用紙の搬送速度を検出する第一ロータリエンコーダ22と、キャリッジ10の移動速度を検出するリニアエンコーダ23と、ASFモータ6の回転速度を検出する第二ロータリエンコーダ24と、マイクロコンピュータの一種であるASIC25と、マイクロコンピュータ26と、を有する。
【0024】
マイクロコンピュータ26は、記憶手段としてのメモリ31、タイマ32などを有する。メモリ31は、モータ毎の最終駆動時間データ41,42,43、モータ毎の蓄熱データ44,45,46、モータ毎の休止時間割合テーブル47,48,49を記憶する。マイクロコンピュータ26の図示外の中央処理装置がプログラムを実行すると、主制御部51、瞬時発熱演算部52、蓄熱演算手段としての蓄熱更新部53、印字制御手段としての印字制御部54、第一搬送制御手段としてのPF制御部55、第二搬送制御手段としてのASF制御部56が実現される。
【0025】
図2は、図1中のPF休止時間割合テーブル48のデータ構造の一例を示す図である。PF休止時間割合テーブル48は、蓄熱レベル毎に蓄熱値の範囲および休止割合データを有する。なお、ASF休止時間割合テーブル47およびCR休止時間割合テーブル49も同様のデータ構造により、蓄熱レベル毎に蓄熱値の範囲および休止割合データを有する。
【0026】
次に、以上の構成を有するインクジェットプリンタ1の動作を説明する。電源が投入されると、インクジェットプリンタ1には、図1の構成が実現される。
【0027】
図3は、図1中の主制御部51が実行する主制御の流れを示すフローチャートである。主制御部51は、まず、初期化処理を実行する(ステップST1)。初期化処理において、主制御部51は、瞬時発熱演算部52、蓄熱更新部53へ起動を指示する。
【0028】
瞬時発熱演算部52は、タイマ32により所定の計測時間(たとえば数十ミリ秒)が計測される度に、各モータの瞬時発熱値の計測処理を実行する。たとえば瞬時発熱演算部52は、ASIC25から読み込んだ第一ロータリエンコーダ22に基づく用紙の搬送速度からPFモータ5の回転数を演算し、その回転数からPFモータ5の瞬時的な発熱量を演算する。また、瞬時発熱演算部52は、リニアエンコーダ23に基づくキャリッジ10の移動速度からCRモータ11の回転数を演算し、その回転数からCRモータ11の瞬時的な発熱量を演算する。瞬時発熱演算部52は、第二ロータリエンコーダ24に基づくASFモータ6の回転数からASFモータ6の瞬時的な発熱量を演算する。
【0029】
蓄熱更新部53は、タイマ32により所定の更新時間(たとえば60秒)が計測される度に、各モータの累積的な蓄熱値を演算し、各モータの蓄熱データ44,45,46を更新する。たとえば、蓄熱更新部53は、PFモータ5についての前回の蓄熱更新時以降にメモリ31に蓄積された複数の発熱値を積分してPFモータ5の区間総発熱値を演算し、前回計算した蓄熱値に所定の放熱係数(たとえば0.93など)を乗算し、それらを加算してPFモータ5の新たな蓄熱値を演算する。蓄熱更新部53は、同様の演算処理により、ASFモータ6の新たな蓄熱値や、CRモータ11の新たな蓄熱値を演算する。これにより、マイクロコンピュータ26のメモリ31に記憶されるASF蓄熱データ44、PF蓄熱データ45およびCR蓄熱データ46は、所定の更新時間毎に、最新の蓄熱値に更新される。
【0030】
瞬時発熱演算部52および蓄熱更新部53へ起動を指示して初期化処理を終えると、主制御部51は、印刷データ待ちとなる。インジェットプリンタが図示外のパーソナルコンピュータなどから印刷データを受信すると、主制御部51は、印刷処理を開始する。主制御部51は、次に実行する制御動作として給紙動作を判断し(ステップST2)、PF制御部55およびASF制御部56へ給紙動作を指示する(ステップST3)。
【0031】
PF制御部55は、給紙動作が指示されると、メモリ31から図示外のPF用給紙制御データを読み込み、所定の時間毎に制御目標値をASIC25へ供給する。ASIC25では、図示外のDCユニットが供給された制御目標値と第一ロータリエンコーダ22により検出される速度とを比較する。ASIC25は、この比較に基づくPID制御などによる指令値をモータドライバ21へ出力する。モータドライバ21は、PFモータ5を回転駆動する。
【0032】
同様に、ASF制御部56は、給紙動作が指示されると、メモリ31から図示外のASF用給紙制御データを読み込み、制御目標値をASIC25へ供給する。ASIC25は、指令値をモータドライバ21へ出力し、モータドライバ21は、ASFモータ6を回転駆動する。これにより、PFモータ5およびASFモータ6は、PF制御部55とASF制御部56とによる独立した別々の制御により、回転駆動される。給紙トレイ7上の用紙は、印刷位置へ搬送される。
【0033】
以上の給紙動作が完了すると、PF制御部55およびASF制御部56は、給紙駆動を終了する。PF制御部55は、この給紙制御におけるPFモータ5の駆動時間により、メモリ31のPF最終駆動時間データ(搬送モータの前回の駆動制御時間)42を更新する。ASF制御部56は、この給紙制御におけるASFモータ6の駆動時間により、メモリ31のASF最終駆動時間データ43を更新する。主制御部51は、図3に示すように、インクジェットプリンタ1が停止状態にあると判断し(ステップST4でYes)、次に実行する制御動作として印字動作を判断し(ステップST2)、印字制御部54へ印字動作を指示する(ステップST3)。なお、主制御部51は、インクジェットプリンタ1が停止状態にあると判断できないとき(ステップST4でNo)、その判断を繰り返す。
【0034】
図4は、図1中の印字制御部54が実行する印字制御の流れを示すフローチャートである。印字制御部54は、まず、メモリ31から各モータの蓄熱データ44,45,46および休止時間割合テーブル47,48,49を読み込み、各モータの蓄熱レベルを判断する(ステップST11)。印字制御部54は、たとえば図2に示すPF休止時間割合テーブル48の各蓄熱レベルの範囲と、PF蓄熱データ45の値とを比較し、蓄熱レベルを判断する。
【0035】
各モータの蓄熱レベルを判断した後、印字制御部54は、その中の最も高い蓄熱レベルを特定する(ステップST12)。たとえばPFモータ5の蓄熱レベルが「2」であり、その他のモータの蓄熱レベルが「1」である場合、PFモータ5の蓄熱レベル「2」を最高蓄熱レベルと特定する。
【0036】
最高蓄熱レベルを特定した後、印字制御部54は、その最高蓄熱レベルに基づいて、冷却のための休止制御の要否を判断する(ステップST13)。印字制御部54は、最高蓄熱レベルが「0」、つまりすべてのモータの蓄熱レベルがそれぞれの休止時間割合テーブル47,48,49の最低の蓄熱レベルより低い場合、休止不要と判断する(ST13でNo)。印字制御部54は、後述する印字動作の制御を開始する(ステップST17)。それ以外の場合、印字制御部54は、休止要と判断し、有意な休止時間の設定処理を実行する(ST13でYes)。
【0037】
休止要と判断すると、印字制御部54は、最高蓄熱レベルを判断したモータに対応する休止時間割合テーブル47,48,49から、特定した最高蓄熱レベルに対応する休止割合データを読み込む。たとえば最高蓄熱レベルがPFモータ5の「2」であるとき、印字制御部54は、図2中の休止割合「20(%)」を読み込む(ステップST14)。引き続き、印字制御部54は、特定した最高蓄熱レベルのモータの最終駆動時間データ42を読み込み、これらを掛け合わせて休止時間を演算する(ステップST15)。そして、印字制御部54は、タイマ32を参照し、この演算した休止時間が経過するのを待つ(ステップST16)。休止時間が経過すると、印字制御部54は、主制御部51により指示された印字動作の制御を開始する(ステップST17)。
【0038】
印字動作の制御において、印字制御部54は、CRモータ11を駆動する。CRモータ11の駆動により、キャリッジ10は、主走査方向へ所定の速度テーブルに沿って移動する。キャリッジ10の記録ヘッドは、印刷データに基づいてインクを吐出する。これにより、用紙の印刷位置へ給紙されている部位には、インクが付着する。印字が終わると、印字制御部54は、この印字制御におけるCRモータ11の駆動時間により、メモリ31のCR最終駆動時間データ43を更新する(ステップST18)。
【0039】
以上の印字制御部54による印字制御が終了すると、図3に示すように、主制御部51は、インクジェットプリンタ1が停止状態にあると判断し(ステップST4でYes)、次に実行する制御動作として紙送り動作を判断し(ステップST2)、PF制御部55へ紙送り動作を指示する(ステップST3)。PF制御部55は、PFモータ5を駆動し、紙送り制御を実行する。これにより、印刷位置に給紙されている用紙は、所定の幅で送られる。また、PF制御部55は、紙送り動作におけるPFモータ5の駆動時間で、PF最終駆動時間データ42を更新する。
【0040】
図3のステップST2において、主制御部51は、たとえば印刷データが終了したり、用紙の後端が印刷位置を通過したりするまでの間、紙送り動作が完了すると、次に実行する制御動作として印字動作を判断し、印字動作が完了すると、次に実行する制御動作として紙送り動作を判断する。これにより、印刷位置に給紙されている用紙は、所定の幅ずつ送られ、その送り毎にインクが付着する。印刷位置に給紙されている用紙には、印刷データに基づく画像が印刷される。また、印字制御部54は、印字動作が指示される度に図4に示す処理を実行し、必要に応じてその実行時に判断する最高蓄熱レベルに応じた休止時間を待ち(ステップST13〜ST16)、印字制御を実行する(ステップST17)。また、印字制御部54は、CRモータ11の駆動時間でCR最終駆動時間データ43を更新する(ステップST18)。
【0041】
また、印刷データが終了したり、用紙の後端が印刷位置を通過したりすると、主制御部51は、図3のステップST2において、次に実行する制御動作として排紙動作を判断し、PF制御部55へ排紙動作を指示する。PF制御部55は、PFモータ5を駆動し、排紙制御を実行する。これにより、印刷位置に給紙されている用紙は、排紙トレイ9へ排出される。また、PF制御部55は、PFモータ5の駆動時間で、PF最終駆動時間データ42を更新する。
【0042】
なお、以上の動作説明は、1枚の用紙への印刷を例に説明している。この他にも、インクジェットプリンタ1は、給紙トレイ7に載置される複数の用紙に対して連続的に印刷をすることができる。複数枚の用紙へ連続的に印刷する場合、インクジェットプリンタ1は、基本的には、たとえば上述した1枚毎の印刷シーケンスをその枚数分繰り返せばよい。
【0043】
また、主制御部51は、連続的な印刷では、排紙動作およびそれに続く給紙動作の指示の替わりに、給排紙動作を指示するようにしてもよい。この場合、主制御部51は、PF制御部55およびASF制御部56へ給排紙動作を指示する。PFモータ5およびASFモータ6は駆動される。これにより、印刷位置にある用紙が排紙トレイ9へ排出され、且つ、次の未印刷の用紙が給紙トレイ7から印刷位置へ給紙される。また、PF制御部55は、この給排紙制御におけるPFモータ5の駆動時間により、メモリ31のPF最終駆動時間データ42を更新する。ASF制御部56は、この給排紙制御におけるASFモータ6の駆動時間により、メモリ31のASF最終駆動時間データ41を更新する。
【0044】
以上のように、この実施の形態に係るインクジェットプリンタ1において、PFモータ5は、給紙動作、紙送り動作、排紙動作および給排紙動作において駆動される。PF最終駆動時間データ42は、この駆動の度に更新される。また、ASFモータ6は、給紙動作および給排紙動作において駆動され、ASF最終駆動時間データ41は、この駆動の度に更新される。また、CRモータ11は、印字動作において駆動され、CR最終駆動時間データ43は、駆動の度に更新される。印字制御部54は、これらのモータ5,6,11の中の最高の蓄熱レベルを判断し、その最高の蓄熱レベルに応じた給紙割合により休止時間を演算し、その休止時間が経過してから主制御部51により指示された所定の印字動作の制御を実行する。
【0045】
図5は、インクジェットプリンタ1のある期間の動作を示すタイミングチャートである。図5(A)はPFモータ5の回転速度であり、図5(B)はPFモータ5の温度であり、図5(C)はCRモータ11の回転速度であり、図5(D)はPFモータ5の蓄熱値である。横軸は時間である。図5に示すように、PFモータ5の温度は、PFモータ5が回転するたびに上昇する。また、PFモータ5が停止すると、放熱により冷却され、低下する。PFモータ5の蓄熱値は、このPFモータ5の温度の昇降に対応して増減する。
【0046】
そして、図5(D)の3段目の更新期間に示すように、PFモータ5の蓄熱値が蓄熱レベル1の下限値「40」以上となり、それが最高蓄熱レベルであると、印字制御部54は、図2中の休止割合「10(%)」を用いて有意な休止時間を演算する。印字制御部54は、図5(C)に示すように、その休止時間が経過するのを待ってから印字動作の制御を開始する。そのため、図5(A)に示すように、その後に、PF制御部55によるPFモータ5の駆動制御は、その休止時間の分だけ遅れて開始されることになる。
【0047】
その結果、3段目の更新期間におけるPFモータ5の合計の駆動時間は、たとえば2段目などより少なくなる。PFモータ5の温度上昇が抑えられ、PF蓄熱データ45の値の増加も抑えられる。図5(D)の4段目では、PFモータ5の蓄熱値は、3段目と同じ値に維持されている。すなわち、PFモータ5の温度上昇は、抑えこまれている。なお、このような休止制御がなされなかった場合には、PFモータ5の蓄熱値は、図5(D)の4段目の点線に示すように、3段目より高い値へ増加してしまう。PFモータ5の温度および蓄熱値は、その駆動時間が長くなるほど高い値になってゆく。この実施の形態のように、印字動作中にPFモータ5を冷却するための休止時間を設けることで、PFモータ5の過熱を防止することができる。
【0048】
PFモータ5は、給紙動作や給排紙動作などにおいてASFモータ6とともに、時期を重ねて駆動される。すなわち、PFモータ5とASFモータ6とは、それぞれの制御部55,56により同期駆動される。仮にこのような場合において、PF制御部55が休止時間を演算し、その経過を待つと、PFモータ5とASFモータ6との所望の同期が確保されなくなり、正しい給紙動作をすることができなくなる。これに対して、この実施の形態では、CRモータ11の駆動時に、PFモータ5やASFモータ6の休止時間を確保する。このとき、PFモータ5やASFモータ6は、駆動されない。したがって、PFモータ5やASFモータ6を冷却するための休止時間は、PFモータ5とASFモータ6との同期動作を妨げることなく確保される。
【0049】
特に、この実施の形態では、印刷中において各モータ5,6,11の発熱値を周期的に演算し、印字動作時に、その発熱値に基づいて休止時間を決定し、給紙する。印字動作は、基本的には、印刷中においてPFモータ5などの搬送モータが駆動される度に、その駆動と交互に実行される。したがって、印刷制御の途中において、その印刷段階に応じたPFモータ5などの発熱に応じた必要な休止時間を確保することができる。
【0050】
なお、図5は、PFモータ5の蓄熱値が最高蓄熱レベルとなるときの図である。この他にも、CRモータ11の蓄熱値が最高蓄熱レベルとなるときや、ASFモータ6の蓄熱値が最高蓄熱レベルとなるときもある。これらの場合でも、印字制御部54は、その時々に最高蓄熱レベルと判断したモータの休止時間を確保する。PFモータ5、ASFモータ6およびCRモータ11は、この1回の休止時間により冷却される。その結果、印字制御部54は、PFモータ5のみならず、CRモータ11やASFモータ6などをも冷却するように休止時間を設け、その休止時間によりこれらのすべてのモータの過熱を防止する。
【0051】
図6は、休止時間割合テーブル47,48,49に基づく休止時間の設定効果を示す説明図である。図6において、横軸は、時間であり、縦軸は、蓄熱値である。蓄熱値は、モータ5,6,11の温度と連動して増減する。休止時間を設けない場合、図6中の点線で示すように、モータ5,6,11の温度および蓄熱値は、上昇し続ける。休止時間を設けない場合、連続的に動作可能な期間には、限界がある。
【0052】
これに対して、休止時間を設けると、図6中の実線で例示するように、蓄熱値は、たとえば蓄熱レベル「2」までしか上昇しない。インクジェットプリンタ1は、休止時間を設けない場合の限界期間を超えて、連続的に印刷をすることができる。モータ5,6,11を過熱により焼損することなく、長時間にわたって連続する印刷をすることができる。
【0053】
また、この実施の形態では、各休止時間割合テーブル47,48,49において給紙割合は、所定の蓄熱値以上に対応付けられている。たとえば図2に示すように、PF休止時間割合テーブル48において給紙割合は、蓄熱値「40」以上に対応付けられている。したがって、すべてのモータ5,6,11に対応する蓄熱データ44,45,46の値がこの下限値より小さい場合、休止時間が設定されない。この間、インクジェットプリンタ1は、本来の印刷速度により印刷することができる。
【0054】
上記実施の形態では、瞬時発熱演算部52は、第一ロータリエンコーダ22の検出に基づく瞬時搬送速度から、PFモータ5の計測周期における瞬時的な発熱値を演算している。第一ロータリエンコーダ22は、インクジェットプリンタ1において、用紙の搬送距離や搬送速度を検出するために略必須のものである。したがって、PFモータ5の温度や電流を検出するための専用のセンサなどを別途追加する必要がない。
【0055】
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。たとえば上記実施の形態では、PFモータ5、ASFモータ6およびCRモータ11の温度上昇を制御している。この他にもたとえば、給紙時に給紙トレイ7上の用紙をLDローラ2へ当接させるASFサブモータ、キャリッジ10のインクを吸引する吸引モータなどの各種のモータの温度上昇を合わせて制御するようにしてもよい。また、たとえばPFモータ5およびCRモータ11のみなどのように2つのモータの温度上昇を制御するようにしてもよい。
【0056】
上記実施の形態では、印字制御部54が、インクジェットプリンタ1の各モータ5,6,11に対応する蓄熱データ44,45,46から休止時間を演算し、休止時間の経過を待っている。この他にもたとえば、主制御部51が、各モータ5,6,11に対応する蓄熱データ44,45,46から休止時間を演算し、その休止時間の経過を待ち、その後に各種の駆動動作を指示するようにしてもよい。この場合でも、3つのモータ5,6,11が必要とする十分な休止時間を確保し、PFモータ5、CRモータ11およびASFモータ6の温度を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、インクジェットプリンタに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成図である。
【図2】図1中のPF休止時間割合テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】図1中の主制御部が実行する主制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】図1中の印字制御部が実行する印字制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】インクジェットプリンタのある期間の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】休止時間割合テーブルに基づく休止時間の設定効果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェットプリンタ、5 PFモータ(搬送モータ)、6 ASFモータ(他の搬送モータ)、10 キャリッジ、11 キャリッジモータ(CRモータ)、31 メモリ(記憶手段)、42 PF最終駆動時間データ(搬送モータの前回の駆動制御時間)、47 ASF休止時間割合テーブル(休止時間割合テーブル)、48 PF休止時間割合テーブル(休止時間割合テーブル)、49 CR休止時間割合テーブル(休止時間割合テーブル)、53 蓄熱更新部(蓄熱演算手段)、54 印字制御部(印字制御手段)、55 PF制御部(第一搬送制御手段)、56 ASF制御部(第二搬送制御手段)
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉

【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦


【公開番号】 特開2008−18548(P2008−18548A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190087(P2006−190087)