| 【発明の名称】 |
液滴噴射装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】菅原 宏人
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| 【要約】 |
【課題】電極間に電圧を印加するための電送系の構成を簡素化するとともに、噴射ノズルからの液滴噴射時に、非噴射ノズルからも液滴が噴射されてしまうのを防止することが可能な液滴噴射装置を提供すること。
【構成】インクジェットヘッド1の圧電アクチュエータ3は、複数の圧力室14を覆う圧電層31と、複数の圧力室14に対応して異なる2方向にマトリックス状に配置された複数の第1電極32及び複数の第2電極34を備え、1列に配列された第1電極32同士が互いに導通する一方で、1列に配列された第2電極34同士も互いに導通している。そして、ドライバICは、1列の第1電極32に対して第1電位と第2電位の何れか一方を同時に付与するとともに、1列の第2電極34に対して第1電位と第2電位とは異なる電位である、第3電位と第4電位の何れか一方を同時に付与する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 液滴を噴射する複数のノズルと、ある平面に沿って配置されるとともに前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室を含む、液体流路が形成された流路ユニットと、 前記複数の圧力室を覆うように配置され、電圧が印加されることによって変形する変形層と、この変形層に前記複数の圧力室にそれぞれ対応して設けられ、前記変形層に電圧を印加するための複数の第1電極及び複数の第2電極を備えたアクチュエータと、 前記アクチュエータの前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極にそれぞれ電位を付与する電位付与手段を備え、 前記複数の第1電極と前記複数の第2電極はそれぞれ複数の組に分けられて、1つの組に属する前記第1電極同士が互いに導通する一方で、1つの組に属する前記第2電極同士が互いに導通しており、 前記電位付与手段は、あるノズルから液滴を噴射させるタイミングで、1つの組に属する前記第1電極に対して、所定の第1電位と第2電位の何れか一方を同時に付与するとともに、1つの組に属する前記第2電極に対して、前記第1電位及び前記第2電位と異なる電位である、所定の第3電位と第4電位の何れか一方を同時に付与することを特徴とする液滴噴射装置。 【請求項2】 前記複数の圧力室は、平面に沿って所定の第1方向とこの第1方向と交差する第2方向にマトリックス状に配置され、 さらに、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極は、前記複数の圧力室にそれぞれ対応して前記第1方向と前記第2方向にマトリックス状に配置され、 前記第1方向に1列に配列された前記第1電極同士が互いに導通する一方で、前記第2方向に1列に配列された前記第2電極同士が互いに導通しており、 前記電位付与手段は、あるノズルから液滴を噴射させるタイミングで、前記第1方向に1列に配列された前記第1電極に対して、所定の第1電位と第2電位の何れか一方を同時に付与するとともに、前記第2方向に1列に配列された前記第2電極に対して、前記第1電位及び前記第2電位と異なる電位である、所定の第3電位と第4電位の何れか一方を同時に付与することを特徴とする請求項1に記載の液滴噴射装置。 【請求項3】 前記変形層は、圧電材料からなる層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴噴射装置。 【請求項4】 前記第1〜第4電位は、電位の大きい方又は電位の小さい方から、第1電位、第3電位、第2電位、第4電位の順となるようにそれらの電位の大きさが設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液滴噴射装置。 【請求項5】 前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記ノズルから液滴を噴射させるのに必要な噴射電位差以上の電位差であり、 前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差は、前記噴射電位差よりも小さい電位差であることを特徴とする請求項4に記載の液滴噴射装置。 【請求項6】 前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差の、2.5倍以上であることを特徴とする請求項5に記載の液滴噴射装置。 【請求項7】 前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差の、3倍以上であることを特徴とする請求項5に記載の液滴噴射装置。 【請求項8】 前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差は互いに等しく、且つ、前記第1電位と前記第4電位の電位差の1/3であることを特徴とする請求項7に記載の液滴噴射装置。 【請求項9】 前記電位付与手段は、所定のノズルから液滴を噴射させるタイミングにおいて、前記所定のノズルに対応する前記第1電極を含む、所定の列に属する前記第1電極に対して前記第1電位を付与するとともに、前記所定の列以外の列に属する前記第1電極に対して前記第2電位を付与することを特徴とする請求項4〜8の何れかに記載の液滴噴射装置。 【請求項10】 前記第1電位と前記第4電位の一方が正の電位で他方が負の電位であることを特徴とする請求項4〜9の何れかに記載の液滴噴射装置。 【請求項11】 前記第1〜第4電位のうちの1つの電位がグランド電位であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の液滴噴射装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、液滴を噴射する液滴噴射装置に関する。 【背景技術】 【0002】 複数のノズルからインクの液滴を噴射させるインクジェットヘッドは、一般的に、インクに噴射圧力を付与するためのアクチュエータを備えており、このようなアクチュエータとしては、圧電アクチュエータが広く用いられている。一般的な圧電アクチュエータは、圧電層とこの圧電層の両面にそれぞれ配置された1組の電極(第1電極及び第2電極)とを備えており、1組の電極間に電圧(電位差)が印加されたときの圧電層の変形によりインクに圧力を付与するように構成されている。 【0003】 従来の圧電アクチュエータにおいては、複数のノズルに対応する複数組の電極に対してそれぞれ配線が独立して設けられており、これらの配線を介して複数組の電極間に所定の電圧が印加される。しかし、このような構成では、ノズル数が多くなるほどこれらのノズルに対応する配線の数も多くなり、その結果、電送系のコストが高くなるという問題があった。 【0004】 一方で、従来から、インクジェットヘッドの分野において、2種類の電極が異なる2方向に沿ってマトリックス状に配置され、1列に配列された電極同士が互いに接続された構成を有するアクチュエータが知られている。例えば、特許文献1に記載されたインクジェットヘッドのアクチュエータは、異なる2方向に沿ってマトリックス状に配置された2種類の駆動電極(第1駆動電極と第2駆動電極)を備えている。ある方向に1列に配列された第1駆動電極同士は互いに接続され、それとは別の方向に1列に配列された第2駆動電極同士も互いに接続されており、1列の第1駆動電極と、1列の第2駆動電極には、それぞれ高電位(高電圧レベル)又はグランド電位(グランドレベル)の一方が同時に付与されるようになっている。そして、1組の第1駆動電極と第2駆動電極の両方にそれぞれ高電位が付与されたときに、この電極の組に対応するノズル(インクガイド)付近の電界強度が高くなり、負電位にバイアスされている対向電極が配置された記録媒体に向けて、ノズルからインクの液滴が噴射される。 【0005】 【特許文献1】特開2004−58505号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 前述した圧電アクチュエータにおいても、電極に接続される配線の総数を減らすために、特許文献1に記載のアクチュエータと同じように、複数の第1電極及び複数の第2電極を異なる2方向に沿ってマトリックス状に配置して、ある方向に1列に配列された第1電極同士を互いに接続するとともに、別の方向に1列に配列された第2電極同士を接続することが考えられる。しかし、第1電極に選択的に付与される2種類の電位と第2電極に選択的に付与される2種類の電位が同じであると、所望の噴射ノズルのみからインクを噴射させることは不可能である。即ち、噴射ノズルに対応する第1電極を含む1列の第1電極に高電位を付与するとともに、噴射ノズルに対応する第2電極を含む1列の第2電極にグランド電位を付与して、噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間に所定の電位差を生じさせたときに、一部の非噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間にも噴射ノズルと同じ電位差が生じてしまい、この一部の非噴射ノズルからもインクの液滴が噴射されてしまう。 【0007】 本発明の目的は、電極間に電圧を印加するための電送系の構成を簡素化するとともに、噴射ノズルから液滴が噴射される際に非噴射ノズルから液滴が噴射されてしまうのを防止することが可能な液滴噴射装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 第1の発明の液滴噴射装置は、液滴を噴射する複数のノズルと、ある平面に沿って配置されるとともに前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室を含む、液体流路が形成された流路ユニットと、前記複数の圧力室を覆うように配置され、電圧が印加されることによって変形する変形層と、この変形層に前記複数の圧力室にそれぞれ対応して設けられ、前記変形層に電圧を印加するための複数の第1電極及び複数の第2電極を備えたアクチュエータと、前記アクチュエータの前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極にそれぞれ電位を付与する電位付与手段を備え、前記複数の第1電極と前記複数の第2電極はそれぞれ複数の組に分けられて、1つの組に属する前記第1電極同士が互いに導通する一方で、1つの組に属する前記第2電極同士が互いに導通しており、前記電位付与手段は、あるノズルから液滴を噴射させるタイミングで、1つの組に属する前記第1電極に対して、所定の第1電位と第2電位の何れか一方を同時に付与するとともに、1つの組に属する前記第2電極に対して、前記第1電位及び前記第2電位と異なる電位である、所定の第3電位と第4電位の何れか一方を同時に付与することを特徴とするものである。 【0009】 この液滴噴射装置においては、変形層に配置された複数の第1電極と複数の第2電極はそれぞれ複数の組に分けられており、1つの組に属する第1電極同士が互いに導通する一方で、1つの組に属する第2電極同士が互いに導通している。また、電位付与手段により、1つの組に属する第1電極に対して所定の第1電位と第2電位の何れか一方が同時に付与されるとともに、1つの組に属する第2電極に対して、所定の第3電位と第4電位の何れか一方が同時に付与される。すると、第1電極と第2電極との間の電圧(電位差)に応じて変形層が変形し、この変形により圧力室内の液体に圧力が付与されて、圧力室に連通するノズルからインクを噴射させる。この構成によれば、1つの組に属する複数の電極が互いに接続されて同時に同じ電位が付与されるため、複数の電極に対してそれぞれ個別の配線を介して電位が付与される構成と比較して、電位付与手段の構成を簡単にするとともに配線数を大幅に減らすことができるなど、電送系の構成を簡素化してそのコストを低減できる。 【0010】 さらに、第1電極に付与される第1電位及び第2電位と、第2電極に付与される第3電位及び第4電位は、全て異なる電位となっている。そのため、噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間の電位差を、非噴射ノズルに対応する2つの電極の電位差と異ならせることができ、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのを防止することが可能となる。 【0011】 第2の発明の液滴噴射装置は、前記第1の発明において、前記複数の圧力室は、平面に沿って所定の第1方向とこの第1方向と交差する第2方向にマトリックス状に配置され、さらに、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極は、前記複数の圧力室にそれぞれ対応して前記第1方向と前記第2方向にマトリックス状に配置され、前記第1方向に1列に配列された前記第1電極同士が互いに導通する一方で、前記第2方向に1列に配列された前記第2電極同士が互いに導通しており、前記電位付与手段は、あるノズルから液滴を噴射させるタイミングで、前記第1方向に1列に配列された前記第1電極に対して、所定の第1電位と第2電位の何れか一方を同時に付与するとともに、前記第2方向に1列に配列された前記第2電極に対して、前記第1電位及び前記第2電位と異なる電位である、所定の第3電位と第4電位の何れか一方を同時に付与することを特徴とするものである。 【0012】 この液滴噴射装置においては、ある平面に沿って2つの方向にマトリックス状に配置された複数の圧力室に対応して、変形層に複数の第1電極と複数の第2電極がそれぞれマトリックス状に配置されている。また、電位付与手段により、1列に配列された第1電極に対して所定の第1電位と第2電位の何れか一方が付与されるとともに、1列に配列された第2電極に対して、所定の第3電位と第4電位の何れか一方が付与される。この構成によれば、1列に配列された複数の電極が互いに接続されて同時に同じ電位が付与されるため、複数の電極に対してそれぞれ個別の配線を介して電位が付与される構成と比較して、電位付与手段の構成を簡単にするとともに配線数を大幅に減らすことができるなど、電送系の構成を簡素化してそのコストを低減できる。 【0013】 第3の発明の液滴噴射装置は、前記第1又は第2の発明において、前記変形層は、圧電材料からなる層であることを特徴とするものである。第1電極と第2電極の間の電位差によって、圧電材料からなる変形層に電界が作用すると、変形層に電界の強さに応じた変形が生じる。そのため、噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間の電位差を、非噴射ノズルに対応する2つの電極の電位差と異ならせることにより、本来は液滴を噴射しないノズルから、液滴が噴射されてしまうのを防止することが可能となる。 【0014】 第4の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記第1〜第4電位は、電位の大きい方又は電位の小さい方から、第1電位、第3電位、第2電位、第4電位の順となるようにそれらの電位の大きさが設定されていることを特徴とするものである。この構成によれば、噴射ノズルに対応する2つの電極間の電位差(第1電位と第4電位の電位差)を、非噴射ノズルに対応する2つの電極間の電位差(第1電位と第3電位の電位差、第2電位と第3電位の電位差、及び、第2電位と第4電位の電位差)に対して十分に大きくすることが可能になる。 【0015】 第5の発明の液滴噴射装置は、前記第4の発明において、前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記ノズルから液滴を噴射させるのに必要な噴射電位差以上の電位差であり、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差は、前記噴射電位差よりも小さい電位差であることを特徴とするものである。 【0016】 この構成によれば、非噴射ノズルに対応する2つの電極間の電位差(第1電位と第3電位の電位差、第2電位と第3電位の電位差、及び、第2電位と第4電位の電位差)が、噴射電位差よりも小さいため、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのが確実に防止される。また、非噴射ノズルにおいては、その内部の液体に噴射されない程度の圧力が作用してノズル内のメニスカスが振動するため、ノズル内の液体の乾燥(増粘)が防止される。これにより、非噴射状態が続くノズルであっても、噴射特性を安定化させることができる。 【0017】 第6の発明の液滴噴射装置は、前記第5の発明において、前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差の、2.5倍以上であることを特徴とするものである。この構成によれば、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのを防止できる。 【0018】 第7の発明の液滴噴射装置は、前記第5の発明において、前記第1電位と前記第4電位の電位差は、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差の、3倍以上であることを特徴とするものである。この構成によれば、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのを確実に防止できる。 【0019】 第8の発明の液滴噴射装置は、前記第7の発明において、前記第1電位と前記第3電位の電位差、前記第2電位と前記第3電位の電位差、及び、前記第2電位と前記第4電位の電位差は互いに等しく、且つ、前記第1電位と前記第4電位の電位差の1/3であることを特徴とするものである。この構成によれば、非噴射ノズルに対応する2つの電極の電位差が、噴射ノズルに対応する2つの電極の電位差の1/3となるため、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのを確実に防止できる。 【0020】 第9の発明の液滴噴射装置は、前記第4〜第8の何れかの発明において、前記電位付与手段は、所定のノズルから液滴を噴射させるタイミングにおいて、前記所定のノズルに対応する前記第1電極を含む、所定の列に属する前記第1電極に対して前記第1電位を付与するとともに、前記所定の列以外の列に属する前記第1電極に対して前記第2電位を付与することを特徴とするものである。この構成によれば、噴射ノズルに対応する第1電極を含む1列の第1電極の全てに第1電位が付与され、それ以外の列の第1電極には第2電位が付与される。ここで、第1電位及び第2電位は、第2電極に付与される第3電位及び第4電位とは異なる電位であることから、非噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間にもある程度の電位差が生じることになる。そのため、非噴射ノズルの内部の液体に液滴が噴射されない程度の圧力が作用してノズル内のメニスカスが振動することから、ノズル内の液体の乾燥が防止される。 【0021】 第10の発明の液滴噴射装置は、前記第4〜第9の何れかの発明において、前記第1電位と前記第4電位の一方が正の電位で他方が負の電位であることを特徴とするものである。この構成によれば、第1電位〜第4電位の4つの電位の絶対値を小さくすることができるため、電源のコストを低減することができる。また、電極電位とグランド電位との間の電位差が小さくなるため、給電用配線における安全性が増す。 【0022】 第11の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第10の何れかの発明において、前記第1〜第4電位のうちの1つの電位がグランド電位であることを特徴とするものである。この構成によれば、電位の種類が少なくなるため、電位付与手段の構成を簡素化できる。 【発明の効果】 【0023】 本発明の構成によれば、1組の第1電極が互いに導通し、さらに、1組の第2電極も互いに導通しているため、複数のノズル(圧力室)に対応する複数の電極に個別の配線を介して電位を付与する構成と比較して、電位付与手段の構成を簡単にするとともに配線数を大幅に減らして、電送系のコストを低減できる。これに加えて、噴射ノズルに対応する第1電極と第2電極の間の電位差を、非噴射ノズルに対応する2つの電極の電位差と異ならせて、本来は液滴を噴射しないノズルから液滴が噴射されてしまうのを防止することが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 本発明の実施の形態について説明する。本発明は、記録用紙に対してインクの液滴を噴射して所望の画像や文字等を記録するインクジェットヘッドに本発明を適用した一例である。 【0025】 まず、本実施形態のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタについて簡単に説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ2と、このキャリッジ2に設けられて記録用紙Pに対してインクを噴射するシリアル型のインクジェットヘッド1(液滴噴射装置)と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ3と、インクジェットプリンタ100の制御を司る制御装置4(図6参照)等を備えている。インクジェットヘッド1は、キャリッジ2と一体的に左右方向(走査方向)へ移動して、その下面に配置されたノズル20(図2〜図5参照)から記録用紙Pに対してインクを噴射して所望の文字や画像等を記録する。また、インクジェットヘッド1により画像等が記録された記録用紙Pは、搬送ローラ3により前方(紙送り方向)へ排出される。 【0026】 次に、インクジェットヘッドについて説明する。図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド1は、ノズル20及び圧力室14を含むインク流路が形成された流路ユニット2と、この流路ユニット2の上面に配置されて、圧力室14内のインクに噴射圧力を付与する圧電アクチュエータ3とを備えている。 【0027】 まず、流路ユニット2について説明する。図4、図5に示すように、流路ユニット2はキャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及びノズルプレート13を備えており、これら4枚のプレート10〜13が積層状態で接合されている。このうち、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12はステンレス鋼製の板であり、これら3枚のプレート10〜12に、後述するマニホールド17や圧力室14等のインク流路をエッチングにより容易に形成することができるようになっている。また、ノズルプレート13は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料により形成され、マニホールドプレート12の下面に接着される。あるいは、このノズルプレート13も、3枚のプレート10〜12と同様にステンレス鋼等の金属材料で形成されていてもよい。 【0028】 図2〜図5に示すように、4枚のプレート10〜13のうち、最も上方に位置するキャビティプレート10には、平面に沿って配列された複数の圧力室14がプレート10を貫通する孔により形成され、これら複数の圧力室14は上下両側から後述の振動板30及びベースプレート11によりそれぞれ覆われている。複数の圧力室14は、紙送り方向(図2の上下方向)に対して角度θをなして交差する方向(第1方向)に8列に配列されるとともに、紙送り方向(図2の上下方向:第2方向)に4列に配列されている。即ち、複数の圧力室14は第1方向と第2方向の2つの方向に沿ってマトリックス状に配列されている。さらに、各圧力室14は、平面視で走査方向(図2の左右方向)に長い、略楕円形状に形成されている。 【0029】 図3に示すように、ベースプレート11の、平面視で圧力室14の両端部と重なる位置には、それぞれ連通孔15,16が形成されている。また、マニホールドプレート12には、平面視で、紙送り方向に配列された圧力室14の連通孔15側の部分と重なるように、紙送り方向(図2の上下方向)に延びる3つのマニホールド17が形成されている。これら3つのマニホールド17は、後述の振動板30に形成されたインク供給口18に連通しており、図示しないインクタンクからインク供給口18を介してマニホールド17へインクが供給される。さらに、マニホールドプレート12の、平面視で複数の圧力室14のマニホールド17と反対側の端部と重なる位置には、それぞれ、複数の連通孔16に連なる複数の連通孔19も形成されている。 【0030】 さらに、ノズルプレート13の、平面視で複数の連通孔19にそれぞれ重なる位置には、複数のノズル20が形成されている。図2に示すように、複数のノズル20は、紙送り方向に沿って4列に配列された複数の圧力室14の、マニホールド17と反対側の端部とそれぞれ重なるように配置されている。また、複数のノズル20は、3つのマニホールド17の間の領域において紙送り方向(図2の上下方向)に均等間隔Pで配列されて、走査方向に並ぶ4列のノズル列21a,21b,21c,21dを構成している。また、4列のノズル列21a〜21dは、P/4ずつ紙送り方向下流側(図2の下方)へ順にずれている。従って、これら4列のノズル列21a〜21dにより、記録用紙Pに、紙送り方向にP/4の間隔で並ぶ複数のドットを形成することが可能となっている。 【0031】 そして、図4に示すように、マニホールド17は連通孔15を介して圧力室14に連通し、さらに、圧力室14は、連通孔16,19を介してノズル20に連通している。このように、流路ユニット2内には、マニホールド17から圧力室14を経てノズル20に至る個別インク流路25が複数形成されている。 【0032】 次に、圧電アクチュエータ3について説明する。図2〜図5に示すように、圧電アクチュエータ3は、流路ユニット2の上面に配置された振動板30と、この振動板30の上面に複数の圧力室14に跨って連続的に形成された圧電層31(変形層)と、この圧電層31の上面と下面の複数の圧力室14と対向する領域にそれぞれ配置された複数の第1電極32及び複数の第2電極34を備えている。 【0033】 振動板30は、平面視で略矩形状の金属板であり、例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金などからなる。この振動板30は、キャビティプレート10の上面に複数の圧力室14を覆うように配設されて、このキャビティプレート10に接合されている。また、図4に示すように、この振動板30の上面には、金属製の振動板30と第2電極34とを絶縁する絶縁層38が設けられている。 【0034】 振動板30の上面には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする、圧電材料からなる圧電層31が形成されている。この圧電層31は、複数の圧力室14を覆うように連続的に形成されている。この圧電層31は、例えば、非常に細かな粒子とキャリアガスとからなるエアロゾルを基板に対して吹き付けて粒子を堆積させる、エアロゾルデポジション法(AD法)や、スパッタ法、CVD(化学蒸着)法などにより形成することができる。あるいは、PZTのグリーンシートを焼成することにより得られた圧電シートを振動板30に貼り付けて形成することができる。 【0035】 複数の第1電極32は、圧電層31の上面の、複数の圧力室14と対向する領域にそれぞれ配置されている。また、複数の第2電極34は、圧電層31の下面の、複数の圧力室14と対向する領域にそれぞれ配置されており、金属製の振動板30とは絶縁層38で絶縁されている。そして、図2に示すように、複数の第1電極32と複数の第2電極34は、複数の圧力室14に対応して第1方向と第2方向に沿ってマトリックス状に配置されている。即ち、複数の第1電極32は、それぞれが第1方向に並ぶ4つの電極からなる、8列の電極列(電極組)に分けられている。また、複数の第2電極34は、それぞれが第2方向に並ぶ8つの電極からなる、4列の電極列(電極組)に分けられている。 【0036】 図3、図5に示すように、各第1電極32の圧力室14の幅方向(図3の上下方向)に関する長さは、圧力室14の幅よりも短くなっている。一方、図3、図4に示すように、各第2電極34の圧力室14の長手方向(図3の左右方向)に関する長さは、圧力室14よりもやや短くなっている。そして、第1電極32と第2電極34に挟まれる圧電層31の部分(電界が作用する活性部)は、平面視で、圧力室14内に収まっている。 【0037】 図2に示すように、第1方向に1列に配列された4つの第1電極32同士がそれらの間の接続部33により接続されて互いに導通しており、1列の第1電極32から走査方向の一方(図2の右方)へ1本の配線35が引き出されている。そして、8列の第1電極32は8本の配線35を介して後述のドライバIC39(図6参照)にそれぞれ接続されている。 【0038】 また、図2に示すように、第2方向(紙送り方向)に1列に配列された8つの第2電極34同士もそれらの間の接続部36により接続されて互いに導通しており、1列の第2電極34から紙送り方向の一方(図2の上方)へ1本の配線37が引き出されている。そして、4列の第2電極34は4本の配線37を介してドライバIC39に接続されている。 【0039】 図6に示すように、ドライバIC39(電位付与手段)は、後述する制御装置4からの指令に基づいて、ノズル20からインクの液滴を噴射させるタイミングで、1列に配列された4つの第1電極32に対して所定の2つの電位(第1電位V1と第2電位V2)の何れかを同時に付与するとともに、1列に配列された8つの第2電極34に対して所定の2つの電位(第3電位V3と第4電位V4)の何れかを同時に付与する。 【0040】 より具体的には、ドライバIC39は、インクを噴射するノズル20に対応する第1電極32を含む、所定の列に属する第1電極32の全てに対して第1電位V1を付与するとともに、前記所定の列以外の列に属する第1電極32に対しては第2電位V2を付与する。また、ドライバIC39は、インクを噴射するノズル20に対応する第2電極34を含む、所定の列に属する第2電極34の全てに対して第4電位V4を付与するとともに、前記所定の列以外の列に属する第2電極34に対しては第3電位V3を付与する。つまり、第1電極32に第1電位V1が付与されるとともに、第2電極34に第4電位V4が付与されたときには、これら第1電極32と第2電極34に対応するノズル20からインクが噴射されるが、それ以外の電位の組み合わせのときには、ノズル20からインクが噴射されないようになっている。4つの電位V1〜V4とインクの噴射/非噴射との関係については、後ほどさらに詳しく説明する。 【0041】 次に、圧電アクチュエータ3のインクに対する圧力付与作用について説明する。ある圧力室14に対応する第1電極32と第2電極34にそれぞれ所定の電位が付与されて、これら第1電極32と第2電極34との間にある電位差が生じたときには、第1電極32と第2電極34の間に挟まれた圧電層31に電圧が印加されることになり厚み方向の電界が生じる。ここで、圧電層31の分極方向と電界の方向とが同じ場合には、圧電層31はその分極方向である厚み方向に伸びて水平方向に収縮する。このとき、この圧電層31の収縮変形に伴って振動板30が圧力室14側に凸となるように撓むため、圧力室14内の容積が減少して圧力室14内のインクに圧力が付与されることになる。 【0042】 ところで、第1電極32と第2電極34との間の電位差ΔVと、ノズル20から噴射されるインクの液滴速度との間には、図7に示すような関係が一般的に成立する。つまり、電位差ΔVが大きいほど、圧力室14内のインクには大きな圧力が付与され、高い液滴速度でインクが噴射される。そして、この図7の関係によれば、ノズル20から所定の液滴速度v0(例えば、8〜9m/s程度)以上でインクの液滴を噴射するためには、ノズル20に連通する圧力室14内のインクにある所定の噴射圧力が付与されるように、噴射ノズルに対応する第1電極32と第2電極34との間の電位差を噴射電位差Va以上にすることが必要である。一方で、本来はインクを噴射しないノズル20からインクが噴射されてしまうことがないように、この非噴射ノズルに対応する第1電極32と第2電極34との間の電位差は、液滴が噴射される最小電位差Vbに対して十分に小さいことが好ましい。尚、液滴速度v0が8〜9m/s程度である場合には、最小電位差Vbは噴射電位差Vaの1/2程度の値となる。 【0043】 そこで、本実施形態では、ドライバIC39から第1電極32と第2電極34に付与される4つの電位V1〜V4は以下のように設定されている。図8に示すように、ドライバIC39から第1電極32に付与される第1電位V1及び第2電位V2と、第2電極34に付与される第3電位V3及び第4電位V4は、互いに異なる電位となっており、さらに、これら4つの電位V1〜V4の大小関係は、V1>V3>V2>V4である。つまり、第1電極32に付与される第1電位V1及び第2電位V2の2つの電位と、第2電極34に付与される第3電位V3及び第4電位V4の2つの電位とが、交互に並ぶように設定されている。 【0044】 従って、第1電極32に第1電位V1が付与されるとともに、第2電極34に第4電位V4が付与される場合に、第1電極32と第2電極34の電位差が最大となる。そして、この電位差A(=V1−V4)が図7の噴射電位差Va以上となるように第1電位V1と第4電位V4が設定されている。つまり、第1電極32と第2電極34の電位差が電位差Aである場合にノズル20からインクが噴射される。一方、電位差B(V1−V3)、電位差C(V3−V2)、及び、電位差D(V2−V4)は電位差Aよりも小さくなる。そして、この電位差B、電位差C、及び、電位差Dが図7の最小電位差Vbよりも小さくなるように、4つの電位V1〜V4が設定されている。つまり、第1電極32と第2電極34の間の電位差が電位差B、電位差C、電位差Dの何れかである場合には、ノズル20からインクは噴射されない。 【0045】 また、前述したように、ノズル20からインクが噴射される最低電位差Vbは、一般的な液滴速度(8〜9m/s程度)では噴射電位差Vaの1/2程度である。そのため、電位差Aが、電位差B,C,Dの2倍程度であると、第1電極32と第2電極34の間の電位差が電位差B、電位差C、あるいは、電位差Dであるときにもインクが噴射されてしまう虞がある。そこで、電位差Aは、電位差B,C,Dの2.5倍以上であることが好ましく、さらに、3倍以上であることがより好ましい。 【0046】 このような4つの電位V1〜V4の一例を図8に示す。この例では、第1電位V1は24V、第2電位V2は8V、第3電位V3は16V、そして、最も低い第4電位V4はグランド電位(GND)に設定されている。従って、電位差A(=V1−V4)は24V、電位差B(V1−V3)、電位差C(V3−V2)、及び、電位差D(V2−V4)はそれぞれ8Vとなり、電位差Aの1/3となる。そのため、第1電極32と第2電極34の間の電位差が電位差B、電位差C、あるいは、電位差Dであるとき、即ち、対応するノズル20から本来はインクを噴射しない場合に、そのノズル20からインクが噴射されてしまうのが防止される。また、第4電位V4をグランド電位とすることにより、実質的に電位の種類を3種類に減らすことができ、電極32,34に電位を付与するドライバIC39の構成を簡素化することができる。 【0047】 尚、本実施形態では、あるノズル20の噴射タイミングにおいて、インクを噴射しないノズル20(非噴射ノズル)に対応する第1電極32と第2電極34の間にも電位差(電位差B,C,D)が生じることになる。そのため、非噴射ノズルに対応する圧力室14の内部において、液滴が噴射されない程度の圧力がインクに作用し、ノズル20内に形成されたメニスカスが振動する。ノズル20内のインクは溶媒が蒸発すると空気との界面付近が増粘化(乾燥)するが、メニスカスが振動することでインクが撹拌されるため、増粘化が抑えられる。よって、非噴射状態が続くノズル20であってもインクの増粘化が回避され、噴射特性を安定化させることができる。 【0048】 次に、インクジェットヘッド1の電気的な構成について、制御装置4を中心に図6のブロック図を参照して説明する。制御装置4は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ100の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えており、プリンタ100の各種動作を制御するように構成されている。即ち、制御装置4は、PC等の入力装置50から入力される印字データに基づいてドライバIC39を制御して、圧電アクチュエータ3の複数の第1電極32に第1電位V1と第2電位V2の一方を付与するとともに、複数の第2電極34に第3電位V3と第4電位V4の一方を付与することにより、インクジェットヘッド1の所望のノズル20からインクを噴射させる。また、搬送ローラ3(図1参照)を駆動する搬送モータ40を制御して、記録用紙Pを所定の送り量で搬送させる。 【0049】 次に、ドライバIC39の電位制御について具体的に説明する。ここでは、図9に示す4つのノズル20a,20b,20c,20d(黒で塗りつぶされたノズル20)から3回の噴射タイミングでインクを噴射させる場合を例に挙げる。即ち、最初の噴射タイミングではノズル20aから、次の噴射タイミングではノズル20bとノズル20cから、そして、最後の噴射タイミングではノズル20dからインクを噴射させる。 【0050】 ここで、説明の便宜上、第1方向に配列された第1電極32の電位を、図9の上側の列から順にVA1,VA2,VA3とする。一方、第2方向(紙送り方向)に配列された第2電極34の電位を、図9の左側の列から順にVB1,VB2,VB3とする。図10に、3列の第1電極32の電位VA1,VA2,VA3と、3列の第2電極34の電位VB1,VB2,VB3の電位変化(パルス波形)をそれぞれ示す。この図10において、T1は図9のノズル20aの噴射タイミング、T2はノズル20b及びノズル20cの噴射タイミング、T3はノズル20dの噴射タイミングである。さらに、図11、図12に、n列目(n=1,2,3)の第1電極32とm列目(m=1,2,3)の第2電極34の電位差(VAn−VBm)を示す。 【0051】 図10に示すように、タイミングT1では、ドライバIC39は、ノズル20aに対応する第1電極32を含む、1列目の第1電極32の電位VA1を第1電位V1(24V)にするとともに、2列目及び3列目の第1電極32の電位VA2,VA3を第2電位V2(8V)にする。また、ノズル20aに対応する第2電極34を含む、1列目の第2電極34の電位VB1を第4電位V4(GND)にするとともに、2列目、3列目の第2電極34の電位VB2,VB3を第3電位V3(16V)にする。すると、図11に示すように、ノズル20aに対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差(VA1−VB1)が24Vとなり、ノズル20aからインクが噴射されることになる。一方、図11、図12に示すように、その他のノズル20に対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差は全て8Vとなり、ノズル20aに対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差の1/3で十分に小さく、これらのノズル20からはインクが噴射されない。 【0052】 次に、図10に示すように、タイミングT2では、ドライバIC39は、2つのノズル20b,20cに対応する2つの第1電極32をそれぞれ含む、2列目の第1電極32の電位VA2と3列目の第1電極32の電位VA3を第1電位V1(24V)にするとともに、1列目の第1電極32の電位VA1を第2電位V2(8V)にする。また、ノズル20b,20cに対応する2つの第2電極34を含む、2列目の第2電極34の電位VB2を第4電位V4(GND)にするとともに、1列目、3列目の第2電極34の電位VB1,VB3を第3電位V3(16V)にする。すると、図11、図12に示すように、2つのノズル20b,20cに対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差(VA2−VB2、VA3−VB2)のみが24Vとなり、他のノズル20に対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差は全て8Vとなる。従って、2つのノズル20b,20cのみからインクが噴射される。 【0053】 さらに、図10に示すように、タイミングT3では、ドライバIC39は、ノズル20dに対応する第1電極32を含む、2列目の第1電極32の電位VA2を第1電位V1(24V)にするとともに、1列目、3列目の第1電極32の電位VA1,VA3を第2電位V2(8V)にする。また、ノズル20dに対応する第2電極34を含む、3列目の第2電極34の電位VB3を第4電位V4(GND)にするとともに、1列目、2列目の第2電極34の電位VB1,VB2を第3電位V3(16V)にする。すると、図11、図12に示すように、ノズル20dに対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差(VA2−VB3)のみが24Vとなり、他のノズル20に対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差は全て8Vとなる。従って、ノズル20dのみからインクが噴射される。 【0054】 以上説明したインクジェットヘッド1によれば、次のような効果が得られる。 第1方向に1列に配列された第1電極32同士が互いに導通する一方で、第2方向に1列に配列された第2電極34同士が互いに導通しており、1列に配列された複数の第1電極32と複数の第2電極34に対してドライバIC39は同時に同じ電位を付与する。そのため、複数の第1電極32及び複数の第2電極34に対応する配線がそれぞれ独立して設けられている場合に比べて、電位を付与するドライバIC39の構成を簡単にするとともに配線数を大幅に減らすことができるなど、電装系(ドライバIC39や、このドライバIC39と圧電アクチュエータ3とを電気的に接続する配線部材等)のコストを低減することが可能となる。 【0055】 また、第1電極32に付与される第1電位V1及び第2電位V2と、第2電極34に付与される第3電位V3及び第4電位V4は、全て異なる電位となっている。そのため、噴射ノズルに対応する第1電極32と第2電極34の間の電位差を、非噴射ノズルに対応する2つの電極32,34の電位差と大きく異ならせることが可能となり(本実施形態では3倍)、噴射ノズルから液滴が噴射される際に、本来は液滴を噴射しないノズル20からも液滴が噴射されてしまうのを防止することができる。 【0056】 さらに、あるノズル20の噴射タイミングにおいて、非噴射ノズルに対応する第1電極32と第2電極34の間には、噴射電位差よりも小さな電位差が生じる。つまり、非噴射ノズルに対応する圧力室14の内部において、液滴が噴射されない程度の圧力がインクに作用することから、そのノズル20内に形成されたメニスカスが振動してインクが攪拌される。そのため、ノズル20内のインクの乾燥(増粘)が効果的に防止される。 【0057】 次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。 【0058】 図13に示すように、4つの電位V1〜V4の大小関係が、V4>V2>V3>V1であってもよい(変更形態1)。この場合でも、第1電極32に第1電位V1が付与されるとともに、第2電極34に第4電位V4が付与される場合に、第1電極32と第2電極34の電位差(電位差A)が最大となり、対応するノズル20からインクが噴射される。一方、それ以外の電位の組み合わせにおける第1電極32と第2電極34の電位差(電位差B,C,D)は、電位差Aよりも十分に小さくなるため(電位差Aの1/3)、対応するノズル20からインクが噴射されてしまうことがない。 【0059】 4つの電位V1〜V4が全て正の電位かグランド電位である必要は特になく、第1電位V1と第4電位V4の一方が正の電位で、他方が負の電位であってもよい。例えば、図14に示すように、第1電位V1のみが正の電位で、第3電位V3がグランド電位、第2電位V2及び第4電位V4が負の電位であってもよい(変更形態2)。あるいは、図15に示すように、第1電位V1と第3電位V3が正の電位で、第2電位V2がグランド電位、第4電位V4が負の電位であってもよい(変更形態3)。このように、4つの電位V1〜V4を正又は負の電位に割り振ることにより、4つの電位V1〜V4の絶対値を小さくすることができるため、電源のコストを低減することができる。また、電極32,34の電位とグランド電位との間の電位差が小さくなるため、給電用配線における安全性が増す。 【0060】 また、前述の実施形態で示した例(図8参照)とは逆に、4つの電位V1〜V4が全て負の電位かグランド電位であってもよい。さらに、4つの電位V1〜V4のうちの1つの電位がグランド電位である必要は必ずしもなく、4つの電位が全て正又は負の電位であってもよい。 【0061】 また、前記実施形態のインクジェットヘッド1は、複数の第1電極32と複数の第2電極34が、平面に沿って第1方向と第2方向に配列されて、2種類の電極32,34がマトリックス状に配置されているが(図2参照)、本発明の適用対象は、このような構成のインクジェットヘッドに限られない。 【0062】 例えば、図16に示すインクジェットヘッド61のように、走査方向(左右方向)にほぼ沿うように複数のノズル20と複数の圧力室14とがそれぞれ蛇行して(千鳥状に)配置され、さらに、このように配置された圧力室14に対応して第1電極32も蛇行して配置されていてもよい(変更形態4)。この場合でも、蛇行して配置された1組(計4つ)の第1電極32を互いに導通させることにより、前記実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。 【0063】 また、1列の圧力室列(ノズル列)のみを有するインクジェットヘッドにも本発明を適用できる(変更形態5)。例えば、図17に示すインクジェットヘッド71においては、複数のノズル20と複数の圧力室14とがマニホールド17の延在方向(図17の上下方向)に沿って1列に配置されている。 【0064】 また、圧電層31の上面の複数の第1電極32は複数の圧力室14に対応して1列に配置され、さらに、1つおきに配置された計4つの第1電極32により1つの電極組が構成されて、複数の第1電極32は2つの電極組に分けられている。そして、各組に属する4つの第1電極32同士は配線75を介して互いに導通している。一方、圧電層31の下面の複数の第2電極34も複数の圧力室14に対応して1列に配置され、さらに、互いに隣接する2つの第2電極34により1つの電極組が構成されて、複数の第2電極34が4つの電極組に分けられている。そして、各組に属する2つの第2電極34同士が互いに導通している。この構成においても、1つの組に属する複数の電極32,34が互いに導通していることから、前記実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。 【0065】 また、インクに噴射圧力を付与するアクチュエータは圧電アクチュエータに限られるものではない。つまり、アクチュエータは、印加された電圧に応じて変形する変形層とこの変形層に電圧を印加するための2種類の電極を有するものであればよい。従って、他の種類のアクチュエータ(例えば、静電アクチュエータなど)を備えたインクジェットヘッドにも本発明を適用することが可能である。 【0066】 さらに、インクを噴射するインクジェットヘッド以外の液滴噴射装置に本発明を適用することもできる。例えば、導電ペーストを噴射して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に噴射して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に噴射して光導波路等の微小光学デバイスを形成する際などに用いられる、種々の液滴噴射装置に本発明を適用できる。 【図面の簡単な説明】 【0067】 【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。 【図2】インクジェットヘッドの平面図である。 【図3】図2の一部拡大図である。 【図4】図3のIV-IV線断面図である。 【図5】図3のV-V線断面図である。 【図6】インクジェットプリンタの電気的な構成を示すブロック図である。 【図7】第1電極と第2電極の電位差ΔVと液滴速度vの関係を概略的に示すグラフである。 【図8】4つの電位V1〜V4の関係を示す図である。 【図9】噴射ノズルの位置を例示する図である。 【図10】第1電極と第2電極の電位変化をそれぞれ示すパルス波形図である。 【図11】一部の第1電極と第2電極の電位差を示す図である。 【図12】残りの第1電極と第2電極の電位差を示す図である。 【図13】変更形態1における第1電極と第2電極の電位変化をそれぞれ示すパルス波形図である。 【図14】変更形態2における第1電極と第2電極の電位変化をそれぞれ示すパルス波形図である。 【図15】変更形態3における第1電極と第2電極の電位変化をそれぞれ示すパルス波形図である。 【図16】変更形態4のインクジェットヘッドの平面図である。 【図17】変更形態5のインクジェットヘッドの平面図である。 【符号の説明】 【0068】 1,61,71 インクジェットヘッド 2 流路ユニット 3 圧電アクチュエータ 14 圧力室 20 ノズル 31 圧電層(変形層) 32 第1電極 34 第2電極 39 ドライバIC(電位付与手段)
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005267 【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年6月29日(2006.6.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226 【弁理士】 【氏名又は名称】須原 誠
【識別番号】100125162 【弁理士】 【氏名又は名称】木村 亨
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| 【公開番号】 |
特開2008−6685(P2008−6685A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月17日(2008.1.17) |
| 【出願番号】 |
特願2006−179022(P2006−179022) |
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